説明

板ガラス検査

規則ECE R43に従って実施したフラグメンテーション検査後に、単独の強化ガラスプライのフラグメンテーションパターンを精査する方法を開示する。この方法は、透明な支持手段の第1側面の側に位置する細条状光源を用いて、光透過中の強化ガラスプライの第1部分を照明して透過させるステップを有する。強化ガラスプライの第1部分の画像を、透明な支持手段の第2側面の側に位置し、細条状光源に整列しかつこの細条状光源対する相対的な位置に固定した撮像装置によって取得する。一連の強化ガラスの画像を収集および分析し、フラグメンテーションパターンの画像を生成する。このようなイメージングを行う装置についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板ガラスを検査するための装置、とくに板ガラスに光を透過させ、透過量変動を検出するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フロートガラスプロセスにより高品質な平坦ガラスを製造するが、その後の処理によりガラスに欠陥を生じることがある。これら欠陥は板ガラスの光学的品質に影響し、とくに自動車用板ガラスにおいて問題となるため、このような板ガラスを、完成した板ガラス製品の光学的品質に影響を与えうる様々な欠陥がないか製造中に検査する。例えば、ガラスには、不純物や欠陥点、例えば硫化ニッケル含有物または泡がある。あるいは、ガラスには、加工処理中に紛れ込む欠陥があり、例えば、ガラスをサイズに合わせて切断するために施される切断工程及び研磨工程に由来する端縁欠陥、ブリランタチュラ(brillantatura)およびシャイナ(shiners)、そしてガラスを整形するために施される焼成工程及び曲げ工程に由来する、歪み、厚さおよび湾曲の変動がある。
【0003】
さらに、光学的検査方法を使用して、板ガラスが様々な安全基準を満たすどうかを決定することができる。フロントガラス(風防ガラス)およびバックライトを作るために用いるガラスの場合には、ガラスを通して物を見るときには二重像または二次像が見られる。この作用は、フロントガラスの形状および製造中に起こり得る整形エラーによる、ガラスにおける厚さ変動に起因する。規則ECEのR43に基づいて、一次像と二次像の間における角度を所定限度以下に抑えられなければならず、板ガラスを様々な光学的検査方法により試験する。
【0004】
板ガラスが光学的基準を満たすか否かを決定するために光学的検査方法を用いるのと同様に、このような方法を使用して板ガラスの衝撃耐性基準を満たすか否かを決定するのに役立てることもできる。
【0005】
規則ECEのR43(ヨーロッパにおける自動車用板ガラスの関連安全基準)の下では、この規則仕様の均一に強化したガラスペインに対して、フラグメンテーション試験に合格できる程度にまで強化しなければならず、あらゆる5cm×5cm四方におけるフラグメント(断片)の数が40〜400の範囲内でなければならない、とくに厚さ3.5mm以下の板ガラスの場合、多くとも450を越えてはならないとされている。試験領域のフラグメントの数、最大フラグメントの面積及び最長フラグメントの長さを測定するために、衝撃試験を実施する前に単独のガラスプライを感光紙シート上に配置する。ガラスが破壊した後、感光紙を露光し、生じたフラグメント(断片)の青焼き(ブループリント)画像を生ずる。つぎに、選択した領域におけるフラグメントの数、形状及び大きさを解明する。この試験は、オペレータが目視でフラグメントをカウントし、また測定する、またはフォード・モータ社が1997年9月13〜15日のGlass Processing Daysにおいて開示したような自動化システムを用いることによって、行うことができる。しかし、いずれのブループリント方法も時間がかかり、したがって、オフライン試験にしか実用性がない。
【0006】
試験データを画像化しまた処理する他の方法としては、特許文献1(米国公開特許6,766,046号)に記載のものがある。光源は、透明なガイドシート上に保持した紙スクリーンに支持したガラスプライの上方に配置する。ラインセンサを有するカメラをスクリーンの下側に配置し、光源によりスクリーン上に投影されたフラグメントの画像を検出する。ガラスプライの全体領域を確実に走査するため、ガラスまたはカメラのいずれかを移動する。光源は、集光レンズに組み合わせた点光源、または光源アレイとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国公開特許6,766,046号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データ収集および画像処理の自動化は、ガラスプライがフラグメンテーション試験に合格したか否かを決定するのに必要な時間を短縮する。しかしながら、スクリーン使用(この場合、カメラがガラスからの直接画像よりも、スクリーン画像を記録する)は、低光透過率ガラスを試験するときに困難を生ずる。米国公開特許6,766,046号では、低光透過率ガラスの問題は、ガラスの光透過率を決定する光センサを使用して、スクリーン上の画像を記録するカメラに必要な露光時間を適宜調整できるようにすることによって克服する。しかし、このことは、低光透過率ガラスに対して、データ取得に必要な時間が増すことになる。自動化システムを製造現場に適合可能とするためには、画像取得を理想的には3分以内の時間で完了する必要がある。
【0009】
したがって、高光透過率ガラスおよび低光透過率ガラスの双方に対して規則ECEのR43に基づくフラグメンテーション試験の検査および測定を、短い時間枠で行うことを可能にする光学的検査システムが必要性とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、単独の強化ガラスプライの規則ECER43に基づくフラグメンテーション試験後に、フラグメンテーションパターンを検査する方法を提供することによってこれらの問題に対処することを意図し、本発明方法は、平坦で透明な支持手段に接触するようガラスプライを位置決めするステップと、透明な支持手段の第1側面の側に位置する細条状の光源を用いて、ガラスプライの第1部分を照明して透過させるステップと、透明な支持手段の第2側面の側に配置し、細条状の光源に整列させ、かつこの細条状の光源に対する相対位置に固定した撮像装置を用いて、前記ガラスプライの第1部分の画像を取得するステップと、ガラスプライの長さに沿って細条状の光源および撮像装置を一緒に移動させ、前記ガラスプライの少なくとも第2部分から画像を取得するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
撮像装置および光源を固定した相対位置関係に配置し、またスクリーンを使用することなくガラスを直接画像化することにより、低光透過性ガラスであってもフラグメンテーションパターンの高解像度の画像を得ることができる。
【0012】
好適には、ガラスプライ全体に渡ってフラグメンテーションパターンを決定するために十分多くの画像を取得する。
好適には、撮像装置をライン走査カメラとする。
【0013】
好適には、細条状の光源は、蛍光管、またはLEDもしくは白熱球の直線的アレイのうち一方とする。
【0014】
好適には、光源および撮像装置の移動を、縦列状態で行うものとする。
【0015】
好適には、光源および撮像装置の移動を連続的に行い、ガラスプライの第1部分及び少なくとも第2部分の画像を順次に撮像する。
【0016】
本発明は、規則ECE R43に基づいて行われるフラグメンテーション試験後に、強化ガラスプライのフラグメンテーションパターンを検査するよう構成した光学的検査装置をも提供し、本発明装置は、ガラスプライを支持する平坦な透明な支持手段を有する支持フレームと、透明な支持手段の第1側面の側に位置する細条状の光源と、透明な支持手段の第2側面の側に位置し、細条状の光源に対して整列するとともに、この細条状の光源に対して相対位置が固定した撮像装置と、およびガラスプライの長さに沿って細条状の光源および撮像装置を一緒に移動させるよう、支持フレームに取り付けた駆動手段と、を有する。
【0017】
好適には、撮像装置をライン走査カメラとする。
【0018】
好適には、細条状の光源は、蛍光管、またはLEDもしくは白熱球の直線的アレイのうち一方とする。
【0019】
好適には、3mm〜8mmの厚さを有する、画像化されるガラスの光透過率を、CIE標準イルミナントAを用いた測定で、10%〜90%の範囲、より好適には10%〜40%の範囲における光透過率。
【0020】
本発明を、以下に単に例示としてのみ実施形態を、添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】フラグメンテーションパターンの画像である。
【図2】本発明によるフラグメンテーションパターン画像化装置の線図的断面図である。
【図3】図2の装置の線図的正面図である。
【図4】図1の装置の線図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
限られた時間的スケール内で低光透過性ガラスに対するフラグメンテーションパターンを画像化することに伴う困難を解決するために、本発明はブループリント画像またはスクリーンを介してではなく、フラグメンテーションパターンを直接画像化(撮像)する手法を採用する。
【0023】
図1は単独の強化ガラスプライのフラグメンテーションパターンを示している。パターンを生成するため、一枚の湾曲した強化ガラスをまずテープ留めし(衝撃付与後に全てのフラグメント(断片)がまとまった状態に保持するため)、つぎに衝撃が加えた。規則ECEのR43に基づき、ばね負荷センターポンチを使用して、ガラスの中心に衝撃を加えた。これにより、ガラスのフラグメント化を引き起こし、ガラスプライの湾曲状態が解消される。この試験は、生産ラインから抜き出した1枚のガラスプライに対して実施し、また以下に述べるように、フラグメンテーションパターンを本発明により画像化する。
【0024】
図2は本発明によるこのようなフラグメンテーションパターンを画像化するための装置の線図的断面図である。画像化装置1は,4本の脚4に取り付けた長方形フレーム3からなる支持フレーム2を有する。長方形フレーム3は、可動の画像化装置5を担持し、この画像化装置5にライン走査型カメラ6および多色(白色)光の蛍光管光源7を取り付ける。画像化装置5は、互いに対向する1対のベース部分8a,8bを有し、これらベース部分8a,8bの一方の端部にそれぞれ垂直支持体9a,9bを設け、また、これら垂直支持体9a,9bを支柱10a,10bによってベース部分8a,8bから斜めに突っ張り補強する。水平支持体11(図2には示されない)が2個の垂直支持体9a,9bの上方端部を隔てる。ライン走査カメラ6を水平支持体11に、垂直支持体9a,9b双方の上方端部から等距離の位置に固定する。蛍光管光源7は透明な支持手段3の下方に取り付け、垂直支持体9a,9bから離れる側のベース部分8a,8bの端部間に延在させる。ライン走査カメラ6は、視界中心で蛍光管光源を画像化するように、水平支持体11に角度を付けて取り付ける。したがって、ライン走査カメラ6および蛍光灯光源7は固定の位置関係に取り付ける。
【0025】
画像化装置5を移動させるため、長方形フレーム3の長側辺には駆動手段(図示せず)を設け、またフレームに取り付け、ベース部分8a,8bに係合させる。これら駆動手段によって、画像化装置5を長方形フレーム3の一方の短側辺における第1位置から、他方の短側辺における第2位置まで移動させることができる。駆動手段は、長方形フレーム3の長さに沿って張り渡した、1対の連続したモータ駆動ベルトを有する。長方形フレーム3には、さらに、画像化すべきガラスプライ13を支持する透明な支持面12を設ける。透明支持手段は、蛍光管光源がその支持表面の第1側面の側(下側)に位置し、ライン走査カメラが第2側面の側(上側)に位置するように配置する。
【0026】
図3は画像装置1の正面図であり、水平支持体11、ライン走査カメラ6および蛍光管光源7の位置関係をよりわかりやすく示す。図4は図2の画像装置の平面図であり、データ収集実行中における画像化すべきガラスプライの位置を示す。この図面では、画像化装置5はガラスプライ13の長さにおける約2/3だけ移動している。
【0027】
以下に、本発明画像装置の動作を説明する。規則ECE R43に基づいて行ったフラグメンテーション試験後に、ガラスプライ13を透明な支持表面12上に配置するとともに、画像化装置5を長方形フレーム3の一方の短側辺における第1位置に配置する。ガラスプライ13を所定位置に配置した後、データ収集を開始する。駆動手段により、画像化装置5を長方形フレーム3の長さに沿って前進させるとともに、蛍光管装置7によりガラスプライ13を照射する。同時に、ライン走査カメラ6は照明したガラスプライ13を走査し、ライン毎にフラグメンテーションパターンの画像を構築する。蛍光管光源7はライン走査カメラと一緒に動く。この動作は縦列状態で行う。ライン走査カメラ6がガラスプライ13全体を画像化した後、駆動手段、ひいては画像化装置を停止する。このとき、画像化装置5は、第2位置、つまりデータ収集を開始する長方形フレーム3の短側辺の側とは逆側の短側辺に存在する。データを収集した後、その後の処理ために保存する。代案として、データはデータ収集中に処理することもできる。データは、画像化された解像度においてフラグメントを解析できる画像解析ソフトを用いて処理する。
【0028】
ライン走査カメラは、0.2mm/画素、または粒度サイズが2.0mm×2.0mmの解像度を可能とするカメラ、例えばバスラー社(Basler AG)から市販されているL800kシリーズのカメラが好ましい。レンズを1:1の解像度が確実になるようカメラに関連して使用し、これにより、カメラは、測定されているガラスの幅全体を画像化するために、sワイドの十分な広さの視界を有するようにする。他の適当な撮像装置、例えばCCDカメラも使用可能である。光源は白色光を発する蛍光管が好ましいが、他の適当な光源としては、好ましくは単色可視光、例えば赤色光を発するようなLEDの直線的アレイ、または白熱球もしくは他の電球の直線的アレイがある。透明な支持表面は、ガラス、または透明なプラスチック材料、例えば厚さ3〜8mmのポリカーボネートのプライとすることができる。撮像プロセスにわたり、蛍光管光源7およびライン走査カメラ6の移動を連続的に行い、ガラスプライ13の画像を順次に取得するのが好ましい。駆動手段は、0.01m/sの最小速度で画像化装置を移動させ、これにより、2.5mm×1.5mmの大きさを有するガラスプライのフラグメンテーションパターンを3分で画像化することができるようにする。駆動手段は、0.5m/sの速度で画像化装置を移動させ、約1分でガラスを画像化することができるようにするのが好ましい。このようにすることは、必要であれば、更なるデータ収集をその処理時間枠内で行うことができるという利点が得られる。カメラおよび光源の組み合わせによれば、その時間内に13%程度(CIE標準イルミナントAによる)の低い光透過率を有するガラスのフラグメンテーションパターンを画像化することが可能になる。厚さが3mm〜8mmの厚さを有するガラスに関して、画像化されるガラスの光透過率は、好適には10%〜90%の範囲、より好適には10%〜40%(いずれもCIE標準イルミナントAによる)とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則ECE R43に基づいて行うフラグメンテーション試験後に、単独の強化ガラスプライのフラグメンテーションパターンを検査する方法において、
平坦で透明な支持手段に接触するようガラスプライを位置決めするステップと、
前記透明な支持手段の第1側面の側に位置する細条状の光源を用いて、ガラスプライの第1部分を照明して透過させるステップと、
前記透明な支持手段の第2側面の側に配置し、前記細条状の光源に整列させ、かつこの細条状の光源に対する相対位置に固定した撮像装置を用いて、前記ガラスプライの第1部分の画像を取得するステップと、
前記ガラスプライの長さに沿って細条状の光源および撮像装置を一緒に移動させ、前記ガラスプライの少なくとも第2部分から画像を取得するステップと、および
フラグメンテーションパターンを決定するよう画像を処理するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ガラスプライの全体に渡ってフラグメンテーションパターンを決定するために十分多くの画像を取得する、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記画像取得装置をライン走査カメラとした、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法において、前記細条状の光源は、蛍光管、またはLEDもしくは白熱球の直線的アレイのうち一方とする、方法。
【請求項5】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の方法において、前記光源および前記撮像装置の前記移動を、縦列状態で行うものとした方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の方法において、前記光源および前記撮像装置の移動は連続的に行い、前記ガラスプライの第1部分及び少なくとも第2部分の画像を順次に撮像する、方法。
【請求項7】
規則ECE R43に基づいて行われるフラグメンテーション試験後に、強化ガラスプライのフラグメンテーションパターンを検査するよう構成した光学的検査装置において、
ガラスプライを支持する平坦で透明な支持手段を有する支持フレームと、
前記透明な支持手段の第1側面の側に位置する細条状の光源と、
前記透明な支持手段の第2側面の側に位置し、前記細条状の光源に対して整列するとともに、この細条状の光源に対して相対位置に固定した撮像装置と、および
前記ガラスプライの長さに沿って前記細条状の光源および撮像装置を一緒に移動させるよう、前記支持フレームに取り付けた駆動手段と、
を備えた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、前記撮像装置をライン走査カメラとした、装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の装置において、前記細条状の光源は、蛍光管、またはLEDもしくは白熱球の直線的アレイのうち一方とした装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置において、厚さが3mm〜8mmの厚さを有する、画像化されるガラスの光透過率を、CIE標準イルミナントAを用いた測定で、10%〜90%の範囲における光透過率とした、装置。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置において、3mm〜8mmの厚さを有する、画像化されるガラスの光透過率を、CIE標準イルミナントAを用いた測定で、10%〜40%の範囲における光透過率とした、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−520845(P2010−520845A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549483(P2009−549483)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050099
【国際公開番号】WO2008/099219
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(591229107)ピルキントン グループ リミテッド (82)
【Fターム(参考)】