説明

来待石製焼成礫材

【課題】来待石の加工に伴って発生する端材や研削屑或いは不良石材の有効利用を図るとともに、バクテリアの付着率が高く優れた水の浄化能や透水性に優れた礫や成形礫を得る。
【解決手段】来待石の端材や研削屑などの加工屑や不良石材を、破砕して角礫や亜角礫を得、この礫状破砕品を、800℃〜1180℃の温度で焼成して微細孔を多数有する来待石製の焼成礫材を得る。また、来待石粉体に水を加えて粒状に成形したものを、800℃〜1180℃の温度で焼成して来待石製の成形焼成礫材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、来待石の採掘時や加工時に生じる端材や研削屑などの石材加工屑更には原石や不良石材を礫状や砂状に破砕し、または来待石粉体に水を加えて粒状に成形し、これらを所定の温度で焼成して水の浄化材や濾過材、園芸や緑化資材、更には土木資材などに使用する、来待石製の焼成礫材或いは成形焼成礫材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石材は、採掘されたのち各種製品に加工されるが、採掘や加工の段階で端材や研削・研磨屑が大量に発生する。以前は、これらの加工屑は採掘跡地などに廃棄埋め立てするなどして処理されてきたが、埋め立て地の減少や処理費用の高騰で各地の石材加工業者は頭を悩ましている。
【0003】
このことは、凝灰質砂岩の一種である来待石の場合も同様であり、以前はその粉末を石州瓦の釉薬などに使用していたが現在ではその用途も少なくなってきている。そのため、多くの業者は、加工屑の処理をひきのばして自社の敷地内などに加工屑を保管することなどで対処しているが、抜本的な対策にはならず、加工屑の処理は大きな問題となっている。
【0004】
更に来待石の場合、変成が不十分なためか炭酸カルシウムリッチな脆い部分(方解石)が含まれることがあるが、このような部分は加工に向かないため、折角採掘されても石材のままで廃棄される不良石材もかなりの割合になる。
【0005】
そこで本発明者らは、加工屑のうち大き目なものを壺や容器、皿、板などの形に研削し、更に変化を付けるために焼成して見たところ、焼成温度によって黄色〜赤〜茶色に着色するとともに、重量も数〜10%程度減少した。更に、炭や藁その他の炭素源を近くに置いて焼成すると、部分的に燻しがかかった状態に焼成され、非常に雅趣に富んだ置物や植木鉢などが得られた(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−026484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、加工屑は大き目なものばかりではなく、また大きくても形が悪くて壺や容器、皿、板などに研削し難いものもある。実際上はこれらが殆どであり、上記技術では来待石の加工屑を大量処理することは極めて困難である。
【0007】
一方、最近石材加工品の輸入が増大し、国内での石材加工生産の減少が著しい。特に、灯籠が主力であった来待石の場合、和風建築の減少とも相まって最盛期に比べて出荷額が数分の1になっている。そこで、来待石の加工や採掘産業を盛り返すために、上記の加工屑に限らず原石自体、或いは原石を採掘した残りの不良石材(以下、原石等とする)の利用増大が緊急の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、来待石を焼成すると含水量が増えたり上記容器に水を入れると漏ることなどから連続多孔質になることに着目し、加工屑に限らず原石等をも礫状や砂状に破砕して焼成し、これを濾過材や園芸・緑化資材、土木資材などに用いることに思い至り本発明を完成させたものである。
【0009】
一般に、濾過材(以下、濾材とも言う)とは液体から固体物質を分離するための素材のことを言うが、本発明で言う濾材とは、主として水処理材特に水の浄化(生物濾過)に用いる材料のことを言う。もっとも、砂濾過同様に浮遊物など細かな固体物質を分離する働きも有している。
【0010】
例えば、鑑賞魚を飼育する場合、飼育水の濾過が必要になるが、この場合の濾過には物理濾過、化学的濾過及び生物濾過(硝化)がある。物理濾過とは、ガラス繊維などのウールマットを使用して物理的にゴミを濾しとる濾過のことであり、化学的濾過とは活性炭、ゼオライト等吸着効果のある物質によって水槽内の有害物質(アンモニア等)を除去するものであり、効果は有限なため定期的な交換が必要になる。一方、生物濾過(硝化)とは、鑑賞魚が排出する有害なアンモニアをバクテリアによって無害な物質(硝酸塩)に変化させる濾過のことを言い、麦飯石やサンゴ砂、セラミックなどバクテリアが繁殖しやすい多孔質のものが濾材として用いられている。
【0011】
ところが、麦飯石やサンゴ砂、セラミックなどは結構高価なものである。来待石製礫の焼成物は、生物濾過材としてこれらと同等以上の性能を示し、しかも破砕などして焼成するだけで得られるので安価であり、来待石原石や加工屑の大量処理にも対処しうることになり、極めて有意義なものである。尚、焼成品が多孔質になるのは、来待石が後述するように多種多様な岩石片や結晶片、各種の基質とともに細かな有機物の堆積したものであり、焼成により有機物が除去されて微細孔が形成されることによる。
【0012】
そのため、本発明の来待石製濾材は、麦飯石やサンゴ砂、市販のセラミック製品と比べてバクテリアがより以上に繁殖しやすく、結果的にアンモニアの硝化能力が高くなる。また、pHの変動も少ないと言う優れた性質を示す。更に、来待石はカルシウムや鉄分を多く含み、リンの吸着にも優れている。
【0013】
利用できる礫の大きさは、通常の小型水槽用で数mm〜数cm(2.60mm〜30mm程度:亜角礫)であるが、大型の水槽や池、川などの浄化に用いる場合は握り拳大までの(30mm〜10数cm径程度)の角礫も使用できる。更に、亜角礫未満(2.60mm未満)の粉末は、水と混練して亜角礫程度(2.60mm〜30mm)の大きさに成形後焼成する。尚、土の粒径区分(土質学会、国際土壌学会とも)上、礫とは2mm以上のものを言うが、本発明では2.60mmの篩を使用したため2.60mm以上のものを礫として扱っている。もっとも、本発明でも以下に述べる栽培土壌などでは、0.5〜2mm程度の砂や2〜2.60mm未満の礫も使用できる。土の粒径区分上、砂とは0.075〜2mm(土質学会)或いは0.02〜2mm(国際土壌学会)と定義されている。結局本発明では用途に応じて破砕品をふるい分けして使用する。ただ、濾材の場合あまり細かいと使い辛いので、2.60mm程度以上のものを使用する。
【0014】
まず、大きめの加工屑や原石等を、クラッシャーやベノト、ハンマーなどで礫や砂状に破砕し、篩分けして前述の角礫や亜角礫或いは砂を得る。加工屑には旋盤で研削した鱗片状や平角状の礫も多い。この加工屑礫は、厚みが2〜5mm程度、縦横が2.60mm〜30mm程度の亜角礫である。これらの礫や亜角礫はそのまま焼成してもよいが、すりへり試験を行うロサンゼルスすりへり試験機を利用して角を丸めたり一部粉末化しその残りを焼成してもよい。これは、小型水槽用などでは濾材を洗浄することが多いが、この際手を傷つけないために有効である。
【0015】
一方、本発明の来待石粉体は、原石や不良石材、端材、研削屑などをクラッシャーやローラー等の破砕機や粉砕機で粉砕して、また細かな研磨屑(ロサンゼルスすりへり試験機による)はそのままの状態で篩分け(2.60mm以下)して得られる。粒径の分布は、ほぼ図3の粒径加積曲線に類似し、2.60mm以下の礫を5%以下程度含んでいる。
【0016】
成形は、押出し法や回転円盤法などの公知の方法で行う。本発明では、実験的にコンクリート(モルタル)ミキサー(一種の回転円盤法)を用いて成形したが、大量に製造するには押出し機を用いたり押出したのち回転円盤で形を整えたりするとよい。コンクリートミキサーを用いる場合、来待石粉体10Kg(含水率10%)をミキサーに入れて回転しながら水2〜3Lを徐々に加えて成形する。粒の大きさは、水の入れ具合や回転時間等により、2.60mm〜3cmのものが得られる。2.60mmより小さいものは成形効率が悪いが、園芸用などには使用可能である。成形物は球状であるが、これを押しつぶして偏平状にしてもよい。この偏平状成形物や平亜角礫状の旋盤屑を焼成した場合に、容器に充填した場合上からの水の流れに抵抗が生じて接触時間が多くなる利点がある。押出し法で成形する場合、来待石粉体100重量部に対し水を10〜40重量部、より好ましくは20〜30重量部の割合で混練して使用する。混練方法は特に限定はないが、小型のコンクリートミキサーを使用すれば、簡単に少量の混練物が得られる。大量の場合には、より大型の混合機を用いればよい。成形物は、乾燥後焼成する。尚、成形品を焼成すると、砂(2mm以下)やシルト(0.02mm以下)程度の粉末が1%前後できることが多い。この砂やシルトはふるい分けして園芸用などに使用するとよい。
【0017】
成形に際し、来待石粉体とともに籾殻や木材チップ、岩石粒などの種材をミキサーに入れて回転すると、種材を核として成形できるので、大き目のものが速く成形できる利点がある。水に変えて、泥水(ベントナイト水)を用いてもよい。更に、増量材として、脱水していないヘドロ(水分100〜300%)や建設汚泥(ダムに溜まった泥でヘドロ同様多量の水分を含む)をそのまま重量比で20〜30%程度来待石粉体と混ぜると、丁度よい成形物ができ、ヘドロなどの脱水処理や廃棄処理が不要になる利点がある。尚、種材が籾殻など有機質の場合焼成により炭化するが、炭素の一部が焼成粒の微細孔から漏出し全体が黒ずんだ色を呈する。
【0018】
このようにして得られた角礫や亜角礫、砂或いは粒状の粉末成形体を焼成すると、中に含まれている鉄分が酸化して赤や茶色に呈色する。同時に、中に含まれている微小な有機物が燃焼消滅し、その部分が連続した微細孔となる。微細孔は、ガラス化に伴う岩片、鉱物等の粒子結合による空隙の拡大によっても生じる。そして、焼成物の表面は、目視、触感でも焼成温度を上げるにつれてザラザラ感を増し焼成による多孔質組織に変化していることがわかる。籾殻や木材チップなどの有機性種材を使用したものでは、焼成時にこれらの有機質が炭化して燻しのようになるとともに空洞が生じる。尚、本発明の成形焼成礫材は、砂や礫を含む来待石粉体を使用しているため水の移動性がよく、乾燥時や焼成時に水の偏在によるひび割れは生じない。
【0019】
本発明が対象とする来待石(来待錆石)は、島根県に存在する宍道湖の南岸に広く分布する新第三紀中新世出雲層群下位層来待層を構成する凝灰質砂岩のことを言い、良質のものは、塊状凝灰質粗粒砂岩のうち特に淘汰の良い岩相の所に集中し、八束郡玉湯町から宍道町にかけての東西約10km、幅1〜2kmの範囲に存在する。この来待石は、石質が柔らかく採掘、加工が容易で、出雲石灯ろうは伝統工芸品に指定されている。
【0020】
この来待錆石は、多種多様な岩石片や結晶片、それらの粒間を埋める基質(マトリックス)から構成されている。岩石片のサイズは径0.5mm〜1.0mmが多く、最大でも1.5mm程度である。岩石片や結晶片の占める割合が80%と多い。岩石片としては、安山岩、石英安山岩、流紋岩、花崩岩、多種類の凝灰岩などが確認されている。結晶片としては、斜長石、輝石、角閃石、黒雲母、不透明鉱物、火山ガラス、変質鉱物が確認されている。また、基質(マトリックス)としては、変質によってできた沸石、緑泥石、炭酸塩鉱物が確認されている。
【0021】
これらの鉱物の中には粘土鉱物と言われるものが多く含まれており、このことが、来待錆石の粉砕物が成形できる理由である。また、沸石(ゼオライト)を含んでいることから、アンモニアの吸着や湿気の吸排出に優れている。来待錆石以外に、来待白石といわれるものがある。これは、年代的に古くて流紋岩系でモンモリロナイトに変質した部分が多く、本発明では使用できないものである。尚、表1に分析値を示す(島根県発行「島根の地質」)ように、来待錆石には鉄が多く(Fe23 として6.13%)含まれている。そのため、本発明の陶土は焼成すると赤、茶〜黒系統色に呈色する。ただ、本発明の場合濾過材や緑化資材などに使用するので、焼成物の色は問題にならない。表中、数値は重量パーセントを示す。また、表1からも明らかなように、来待錆石には7%程度の焼熱減量(Ig.loss)が含まれている。これは、古代の植物残滓であり、これが焼成時に消滅して微細孔を生じることになる。

【表1】

【0022】
次に、焼成温度について説明する。本発明における焼成温度は、800℃〜1180℃である。800℃以下だと、鉱物のガラス化ができずもろくなる。また、1200℃を越えると、融解(溶融)してボロボロになってしまう。1180℃が、石の形を保つ限界である。1100℃〜1150℃が強度的には好ましい。これは、水槽用濾材を定期的に洗浄するような場合に砕けて細粒化することを防止するために重要な要素である。一方、微細孔の程度は後述するように吸水率で判断するが、焼成温度が低いと有機物の除去が少ないため微細孔も少なく、高すぎると微細孔が潰れて吸水率が低下する。好ましい焼成温度は1100℃〜1140℃程度である。
【0023】
尚、ここに言う温度は最高温度を意味する。即ち、図5は電気窯を使用する場合の焼成温度パターンの一例を示すが、常温から徐々に昇温して1120℃に至り、次いで降温する。この場合の焼成温度を、1120℃と言う。昇温は、常温から8時間かけて徐々に行い、1120℃になった時点で電源を切る。その後10時間かけて自然放冷し、300℃になった時点で窯の蓋を開ける。尚、特許文献1の場合は対象物が大きいので昇温も降温もより時間をかけて(約2倍)行ったが、亜礫や砂の場合は対象物が小さくて熱容量も小さいのでこの程度の昇温・降温時間で十分である。より大きい礫の場合は幾分時間をかける必要がある。
【0024】
電気窯で亜礫や砂などの小粒なものを焼成する場合、素焼きの「さや」に入れて行うが、大きな礫の場合は窯に詰め込んで焼成してもよい。本発明は電気窯に限らず、石油やガス、薪などの燃料を使用する窯も当然に用いられる。また、単独窯のほか登り窯や連続窯でも焼成可能である。生産効率を上げるには、連続窯で大きな耐熱性の容器に礫や亜礫、砂を入れて焼成するとよい。
【0025】
以上は、濾過材について説明したが、本発明の来待石製焼成礫材や成形焼成礫材は、その連続多孔性による透水性や保水性、水の浄化能を利用して、様々な用途が考えられる。例えば、汚水や排水の浄化材や濾過材、鉢やプランターの土壌や屋上緑化土壌などの園芸や緑化資材、地下浸透材や透水性舗装の下の路盤材、地盤改良に使用するサンドパイル代替え品などの土木資材などである。即ち、従来の礫や砂と同等に使用できるほか、性能的に優れたものになる。
【発明の効果】
【0026】
以上詳述したように、本発明は、来待石(来待錆石)の礫状や砂状の破砕品、或いは粒状成形品を、800℃〜1180℃、より好ましくは1100℃〜1140℃の温度で焼成したものである。
【0027】
従って、
(1)従来、用途がなくて廃棄されていた来待石の端材や研削屑などの加工屑や不良石材を余すところなく有効に利用でき、しかも大量の処理が可能となる。
(2)来待石の加工屑や不良石材を、単に礫状に破砕し或いは成形して焼成するだけであるので、比較的安いコストで大量に処理が可能となる。
(3)鑑賞魚の水槽や小川、池などの水のアンモニア除去に優れた効果を有する生物濾過用の濾材が得られる。
(4)連続多孔性による透水性や保水性、水の浄化能を利用して、汚水や排水の浄化材や濾過材、鉢やプランターの土壌や屋上緑化土壌などの園芸や緑化資材、地下浸透材や透水性舗装の下の路盤材、地盤改良に使用するサンドパイル代替え品などの土木資材などに広く利用できる。
などの効果があり、幾分かの手間とコストを掛けるだけで廃棄物の商品化ができ、来待石関連業界にとってまさに救世主となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
来待石を直径2.60mm〜30mm程度の亜礫状に破砕したものを、素焼きの「さや」に充填して電気窯に入れ、焼成温度1120℃で焼成して、来待石製の焼成礫材を得る。
【実施例1】
【0029】
(濾過材の製造1)
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の来待石製濾材1を示す。この濾材1は、来待石の旋盤屑をロサンゼルスすりへり試験機で角部や各面を研磨して5mm〜3cm程度にした亜角礫2を、以下の条件で焼成したもので、濾材1には連続した微細孔3が多数存在している。
【0030】
焼成は、図4に示す電気窯4(1m×1m×1m)に、亜角礫2を充填した直径35cm×高さ20cmの素焼き製さや5を三段詰めにして行った。焼成条件は、図5に従った。尚、図4中、符号41は断熱材、42はヒーター、43は蓋、44は通気孔である。
【0031】
焼成は、焼成来待石の強度が大きい1100℃、1120℃、1140℃の温度で3回行った。その結果得られた濾材1の吸水率は、図6に示すように1100℃で約11%、1120℃で約8.5%、1140℃で約6%であった(60分浸漬)。それぞれのバラツキは、素焼き製さや5の位置や焼成条件により生じたものである。この吸水率は略空隙率と等しいと見て差し支えない。亜角礫2(未焼成)の吸水率は約4%である。尚、特許文献1の場合の吸水率は、原石が2.59%、800℃焼成が3.17%、1120℃焼成が10.68%、1150℃焼成が10.84%であったが、両者は焼成条件(パターン)や来待石原石が異なったためと思われる。
【実施例2】
【0032】
(浄化能試験1−淡水)
実施例1で得られた来待石製濾材1と、市販の麦飯石、セラミック(エーハイメック)のアンモニア処理能力の比較実験を行った。
(1)測定条件
水槽(テトラPL−17:170mm×170mm×170mm)に精製水4.5Lを入れ、各濾材0.8Kgを用いて水槽をセットし、バブリングと水の循環を行った。その後、金魚6匹(大きさ3cm)を投入し、pHとアンモニア濃度を測定した。pHは、東亜ディーケーケーのpHメーターHM−20P、アンモニアはテトラテストNH3 /NH4 + で測定した。
(2)測定結果
pH測定値の変化を図7に、NH3 測定値の変化を図8に示す。尚、水槽セットは2003年の7月15日、7月23日に金魚投入、7月31日に金魚移動、8月18日に精製水の追加と濾過バクテリア(ウエストコントロール)の投入を行った。その結果を、表2に示す。

【表2】

【0033】
表2から、来待石製濾材1は麦飯石やセラミックに比べてpH変動が小さくて安定しており、また、アンモニア濃度の低下が早く、来待石製濾材が生物濾過を行うバクテリアの繁殖に適しているということができる。
【0034】
尚、同様の試験を、ウ−ル濾材、濾材無しについても行ったが、ウ−ル濾材の水槽の金魚は7月24日(金魚投入の翌日)、濾材無しの水槽の金魚は7月25日(同翌々日)にそれぞれ死滅した。また、セラミック濾材の水槽の金魚も7月26日(同3日後)に死滅した。
【実施例3】
【0035】
(浄化能試験2−海水)
実施例1で得られた来待石製濾材1と、市販の珊瑚砂のアンモニア処理能力の比較実験を行った。
(1)測定条件1
60cmガラス水槽(60×30×36cm)に人工海水(シーライフ:株マリンテック製)60L、濾過槽(レイシ−RF−60)に各濾材5.6Lを入れてセットし、バブリングと水の循環及び加温(200Wヒータ)、照明(ニッソー2灯ライト)を行った。その後、鑑賞魚(デバスズメダイ及びコバルト)を投入し、アンモニア濃度、亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度及びpHを測定した。測定に用いた試薬は、いずれもアクアマリンプロ「PRO」である。試験期間は、平成15年10月28日〜平成16年1月29日である。
【0036】
(2)測定条件2
来待石製濾材の場合のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度を図9に、珊瑚砂の場合のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度、硝酸塩濃度を図10にそれぞれ示す。尚、pHは全期間通じて、来待石製濾材の場合7.9〜8.1、珊瑚砂の場合の7.7〜8.2の範囲に納まっていた。図9及び図10において、(1):10/28 に水槽セット後デバスズメダイ24匹投入、(2):11/05 にデバスズメダイ全滅、(3):11/21 にデバスズメダイ20匹投入、(4):12/01 にデバスズメダイ全滅、(5):12/05 に水替え25L、(6):コバルト10匹投入、(7):12/30 に水替え25L、(8):珊瑚砂の場合コバルト全滅、来待石製濾材の場合1匹生存、(9):来待石製濾材のみ、01/29 に水替え50L、コバルト19匹投入。02/25 現在、コバルト19匹とも生存している。
【0037】
(3)測定結果
来待石を濾材に使った水槽(図9)では、9日目にアンモニアの最大値を達成し12日目からアンモニアの濃度が下降しはじめた。珊瑚砂の方(図10)では、12日目まで濃度が上昇し15日目から濃度が下降しはじめた。アンモニアの上昇から下降にいたっては来待石の方が若干早いようである。また亜硝酸から硝酸塩への移行は23日目に来待石が亜硝酸10、硝酸塩40に対してサンゴ砂の方は亜硝酸25、硝酸塩25と明らかに異なるデーターがでた。このことからも亜硝酸を硝酸塩にする細菌の付着率がサンゴ砂より高いと言える。また、pHの変動は来待石製濾材の方が小さかった。
一方、水槽のガラス面やヒーターには必ず苔が付着し、視覚上も生育上も好ましくない結果を与える。珊瑚砂濾材の場合苔(茶苔)の付着がかなり見られたが、来待石製濾材の場合、付着は殆ど見られなかった。また、海水の色は、来待石製濾材の方が黄ばみがすくなく、透明度も高かった。
【実施例4】
【0038】
(濾材の製造2)
図3に示す粒径加積曲線を示す来待石粉体と水(タイプ1、2)、及び種材(タイプ3、4)を表3の割合で用い、コンクリートミキサーを用いて成形した。タイプ1以外は、ベントナイトを5%加えた泥水を使用した。製造時間は10〜15分程度であった。タイプ3と4は、カーボンで黒く着色されていた。表2の焼成温度でそれぞれ焼成したところ、図2(a)に示すように来待石製の成形焼成礫材10が得られた。符号11は種材の燃焼跡、符号3は微細孔である。また、図2(b)は成形品を押圧して焼成した偏平状成形焼成礫材12である。これらの成形焼成礫材は、それぞれ元の来待石よりも大きな吸水率を示した。この吸水率がほぼ微細孔の割合となる。そして、ここに微生物が住み着き、水の浄化を行う。

【表3】

【実施例5】
【0039】
(緑化資材としての使用)
図11は、実施例4で得られた来待石製の成形焼成礫材10を透明なガラス製鉢13に入れ、ポトス(観葉植物)14を植えた状態を示す。成形焼成礫材10は、水を吸うと色が濃くなり、緑色のポトス14が映えて見える。そして、成形焼成礫材10は鹿沼土よりも保水性がよく、観葉植物14は順調に生育している。ただ、成形焼成礫材10は水がアルカリ性になるので、リュウノヒゲなど酸性を好む植物は枯れたり成長がストップする。ポトスの他、ユキノシタ、パキュラ、黒松、苔等、或いは紫欄や風欄、せっこく、コチョウランなどのラン類、その他アルカリ性を好む植物に最適なものである。また無菌土壌であるので、砂状の破砕品を焼成したものや成形焼成礫材をふるい分けした砂やシルト分は、ベランダ菜園など栽培用土壌に打って付けのものである。
【0040】
また、図示は省略するが、その透水性を利用して、透水性舗装の路盤材に使用したり、その浄化能特にアンモニアに対する浄化能を利用して農村集落排水などの浄化に使用したりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
業界で処理や保管に頭を悩ましている来待石の加工屑や不良石材を、破砕焼成することによって優れた生物濾過(硝化)能力を有する濾材等とすることにより、来待石の加工屑や不良石材を全部余すところなく、且つ、大量に処理してその有効利用を図る。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の来待石製焼成礫材を示す拡大斜視図である。(実施例1)
【図2】(a)、(b)とも、本発明の来待石製成形焼成礫材を示す拡大斜視図である。(実施例4)
【図3】本発明に使用した来待石粉体の粒径加積曲線を示すグラフである。(実施例4)
【図4】電気窯の一例を示す断面図である。(実施例1)
【図5】焼成温度パターンの一例を示すグラフである(実施例1)
【図6】来待石製濾材の吸水率と焼成温度との関係を示すグラフである。(実施例1)
【図7】淡水におけるpH測定値の変化を示すグラフである。(実施例2)
【図8】淡水におけるNH3 測定値の変化を示すグラフである。(実施例2)
【図9】来待石製濾材を海水に用いた場合のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度及び硝酸塩濃度と日付の関係を示すグラフである。(実施例3)
【図10】珊瑚砂濾材を海水に用いた場合のアンモニア濃度、亜硝酸塩濃度及び硝酸塩濃度と日付の関係を示すグラフである。(実施例3)
【図11】本発明の成形焼成礫材を鉢植えの土壌に使用した状態の正面図である。(実施例5)
【符号の説明】
【0043】
1 来待石製濾材
2 亜角礫
3 微細孔
4 電気窯
41 断熱材
42 ヒーター
43 蓋
44 通気孔
5 さや
10 成形焼成礫材
11 種材の燃焼跡
12 成形焼成礫材
13 ガラス製鉢
14 観葉植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来待石の礫或いは砂状破砕品を、800℃〜1180℃の温度で焼成したことを特徴とする来待石製の焼成礫材。
【請求項2】
来待石粉体に水を加えて粒状に成形したものを、800℃〜1180℃の温度で焼成したことを特徴とする来待石製の成形焼成礫材。
【請求項3】
来待石粉体に水を加え、籾殻や木材チップ、岩石粒などの種材を核として成形した粒状体を、800℃〜1180℃の温度で焼成したことを特徴とする来待石製の成形焼成礫材。
【請求項4】
来待石粉体に、下水汚泥や建設汚泥或いはベントナイト水を加て成形するものである、請求項2又は請求項3記載の来待石製の成形焼成礫材。
【請求項5】
焼成温度が1100℃〜1140℃である、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の来待石製の成形焼成礫材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−28006(P2006−28006A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179161(P2005−179161)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(501229849)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】