説明

杭打工法

【課題】埋め込み杭を建て込むための孔をN値の大きな地盤まで掘削することなく必要な先端支持力を得ることのできる杭打工法を提供する。
【解決手段】オーガ25で地面を所定の深さまで掘削して孔50を形成する削孔工程と、孔50にセメントミルク51を流し込む注入工程と、セメントミルク51の流し込まれた孔50に杭10を挿入する杭挿入工程と、杭10の地上端にスプリングハンマ26を設置する設置工程と、セメントミルク51が流動性を有する状態のときに、モンケン27を所定の高さからスプリングハンマ26に落下させて杭10に載荷重を加えると同時に杭10の先端支持力を計測する載荷・計測工程とを備え、計測された杭10の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで載荷・計測工程を繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭打工法に関し、特に埋め込み杭の先端支持力に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば埋立地や盛り土した軟弱地盤の土地に建造物を建てる場合には、コンクリート基礎の形状に沿って所定の間隔で地中に杭を建て込む作業を行なってからコンクリート基礎を施工している。
【0003】
ここで、杭打工法の一つとして、コンクリート杭や鋼杭を地中にハンマで打設する打撃工法が知られている。この打撃工法は、打設時に振動や騒音が発生するために近隣に建物があるところでは施工できず、杭重量も重いために運搬に手間がかかる。
【0004】
杭打工法のもう一つとして、オーガ先行セメントミルク根固め工法(根固め工法)が知られている。この根固め工法は、先ずオーガによりスクリューで地中に孔を掘削してからセメントミルクを注入した後、その孔に杭を挿入するものである。
【0005】
根固め工法は、無振動・無騒音で施工ができるために前述した打撃工法における問題がなくなるのみならず、既設構造物に接近して施工ができる、地層の適合範囲が広い、組立・解体が簡便なために機動性・経済性に優れている、段差地や急傾斜でも施工できる、オーガ先端よりセメントミルクを吐出し地盤を復元することができる、など他の様々なメリットを有している。
【0006】
なお、オーガ先行セメントミルク根固め工法としては、例えば特開2005−282149号公報に記載の技術が知られている。
【0007】
ここで、地中に建て込まれた杭には、建造物を支持して不同沈下等を防止するために、所定の支持力が要求される。支持力は、底盤面の真下の土によって支えられる先端支持力と、杭周面で地盤の摩擦力および粘着力によって支えられる周面摩擦力との2つに分けることができる。先端支持力については、事前に行う地盤調査で得られるN値と杭先端面積と所定の支持力係数(工法に応じて規定された係数)とを乗じた値で評価している。そして、現場において、杭の載荷試験を行って実際の支持力を求め、これが要求値を満たしているかを検証することは稀である。
【0008】
なお、N値とは、63.5kgのハンマ(おもり)を75cmの高さから自由落下させて、サンプラを土中に30cm貫入させるのに要する打撃回数であり、一般に1m毎に測定される。
【0009】
さて、根固め工法などによる埋め込み杭では、オーガによりスクリューで掘削した孔に杭を挿入しているために、地中に杭を打設する打撃工法などによる打ち込み杭のように底盤面の真下の土が押し固められないので、前述した支持力係数は打撃工法よりも小さな値(例えば打撃工法などの打ち込み杭では300であるのに対して、根固め工法などの埋め込み杭では150)に設定される。
【0010】
そのため、従来において、根固め工法において必要な先端支持力を得るためには、使用する杭によりその先端面積が決まれば、あとはN値を大きくするしかなかった。つまり、地中のより深い強固な地盤まで達する孔をオーガで掘削するしかなかった。
【特許文献1】特開2005−282149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の技術では、N値の大きな強固な地盤まで掘削するために、掘削そのもののコストが嵩むのみならず、掘削に伴う土砂や泥水が大量に発生してその処理をするためのコストも嵩む。
【0012】
また、孔の深さが深くなり、この孔に杭を挿入することになるので、杭の長さが長くなって杭自体のコストおよび杭の取り扱い(運搬等)に要するコストも高くなる。
【0013】
そこで、本発明は、埋め込み杭を建て込むための孔をN値の大きな地盤まで掘削することなく必要な先端支持力を得ることのできる杭打工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の杭打工法は、削孔手段で地面を所定の深さまで掘削して孔を形成する削孔工程と、孔に杭を挿入する杭挿入工程と、杭の地上端にスプリングハンマを設置する設置工程と、載荷物を所定の高さからスプリングハンマに落下させて杭に載荷重を加えると同時に当該杭の先端支持力を計測する載荷・計測工程とを備え、計測された杭の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで載荷・計測工程を繰り返し実行することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の杭打工法は、削孔手段で地面を所定の深さまで掘削して孔を形成する削孔工程と、孔に硬化材を流し込む注入工程と、硬化材の流し込まれた孔に杭を挿入する杭挿入工程と、杭の地上端にスプリングハンマを設置する設置工程と、硬化材が流動性を有する状態のときに、載荷物を所定の高さからスプリングハンマに落下させて杭に載荷重を加えると同時に当該杭の先端支持力を計測する載荷・計測工程とを備え、計測された杭の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで載荷・計測工程を繰り返し実行することを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい形態において、載荷・計測工程の実行に先立って、スプリングハンマにおける載荷物の落下部分に、当該載荷物による落下衝撃を緩和する緩衝材を敷設することを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに好ましい形態において、杭は、H形鋼からなる杭本体と、杭本体の一方端に取り付けられて杭本体の断面を包絡する鋼板とを備え、杭挿入工程では、鋼板の取り付けられた端部が地中端となるようにして杭を孔に挿入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、杭に鉛直方向から載荷重を加えることにより杭の地中端に位置する地盤が押し固められるので、杭の先端支持力が増加する。そして、このような先端支持力を増加させる作業と先端支持力を計測する作業とを同時に行いながら、目的の先端支持力となるまで杭に載荷重を加えている。これにより、埋め込み杭を建て込むための孔をN値の大きな地盤まで掘削しなくても、必要な先端支持力を得ることが可能になり、且つ、杭打作業と同時に先端支持力が計測されるため、より安全な杭の提供が可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、N値の大きな強固な深い地盤まで掘削する必要がなくなるために、掘削コストや掘削に伴う土砂や泥水の処理コストを抑制することが可能になる。
【0021】
さらに、本発明によれば、杭を建て込むための孔の深さが浅くてよいので、孔に挿入される杭の長さも短くてすみ、杭自体のコストおよび杭の取り扱いコストを抑制することが可能になる。
【0022】
載荷・計測工程の実行に先立って、スプリングハンマにおける載荷物の落下部分に、当該載荷物による落下衝撃を緩和する緩衝材を敷設することにより、載荷物がスプリングハンマに落下した時の打撃音が大幅に小さくなり、また、周辺地盤に与える振動も最低限まで収めることができるので、騒音や振動に伴う作業の制約が緩和される。
【0023】
H形鋼の杭本体の一方端に杭本体の断面を包絡する鋼板を備えた杭を用い、杭挿入工程では、鋼板の取り付けられた端部が地中端となるようにして杭を孔に挿入することにより、杭の先端支持力を決定する一要素である杭先端面積が拡がるので、より大きな先端支持力を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は本発明の一実施の形態である杭打工法で用いられる杭を示す斜視図、図2は図1の杭を建て込むための杭打装置を示す概略図、図3は図2の杭打装置に取り付けられたスプリングハンマを示す側面図、図4は図3のスプリングハンマの一部を破断してその内部構造を示す断面図、図5は本発明の一実施の形態である杭打工法における杭の先端支持力を計測する計測装置を示す説明図、図6は本発明の一実施の形態である杭打工法による杭打のプロセスを順を追って示す説明図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態の杭打工法で用いられる杭10は、径方向の断面がH形を呈するH形鋼からなる杭本体10aと、杭本体10aの一方端に取り付けられて杭本体10aの断面を包絡する鋼板10bとからなる。
【0027】
杭本体10aは、相互に平行に配置された長板状の2枚のフランジ10a−1,10a−1と、長辺部がこれらのフランジ10a−1,10a−1の長手方向中央部において90°の角度を持って接続されて2枚のフランジ10a−1,10a−1を連結する長板状のウエブ10a−2とを有している。また、鋼板10bは、円板状の形状となっており、ウエブ10a−2を挟んだ2カ所には、貫通孔10b−1がドリルにより穿設されている。なお、図1において、一方の貫通孔10b−1はウエブ10a−2に隠れているために、図示されていない。
【0028】
本実施の形態では、以上の構造を有する杭10が、鋼板10bの取り付けられた端部が地中端となるようにして孔に挿入される。なお、詳細は後述する。
【0029】
ここで、本実施の形態では鋼板10bは円板状であるが、杭本体10aの断面を包絡している限り、様々な形状とすることができる。また、鋼板10bの貫通孔10b−1は設けられていなくてもよい。また、鋼板10bそのものについても必須ではなく、鋼板10bの取り付けられていないH形鋼であってもよい。さらに、杭はH形鋼に限定されるものではなく、L形鋼などH形以外の断面形状を有する鋼材、あるいは鋼管など、様々な形状のものを適用することができる。
【0030】
さて、図2に示すように、図1の杭を建て込むための杭打装置である揚重機20は、シャーシ21a上に運転席21bが設けられて自動車としての機能を有し、揚重機20自体を自走可能とする本体部21を備えている。この本体部21の四隅には、ロッド22aが下方に向けて伸縮可能となったアウトリガー22が横方向に伸縮可能に取り付けられている。そして、作業時にはロッド22aを伸張させてタイヤ21cを地面から浮かせ、4本のロッド22aで本体部21を支持することにより、本体部21の姿勢を安定化させている。
【0031】
シャーシ21a上には、任意の角度に傾斜固定可能なクレーン23が設けられている。そして、このクレーン23の上端からは、リーダ24が回転可能に垂下して取り付けられている。
【0032】
リーダ24には、その径方向の相互に対向する位置にガイドレール24a,24bがリーダ24の全高にわたって設けられている。一方のガイドレール24aには、オーガスクリュー25aを備えたオーガ(削孔手段)25が基台29を介して上下動可能に組み付けられている。そして、本体部21の内部に設置したウインチ(図示せず)から繰出されるオーガ吊込みワイヤ(図示せず)を、リーダ24の上端部に設けたワイヤシープ28に掛け渡したうえ下方に延ばして、その末端でオーガ25を鉛直方向に支持している。
【0033】
基台29の内部には、減速機付きのオーガモータ29aが組込まれており、その出力軸に前述したオーガ25が連結されている。オーガ25の内部には、硬化材であるセメントミルクを給送するためのセメントミルク給送路(図示せず)が軸方向に沿って形成されている。セメントミルク給送路の上端は、セメントミルク供給装置から伸びる圧送ホースがホース継手(いずれも図示せず)を介して接続されている。また、セメントミルク給送路の下端は、セメントミルク(硬化材)が吐出される吐出口となっており、掘削が終了してオーガ25を孔から引き上げるときに、これと同時に吐出口からセメントミルクを孔内に充填していくことにより、孔壁の崩落を防止している。
【0034】
他方のガイドレール24bには、下方にスプリングハンマ26が、上方にこのスプリングハンマ26を打撃するモンケン(載荷物)27が、作業時において現地で組み付けられている。
【0035】
スプリングハンマ26は、図3および図4に示すように、上方に向けて開口された円筒状の下部保護カバー26aを備えた下部筐体26bと、下方に向けて開口されて下部保護カバー26aと隙間を持って嵌り合う円筒状の上部保護カバー26cを備えた上部筐体26dとを有している。そして、下部保護カバー26aと上部保護カバー26cとで構成される内部空間には、後述するモンケン27の打撃時における衝撃を吸収する例えば7本のスプリング26fが、上端を上部筐体26dに、下端を下部筐体26bにそれぞれ固定されて設けられている。なお、内部空間には、スプリング26fの作動を減衰させるダンパをさらに設けてもよい。
【0036】
下部筐体26bの側方には、ガイドレール24bに上下動自在に嵌め込まれるレールカバー26eが固定されている。また、下部筐体26bの下方には、モンケン27打撃時の杭頭部の荷重を測定するロードセル30が保護カバー26a,26cと同軸上に配置されて杭10上に位置している。
【0037】
また、上部筐体26dには吊りフック26gが固定されている。作業時には、ワイヤ(図示せず)の先端を吊りフック26gに引っ掛けてクレーン23でスプリングハンマ26を持ち上げ、これを目的の杭10上に載置する。
【0038】
そして、上部筐体26dの上面のモンケン27の落下部分に位置する箇所には、モンケン27のスプリングハンマ26に対する落下衝撃を緩和する、例えば天然ゴム製の緩衝材31が載置されている。なお、緩衝材31の材料としては、天然ゴムに限定されるものではなく、モンケン27の落下衝撃を緩和し得るものであれば、種々のものを適用することができる。また、本発明において、緩衝材31の載置は省略してもよい。
【0039】
なお、モンケン27は、前述のようにスプリングハンマ26の上方に位置するようにしてガイドレール24bに上下動自在(自由落下可能)に嵌め込まれている。そして、このモンケン27も、ワイヤ(図示せず)に引っ掛けてクレーン23で所定の高さ(例えば緩衝材31のから2mの高さ)まで持ち上げ、これを目的の杭10上に載置されたスプリングハンマ26上に落下させる。
【0040】
このように、本実施の形態では、孔に挿入された杭10の地上端にスプリングハンマ26を設置し、モンケン27をスプリングハンマ26に落下させて杭10に載荷重を加えるとともに杭10の先端支持力を計測するのであるが、次に、杭10の先端支持力を計測する計測装置40について、図5を用いて説明する。
【0041】
ここで、杭10の先端支持力を計測する方法としては、静的載荷法、衝撃載荷法、急速載荷法がある。杭10を所定の力で押す静的載荷法は計測所要時間が長い(30分〜2時間を複数サイクル)ことから計測結果を得るまでに時間がかかる。また、杭10に直接載荷重を加える衝撃載荷法は、計測所要時間は短い(5msec)ものの、波動理論による高度な解析が要求されることから、やはり計測結果を得るまでに時間がかかる。
【0042】
急速載荷法の一つであるスタナミックは、ジェット燃料を短時間燃焼させて、重りの加速度を反力として杭に動的な載荷を行うもので、計測所要時間は短く(100msec)、解析時間も短い(数分程度)ことから、直ちに計測結果を得られる。しかしながら、杭に載荷重を与えるためのコストが高く(1回当り数百万円)、したがって複数回にわたって杭に載荷重を与えるとなると、極めて高コストになり経済性が悪化する。
【0043】
これに対して、モンケン27をスプリングハンマ26に落下させる本願の急速載荷法では、スタナミックの利点(計測所要時間および解析時間が短いという利点)はそのまま維持しつつ、モンケン27を落下させることによる載荷であるため、極めて低コスト(本発明者の試算では、1回当り数万円から数十万円)で先端支持力を計測することができる。
【0044】
さて、その計測装置40は、図5において、前述したような杭頭部の荷重を計測するロードセル30と、杭10に取り付けられてモンケン27打撃時の杭10の加速度を計測する加速度計32と、同じく杭10に取り付けられてモンケン27打撃時の杭10の歪み度を計測する歪みゲージ33と、モンケン27打撃時の杭10の変位量を光学的に計測する変位計34と、ロードセル30、加速度計32、歪みゲージ33および変位計34の計測値がインターフェース35を介して入力され、これらの計測値に基づいて杭10の先端支持力を算出するコンピュータ装置36とからなる。
【0045】
なお、杭10の先端支持力は、非線形ダンピング法(修正除荷点法)などの確立された方法により静的な荷重−杭沈下関係を求めることにより、算出することができる。
【0046】
次に、本実施の形態における杭打工法について、図6を用いて説明する。なお、本願の工法は、オーガ25で地中に孔50を掘削してからセメントミルク51を注入した後、その孔50に杭10を挿入するオーガ先行セメントミルク根固め工法であり、この工法により建て込まれる杭10は埋め込み杭となる。
【0047】
まず最初に、削孔工程として、オーガ25で地面を所定の深さまで掘削し、杭10を建て込むための孔50を形成する(図6(a))。このとき、岩質によっては適度の打撃やエアなどを加えながら掘削するのがよい。
【0048】
次に、注入工程として、掘削した孔50にセメントミルク51を流し込む(図6(b))。すなわち、掘削が終了してオーガ25を孔50から引き上げるのと同時にオーガ25先端の吐出口からセメントミルク51を孔内に充填する。これにより、孔壁の崩落が防止され、掘削した孔50全体にセメントミルク51が充填される。なお、自立しない土質の場合には、オーガ25で掘削しながらセメントミルク51を注入することができる。
【0049】
次に、杭挿入工程として、オーガ25を孔位置から除去し、セメントミルク51の流し込まれた孔50に杭10を挿入する(図6(c))。ここで、本実施の形態では、前述のように、H形鋼の杭本体10aの一方端に杭本体10aの断面を包絡する鋼板10bを備えた杭10を用いているので、この杭挿入工程では、鋼板10bの取り付けられた端部が地中端となるようにして杭10を孔50に挿入する。
【0050】
続いて、設置工程として、リーダ24を180°回転させ、杭10の地上端に、前述した要領でスプリングハンマ26を設置する(図6(d))。このとき、杭10とスプリングハンマ26との間にはロードセル30を配置し、杭10には、加速度計32および歪みゲージ33を取り付ける。また、変位計34を所定の位置にセットする。
【0051】
そして、載荷・計測工程として、注入したセメントミルク51が流動性を有する状態のときに(つまり、硬化しないうちに)、載荷物であるモンケン27を所定の高さからスプリングハンマ26に落下させて杭10に載荷重を加え、これと同時に計測装置(図5参照)によって杭10の先端支持力を計測する(図6(e))。なお、前述のように、モンケン27をスプリングハンマ26に落下させる本願の急速載荷法では、計測所要時間および解析時間が短いために、現場において直ちに計測結果である先端支持力が得られる。
【0052】
この載荷・計測工程の実行に先立って、スプリングハンマ26におけるモンケン27の落下部分に、モンケン27による落下衝撃を緩和する緩衝材31を敷設し、打撃音および振動を吸収するようにすることが望ましい。
【0053】
さて、載荷・計測工程で杭10の先端支持力が計測されたならば、計測された杭10の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで載荷・計測工程を繰り返し実行する。
【0054】
すなわち、杭に鉛直方向からモンケン27により載荷重を加えることにより杭10の地中端に位置する地盤が押し固められ、目的とする先端支持力になる。そして、モンケン27で打撃したときの杭10の先端支持力の値は、作業現場において即座に得られる。
【0055】
したがって、杭10の先端支持力を増加させる作業と杭10の先端支持力を計測する作業とを同時に行いながら、目的の先端支持力となるまで杭10に載荷重を加えることができる。これにより、オーガ先行セメントミルク根固め工法による埋め込み杭において、杭10を建て込むための孔50をN値の大きな地盤まで掘削しなくても、必要な先端支持力を得ることが可能になる。
【0056】
なお、本発明者の検証によれば、N値が10〜20程度の砂地盤において本願の杭打工法を用いることにより、目的とする先端支持力を得ることができた。そして、得られた先端支持力から支持力係数を求めると300程度であった。このことにより、本願工法を適用することにより、埋め込み杭でありながら、打ち込み杭と同程度の先端支持力を確認することができた。
【0057】
そして、このようにN値の大きな強固な深い地盤までオーガ25で掘削する必要がなくなるために、掘削コストや掘削に伴う土砂や泥水の処理コストを抑制することが可能になる。
【0058】
さらに、杭10を建て込むための孔50の深さが浅くてよいので、孔50に挿入される杭10の長さも短くてすみ、杭自体のコストおよび杭の取り扱いコストを抑制することが可能になる。
【0059】
なお、本実施の形態のように、載荷・計測工程の実行に先立って、スプリングハンマ26におけるモンケン27の落下部分に緩衝材31を敷設すれば、モンケン27がスプリングハンマ26に落下した時の打撃音が大幅に小さくなり、また、周辺地盤に与える振動も最低限まで収めることができるので、騒音や振動に伴う作業の制約が緩和される。このとき、緩衝材31の厚さが薄いと、騒音や振動は大きくなるもののスプリングハンマ26には大きな荷重がかかるために先端支持力の測定可能範囲が拡大するので、緩衝材31の厚さは作業環境に応じて適宜設定するのがよい。
【0060】
さらに、本実施の形態のように、H形鋼の杭本体10aの一方端に杭本体10aの断面を包絡する鋼板10bを備えた杭10を用い、杭挿入工程で、鋼板10bの取り付けられた端部が地中端となるようにして杭10を孔50に挿入するようにすれば、杭10の先端支持力を決定する一要素である杭先端面積が拡がるので、より大きな先端支持力を得ることが可能になる。
【0061】
なお、鋼板10bには貫通孔10b−1が穿設されているので、杭10をセメントミルク51の注入された孔50に挿入する際に、セメントミルク51が貫通孔10b−1から上部に流れることになる。これにより、鋼板10bで孔50の底面を直接支持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の杭打工法は、オーガ先行セメントミルク根固め工法にのみ限定的に適用されるものではなく、広く埋め込み杭全般に適用可能である。
【0063】
すなわち、セメントミルクなどの硬化材を使用しない場合には、本発明の杭打工法は、オーガなどの削孔手段で地面を所定の深さまで掘削して孔を形成する工程(削孔工程)と、掘削した孔に杭を挿入する工程(杭挿入工程)と、杭の地上端にスプリングハンマを設置する工程(設置工程)と、モンケンなどの載荷物を所定の高さからスプリングハンマに落下させて杭に載荷重を加えると同時にこの杭の先端支持力を計測する工程(載荷・計測工程)とで構成され、計測された杭の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで載荷・計測工程を繰り返し実行することになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態である杭打工法で用いられる杭を示す斜視図である。
【図2】図1の杭を建て込むための杭打装置を示す概略図である。
【図3】図2の杭打装置に取り付けられたスプリングハンマを示す側面図である。
【図4】図3のスプリングハンマの一部を破断してその内部構造を示す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態である杭打工法における杭の先端支持力を計測する計測装置を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態である杭打工法による杭打のプロセスを順を追って示す説明図である。
【符号の説明】
【0065】
10 杭
10a 杭本体
10a−1 フランジ
10a−2 ウエブ
10b 鋼板
10b−1 貫通孔
20 揚重機
21 本体部
21a シャーシ
21b 運転席
21c タイヤ
22 アウトリガー
22a ロッド
23 クレーン
24 リーダ
24a,24b ガイドレール
25 オーガ(削孔手段)
25a オーガスクリュー
26 スプリングハンマ
26a 下部保護カバー
26b 下部筐体
26c 上部保護カバー
26d 上部筐体
26e レールカバー
26f スプリング
26g フック
27 モンケン(載荷物)
28 ワイヤシープ
29 基台
29a オーガモータ
30 ロードセル
31 緩衝材
32 加速度計
33 ゲージ
34 変位計
35 インターフェース
36 コンピュータ装置
40 計測装置
50 孔
51 セメントミルク(硬化材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔手段で地面を所定の深さまで掘削して孔を形成する削孔工程と、
前記孔に杭を挿入する杭挿入工程と、
前記杭の地上端にスプリングハンマを設置する設置工程と、
載荷物を所定の高さから前記スプリングハンマに落下させて前記杭に載荷重を加えると同時に当該杭の先端支持力を計測する載荷・計測工程とを備え、
計測された前記杭の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで前記載荷・計測工程を繰り返し実行する、
ことを特徴とする杭打工法。
【請求項2】
削孔手段で地面を所定の深さまで掘削して孔を形成する削孔工程と、
前記孔に硬化材を流し込む注入工程と、
前記硬化材の流し込まれた前記孔に杭を挿入する杭挿入工程と、
前記杭の地上端にスプリングハンマを設置する設置工程と、
前記硬化材が流動性を有する状態のときに、載荷物を所定の高さから前記スプリングハンマに落下させて前記杭に載荷重を加えると同時に当該杭の先端支持力を計測する載荷・計測工程とを備え、
計測された前記杭の先端支持力が目的とする先端支持力となるまで前記載荷・計測工程を繰り返し実行する、
ことを特徴とする杭打工法。
【請求項3】
前記載荷・計測工程の実行に先立って、前記スプリングハンマにおける前記載荷物の落下部分に、当該載荷物による落下衝撃を緩和する緩衝材を敷設する、
ことを特徴とする請求項1または2記載の杭打工法。
【請求項4】
前記杭は、H形鋼からなる杭本体と、前記杭本体の一方端に取り付けられて前記杭本体の断面を包絡する鋼板とを備え、
前記杭挿入工程では、前記鋼板の取り付けられた端部が地中端となるようにして前記杭を前記孔に挿入する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の杭打工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−239369(P2007−239369A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65577(P2006−65577)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【特許番号】特許第3829990号(P3829990)
【特許公報発行日】平成18年10月4日(2006.10.4)
【出願人】(393022506)丸紅建材リース株式会社 (6)
【Fターム(参考)】