説明

板ガラス検査装置、板ガラス検査方法、板ガラス製造装置、及び板ガラス製造方法

【課題】連続して発生するガラス欠陥の検査において、必要な検査精度を確保したまま検査速度を高め、さらに、装置構成を複雑にせず装置コストを抑えた板ガラス検査装置を提供する。
【解決手段】複数の板ガラスを検査する板ガラス検査装置であって、第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出部110と、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定部120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの検査に用いる板ガラス検査装置、板ガラス検査方法、板ガラス製造装置、及び板ガラス製造方法に関し、特に、連続的に発生する欠陥をより正確に検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型フラットパネルディスプレイの普及は目覚ましく、中でも液晶ディスプレイの生産台数は最も多い。液晶ディスプレイに用いられる液晶用基板ガラスの多くは、オーバーフローダウンドロー法により生産されている。
【0003】
オーバーフローダウンドロー法によれば、研磨を必要とせず、ナノレベルの平滑な表面で成形することができるので高品質な板ガラスを生産することが可能である。ところが、例えばガラス原料の溶解不足、異物の混入、装置の老朽化、及び成形条件の変動等の要因により板ガラスに欠陥が発生することがある。
【0004】
ガラス欠陥には、例えば、異物の混入やガラス原料の溶解不足等に起因する欠陥(ノット、脈理(コードとも言う)、及び泡(シード、ブリスターとも言う)等)と、板ガラスの表面に発生する欠陥(うねり、すじ、オープンポア、凹凸、及び傷等)とがある。特に脈理は、連続して発生する上、発生原因が多様であり対処に時間がかかることが多いので、板ガラス成形後の早い段階でできるだけ正確に検出し、検出結果を成形工程へフィードバックする必要がある。
【0005】
ここで、板ガラスを透過した光線を受光して、脈理等のガラス欠陥を検出する装置が特許文献1〜4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-48745号公報
【特許文献2】特開2010-19834号公報
【特許文献3】特開2008-170429号公報
【特許文献4】特開2004-251878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4に記載の装置は、検査精度、検査速度、及び装置コスト等について、まだ改善、改良の余地がある。
【0008】
例えば特許文献2には、「連なった板ガラス表面の微細な欠陥を確実に検出するために、検査装置を3台併設し、1枚の板ガラスを3台の検査装置を使用して同時に検査することによって、1台毎の検査装置はいずれも簡易な構成であるにもかかわらず、高い検出率と、高速生産性を確保することができた」と記載されている(特許文献2の段落0083)。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の板ガラス欠陥検査装置は、同じ検査装置を併設して1枚の板ガラスを同時に検査しているので、装置構成が複雑化し装置コストが高くなる。
【0010】
単純に検査装置の台数を増やせば、一般的に検査精度と検査速度とを向上させることができる。しかし、検査装置の台数を増やさずに検査精度や検査速度を向上させることができれば大変有用である。
【0011】
本発明は、板ガラスの成形時に複数の板ガラスに連続して発生する脈理のようなガラス欠陥の検査において、装置構成を複雑にせず装置コストを抑え、さらに、検査装置の台数を増やさずに検査精度や検査速度を向上させることができる板ガラス検査装置、板ガラス検査方法、板ガラス製造装置、及び板ガラス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る板ガラス検査装置は、複数の板ガラスを検査する板ガラス検査装置であって、第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出部と、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定部とを備える。
【0013】
ここで板ガラス検査装置において、前記検出部は、撮影部と、演算部とを含み、前記撮影部は、前記第1板ガラス上、及び、前記第2板ガラス上の画像を取り込み、前記演算部は、前記撮影部により取り込まれた画像に基づいて欠陥候補部分を抽出し、前記欠陥候補部分に基づいて、前記欠陥候補範囲が前記欠陥候補部分よりも大きくなるように、前記欠陥候補範囲を設定するとよい。
【0014】
ここで板ガラス検査装置において、前記第1板ガラス及び前記第2板ガラスは、所定の方向に板引きされて成形された板ガラスであり、前記検出部は、前記所定の方向については、前記第1板ガラスの一部分と前記第2板ガラスの一部分とを検査し、前記所定の方向に対して直交する方向については、前記第1板ガラスの全範囲と前記第2板ガラスの全範囲とを検査するとよい。
【0015】
ここで板ガラス検査装置において、前記所定の方向に対して前記直交する方向に前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとを搬送する搬送部と、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとの搬送経路のうちの固定位置の画像を取り込む撮影部とを備えるとよい。
【0016】
ここで板ガラス検査装置において、前記搬送部は、前記板ガラスの移動量に応じたパルスを出力するパルス出力部を含み、前記撮影部は、前記パルスに応じて画像を取り込むとよい。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係る板ガラス検査方法は、複数の板ガラスを検査する板ガラス検査方法であって、第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出ステップと、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定ステップとを含む。
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係る板ガラス製造装置は、複数の板ガラスを製造する板ガラス製造装置であって、第1板ガラスと、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスとを成形する成形部と、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出部と、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定部とを備える。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る板ガラス製造方法は、複数の板ガラスを製造する板ガラス製造方法であって、第1板ガラスと、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスとを成形する成形ステップと、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出ステップと、前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定ステップとを含む。
【発明の効果】
【0020】
課題を解決するための手段に記載した板ガラス検査装置、板ガラス検査方法、板ガラス製造装置、及び板ガラス製造方法の構成により、2枚の板ガラスを検査して、2枚の板ガラスの欠陥候補の位置が、互いに一致するか又は近い場合に、2枚の板ガラスに連続する欠陥であると判定することができる。従って、板ガラスの成形時に複数の板ガラスに連続して発生する脈理のようなガラス欠陥等の検査において、1つずつ個別に板ガラスを検査する場合と比べて、欠陥であるか否かを判定する際の検査精度を高くすることができる。
【0021】
その結果、装置構成を複雑にせず装置コストを抑えることができる。
【0022】
また、検査装置の台数を増やした場合には、従来よりも検査精度と検査速度とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】検査対象の板ガラスの搬送、及び画像の取り込みの概要を模式的に示す図である。
【図2】実施の形態1に係る板ガラス検査装置の概略を示す図である。
【図3】演算部における欠陥候補部分の判定方法を説明するための図である。
【図4】欠陥候補部分と欠陥候補範囲との関係を示す図である。
【図5】検査処理の概要を示すフローチャートである。
【図6】変形例1に係る板ガラス製造装置の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施の形態1]
<概要>
実施の形態1では、板ガラスの成形方向(以下「板引き方向」と記す)に連続して発生するガラス欠陥を検出するための板ガラス検査装置を示す。実施の形態1に係る板ガラス検査装置では、2枚の板ガラスの画像を取り込み、2枚の板ガラスの画像に存在する各欠陥候補の位置が、互いに一致するか又は近い場合に、2枚の板ガラスの欠陥候補をガラス欠陥であると判定する。
【0025】
<構成>
図1は、検査対象の板ガラスの搬送及び画像の取り込みの概要を模式的に示す図である。
【0026】
図1に示すように、成形装置10においてオーバーフローダウンドロー法により連続的に成形される連続板ガラス11が、時間の経過とともに鉛直方向A(図1中の下方向)に引き出されてくる。連続板ガラス11が適度な板に成形されると、切断機12が連続板ガラス11を必要な大きさに切断して板ガラス13を生成する。ここで連続板ガラス11上、及び板ガラス13上に連続して発生する脈理欠陥14は、細かく見ると、少し曲がったり寸断したりしており、複数の欠陥が、近接した領域に存在することがある。
【0027】
続いて搬送装置15が、板ガラス13の上方の一部を保持し、板ガラス13を吊り下げた状態で次の製造工程に向けて搬送する。詳細には、搬送装置15は、板ガラス13の主面に平行、かつ板引き方向に対して直交する方向C(図1中の左方向)へ板ガラス13を搬送する。本実施の形態では、搬送装置15が板ガラス13を搬送する速度は最大2000mm/sec程度まで可能である。
【0028】
また次の製造工程への搬送経路上に撮影ポイント18を設け、板ガラス13の裏側に光源16を設置し、板ガラス13の表側にラインカメラ17を設置している。
【0029】
撮影ポイント18に板ガラス13が搬送されると、光源16が発する光は板ガラス13の撮影ポイント18の部分を照射し、ラインカメラ17が板ガラス13の撮影ポイント18の部分の画像を取り込む。ここでラインカメラ17は、瞬間的には1ライン分の画像を取り込むだけである。
【0030】
そこで板ガラス13が搬送されている最中に、ラインカメラ17が比較的短い間隔で連続的に画像の取り込みを行うことにより、板ガラス13上のカメラ視野19(図1中の斜線部分)内の画像を隙間なく取り込むことができる。
【0031】
本実施の形態では、ラインカメラ17が取り込む1ラインの画素数は2048画素であり、2048画素のうちの設定範囲内の100画素分のデータのみを測定に用いている。なお測定に用いる画素数は使用者により任意に設定可能である。ここで測定に用いる100画素が瞬間的に捉える板ガラス13上の撮影領域は、板引き方向Bに10mm程度の長さがある。ラインカメラ17は、搬送装置15に備えられたパルス出力部(図示せず)から板ガラス13の移動量を表すパルスを受け取り、板ガラス13が0.1mm搬送される度に1ライン分の画像を取り込む。
【0032】
図2は、実施の形態1に係る板ガラス検査装置100の概略を示す図である。
【0033】
板ガラス検査装置100は、主にオーバーフローダウンドロー法により成形される板ガラスの板引き方向に連続して発生する脈理欠陥を検出する。図2に示すように、板ガラス検査装置100は、検出部110及び判定部120を備える。
【0034】
検出部110は、成形された順に板ガラスを検査して、欠陥候補範囲を算出する。検出部110は、搬送部111、撮影部112、及び演算部113を含む。
【0035】
搬送部111は、図1中の搬送装置15に相当する。搬送部111は、サーボモータ等の位置制御が可能な動力源を用いて、板ガラス13の主面に平行、かつ板引き方向に対して直交する方向(図1中の方向C)に、成形された順に板ガラス(図1中の板ガラス13)を搬送する。さらに搬送部111は、板ガラス13の移動量に応じた複数のパルスを出力するパルス出力部114を含む。搬送部111は板ガラスを搬送しながら、動力源が所定量移動する度に移動パルス信号を出力する。ここで移動パルス信号は、本実施の形態では、板ガラスが0.1mm移動する毎に出力されるA相とB相のエンコーダ出力であり、サーボモータのドライバから出力されている。
【0036】
撮影部112は、図1中の光源16とラインカメラ17とに相当する。撮影部112は、2枚の板ガラス上の複数領域のそれぞれの画像を取り込む。以下、撮影部112の詳細を説明する。
【0037】
撮影部112は、パルス出力部114から移動パルス信号を受け取り、移動パルス信号を所定の数だけ受け取る毎に撮影ポイントの画像を取り込む。本実施の形態では板ガラスが0.1mm移動する毎に撮影部112が画像を取り込むので、撮影部112は、パルス出力部114から移動パルス信号を受け取る毎に1ライン分の画像を取り込んでいる。
【0038】
また、搬送部111が板ガラスを保持する位置は一定ではないので、撮影部112は、板ガラスが撮影ポイントに到達する前から撮影を開始し、板ガラスが撮影ポイントを通過した後に撮影を終了する。
【0039】
演算部113は、撮影部112により取り込まれた画像に基づいて欠陥候補部分を抽出し、抽出した欠陥候補部分に基づいて、欠陥候補範囲が欠陥候補領域よりも大きくなるように欠陥候補範囲を設定する。以下、演算部113の詳細を説明する。
【0040】
演算部113は、撮影部112により板ガラスが移動する毎に取り込まれた画像毎に、設定範囲のデータのみを平均して、ガラス幅方向に対応する一次元データを算出する。ここで演算部113は、撮影部112により板ガラスが0.1mm移動する毎に取り込まれた画像データの100画素のみを平均して一次元データを算出する。
【0041】
ここで撮影部112により取り込まれた画像データには、板ガラスが撮影ポイントに無いときに撮影されたガラス範囲外の画像データを含むので、演算部113はガラス幅方向に対応する一次元データからガラス端を検出し、当該一次元データからガラス範囲外に相当する部分を除外して、ガラス範囲に相当する部分のみの一次元データを抽出する。具体的には、演算部113は、ガラス幅方向に対応する一次元データの両端から予め設定した幅分のデータを除外した後、当該一次元データの両端からそれぞれ内側に向かって順番に設定値以下のデータを探し、両端のそれぞれについて設定値以下のデータが最初に見付かった場所をガラス端とする。そして演算部113は、当該一次元データにおいて、一方のガラス端からもう一方のガラス端までの間をガラス範囲と判定する。ここで、演算部113が、予め設定したガラス幅分のデータを除外した理由は、外乱による極端な輝度の低下部分を排除するためである。また演算部113が両端からそれぞれ内側に向かって順番に設定値以下のデータを探した理由は、脈理欠陥は大変大きな輝度を持つことがあるので、脈理欠陥をガラス端と誤判定させないためである。
【0042】
続いて演算部113は、検出したいガラス欠陥の特徴を顕著にするために、必要に応じて輝度補正や強調処理を施し、フーリエ変換やウエーブレット変換等の既存のデータ変換プログラムを用いてガラス範囲に相当する部分のみの一次元データを変換する。板ガラス検査装置100では、データ変換プログラムを10種類用意し、使用するデータ変換プログラム、及び各データ変換プログラム毎のパラメータや設定値を使用者により設定可能にしている。
【0043】
続いて演算部113は欠陥候補範囲を算出する。
【0044】
図3は、演算部113における欠陥候補部分の判定方法を説明するための図である。
【0045】
図3には、データ変換プログラムを用いて変換された一次元データのレベルを示すラインが記載されている。図3では、+側不良閾値21、+側警告閾値22、−側警告閾値23、及び−側不良閾値24の4つの閾値が示されている。ここで4つの閾値は使用者により設定可能である。
【0046】
演算部113は、データ変換プログラムを用いて変換された一次元データが、+側警告閾値22以上、及び−側警告閾値23以下の位置を欠陥候補位置とし、隣接している欠陥候補位置の集まりを欠陥候補部分25とする。
【0047】
続いて演算部113は、以下に説明する所定の規則に従って欠陥候補部分25をガラス幅方向に広げて、判定部120により板ガラスが欠陥であるか否かの判定に用いられる欠陥候補範囲を算出する。
【0048】
なお、検出したい欠陥の曲がりが少ない場合には、欠陥候補部分25をガラス幅方向に広げずにそのまま欠陥候補範囲にしてもよい。
【0049】
図4は、欠陥候補部分と欠陥候補範囲との関係を示す図である。
【0050】
図4には、データ変換プログラムを用いて変換された一次元データのレベルを示すライン32が記載されている。図4に示す一次元データは、所定幅である欠陥検出単位31の幅に区切られる。ここで欠陥検出単位31の幅に区切るとは、ガラス範囲に相当する部分のみの一次元データをガラス中心より両端に向かって所定数ずつに区切って欠陥検出単位31の幅の単位領域に分割することを意味する。なおライン32の下方の直線36は、一次元データと単位領域との対応関係を示している。
【0051】
本実施の形態では、板ガラスの5mm幅分に相当する欠陥検出単位31の幅を定め、ガラス範囲に相当する部分のみの一次元データを一方の端から50個ずつのデータからなる単位領域に区切る。
【0052】
演算部113は、単位領域の1つ1つについて、欠陥候補を1つでも含む単位領域を欠陥候補単位領域とする。図4に示す例では、演算部113が単位領域33と単位領域34とを欠陥候補単位領域として認定する。さらに演算部113は、連続している単位領域33と単位領域34とをまとめて欠陥候補範囲35として認定する。
【0053】
なお、欠陥候補部分が複数ある場合に、それぞれの欠陥候補部分に基づいて算出した欠陥候補範囲が隣り合う場合には、隣り合う2つの欠陥候補範囲をまとめて1つの欠陥候補範囲として取り扱う。
【0054】
続いて演算部113は、欠陥候補範囲35について欠陥候補の欠陥の程度を認定する。詳細には、演算部113は、図4に示すように、欠陥候補範囲35の中に、+側不良閾値21以上、又は−側不良閾値24以下の部分が1つでも存在する場合には不良候補であると認定する。また演算部113は、欠陥候補範囲35の中に、+側不良閾値21以上、又は−側不良閾値24以下の部分が1つもない場合には警告候補であると認定する。
【0055】
なお、本実施の形態では検出部110は、成形された順に板ガラスを検査しているが、成形された順番を管理していれば、複数の板ガラスをどのような順序で検査してもよい。
【0056】
また本実施の形態では、検出部110は、板ガラスの板引き方向(図1中の方向Bに相当)については板ガラスのうちの所定の一部の範囲を、板引き方向に対して直交する方向(図1中の方向Cに相当)については板ガラスの全範囲を検査する。ここで所定の一部の範囲は、後に成形される側(図1中の上側)に近い側に設定した方が、先に成形される側(図1中の下側)に近い側に設定するよりも、望ましい。連続して発生する欠陥が発生した初期の段階において、欠陥が生じた板ガラスを早く発見できる可能性が高くなるためである。
【0057】
引き続き図2を参照して判定部120の詳細を説明する。判定部120は、一の板ガラスの欠陥候補範囲の位置と二の板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較して、比較結果に基づいて、2つの板ガラスに連続して発生する欠陥の有無を判定する。
【0058】
判定部120は、記憶部121、比較部122、及び欠陥認定部123を含む。
【0059】
記憶部121は、演算部113により欠陥候補範囲が検出された場合に、次の板ガラスの検査用に、今回算出された欠陥候補範囲の位置を記憶する。
【0060】
比較部122は、検出部110により今回板ガラスを検査した際に欠陥候補範囲が算出され、かつ直前に成形された検査対象を検査した際に欠陥候補範囲の位置が記憶部121に記憶されている場合に、今回検出された欠陥候補範囲の位置と、記憶されている欠陥候補範囲の位置とを比較する。更に比較部122は、重なる範囲があるか否かを確認し、重なる範囲がある場合に、今回検査した板ガラスと直前に検査した板ガラスとの両方の板ガラスに連続する欠陥があると判定する。
【0061】
欠陥認定部123は、欠陥があると判定された板ガラスの欠陥の程度を認定する。
【0062】
欠陥候補範囲には、演算部113により不良候補であるか、警告候補であるかといった欠陥候補の欠陥の程度が認定されている。そこで、欠陥認定部123は、重なる範囲があるとされた欠陥候補範囲が不良候補に認定されている場合には、対応する板ガラスの欠陥の程度を不良品であると認定する。一方、欠陥認定部123は、重なる範囲があるとされた欠陥候補範囲が警告候補に認定されている場合には、対応する板ガラスの欠陥の程度を警告品であると認定する。なお、欠陥認定部123は、単一の板ガラスにおいて不良品であるとの認定と警告品であるとの認定が重複する場合には不良品であると認定する。また、欠陥認定部123は、不良品であるとの認定と警告品であるとの認定とのいずれも受けない板ガラスを良品であると認定する。
【0063】
比較部122による比較結果や、欠陥認定部123による認定結果は、例えば板ガラスの成形現場や抜き取り検査工程に向けて出力されて利用される。
【0064】
なお、本実施の形態では判定部120は、成形された順に板ガラスの判定を行っているが、成形された順番を管理していればどのような順番で判定してもよい。
【0065】
また、板ガラス検査装置100は、不良品が後の生産工程に投入されないように、欠陥認定部123により不良品であるとの認定された板ガラスを排除する装置を備えてもよい。
【0066】
<制御方法>
図5は,検査処理の概要を示すフローチャートである。以下に図1、図2及び図5を用いて、検査処理の概要を説明する。
【0067】
(1)撮影部112が、画像取り込み位置(図1の撮影ポイント18に相当)よりも所定距離だけ前の位置に板ガラスが搬送されるまで待つ(ステップS1)。
【0068】
(2)撮影部112が、パルス出力部114から出力される移動パルス信号の入力を待つ(ステップS2)。
【0069】
(3)撮影部112が、1ライン分の画像を取り込む(ステップS3)。
【0070】
(4)画像取り込み位置よりも所定距離だけ後の位置に板ガラスが搬送されるまで画像の取り込みを継続する(ステップS4)。
【0071】
(5)画像の取り込みが終了すると(ステップS4:NO)、演算部113が、設定範囲のデータのみを平均して一次元データを算出する(ステップS5)。
【0072】
(6)演算部113が、ステップS5で算出した一次元データからガラス端を検出し、ガラス範囲外に相当する部分を除外して、ガラス範囲に相当する部分のみの一次元データを抽出する(ステップS6)。
【0073】
(7)演算部113がデータ変換プログラムを用いて一次元データを変換する(ステップS7)。
【0074】
(8)演算部113が所定の規則に従って欠陥候補範囲を算出する(ステップS8)。
【0075】
(9)演算部113が欠陥候補範囲の欠陥の程度を認定する(ステップS9)。
【0076】
(10)比較部122が今回板ガラスを検査した際に欠陥候補範囲が算出されたか否かを判断する(ステップS10)。欠陥候補範囲が算出されていない場合には(ステップS10:NO)、次の板ガラスを検査するためにステップS1戻る。
【0077】
(11)欠陥候補範囲が算出された場合には(ステップS10:YES)、記憶部121が、次の板ガラスの検査用に、今回算出された板ガラスの欠陥候補範囲の位置を記憶する(ステップS11)。
【0078】
(12)比較部122が、記憶部121に直前に成形された検査対象を検査した際に欠陥候補範囲の位置が記憶されているか否かを判断する(ステップS12)。記憶されていない場合には(ステップS12:NO)、次の板ガラスを検査するためにステップS1に戻る。
【0079】
(13)記憶されている場合には(ステップS12:YES)、比較部122が、今回検出された欠陥候補範囲の位置と、記憶されている欠陥候補範囲の位置とを比較し、重なる範囲があるか否かを確認する(ステップS13)。重なる範囲がない場合には(ステップS13:NO)、次の板ガラスを検査するためにステップS1戻る。
【0080】
(14)重なる範囲がある場合には(ステップS13:YES)、比較部122が、今回検査した板ガラスと直前に検査した板ガラスとの両方の板ガラスに欠陥があると判定する。また欠陥認定部123が、欠陥があると判定された板ガラスの欠陥の程度を認定する(ステップS14)。
[変形例1]
<概要>
変形例1では、実施の形態1に係る板ガラス検査装置を備える板ガラス製造装置を示す。
【0081】
<構成>
図6は、変形例1に係る板ガラス製造装置200の概略を示す図である。
【0082】
板ガラス製造装置200は、実施の形態1に係る板ガラス検査装置100、及び成形部201を備える。
【0083】
なお、変形例1に係る板ガラス製造装置200において、実施の形態1の板ガラス検査装置100と同様の構成には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0084】
成形部201は、実施の形態1の図1に示す成形装置10と同様である。
【0085】
<まとめ>
以上のように、実施の形態1に係る板ガラス検査装置、及び変形例1に係る板ガラス製造装置によれば、順に成形された2つの板ガラスの画像を取り込み、2つの板ガラスの画像に存在する各欠陥候補の位置が、互いに一致するか又は近い場合に、2つの板ガラスの欠陥候補をガラス欠陥であると判定することができる。従って、板ガラスの成形時に複数の板ガラスに連続して発生する脈理のようなガラス欠陥等の検査において、1つずつ個別に検査対象を検査する場合と比べて、欠陥であるか否かを判定する際の検査精度を高くすることができる。
【0086】
また、検査装置の台数を増やした場合には、従来よりも検査精度と検査速度とを向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、板ガラスの成形時に複数の板ガラスに連続して発生する脈理のようなガラス欠陥等の検査に適用することができる。
【0088】
本発明によれば、装置構成を複雑にせずに欠陥であるか否かを判定する際の検査精度を高くすることができるので、産業的利用価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0089】
10 成形装置
11 連続板ガラス
12 切断機
13 板ガラス
14 脈理欠陥
15 搬送装置
16 光源
17 ラインカメラ
18 撮影ポイント
19 カメラ視野
100 板ガラス検査装置
110 検出部
111 搬送部
112 撮影部
113 演算部
114 パルス出力部
120 判定部
121 記憶部
122 比較部
123 欠陥認定部
200 板ガラス製造装置
201 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板ガラスを検査する板ガラス検査装置であって、
第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出部と、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定部と
を備える板ガラス検査装置。
【請求項2】
前記検出部は、撮影部と、演算部とを含み、
前記撮影部は、
前記第1板ガラス上、及び、前記第2板ガラス上の画像を取り込み、
前記演算部は、
前記撮影部により取り込まれた画像に基づいて欠陥候補部分を抽出し、前記欠陥候補部分に基づいて、前記欠陥候補範囲が前記欠陥候補部分よりも大きくなるように、前記欠陥候補範囲を設定する、請求項1に記載の板ガラス検査装置。
【請求項3】
前記第1板ガラス及び前記第2板ガラスは、所定の方向に板引きされて成形された板ガラスであり、
前記検出部は、
前記所定の方向については、前記第1板ガラスの一部分と前記第2板ガラスの一部分とを検査し、
前記所定の方向に対して直交する方向については、前記第1板ガラスの全範囲と前記第2板ガラスの全範囲とを検査する、請求項1又は請求項2に記載の板ガラス検査装置。
【請求項4】
前記所定の方向に対して前記直交する方向に前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとを搬送する搬送部と、
前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとの搬送経路のうちの固定位置の画像を取り込む撮影部と
を備える請求項3に記載の板ガラス検査装置。
【請求項5】
前記搬送部は、前記板ガラスの移動量に応じたパルスを出力するパルス出力部を含み、
前記撮影部は、前記パルスに応じて画像を取り込む、請求項4に記載の板ガラス検査装置。
【請求項6】
複数の板ガラスを検査する板ガラス検査方法であって、
第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出ステップと、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定ステップと
を含む板ガラス検査方法。
【請求項7】
複数の板ガラスを製造する板ガラス製造装置であって、
第1板ガラスと、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスとを成形する成形部と、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出部と、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定部と
を備える板ガラス製造装置。
【請求項8】
複数の板ガラスを製造する板ガラス製造方法であって、
第1板ガラスと、前記第1板ガラスとは異なる第2板ガラスとを成形する成形ステップと、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲とを検出する検出ステップと、
前記第1板ガラスの欠陥候補範囲の位置と、前記第2板ガラスの欠陥候補範囲の位置とを比較し、前記比較の結果に基づいて、前記第1板ガラスと前記第2板ガラスとに連続する欠陥の有無を判定する判定ステップと
を含む板ガラス製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−64615(P2013−64615A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202283(P2011−202283)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】