説明

板体収納用ラック

【課題】 移動自在な側板を容易に固定・解除することができる板体収納用ラックを提供する。
【解決手段】 相対向する1対の上下面板2と、上下面板間に間置され複数の板体を係合するための板体係合溝4を板体内面に形成してなる1対の板体保持用側板を有し、1対の板体保持用側板の少なくとも一方の板体保持用側板が収納される板体の幅径に応じて他方の板体保持用側板と対向する方向に移動自在な板体保持用移動側板5である板体収納用ラックであって、板体保持用移動側板の上下面板に対向する辺部には上下面板に対して上下方向へ可動して上下面板に形成された位置設定係合部9に係止・離脱する係止片10を配設するとともに、係止部材同士を同期して係止・離脱させる第1の連結機構14、第2の連結機構18で連結し、連結機構の駆動により係止片を位置設定係合部へ係止・離脱可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板、液晶ディスプレイ用基板、ガラス板、合成樹脂板等の板体を多数収納保持して工程作業や保管、搬送するために用いられる板体収納用ラックに係り、特に収納する板体の幅径に合わせて収納幅径を容易に変化させることができる板体収納用ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント基板、液晶ディスプレイ用基板等の板体を多数収納保持して工程作業や保管、搬送するに際しては、箱体や枠体の相対向する1組の側板の内面に複数の板体係合溝を形成し、この板体係合溝に板体の両端を係合させて収納する構造からなるラックを使用している。
【0003】
そして、収納する板体の幅径が変化するたびに異なる収納幅径のラックを用意することは無駄が多いことから、板体の幅径に合わせてラックの収納域の幅径を可変させることのできるラックが用いられている。このラックは、板体係合溝を備えた一方の側板を固定し、かつ他方の側板を一方の側板に対して平行状態を保持したまま自在に移動することで、収納域の幅径が容易に設定できるものである。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開昭63−59388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の板体収納用ラックにあっては、移動自在な他方の側板を固定する際、そしてその固定状態を解く際には、側板の上下左右の四隅に配設された固定レバー部材を倒したり起こしたりして操作しなければならず、手間がかかるものであった。1個所の固定レバーだけでも側板を固定することはできるものの、その固定した場所以外の側板部分は移動方向にがたついてしまい、板体を確実に収納することはできなかった。
【0005】
そこで本発明は、移動自在な側板を容易に固定・解除することができる板体収納用ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するため、本発明の板体収納用ラックは、相対向する1対の上下面板と、該上下面板間に間置され複数の板体を係合するための板体係合部を板体内面に形成してなる1対の板体保持用側板を有し、1対の板体保持用側板の少なくとも一方の板体保持用側板が収納される板体の幅径に応じて他方の板体保持用側板と対向する方向に移動自在な板体保持用移動側板である板体収納用ラックであって、前記板体保持用移動側板の前記上下面板に対向する辺部には前記上下面板に対して上下方向へ可動して前記上下面板に形成された位置設定係合部に係止・離脱する係止部材を配設するとともに、前記係止部材同士を同期して係止・離脱させる連結機構で連結し、前記連結機構の駆動により前記係止部材を前記位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことを特徴とするものである。
【0007】
また本発明は、上下面板に形成された位置設定係合部は、前記板体保持用移動側板が移動する方向に沿って形成された係合溝であって、該係合溝に沿って移動する係止部材が前記上下面板を上下面板外方または上下面板内方から狭持または圧接して係止することで、前記板体保持用移動側板の位置固定を可能としたことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明は、連結機構は、上下の係止部材の間に回動自在に配設された回動板と、該回動板の同心円上の相対向する位置に一端が軸支され互いに反対方向に延出して他端が上下係止部材に固定された1対の杆体とからなり、前記回動板を一方方向へ回動させると前記杆体が延出方向外方へ移動し他方方向へ回動させると前記杆体が延出方向内方へ移動することにより、前記杆体の他端に固定された前記係止部材が上下面板に対して係合方向または離脱方向へ同期して移動し、前記係止部材を位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、連結機構を複数配設するとともに、該連結機構の複数の回動板を同期して回動させる回動板連結部材を備えることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、係止部材は、板体保持用移動側板における上下面板と接する上辺及び下辺に間隔を設けてそれぞれ2個所配設し、前記上下2個所に配設した係止部材をそれぞれ回動板で連結するとともに、前記上下の係止部材に連結した2つの回動板を1つの回動板連結部材で連結したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の板体収納用ラックによれば、相対向する1対の上下面板と、該上下面板間に間置され複数の板体を係合するための板体係合部を板体内面に形成してなる1対の板体保持用側板を有し、1対の板体保持用側板の少なくとも一方の板体保持用側板が収納される板体の幅径に応じて他方の板体保持用側板と対向する方向に移動自在な板体保持用移動側板である板体収納用ラックであって、前記板体保持用移動側板の前記上下面板に対向する辺部には前記上下面板に対して上下方向へ可動して前記上下面板に形成された位置設定係合部に係止・離脱する係止部材を配設するとともに、前記係止部材同士を同期して係止・離脱させる連結機構で連結し、前記連結機構の駆動により前記係止部材を前記位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことで、連結機構を操作することで係止部材を同期させて上下面板に対し係止・離脱させることができ、これにより、板体保持用移動側板の固定・解除が1操作で容易に行うことができる。
【0012】
また、上下面板に形成された位置設定係合部は、前記板体保持用移動側板が移動する方向に沿って形成された係合溝であって、該係合溝に沿って移動する係止部材が前記上下面板を上下面板外方または上下面板内方から狭持または圧接して係止することで、前記板体保持用移動側板の位置固定を可能としたことで、板体保持用移動側板は上下面板に対して自在な位置で固定することができ、これにより収納域の幅径を好適に設定することができる。
【0013】
また、連結機構は、上下の係止部材の間に回動自在に配設された回動板と、該回動板の同心円上の相対向する位置に一端が軸支され互いに反対方向に延出して他端が上下係止部材に固定された1対の杆体とからなり、前記回動板を一方方向へ回動させると前記杆体が延出方向外方へ移動し他方方向へ回動させると前記杆体が延出方向内方へ移動することにより、前記杆体の他端に固定された前記係止部材が上下面板に対して係合方向または離脱方向へ同期して移動し、前記係止部材を位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことで、回動板を回動することで板体保持用移動側板を上下面板に対して容易に係止・離脱することができる。
【0014】
また、連結機構を複数配設するとともに、該連結機構の複数の回動板を同期して回動させる回動板連結部材を備えることで、回動板連結部材を操作するだけで、全ての係止部材を同期させて、上下面板に対して板体保持用移動側板を係止・離脱することができる。
【0015】
また、係止部材は、板体保持用移動側板における上下面板と接する上辺及び下辺に間隔を設けてそれぞれ2個所配設し、前記上下2個所に配設した係止部材をそれぞれ回動板で連結するとともに、前記上下の係止部材に連結した2つの回動板を1つの回動板連結部材で連結したことで、全ての係止部材を簡易な構造で連結して連動させることができ、また板体保持用移動側板は固定状態でがたつくことなく安定して保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、プリント基板、液晶ディスプレイ用基板、ガラス板、合成樹脂板等の板体を収納保持して工程作業や保管、搬送するために用いられる本発明の板体収納用ラックを示している。この板体収納用ラック1は、一定間隔を設けて相対向する上下面板2と、この上下面板2間に間隔を設けて間置され内面に収納する板体Bを係合する板体係合溝4を水平方向に沿って複数形成した板体保持用固定側板3と、同じくこの板体保持用固定側板3に対して平行状態を保持し板体保持用固定側板3と対向する方向に移動自在でかつ板体係合溝4が内面に形成された板体保持用移動側板5と、上下面板2間に間置された4本の固定的な柱部材6とを備えている。
【0017】
前記上下面板2の相対向する内面には、図1に示すごとく、それぞれ2本の長方体形状のラックギア7がレール状に並列して配設され、その各ラックギア7の上面と外側面の2つの面にギアを形成している。そして、この4本のラックギア7の上面側のギアは、板体保持用移動側板5における板体係合溝4が形成された面の裏面で、板体保持用移動側板5の上下両側部に左右方向に配設された2本の第1の回転軸8に配設されたギア(図示せず)と咬合している。同様に、4本のラックギア7の外側面側のギアは、板体保持用移動側板5の左右両側部に上下方向に配設された2本の第2の回転軸(図示せず)に配設されたギア(図示せず)と咬合している。これにより板体保持用移動側板5は、その左右が連動して傾くことなく一体的に移動するとともに、その上下も連動し傾くことなく一体的に移動するものである。
【0018】
前記上下面板2における各ラックギア7の外側には、ラックギア7と平行して上下面板2を上下に貫通する係合溝である位置設定係合部9が形成されるとともに、この位置設定係合部9には、図2及び図3に示すごとく、これに沿って移動自在な合成樹脂製の係止片10がそれぞれ配置されている。
一方、図2及び図3に示す板体保持用移動側板5の右側部には、上下の係止片10の間に回動自在に配置された回転板11と、この回転板11の同心円上の相対向する位置に一端が軸支されかつ互いに反対方向に延出して他端が各係止片10と係合する1対の杆体12,13とからなる第1の連結機構14が配設されている。この杆体12,13における回転板11に軸支される一端部分は、図4及び図5に示すごとく、回転板11が回動する際に中心の軸にぶつからないように外方に湾曲する形状としている。
そして、その回転板11を反時計回り方向に回動すると、図2及び図4に示すごとく、杆体12,13と係止片10とからなる1対の係止部材が互いに内側に引っ張られる方向に移動して、係止片10が、図6に示すごとく、上下面板2の位置設定係合部9部分を上下面板2外方から板体保持用移動側板5に圧接する。これにより、板体保持用移動側板5は上下面板2に対して固定される。
これと逆に、回転板11を時計回り方向に回動すると、図3及び図5に示すごとく、杆体12,13が外側に押し出される方向に移動してその先端に係合する係止片10が、図7に示すごとく、上下面板2の位置設定係合部9部分から離間する。これにより、板体保持用移動側板5は上下面板2に対する固定状態を解除される。
【0019】
同様に、図2及び図3に示す板体保持用移動側板5の左側部には、上下の係止片10の間に回動自在に配置された回転板15と、この回転板15の同心円上の相対向する位置に一端が軸支されかつ互いに反対方向に延出して他端が各係止片10と係合する1対の杆体16,17とからなる第2の連結機構18が配設されている。この杆体16,17における回転板15に軸支される一端部分は、回転板15が回動する際に中心の軸にぶつからないように外方に湾曲する形状としている。
そして、その回転板15を反時計回り方向に回動すると、図2及び図4に示すごとく、杆体16,17と掛止片10とからなる1対の係止部材が互いに内側に引っ張られる方向に移動して、係止片10が、図7に示すごとく、上下面板2の位置設定係合部9部分を上下面板2外方から板体保持用移動側板5に圧接する。これにより、板体保持用移動側板5は上下面板2に対して固定される。
これと逆に、回転板15を時計回り方向に回動すると、図3及び図5に示すごとく、杆体16,17が外側に押し出される方向に移動してその先端に係合する係止片10が、図7に示すごとく、上下面板2の位置設定係合部9部分から離間する。これにより、板体保持用移動側板5は上下面板2に対する固定状態を解除される。
【0020】
さらに、上記2つの第1の連結機構14と第2の連結機構18を一体的に連動させるために、板体保持用移動側板5に配設された第1の連結機構14と第2の連結機構18の間に回動板連結部材19が配設されている。この回動板連結部材19は、図2及び図3の右側の第1の連結機構14の回転板11から延出する操作杆20と、図2及び図3の左側の第2の連結機構18の回転板15から延出する操作杆21とを連動させるべく、その中央に把持するための回転自在なレバー22と、該レバー22と一体的に配設され、前記操作杆20の先端と操作杆21の先端を移動自在に軸支する中継レバー23とから構成されている。
そして、このレバー22を時計回り方向に回動すると、図2に示すごとく、第1の連結機構14の回転板11と第2の連結機構18の回転板15は反時計回り方向に回動し、これにより上述したごとく4つの係止片10は上下面板2の位置設定係合部9部分を板体保持用移動側板5に圧接して板体保持用移動側板5を固定する。
その逆に、前記回動板連結部材19のレバー22を反時計回り方向に回動すると、図3に示すごとく、第1の連結機構14の回転板11と第2の連結機構18の回転板15は時計回り方向に回動し、これにより上述したごとく4つの係止片10は上下面板2の位置設定係合部9部分を板体保持用移動側板5から離間させて板体保持用移動側板5の固定を解除する。
【0021】
尚、上述した実施例にあっては、回転板やレバーの回転方向と係止片による係止・解除について説明したが、その回転方向と係止片の動作は一例であって、これに限定されることなく、係止片による係止・解除を上述したレバーの回転方向と逆方向にしたり、レバーの動作を回転ではなくスライドとしたり、また係止片を上下面板間の内側に配設して圧接して係止させたりしてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の板体収納用ラックの斜視図である。
【図2】本発明の板体収納用ラックの連結機構と回動板連結部材の動作を示す説明図である。
【図3】本発明の板体収納用ラックの連結機構と回動板連結部材の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の板体収納用ラックにおける回転板と杆体の動作を示す説明図である。
【図5】本発明の板体収納用ラックにおける回転板と杆体の動作を示す説明図である。
【図6】本発明の板体収納用ラックにおける係止片の動作を示す説明図である。
【図7】本発明の板体収納用ラックにおける係止片の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 板体収納用ラック
2 上下面板
3 板体保持用固定側板
4 板体係合溝
5 板体保持用移動側板
6 柱部材
7 ラックギア
8 第1の回転軸
9 位置設定係合部
10 係止片
11 回転板
12 杆体
13 杆体
14 第1の連結機構
15 回転板
16 杆体
17 杆体
18 第2の連結機構
19 回動板連結部材
20 操作杆
21 操作杆
22 レバー
23 中継レバー
B 板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する1対の上下面板と、該上下面板間に間置され複数の板体を係合するための板体係合部を板体内面に形成してなる1対の板体保持用側板を有し、1対の板体保持用側板の少なくとも一方の板体保持用側板が収納される板体の幅径に応じて他方の板体保持用側板と対向する方向に移動自在な板体保持用移動側板である板体収納用ラックであって、前記板体保持用移動側板の前記上下面板に対向する辺部には前記上下面板に対して上下方向へ可動して前記上下面板に形成された位置設定係合部に係止・離脱する係止部材を配設するとともに、前記係止部材同士を同期して係止・離脱させる連結機構で連結し、前記連結機構の駆動により前記係止部材を前記位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことを特徴とする板体収納用ラック。
【請求項2】
上下面板に形成された位置設定係合部は、前記板体保持用移動側板が移動する方向に沿って形成された係合溝であって、該係合溝に沿って移動する係止部材が前記上下面板を上下面板外方または上下面板内方から狭持または圧接して係止することで、前記板体保持用移動側板の位置固定を可能としたことを特徴とする請求項1記載の板体収納用ラック。
【請求項3】
連結機構は、上下の係止部材の間に回動自在に配設された回動板と、該回動板の同心円上の相対向する位置に一端が軸支され互いに反対方向に延出して他端が上下係止部材に固定された1対の杆体とからなり、前記回動板を一方方向へ回動させると前記杆体が延出方向外方へ移動し他方方向へ回動させると前記杆体が延出方向内方へ移動することにより、前記杆体の他端に固定された前記係止部材が上下面板に対して係合方向または離脱方向へ同期して移動し、前記係止部材を位置設定係合部へ係止・離脱可能としたことを特徴とする請求項1又は2記載の板体収納用ラック。
【請求項4】
連結機構を複数配設するとともに、該連結機構の複数の回動板を同期して回動させる回動板連結部材を備えることを特徴とする請求項3記載の板体収納用ラック。
【請求項5】
係止部材は、板体保持用移動側板における上下面板と接する上辺及び下辺に間隔を設けてそれぞれ2個所配設し、前記上下2個所に配設した係止部材をそれぞれ回動板で連結するとともに、前記上下の係止部材に連結した2つの回動板を1つの回動板連結部材で連結したことを特徴とする請求項3又は4記載の板体収納用ラック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−126701(P2009−126701A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307323(P2007−307323)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(304001453)天昇電気工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】