説明

板状通気体及び積層体

【課題】調湿性能を有する内装仕上面において、有害ガスの吸着性能、再放出防止性能等を高める。
【解決手段】平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、結合材、吸着性物質及び/または光触媒物質を必須成分とし、有色骨材100重量部に対し、結合材を固形分換算で3〜30重量部、吸着性物質を50重量部以下、光触媒物質を10重量部以下含有し、厚みが0.2〜8mmである粒子凝集型通気体の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されている板状通気体を調湿材に積層する材料として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物における壁面、天井等の内装仕上面に適用できる板状通気体及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な居住空間に対する関心が高まっている。これに関し、壁、天井等の内装面の表面仕上げにおいては、結露防止やカビ発生防止、あるいは湿度の調整による不快感抑制、等の機能を有する調湿性仕上材への期待が高まっている。
例えば、特許文献1(特開2001−18312号公報)には、通気性を有する不織布と覆材との間に備長炭粒子を固定化した調湿シートが開示されている。また、特許文献2(特開2003−155786号公報)には、吸放湿性材料と水硬性物質とを含む吸放湿性基材の少なくとも一面に、吸放湿性材料粒粉が添加された塗料による塗膜層が形成されてなる吸放湿性建材が開示されている。
【0003】
ところで、近年、室内環境においてはシックハウス問題等が社会的にクローズアップされている状況であり、各種有害ガスの拡散防止が求められている。このような有害ガスとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等が挙げられる。上述の特許文献では、木炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン等の吸放湿性材料が使用されており、このような吸放湿性材料による有害ガスの吸着性能もある程度期待できる。しかしながら、吸放湿性材料の性能に頼るのみでは、有毒ガスの吸着効果には限界がある。また、一旦吸着された有害ガスが、再度室内空間へ放出されるおそれもある。このような有害ガスの再放出は、室内環境向上の妨げとなるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−18312号公報
【特許文献2】特開2003−155786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、調湿性能を有する内装仕上面において、有害ガスの吸着性能、再放出防止性能等を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、有色骨材と、結合材と、吸着性物質及び/または光触媒物質とを必須成分とする粒子凝集型通気体の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されてなる板状通気体が、調湿材の上に積層される材料として適していることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0007】
1.平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、結合材、吸着性物質及び/または光触媒物質を必須成分とし、有色骨材100重量部に対し、結合材を固形分換算で3〜30重量部、吸着性物質を50重量部以下、光触媒物質を10重量部以下含有し、厚みが0.2〜8mmである粒子凝集型通気体の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されていることを特徴とする板状通気体。
2.調湿材の上に、1.記載の板状通気体が積層されていることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内装仕上面において調湿性能を確保しつつ、有害ガスの吸着性能、再放出防止性能等を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0010】
本発明の板状通気体は、調湿材の上に積層される材料であり、調湿材の水蒸気吸脱着性を阻害せず、有害ガスの吸着性能、再放出防止性能等を高める性能を有するものである。この板状通気体は、有色骨材と、結合材と、吸着性物質及び/または光触媒物質とを必須成分とする粒子凝集型通気体(以下単に「通気体」ともいう)の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されたものである。
【0011】
このうち、有色骨材としては、自然石の粉砕物、陶磁器の粉砕物、及び着色骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用できる。このような有色骨材は、装飾性を付与する成分である。本発明では、色相が異なる2種以上の有色骨材を組み合わせて用いることにより、積層体表面の多彩感を高めることができる。有色骨材の色相は、無彩色、有彩色のいずれであってもよく、本発明の効果が損われない限り、透明性を有するものであってもよい。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、樹脂チップ、金属粒、木粉等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。なお、本発明における有色骨材は、粒状の形状を有するものであり、後述の通気遮断材料とは異なるものである。
【0012】
有色骨材の平均粒子径は0.01〜1mm(好ましくは0.02〜0.5mm)である。平均粒子径が0.01mm未満では、十分な通気性が得られ難く、下層の調湿性能を阻害するおそれがある。また、有色骨材による多彩感が得られ難く、仕上り外観が単調な色彩となってしまう。通気体が光触媒物質を含む場合には、通気体内部の光触媒物質に光が届きにくくなり、有害ガス分解効果の点で不利となる。有色骨材の平均粒子径が1mm超の場合は、板状通気体の隠蔽性が不十分となり調湿材が露出しやすく、また汚染物質の拭き取り等が困難となるおそれがある。なお、本発明における平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0013】
通気体における結合材としては、例えばセメント、石膏、樹脂等が使用できる。有色骨材の色彩を活かすためには、透明被膜が形成可能な樹脂が好適である。このような樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0014】
有色骨材と結合材の比率は、有色骨材100重量部に対して、結合材を固形分換算で3〜30重量部(好ましくは5〜20重量部)とする。両成分の比率がこのような範囲内であれば、十分な通気性を有する粒子凝集型通気体を形成することが可能となる。結合材が3重量部未満である場合は、有色骨材の脱離等が発生しやすくなる。結合材が30重量部を超える場合は、下層の調湿性能を阻害するおそれがあり、また通気体の厚膜化等が困難となる。
【0015】
吸着性物質は、有害ガス(例えば、ホルムアルデヒド、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等)の吸着、再放出防止に有効な成分である。吸着性物質としては、例えばアミン化合物、尿素化合物、アミド化合物、イミド化合物、ヒドラジド化合物、アゾール化合物、アジン化合物、層状リン酸化合物、アルミノ珪酸塩等が挙げられる。この中でも、層状リン酸化合物、アルミノ珪酸塩から選ばれる1種以上が好適であり、特にアルミノ珪酸塩が好適である。このような吸着性物質の平均粒子径は、通常0.5〜100μm(好ましくは1〜50μm)程度である。
【0016】
このうち、層状リン酸化合物としては、層状リン酸ジルコニウム、層状リン酸亜鉛、層状リン酸チタン、層状リン酸アルミニウム、層状リン酸マグネシウム、層状リン酸セリウム等が挙げられ、これら層状リン酸化合物にアミン化合物がインターカレートされたもの好適である。アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン等が挙げられる。
アルミノ珪酸塩としては、亜鉛、銅、銀、コバルト、ニッケル、鉄、チタン、バリウム、スズ及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属とアルミニウムと珪素の複合酸化物が挙げられる。
【0017】
吸着性物質の構成比率は、有色骨材100重量部に対し、通常50重量部以下、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.1〜40重量部、さらに好ましくは0.5〜30重量部とする。吸着性物質の構成比率が小さすぎる場合は、有害ガスの吸着効果、再放出防止効果等が不十分となる。吸着性物質の構成比率が大きすぎる場合は、表面意匠性や耐水性等に悪影響を与えるおそれがある。また、コスト面でも不利となる。
【0018】
光触媒物質は、有害ガスの分解、再放出防止に有効な成分であり、さらに、板状通気体表面に付着した汚染物質(タバコのヤニ等)を分解する性能も有する。光触媒物質としては、例えばTiO、ZnO、Bi、BiVO、SrTiO、CdS、InP、InPb、GaP、GaAs、BaTiO、BaTiO、BaTi、KNbO、Nb、Fe、Ta、Ta、KTaSi、WO、SnO、NiO、CuO、SiC、MoS、RuO、CeO等の他、これらと金属、金属酸化物、層状化合物等との複合体等が挙げられる。このような光触媒物質の平均粒子径は、通常0.001〜1μm(好ましくは0.01〜0.5μm)程度である。
【0019】
光触媒物質の構成比率は、有色骨材100重量部に対し、通常10重量部以下、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部とする。光触媒物質の構成比率が小さすぎる場合は、有害ガスの分解効果、再放出防止効果が不十分となる。光触媒物質の構成比率が大きすぎる場合は、結合材の早期劣化を招くおそれがあり、また、板状通気体の色彩が制限されやすくなる。
【0020】
本発明では、上述の吸着性物質と光触媒物質を併用することが望ましく、このような物質の併用によって、有害ガスの吸着性、分解性、再放出防止性等において長期にわたり優れた性能を得ることができる。
【0021】
本発明では、上述のような有色骨材と、結合材と、吸着性物質及び/または光触媒物質とを含む混合物を成形することにより、粒子凝集型通気体を得ることができる。この粒子凝集型通気体は、有色骨材等の粒子が比較的少量の結合材で固定化された状態、すなわち粒子どうしが凝集した状態で、粒子間の空隙により通気性が発現されるものである。粒子凝集型通気体には、本発明の効果が著しく損なわれない限り、必要に応じ上述の成分以外に、例えば、顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等、あるいは平均粒子径1mm超の骨材等が含まれていてもよい。
【0022】
粒子凝集型通気体の厚みは、通常0.2〜8mm、好ましくは0.5〜4mm、より好ましくは0.8〜2mmである。粒子凝集型通気体の厚みがこのような範囲内であれば、通気性を確保しつつ、通気体に十分な美観性、隠蔽性等を付与することができる。
【0023】
本発明の板状通気体は、上記粒子凝集型通気体の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されていることを特徴とするものである。本発明の通気遮断材料とは、通気体表面の一部分を占めるように存在する薄片状の材料であり、有毒ガス等が通過する際に、通気体内部に対流を生じさせるものである。本発明では、このような通気遮断材料の作用により、下層の調湿材の水蒸気吸脱着作用に伴い、有毒ガスの吸着及び/または分解(以下単に「吸着分解」ともいう)が促進される。具体的に、有毒ガスの大半は吸湿時に通気体内で吸着分解される。仮に有毒ガスが通気体を通過して調湿材に到達した場合であっても、これらは放湿時に再度通気体を通過する。その際、通気体の表層に存在する通気遮断材料の作用により、通気体の内部では対流が生じる。この対流によって、有毒ガスが吸着性物質や光触媒物質に接触する確率が高まり、吸着分解作用が効率的に発揮されることとなる。
【0024】
本発明における通気遮断材料としては、上述のような作用が発揮可能なものであれば、その素材は特に限定されず、例えば雲母、タルク、板状カオリン、珪砂、硫酸バリウムフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク、貝殻片、金属片等の無機質片、あるいはゴム片、プラスチック片、木片、わらすさ、植物片等を使用することができる。これらは、コーティング等による処理が施されたものであってもよい。
【0025】
通気遮断材料としては、透明性を有するものが好適である。通気遮断材料が透明性を有することにより、通気体内部に光触媒物質が含まれる場合、その光触媒物質による有毒ガス分解作用を高めることができる。このような材料の透明性は、薄片状の厚さ方向において透明性を有するものであればよい。透明性を有する通気遮断材料としては、例えば天然雲母、透明ガラスフレーク、透明プラスチック片等が挙げられ、特に天然雲母が好適である。これらは、透明性が損なわれない範囲であれば、着色されていてもよい。
【0026】
通気遮断材料の平均粒子径は、通常0.05〜20mm、好ましくは0.1〜15mm、より好ましくは0.5〜10mmであり、平均厚みは、通常0.001〜2mm、好ましくは0.005〜1mm、より好ましくは0.01〜0.3mmである。なお、ここに言う平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。平均厚みは、例えばマイクロメーターにより測定される値の平均値である。
【0027】
粒子凝集型通気体の表面において通気遮断材料が占める面積は、本発明の効果が奏される範囲内で適宜設定すればよい。但し、通気遮断材料が占める面積が大きすぎる場合は、下層の調湿材の性能が阻害されるおそれがあるため注意を要する。粒子凝集型通気体の表面において通気遮断材料が占める面積は、通常2〜50%(好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜30%)程度とすればよい。このような範囲内であれば、下層の調湿性能を十分に確保しつつ、有毒ガスの吸着分解促進効果を得ることができる。
【0028】
本発明の板状通気体は、例えば、
(1)通気遮断材料を型枠内の底面に散在させた後、通気体形成用組成物を型枠内全体に塗付し、当該組成物を乾燥させた後に脱型する方法、
(2)通気体形成用組成物を板状に成形する際に、通気遮断材料を散布する方法、
等により製造できる。
上記(1)において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。
また、上記(2)の通気体形成用組成物を板状に成形する方法としては、例えば、シート状基材に通気体形成用組物を塗付する方法が挙げられる。このシート状基材としては、積層する調湿材の効果を阻害しないものであれば特に限定されないが、可とう性を有するものが好ましく、例えば、合成紙、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等の繊維からなる織布又は不織布、セラミックペーパー、ガラスクロス、メッシュ等が挙げられる。
【0029】
上記(1)では型枠側が積層体表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、積層体表面に所望の凹凸模様を付与することができる。一方、上記(2)では、通気体形成用組物の乾燥前に種々の凹凸模様を形成することもできる。
上記(1)、(2)において各材料を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。また、通気体形成用組成物を乾燥させる際には、加熱することもできる。
上記(2)では、通気体形成用組成物が未乾燥のうちに通気遮断材料を散布することが望ましい。
【0030】
板状通気体の製造時には、本発明の効果を阻害しない限り、例えば、補強材(織布、不織布、セラミックペーパー、合成紙、ガラスクロス、メッシュ等)を積層することができる。その他、当業者の知識に基づき種々の変更を加えることもできる。
【0031】
本発明における板状通気体は、調湿材の上に積層されるものである。調湿材としては、湿度の変化により水蒸気の吸着(吸湿)及び脱着(放湿)を繰り返し行うことができる性能を有するものであればよい。このような調湿材としては、例えば吸放湿性物質、結合材を主成分とするもの等が使用できる。
【0032】
吸放湿性物質としては、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が使用できる。吸放湿性物質の平均粒子径は、通常0.001〜1mm、好ましくは0.01〜0.5mm程度である。
結合材としては、上記吸放湿性物質を固定化可能なものが使用でき、例えばセメント、石膏、樹脂等が挙げられる。吸放湿性物質と結合材の比率は通常、吸放湿性物質100重量部に対し、結合材が固形分換算で5〜500重量部程度となるように調製すればよい。
【0033】
調湿材の吸放湿量は、調湿材の厚みにより変化するが、通常30g/m以上(好ましくは40g/m以上)である。このような調湿材を使用することによって、室内空間において十分な調湿効果を得ることができる。なお、ここに言う吸放湿量は、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順により、調湿材を対象に測定した値である。調湿材の厚みは、通常0.5〜8mm、好ましくは0.6〜4mm、より好ましくは0.8〜2mmである。
【0034】
本発明の板状通気体は、主に建築物の内装仕上げに適用できるものである。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板等が挙げられる。これら基材は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0035】
本発明の板状通気体は、流通時には板状成形体として取り扱い、これを上述のような建築物内装面の各部位に施工して内装仕上げを行うことができる。
調湿材は、最終的な仕上面において、板状通気体の下層に存在する状態であればよい。具体的な内装仕上げ方法としては、例えば、
(a)調湿材と板状通気体が一体に積層された積層体を基材に貼着する方法、
(b)基材に調湿材を積層した後、板状通気体を積層する方法、
(c)調湿性を有する基材に板状通気体を積層する方法、
等を採用することができる。本発明では、最終的な仕上面、すなわち調湿材と板状通気体との積層体において、下層の調湿材による吸放湿性能が有効に作用する限り、ここに例示した以外の方法で板状通気体を積層することもできる。
【0036】
上記(a)において、調湿材と板状通気体が一体に積層された積層体とは、例えば、板状通気体製造時に、調湿材を積層することにより製造されたものである。このような、積層体を基材に貼着する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。
上記(b)において、基材に調湿材を積層する方法として、調湿性を有する接着剤、粘着剤、等の調湿材形成用組成物、あるいは調湿性を有する粘着テープ等で直接基材に接着することにより、積層することもできる。
上記(c)の方法としては、調湿性を有する基材に通気体形成用組成物を塗付する方法、または、板状通気体を(a)と同様に調湿性を有する基材に貼着することにより積層することもできる。
本発明では最終的な仕上面における吸放湿量は30g/m以上であればよいが、複数の調湿材を用いたり、あるいは板状通気体自体に調湿性能を付与する等の手段により、70g/m以上(さらには100g/m以上)とすることも可能である。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0038】
(調湿材形成用組成物の製造)
吸放湿性物質100重量部、結合材18重量部(固形分)、骨材A120重量部、造膜助剤3重量部、及び水100重量部を均一に攪拌・混合することにより、調湿材形成用組成物を製造した。この調湿材形成用組成物の硬化膜(乾燥厚み1.5mm)の吸放湿量を、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定したところ、160g/mであった。
【0039】
(通気体形成用組成物の製造)
・通気体形成用組成物1
骨材B100重量部、結合材8重量部(固形分)、吸着性物質8重量部、光触媒物質1重量部、造膜助剤2重量部及び水25重量部を均一に攪拌・混合することにより、通気体形成用組成物1を製造した。
【0040】
・通気体形成用組成物2
骨材B100重量部、結合材8重量部(固形分)、造膜助剤2重量部及び水25重量部を均一に攪拌・混合することにより、通気体形成用組成物2を製造した。
【0041】
なお、調湿材形成用組成物及び通気体形成用組成物の製造においては、以下の原料を使用した。
・結合材:アクリル樹脂エマルション(ガラス転移温度15℃、固形分50重量%)
・吸放湿性物質:ベーマイト(平均粒子径150μm)
・骨材A:珪砂(平均粒子径120μm)
・骨材B:着色珪砂(淡黄色、平均粒子径120μm)
・吸着性物質:アルミノ珪酸塩(平均粒子径3μm)
・光触媒物質:アナターゼ型酸化チタン(平均粒子径0.02μm)
・造膜助剤:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート
【0042】
(試験例1)
離型剤を塗布した型枠(縦150mm×横70mm×深さ5mm)の内面に、
天然雲母(平均粒子径2mm、平均厚み30μm)を散在させた後、通気体形成用組成物1を型枠内全体に流し込み、24時間後、調湿材形成用組成物を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体1を得た。この積層体1の調湿材の厚みは1.5mm、通気体の厚みは1.5mm、天然雲母が占める面積は8%であった。得られた積層体1につき以下の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0043】
(1)調湿性能
積層体の裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした後、JIS A6909:2003「建築用仕上塗材」7.32.2の手順によって測定した。
【0044】
(2)吸着分解性能1
予め裏側面をアルミニウム粘着テープでシールした積層体を試料とした。この試料を3リットルにおい袋に入れ、ホルムアルデヒド(20ppm)を拡散させたwet air(23℃・90%RH)を、このにおい袋中に充填して密閉した。30分後、検知管を用いて、におい袋中のホルムアルデヒド濃度を測定し、吸着分解率を下記式によって求めた。
吸着分解率(%)=[(初期ホルムアルデヒド濃度−試験後ホルムアルデヒド濃度)/初期ホルムアルデヒド濃度]×100
【0045】
(3)再放出防止性能
上記(2)で試験後の試料を新たな3リットルにおい袋中に入れ、dry air(23℃・45%RH)を充填して密閉した。このにおい袋を50℃条件下、24時間加熱後、検知管を用いて、におい袋中のホルムアルデヒド濃度を測定し、ホルムアルデヒドの再放出の有無を確認した。評価は、ホルムアルデヒドの再放出が認められなかったものを○、再放出が認められたものを×とした。
【0046】
(4)吸着分解性能2
積層体の表裏面にそれぞれ漏斗を向い合わせに取り付けるとともに、裏面側の漏斗にポンプを接続し、裏面側の漏斗からアンモニアガス(30ppm)を強制的に透過させた。3Lのアンモニアガスを透過させた後、検知管を用いて、表面側のアンモニアガスの濃度を測定し、下記式によって吸着分解率を求めた。
吸着分解率(%)=[(初期アンモニアガス濃度−透過後アンモニアガス濃度)/初期アンモニアガス濃度]×100
【0047】
(試験例2)
天然雲母が占める面積を15%とした以外は、試験例1と同様にして積層体2を作製し、各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0048】
(試験例3)
不織布(縦150mm×70mm×0.4mm)上に、通気体形成用組成物1を塗付し、天然雲母(平均粒子径2mm、平均厚み30μm)を散在させ、23℃下で24時間乾燥後、板状通気体を得た。この板状通気体の通気体の厚みは1.5mm、天然雲母が占める面積は8%であった。
得られた板状通気体をアルミニウム板上に調湿材形成用組成物1を用いて接着、積層(積層体3)、23℃下で24時間乾燥させ積層体3Aを作製した。なお、このときの調湿材形成用組成物の厚みは1.5mmとした。
また、得られた板状通気体裏面(天然雲母が散在しない面)に調湿材形成用組成物1を塗付し、23℃下で24時間乾燥させ積層体3Bを作製した。なお、このときの調湿材形成用組成物の厚みは1.5mmとした。
試験例1と同様にして、試験(1)、(2)、(3)を積層体3A、試験(4)を積層体3Bにて実施した。結果を表1に示す。
【0049】
(試験例4)
離型剤を塗布した型枠(縦150mm×横70mm×深さ5mm)の内面に、通気体形成用組成物1を型枠内全体に流し込み、24時間後、調湿材形成用組成物を流し込み、
こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体4を得た。この積層体4の調湿材の厚みは1.5mm、通気体の厚みは1.5mmであった。得られた積層体4につき各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0050】
(試験例5)
通気体形成用組成物1に替えて通気体形成用組成物2を使用した以外は、試験例1と同様にして積層体5を作製し、各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.01〜1mmの有色骨材、結合材、吸着性物質及び/または光触媒物質を必須成分とし、有色骨材100重量部に対し、結合材を固形分換算で3〜30重量部、吸着性物質を50重量部以下、光触媒物質を10重量部以下含有し、厚みが0.2〜8mmである粒子凝集型通気体の表面に、薄片状の通気遮断材料が散在した状態で埋設されていることを特徴とする板状通気体。
【請求項2】
調湿材の上に、請求項1記載の板状通気体が積層されていることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2009−2145(P2009−2145A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130624(P2008−130624)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】