説明

架橋された物品のためのポリマー組成物

本発明は、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法、架橋された物品を製造する方法および架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む架橋された物品に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋された物品を製造するためにポリマー組成物を使用する方法、架橋された物品を製造する方法、および架橋された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー、例えばポリオレフィン、の架橋が、ポリマーの改善された熱および変形耐性、クリープ特性、機械的強度、化学薬品耐性および耐摩耗性にかなり寄与することは周知である。従って、架橋されたポリマーは、種々の最終用途、例えばパイプ用途、において広く使用されている。ポリマーの架橋反応では、特にポリマー間の架橋(橋)が主に形成される。架橋は、特に照射または遊離ラジカル発生剤、例えば過酸化物、を使用するラジカル反応によって行われ得る。上記遊離ラジカル形成法は共に、文献に十分記載されている。別の架橋法は、例えばいわゆるシラン架橋法である。この方法では、国際出願WO2002/096962号に記載されているように、共重合またはグラフト化によってシラン基がポリマーに導入され、まずシラン基を加水分解し、次いで架橋触媒の存在下で架橋することにより架橋が行われる。
【0003】
エチレンポリマーは、架橋のためによく使用されるポリマーの一つである。エチレンポリマーのいくつかの特性、例えば、架橋効率、特に架橋速度および架橋度、に関して影響を及ぼし得る特性は、特に以下の点:
重合法の種類、例えば、高圧重合法または低圧重合法、
プロセス条件、および
低圧重合の場合には特に、その方法で使用される触媒、
に依存して変わり得ることが知られている。例えば、ポリエチレンは、典型的には、重合において使用される触媒の種類、例えばチーグラーナッタ、Crまたはシングルサイト触媒、に応じて、特徴的な分子量分布(MWD=Mw/Mn)、コモノマー分布、いわゆる長鎖分岐(LCB)および/または不飽和度を有する。これらの変わり得る特性のうち、特にMWDおよび不飽和度は、架橋効率に影響を及ぼし得る。
【0004】
不飽和度、例えば、エチレンポリマー中に存在する2つの炭素原子間の二重結合(本明細書では炭素−炭素二重結合という)、例えば−CH=CH−またはビニル、すなわちCH=CH−、部分の量は、特にラジカル反応によって架橋するとき、エチレンポリマーの架橋効率に寄与することが知られている。通常、チーグラーナッタ触媒を使用して重合されるエチレンポリマーは、低い不飽和度(典型的には0.18個未満のビニル基/1000C)を有する。さらに、典型的なチーグラーナッタに基づくエチレンポリマーは、測定可能なLCBがない。したがって、チーグラーナッタ触媒を使用して製造されたエチレンポリマーは、架橋された物品のために使用されていない。
【0005】
また、慣用的なシングルサイト触媒を使用して製造されたエチレンポリマーは、典型的には低い不飽和度を有し、さらには、ポリマーの加工処理を犠牲にするところの狭いMWDを通常有する。ビニル基および長鎖分岐(LCB)を有するエチレンポリマーを製造する特定のシングルサイト触媒も従来知られている。例えば、国際出願WO2005/103100号は、0.5個超のビニル基/炭素原子1000個およびLCBを有し、かつさらに改変され得る、例えば架橋され得る、ところのエチレンポリマーを提供するシングルサイト触媒を記載している。別の特定のシングルサイト触媒、いわゆる幾何拘束型触媒(CGC)は、LCBを含有し、かつ架橋され得るポリエチレンを重合する(例えば、WO9726297およびEP885255、ダウ社、を参照)。
【0006】
従って、Cr触媒を使用して製造されたエチレンポリマー(本明細書ではCrポリエチレンという)は従来、架橋された物品において使用されている。なぜならば、Cr触媒は、得られるポリエチレンに比較的高い不飽和度(典型的には0.5個超のビニル基/1000C)を付与し、かつ工業的に加工処理可能であるからである。
【0007】
現在のCrポリエチレンは、特に、MWDが非常に広いという欠点を有する。その結果、典型的なCrポリエチレンは、かなり低い分子量(Mw)画分を含み、それは、ポリマーの機械的特性、例えば強度、を低下させ、また架橋効率を低下させる。なぜならば、非常に低い分子量鎖は、十分な架橋を付与しないからである。低Mw画分はまた、Crポリエチレン生成物に不均質性を付与し得、それは、ポリマーの加工性および最終生成物の品質に悪影響を及ぼす。さらに、低Mw画分は、その加工処理中の煙およびヒューム(fume)の問題ならびに最終製品への臭味(T&O)の問題を引き起こし得る。Crポリエチレンは従来、MwおよびしたがってMWDの調整を通常制限するところの単峰型(unimodal)方法で製造される。
【0008】
高圧法で製造された低密度ポリエチレン(本明細書ではLDPEという)は、かなり分岐しており、また、架橋のための有益な不飽和を有し得る。従って、LDPEも物品の架橋のために、特に「より軟性な」低密度ポリエチレンが所望されるところの用途において、使用されている。
【0009】
不飽和度およびしたがって架橋効率を高めるためのさらに知られている手段は、ポリ不飽和コモノマー、例えばジエン、とともにエチレンを重合すること、および/または架橋促進剤を添加することである。しかし、どちらの手段も、架橋された物品の製造法の複雑性およびコストを高める。
【0010】
要求が多い架橋可能なポリマー用途および特に、架橋された物品が高い要求および厳しい規則を満たさなければならないところの用途のために適する代替のポリマーの解決法を見出すことがポリマー分野において絶えず要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の一つは、架橋された物品を、好ましくは照射または遊離ラジカル発生剤またはその両方を使用するラジカル反応によって、製造するために代替のポリマーを使用する方法、架橋された物品を製造するための製造法、ここで、上記代替のポリマーが使用され、次いで架橋される、および上記代替のポリマーを架橋された形で含む架橋された物品を提供することである。本発明の架橋された物品のための上記代替のポリマーの分子量分布(MWD)は制限されず、従って、上記ポリマーは、MWDに関して単峰性または多峰性であり得る。さらに、上記代替のポリマーの密度は限定されず、それによって、種々の最終用途のための架橋された物品が製造され得る。
【0012】
すなわち、本発明は、架橋された物品の製品の窓を広くし、そして、ポリマー製品製造者の増加する要求および最終製品のために設定された品質要件を満たすためのさらに適合した解決を可能にする。
【0013】
より好ましくは、本発明は、従来の問題点を解決する解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1によれば、本発明は、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法に関する。ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物は、炭素−炭素二重結合を含有し、かつ架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定されるときに(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)、少なくとも50重量%(wt%)のゲル含量として表される架橋性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
「本発明のポリマー組成物」は、本明細書において、ポリマー組成物とも言う。
【0016】
「エチレンポリマー」は、本明細書ではポリエチレンを意味し、エチレンホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとのコポリマー(すなわちエチレンホモまたはコポリマー)を包含する。「チーグラーナッタ触媒の存在下でエチレンを重合することによって得られ得るエチレンポリマー」は、本明細書では、短くかつ交換可能に、「ZNポリエチレン」または「不飽和ZNポリエチレン」という。
【0017】
特に断らない限り、用語「架橋性」は、ポリマー組成物の達成し得る架橋度を意味し、下記の「測定法」において記載された「ゲル含量」法において示した手順にしたがって、架橋されたポリマー組成物からなるディスクサンプルから測定されたときのゲル含量として表される。
【0018】
一般に、下記説明および特許請求の範囲において、ゲル含量は、本明細書で述べているように、ポリマー組成物または本発明の物品のために定義されており、ASTM D 2765−01、方法Aに従い、抽出のためのデカリンを使用して決定される。さらに、特に断らない限り、ポリマー組成物のゲル含量は、架橋されたポリマー組成物からなるディスクサンプルから決定される。上記ディスクサンプルは、下記の「測定法」において記載された「ゲル含量」法において示した方法にしたがって作られる。特に断らない限り、上記ディスクサンプルは、0.4重量%の過酸化物、好ましくは下記の「ゲル含量」法において特定された過酸化物、を使用して架橋される。本発明の物品は、架橋された物品のゲル含量をそのようなものとして決定することにより、または好ましくは物品中に使用されたポリマー組成物のゲル含量を、本明細書において述べたように決定することにより、定義される。物品が、物品中に使用されたポリマー組成物のゲル含量を与えることにより定義される場合には、特に断らない限り、ゲル含量は、上記で説明したように、架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定される。下記に記載される照射架橋された物品の場合には、物品中に使用されたポリマー組成物は、架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定されるゲル含量を与えることにより定義され得、あるいは、ポリマー組成物のゲル含量は、下記の「測定法」において記載された「ゲル含量」法において定義されているように製造されかつ照射架橋された物品サンプルから定義され得る。
【0019】
物品が、架橋された物品のゲル含量によってそのようなものとして定義される場合にも、ゲル含量は、ASTM D 2765−01、方法Aに従い、デカリン抽出によって決定されるが、架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物サンプルを使用して決定される。
【0020】
本発明は独立して、請求項2に記載された、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法をさらに提供する。ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物は、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有する(FTIRによって測定)。
【0021】
好ましくは、本発明は、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物は、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有し(FTIRによって測定)、かつ架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定されるとき(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋性を有する。
【0022】
好ましくは、上記ポリマー組成物が、少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個を含有する。ポリマー組成物中に存在する炭素−炭素二重結合の量の上限は限定されず、好ましくは5.0未満/炭素原子1000個、好ましくは3.0未満/炭素原子1000個であり得る(FTIRによって測定)。好ましくは、ポリマー組成物が、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは、少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有する(FTIRによって測定)。好ましくは、ビニル基の合計量が、4.0未満/炭素原子1000個である(FTIRによって測定)。
【0023】
用語「ビニル基」は、本明細書の上記および下記において、CH=CH-を意味し、それは、下記の「測定法」において定義された「不飽和の量」にしたがってFTIRによって測定される。
【0024】
より好ましくは、従来技術の開示とは反対に、不飽和であるZNポリエチレンが、予期せぬほどに良好な架橋効率、特に架橋速度および架橋度によって示される架橋効率、を有することが今分かった。記載「不飽和」は、上述したように炭素−炭素二重結合を意味し、不飽和ZNポリエチレン分子の主鎖中にまたは任意的な分岐中にまたは両方に存在する。
【0025】
すなわち、好ましくは、ZNポリエチレンが、ポリマー組成物の上記炭素−炭素二重結合を含有する、すなわち上記二重結合含量は、好ましくは、ZNポリエチレン由来である。
【0026】
したがって、本発明は、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、上記チレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記エチレンポリマーは、炭素−炭素二重結合を含有し、かつ上記ポリマー組成物は、架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定されるとき(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋性を有する。これは、また、請求項1で定義されたポリマー組成物の好ましい実施態様である。
【0027】
本発明は、独立して、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、上記エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記エチレンポリマーは、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有する(FTIRによって測定)ところの方法にさらに関する。これはまた、請求項2で定義されたポリマー組成物の好ましい実施態様である。
【0028】
より好ましくは、本発明は、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、上記エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記エチレンポリマーは、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有し(FTIRによって測定)、かつ上記ポリマー組成物は、架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定されるとき(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋性を有するところの方法を提供する。
【0029】
記載「炭素−炭素二重結合」は、本明細書では、ポリマー組成物中に存在する炭素−炭素二重結合を意味し、好ましい実施態様の場合にはZNポリエチレン中に存在する炭素−炭素二重結合を意味し、上記炭素−炭素二重結合は、ポリマー組成物中、好ましくはZNポリエチレン中に存在するとき、ビニル基、ビニリデン基、およびトランス−ビニレン基からのものである。すなわち、上記および下記で定義される「炭素−炭素二重結合の量」は、ビニル、ビニリデンおよびトランス−ビニレン基の合計数/炭素原子1000個を意味する。当然、ポリマー組成物または好ましい実施態様ではZNポリエチレンは、必ずしも上記種類の二重結合の全てを含有しない。しかし、上記3つの種類のいずれかは、存在するならば、「炭素−炭素二重結合の量」として計算される。上記および下記の定義における炭素−炭素二重結合の量/炭素原子1000個またはビニル基の量/炭素原子1000個は、下記の「測定法」において記載された「不飽和の量」に従って決定される(上記および下記ならびに特許請求の範囲では短く「FTIRによって測定」という)。
【0030】
より好ましくは、ZNポリエチレンが、少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個を含有する。ZNポリエチレン中に存在する炭素−炭素二重結合の量の上限は限定されず、好ましくは5.0未満/炭素原子1000個、好ましくは3.0未満/炭素原子1000個であり得る。
【0031】
より好ましくは、ZNポリエチレンが、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは、少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有する(FTIRによって測定)。好ましくは、ビニル基の合計量が、4.0未満/炭素原子1000個である(FTIRによって測定)。
【0032】
1の好ましい実施態様では、ZNポリエチレンが、少なくとも0.2個のビニル基/鎖、好ましくは、少なくとも0.3個の、好ましくは少なくとも0.5個の、より好ましくは少なくとも0.6個の、より好ましくは少なくとも0.7個の、より好ましくは少なくとも0.8個の、さらにより好ましくは少なくとも0.9個のビニル基/鎖を含有する。上限は限定されず、好ましくは4.0個までのビニル基/鎖、より好ましくは2.0個までである。ビニル基/鎖の量は、「測定法」において記載された「不飽和の量」に従って決定される。
【0033】
不飽和ZNポリエチレン、好ましくは上記または下記または特許請求の範囲において定義されたビニル基を含有する、によって得られる架橋度は、驚くほど高い。さらに、本発明のZNポリエチレン中に存在する、特許請求の範囲に記載された不飽和は、そのようなものとして、ZNポリエチレンを含む物品が架橋されるとき、十分なレベルの架橋を提供する。ZNポリエチレンの架橋度は、Crポリエチレンのそれに匹敵し、また、ポリ不飽和コモノマー、例えばジエン、を使用してまたは架橋可能な化合物をグラフトすることにより不飽和を増加させる必要がないほどに工業的に適する。所望の架橋度が、慣用的に使用される量の遊離ラジカル発生剤または照射によって達成され得る。さらに、本発明の範囲内での選択された炭素−炭素二重結合含量、好ましくはビニル基含量、では、所望の最終用途に応じて、遊離ラジカル発生剤または照射の量を調節することにより、架橋レベルを減少させまたは増加させることができる。
【0034】
不飽和ZNポリエチレン中に、特許請求の範囲に記載されたおよび好ましい炭素−炭素二重結合、好ましくはビニル基、が存在するところの本発明の好ましい実施態様の場合には、ポリマー組成物が、必要ではないが所望により、架橋の効率または度合に寄与するところの、炭素−炭素二重結合以外のさらなる官能基、例えばいわゆる架橋ブースター、架橋可能な基を含有する共重合されたまたはグラフトされた化合物を含み得るさらなるポリマー成分、を含み得、および/または不飽和ZNポリエチレンが、上記炭素−炭素二重結合、好ましくはビニル基、に加えて、架橋可能な基を含有する共重合されたまたはグラフトされた化合物を含有し得る。
【0035】
好ましくは、不飽和ZNポリエチレンが、炭素−炭素二重結合を含有するポリ不飽和コモノマーを使用することなく重合されている。また、好ましくは、不飽和ZNエチレンポリマーが、架橋可能な官能基、例えば架橋可能なシラン基、を含有するグラフト化された化合物を含有しない。
【0036】
典型的には、ZNポリエチレンの不飽和が、ポリ不飽和コモノマーを使用することなく、プロセス条件を調整することによりおよび/またはチーグラーナッタ触媒の選択によって、公知の方法での重合法中に与えられる。
【0037】
さらに、好ましくは、架橋の前に、ZNポリエチレンが長鎖分岐(LCB)を有しない。好ましくは、ZNポリエチレンが、架橋の前に、80未満の、好ましくは65未満の、さらにより好ましくは50未満のメルトフロー比MFR21/MFRを有する。LCBは、好ましくは、本明細書において、ZN触媒以外の触媒によってポリエチレンに付与される長鎖分岐を意味する。より好ましくは、ZNポリエチレンが、架橋の前に、例えば、いわゆるSLEPポリマーのためのEP885255において検討されている幾何拘束型触媒から生じるLCBを含まない。
【0038】
架橋された物品を製造するためにZNポリエチレンを使用する方法における1つの利点は、MWDは限定されないが、必要性に応じて調整され得ることである。例えば、慣用のCrポリエチレンと比較して、狭いMWDを有するZNポリエチレンを架橋可能な物品のために使用することが可能である。そのような実施態様では、そのような狭いMWDが、架橋応答を改善する。さらに、従来技術の臭味の問題が、好ましくは、架橋された物品におけるZNポリエチレンの使用によって低下され、または回避すらされ得る。
【0039】
驚いたことに、ZNポリエチレンが、Crポリエチレンと比較して、より低いMwポリマーを伴ってすら、良好な架橋性能を付与することがまた分かった。
【0040】
さらに、何ら理論に限定されることなく、ZNポリエチレンのMn価を増加させることにより、特に架橋度がさらに増加され得る。
【0041】
好ましくは、ZNポリエチレンが、例えば、シングルサイト触媒を使用して得られ得るポリエチレンと比較されるとき、非常に有利な加工処理性能を有する。
【0042】
本発明の不飽和ZNポリエチレンが好ましくは、架橋された物品を製造するための唯一の架橋可能な成分として使用される。
【0043】
本発明はまた、請求項8において定義されるようにおよび下記にさらに詳細に記載されるように、本発明の架橋された物品を製造するための方法に関する。
【0044】
本発明はさらに、本発明の製造法によって得られ得る架橋された物品に関する。
【0045】
本発明はさらに、本発明の製造法によって製造された架橋された物品に関する。
【0046】
本発明はさらに、独立して、第一の代替(i)として請求項11で定義された架橋された第一の物体を提供する。それは、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含み、ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記物品は、架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物サンプルから測定されるとき、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する。
【0047】
本発明はさらに、独立して、第二の代替(ii)として請求項11で定義された第二の架橋された物品を提供する。それは、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含み、ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、ポリマー組成物は、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるとき、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する。
【0048】
本発明はさらに、独立して、第三の代替(ii)として請求項11で定義された第三の架橋された物品を提供する。それは、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含み、ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、ポリマー組成物、好ましくはエチレンポリマーは、架橋の前に、炭素−炭素二重結合を、好ましくは0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含む(FTIRによって測定)。
【0049】
詳細な説明
本発明のZNポリエチレンの好ましい部分的範囲、特性および実施態様は、一般化可能な用語で下記に記載され、そして、共通しておよび独立して、任意の組み合わせで、ZNポリエチレンを架橋可能な物品を製造するために使用する方法、ZNポリエチレンが使用されるところの架橋された物品の製造法、およびZNポリエチレンが使用されそしてその後架橋されるところの架橋された物品に当てはまる。
【0050】
架橋前のZNポリエチレン
下記の好ましい範囲およびさらなる特性が、架橋前の、すなわち架橋された物品を製造するためにおよび架橋する前の架橋された物品のために使用されるときのZNポリエチレンのために記載される。
【0051】
ZNポリエチレンは分子量分布(MWD=Mw/Mn)に関して単峰性または多峰性であり得る。「多峰性」は、本明細書では、特に断らない限り、分子量分布に関して多峰性を意味し、二峰性ポリマーを包含する。一般に、少なくとも2のポリエチレン画分を含むポリエチレンは、「多峰性」という。ここで、上記少なくとも2のポリエチレン画分は、上記画分のための異なる(重量平均)分子量および分子量分布をもたらす異なる重合条件下で製造される。接頭辞「多」は、ポリマー中に存在する異なるポリマー画分の数を意味する。すなわち、例えば、多峰性ポリマーは、2つの画分からなるいわゆる「二峰性」ポリマーを包含する。多峰性ポリマーの分子量分布曲線、すなわちその分子量の関数としてのポリマー重量画分のグラフの外観、は2以上の最大を示し、または典型的には、個々の画分のための曲線と比較してはっきりと広げられる。例えば、ポリマーが逐次多段法において、直列に結合された反応器を使用しかつ各反応器において異なる条件を使用して製造されるならば、異なる反応器で製造されたポリマー画分は各々、それ自体の分子量分布および重量平均分子量を有するであろう。そのようなポリマーの分子量分布が記録されるとき、これらの画分からの個々の曲線は典型的には、一緒になって、得られるポリマー生成物のための広げられた分子量分布曲線を形成する。多峰性ZNポリエチレンの場合には、ポリマーが、少なくとも、より低い重量平均分子量(LMW)成分(A)およびより高い重量平均分子量(HMW)成分(B)を含む。上記LMW成分は、HMW成分よりも低い分子量を有する。
【0052】
ZNポリエチレンは、好ましくは、少なくとも2.5のMWD、好ましくは少なくとも2.9の、好ましくは3〜20の、より好ましくは3.3〜15の、さらにより好ましくは3.5〜10のMWDを有する。
【0053】
上述したように、ZNポリエチレンは、エチレンホモポリマーまたはエチレンと1以上のコモノマーとのコポリマーであり得る。
【0054】
本明細書で使用されるコモノマーは、エチレンと共重合可能な、エチレン以外のモノマー単位を意味する。
【0055】
本明細書で使用される用語「エチレンと1以上のコモノマーとのコポリマー」は、好ましくは、エチレンと1以上のオレフィンコモノマーとのコポリマー、好ましくはエチレンおよび少なくとも1の他のC3〜20のα−オレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位を含むポリマーである。好ましくは、ZNエチレンコポリマーは、エチレンと少なくとも1のC4〜12のα−オレフィンコモノマー、より好ましくは少なくとも1のC4〜8のα−オレフィンコモノマー、例えば1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテン、とから形成され得る。好ましくは、ZNエチレンコポリマーが二元コポリマーである、すなわちポリマーがエチレンおよび1のコモノマーを含む、あるいは三元ポリマーである、すなわちポリマーがエチレンおよび2のコモノマーを含む。好ましくは、ZNエチレンコポリマーが、エチレンヘキセンコポリマー、エチレンオクテンコポリマーまたはエチレンブテンコポリマーを含む。ZNエチレンコポリマー中のコモノマーの量は、存在するならば、好ましくは、エチレンに対して少なくとも0.25モル%である。
【0056】
不飽和ZNポリエチレンの密度は、最終用途に応じて広く変わり得る。
【0057】
好ましいZNポリエチレンは、エラストマー(POE)、プラストマー(POP)、超低密度エチレンコポリマー(VLDPE)、線状低密度エチレンコポリマー(LLDPE)、中密度エチレンコポリマー(MDPE)または高密度エチレンホモポリマーまたはコポリマー(HDPE)から選択され得る。これら周知の型は、それらの密度領域に従って名付けられる。
【0058】
本明細書において、エラストマー、プラストマーおよびVLDPEは、855〜914kg/mの密度範囲をカバーする。エラストマーは、855〜884kg/mの範囲の密度を有する。プラストマーは、855〜904kg/mの範囲の密度を有する。VLDPEは、905〜909kg/mの範囲の密度を有する。LLDPEは、910〜930kg/m、好ましくは910〜929kg/m、より好ましくは915〜929kg/mの密度を有する。MDPEは、931〜945kg/mの密度を有する。HDPEは、946kg/m超、好ましくは946〜977kg/m、より好ましくは946〜965kg/mの密度を有する。
【0059】
VLDPE、LLDPE、MDPEまたはHDPEは各々同等に、本発明に適するZNポリエチレンの好ましい型である。より好ましくは、ZNポリエチレンが、上記で定義された、同等に好ましいLLDPE、MDPEまたはHDPポリマーから選択される。1の好ましい実施態様では、ZNポリエチレンが、上記で定義された密度を有するLLDPEまたはMDPEコポリマーであり、好ましくは、上記で定義された密度を有するLLDPEコポリマーであり、より好ましくは、ZNポリエチレンが、910〜930kg/m、好ましくは910〜929kg/m、より好ましくは915〜929kg/mの密度を有するLLDPEコポリマーである。
【0060】
高密度ZNポリエチレンが望ましいところの同等に好ましい実施態様では、上記で定義された密度を有するZNエチレンホモポリマーまたはZNエチレンコポリマーが好ましく、好ましくは、946kg/m超、好ましくは946〜977kg/m、より好ましくは946〜965kg/mの密度を有するHDPEホモポリマーである。
【0061】
最も好ましい実施態様では、ZNポリエチレンの密度が950kg/m未満である。この実施態様では、ZNポリエチレンの密度が、上記で定義されたVLDPE、LLDPEまたはMDPEから選択され、より好ましくは、LLDPEまたはMDPEから選択される。
【0062】
ZNポリエチレンは、好ましくは、0.01〜200.0g/10分、好ましくは0.05〜150.0g/10分、好ましくは、0.1〜20.0g/10分、より好ましくは0.2〜11.0g/10分のMFRを有する。いくつかの実施態様では、0.2〜5.0g/10分のMFRが好ましい。好ましいMFRは0.01〜60.0g/10分、好ましくは0.1〜30.0g/10分である。いくつかの実施態様では、0.1〜5.0g/10分のMFRが好ましい。MFR21は好ましくは0.1〜50.0g/10分、好ましくは0.2〜40.0g/10分である。FRR21/2は好ましくは80未満、好ましくは65未満、より好ましくは15〜60、さらにより好ましくは15〜35である。
【0063】
架橋が遊離ラジカル発生剤、例えば過酸化物、を使用して行われるところの好ましいパイプ用途では、架橋前のZNポリエチレンが、好ましくは0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRおよび40.0g/10分未満、好ましくは2〜35.0g/10分、より好ましくは3〜25g/10分のMFR21を有する。FRR21/5は好ましくは50まで、好ましくは2〜35、より好ましくは10〜30である。
【0064】
架橋が照射を使用して行われるところの好ましいパイプ用途では、架橋前のZNポリエチレンが、好ましくは0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRを有する。好ましくはMFRが0.1〜2g/10分の範囲内である。MFR21は好ましくは40.0g/10分未満、好ましくは2〜35g/10分、より好ましくは20g/10分未満、特に5〜20g/10分である。
【0065】
ZNポリエチレンは好ましくは、少なくとも7000、好ましくは少なくとも10000g/モル、好ましくは少なくとも15000g/モル、より好ましくは少なくとも20000g/モル、より好ましくは少なくとも25000g/モル、より好ましくは25000〜250000g/モル、より好ましくは26000〜200000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。所望の最終用途に応じて、ZNポリエチレンのMnの上限は、150000g/モルまで、好ましくは100000g/モルまでに調整され得る。
【0066】
さらに好ましくは、ZNポリエチレンが、少なくとも35000g/モル、好ましくは75000〜800000g/モル、好ましくは85000〜500000g/モル、より好ましくは90000〜300000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。1実施態様では、所望の最終用途に応じて、90000〜200000g/モル、好ましくは90000〜182000g/モルのMwのZNポリエチレンが好ましくあり得る。
【0067】
本発明はしたがって、架橋された物品を製造するために適するおよび架橋された物品において適するZNポリエチレンに基づき、上記ポリマーは、有利な特性を有しかつ1以上のチーグラーナッタ(ZN)触媒を使用して製造される。好ましくは、ZNポリエチレンが、ZN触媒を唯一の触媒として使用して製造される。多峰性ZNポリエチレンの場合には、ZNポリエチレンが、好ましくは同一のZN触媒を使用して得られ得るLMWポリマー(A)およびHMWポリマー(B)を少なくとも含む。多峰性ポリエチレンが更なる成分を含むならば、好ましくは全ての成分が同一のZN触媒を使用して重合されている。
【0068】
所望により、ZNポリエチレンはまた、例えば、従来周知の、例えばWO9618662に記載された、予備重合工程から得られ得る周知のポリエチレンプレポリマーを5重量%まで含み得る。そのようなプレポリマーの場合には、プレポリマー成分が典型的には、単峰性成分にまたは多峰性成分、例えばLMWおよびHMW成分、の一つに含まれ、あるいは、ZNポリエチレンの別個のMw画分、すなわち更なる成分、を形成し、したがって多峰性に寄与する。好ましくは、プレポリマーが、単峰性または多峰性ZNポリエチレンと同じZN触媒を使用して重合されている。
【0069】
エチレンホモポリマーは、実質的にエチレン単位からなるポリマーを意味する。プロセス流が他の重合可能な種を不純物として少量有し得るとき、ホモポリマーはエチレン以外の単位を少量含み得る。そのような単位の含量は0.2モル%未満、好ましくは0.1モル%未満であるべきである。
【0070】
ZNポリエチレンはまた、コモノマーおよび/または密度分布に関して多峰性であり得る。
【0071】
本発明に適するZNポリエチレンは重要でなく、上記、下記または特許請求の範囲において定義された炭素−炭素二重結合、好ましくはビニル基、を好ましくは含むことによって架橋性を付与し、架橋された物品の製造での使用におよび架橋された物品に適するならば、任意のZNポリエチレンであり得る。そのような適するZNポリエチレンポリマーは、例えば、商業的に入手可能であり、またはポリマーの文献に十分記載されている慣用の重合法に従ってまたはそれと類似的に製造され得る。
【0072】
市販のZNポリエチレンの例として、特にボレアリス社によって供給されるVLまたはFGグレード、例えばVL4470またはGF5190;またはノバケミカルズ社によって供給されるSCLAIR(商品名)グレード、例えばSCLAIR FP026−F(密度926kg/m、C2/C8、MFR0.8g/10分)、SCLAIR FP120シリーズ、例えばSCLAIR FP120−A(密度920kg/m、C2/C8、MFR1.0g/10分)、SCLAIR 14G(密度936kg/m、C2/C4、MFR0.72g/10分)またはSCLAIR 19A(密度962kg/m、C2、MFR0.72g/10分)が挙げられ得る。ノバケミカルズ社のホームページによれば、SCLAIRグレードは、特にいわゆるSCLAIRTECH(商品名)技術を使用して製造される。
【0073】
重合法
ZNポリエチレンは、MWDに関して単峰性であり得る。単峰性ZNポリエチレンは、周知の、文献に記載されたやり方で単一の反応器中で一段重合により得られ得る。あるいは、ZNポリエチレンは、多峰性(例えば二峰性)であり得、それは、2以上の個々のポリマー成分を一緒に機械的にブレンドすることにより、あるいは、好ましくは、ポリマー成分の製造法中に多段重合でインシチューブレンドすることにより、得られ得る。機械的ブレンドもインシチューブレンドも共に、当該分野において周知である。多峰性ZNポリエチレンは、典型的には、シングルチーグラーナッタ触媒の存在下で多段重合法で製造される。
【0074】
多段重合法では、エチレンおよび4〜20の炭素原子を有するα−オレフィンが、少なくとも2の重合段階を含む方法において重合される。各重合段階は、別個の反応器中で行われるが、1つの反応器中の少なくとも2のはっきり異なる重合ゾーンで行ってもよい。好ましくは、多段重合法が、少なくとも2のカスケード重合段階で行われる。
【0075】
触媒
本発明のZNポリエチレンを重合するために使用されるチーグラーナッタ重合触媒は重要ではなく、架橋性を有する、好ましくは炭素−炭素二重結合を含有するポリエチレンが製造されるところの方法に適する任意のZN触媒であり得る。従って、チーグラーナッタ触媒は、ポリマーを製造するために非常によく知られた、一般に使用される配位触媒の一つであり、典型的には、遷移金属成分および活性剤を含む。ZN触媒の典型的な例は、ハロゲン化チタンを有機金属化合物、例えばトリエチルアルミニウム、で活性化することにより製造されたものである。
【0076】
特に、遷移金属成分は、典型的には、周期律表(IUPAC)の4または5群の金属を活性金属として含む。さらに、それは、他の金属または元素、例えば2、13および17群の元素など、を含み得る。
【0077】
好ましくは、上述したように、重合触媒がチタン化合物、アルミニウム化合物およびマグネシウム化合物を含む。そのようなチーグラーナッタ触媒は、均一系のチーグラーナッタ触媒または不均一系、すなわち個体のチーグラーナッタ触媒であり得、後者は、出発物質の固化されたまたは析出された生成物であり得、または粒状外部担体上に担持され得る。
【0078】
チタン化合物は通常、ハロゲン含有チタン化合物、好ましくは塩素含有チタン化合物である。特に好ましいチタン化合物は、四塩化チタンである。
【0079】
アルミニウム化合物は典型的には、アルミニウムアルキルである。特に好ましい化合物は、二塩化アルミニウムアルキルである。
【0080】
マグネシウム化合物は典型的には、マグネシウムジアルキル、アルコールおよび塩素化剤の反応生成物である。アルコールは通常、線状または分岐状の脂肪族モノアルコールである。
【0081】
粒状外部担体は、無機酸化物担体、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、シリカ−アルミナおよびシリカ−チタニア、またはマグネシウムに基づく担体、例えば二塩化マグネシウム担体であり得る。
【0082】
1つの好ましい触媒は、EP688794またはWO99/51646に記載されているように、担体を上述した化合物と順次接触させることにより製造され得る。あるいは、WO01/55230に記載されているように、まず上記成分から溶液を製造し、次いで溶液を担体と接触させることにより製造され得る。
【0083】
他の適するチーグラーナッタ触媒は、チタン化合物を、担体として作用するマグネシウムハライド化合物と共に含む。すなわち、上記触媒は、チタン化合物をマグネシウムジハライド、例えば二塩化マグネシウム上に含む。そのような触媒は、例えばWO2005/118655およびEP810235に記載されている。
【0084】
チーグラーナッタ触媒のさらに好ましい実施態様は、エマルジョンが形成され、活性成分が、少なくとも2の液体相のエマルジョン中に分散された、すなわち不連続の相を形成するところの方法によって製造される触媒である。小滴の形状の分散された相がエマルジョンから固化され、ここで、固体粒子の形状の触媒が形成される。これらの型の触媒の製造の原理は、ボレアリスのWO2003/106510に示されている。
【0085】
活性剤
チーグラーナッタ触媒は、活性剤とともに使用される。適する活性剤は、金属アルキル化合物であり、特にアルミニウムアルキル化合物である。これらの化合物は、アルキルアルミニウムハライド、例えばエチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジメチルアルミニウムクロライドなどを包含する。また、トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリ−n−オクチルアルミニウム、も挙げられる。さらに、アルキルアルミニウムオキシ化合物、例えばメチルアルミニウムオキサン(MAO)、ヘキサイソブチルアルミニウムオキサン(HIBAO)およびテトライソブチルアルミニウムオキサン(TIBAO)が挙げられる。また、他のアルミニウムアルキル化合物、例えばイソプレニルアルミニウム、も使用され得る。特に好ましい活性剤はトリアルキルアルミニウムであり、そのうち、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが特に使用される。
【0086】
活性剤が使用される量は、特定の触媒および活性剤に依存する。典型的には、トリエチルアルミニウムが、アルミニウムの遷移金属に対するモル比、例えばAl/Ti、が1〜1000、好ましくは3〜100、特に約5〜約30モル/モルであるような量で使用される。
【0087】
重合
ZNポリエチレンの特許請求の範囲に記載された不飽和特性は、そのようなものとして非常によく知られているが、特許請求の範囲に記載されたその使用および、物品において架橋された形態であるところの本発明のZNポリエチレンは新規であり、かつ驚くべき架橋効率故に進歩性を含むとは明らかである。不飽和は、プロセス条件を制御することにより、および所望により、上述したように当業者に周知の慣用の触媒であり得るZN触媒の選択により、得られ得る。
【0088】
ZNポリエチレンは、従来公知の適する重合法で製造され得る。
【0089】
単峰性ZNポリエチレンは、例えば以下の反応ゾーンおよび反応器のいずれかにおいて、好ましくはスラリー、溶液、または気相条件のいずれかで、製造され得る。重合ゾーンに、触媒、エチレン、所望により不活性希釈剤、および所望により分子量調整剤、例えば水素、および/またはエチレンに対する所望のモル比のコモノマーが導入される。
【0090】
多峰性ZNポリエチレンを製造するとき、重合ゾーンに、触媒、エチレン、所望により不活性希釈剤、および所望により水素および/またはコモノマーが導入される。例えば、低分子量エチレンポリマー成分が好ましくは第一の重合ゾーンで製造され、高分子量エチレンコポリマー成分が第二の重合ゾーンで製造される。第一の重合ゾーンおよび第二の重合ゾーンは、任意の順序で連結され得る。すなわち、第一の重合ゾーンが、第二の重合ゾーンより前であり得、あるいは第二の重合ゾーンが第一の重合ゾーンの前であり得、あるいは、2つの重合ゾーンが平行に連結され得る。しかし、カスケード様式で重合ゾーンを操作するのが好ましい。重合ゾーンは、スラリー、溶液または気相条件で作動し得、あるいは、それらの任意の組み合わせで作動し得る。適する反応器形態(configuration)は、特にWO−A−92/12182、EP−A−369436、EP−A−503791、EP−A−881237およびWO−A−96/18662に開示されている。重合ゾーンが1つの反応器系内に配置されるところの方法の例は、WO−A−99/039012、EP−A−782587およびEP−A−1633466に開示されている。
【0091】
先行の重合段階の反応物質をポリマーから除去した後にポリマーを次の重合段階に導入するのがしばしば好ましい。これは、好ましくは、1つの重合段階から次の重合段階にポリマーを移すときに行われる。適する方法は、特にEP−A-1415999およびWO−A−00/26258に開示されている。
【0092】
重合ゾーンでの重合は好ましくは、スラリーまたは溶液中で、例えばスラリー中で、行われる。触媒は、例えば慣用のやり方で反応器に供給され得る。次いで、重合で形成されたポリマー粒子が、断片化されそして粒子内に分散された触媒と共に、炭化水素流体に懸濁される。スラリーは、流体から粒子中への反応物質の移動を可能にするために撹拌される。
【0093】
重合は通常、不活性希釈剤、典型的には炭化水素希釈剤、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタなど、またはそれらの混合物中で行われる。好ましくは、希釈剤が、1〜4の炭素原子を有する低沸点炭化水素またはそのような炭化水素の混合物である。特に好ましい希釈剤は、特にイソブタンまたはプロパンであり、少量のメタン、エタンおよび/またはブタンを含み得る。
【0094】
スラリーの流体相中のエチレン含量は、2〜約50モル%、好ましくは約3〜約20モル%、特に約5〜約15モル%であり得る。高いエチレン濃度を有することの利点は、触媒の生産性が高められることであるが、欠点は、濃度が低い場合よりもより多くのエチレンが再循環される必要があることである。
【0095】
不飽和ZNポリエチレンは、例えばスラリー重合で製造され得、ここで、より高い重合温度は重合されたZNポリエチレンに不飽和を付与することが知られている。スラリー反応器中での重合は、典型的には、50〜115℃、好ましくは60〜110℃、特に70〜105℃で行われ得る。圧力は、1〜150バール、好ましくは10〜100バールである。
【0096】
スラリー重合は、スラリー重合のために使用される任意の公知反応器中で行われ得る。そのような反応器は、連続撹拌タンク反応器およびループ反応器を包含する。あるいは、重合は、ループ反応器中で行われ得る。そのような反応器では、スラリーが、循環ポンプを使用して、閉じたパイプに沿って高い速度で循環される。ループ反応器は一般に、従来公知であり、例は、例えばUS−A−4582816、US−A−3405109、US−A−3324093、EP−A−479186およびUS−A−5391654に示されている。
【0097】
スラリー重合を、流体混合物の臨界的温度および圧力で行うことが有利である場合がある。そのような運転は、US−A−5391654に記載されている。
そのような運転では、温度が典型的には85〜110℃、好ましくは90〜105℃であり、圧力が40〜150バール、好ましくは50〜100バールである。
【0098】
多峰性ZNポリエチレンの場合には、スラリーが反応器から連続的にまたは断続的に抜き出され得る。断続的に抜き出す好ましい方法は、スラリーが濃縮された後に濃縮されたスラリーのバッチを反応器から抜き出すところの沈降区間(settling leg)の使用である。沈降区間の使用は、特に、US−A-3374211,US−A−3242150およびEP−A−1310295に開示されている。連続的抜き出しは、特にEP−A-891990,EP−A−1415999、EP−A−1591459、EP−A−1591460およびWO−A−2007/025640に開示されている。EP−A−1310295およびEP−A−1591460に開示されているように、連続的抜き出しは、適する濃縮法と有利に組み合わせられる。
【0099】
多峰性ZNポリエチレンを製造するとき、低分子量エチレンポリマーが、スラリー重合で製造されるならば、反応相中の水素のエチレンに対するモル比が0.1〜1.0モル/キロモル、好ましくは0.2〜0.7モル/キロモルであるように水素がスラリー反応器に添加される。コモノマーも、所望のモル比のコモノマー対エチレンでスラリー重合段階に導入され得る。高分子量エチレンポリマーがスラリー重合段階で製造されるならば、反応相中の水素のエチレンに対するモル比が高々0.1モル/キロモル、好ましくは0.01〜0.07モル/キロモルであるように水素がスラリー反応器に添加される。コモノマーは、存在するならば、所望のモル比のコモノマー対エチレンでスラリー重合段階に導入される。
【0100】
重合はまた、気体相中で行われ得る。流動床気相反応器中で、オレフィンが、重合触媒の存在下で、上方に移動する気体流中で重合される。反応器は典型的には、流動化グリッドの上に位置する、活性触媒を含有する、成長するポリマー粒子を含む流動床を含む。
【0101】
多段重合における第二工程として、より高い分子量成分が作られる場合には、その特性を直接測定することができない。しかし、例えば本発明の上述した重合法の場合には、HMW成分の密度、MFRなどが、Kim McAuleyの式を使用して計算され得る。すなわち、密度およびMFRは共に、K. K. McAuleyおよびJ.F. McGregorのOn-line Inference of Polymer Properties in an Industrial Polyethylene Reactor(工業ポリエチレン反応器中のポリマー特性のオンライン推論)、AlChE Journal、1991年6月、Vol.37、No.6、第825〜835頁を使用して見出すことができる。密度は、McAuleyの式37から計算され、ここで最終密度および第一反応器後の密度が分かる。MFRはMcAuleyの式25から計算され、ここで最終MFRおよび第一反応器後のMFRが計算される。
【0102】
予備重合は、当該分野において周知であるように、実際の重合工程の前であり得る。そのとき、ZN触媒が、予備重合工程に供給され、上記工程の後、得られた反応混合物が触媒と共に、実際の重合工程に供給される。
【0103】
多峰性ZNポリエチレンが製造されるとき、例えばスラリー、溶液またはループ気相反応器系(これは、ボレアリス技術として、すなわちBORSTAR(商品名)反応器系として周知であり、例えばEP517868に開示されている)が好ましい。
【0104】
好ましい一段階法または多段法は、スラリーまたは溶液法で行われる。
【0105】
溶液法、反応器および触媒の例は、特に方法/反応器に関してはCA2368646、EP969916、CA2193431およびUS6111156に記載され、触媒/方法に関しては、EP6006303、US6867160、EP1124864、US6723677、WO93/07189、US6878658、EP949280、US5519098およびUS2008/0051534に記載されている。SCLAIRTECH(商品名)技術は、例えばHandbook of Petrochemicals Production Processes(石油化学製品の製造法のハンドブック)、Robert A. Meyers, 2005 McGraw-Hill社の第14.10章、第14.131〜14.138頁に記載されている。
【0106】
均一化およびペレット化
重合からのZNポリエチレンは通常、ポリマー組成物を結果するために従来公知の方法を使用して均一化され、そして典型的にはペレット化される。周知のように、慣用の添加剤、例えば酸化防止剤がZNポリエチレンに添加され得る。好ましくは、二軸押出機が使用される。そのような押出機は従来公知であり、WO−A−98/15591に記載されている同方向に回転する二軸押出機およびEP−A−1600276に記載されている逆方向に回転する二軸押出機に分けられ得る。同方向に回転する二軸押出機では、軸が同じ方向に回転し、一方、逆方向に回転する押出機では、反対の方向に回転する。概説が、例えば、RauwendaalのPolymer Extrusion (Hanser, 1986)、第10.3〜10.5章、第460〜489頁に示されている。
【0107】
押出中のポリマー組成物の十分な均一化を確実にするために、特定のエネルギー入力(specific energy input)が十分高いレベルで、しかし過剰でないレベルでなされなければならず、そうでなければ、ポリマーおよび/または添加剤の分解が生じるであろう。要求されるSEIレベルは、軸の配置(configuration)および設計にいくらか依存し、当業者の範囲内である。特定のエネルギー入力(SEI)の適するレベルは、100〜300kWh/トン、好ましくは130〜270kWh/トンである。
【0108】
ポリマー組成物
本発明のポリマー組成物は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは85〜100重量のZNポリエチレンを含む。好ましいポリマー組成物は、唯一のポリマー成分としてのZNポリエチレンから成る。上記表現は、ポリマー組成物が更なるポリマー成分を含まず、ZNポリエチレンを唯一のポリマー成分として含むことを意味する。しかし、本明細書では、ポリマー組成物が、ポリマー以外の更なる成分、例えば、担体ポリマーと共に混合物中に、すなわちいわゆるマスターバッチ中に、所望により添加され得る添加剤、を含み得ることが理解される。
【0109】
ポリマー組成物は、従って、架橋されたポリマーの用途において慣用的に使用される添加剤などの更なる添加剤を含み得る。任意的な添加剤の一部または全部が、例えば、ポリマー組成物を得るための上記均一化および好ましいペレット化工程の前にZNポリエチレンに添加され得る。同等の代替として、任意的な添加剤の一部または全部が、均一化および好ましいペレット化工程の後にポリマー組成物に添加され得、所望により、ポリマー組成物が次いで、物品製造法での使用の前にペレット化される。あるいはまた、任意的な添加剤の一部または全部が、その物品の製造法と関連してポリマー組成物に添加され得る。添加剤は、慣用の量で使用され得る。
【0110】
もし、そして好ましくは、遊離ラジカル発生剤が、形成された物品を架橋するために使用されるならば、そのとき、好ましくは、架橋剤が−O−O−結合または−N=N−結合を含み、より好ましくは過酸化物であり、好ましくは有機過酸化物、例えば2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジ(tert−ブチル)パーオキサイド、またはそれらの混合物、好ましくは2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(Trigonox 145-E85、Akzo Nobel社製)であるが、それらに限定されない。
【0111】
架橋されたポリマーの用途のための添加剤の更なる非限定的例は、酸化防止剤、安定剤、例えば熱または照射安定剤、スコーチ遅延剤、抗ブロック剤、加工助剤、酸スカベンジャー、架橋ブースター、フィラー、例えばカーボンブラックまたは着色剤を包含する。
【0112】
適する酸化防止剤および安定剤は、例えば、立体障害のあるフェノール、ホスフェートまたはホスフォナイト、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカルスカベンジャー、芳香族アミン、ヒンダードアミン安定剤および上記群の2以上の化合物を含むブレンドである。
【0113】
ポリマー組成物がカーボンブラックを含む場合には、カーボンブラックの量が13重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。
【0114】
好ましくは、ポリマー組成物が、炭素−炭素二重結合を付与するために添加される更なる成分を何ら有さず、より好ましくは架橋効率を高めるために添加される更なる成分、例えば架橋ブースター、を何ら有しない。
【0115】
架橋された物品およびその製造
物品は任意であり得、例えば任意の慣用の物品、特にパイプであり得、それは、例えば上述したポリマー組成物を使用して従来公知の方法に従って製造され得る。物品の架橋は、物品の形成の前のポリマー組成物のコンパウンド工程中に、または物品の形成中または形成後に行われ得る。架橋は、好ましくはラジカル反応によって行われる。
【0116】
従って、本発明は、架橋された物品を製造するための方法をも提供する。上記方法は、
a)上記および下記で、または特許請求の範囲で定義されるポリマー組成物を使用して物品を形成する工程、および
b)工程a)で得られた物品を好ましくはラジカル反応によって架橋する工程
を含む。
【0117】
本発明の方法の工程a)は、好ましくは、
上記および下記で、または特許請求の範囲で定義される本発明のポリマー組成物を提供すること、
ポリマー組成物を、所望により更なる成分、例えば更なるポリマー成分および/または添加剤、とともに混合する、好ましくは押出機中で溶融混合すること、および
ポリマー組成物の得られた混合物、好ましくは得られた溶融混合物、を使用して物品を形成すること
によって行われる。
【0118】
溶融混合は、得られた混合物の少なくとも主要ポリマー成分の融点より上で混合することを意味し、好ましくは、ポリマー成分の融点または軟化点より20〜25℃上の温度で行われる。好ましくは、上記ポリマー組成物は、工程a)に提供されるとき、ペレットまたは粉末の形態で使用される。添加剤は、物品の製造法の前にまたはそれに関連して添加され得る。加工温度および装置は、従来周知であり、例えば慣用のミキサーおよび押出機、例えば単軸または二軸押出機が本発明の方法に適する。
【0119】
工程a)から得られ、工程b)で架橋されるポリマー組成物の溶融混合物は、唯一のポリマー成分としてのZNポリエチレンから成るのが好ましい。しかし、本明細書では、ポリマー組成物の溶融混合物は、更なる成分、例えば担体ポリマーとの混合物として、すなわちいわゆるマスターバッチの形態で、ポリマー組成物に所望により添加された添加剤、を含み得ることが理解される。
【0120】
本発明の方法の架橋工程b)は、好ましくは、照射によって、または遊離ラジカル発生剤を使用して行われる。上記遊離ラジカル発生剤は、上述したように好ましくは過酸化物である。使用可能な製造および架橋の方法および装置は公知であり、文献に十分記載されている。
【0121】
工程b)の架橋は、物品の形成中にまたはその後の工程として物品の製造ラインと関連しておよび所望により物品形成装置の後の異なる装置において行われ得、その後、架橋された物品が回収される。あるいは、工程b)の架橋が、物品の製造ラインの外で行われ得る。ここでは、工程a)で形成された物品が回収され、回収された物品の架橋工程b)が後に、例えば最終使用場所で、行われる。
【0122】
照射架橋は典型的には、慣用のやり方で、形成された物品に電子ビーム、ガンマ線または他の照射硬化系を照射することにより、好ましくは電子ビームを形成された物品に照射することにより、行われる。使用される用量は、例えば典型的な用量で変わり得、例えば100〜200kGy、例えば120〜200kGyであり、興味深い特定の用量は、125kGy、160kGyおよび190kGyである。
【0123】
より好ましくは、工程b)において、工程a)で得られた物品が、遊離ラジカル発生剤、好ましくは上述したように過酸化物、の存在下で架橋される。遊離ラジカル発生剤、好ましくは上述したように過酸化物、はポリマー組成物が工程a)に導入される前に、ポリマー組成物中に、例えばポリマー組成物のペレットまたは粉末中に、存在し得、あるいは、遊離ラジカル発生剤は工程a)中に、例えば物品形成の前の混合工程中に、ポリマー組成物に添加され得る。
【0124】
遊離ラジカル発生剤を使用する架橋は、典型的には、高められた温度で行われる。典型的には、架橋温度が、溶融混合工程で使用される温度より少なくとも20℃高く、そして当業者によって判断され得る。
【0125】
本発明は、上記または特許請求の範囲で定義された物品製造法によって得られ得る架橋された物品をさらに提供する。記載「方法によって得られ得る」は、「プロダクトバイプロセス」を意味する。すなわち、生成物が、製造法故に技術的特徴を有することを意味する。
【0126】
本発明はさらに、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む架橋された第一物品を独立して提供する。ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記物品は、架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物サンプルから測定されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する。
【0127】
本発明はさらに、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む第二の架橋された物品を独立して提供する。ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物は、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する。本発明では、上記ゲル含量が、物品を製造するために使用されるポリマー組成物の架橋特性を定義し、それは、ポリマー組成物のサンプルから測定されることが明らかである。すなわち、架橋された第一の物品の場合のように、架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物のサンプルからは測定されない。
【0128】
第一および第二の架橋された物品のポリマー組成物、好ましくはエチレンポリマー、は好ましくは、炭素−炭素二重結合を、好ましくは0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個(FTIRによって測定)、好ましくは少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有する。より好ましくは、エチレンポリマーが、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有する(FTIRによって測定)。
【0129】
本発明はさらに、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む第三の架橋された物品を独立して提供する。ここで、エチレンポリマーは、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物、好ましくはエチレンポリマー、は架橋の前に、炭素−炭素二重結合を、好ましくは0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個(FTIRによって測定)、好ましくは少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有する。より好ましくは、エチレンポリマーが、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有する(FTIRによって測定)。さらに、本発明の架橋された第三の物品のポリマー組成物は、好ましくは、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する。
【0130】
方法によって定義される架橋された物品および特性によって定義される第一、第二および第三の架橋された物品は、共通して、特に断らない限り、架橋された物品と呼び、独立して下記の好ましい特性を有する。
【0131】
好ましくは、架橋された物品、好ましくは少なくとも本発明の架橋された第三の物品、が、架橋されたZNポリエチレンを含む架橋されたポリマー組成物を含み、ZNポリエチレンは架橋前に、「測定法」において記載された「不飽和の量」にしたがって決定されるとき、少なくとも0.2個のビニル基/鎖、好ましくは少なくとも0.3、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.7、より好ましくは少なくとも0.8、さらにより好ましくは少なくとも0.9個のビニル基/鎖を含む。
【0132】
架橋された物品の、すなわち物品中に使用される、ポリマー組成物は好ましくは、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のゲル含量を有する。いくつかの架橋された物品の実施態様では、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるとき、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って少なくとも80重量%のゲル含量がさらにより好ましい。
【0133】
より好ましくは、架橋された物品、好ましくは架橋された第三の物品、が好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて0.4重量%の過酸化物を使用して架橋されるポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のゲル含量を有するポリマー組成物を含む。上記ポリマー組成物は、より好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて0.7重量%の過酸化物を使用して架橋されるポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%のゲル含量を有し、さらにより好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて1.0重量%の過酸化物を使用して架橋されるポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%のゲル含量を有する。過酸化物の使用量は、供給者によって販売された製品から理解される。
【0134】
好ましい架橋された物品のZNポリエチレンは、架橋の前に、少なくとも7000、好ましくは少なくとも10000g/モル、好ましくは少なくとも15000g/モル、より好ましくは少なくとも20000g/モル、より好ましくは少なくとも25000g/モル、より好ましくは25000〜250000g/モル、より好ましくは26000〜200000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する。所望の最終用途に応じて、ZNポリエチレンのMnの上限は、150000g/モルまで、好ましくは100000g/モルまでに調整され得る。
【0135】
架橋された物品において使用されるポリマー組成物は、好ましくは、「測定法」における「ゲル含量およびトルク」において記載されているように、ポリマー組成物から成るディスクサンプルを使用してモンサント試験に従って測定されるとき、少なくとも5.0dNm、好ましくは少なくとも6.0dNm、より好ましくは少なくとも6.5dNmの最大トルク(トルクmax、dNm)を有する。上限は限定されず、好ましくは30dNmまでである。
【0136】
架橋された物品の架橋されたポリマー組成物は、好ましくは、唯一の架橋可能なポリマー成分としての、より好ましくは唯一のポリマー成分としての、ZNポリエチレンから成る。しかし、本明細書では、ポリマー組成物が、更なる成分、例えば、担体ポリマーとの混合物として、すなわちいわゆるマスターバッチの形態で、所望によりポリマー組成物に添加された添加剤、を含み得ることが理解される。
【0137】
より好ましくは、架橋された物品、好ましくは架橋されたポリマー組成物が、好ましくは、炭素−炭素二重結合を付与するために添加される更なる成分を何ら有さず、より好ましくは架橋された物品のゲル含量を高めるために添加される更なる成分を何ら有しない。
【0138】
上記に示されるように、本発明の架橋された物品は、良好な機械的特性および熱安定性を有する。好ましくは、揮発性および半揮発性の有機化合物(FOG/VOC)も望ましい低レベルにある。好ましくは、臭味特性も有利である。
【0139】
さらに、本発明に従えば、ZNポリエチレン中に非常に低分子量の末端がないことが好ましく、それは、非常に有利な架橋性を結果する。当然理解されるように、架橋されたポリマー組成物、より好ましくは架橋されたZNポリエチレンは、上記で定義されたように、好ましい部分的範囲、特性および実施態様を有する。
【0140】
好ましい実施態様によれば、架橋された物品が、照射によって架橋されており、そして上記定義されたように、独立の架橋された第一の物品であり、好ましくは独立の架橋された第二の物品であり、より好ましくは独立の架橋された第三の物品であり、それらの好ましい実施態様を含む。この実施態様の照射では、架橋前のZNポリエチレンが、好ましくは0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRを有する。好ましくはMFRが0.1〜2g/10分の範囲内である。MFR21は好ましくは40.0g/10分未満、好ましくは2〜35g/10分、より好ましくは20g/10分未満、特に5〜20g/10分である。
【0141】
同等に好ましい実施態様によれば、架橋された物品が、少なくとも1の遊離ラジカル発生剤、好ましくは上記で定義された1以上の過酸化物、を使用して架橋されており、そして上記定義されたように、独立の架橋された第一の物品であり、好ましくは独立の架橋された第二の物品であり、より好ましくは独立の架橋された第三の物品であり、それらの好ましい実施態様を含む。この実施態様では、架橋前のZNポリエチレンが、好ましくは0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRおよび40.0g/10分未満、好ましくは2〜35.0g/10分、より好ましくは3〜25g/10分のMFR21を有する。FRR21/5は好ましくは50まで、好ましくは2〜35、より好ましくは10〜30である。
【0142】
過酸化物で架橋された物品は、本発明の最も好ましい架橋された物品である。
【0143】
測定法
特に断らない限り、詳細な説明または実験部分および特許請求の範囲において示されたPEコポリマーの特性を決定するために下記の方法が使用された。
wt%=重量%
【0144】
メルトインデックス
メルトフローレート(MFR)は、ISO1133に従って決定され、g/10分で示される。MFRは、ポリマーの溶融粘度の目安である。MFRは、PEに関して190℃で決定される。溶融流動速度が決定されるところの荷重は、通常、下付き文字で示され、例えばMFRは、2.16kg荷重で測定され(条件D)、MFRは、5kg荷重で測定され(条件T)、MFR21は、21.6kg荷重で測定される(条件G)。
【0145】
FRR(フローレート比)の大きさは、せん断減粘の目安であり、異なる荷重でのフローレートの比を示す。すなわち、FRR21/2は、MFR21/MFRの値を示す。FRRは、ポリマーの分子量分布および分岐構造によって影響を受ける。
【0146】
コモノマー含量(NMR)
コモノマー含量は、基本的割り付け(basic assignment)の後の定量的核磁気共鳴(NMR)スペクトル、13C−NMR、によって決定された(例えば、「NMR Spectraof Polymers and Polymer Additives(ポリマーおよびポリマー添加剤のNMRスペクトル)」、A. J. Brandolini and D. D. Hills, 2000,Marcel Dekker, Inc. New York)。実験パラメータは、この特定の目的のための定量的スペクトルの測定を確実にするために調整された(例えば、「200 and More NMR Experiments: A Practical Course」、S. Berger and S. Braun, 2004, Wiley-VCH, Weinheim)。13C−NMRスペクトルは、1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10 w/w)に溶解されたサンプルから130℃でBruker 400MHz分光計上に記録された。従来公知のやり方で、代表的なサイトのシグナル積分の簡単な補正された比を使用して量が計算された。
【0147】
密度
ポリマーの密度は、ISO 1183/1872−2Bに従って測定された。
【0148】
本発明の目的のために、ブレンドの密度が、下記式に従って成分の密度から計算され得る。

ここで、ρはブレンドの密度であり、wはブレンド中の成分「i」の重量画分であり、ρは成分「i」の密度である。
【0149】
分子量
Mz、Mw、MnおよびMWDは、下記方法に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0150】
重量平均分子量Mwおよび分子量分布(MWD=Mw/Mn、ここでMnは数平均分子量であり、Mwは重量平均分子量であり、Mzはz−平均分子量である)は、ISO16014−4:2003およびASTM D 6474−99に従って測定される。屈折率検出器およびオンライン粘度計を備えたWaters GPCV2000装置が、トーソーバイオサイエンス社の2xGMHXL−HTおよび1xG7000HXL−HT TSK−ゲルカラムおよび溶媒としての1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールで安定化)と共に、140℃および1mL/分の一定流速で使用された。分析ごとに209.5μLのサンプル溶液が注入された。セットされたカラムは、普遍的較正を使用し(ISO16014−2:2003に従う)、1kg/モル〜12000kg/モルの範囲の少なくとも15の狭いMWDポリスチレン(PS)標準を用いて較正された。Mark Houwink定数が、ASTM D 6474−99に示されているように使用された。全てのサンプルは、GPC装置中にサンプリングする前に、0.5〜4.0mgのポリマーを4mL(140℃)の安定化されたTCB(移動相と同じ)中に溶解し、最大3時間、160℃の最高温度で、連続して静かに撹拌しながら保持することにより調製された。
【0151】
不飽和の量
1. IR分光法による炭素−炭素二重結合の量の定量
定量的赤外(IR)分光法を使用して、炭素−炭素二重結合(C=C)の量を定量した。公知構造の代表的低分子量モデル化合物中のC=C官能基のモル吸光係数の決定の前に、較正が達成された。
【0152】
これらの基の各々の量(N)が、下記によって、合計1000個の炭素原子当たりの炭素−炭素二重結合の数(C=C/1000C)として決定された。
N=(Ax14)/(ExLxD)
ここで、Aはピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Eは関与する基のモル吸光係数(l・モル−1・mm−1)であり、Lはフィルム厚さ(mm)であり、Dは物質の密度(g・cm−1)である。
【0153】
ポリエチレンのために、3つの型の、C=Cを含有する官能基が考慮された。各々は特徴的な吸収を有し、各々は個々の吸光係数をもたらす異なるモデル化合物に対して較正された。
E=13.13l・モル−1・mm−1を与える1−デセン[dec−1−ene]に基づく910cm−1によるビニル(R−CH=CH2)
E=18.24l・モル−1・mm−1を与える2−メチル−1−ヘプテン[2−methyhept−1−ene]に基づく888cm−1によるビニリデン(RR’C=CH2)
E=15.14l・モル−1・mm−1を与えるトランス−4−デセン[(E)−dec−4−ene]に基づく965cm−1によるトランス−ビニレン(R−CH=CH−R’)
【0154】
ポリエチレンのために、線状基線補正(linear baseline correction)が、約980cm−1と840cm−1との間に適用された。
【0155】
ポリエチレンサンプルのために、固体状態の赤外スペクトルがFTIR分光計(Perkin Elmer 2000)を使用して、圧縮成形された薄い(0.5〜1.0mm)フィルムに関して、4cm−1の分解能で記録され、吸収モードで分析された。
【0156】
2. IR分光法によるモル吸光係数の定量
モル吸光係数が、ASTM D3124−98およびASTM D6248−98に示された手法に従って決定された。溶液状態の赤外スペクトルが、0.1mm路長の液体セルを備えたFTIR分光計(Perkin Elmer 2000)を使用して、4cm−1の分解能で記録された。
【0157】
モル吸光係数(E)は、下記式によって、l・モル−1・mm−1として決定された。
E=A/(CxL)
ここで、Aはピーク高さとして定義される最大吸光度であり、Cは濃度(モル・l−1)であり、Lはセルの厚み(mm)である。
【0158】
少なくとも3つの0.18モル・l−1の二硫化炭素(CS2)中の溶液が使用され、モル吸光係数の平均値が使用された。
【0159】
3.ビニル基/鎖の量
鎖当たりのエチレン単位として定義される鎖長(CL)は、分子量の項で定義されたように測定されたMnを使用して計算される。
鎖長=Mn/28
【0160】
ビニル含量C=C/1000C(VIN)は、上記1.および2.で記載されているようにFT−IRを使用して測定される。ビニル基/鎖の量は、(CL・2・VIN)/1000=ビニル基/鎖で計算される。
【0161】
揮発性および半揮発性有機化合物、FOGおよびVOC分析
VOC(揮発性有機化合物)/FOG(所与の温度で製造されるフューム(fume))分析はVDA278に基づくと共に、下記の改変を伴った。
【0162】
VDA278はVOC/FOG分析のための直接の脱着(熱の流動および不活性気体の流動を使用)を要求する。揮発性および半揮発性有機化合物は、サンプルから不活性気体流中に抽出され、次いでGC(MS)に注入する前に第二のトラップに再び集められる。GC6890(アジレント社から供給)および自動熱脱着器、Gerstel TDSA(Gerstel社から供給)、に連結されたCIS−システムが使用された。担体−ガス:ヘリウム5.0、カラム:50mx0.32mm、0.52μmの5%フェニル−メチル−シロキサンHP Ultra2。
【0163】
1)VOC分析は、下記の主要パラメータを使用して、標準に挙げられたaccデバイス設定1で行われる。サンプルを90度で30分間脱着してn−C20までの範囲の揮発性有機化合物を抽出する。この後、サンプル1g当たりのトルエン当量μgとしての各化合物の半定量分析を行う。
フローモード:スプリットレス、最終温度:90℃、最終時間:30分、速度:60K/分
冷却トラップ:フローモードスプリット:1:30、温度範囲:−150℃〜+280℃、速度12K/秒、最終時間:5分
GC−設定:40℃、2分、等温、3K/分で92℃まで、5K/分で160℃まで、10K/分で280℃まで、10分等温、フロー:1.3ml/分
【0164】
2)FOG分析は、下記の主要パラメータを使用して、標準に挙げられたaccデバイス設定1で行われる。同じサンプルをさらに120度で60分間脱着してn−C16〜n−C32の範囲の半揮発性有機化合物を抽出する。この後、サンプル1g当たりのn−ヘキサデカン当量μgとしての各化合物の半定量分析を行う。
フローモード:スプリットレス、速度:60K/分、最終温度:120℃、最終時間:60分
冷却トラップ:フローモードスプリット:1:30、温度範囲:−150℃〜+280℃、速度12K/秒
GC−設定:50℃、2分、等温、25K/分で160℃まで、10K/分で280℃まで、30分等温、フロー:1.3ml/分
定量がGC−MS5973装置(アジレント社から供給)を使用して行われた
単位:VOC:μgトルエン当量/g、FOG:μgヘキサデカン当量/g
【0165】
ゲル含量およびトルク
ゲル含量およびトルクは、独立した結果を伴う2つの独立した測定値であり、個々になされ得る。便宜上、本願では、両方の測定が、同じ試験中になされた。
【0166】
ゲル含量は、ASTM D2765−01、方法Aに従い、デカリン抽出を使用して測定される。本明細書および特許請求の範囲において、ポリマー組成物のゲル含量の定義およびデータは、本明細書において具体的に述べたように、下記に記載された架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから、または架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物サンプルからゲル含量を測定することにより与えられる。照射架橋された物品の場合には、ポリマー組成物のゲル含量は、本明細書において、上記ディスクサンプルから、または、下記に記載するように調製され、照射架橋されたパイプサンプルから測定することにより定義される。ゲル含量の定義において使用されるサンプルは、本明細書において具体的に記載されている。
【0167】
1. ディスクサンプルからのゲル含量およびトルク測定
特に断らない限り、ポリマー組成物のディスクサンプルは、0.4重量%の過酸化物、好ましくは2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、を使用して架橋された。
過酸化物を添加するための手法:ポリマー組成物がペレットの形状の場合には、破砕して粉末状にし、使用前にふるいにかけた。直径が2.0mmより小さい粒子のみが含まれた。粉末をガラスびんに入れ、振り、各サンプルに、特に断らない限り、0.4重量%の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(Trignonox 145 E85、油中の過酸化物の85重量%溶液、Akzo Nobelによって供給された)を滴下した。総サンプル重量は100gであった。
【0168】
浸漬(soaking)が、室温でHeraeus装置回転オーブン中で20時間、サンプルを回転することにより行われた。
【0169】
ディスクの調製:浸漬後、ポリマー粉末をSpecac圧縮成形機中で円形ディスクに圧縮成形した(Ca:3mm厚さ、直径:40mm)。これは、122℃の温度で5kPaの圧力で2分間行われ、次いで、同じ圧力で2分間冷却された。
【0170】
架橋および同時のトルク試験Tが、揺動運動(0.5度で、空気雰囲気中、1分につき50回の運動回数)によってトルク(NmまたはdNm)対時間を測定する装置であるモンサントレオメーター(MDR2000E)で行われた。したがって、架橋いつ開始し、どの程度達成されるかを研究することができる。測定は、各物質からの2つのディスクサンプルに対して200℃で5分間行われた。
【0171】
5分の上記モンサントレオメーター試験からトルク結果が得られ、そして決定された。パラメータT90(分)は、完全な測定時間後に達成される最終トルク値(最大トルク、dNm)の90%に到達するためにかかる時間であり、この場合には5分である。
【0172】
ゲル含量(架橋度、XL、%)は、上記5分のレオメーター試験から得られた物質のディスクサンプルから決定された。ゲル含量の決定は、ASTM D2765−01、方法Aにしたがって、デカリン抽出を使用して行われた。
【0173】
2. ゲル含量決定のための照射架橋されたパイプサンプル
ポリマー組成物のペレットを使用してパイプサンプルを製造した。ポリマー組成物が粉末形状の場合には、Buss 100mm機中でコンパウンドしそしてペレット化した。パイプ押出を、Battenfeld押出機で、標準のPEスクリュを使用し、約1m/分のライン速度で行い、3mmの肉厚を有する直径32mmのパイプにした。
【0174】
溶融温度は200〜230℃の範囲であった。パイプの照射は、本明細書中で述べたように、空気中室温で電子ビームにより、160kGyまたは190kGyの用量を使用して行われた。1Gyは、1ジュール/kgのエネルギー吸収に相当する。パイプサンプルが、ASTM D2765−01に従うゲル含量測定の方法Aにおいて使用された。
【0175】
実験
実施例1:
LLDPE1:市販のチーグラーナッタポリエチレンコポリマー、SCLAIR(商品名)FP026−F
コモノマー:1−オクテン、密度926kg/m、MFR0.8g/10分、Nova Chemicals製
【0176】
実施例2:
LLDPE2:市販のチーグラーナッタポリエチレンコポリマー、SCLAIR(商品名)FP120−A
コモノマー:1−オクテン、密度920kg/m、MFR1.0g/10分、Nova Chemicals製
灰分含量分析が使用され得、ここで使用されて、実施例1および実施例2のSCLAIRグレードが、ZNに基づく触媒系を使用して製造されたことを確認した。
【0177】
実施例3:チーグラーナッタ触媒を使用する二峰性LLDPEの調製
触媒の調製
錯体調製:87kgのトルエンが反応器中に添加された。次いで、ヘプタン中の45.5kgのBomag Aも反応器中に添加された。161kgの99.8%の2−エチル−1−ヘキサノールが次いで、24〜40kg/hの流速で反応器中に導入された。BOMAG−Aと2−エチル−1−ヘキサノールとの間のモル比は1:1.83であった。
【0178】
固体触媒成分の調製:窒素中で600℃で活性化された275kgのシリカ(CrossfieldのES747JR、20μmの平均粒子サイズを有する)が触媒調製反応器に充填された。次いで、555リットルのペンタン中に希釈された411kgの20%EADC(2.0ミリモル/gシリカ)が環境温度で1時間、反応器中に添加された。処理されたシリカを1時間撹拌しながら、温度が次いで35℃に高められた。シリカが50℃で8.5時間乾燥された。次いで、上述したように調製された錯体655kg(2ミリモルのMg/gシリカ)が23℃で10分間添加された。86kgのペンタンが、22℃で10分間、反応器中に添加された。スラリーが50℃で8時間撹拌された。最後に、52kgのTiClが45℃で0.5時間添加された。スラリーが40℃で5時間撹拌された。触媒が次いで、窒素でパージすることにより乾燥された。
【0179】
重合法:
実施例で使用されたZN LLDPEは、実施例1aに従って調製された重合触媒およびトリエチルアルミニウム助触媒を使用して65バールの圧力で80℃で50dmのループ反応器中のスラリーでの予備重合段階を含むパイロットプラント多段反応において製造された。助触媒のアルミニウムと触媒のチタンとのモル比は20であった。エチレンが、(200gのC2)/(1g/触媒)の比で供給された。プロパンが希釈剤として使用され、水素が、プレポリマーのMFRを約10g/10分に調整するための量で供給された。得られたスラリーが、500dmのループ反応器中に移され、85℃の温度および60バールの圧力で運転され、プロパン希釈剤、エチレン、水素および1−ブテンコモノマーが、反応混合物中のエチレン含量が6.4モル%であり、水素とエチレンとのモル比が150モル/キロモルであり、1−ブテンとエチレンとのモル比が730モル/キロモルであるような流速で連続して導入された。予備重合された触媒の連続供給が、エチレンポリマーが28kg/hの速度で製造されるような量に調整された。ポリマーは、100g/10分のMFRおよび946kg/mの密度を有した。
【0180】
ポリマーは、沈降区間を使用してループ反応器から抜き出され、ポリマースラリーが、3バール圧力および20℃温度で運転されるフラッシュタンク中に導入された。
【0181】
フラッシュタンクから、ポリマーが流動床気相反応器中に導入され、上記気相反応器は、80℃温度および20バール圧力で運転された。気相反応器中に、追加のエチレン、水素および1−ブテンが導入されるとともに、窒素が流れて連結および配管をオープンに保った。その結果、反応器ガス中のエチレンの濃度が20モル%であり、水素とエチレンとのモル比が4モル/キロモルであり、1−ブテンとエチレンとのモル比が580モル/キロモルであった。ポリマーが反応器から67kg/hの速度で抜き出された。ポリマーを集めた後、慣用の添加剤(安定剤およびポリマー加工助剤)とブレンドし、逆方向に回転する二軸押出機JSW CIM90Pでペレットに押し出した。得られた多峰性ZN LLDPEは、0.4g/10分のMFRおよび923kg/mの密度を有した。ループ反応器で製造されたポリマーと気相反応器で製造されたポリマーとの間のスプリットは45/55であった。
【0182】
実施例4:
FG5190:市販のチーグラーナッタポリエチレンコポリマー、密度919kg/m、MFR1.2g/10分、ボレアリス社製
灰分含量分析が使用され得、ここで使用されて、実施例4のFGグレードが、ZNに基づく触媒系を使用して製造されたことを確認した。
【0183】
実施例5:チーグラーナッタ触媒を使用する単峰性HDPEの調製
エチレンとヘキセンとの単峰性チーグラーナッタコポリマーが、500dmの容積を有するスラリーループ反応器で製造された。反応器に、希釈剤としてのイソブタン、EP0688794の実施例3に従うチーグラーナッタ触媒、エチレン、1−ヘキセンおよび水素が連続的に導入され、ループ反応器での重合が、96℃で60バールの全圧力で運転された。反応器条件および供給物は、エチレン濃度7.5モル%、0.146kgH/1トンのエチレン、40kgの1−ヘキセン/1トンのエチレン、40ppmのTEAIおよび10ppmの帯電防止剤であった。
【0184】

【0185】
得られた反応器ポリマーが、3000ppmのIrganox B215および4000ppmのCa−ステアレートと混合され、次いで、逆方向に回転する二軸押出機CIM90P(日本製鋼所製)で240kwh/トンのSEIでペレットに押し出された。最終特性は、ポリマーペレットから得られた。密度947.0kg/mおよびMFR0.6g/分
【0186】
実施例6:
SCLAIR(商品名)14G:密度936kg/m、C2/C4、MFR0.72g/10分、Nova Chemicals製
【0187】
実施例7:
SCLAIR(商品名)19A:密度962kg/m、C2、MFR0.72g/10分、Nova Chemicals製
灰分含量分析が使用され得、ここで使用されて、実施例6および実施例7のSCLAIRグレードが、ZNに基づく触媒系を使用して製造されたことを確認した。
【0188】
比較例1:
HE2591:市販のCrグレード、ボレアリス社製、表1に示す特性(参照としての架橋された生成物のための既存の市販グレード)。
【0189】
実施例は種々の過酸化物量で驚くほど良好な架橋効率を示し、それは、架橋用途のための従来使用される比較例1の「参照」Crグレードの架橋効率と匹敵し得る。さらに、実施例は、トルクで表される非常に良好な機械的特性を示す。また、VOCおよびFOGとして表される揮発物および半揮発物含量が好ましく低い。有益な特性が下記表に示される。
【0190】

【0191】

【0192】

【0193】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、上記エチレンポリマーが、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物が炭素−炭素二重結合を含有し、かつ架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋性を有するところの方法。
【請求項2】
架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法であって、上記エチレンポリマーが、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、上記ポリマー組成物、好ましくはエチレンポリマーが、FTIRによって測定されるとき、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有するところの方法。
【請求項3】
前記エチレンポリマーが、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、前記ポリマー組成物、好ましくは前記エチレンポリマーが、FTIRによって測定されるとき、炭素−炭素二重結合を、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で含有し、上記ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物のディスクサンプルから測定(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋性を有するところの請求項1または2記載の、架橋された物品を製造するために、エチレンポリマーを含むポリマー組成物を使用する方法。
【請求項4】
前記ポリマー組成物、好ましくは前記エチレンポリマー、が
i)FTIRによって測定されるとき、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で炭素−炭素二重結合を含有し、より好ましくは、上記エチレンポリマーが、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有し、または
ii)本明細書の「測定法」において記載された「不飽和の量」に従って決定されるとき、上記エチレンポリマーが、少なくとも0.2個のビニル基/鎖、好ましくは少なくとも0.3個の、好ましくは少なくとも0.5個の、より好ましくは少なくとも0.7個の、より好ましくは少なくとも0.8個の、さらにより好ましくは少なくとも0.9個のビニル基/鎖を含有する、
より好ましくは、上記エチレンポリマーが上記(i)および(ii)の特徴を有する、
ところの請求項1〜3のいずれか1項記載のポリマー組成物の使用方法。
【請求項5】
前記エチレンポリマーがエチレンホモポリマーまたは、エチレンと1以上のコモノマーとのコポリマーであり、好ましくは、
855〜909kg/mの密度範囲をカバーする、エラストマー(POE)、プラストマー(POP)または超低密度エチレンコポリマー(VLDPE)、
910〜930kg/m、好ましくは910〜929kg/m、より好ましくは915〜929kg/mの密度を有する線状低密度エチレンコポリマー(LLDPE)、
931〜945kg/mの密度を有する中密度エチレンコポリマー(MDPE)、または
エチレンホモポリマーまたはエチレンコポリマーから選択され、かつ946kg/m超、好ましくは946〜977kg/m、より好ましくは946〜965kg/mの密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)
から選択され、より好ましくは、上記エチレンポリマーが、上記LLDPE、MDPEまたはHDPEポリマーから選択される同等の代替物から選択され、より好ましくはく上記LLDPEまたはMDPEから選択される、請求項1〜4のいずれか1項記載のポリマー組成物の使用方法。
【請求項6】
エチレンと1以上のコモノマーとのコポリマーが、好ましくはエチレンと1以上のオレフィンコモノマーとのコポリマー、好ましくはエチレンと1以上のα−オレフィンとのコポリマー、最も好ましくはエチレンと3〜20個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を有する1以上のα−オレフィンとのコポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリマー組成物の使用方法。
【請求項7】
前記エチレンポリマーが、下記特性の少なくとも1を、好ましくは任意の組み合わせの2以上を、より好ましくは全てを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のポリマー組成物の使用方法、
(i)分子量分布(MWD)に関して単峰性または多峰性である、好ましくは、エチレンポリマーが少なくとも2.5のMWD(Mn/Mw)、好ましくは少なくとも2.9の、好ましくは3〜20の、より好ましくは3.3〜15の、さらにより好ましくは3.5〜10のMWDを有する、
(ii)0.01〜200.0g/10分、好ましくは0.05〜150.0g/10分、好ましくは0.1〜20.0g/10分のMFRを有する、
(iii)50.0g/10分未満、好ましくは2〜40g/10分のMFR21を有する
(iv)少なくとも7000、好ましくは少なくとも10000g/モル、好ましくは少なくとも15000g/モル、より好ましくは少なくとも20000g/モル、より好ましくは少なくとも25000g/モル、より好ましくは25000〜250000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する、または
(v)少なくとも35000g/モル、好ましくは75000〜800000g/モル、好ましくは85000〜500000g/モル、より好ましくは90000〜300000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【請求項8】
下記工程
(a)請求項1〜7のいずれか1項に記載された特徴を有するポリマー組成物を含む物品を形成すること、および
(b)工程(a)で得られた物品を、好ましくはラジカル反応により、架橋すること、
を含む、架橋された物品の製造法。
【請求項9】
工程(b)において、物品が、照射によってまたは遊離ラジカル発生剤の使用によって、またはそれらの組み合わせによって架橋され、上記遊離ラジカル発生剤が好ましくは過酸化物である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法によって得られ得る架橋された物品。
【請求項11】
架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む架橋された物品であって、上記エチレンポリマーが、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、かつ
(i)上記物品が、架橋された物品から取られた架橋されたポリマー組成物サンプルから測定されるときに、少なくとも50重量%のゲル含量(ASTM D 2765−01、方法A、デカリン抽出)として表される架橋度を有する、
(ii)上記ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋度を有する、または
(iii)上記ポリマー組成物、好ましくは上記エチレンポリマー、が架橋前に炭素−炭素二重結合を含有し、好ましくは、FTIRによって測定されるとき、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で炭素−炭素二重結合を含有し、より好ましくは、上記エチレンポリマーが、FTIRによって測定されるとき、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有する、
ところの物品。
【請求項12】
前記エチレンポリマーが、エチレンを、所望により1以上のコモノマーと共に、チーグラーナッタ触媒の存在下で重合することによって得ることができるものであり、
前記ポリマー組成物、好ましくは前記エチレンポリマー、が架橋前に炭素−炭素二重結合を含有し、好ましくは、FTIRによって測定されるとき、0.2個超の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個の炭素−炭素二重結合/炭素原子1000個の量で炭素−炭素二重結合を含有し、より好ましくは、エチレンポリマーが、FTIRによって測定されるとき、少なくとも0.19個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.2個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.3個のビニル基/炭素原子1000個、好ましくは少なくとも0.4個のビニル基/炭素原子1000個、より好ましくは少なくとも0.5個のビニル基/炭素原子1000個を含有し、かつ
前記ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも50重量%のゲル含量として表される架橋度を有する、
ところの、架橋されたエチレンポリマーを含む架橋されたポリマー組成物を含む請求項11記載の架橋された物品。
【請求項13】
前記ポリマー組成物が、架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のゲル含量を有する、請求項11または12記載の架橋された物品。
【請求項14】
前記エチレンポリマーが架橋前に、本明細書の「測定法」において記載された「不飽和の量」に従って決定されるとき、少なくとも0.2個のビニル基/鎖、好ましくは少なくとも0.3個の、好ましくは少なくとも0.5個の、より好ましくは少なくとも0.7個の、より好ましくは少なくとも0.8個の、さらにより好ましくは少なくとも0.9個のビニル基/鎖を含有する、請求項11〜13のいずれか1項記載の架橋された物品。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が、ポリマー組成物の重量に基づいて0.4重量%の過酸化物を使用して架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のゲル含量を有し;より好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて0.7重量%の過酸化物を使用して架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%のゲル含量を有し;さらにより好ましくは、ポリマー組成物の重量に基づいて1.0重量%の過酸化物を使用して架橋されたポリマー組成物から成るディスクサンプルから測定されるときに、ASTM D 2765−95、方法A(デカリン抽出)に従って、少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%のゲル含量を有する、請求項11〜14のいずれか1項記載の架橋された物品。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が、下記特性の少なくとも1を、好ましくは任意の組み合わせの2以上を、より好ましくは全てを有する、請求項11〜15のいずれか1項記載の架橋された物品、
(i)架橋前に、少なくとも7000、好ましくは少なくとも10000g/モル、好ましくは少なくとも15000g/モル、より好ましくは少なくとも20000g/モル、より好ましくは少なくとも25000g/モル、より好ましくは25000〜250000g/モル、より好ましくは26000〜200000g/モルの数平均分子量(Mn)を有する、
(ii)照射によって架橋され、かつエチレンポリマーが架橋前に、0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRを有し、および好ましくは40.0g/10分未満、好ましくは2〜35g/10分、より好ましくは20g/10分未満、特に5〜20g/10分のMFR21を有し、あるいは遊離ラジカル発生剤、好ましくは過酸化物、を使用して架橋され、かつエチレンポリマーが架橋前に、0.01〜5.0g/10分、好ましくは0.05〜2.0g/10分、好ましくは0.2〜1.4g/10分のMFRを有し、および好ましくは40.0g/10分未満、好ましくは2〜35.0g/10分、より好ましくは3〜25g/10分のMFR21を有する、
(iii)本明細書の「測定法」において記載されたように測定されるとき、15未満の、好ましくは12未満の揮発性有機化合物(VOC)および15未満の、好ましくは10未満の、所与の温度で製造されるヒューム(FOG)を有する、または
(iv)本明細書の「測定法」における「ゲル含量およびトルク」において記載されているようにポリマー組成物から成るディスクサンプルを使用してモンサント試験に従って測定されるとき、少なくとも5.0dNm、好ましくは少なくとも6.0dNm、より好ましくは少なくとも6.5dNmの最大トルク(トルクmax、dNm)を有する。
【請求項17】
物品が、遊離ラジカル発生剤、好ましくは1以上の過酸化物、を使用して架橋されている、請求項11〜16のいずれか1項記載の架橋された物品。
【請求項18】
物品が照射によって架橋されている、請求項11〜16のいずれか1項記載の架橋された物品。


【公表番号】特表2012−528216(P2012−528216A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512312(P2012−512312)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056939
【国際公開番号】WO2010/136374
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511114678)
【Fターム(参考)】