説明

板材の把持装置

【課題】本発明は、異なる大きさの板材を把持することができる板材の把持装置を提供することを課題とする。
【解決手段】板材を吸引保持する把持機構40をロボットアームなどの移動機構28に装着して、ワーク49を把持する板材の把持装置30において、把持機構40は、ワーク49の上面を吸引する吸引部66と、ワーク49の大きさに合わせてワーク49の上面又はワーク49の上面及び側面を受ける受部73L、73L、73R、73Rと、これらの受部73L、73L、73R、73Rをワーク49の大きさに合わせて移動可能とする受部移動機構101と、ワーク49の側方に開閉動作し、ワーク49の側面と下面とを支持可能とする把持爪75L、75L、75R、75Rと、この把持爪75L、75L、75R、75Rをワーク49の大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構99とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームなどの移動機構に装着して、板材を把持する板材の把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットアームなどの移動機構に装着して、板材としての半導体ウエハーを吸引保持する板材の把持装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−235622公報(図7)
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図18は従来の技術の基本構成を説明する図であり、板材の把持装置200は、移動機構のアームに装着されている保持部材202と、この保持部材202に設けられ半導体ウエハー204の上面を吸引保持する複数の吸引部203と、前記保持部材202に設けられ半導体ウエハー204の上面を受ける複数の受部205と、前記保持部材202に設けられ半導体ウエハー204の側方から把持可能とする複数の把持爪206と、を備える。
【0004】
そして、通常搬送時において、吸引部203で半導体ウエハー204の上面を吸引保持する。万一、空気供給源が絶たれるなどの異常時において、把持爪206が揺動して半導体ウエハー204を把持して、半導体ウエハー204の落下を回避する。
ところで、板材の把持装置200は、同一の大きさの板材を吸着保持するなどにより把持するものである。異なる大きさの板材を把持することはできないため、改良の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、異なる大きさの板材を把持することができる板材の把持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、ロボットアームなどの移動機構に把持機構を設け、この把持機構で板材を把持させる板材の把持装置において、把持機構は、移動機構に設けた横部材と、この横部材の上方に配置するように移動機構に設けた上板と、板材の上面又は板材の上面及び側面に当てるために上板に移動可能に設けた複数個の受部と、上板に設け、受部へ板材を引寄せる吸引部と、受部に当てた板材の側面を押すために横部材に水平方向へ移動可能に設けた側面押圧片と、受部に当てた板材が落下したときに板材を受けさせるように側面押圧片の下端から伸ばした受け爪と、側面押圧片及び受け爪からなる把持爪を移動させるために横部材に設けた把持爪移動機構と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明では、把持機構には、上板に移動可能に設けた複数個の受部が備えられているので、受部を板材の大きさに合わせて移動させることができる。また、把持機構は、板材を支持可能とする把持爪を板材の大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構を備えるので、把持爪を板材の大きさに合わせて移動させることができる。つまり、把持機構には、移動可能にした複数個の受部と把持爪移動機構とが設けられているので、異なる寸法をもつ板材の把持を1つの把持装置で行うことができる。
また、1つの把持装置で異なる寸法をもつ板材の把持が可能となるため、複数の把持装置を集約化でき、装置費用の低減を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
以下の実施例では、板材を、単位燃料電池の構成要素である下位のセパレータ21、上位のセパレータ24及び膜電極構造体22を例にして説明する。下位のセパレータ21の大きさと上位のセパレータ24の大きさは同一であり、上位及び下位のセパレータ21、24の大きさは、膜電極構造体22よりも大きい。
【0009】
図1は本発明に係る板材の把持及び移載方法を説明する図であり、最初に、下位のセパレータ21を把持し、図矢印aのように搬送し、下位のセパレータ21の把持を解除し、載置部材23の上に載せる。
【0010】
次に、膜電極構造体22を把持し、図矢印bのように搬送し、膜電極構造体22の把持を解除し、載置部材23に載置された下位のセパレータ21の上に載せる。
最後に、上位のセパレータ24を把持し、図矢印aのように搬送し、上位のセパレータ24の把持を解除し、上位のセパレータ24を膜電極構造体22の上に載せる。
この結果、載置部材23上には、下位のセパレータ21と膜電極構造体22と上位のセパレータ24がこの順に載置されてなる積層体13が形成される。
【0011】
積層体13をクランプ部25、25で挟持し、これらクランプ部25、25で挟持したまま積層体13を図矢印c方向に搬送し、積層体13の端部に設けられている挿入孔32、32に連結ピン打ち込み装置90を用いて連結ピンを打ち込んで積層体13を締結する。
【0012】
図2は図1を実施するための把持装置を含む単位燃料電池の組立ラインの平面図であり
、単位燃料電池の組立ライン10は、下位のセパレータ21、膜電極構造体22及び上位のセパレータ24を載置部材23に搬送する移載ステージと、下位のセパレータ21、膜電極構造体22及び上位のセパレータ24がこの順で積層される積層ステージと、この積層ステージの後工程として積層体13に連結ピンを打ち込み積層体13を締結する連結ピン打ち込みステージとからなる。
【0013】
移載ステージには2つの移載装置27A、27Bが設けられている。
移載装置27Aは、移載装置27Aを移動させる移動機構28Aと、この移動機構28Aに装着されワークを把持する把持装置30Aとからなる。
【0014】
移動機構28Aは、支柱の役割を果たす支持部33Aと、これら支柱部33Aに設けられているレール部35Aと、このレール部35A上に移動可能に設けられるスライダ37Aと、前記支持部33Aに設けられスライダ37Aを駆動する駆動部34Aとを備える。
そして、移動機構28Aに装着されている把持装置30Aで、第1ストッカ41にて下位のセパレータ21を把持し、載置部材23にストロークS1で移載する。
【0015】
また、移載装置27Bは、移載装置27Bを移動させる移動機構28Bと、この移動機構28Bに装着されワークを把持する把持装置30Bとからなる。
移動機構28Bは、支持部33Bと、この支柱部33Bに設けられているレール部35Bと、このレール部35B上に設けられるスライダ37Bと、前記支持部33Bに設けられている駆動部34Bとを備える。
【0016】
そして、移動機構28Bに装着されている把持装置30Bで、第2ストッカ42にて膜電極構造体22を把持し、載置部材23にストロークS2で移載する。
膜電極構造体22を載置部材23上に載置した後、前記把持装置30Aによって、第1ストッカ41上にて上位のセパレータ24を把持し、載置部材23にストロークS1で移載する。
【0017】
積層ステージには、積層装置20が設けられている。
積層装置20は、下位のセパレータ21と、膜電極構造体22と、上位のセパレータ24とが積層される載置部材23と、この載置部材23の周囲に配置され積層体13をクランプするクランプ部25、25とを備える。そして、載置部材23の左方に配置されている移載装置27Aによって、下位のセパレータ21と、上位のセパレータ24を載置部材23上に搬送し、この載置部材23の右方に配置されている移載装置27Bによって、膜電極構造体22を載置部材23上に搬送する。
載置部材23の上方には、膜電極構造体22の位置を検出する検出手段29a、29bが配置されている。31は検出手段29a、29bを支持する支柱である。
【0018】
積層ステージと連結ピン打ち込みステージ間には、積層体13を搬送する工程間搬送装置45が設けられている。
工程間搬送装置45は、レール部46、46と、載置部材23が設けられている基板47を駆動する駆動部43と、を主な要素とし、載置部材23をストロークMで往復移動可能にする装置である。
【0019】
連結ピン打ち込みステージには、連結ピン打ち込み装置90が設けられており、載置部材23の上面23aに積層された積層体13を締結する。91は連結ピン打ち込み装置90が有するフレームである。
【0020】
以下の説明において、説明の便宜上、下位のセパレータ21又は上位のセパレータ24をセパレータ48、下位のセパレータ21と上位のセパレータ24と膜電極構造体22を含めた板材を各々ワーク49と云うことがある。
【0021】
図3は図2の3−3線断面図であり、移載装置27Aは、支持部33Aと、この支持部33Aに取り付けられ把持装置30Aを上下に昇降させる昇降駆動部53と、この昇降駆動部53に取り付けられ把持装置30Aを図表裏方向に移動させる往復駆動部54と、この往復駆動部54に設けられているレール部35Aと、この往復駆動部54に駆動され前記レール部35Aに沿って図表裏に移動可能なスライダ37Aと、このスライダ37Aから垂下され把持装置30Aの位置調整を可能とするフローテイング部57と、このフローテイング部57に設けられ把持装置30Aを昇降可能にする昇降シリンダ部58と、この昇降シリンダ部58のロッド部58aから水平に延設されるロッド延設部61と、このロッド延設部61から垂下させた縦部材62と、この縦部材62から把持装置30Aに向け延設される横部材63と、この横部材63の上方に位置するようにフローテイング部57から延設される上板64と、この上板64の中心に下方に取り付けられる吸引部66と、前記上板64の両端部に締結部材69、69を介して下方に取り付けられセパレータ48の上面48j及び側面48sを受ける左右の受部73L、73Rと、これら左右の受部73L、73Rの外方に設けられセパレータ48を側方から把持する左右の把持爪75L、75Rと、を備える。
図中、76は後述する位置決めピン78と係合する位置決め係合部である。
【0022】
移載装置27Aの下方には、セパレータ48をストックする第1ストッカ41が設けられている。第1ストッカ41には、セパレータ48を受ける支持受部77・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)と、支持受部77の1つから上方に突設され支持受部77上に載置されるセパレータ48の位置合わせを行う位置決めピン78とが備えられている。
なお、位置決めピン78は、セパレータ48の位置決め孔に挿入されている。
【0023】
図4は吸引部66の拡大断面図であり、上板64に、ワーク49を吸引保持する吸引部66が設けられている。吸引部66には圧縮空気を供給する空気配管81が接続されている。
【0024】
空気配管81を通じて圧縮空気が噴出されると、中心部には負圧が発生し、この負圧によってワーク49が引き寄せられる。しかし、ワーク49が吸引部66の下面66kに接近しすぎると、下面66kとワーク49間に流れる空気により斥力が生じ、ワーク49の吸着が阻止される。そのため、非接触状態でワーク49を吸引部66に吸引保持させることができる。また、非接触状態で吸引保持できるため、セパレータ48にうねりや多数の細かい溝が形成されていても吸引保持に影響がなく、接触式の吸引に較べてワーク49の表面に影響を与える可能性はほとんどない。
なお、以下の説明では、移載装置27Bは前述の移載装置27Aと同じ構造を有するため、移載装置27として説明する。これと同様な理由により、把持装置30Bと把持装置30Aは、把持装置30として説明する。
【0025】
図5は図3の5−5矢視図であり、把持装置30の下面図である。
受部73L、73L、73R、73Rは、下面から見たときに、セパレータ48の上面を受ける横受面82、82、82、82と、これら受部73L、73L、73R、73Rの一部を図手前側に突設させてセパレータ48の側面を受ける縦受面83、83、83、83と、把持爪75L、75L、75R、75Rと対向する側に設けられ複数の側面を有する段状部84、84、84、84と、を備えるブロック状の部材である。
つまり、セパレータ48が位置決めピン78により、第1ストッカ41上に位置合わせされて載置されることで、横受面82・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)でセパレータ48の上面を、縦受面83・・・でセパレータ48の側面を受けることができる。
【0026】
受部73L、73L、73R、73Rには、段状部84・・・が設けられ、これら段状部84・・・は、把持爪75L、75L、75R、75Rが配置される側に設けられている。段状部84・・・を設けることにより、セパレータ48を把持するため、把持爪75L、75L、75R、75RをストロークΔ1で内方に移動させたときに、把持爪75L、75L、75R、75Rは受部73L、73L、73R、73Rの段状部84、84、84、84の複数の側面で突き当てされ、セパレータ48を把持することができる。
【0027】
図6は膜電極構造体22を把持可能にする受部及び把持爪の配置説明図であり、図5の受部73L、73L、73R、73Rを膜電極構造体22の大きさに合わせてワーク長手方向の外方に移動させるとともに、把持爪75L、75L、75R、75RのストロークをΔ1からΔ2(Δ2>Δ1)に変更する。把持爪の位置を変更する構造及び作用は後述する。
【0028】
受部に備えられている段状部84・・・は、把持爪75L、75L、75R、75Rが配置される側に設けられている。
段状部84の複数の側面は、ワーク長手方向の内方から外方に向け、順に、第1横面85と第1縦面86と第2横面87と第2縦面88と第3横面89とからなり、第1横面85はワークの長手方向と直角な面であり、第1縦面86はワークの長手方向と平行な面である。つまり、縦面と横面は互いに直角な面であり、第2縦面88は第1縦面86よりもワークの外方に配置されている。
【0029】
把持爪75L、75L、75R、75Rが配置されている側に段状部84・・・が設けられているので、受部73L、73L、73R、73Rをワークの長手方向の外方に移動させたときに、把持爪75L、75L、75R、75Rが段状部84・・・に干渉することがない。従って、把持爪のストロークを大きく確保することができれば、ワークの大きさに合わせてストロークを変化させることによって、大きさの異なる板材を把持することが可能となる。また、膜電極構造体22は、セパレータ48のような位置決め孔を持たないため、セパレータ48に較べ第2ストッカ42上にラフに載置される可能性がある。しかし、吸引部66の吸引保持を非接触にすることで、把持爪75L、75L、75R、75Rの内方への移動だけで、膜電極構造体22の位置決め修正を可能にしている。また、ワークの位置決め精度の影響を受けないため、ワークのストッカセット時の作業性の向上と、ストッカの簡略化を図ることができる。
【0030】
図7は本発明に係る把持装置の平面図、図8は図7の8−8線断面図である。以下、図7及び図8を参照して説明を行う。
把持装置30には、移動機構28から延設される横部材63に設けられ把持爪75L、75L、75R、75Rをワークの大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構99と、横部材63の上方に設けられI字状の上板64に配置される4つの受部73L、73L、73R、73Rをワークの大きさに合わせて移動可能とする受部移動機構101・・・と、が設けられている。
【0031】
受部移動機構101・・・は、ワークの長手方向に配置されている長孔93・・・と、これら長孔93・・・に挿通されている締結部材69・・・とからなる。そして、締結部材69・・・をゆるめ、受部を長孔93・・・に沿って移動させ、再度、締結部材69・・・を締め付ける。このような受部移動機構101・・・によって、受部73L、73L、73R、73Rをワークの長手方向に移動可能にすることができる。
【0032】
移動機構28は、横部材63に取り付けられ左右の把持爪75L、75L、75R、75Rを駆動する左右の把持シリンダ95、95と、横部材63に取り付けられるガイド部材96、96と、これらガイド部材96、96に移動可能に設けられているガイドスライダ97、97とからなる。ガイドスライダ97、97は、各々把持爪75L、75Lと、把持爪75R、75Rをガイドする部材である。
【0033】
すなわち、把持機構40は、ワーク49の上面を吸引する吸引部66、66と、ワーク49の大きさに合わせてワーク49の上面又はワーク49の上面及び側面を受ける受部73L、73L、73R、73Rと、これら受部73L、73L、73R、73Rをワーク49の大きさに合わせて移動可能とする受部移動機構101・・・と、ワーク49の側方に開閉動作し、ワーク49の側面と下面とを支持可能とする把持爪75L、75L、75R、75Rと、この把持爪75L、75L、75R、75Rをワーク49の大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構99とを備える。
【0034】
本実施例において、把持シリンダ95、95は、いわゆる、多位置形シリンダである。多位置形シリンダの構造及び作用について、次図で説明する。
【0035】
図9は本発明に係る把持装置に設けられているエアシリンダの構造図及び作用図である。
(a)において、多位置形シリンダ102は、第1シリンダ103と第2シリンダ104からなる2本のシリンダを直列に連結したものであり、第1シリンダ103は第1ピストン105とロッド105aとを有し、第2シリンダ104は第2ピストン106とロッド106aとを有する。また、第1シリンダ103には圧縮空気の供給口であり、第1ピストン105を後端に移動させる先端ポート108と、第1ピストン105を先端に移動させる後端ポート109が備えられる。同様に、第2シリンダ104には第2ピストン106を後端に移動させる先端ポート114と、第2ピストン106を先端に移動させる後端ポート115が備えられている。
本実施例において、多位置形シリンダ102は、2段ストロークシリンダとして利用されている。
図中、第1ピストン105及び第2ピストン106はいずれも後端位置にあるので、多位置形シリンダ102のロッド先端部107の位置は、最も縮んだ位置にある。
【0036】
(b)において、(a)の状態から、第2シリンダ104の後端ポート115に圧縮空気を供給して、第2ピストン106をストロークmで前方に移動させたので、第2シリンダ104のロッド106aは最も伸びた位置にある。従って、シリンダ102のロッド先端部107の位置は、最も伸びた位置にある。なお、(b)の位置から(a)の位置に復帰させることは、第2シリンダ104の先端ポート114に圧縮空気を供給して、第2ピストン106を後方に移動させることにより可能である。
【0037】
(c)において、(a)の状態から、第1シリンダ103の後端ポート109に圧縮空気を供給して、第1ピストン105を先端に移動させた。このとき、第2シリンダ104のロッド106aは第1シリンダ103のロッド105aにより押され、第1シリンダ103のロッド105aの長さだけ伸びた位置にある。
【0038】
(d)において、(c)の状態から、第2シリンダ104の後端ポート115に圧縮空気を供給して、ストロークnで第2ピストン106を先端に移動させたので、第2シリンダ104のロッド106aは最も伸びた位置にある。従って、シリンダ102のロッド先端部107の位置は、最も伸びた位置にある。なお、(d)の位置から(c)の位置に復帰させることは、第2シリンダ104の先端ポート114に圧縮空気を供給して、第2ピストン106を後方に移動させることにより可能である。
【0039】
上記(a)と(b)を組み合わせることによって、膜電極構造体22の非把持及び把持が可能となる。
また、上記(c)と(d)を組み合わせることによって、膜電極構造体22よりも大きなセパレータ48の非把持及び把持が可能となる。
従って、上記の把持機構40を有する把持装置30が1つあれば、異なる大きさをもつワークの把持が可能となる。
【0040】
以上に述べた把持装置の作用を次に述べる。
図10はセパレータを把持することを説明する図である。
(a)において、移載装置27に設けられている把持装置30を第1ストッカ41の上方に移動させる。第1ストッカ41にはセパレータ48が位置決めピン78により所定の位置に載置されている。
【0041】
(b)において、把持装置30の昇降駆動部53を矢印b1のように下降させ、セパレータ48の上面に受部73L、73Rを当て、フローテイング部57を効かせ、位置決めピン78に対向する位置決め係合部76に把持装置30を位置合わせする。
【0042】
(c)において、吸引部66によってセパレータ48を吸引させ、把持爪75L、75Rをワークの内方に移動させ把持する。そして、昇降シリンダ部58によって、横部材63を把持装置30を図矢印cのように上昇させる。
【0043】
図11は図10(c)の要部拡大図であるとともに把持装置をさらに上昇させることを説明する図である。
(a)は把持爪75Rの要部拡大図であり、把持爪75Rは、側面押圧片116及び受け爪117からなる。側面押圧片116は、受部73Rの段状部84の側面に突き当てそして板材としてのワーク49の側面を把持爪75Rの内方への移動中に押すために横部材(図7の符号63)に水平方向へ移動可能に設けたものであり、受け爪117は、吸引保持させるときに、受部73Rの横受面82に当てたワーク49が落下したときにワーク49を受けさせるように側面押圧片116の下端から伸ばしたものである。このとき、ワーク49と受け爪117には、僅かなクリアランスが設けられ、受け爪117がワーク49を押しつけて損傷を与えることはない。なお、把持爪75Lは、把持爪75Rと配置方向が異なる他は同一構造であり説明を省略する。
【0044】
(b)において、昇降駆動部53によってセパレータ48を把持している把持装置30を矢印dのようにさらに上昇させる。
【0045】
図12は図2の12−12線断面図であり、図11で上昇させた把持装置30を往復駆動部(図3の符号54)によって載置部材23の上方の所定位置まで水平方向に移動させ、載置部材23に下位のセパレータ21を載置する。
【0046】
次に、膜電極構造体22を載置部材23に載置するため、把持装置30を第2ストッカ42の上方に移動させ、膜電極構造体22を載置部材23まで搬送する。
【0047】
なお、把持装置30による膜電極構造体22を把持する作用については、膜電極構造体22用の位置決めピンがないことと、これに伴ってフローテイング部57を作用させないことを除き、セパレータ48を把持する作用と同じであり説明を省略する。なお、膜電極構造体22を下位のセパレータ21の上面に載置する方法は、下位のセパレータ21と同じであるため説明を省略する。
【0048】
上位のセパレータ24を載置部材23に載置するため、把持装置30を第1ストッカ41の上方の所定位置まで移動させ、受部73L、73Rの位置をセパレータ48を把持可能にする位置に変更するとともに、把持爪75L、75L、75R、75Rの位置をセパレータ48を把持可能にする位置に変更する。
【0049】
把持機構40をセパレータ48を把持する位置に変更した後、図10に示されるように、昇降駆動部53によって把持装置30を下降させる。
なお、上位のセパレータ24を膜電極構造体22の上面に載置する方法については、下位のセパレータ21と同じであるため、説明を省略する。
【0050】
図7に戻って、把持装置30に備えられている把持機構40には、受部移動機構101・・・と把持爪移動機構99とが設けられているので、寸法の異なる板材(ワーク)の把持を1つの把持装置30で行うことができる。
1つの把持装置30で寸法の異なるワークの把持が可能となるため、複数の把持装置は不要となり、装置費用の低減を図ることができる。
【0051】
図13は第2実施例に係る受部の移動方法を説明する図であり、第1実施例と異なる点は、図下側に配置されている2つの受部73L、73Rが有する段状部84、84をワーク長手方向の外方に向くように配置し、上板64と受部73L、73L、73R、73Rを一体化させるとともに、フローテイング部(図3の符号57)から延設された上板スライドシリンダ134により受部73L、73L、73R、73Rを移動可能にするものである。
【0052】
図14は図13を実現するための把持装置の平面図である。
(a)において、把持装置30Bには、移動機構28から延設される横部材63Bに設けられ把持爪75L、75L、75R、75Rをワークの大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構99Bと、フローテイング部(図3の符号57)から延設され上板スライドシリンダ134を介して横部材63Bの上方に配置される上板64Bに一体化させた4つの受部73L、73L、73R、73Rと、これら受部73L、73L、73R、73Rをワークの大きさに合わせて移動可能とする受部移動機構101Bとが設けられている。
【0053】
受部移動機構101Bには、フローテイング部(図3の符号57)に上板スライドシリンダ134が備えられている。従って、受部73L、73L、73R、73Rの移動を人手を介することなく、横部材63Bに対して上板64Bをワークの長手方向にスライドさせることが可能となる。つまり、受部73L、73L、73R、73Rを移動させることによって、セパレータ48を好ましい位置で受けることができる。移動機構28をはじめとする、その他の構成については、第1実施例と同じであり説明を省略する。
【0054】
(b)において、上板スライドシリンダ134で上板64Bを駆動し、上板64Bを図矢印r方向にスライドさせることを示す。上板64Bと一体化されている受部73L、73L、73R、73Rの位置をスライドさせることで、(a)のセパレータ48よりも幅方向に小さなワークとしての膜電極構造体22を好ましい位置で把持することができる。なお、吸引部66、66と位置決め係合部76は、上板64Bの下方に取り付けられ、受部移動機構101Bにより移動されるが、横部材63Bに接触しないように、図7の横部材63に形状変更が施されている。
【0055】
図15は第3実施例に係る把持爪の移動方法を説明する図であり、片側のみを示す。
(a)は比較例であり、第1及び第2実施例で示されている把持爪移動機構99と同様の作用をする把持爪移動機構99Bである。すなわち、異なる大きさのワークを把持するために、把持爪75、75を駆動するシリンダには、多位置形シリンダ102が利用されている。多位置形シリンダ102の場合、複雑な構造であり費用が嵩む。そこで、多位置形シリンダ102を利用することなく、安価で且つ実現容易な例を次に説明する。
【0056】
(b)は実施例であり、把持爪75、75を駆動するシリンダ102Cは、通常の多位置形でないシリンダが利用され、把持爪75、75のフレーム136に、把持方向と平行な方向に溝137が一体的に設けられ、この溝137と係合するキー部材138が設けられ、これらキー部材138を把持方向と直角にスライド可能にする溝スライドシリンダ139が設けられている。溝137には長溝137aと短溝137bが設けられている。
【0057】
図中、実線は把持位置であり、想像線は非把持位置である。把持爪75、75の把持位置をキー部材138を移動させて長溝137aに係合された状態であり、非把持位置に対するストロークはSbである。
【0058】
(c)は実施例であり、実線は把持位置であり、想像線は非把持位置である。キー部材138は、短溝137bと係合されている。このとき、非把持位置に対するストロークはSc(Sc<Sb)である。
従って、多位置形シリンダ102を利用することなく、把持爪75、75の把持位置を2段階に設定することができ、大きさの異なるワークの把持が可能となる。
【0059】
図16は図15を実現するための把持装置の平面図である。
(a)において、把持装置30Cには、移動機構28から延設される横部材63Cに設けられ把持爪75L、75L、75R、75Rをワークの大きさに合わせて移動可能とする把持爪移動機構99Cと、フローテイング部57から延設され上板スライドシリンダ134を介して横部材63Cの上方に配置される上板64Cに付設した4つの受部をワークの大きさに合わせて移動可能とする受部移動機構101Cとが設けられている。
【0060】
受部移動機構101Cには、フローテイング部57に上板スライドシリンダ134が備えられている。従って、受部73L、73L、73R、73Rの移動を人手を介することなく、横部材63Cに対して上板64Cをワークの長手方向にスライドさせることができる。受部73L、73L、73R、73Rを移動させることによって、セパレータ48を好ましい位置で受けることができる。
【0061】
把持爪移動機構99Cは、上板64Cに取り付けられ左右の把持爪75L、75L、75R、75Rを駆動する左右の把持シリンダ95C、95Cと、上板64Cに取り付けられるガイド部材96、96と、このガイド部材96、96に移動可能に設けられているガイドスライダ97・・・と、把持爪75L、75L、75R、75Rのフレーム136、136に把持爪75L、75L、75R、75Rの移動方向に形成されている溝137、137と、これらの溝137、137に係合するキー部材138、138と、これらのキー部材138、138の位置を長溝137aあるいは短溝137bに移動させる溝スライドシリンダ139、139とからなる。
【0062】
(b)において、上板スライドシリンダ134で上板64Cを駆動し、上板64Cを図矢印s方向にスライドさせることを示す。受部73L、73L、73R、73Rをスライドさせることで、(a)よりも小さなワークとしての膜電極構造体22を好ましい位置で受けることができる。
【0063】
また、把持爪移動機構99Cの溝スライドシリンダ139、139によりキー部材138、138を長溝137a、137a側に移動させることで、(a)よりも小さなワークである膜電極構造体22を好ましい位置で把持することができる。なお、吸引部66、66と位置決め係合部76は、上板64Cの下方に取り付けられ、受部移動機構101Cにより移動されるが、横部材63Cに接触しないように、図7の横部材63に形状変更が施されている。
【0064】
図17は図2の別実施例図であり、図2と異なる点は、2基の移載装置27A、27Bを1基の移載装置27にまとめた点にある。
すなわち、移載装置27は、移載装置を移動させる移動機構28と、この移動機構28に装着されワークを把持する把持装置30とからなる。また、移動機構28は、支持部33、33と、これら支柱部33、33に掛け渡されているレール部35を備える。
【0065】
そして、下位のセパレータ21がストックされている第1ストッカ41にて下位のセパレータ21を把持し載置部材23にストロークS1で移載し、膜電極構造体22がストックされる第2ストッカ42にて膜電極構造体22を把持し載置部材23にストロークS2で移載し、第1ストッカ41にて上位のセパレータ24を把持し載置部材23にストロークS1で移載する。
【0066】
このように、移載装置27を1基に集約することで、装置費用の低減が図れる。また、2基で交互に使用するときに較べて、単位燃料電池の組立ライン10の設計自由度の向上を図ることができる。
【0067】
尚、本発明に係る把持装置は、実施の形態では燃料電池用セパレータ及び膜電極構造体の把持に利用したが、半導体ウエハー、太陽電池用の薄膜、液晶画面の薄膜などをはじめとする薄板材の把持に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、燃料電池用セパレータ及び膜電極構造体の把持に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る板材の把持及び移載方法を説明する図である。
【図2】図1を実施するための把持装置を含む単位燃料電池の組立ラインの平面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】吸引部の拡大断面図である。
【図5】図3の5−5矢視図である。
【図6】膜電極構造体を把持可能にする受部及び把持爪の配置説明図である。
【図7】本発明に係る把持装置の平面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る把持装置に設けられているエアシリンダの構造図及び作用図である。
【図10】セパレータを把持することを説明する図である。
【図11】図10(c)の要部拡大図であるとともに把持装置をさらに上昇させることを説明する図である。
【図12】セパレータを積層ステージに搬送することを説明する図である。
【図13】第2実施例に係る受部の移動方法を説明する図である。
【図14】図13を実現するための把持装置の平面図である。
【図15】第3実施例に係る把持爪の移動方法を説明する図である。
【図16】図15を実現するための把持装置の平面図である。
【図17】図2の別実施例図である。
【図18】従来の技術の基本構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0070】
21…下位のセパレータ、22…膜電極構造体、24…上位のセパレータ、28…移動機構、30、30B、30C…板材の把持装置、40…把持機構、48…セパレータ、49…ワーク、63、63B、63C…横部材、64、64B、64C…上板、66…吸引部、73L、73R…受部、75L、75R…把持爪、99、99B、99C…把持爪移動機構、101、101B、101C…受部移動機構、116…側面押圧片、117…受け爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームなどの移動機構に把持機構を設け、この把持機構で板材を把持させる板材の把持装置において、
前記把持機構は、前記移動機構に設けた横部材と、この横部材の上方に配置するように
前記移動機構に設けた上板と、前記板材の上面又は前記板材の上面及び側面に当てるために前記上板に移動可能に設けた複数個の受部と、前記上板に設け、前記受部へ前記板材を引寄せる吸引部と、前記受部に当てた前記板材の側面を押すために前記横部材に水平方向へ移動可能に設けた側面押圧片と、前記受部に当てた前記板材が落下したときに前記板材を受けさせるように前記側面押圧片の下端から伸ばした受け爪と、前記側面押圧片及び前記受け爪からなる把持爪を移動させるために前記横部材に設けた把持爪移動機構と、を備えていることを特徴とする板材の把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−23664(P2008−23664A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199573(P2006−199573)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】