説明

枚葉搬送用トレイおよびトレイマガジン

【課題】 薄板状の物品を一枚ずつ載置して、複数積み重ねた状態で保管することが可能な枚葉搬送用トレイであって、積み重ねた場合にもトレイに由来するダストが発生しない枚葉搬送用トレイと、このトレイを保持するトレイマガジンを提供する。
【解決手段】 枚葉搬送用トレイ1の上下の積み重ね部の所定位置に上下に貫通する吸引孔20aを設けた。また、上下の積み重ね部をクリーン対策材料からなる樹脂ブロック8で構成した。更にこれら枚葉搬送用トレイ1を積み重ねた状態で保持するトレイマガジンには、その最下段又は最上段のトレイの吸引孔20aから吸引する様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板状の物品を1枚ずつ載置して搬送するトレイに関する。特に、搬送の際にトレイからダストが発生せず、搬送する薄板状の物品(枚葉)を汚染することのない枚葉搬送用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薄型表示装置の製造工程等において、ガラス基板に代表される薄板状の物品を搬送する技術が必要となっている。薄板状の物品は捻れや撓み等の変形が発生しやすく、搬送中に変形が原因で周囲に接触して表面に傷が付いたり、破損してしまう恐れがある。このため搬送には、薄板状の物品を変形させずに載置できる専用の容器が用いられる。
【0003】
薄板状の物品を、1枚ずつ個別の容器に載置して搬送することで、搬送中の物品の変形を防止することができる。しかしこのような搬送形態では、搬送途中で一時保管を行う場合に、保管スペースを広く占めてしまうという問題があった。また、別の場所にまとめて移送したい場合にも手間がかかるという問題があった。
【0004】
そこで、薄板状の物品を個別に載置可能であり、且つ一時保管や別の場所への移送の際には容器同士を積み重ねることのできる容器が考案された。しかしながら、これらの容器には、容器内にダストが蓄積したり、積み重ねる際に自身からダストが発生して載置した物品を汚染してしまうという問題が発生した。また、積み重ねた場合の全体の重量が重くなり、保管や運搬が不便であるという問題があった。
【0005】
このような問題点を克服すべく、薄板状の物品を搬送するために、複数枚の物品を一度に収容するカセットが考案された。しかし、このようなカセットを用いて装置間の搬送を行う場合には、物品を投入する各装置の入り口に、薄板状の物品をカセットから取り出して投入するための専用の投入ロボットが必要となった。
【0006】
薄型表示装置等は、クリーンルーム内で製造されることが多く、クリーンルーム内の搬送が必要となる。クリーンルーム内の各製造装置にガラス基板を投入するためには、ダストの発生が極めて少なく、且つ無人運転が可能なクリーンルーム対応の投入ロボットが必要とされる。このような投入ロボットは非常に高価であり、搬送システムの導入コストの増大を招いていた。
【0007】
また、近年、薄型表示装置の急激な大型化が進んでおり、表示装置に使用される大型のガラス基板の重量は、1枚が数十キログラムとなっている。更に、大型のガラス基板を収容するカセットには相当の強度が要求されているために、カセット自体の重量が大きくなっている。通常、搬送には20枚から40枚のガラス基板を収容して一度に搬送する箱状のカセットが用いられているが、ガラス基板を収容したカセットの総重量は、1トンを超える場合がある。
【0008】
大型化して重いガラス基板を投入するためのロボットが、更に高価なものとなっているばかりか、総重量が1トン前後のカセットを工程と工程の間で搬送するためにはクレーンが必要になっている。これらの設備が必要なために、カセットを使用する搬送システムでは、搬送する物品の大型化に伴って著しくシステムの導入コストが増大し、問題となっている。
【0009】
また、1トン前後のカセットを人力で搬送することが非常に困難になってきたために、投入ロボットやクレーンが調整や修理のために停止したとき、ガラス基板の搬送が中断してしまう可能性がでてきた。このため、従来の搬送システムにおいては、投入ロボットやクレーンの停止によって薄型表示装置の製造工程が停止してしまい、製造工程全体の稼働率の低下を招く恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、薄板状の物品を一枚ずつ載置し、搬送し、複数枚積み重ねた状態で保管することのできる枚葉搬送用トレイであって、積み重ねた場合にもダストの発生によって物品を汚染することがなく、ランダムな取り出しに対応可能であって、しかも軽量化された枚葉搬送用トレイを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、複数積み重ねた状態で保管することが可能な枚葉搬送用トレイであって、上下の積み重ね部の所定位置に上下に貫通する吸引孔を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1記載の枚葉搬送用トレイであって、上下の積み重ね部を樹脂ブロックで構成したことを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1記載の枚葉搬送用トレイを積み重ねた状態で保持するトレイマガジンであって、最下段又は最上段のトレイの吸引孔から吸引する事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願請求項1記載の発明の枚葉搬送用トレイによれば、上下に積み重ねることにより、積み重ね部からダストが発生しても、これを吸引孔により吸引して容易に取り除くことができ、収納する物品が汚染されるのを防止することができる。
【0015】
また本願請求項2記載の発明の枚葉搬送用トレイによれば、上下の積み重ね部を樹脂ブロックで構成したので、これによっても接触部からのダストの発生自体を抑えることができる。また、吸引孔を容易に形成することができる。
【0016】
また本願請求項3記載の発明のトレイマガジンによれば、上記の様な枚葉搬送用トレイが載置される事により、上記した枚葉搬送用トレイでの吸引に対する吸引源を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に発明を実施するための最良の形態を列記する。
(形態1) 枚葉搬送用トレイは、4本の板状部材を略長方形に接合することで構成された外枠の間に、複数の桟を架け渡すことによって薄板状の物品の載置部が形成されている。
(形態2) 略長方形の外枠は、外側平坦部と外側平坦部よりも低い位置に設けられた内側平坦部を備えており、外側平坦部と内側平坦部の間に傾斜部が設けられている。複数個の樹脂ブロックが、外側平坦部の4辺全てに取り付けられている。
(形態3) 樹脂ブロックには、クリーン対策材料として、耐磨耗性が高く、機械的な強度に優れているためにダストが発生しにくい樹脂である超高分子量(高密度)ポリエチレン(UPE)が使用される。
(形態4) 樹脂ブロックの上面は、外枠の外側平坦部の上面よりも高い位置にあり、樹脂ブロックの下面は、外側平坦部の下面よりも低い位置にある。上下方向に枚葉搬送用トレイを多段で積み重ねた状態では、各々の樹脂ブロックの上面と下面が接しており、樹脂ブロックが枚葉搬送用トレイの重量を支持する。
(形態5) 樹脂ブロックの上面には凸部が設けられており、樹脂ブロックの下面には凹部が設けられている。下面の凹部は、上面の凸部に対応した形状を有している。上下方向に重ねた枚葉搬送用トレイの樹脂ブロックの凸部と凹部を嵌め合わせることで、枚葉搬送用トレイの位置決め固定がなされる。
(形態6) 樹脂ブロックの被支持部が、外側平坦部の下面に沿って樹脂ブロックの左右に広がっている。把持装置の爪が樹脂ブロックの被支持部を支持することによって枚葉搬送用トレイを持ち上げることができる。
(形態7) 枚葉搬送用トレイが複数積み重ねられて載置される場所(例えば「受け座」。図12の符号32参照)には、樹脂ブロックなどの積み重ね部の吸引孔に連通するマガジン側吸引孔が設けられており、このマガジン側吸引孔が吸引ポンプなどにより吸引させておく事により、最下段の枚葉搬送用トレイの吸引孔に対する吸引源とすることができる。
(形態8) また最上段の枚葉搬送用トレイに対する吸引源は、複数積み重ねられた枚葉搬送用トレイの上方に設けられたマガジン側吸引孔である。そして、この複数枚葉搬送用トレイの高さ変化に追従可能に設けられたものである。その構成の形態例としては、このマガジン側吸引孔をトレイ側吸引孔の上方に設ける際には、上下移動可能に設けられると共に下方に付勢された状態で下方向きに設けるのである。そして、下方の複数の枚葉搬送用トレイが、昇降させられることにより、その最上段も昇降するが、これにより最上段の枚葉搬送用トレイは、その吸引孔が上方にあるマガジン側吸引孔に下から押圧され、これにより枚葉搬送用トレイの吸引孔を吸引する事ができる様になるのである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を適用した枚葉搬送用トレイ(以下、トレイとも言う)の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明による枚葉搬送用トレイの一実施例の構成を示す斜視図である。
【0019】
本実施例における枚葉搬送用トレイ1は、外枠2と、外枠2の対向する辺の間に掛け渡された複数の桟4と、外枠用部材の接合部近傍で隣り合う部材の間に斜めに掛け渡される接合部材6を備えている。
【0020】
外枠2は、2本の長辺部材2aと2本の短辺部材2bから構成される。本実施例における長辺部材2aと短辺部材2bには一定の板厚のSUS304が使用されており、板金加工によって同一の断面形状となるように加工されている。
【0021】
図2と図3に、長辺部材2aと短辺部材2bを示す。長辺部材2aと短辺部材2bは、外側平坦部11と、外側平坦部11よりも低い位置に形成される内側平坦部12を備えており、外側平坦部11と内側平坦部12の間に傾斜部13が設けられている。傾斜部13は、外枠2が形成されたときに上方に向けて広がったコーン形状となるように角度が付けられている。又、外側平坦部11の外側には、フランジ14が設けられている。
【0022】
この傾斜部の13の高さは、1枚の薄板状の物品を安全に収容するために必要な収容高さを越えた長さとなっている。その長さは、長辺部材2aと短辺部材2bが長方形の外枠2として組み合わされた場合に、外枠2の平面を維持するために必要な強度を保てる長さに設定されており、外枠2の形状が大型化された場合には、外枠2を強化するために傾斜部の13の高さはより長くなる。
【0023】
長辺部材2aと短辺部材2bを接合することにより、本実施例の外枠2が形成される。本実施例の外枠2は、その断面形状が、上述したように、フランジ14,これより少し高い外側平坦部11、これに連続して下降する傾斜部13、この傾斜部13の下方に連続する内側平坦部12とで形成される。形成された外枠2単体の高さは、傾斜部の13の高さで決定されるが、複数枚の枚葉搬送用トレイ1を積み重ねる場合には、この傾斜部13を利用してより小さいピッチで積み重ねることが可能となるので、積み重ね高さをあまり高くならないようにすることができる。
【0024】
本実施例における長辺部材2aと短辺部材2bには、外側平坦部11に、樹脂ブロック8を取り付けるためのブロック取付孔15a、15bが1部材にそれぞれ2カ所ずつ設けられている。又、それぞれの部材の外側平坦部11の端部には、部材同士を接合するための接合孔16が3個ずつ設けられている。内側平坦部12には、桟4を接合するための桟取付孔17が設けられている。
【0025】
図4に、長辺部材2aと短辺部材2bに取り付けられる前の樹脂ブロック8の斜視図を示す。樹脂ブロック8は、略直方体の本体部20の上面に凸部21が設けられており、樹脂ブロックの下面には凹部22が設けられている。またこの本体部20にはその上面から下面に貫通する吸引孔20aが平面視方形な本体部の四隅寄りに設けられている。また、本体部20の高さは、1枚の薄板状の物品を安全に収容する為の収容高さと等しくなるように形成されている。
【0026】
本実施例における樹脂ブロック8の凸部21は、円錐台形状に形成されている。下面の凹部22は、上面の凸部21に対応した形状を有している。本体部20の右面と左面には、把持装置との接触部となる被支持部23が伸びている。被支持部23には、長辺部材2a又は短辺部材2bに樹脂ブロック8を固定するための外枠取付孔24が貫通している。
【0027】
樹脂ブロック8は、上下に積み重ねられる枚葉搬送用トレイ1との接触部となるために、クリーン対策材料で形成されることが好ましい。本実施例における樹脂ブロック8は、耐磨耗性の高く、機械的な強度に優れた超高分子量(高密度)ポリエチレン(UPE)で形成されている。樹脂ブロック8は、ブロック同士が接触しても摩耗せず、ダストを発生することがないために、搬送する薄板状の物品を汚染しない。
【0028】
樹脂ブロック8は、外枠2に、リベット若しくはネジによって固定されている。図5と図6は、樹脂ブロック8が長辺部材2aにリベット若しくはネジによって固定された状態を模式的に示す図である。図5は、長辺部材2aの長手方向の断面図を示しており、図6は、長辺部材2aの側面図を示している。樹脂ブロック8は、被支持部23の上面が長辺部材2aの外側平坦部の下面に突き当てられて、ブロック取付孔15aから凸部21と本体部20の上部が突出した状態で固定されている。
【0029】
外枠2に固定された樹脂ブロック8は、本体部20の上面が、長辺部材2aの外側平坦部11よりも高くなっている。また、本体部20の下面は、外側平坦部11に設けられたフランジ14の下面よりも低くなっている。このような配置を採用することで、上下方向に枚葉搬送用トレイ1を多段で積み重ねると、各々のトレイの樹脂ブロック8の本体部20の上面と下面が互いに接することとなり、枚葉搬送用トレイ1は、1枚の薄板状の物品を安全に収容する為の収容高さをピッチとして積み重ねられる。又この様に積み重ねると、本体部20に設けられている4つの吸引孔20aは、上下に隣接する他の樹脂ブロックの吸引孔20aと連通することとなる。つまり複数積み重ねられた枚葉搬送用トレイは、その最上段から最下段までを貫く様にして、それらの吸引孔20aが連通することとなるのである。又このとき、枚葉搬送用トレイ1の重量は、樹脂ブロック8によって支持されている。
【0030】
上下のトレイの接触部となる樹脂ブロック8と外枠2を異なる素材で別々に形成してから固定する構成をとることによって、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、接触部8を容易に加工し、形成することができる。また、外枠2の素材にクリーン対策材料以外のものを適用することが可能となり、外枠2の素材を選択する自由度を広げることができる。
【0031】
外枠2の構成について更に説明する。長辺部材2aと短辺部材2bとは、図7に示すL字型の接合金具10を用いて接合されている。本実施例における接合金具10には、L字型のそれぞれの辺に3個ずつ係6個の接合孔18が設けられている。接合孔18同士の相対位置は、長辺部材2aと短辺部材2bの接合孔16の孔同士の相対位置関係と同一になるように、配置されている。
【0032】
接合金具10の一辺は、長辺部材2aの端部に重ね合わされる。長辺部材2aの接合孔16と接合金具10の接合孔18の両方を貫通するようにブラインドリベットが打たれ、長辺部材2aと接合金具10がリベット接合される。接合金具10の他辺は、短辺部材2bの端部に重ね合わされる。短辺部材2bの接合孔16と接合金具10の接合孔18の両方を貫通するようにブラインドリベットが打たれ、短辺部材2bと接合金具10がブラインドリベット接合される。2本の長辺部材2aと2本の短辺部材2bが4個の接合金具10を用いてブラインドリベット接合されて、略長方形の外枠2が形成される。
【0033】
ブラインドリベット接合により形成された外枠2は、長辺部材2aと短辺部材2bの接合部の上部に、空間19(図1参照)が設けられている。空間19が設けられていることで、接合部にダストが留まることがなく、又外枠2の洗浄と乾燥を容易に行うことができる。即ち空間19を設けていることによって、外枠2の接合部にダストが蓄積されなくなり、載置する薄板状の物品の汚染を未然に防止する効果が得られている。
【0034】
本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、外枠2の対向する短辺部材2bの間に、複数の桟4が掛け渡されて、薄板状の物品の載置部が形成されている。桟4には一定の板厚のSUS304が使用されており、板金加工によって所定の断面形状をとるように加工されている。
【0035】
桟4の一端部の拡大図を図8に示す。桟4は、両側に外枠2への平坦な取付部25が形成されており、平坦部の間に上方に突出する膨出部26が形成されている。取付部25の端部には、外枠2に接合するための外枠取付孔27が設けられている。膨出部26には、薄板状の物品を支持するための複数の載置ピン28が固定されている。
【0036】
載置ピン28は耐磨耗性の高い超高分子量(高密度)ポリエチレン(UPE)で形成されており、薄板状の物品を繰り返し搭載しても、磨耗によるダストが発生せず、薄板状の物品を汚染しない。
【0037】
桟4の外枠取付孔27と、外枠2の桟取付孔17を貫通するようにリベットが打たれて、外枠2と桟4がリベット接合されている。桟4が膨出部26を備えているために、桟4は外枠2に対して両端に開口部を持った状態で接合されている。このため外枠2と桟4の接合部にダストが蓄積されにくく、又枚葉搬送用トレイ1を洗浄する際に桟4の部分の洗浄と乾燥を容易に行うことができる。
【0038】
又、桟4は、膨出部26が形成されているために、平板の部材を用いた場合よりも梁強度が向上している。このため、桟4にはより板厚の薄い素材を用いることが可能となっており、桟4の軽量化が図られている。
【0039】
接合部材6は、枚葉搬送用トレイ1に搭載される薄板状の物品の位置決めと、外枠2のコーナー部の補強のために、外枠2のコーナー部近傍の長辺部材2aと短辺部材2bの間に、斜めに掛け渡されている。接合部材6の斜視図を図9に示す。接合部材6は、桟4と同様に膨出部26が設けられており、膨出部の上に、薄板状の物品を支持するための載置ピン28と、薄板状の物品のコーナー部を突き当てて載置位置の位置決めを行うための2個の位置決めピン29が固定されている。
【0040】
接合部材6の位置決めピン29は、薄板状の物品のコーナー位置を定めるために設けられており、実際の薄板状の物品の寸法に対して片側で2ミリメートルから3ミリメートルのクリアランスを確保できるように配置されている。位置決めピン29は、耐磨耗性の高い超高分子量(高密度)ポリエチレンで形成されており、薄板状の物品が位置決めのために繰り返し接触しても、磨耗によるダストが発生せず、薄板状の物品を汚染しない。
【0041】
図10に、枚葉搬送用トレイ1を上下方向に複数枚重ね合わせた状態を模式的に示す。
枚葉搬送用トレイ1は、外枠2の傾斜部13を利用することによって、1枚の薄板状の物品を安全に収容するために必要な収容高さを上下のピッチとして積み重ねられており、小さなスペースで多くのトレイを保管することが可能となっている。
枚葉搬送用トレイ1は、全ての樹脂ブロック8の凸部21と凹部22を嵌め合わせて積み重ねられている。凸部21が円錐台形状であるために、上積みされる枚葉搬送用トレイ1が多少ずれて降下してきた場合でも、凸部21と凹部22の正確な嵌め合わせが可能である。
【0042】
この様に枚葉搬送用トレイ1は、凸部21と凹部22を嵌め合わされることで、位置決めされて正確に積み重ねられる。積み重ねられた状態では、多少の衝撃が加わった場合でも、積み重ねた枚葉搬送用トレイ1がずれたり落ちたりする恐れがなく、安定して積み重ねられる。
【0043】
本実施例の枚葉搬送用トレイ1が上下方向に積み重ねられているとき、上下の枚葉搬送用トレイ1の間では、樹脂ブロック8だけが接触しており、外枠2と桟4は他の枚葉搬送用トレイ1と全く接触しない。樹脂ブロック8は超高分子量(高密度)ポリエチレン樹脂で形成されているために接触によってもダストが発生しない。また外枠2と桟4は他の枚葉搬送用トレイ1と接触しないためにダストを発生させない。このように、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は積み重ねてもダストが発生せず、薄板状の物品を汚染しない。
【0044】
更に、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、上積みされた枚葉搬送用トレイ1の荷重を、樹脂ブロック8が支持する構成となっており、外枠2には、上側の枚葉搬送用トレイ1の荷重が加えられることがない。このために、外枠2は、自らの重量と、載置した薄板状の物品の重量を支持できる強度を備えていればよく、外枠2によって上積みされた枚葉搬送用トレイ1を支持する構成を採用した場合と比較すると、要求される強度は小さい。このため、外枠2の板厚をより薄くして軽量化することが可能となる。
【0045】
以上の様な枚葉搬送用トレイは、図11に示すトレイマガジンに積み重ねて載置され、トレイマガジンの上方に設けられた把持装置34により、積み重ねられた枚葉搬送用トレイの上方側の何枚かが把持される様になっている
即ち、トレイマガジン31は、昇降可能な昇降台31aと、この昇降台31aの上面に設けられた受け座32を有している。この受け座32は、昇降台31aに載置される枚葉搬送用トレイの樹脂ブロックを受ける為のものであり、従って、枚葉搬送用トレイをこの昇降台に載置した際の、外枠に設けられた樹脂ブロックを受ける位置の8箇所に設けられたものである。
【0046】
この受け座32は上方に立設する突起部32aを有しており、この突起部32aの上面が、最下段の枚葉搬送用トレイの樹脂ブロックを受ける様になっている(後述の図12参照)。そして突起部32a上面は、最下段の樹脂ブロックの本体部20の下面と重合できる平面に形成されている。
【0047】
またこの受け座32には、その突起部32a上面に、トレイ側の吸引孔に連通するマガジン側吸引孔36が4つ設けられており、このマガジン側吸引孔は、昇降台の下から引き出されている吸引チューブ連通する様に構成されている。そしてこの吸引チューブが図示しない吸引ポンプにより吸引される事により、最下段の枚葉搬送用トレイの吸引孔に対する吸引源とすることができる。
【0048】
そして、この様に、トレイマガジン31による吸引は、積み重ねられた枚葉搬送用トレイ1の、上下に連なる樹脂ブロックに連通する吸引孔20aの全体をも吸引する事ができるのである。
【0049】
なお、この様なマガジン側吸引孔は、最下段の枚葉搬送用トレイに連通するものに限るものではなく、最上段側の吸引孔20aに連通させてもよい。この場合は、下方向きとなったマガジン側吸引孔を、昇降台に積み重ねられた枚葉搬送用トレイの更に上方に位置する様に設けられるものである(図11の符号37)。
【0050】
この最上段用となるマガジン側吸引孔37は、上下移動可能に設けられると共に下方に付勢された状態で下方向きに設けることで構成できる。
【0051】
この様な構成にした理由であるが、昇降台31aは様々な高さに上昇するので、最上段の枚葉搬送用トレイの高さ位置も有る程度の上下幅を持つ事となり、この様な高さ位置が一様ではない最上段の枚葉搬送用トレイにマガジン側吸引孔37を連通させようとする為には、上述した様に「下方付勢」を持たせた状態で「上下移動可能」に設けておく事により、吸引可能となるからである。
【0052】
これにより、下方の複数の枚葉搬送用トレイが、昇降させられると、その最上段がどの様な高さに上昇しようとも、これにより最上段のトレイ側吸引孔が、これに臨む上方のマガジン側吸引孔に押圧され、枚葉搬送用トレイの吸引孔を吸引する事ができる様になるのである。
【0053】
本実施例の枚葉搬送用トレイ1を適用した搬送システムの一態様を、図12から図16に示し、樹脂ブロック8に設けられた被支持部23の作用効果について説明する。ここでは、薄板状の物品を載置して積み重ねられた枚葉搬送用トレイ1の中から、任意の枚葉搬送用トレイ1を指定して搬出する場合を例にとって詳細な説明を行う。
【0054】
枚葉搬送用トレイ1は、薄板状の物品を載置してトレイマガジン31の受け座32上に積み重ねられている。トレイマガジン31は、図示されない搬送コントローラに制御されており、搬送コントローラが指定した枚葉搬送用トレイ1を、トレイマガジン31の上部に設けられたコンベア33に移載できる位置に移動させる。
【0055】
搬送コントローラが搬出を指定した枚葉搬送用トレイ1の上に、他のトレイ1が積み重ねられている場合には、コンベア33の上部に配置されている把持装置34が降下して、指定の枚葉搬送用トレイ1の上に積み重ねられているトレイ1を収容して把持するのである。
【0056】
把持装置34は、枚葉搬送用トレイ1の対向する2辺に固定されている樹脂ブロック8を支持して、枚葉搬送用トレイ1を持ち上げ可能に把持するのである。ここで、把持装置34の爪35は、図13及び図14に示すように、樹脂ブロック8の被支持部23を下方から支持することによって枚葉搬送用トレイを相対的に持ち上げるのである。つまり、こま把持装置34自身が持ち上げるのではなく、上昇した昇降台31aが、所定の枚葉搬送用トレイの把持が成された後に降下する事により、把持装置34に把持された何枚かの枚葉搬送用トレイは、昇降台31aに対しては、相対的に持ち上げられた事となるのである。
【0057】
この時、相対的に持ち上げられた枚葉搬送用トレイ1は、その1つ下の、持ち上げられなかった枚葉搬送用トレイ1から上に離されるのであるが、具体的には、これら上下の枚葉搬送用トレイ1の、図15に示す様に、その樹脂ブロック8同士が離されるのである。これにより、これら樹脂ブロック8の中に連通していた吸引孔20a同士も上下に分かれる事となるのである。この場合、上下の樹脂ブロック8の接触していた面からダストが発生する事があるが、この上下の樹脂ブロック8が離れる直後には上下の間には狭い隙間Gができ、この隙間Gが吸引孔に吸引される事となるのである。つまり、上下2つの樹脂ブロック8は、それらの本体部20同士が、上面と下面とが密着し合う様に重合しているのであるが、この重合している上下の面が上下に離される瞬間に、均一な狭さの隙間が重合面の間にでき、この離された直後の隙間を吸引する事となるのである。そして、この吸引により、離された時に接触面から発生するダストを吸引することができ、よって枚葉搬送用トレイの載置してある薄板状の物品を汚染しないのである。なおこの様な隙間への吸引は、隙間が広がってしまえばその吸引が効かなくなるので、枚葉搬送用トレイが持ち上げられる瞬間に成される作用である。
【0058】
また樹脂ブロック8は超高分子量(高密度)ポリエチレン樹脂で形成されており、被支持部23も同一の素材で形成されているために、把持装置34の爪35が接触しても、ダストが発生しない。即ち、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は搬出、搬入のために把持装置34の爪35に支持される場合でも、積み重ねて保管する場合と同様にダストが発生せず、薄板状の物品を汚染しない。
【0059】
搬出が指定された枚葉搬送用トレイ1は、上積みされた枚葉搬送用トレイ1が把持装置34によって取り除かれると、図16に示すように、コンベア33によって外枠2のフランジ部14を支持される。トレイマガジン31が降下して、搬出される以外の枚葉搬送用トレイ1は低い位置に保持される。指定された枚葉搬送用トレイ1は、コンベア33によって搬出される。
【0060】
以上述べてきたように、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、外枠2に樹脂ブロック8が固定されており、積み重ねた際には、樹脂ブロック8の上面と下面で上下の枚葉搬送用トレイ1が接触する。また、搬入と搬出の際には、把持装置34の爪35が樹脂ブロック8の被支持部23を支持する。樹脂ブロック8は、耐磨耗性が高く、機械的な強度に優れた樹脂で形成されているために、積み重ねられた際や、把持装置34に支持された際にダストを発生せず、載置してある薄板状の物品を汚染しない。
【0061】
また、上下の枚葉搬送用トレイ1の接触部となる樹脂ブロック8と外枠2を異なる素材で別々に形成してから固定する構成をとることによって、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、接触部8を容易に加工し、形成することができる。また、外枠2の素材にクリーン対策材料以外のものを適用することが可能となり、外枠2の素材を選択する自由度を広げることができる。
【0062】
更に、本実施例の枚葉搬送用トレイ1の桟4は、膨出部を設けることによって従来よりも梁強度が高められている。これに加えて、本実施例の枚葉搬送用トレイ1は、上積みされた枚葉搬送用トレイ1の荷重を樹脂ブロック8が支持する構成を採用しており、外枠2に必要な強度が低減されている。これらの構成によって、枚葉搬送用トレイ1の外枠2と桟4を従来よりも軽量化することが可能となった。
【0063】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。たとえば、実施例における外枠2の長辺部材2aと短辺部材2bの接合方法や接合箇所、外枠2と桟4の接合方法や接合箇所は、搭載する薄板状の物品の大きさや重量に合わせて、適宜変更が可能である。また、樹脂ブロック8の形状や配置も、作用効果を損なわない範囲において、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例の枚葉搬送用トレイ1の概要を説明する斜視図である。
【図2】実施例の外枠2を構成する部材の斜視図である。
【図3】実施例の外枠2を構成する部材端部の斜視図である。
【図4】実施例の樹脂ブロック8の斜視図である。
【図5】実施例の樹脂ブロック8が固定された長辺部材2aの断面図である。
【図6】実施例の長辺部材2aに固定された樹脂ブロック8の側面図である。
【図7】実施例の接合金具10の斜視図である。
【図8】実施例の桟4の一端部の拡大図である。
【図9】実施例の接合部材6の斜視図である。
【図10】実施例の枚葉搬送用トレイ1を上下方向に複数枚重ね合わせた状態を模式的に示す斜視図である。
【図11】実施例の、枚葉搬送用トレイを載置するトレイマガジンと、枚葉搬送用トレイを持ち上げる把持装置の説明図である。
【図12】実施例の枚葉搬送用トレイ1を適用した搬送システムの一態様を模式的に示す正断面図である。
【図13】実施例の枚葉搬送用トレイ1を把持装置34の爪35が指示する様子を模式的に示す正断面図である。
【図14】実施例の枚葉搬送用トレイ1の樹脂ブロック8を把持装置34の爪35が指示する様子を模式的に示す側面図である。
【図15】積み重ねられた枚葉搬送用トレイが持ち上げられる時の、吸引孔の機能を説明する図であり、枚葉搬送用トレイは樹脂ブロック以外を省略して示してある。
【図16】実施例の枚葉搬送用トレイ1のフランジ14をコンベア33が支持する様子を模式的に示す正断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1: 枚葉搬送用トレイ
2: 外枠
2a: 長辺部材
2b: 短辺部材
4: 桟
6: 接合部材
8: 樹脂ブロック
10: 接合金具
11: 外側平坦部
12: 内側平坦部
13: 傾斜部
14: フランジ
15a,15b: ブロック取付孔
16,18: 接合孔
17: 桟取付孔
19: 空間
20: 本体部
20a:樹脂ブロックの吸引孔
21: 凸部
22: 凹部
23: 被支持部
24,27: 外枠取付孔
25: 取付部
26: 膨出部
28: 載置ピン
29: 位置決めピン
31: トレイマガジン
31a:昇降台
32: 受け座
33a:突起部
33: コンベア
34: 把持装置
35: 爪
36,37:マガジン側吸引孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数積み重ねた状態で保管することが可能な枚葉搬送用トレイであって、上下の積み重ね部の所定位置に上下に貫通する吸引孔を設けたことを特徴とする枚葉搬送用トレイ。
【請求項2】
上下の積み重ね部を樹脂ブロックで構成したことを特徴とする請求項1記載の枚葉搬送用トレイ。
【請求項3】
請求項1記載の枚葉搬送用トレイを積み重ねた状態で保持するトレイマガジンであって、最下段又は最上段のトレイの吸引孔から吸引する事を特徴とするトレイマガジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−35765(P2007−35765A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214160(P2005−214160)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】