説明

果実に付着した微小害虫除去装置

【課題】検疫前に輸出用果実に付着したハダニ類等の微小害虫を簡易且つ確実に除去することで、国内果実の円滑な輸出促進を図る。
【解決手段】微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を果実Fの特定箇所F1の一部に向けてスポット噴射させる2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cと、果実Fの特定箇所F1が2流体混合噴射ノズル1A〜1Cの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段2とを備え、果実支持手段2を一方向に可動させる可動手段3を具備し、可動手段3の作動による果実Fの移動に対して、特定箇所F1の処理必要領域全域に混合流のスポット噴射が当たるように、特定箇所F1の移動軌跡に沿って複数台の2流体混合噴射ノズ1A〜1Cルを離散配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴや梨等の果実に付着したハダニ等の微小害虫を除去する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日本産果実の海外輸出が増加傾向にある中で、果実に付着したハダニ等の微小害虫が輸出先の植物検疫で見つかり、検査不合格になって輸入が差し止められる問題が生じている。特に、日本産のリンゴや二十世紀梨等の果実は、経済発展が続くアジア諸国で高級品として高い消費ニーズがあり、我が国農産物の大幅な輸出増加に寄与するものとして期待されているが、これらの果実には、「ていあ部」或いは「こうあ部」と呼ばれる凹部があり、その凹部にハダニ等の微小害虫が付き易く、また、このような凹部に付着した微小害虫は除去することが難しいという問題がある。
【0003】
果実に微小害虫が付かないようにするためには、栽培中に薬剤散布等の防除を行うか、収穫後に駆除処理を行うことが必要になるが、前述したハダニ類は、成虫の体長が0.5mm前後で卵の大きさが0.1mm前後と小さいため、これを栽培中の薬剤散布で完全に除去しようとすると、丁寧で且つ複数回の散布作業が必要となり、多大な作業労力を要することになる。しかも、ハダニ類は薬剤抵抗性が付き易いため、栽培現場では散布回数の制限が設けられており、栽培中の防除のみで完全に果実に付着する微小害虫を駆除することはできない現状にある。このため、有効な収穫後の駆除処理が求められている。
【0004】
従来技術としては、収穫したクリ果実の害虫を温湯に浸漬して果実内部に潜む害虫の幼虫や卵を死滅させる技術(下記特許文献1)や、作物上の空気を引き寄せて加熱することで作物上空を飛び交う害虫を死滅させる技術(下記特許文献2)等が提案されているが、前述したていあ部或いはこうあ部を有する果実の凹部に付着する微小害虫の除去に有効なものとは言い難い。
【0005】
このようなていあ部或いはこうあ部を有する果実に対して、収穫後に微小害虫の除去を行う方法としては、現状では、圧縮空気を用いて微小害虫を吹き飛ばす物理的方法か、或いは検疫で微小害虫が発見された場合に実施される臭化メチル等のくん蒸剤を用いる化学的方法が実施されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−185219号公報
【特許文献2】特開平11−32646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した圧縮空気による物理的除去方法によると、果実を一個ずつ手で取ってエアガンで処理するため、作業が煩雑で多くの時間を要する問題があり、また、糸で卵網を作るハダニ類の卵は圧縮空気のみでは大抵の場合除去することが困難となる問題がある。更には、圧縮空気で吹き飛ばした微小害虫が死滅又は回収されず、他の果実に転移することも懸念される。また、温水等の水を直接当てる処理では、大量の処理水の取り扱いが面倒であり、過剰に果実を濡らした場合には、品質劣化や貯蔵性の低下によって果実の商品価値が低下する問題が生じる。
【0008】
また、前述した化学的な除去方法による場合には、果実に薬剤による痛みや変色が生じることがあり、やはり品質劣化や貯蔵性の劣化によって果実の商品価値が低下する問題が生じると共に、化学薬剤の使用によって、処理コストが嵩むだけでなく、食品安全性の問題が生じることにもなる。
【0009】
本発明は、このような事情に対処するものであって、ていあ部或いはこうあ部を有する果実に対して、作業性良く微小害虫の除去を行うことができること、ていあ部或いはこうあ部等の凹部に付着した卵を含む微小害虫を短い作業時間で確実に除去可能にすること、処理後の微小害虫が他の果実に転移することを避けること、化学薬剤を用いない安全で低コストの処理を実現すること、等を目的とするものであって、検疫前に輸出用果実に付着したハダニ類等の微小害虫を簡易且つ確実に除去することで、国内果実の円滑な輸出促進を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、一つには、果実の特定箇所に付着している微小害虫を除去する装置であって、微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を前記果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させる2流体混合噴射ノズルと、前記果実の特定箇所が2流体混合噴射ノズルの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段とを備え、前記果実支持手段を一方向に可動させる可動手段を具備し、前記可動手段の作動による果実の移動に対して、前記特定箇所の処理必要領域全域に前記混合流のスポット噴射が当たるように、前記特定箇所の移動軌跡に沿って複数台の前記2流体混合噴射ノズルを離散配置したことを特徴とする。
【0011】
また、一つには、前述の特徴に加えて、前記可動手段は、前記果実支持手段を直線的にスライドさせることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、果実の特定箇所に付着している微小害虫を除去する装置であって、微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を前記果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させる2流体混合噴射ノズルと、前記果実の特定箇所が2流体混合噴射ノズルの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段とを備え、前記特定箇所の処理必要領域全域に前記混合流のスポット噴射が当たるように、複数台の前記2流体混合噴射ノズルを配置し、当該複数台の2流体混合噴射ノズルを個別に時差噴射させる制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、前述の特徴に加えて、噴射された前記混合流の水を回収する回収手段を具備することを特徴とする。
【0014】
このような特徴によると、2流体混合噴射ノズルを用いて、空気と水を混合した混合流を果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させることで、過剰に果実を濡らすことなく、圧縮空気のみによる場合と比較して、卵を含む微小害虫を確実に除去処理する勢力を簡易に得ることが可能になる。また、果実の特定箇所が2流体混合噴射ノズルの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段を備えるので、果実支持手段に果実を支持させた状態で作業性良く除去作業を進めることができる。
【0015】
また、果実支持手段を一方向に可動させる可動手段を具備し、可動手段の作動による果実の移動に対して、特定箇所の処理必要領域全域に空気と水の混合流のスポット噴射が当たるように、特定箇所の移動軌跡に沿って複数台の2流体混合噴射ノズルを離散配置しているので、各ノズルから噴射される混合流が互いに干渉し合って勢力を弱めることなく、処理必要領域の全域をスポット噴射によって除去処理することができ、ていあ部或いはこうあ部といった凹部に付着した微小害虫に混合流のスポット噴射を確実に当てて、短時間で確実な除去処理を行うことが可能になる。
【0016】
更には、空気と水の混合流のスポット噴射が当たった微小害虫又はその卵は、混合流内の水に浸かって死滅するか流されるので、大きく飛散して他の果実に移転することを避けることができる。
【0017】
そして、可動手段が果実支持手段を直線的にスライドさせるものでは、単純なスライド動作によって、ていあ部或いはこうあ部といった特定箇所の処理必要領域全域を確実に混合流のスポット噴射で処理することができる。
【0018】
また、前述した可動手段を設けることなく、果実支持手段を固定させて、特定箇所の処理必要領域全域に混合流のスポット噴射が当たるように、複数台の2流体混合噴射ノズルを配置し、当該複数台の2流体混合噴射ノズルを個別に時差噴射させる制御手段を備えるものでは、果実を移動させなくても、各ノズルから噴射される混合流が互いに干渉し合って勢力を弱めることなく、処理必要領域の全域をスポット噴射によって除去処理することができ、ていあ部或いはこうあ部といった凹部に付着した微小害虫に混合流のスポット噴射を確実に当てて、短時間で確実な除去処理を行うことが可能になる。
【0019】
更に、噴射された混合流の水を回収する回収手段を有するものでは、除去された微小害虫を水と共に回収することができるので、除去した微小害虫が他の果実へ転移するのを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
このような特徴を有する本発明によると、化学薬剤を用いない安全で低コストの処理を実現する微小害虫除去装置を実現することができ、国内果実の円滑な輸出促進を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る微小害虫除去装置の全体構成を示した説明図である。
【0022】
この実施形態に係る微小害虫除去装置は、複数台配置された2流体混合噴射ノズル1A,1B,1C、果実Fを支持する果実支持手段2、果実支持手段2を可動する可動手段3を基本構成として備え、こうあ部或いはていあ部と言われる凹部を有するリンゴ,梨等の果実に対して、その凹部(その果実の特定箇所)に付着したハダニ類等の微小害虫の成虫又は卵を除去する装置である。
【0023】
2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cは、微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させるものであり、比較的小さいスポット噴射径に絞って、少ない混合流の流量で微小害虫が除去可能な所望の勢力を得ることができるように設定されたものである。ここでは2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cを3台設けた例を示しているが、その台数は適宜設定可能であって、対象とする特定箇所の処理必要領域の全域を設定されたスポット噴射径でカバーできる台数が設定されることになる。
【0024】
2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cには、分岐部4,5をそれぞれ介して給水部6と加圧空気供給部7が接続されている。ここで、給水部6は給水タンク6Aと給水用低圧ポンプ6Bと調整バルブ6Cとを備え、所要量の水を分岐部4に供給するためのものであり、加圧空気供給部7はコンプレッサ7Aと調整バルブ7Bとを備え、所定圧の加圧空気を分岐部5に供給するためのものである。また、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cには、噴射制御部1As,1Bs,1Csを備えており、所定のタイミングで各2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cから所望の勢力を有する混合流を噴射させることができる。
【0025】
果実支持手段2は、果実Fの特定箇所である凹部F1が2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの噴射方向に対向するように、果実Fを支持するものであり、その形態はどのようなものでも良いが、図示の例では、コンベヤベルトに支持孔2Aを形成したものを示している。この支持孔2Aにこうあ部を下に向けて果実Fを置くことで、下方に向けた2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの噴射方向に果実Fのていあ部を対向させることができる。
【0026】
可動手段3は、果実支持手段2を一方向に可動させるものであり、ここでは、可動手段3となる駆動モータによって果実支持手段2のコンベヤベルトを直線的にスライド移動させる例を示しているが、これに限らず、果実を支持して回転させるもの等であっても良い。また、可動手段3は電動等の動力によって作動するものだけでなく、手動によって作動するものであっても良く、果実F自体を手でもってスライドさせる機構等も含む。
【0027】
図1の実施形態では、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの噴射制御部1As,1Bs,1Csの作動と可動手段3の可動タイミングを果実支持手段2の所定位置に設置された位置センサ8A,8B,8Cの検出結果に基づいて制御する制御部9を備え、また、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cによる処理領域を覆い混合流の飛散を防止する飛散防止容器10を備えている。更には、飛散防止容器10内に溜まった水を回収する回収手段11を備えている。この回収手段11は、吸引ポンプ11Aと回収タンク11Bを具備するものである。
【0028】
ここで、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの配置は、可動手段3の作動による果実Fの移動に対して、果実の特定箇所である凹部F1の処理必要領域全域に混合流のスポット噴射が当たるように、特定箇所の移動軌跡に沿って複数台が離散配置されている。
【0029】
図2は、この2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの配置例を示した説明図である。果実支持手段2に支持された一つの果実Fは、可動手段3による果実支持手段2の移動によって図示の矢印方向に直線的なスライド移動を行うことになり、それによって凹部F1は破線で示す移動軌跡F10を形成することになる。この移動軌跡F10に沿って、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cを配置するが、混合流の噴射流量を少なくして微小害虫を除去可能な噴射勢力を得ようとすると、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cのスポット噴射径1A0,1B0,1C0を絞った方が高い効果が得られる。そうすると、1つの2流体混合噴射ノズル1A(1B,1C)では特定箇所となる凹部F1の広さより狭い範囲にしかスポット噴射が照射されないことになる。そこで、特定箇所の処理必要領域全域に混合流のスポット噴射が当たるように、複数台の2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cを用いて噴射位置をずらして配置するが、スポット噴射径1A0,1B0,1C0が近接しすぎると、それらが互いに干渉してスポット噴射の勢力が殺がれることになるので、図示のように、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cを移動軌跡F10に沿って離散配置している。
【0030】
図3は、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの噴射方向を示す説明図である。この例では、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cを垂直に近い角度で凹部(ていあ部)F1に向けて噴射している。これによると、ていあ部或いはこうあ部は、一般に角度30〜60°程度の斜面を有するので、垂直方向からスポット噴射径1A0,1B0,1C0を照射することで、スポット噴射径1A0,1B0,1C0の巾Lに対して、W=L/cosθの照射巾(W>L)を得ることができ、より有効に特定箇所の処理必要領域全域をスポット噴射で処理することができる。
【0031】
次に、このような実施形態に係る微小害虫除去装置の動作を説明する。
【0032】
給水部6と加圧空気供給部7を作動させた後、リンゴ,梨等の果実Fを果実支持手段2の一体側から支持孔2Aに支持させ、この支持を果実支持手段2上に設けた近接センサ12で検知するか、或いは手動の始動スイッチ(図示省略)が投入されると、制御部9が可動手段3を作動させる。制御部9からの信号によって、可動手段3は、果実支持手段2をスライドさせて果実Fの位置を移動させ、果実Fの位置が飛散防止容器10内に配備された2流体混合噴射ノズル1Aの真下に来たことを位置センサ8Aが検知すると停止する。そして、制御部9は、位置センサ8Aの検知信号によって噴射制御部1Asを開放し、2流体混合噴射ノズル1Aから空気と水の混合流が凹部F1の一部に向けてスポット噴射される。
【0033】
制御部9は、設定時間だけ噴射制御部1Asを開放した後、これを閉止し、再度可動手段3を作動させて果実Fを矢印方向にスライドさせる。以下前述の動作と同様に、果実Fの位置が2流体混合噴射ノズル1Bの真下に来たことを位置センサ8Bが検知すると可動手段3を停止させ、位置センサ8Bの検知信号によって噴射制御部1Bsを開放し、2流体混合噴射ノズル1Bから混合流のスポット噴射がなされる。その後は、設定時間だけ噴射制御部1Bsを開放した後、これを閉止し、再度可動手段3を作動させて果実Fを矢印方向にスライドさせ、果実Fの位置が2流体混合噴射ノズル1Cの真下に来たことを位置センサ8Cが検知すると可動手段3を停止させ、位置センサ8Cの検知信号によって噴射制御部1Csを開放し、2流体混合噴射ノズル1Cから混合流のスポット噴射がなされる。
【0034】
2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの各スポット噴射位置は、図2に示すように凹部F1内でずらしているので、3台の2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cからのスポット噴射が順次なされることで、特定箇所の処理必要領域の全域を混合流のスポット噴射で除去処理することができる。除去処理が終了した果実Fは、更なる可動手段3の作動によって果実支持手段2の他端側に移動されて飛散防止容器10から排出され、果実支持手段2は次の果実の支持を待つ。
【0035】
2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cから噴射された水は、飛散防止容器10内に溜められることになり、所定のタイミングで吸引ポンプ11Aを作動させて溜まった水を回収タンク11B内に回収する。
【0036】
なお、ここでは、可動手段3の作動を自動で行っているが、前述したように可動手段3は手動によって果実支持手段2を移動・停止させるものであってもよい。また、2流体混合噴射ノズル1A,1B,1Cの噴射タイミングを制御部9で制御しているが、これも、果実Fの位置を目視確認しながら手動のスイッチ等で順次噴射させるようにしてもよい。
【0037】
図4は、本発明の他の実施形態を示す説明図である。前述した実施形態と同一の機能を有する部位は、同一の符号を付して重複説明を一部省略する。
【0038】
この実施形態では、固定の果実支持手段22を備えており、果実支持手段22が飛散防止容器23を兼用している。そして、飛散防止容器23内に2流体混合噴射ノズル21A,21B,21Cの噴射口を配置している。ここでは、果実支持手段22の支持孔22Aに処理対象となる凹部F1を下に向けて果実Fを支持させ、その凹部F1の処理必要領域全域に混合流のスポット噴射が当たるように、2流体混合噴射ノズル21A,21B,21Cの噴射方向が設置されている。
【0039】
そして、給水部6と加圧空気供給部7は噴射制御バルブ24,25を介して2流体混合噴射ノズル21A,21B,21Cにそれぞれ接続されており、制御部9によって噴射制御バルブ24,25の噴出タイミングが制御される。
【0040】
この実施形態に係る微小害虫除去装置の動作を説明すると、給水部6と加圧空気供給部7とをそれぞれ作動させた状態で、支持孔22Aに果実Fを支持させると、近接センサ26が果実Fの支持を検知し、この検知信号によって制御部9は噴射制御バルブ24,25の作動を制御する。噴射制御バルブ24,25は、2流体混合噴射ノズル21Aに水を供給する電磁バルブ24Aと加圧空気を供給する電磁バルブ25A、2流体混合噴射ノズル21Bに水を供給する電磁バルブ24Bと加圧空気を供給する電磁バルブ25B、2流体混合噴射ノズル21Cに水を供給する電磁バルブ24Cと加圧空気を供給する電磁バルブ25C、がそれぞれ同期して開放・閉止され、電磁バルブ24A,25Aが所定時間開放された後に時間差を持って電磁バルブ24B,25Bが所定時間開放され、更にその後に時間差を持って電磁バルブ24C,25Cが所定時間開放される。
【0041】
これによると、2流体混合噴射ノズル21A,21B,21Cからそれぞれ混合流のスポット噴射が個別に時間差を持って噴射されることになるので、それぞれのスポット噴射が干渉して勢力が弱まることがない。そして、処理後の水が飛散防止容器23内に溜まることになるので、前述した実施形態と同様に回収手段11によって回収タンク11B内に処理水を回収する。
【0042】
このような実施形態によると、2流体体混合噴射ノズル1A〜1C,21A〜21Cを用いて、空気と水を混合した混合流を果実Fの特定箇所の一部に向けてスポット噴射させることで、過剰に果実を濡らすことなく、圧縮空気のみによる場合と比較して、卵を含む微小害虫を確実に除去処理する勢力を簡易に得ることが可能になる。また、果実Fの特定箇所が2流体混合噴射ノズル1A〜1C,21A〜21Cの噴射方向に対向するように果実Fを支持する果実支持手段2,22を備えるので、果実支持手段2,22に果実を支持させた状態で作業性良く除去作業を進めることができる。
【0043】
果実支持手段2を一方向に可動させる可動手段3を具備し、可動手段3の作動による果実Fの移動に対して、特定箇所の処理必要領域全域に空気と水の混合流のスポット噴射が当たるように、特定箇所の移動軌跡F10に沿って複数台の2流体混合噴射ノズル1A〜1Cを離散配置しているので、各ノズルから噴射される混合流が互いに干渉し合って勢力を弱めることなく、処理必要領域の全域をスポット噴射によって除去処理することができ、ていあ部或いはこうあ部といった凹部F1に付着した微小害虫に混合流のスポット噴射を確実に当てて、短時間で確実な除去処理を行うことが可能になる。
【0044】
更には、空気と水の混合流のスポット噴射が当たった微小害虫又はその卵は、混合流内の水に浸かって死滅するか流されるので、大きく飛散して他の果実に移転することを避けることができる。
【0045】
可動手段3が果実支持手段2を直線的にスライドさせるので、単純なスライド動作によって、ていあ部或いはこうあ部といった特定箇所の処理必要領域全域を確実に混合流のスポット噴射で処理することができる。
【0046】
固定の果実支持手段22を設けたものでは、果実Fを移動させなくても、2流体混合噴射ノズル21A,21B,21Cの噴出タイミングに時差を設けることで、各ノズルから噴射される混合流が互いに干渉し合って勢力を弱めることなく、処理必要領域の全域をスポット噴射によって除去処理することができ、ていあ部或いはこうあ部といった凹部F1に付着した微小害虫に混合流のスポット噴射を確実に当てて、短時間で確実な除去処理を行うことが可能になる。
【0047】
更に、混合流の水を回収する回収手段11を有するので、除去された微小害虫を水と共に回収することができ、除去した微小害虫が他の果実へ転移するのを確実に防止することができる。
【0048】
そして、本発明の実施形態では、果実Fの品質劣化や貯蔵性の低下を生じることなく、確実に果実Fの凹部に付着した微小害虫とその卵を除去することができるので、化学薬剤を用いない安全で低コストの除去処理を実現することができ、国内果実の円滑な輸出促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る微小害虫除去装置の全体構成を示した説明図である。
【図2】本発明の一実施形態における2流体混合噴射ノズルの配置例を示した説明図である。
【図3】本発明の一実施形態における2流体混合噴射ノズルの噴射方向を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る微小害虫除去装置の全体構成を示した説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1A,1B,1C,21A,21B,21C 2流体混合噴射ノズル
2,22 果実支持手段
3 可動手段
4,5 分岐部
6 給水部
6A 給水タンク
6B 給水用低圧ポンプ
6C 調整バルブ
7 加圧空気供給部
7A コンプレッサ
7B 調整バルブ
8A,8B,8C 位置センサ
9 制御部
10,23 飛散防止容器
11 回収手段
11A 吸引ポンプ
11B 回収タンク
12,26 近接センサ
24,25 噴射制御バルブ
24A,24B,24C,25A,25B,25C 電磁バルブ
F 果実
F1 凹部(特定箇所)
F10 移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の特定箇所に付着している微小害虫を除去する装置であって、
微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を前記果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させる2流体混合噴射ノズルと、
前記果実の特定箇所が2流体混合噴射ノズルの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段とを備え、
前記果実支持手段を一方向に可動させる可動手段を具備し、
前記可動手段の作動による果実の移動に対して、前記特定箇所の処理必要領域全域に前記混合流のスポット噴射が当たるように、前記特定箇所の移動軌跡に沿って複数台の前記2流体混合噴射ノズルを離散配置したことを特徴とする果実に付着した微小害虫除去装置。
【請求項2】
前記可動手段は、前記果実支持手段を直線的にスライドさせることを特徴とする請求項1に記載された果実に付着した微小害虫除去装置。
【請求項3】
果実の特定箇所に付着している微小害虫を除去する装置であって、
微小害虫を除去可能な勢力で空気と水を混合した混合流を前記果実の特定箇所の一部に向けてスポット噴射させる2流体混合噴射ノズルと、
前記果実の特定箇所が2流体混合噴射ノズルの噴射方向に対向するように果実を支持する果実支持手段とを備え、
前記特定箇所の処理必要領域全域に前記混合流のスポット噴射が当たるように、複数台の前記2流体混合噴射ノズルを配置し、
当該複数台の2流体混合噴射ノズルを個別に時差噴射させる制御手段を備えることを特徴とする果実に付着した微小害虫除去装置。
【請求項4】
噴射された前記混合流の水を回収する回収手段を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の果実に付着した微小害虫除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−228907(P2007−228907A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56213(P2006−56213)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】