説明

板材の端面加工装置

【課題】給水ノズルから当接部に供給される冷却水の飛沫が広範囲に亘って飛散するのを防止し、これにより、飛沫が板材の表面に付着し難くすること。
【解決手段】 板材の端面加工装置1は、回転砥石10の外周面に凹に周設された研磨溝11に加工対象である板材Bの外周端部を挿入して当接させ、当該圧接加工部17へ冷却水を供給する装置において、給水ノズル12の水出口121を、回転砥石10の径方向の外側から研磨溝11の溝底に向けて冷却水を供給するように配向し、給水ノズル12の下流側に水出口121から圧接加工部17まで回転砥石10の外周に沿って延伸する水ガイド15を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材、特に、液晶表示パネルといった表面の鏡面性が求められるガラス素材の周縁部を質感よく面取りする端面加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄型テレビやパーソナルコンピュータの表示画面等に使用される液晶表示パネルは、2枚のガラス基板の積層境界部に液晶を封入した構造になっている。このような液晶表示パネルを構成するガラス基板等の板材の外周端面をR状に面取りする端面加工装置として、図4や図5に示すものが知られている。
【0003】
図示したように、従来の装置では、側壁にワーク挿入口(21)が開設された保護カバー(20)内に、円盤状の回転砥石(10)が位置し、該回転砥石(10)の外周には、加工対象たる板材(B)の端面を研磨または研削して面取りするための研磨溝(11)が形成されている。また、回転砥石(10)の外周近傍には、研磨溝(11)の両脇から板材(B)の研磨部に冷却水を供給する給水ノズル(12)(12)が設けられ、保護カバー(20)の底壁(24)には保護カバー(20)の内部の空気を吸引する空気吸引ファン(図示せず)に繋がる空気吸引ダクト(22)が接続されている。
【0004】
従来の装置では、空気吸引ダクト(22)から保護カバー(20)内の空気を強制吸引しながら回転砥石(10)を駆動し、回転砥石(10)の外周の研磨溝(11)へ加工対象たる板材(B)の周縁部を押入してこれを研磨または研削し、面取り加工をおこなう。
【0005】
このとき、研磨溝(11)に対する板材(B)の当接部分に給水ノズル(12)(12)から冷却水を供給して該加工部が高温になるのを抑制する。また、高速回転する回転砥石(10)から発生する飛沫やミストは、空気吸引ダクト(22)で吸引されるので、飛沫等が作業室内に飛散するのを抑制することができる。
【0006】
しかしながら、上記従来の装置では、給水ノズル(12)(12)により研磨溝(11)の両脇から冷却水を供給する構成であるため、給水ノズル(12)(12)から吐出する冷却水が回転砥石(10)の遠心力で飛沫となって四方に飛散し、飛沫が板材(B)の表裏面に広範囲に亘って付着し易いという問題があった。そして、飛沫が板材(B)の表裏面に広範囲に亘って付着すると、これの乾燥まで長時間を要すると共に、その後に残存する飛沫の乾燥跡を除去するのに手間がかかるという問題があった。また、砥粉が高速で板ガラスにあたると、製品品質を損ねかねないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−52213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、解決しようとする問題点は、円盤状の回転砥石の外周面に凹に周設された研磨溝に加工対象である板材の外周端部を挿入して当接させ、当該当接部へ給水ノズルから冷却水を供給する板材の端面加工装置において、給水ノズルから当接部に供給される冷却水の飛沫が広範に亘って飛散するのを防止し、これにより、飛沫が板材の表面に付着し難くする点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、給水ノズルの水出口を、回転砥石の径方向の外側から研磨溝の溝底に向けて冷却水を供給するように配向し、給水ノズルの下流側に前記水出口から前記当接部近傍まで回転砥石の外周に沿って延伸する水ガイドを設けたことを最も主要な特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1に係る発明によれば、給水ノズルの水出口は回転砥石の半径方向の外側から溝底に向けて配向し、吐出方向と回転面が同一平面上にあるから平面外への跳ね返りが生じず、給水ノズルから吐出される冷却水は、研磨溝の溝底に向けてピンポイント的に確実に送り込まれる。一方、給水ノズルには、水出口から回転砥石の回転方向へ延長されて当接部近傍に至る水ガイドが設けられ、これが回転砥石の外周面に沿う態様となっている。従って、水出口から吐出された冷却水は、水ガイドによって、回転砥石の外周面に沿って流れて板材の当接部近傍まで総て案内されるから、冷却水が遠心力で飛散することなく当接部に確実に届いて当接部を効果的に冷却する。すなわち、冷却水は、吐出されたものが総て研磨または研削がなされる直前部分まで案内されるので、使用する水を少なくでき、また、飛沫の発生量を低減でき、かつ、飛沫が発生したとしても板材の表裏に広範囲に亘って付着する心配がない。なお、回転砥石による研磨をおこなう場合には、この研削溝は研磨溝ということができる。すなわち、本願でいう研削は研磨も含まれるものである。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、水出口から水ガイドを経て前記当接部に至る範囲を当該当接部分は開口して残余を被覆した保護カバーと、前記当接部より板材側に位置した送風口から送風をおこなう送風手段と、保護カバー内に設けた吸気口から保護カバー内の空気を吸引する空気吸引手段と、を具備し、送風口から吸気口へ向かう空気の流れの中に前記当接部を位置させたことを主要な特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項2に係る発明は、送風口から送り出されて吸気口に向かう空気の流れの中に板材の当接部が位置するから、当接部で冷却水の飛沫が多少発生することがあっても、この飛沫は、板材側へはほとんど移動せず、送風口から送り出される空気の流れに乗って吸気口に案内される。従って、冷却水の飛沫が一層飛散しにくくなり、かつ、板材の表裏に付着し難くなる。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、送風手段は、板材の両面に対向させて送風口を備えたことを主要な特徴とする。
【0014】
すなわち、請求項3に係る発明は、研磨溝に挿入された板材の表面と裏面の夫々に臨む位置に設けられた送風口から送り出される空気が、研磨溝に対する板材の当接部を包み込むように対称に流れる。従って、一層、冷却水の飛沫が四方に飛散しにくくなって、板材の表裏に付着し難くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は次の特有の効果を有する。まず、請求項1に係る発明によれば、水出口から吐出された冷却水は、水ガイドによって、回転砥石の外周面に沿って流れて板材の当接部近傍まで総て案内されるから、冷却水が遠心力で飛散することなく当接部に確実に届いて当接部を効果的に冷却する。すなわち、冷却水は、吐出されたものが総て研磨または研削がなされる直前部分まで案内されるので、使用する水を少なくでき、また、飛沫の発生量を低減でき、かつ、飛沫が発生したとしても板材の表裏に広範囲に亘って付着する心配がない。
【0016】
また、請求項2に係る発明によれば、当接部で冷却水の飛沫が多少発生することがあっても、この飛沫は、板材側へはほとんど移動せず、送風口から送り出される空気の流れに乗って吸気口に案内される。従って、冷却水の飛沫が一層飛散しにくくなり、かつ、板材の表裏に付着し難くなる。
【0017】
請求項3に係る発明では、送風口から送り出される空気が、研磨溝に対する板材の当接部を包み込むように対称に流れる。従って、一層、冷却水の飛沫が四方に飛散しにくくなって、板材の表裏に付着し難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る板材の端面加工装置の横断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る板材の端面加工装置の要部の斜視図である。
【図3】図1のI−I断面図である(平面図)。
【図4】従来例の説明図である(横断面図)。
【図5】従来例の説明図である(平面図)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る板材の端面加工装置の横断面図であり、図2は、その要部の斜視図である。図3は、図1のI−I断面図である。
【0020】
端面加工装置(1)は、回転砥石(10)と、保護カバー(20)と、送風ダクト(30)を、主要な構成としている。
【0021】
回転砥石(10)は円盤状であり、矩形箱状の保護カバー(20)内に収容されている。回転砥石(10)の外周面には円弧状の溝底(16)を有する研磨溝(11)が周設され、その外周に臨む位置には給水ノズル(12)が配設されている。
【0022】
給水ノズル(12)には、水入口(120)から水出口(121)に繋がるL字状の流路(14)が貫通している。水出口(121)は、回転砥石(10)に周設された研磨溝(11)の溝底(16)に臨んでいる。又、水入口(120)には給水配管(図示せず)が接続されるようになっている。
【0023】
給水ノズル(12)は、回転砥石(10)の外周に対向する略円弧状の案内面(13)を具備している。図示したように案内面(13)は、水出口(121)の形成部から回転砥石(10)の外周面に沿う態様で回転砥石(10)の回転方向(本実施の形態では、図1において矢印で示す反時計方向)にわずかな間隙をあけて延伸し、圧接加工部(17)である当接部の近傍に至っている。
【0024】
これにより、水出口(121)から吐出される冷却水は、跳ね返ることなく、又、軸方向に飛散することなくほぼ総てが案内面(13)に案内されて板材(B)の圧接加工部(17)近傍に確実に供給される。すなわち、給水ノズル(12)に於ける案内面(13)の下流部が水ガイド(15)を形成している。換言すれば、給水ノズル(12)には、水出口(121)から回転砥石(10)の回転方向へ延長して板材(B)の圧接加工部(17)の近傍に至る水ガイド(15)が回転砥石(10)の外周面に沿う態様で設けられている。
【0025】
保護カバー(20)は、給水ノズル(12)の水出口(121)から水ガイド(15)の形成域を経て板材(B)の圧接加工部(17)に至る範囲を包囲している。また、保護カバー(20)の側壁には、板材(B)を挿入して回転砥石(10)の研磨溝(11)に圧接するためのワーク挿入口(21)が開設(開口)されている。このワーク挿入口(21)は、回転砥石(10)の外周に臨むように設けられてる。
【0026】
図2および図3に示すように、保護カバー(20)に於けるワーク挿入口(21)の外側には、送風口(31)(31)が互いに対向するように送風ダクト(30)(30)が配設されている。これにより、送風口(31)(31)は、板材(B)の表面と裏面の夫々に臨んだ状態で、保護カバー(20)に向けて開放する構成となっている。送風ダクト(30)の内部には、図示しない空気入口から送風口(31)(31)に繋がる空気通路(32)が設けられ、図示しない送風ファンから強制的に空気が送り込まれるようになっている。従って、本実施の形態では、送風ファンと送風ダクト(30)の組み合わせが、発明特定事項たる「送風手段」に対応する。
【0027】
図3に示すように、保護カバー(20)の側壁には空気吸引ダクト(22)の吸気口(23)が設けられている。即ち、吸気口(23)は保護カバー(20)内に開放している。又、空気吸引ダクト(22)の下流側には図示しない空気吸引ファンが接続されている。尚、本実施の形態では、空気吸引ファンと空気吸引ダクト(22)の組み合わせが、発明特定事項たる「空気吸引手段」に対応する。
【0028】
端面加工装置(1)では、加工対象たる液晶表示パネル等の板材(B)の端部を、送風ダクト(30)(30)に於ける送風口(31)(31)の間から挿入して回転砥石(10)の外周の研磨溝(11)内に圧接させると共に、図示しない送風ファンを作動させて送風ダクト(30)(30)の送風口(31)(31)から板材(B)の圧接加工部(17)(研磨溝(11)との圧接部)に空気を供給しつつ、空気吸引ダクト(22)の下流側に接続された空気吸引ファン(図示せず)によって保護カバー(20)内の空気を吸引する。すると、送風口(31)から吐出されて吸気口(23)に向かう空気の流れの中に圧接加工部(17)が位置することとなる。
【0029】
この状態で、給水ノズル(12)から冷却水を供給し、回転砥石(10)を回転させる。給水ノズル(12)の水出口(121)は研磨溝(11)の溝底(16)に向けて開口しているから、給水ノズル(12)から吐出される冷却水は、研磨溝(11)の溝底(16)に向けて確実に送り込まれる。
【0030】
一方、給水ノズル(12)には、圧接加工部(17)の近傍に至る水ガイド(15)が設けられ、これは、回転砥石(10)の外周面に沿って略円弧状に湾曲している。従って、水出口(121)から吐出された冷却水は、水ガイド(15)によって、回転砥石(10)の外周面に沿って流れて板材(B)圧接加工部(17)の近傍までほぼ全量が案内されるから、冷却水の飛散が抑制され、該冷却水が板材(B)の圧接加工部(17)に確実に届いて該圧接加工部(17)を効果的に冷却する。従って、水ガイド(15)を具備しない既述従来のものと相違し、冷却水の飛沫が板材(B)の表裏に広範囲に亘って付着する心配がない。また、冷却水が効率的に使用されるため、水量も少なくて済むというメリットが生じる。
【0031】
一方、本実施の形態では、送風ダクト(30)(30)の送風口(31)(31)から板材(B)の圧接加工部(17)に送風されていると共に、送風口(31)から送り出されて吸気口(23)に向かう空気の流れの中に圧接加工部(17)が位置している。従って、送風された空気は、送風ダクト(30)(30)の送風口(31)(31)から板材(B)の圧接加工部(17)を包み込む態様で流れて空気吸引ダクト(22)に吸引される。よって、板材(B)の圧接加工部(17)での飛沫が多少発生することがあっても、この飛沫は、送風口(31)(31)から送り出される空気の流れに乗って吸気口(23)に移動し易くなり、これにより、冷却水の飛沫が一層飛散しにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、砥粉の飛散を防止するのであれば、板ガラスに限らず、種々の板体の周縁部の面取りに適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
(1) 端面加工装置
(10) 回転砥石
(11) 研磨溝
(12) 給水ノズル
(15) 水ガイド
(16) 溝底
(17) 圧接加工部(当接部)
(23) 吸気口
(31) 送風口
(121) 水出口
(B) 板材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の回転砥石の外周面に凹に周設された研磨溝に加工対象である板材の外周端部を挿入して当接させ、当該当接部へ給水ノズルから冷却水を供給する板材の端面加工装置において、
給水ノズルの水出口を、回転砥石の径方向の外側から研磨溝の溝底に向けて冷却水を供給するように配向し、
給水ノズルの下流側に前記水出口から前記当接部近傍まで回転砥石の外周に沿って延伸する水ガイドを設けたことを特徴とする板材の端面加工装置。
【請求項2】
水出口から水ガイドを経て前記当接部に至る範囲を当該当接部分は開口して残余を被覆した保護カバーと、
前記当接部より板材側に位置した送風口から送風をおこなう送風手段と、
保護カバー内に設けた吸気口から保護カバー内の空気を吸引する空気吸引手段と、
を具備し、
送風口から吸気口へ向かう空気の流れの中に前記当接部を位置させたことを特徴とする請求項1に記載の板材の端面加工装置。
【請求項3】
送風手段は、板材の両面に対向させて送風口を備えたことを特徴とする請求項2に記載の板材の端面加工装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−260132(P2010−260132A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112570(P2009−112570)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【出願人】(591274303)株式会社芝技研 (10)
【Fターム(参考)】