説明

柱・梁構造

【課題】仕上面材の支持機能を兼ね備える柱・梁構造をより少ない部品数で実現できる柱・梁構造を提供すること。
【解決手段】本発明の仕上面材の支持機能を兼ね備えた柱・梁構造は,構造物の壁体を構成する構造材として,複数の鋼製の柱材10及び複数の鋼製の梁材20と;柱材10及び梁材20で囲まれる架構面内に配設される複数の仕上面材30と;を含む。そして,柱材10及び梁材20には,仕上面材30の外周端部を狭持する挟持部14,24が設けられており,この挟持部14,24は,柱材10又は梁材20の構造用断面に含まれるように,柱材10又は梁材20の軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に形成されている。かかる構成により,柱材10及び梁材20の断面の一部を,仕上面材30の支持部材として機能させて,仕上面材30の支持機能を兼ね備えた柱・梁構造をより少ない部品数で実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,柱・梁構造に関し,特に,仕上面材の支持機能を兼ね備えた柱・梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,建築構造物の壁体を構成する柱・梁構造において,ガラス板等の仕上面材を設置するためには,まず,構造材である柱材及び梁材を組み立てた後に,仕上面材を支持するための支持部材(例えば,四辺枠組みしたサッシ枠等)を柱材・梁材に取り付け,この支持部材に仕上面材を嵌め込んで固定する方式が一般的であった。このように,従来の建築構造物では,柱材・梁材等の構造材と,サッシ枠等の支持部材とは,全くの別部材として製造,施工されていた。このような構造では,構造材が仕上面材の支持機能を有することはなく,また,支持部材が建築構造物の自重等の荷重を負担する補助構造材として機能することもなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平9−328841号公報
【特許文献2】特開平11−336244号公報
【特許文献3】特開2001−193357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように構造材と支持部材とが別部材であると,建築構造物を構築するための部品数が増大するため,その製造コストも増大するだけでなく,各部材を別個に施工するため,施工が煩雑で,施工コスト及び施工工期も増大するという問題があった。
【0005】
かかる問題に関連する技術として,特許文献1には,窓やドア等の建造物の開口部において,一対の端部材と中間材とからなる建物用構造材を用いて,この端部材がサッシの窓枠や,壁パネルの支持部材を兼ねるようにする壁構造が記載されている。しかしながら,上記特許文献1の建物用構造材は,一対の端部材と中間材という3つの部材に分かれており,この中間材と各端部材とをカシメて連結する構造であるので,部品数が多く,組立が煩雑であり,さらには,各部品を高精度で成型する必要があるという問題があった。また,この特許文献1の建物用構造材は,アルミニウム合金製であるので,大荷重を負担することはできなかった。
【0006】
また,特許文献2には,天井材等の壁材を支持するための支持材を兼ねる建築用構造材が記載されている。しかし,この特許文献2の建築用構造材は,家屋の天井等に配置され,天井材等の壁材と屋根の外装材とを固定するためのものであり,大荷重を負担可能な柱・梁構造に適用されるものではなかった。
【0007】
また,特許文献3には,外装サッシのサッシ枠材内に粘性体を収容した制震構造が記載されている。しかし,この特許文献3のサッシ枠は,柱材・梁材とは別部品として製造されるものであり,建築構造物の自重等の大荷重を負担することはできなかった。
【0008】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,構造物の荷重を負担する構造材が仕上面材の支持機能を兼ね備える構造を,より少ない部品数で実現でき,容易に施工することが可能な,新規かつ改良された柱・梁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,仕上面材の支持機能を兼ね備えた柱・梁構造が提供される。この柱・梁構造は,構造物の壁体を構成する構造材として,複数の鋼製の柱材及び複数の鋼製の梁材と;柱材及び梁材で囲まれる架構面内に配設される複数の仕上面材と;を含む。そして,柱材又は梁材のいずれか一方若しくは双方には,仕上面材の外周端部を狭持する挟持部が設けられており,この挟持部は,柱材又は梁材の構造用断面に含まれるように,柱材又は梁材の軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に形成されている。なお,上記柱・梁構造は,上記複数の柱材と複数の梁材とを例えば格子状に接合して構築できる。
【0010】
かかる構成により,柱・梁構造をなす構造材である柱材及び/又は梁材に設けられた挟持部によって,仕上面材の外周端部を挟み込んで支持することができる。この挟持部は,柱材又は梁材の軸方向に沿って同一断面形状で連続形成されているため,柱材又は梁材の構造用断面に含まれるので,柱材又は梁材の軸方向の荷重を受け持つことができる。このように,柱材及び/又は梁材の断面の一部を,仕上面材の支持部材として機能させることができるので,仕上面材の支持機能を兼ね備える柱・梁構造を,より少ない部品数で実現できる。また,挟持部も鋼製であるため,当該挟持部を鋼製の柱材又は梁材と一体構成することができる,或いは,当該挟持部を柱材又は梁材に対して,溶接,ボルト接合等により簡単に接合できるので,柱・梁構造の組立施工が容易になる。
【0011】
また,上記挟持部は,柱材又は梁材の少なくとも一側面に,軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に突出形成された一対の突起を有し,一対の突起の間に仕上面材の外周端部を狭持するようにしてもよい。これにより,仕上面材を挟持する挟持部を,一対の突起という比較的簡単な構造で実現でき,柱材又は梁材に挟持部を比較的容易に形成できる。
【0012】
また,上記挟持部は,柱材又は梁材の少なくとも一側面に,軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に陥没形成された溝部を有し,溝部の両側壁の間に仕上面材の外周端部を狭持するようにしてもよい。これにより,仕上面材を挟持する挟持部を,1本の溝部という比較的簡単な構造で実現でき,柱材又は梁材に挟持部を比較的容易に形成できる。
【0013】
また,上記挟持部は,シーリング材を介して,仕上面材の外周端部を狭持するようにしてもよい。これにより,シーリング材によって,柱材又は梁材と挟持部との間の隙間を密封できるので,柱・梁構造の水密性及び気密性を確保できる。また,柔軟性を有するシーリング材を介して仕上面材を挟持することにより,硬質の挟持部が,ガラス板等の仕上面材に直接接触して,仕上面材を破損してしまうことを防止できる。
【0014】
また,上記挟持部は,柱材又は梁材と仕上面材の端面との間に隙間を空けるようにして,仕上面材の外周端部を仕上面垂直方向両側から挟持するようにしてもよい。これにより,柱材又梁材はある程度の余裕代(エッジクリアランス)を有して仕上面材を挟持できるので,地震時等に柱・梁構造が変形したとしても,その変形に伴う荷重が即座に仕上面材に伝達されないようにできるので,仕上面材の破損を防止できる。
【0015】
また,上記柱材及び/又は梁材は,1又は2本以上の熱押形鋼で構成されるようにしてもよい。これにより,挟持部を有する複雑な断面形状の柱材又は梁材を,熱押形鋼で好適かつ容易に製造できる。さらに,挟持部を有する柱材又は梁材を1本の熱押形鋼で一体成形することも可能になる。
【0016】
また,上記柱材及び梁材で囲まれる架構面内には,一部の仕上面材の代わりに補強面材が配設されており,柱材又は梁材と補強面材の端面とは密接しているようにしてもよい。これにより,補強面材により,柱・梁構造を補強して剛性を高めることができる。
【0017】
また,上記柱材と梁材との接合部相互間に架け渡される筋交材をさらに含むようにしてもよい。これにより,筋交材により,柱・梁構造を補強して剛性を高めることができる。
【0018】
また,上記仕上面材は,筋交材が配置される箇所で分割されており,上記筋交材は,分割された仕上面材の端部を挟持する挟持部を備えるようにしてもよい。これにより,筋交材によっても仕上面材を挟持できるので,仕上面材をより安定的に支持できる。
【0019】
また,上記柱材の軸方向に沿って略弧状に延設され,柱材に対して1又は2以上の束材を介して取り付けられる張弦部材をさらに含むようにしてもよい。これにより,張弦部材により柱材を補強して,柱・梁構造の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように本発明によれば,構造物の荷重を負担する構造材が仕上面材の支持機能も兼ね備える構造を,より少ない部品数で実現できるとともに,容易に施工することが可能な梁・柱構造を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず,本発明の第1の実施形態にかかる建築構造物の壁体を構成する柱・梁構造について説明する。図1は,本実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように,本実施形態にかかる柱・梁構造は,構造材として,鉛直方向に延びる複数の鋼製の柱材10と,水平方向に延びる複数の鋼製の梁材20とを,格子状に接合して組み立てられた構造となっており,これによって,建築構造物の壁体の基本構造を構成している。なお,本明細書でいう「格子状」とは,柱材10と梁材20とが縦横に隙間を空けて組み合わせた形状をいい,当該隙間は,正方形,矩形状,平行四辺形など任意の四角形状であってよい。
【0024】
本実施形態では,図1に示すように,鉛直方向に延びる各柱材10の左右両側に,分断された梁材20の端部をそれぞれ接合して,上記格子状の柱・梁構造が構築されている。これにより,各柱材10を1本の鋼材で構成できるので,建築構造物の自重等に起因する大きな鉛直荷重が作用する柱材10の剛性を高めることができる。しかし,かかる例に限定されず,水平方向に延びる各梁材20の上下両側に,分断された柱材10の端部をそれぞれ接合して,格子状の柱・梁構造を構築してもよい。なお,柱材10と梁材20とは,例えば溶接又はボルト接合等により相互に接合される。
【0025】
そして,上記柱材10と複数の梁材20とで囲まれる架構面内には,仕上面材として,例えば複数のガラス板30が配設されている。具体的には,上記のように複数の柱材10と複数の梁材20とを格子状に組み合わせることにより,柱材10と梁材20で仕切られる矩形状の空間,即ち,水平方向に相隣接する一対の柱材10と垂直方向に相隣接する一対の梁材20とで4辺が囲まれる矩形状の空間(以下,「格子空間」という。)が複数形成される。この各格子空間に,仕上面材として,例えば矩形状のガラス板30がそれぞれ嵌め込まれる。図1の例では,1つの格子空間に,同一矩形状の2枚のガラス板30が配設されているが,かかる例に限定されず,1つの格子空間に1枚又は3枚以上の仕上面材を配設することもできる。
【0026】
このようなガラス板30等の仕上面材は,上記構築される建築構造物の壁体を成す柱・梁構造の開口部を覆い,外部に露出する仕上面を形成するための平板状の部材である。従って,この仕上面材は,壁パネル等の構造用面材とは異なり,柱・梁構造に作用する荷重を負担することはない。この仕上面材は,建築構造物の外装材又は内装材のいずれであってもよいが,図1の例のガラス板30は,外装材と内装材の双方として機能している。
【0027】
なお,仕上面材は,上記ガラス板30の例に限定されず,例えば,アクリル板等のプラスチック板や,ALC(Autoclaved Light−weight Concrete)板等のコンクリート板,大理石等の化粧板,石膏ボード,木板など,任意の材質の面材を採用することができる。また,仕上面材は,ガラス板等の面材の外周をアルミニウム製等のサッシ等の枠材で囲んだ部材を用いてもよく,例えば,上記特許文献3に記載のようなサッシ枠内に粘性体が収容されたサッシも採用できる。また,仕上面材の形状は,上記矩形状に限定されず,上記格子空間に嵌め込み可能な形状であれば,三角形,多角形,帯状など,任意の形状を採用できる。
【0028】
以上のような全体構成を有する本実施形態にかかる柱・梁構造では,構造材である柱材10及び梁材20の断面の一部が,ガラス板30等の仕上面材を支持する支持部材(サッシ枠)として機能する点が特徴的である。以下に,図2及び図3を参照して,構造材である柱材10及び梁材20が仕上面材の支持機能を兼ね備えるための構成について,詳細に説明する。なお,図2は,本実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図であり,図3は,図2のA−A矢視断面図である。
【0029】
図2及び図3に示すように,構造材である柱材10及び梁材20は,ガラス板30の外周端部を,シーリング材35を介して狭持する。具体的には,柱材10は,その右側に配置されたガラス板30の左辺側の端部(左端部)を狭持するとともに,その左側に配置されたガラス板30の右辺側の端部(右端部)を狭持する。また梁材20は,その上側に配置されたガラス板30の下辺側の端部(下端部)を狭持するとともに,その下側に配置されたガラス板30の上辺側の端部(上端部)を狭持する。以下,かかる柱材10と梁材20の構造について,それぞれ詳述する。
【0030】
まず,柱材10の構造について詳細に説明する。柱材10は,図2及び図3に示すように,例えば,壁体の仕上面に対して起立して配された平板部11と,この平板部11の仕上面垂直方向の両端に設けられた肉厚部12と,平板部11の両側面にそれぞれ突出形成された一対の突起13からなる狭持部14とを備える。上記平板部11の両端に,平板部11よりも肉厚の肉厚部12をそれぞれ設けることにより,柱材10の断面性能を少ない鋼材量で効率的に高めて,柱材10の剛性を向上できる。この一対の肉厚部12の仕上面垂直方向の間隔を大きくするほど,柱材10の剛性を高くすることができる。
【0031】
狭持部14は,本実施形態にかかる特徴的構成要素であり,仕上面材であるガラス板30の支持部材として機能する。この狭持部14は,上記平板部11の両側面の例えば中央部に,仕上面方向に向かって突出形成された一対の突起13から構成される。この一対の突起13は,柱材10の軸方向(垂直方向)に沿って延設されており,柱材10の軸方向の上端から下端にかけて同一断面形状で連続的に突出形成されている。つまり,この突起13は,建築構造物の壁体の上端部から下端部にかけて途中で分断されていないので,柱材10の軸方向の応力を伝達できる。これにより,突起13は,柱材10の構造用断面に含まれるようになり,柱材10の軸方向の荷重(鉛直荷重)を受け持つことができるようになる。
【0032】
上記一対の突起13を柱材10に設けることにより,この一対の突起13の間には,柱材10の軸方向に延びる断面コの字形の溝部15が形成される。狭持部14は,この一対の突起13間の溝部15に所定の係り代Pで差し込まれたガラス板30の外周端部(左端部又は右端部)を,当該一対の突起13によってシーリング材35を介して狭持する。
【0033】
このとき,狭持部14は,ガラス板30の端面30a(左端面若しくは右端面)と,柱材10の平板部11との間に,所定の隙間(エッジクリアランスQ)が生じるようにして,ガラス板30の外周端部を仕上面垂直方向両側から挟持する。これにより,地震等により柱・梁構造がある程度変形した場合であっても,柱材10の平板部11とガラス板30とが直接接触しないようにできるので,ガラス板30の破損を好適に防止できる。
【0034】
また,狭持部14をなす一対の突起13の間隔(即ち,上記溝部15の幅)がガラス板30の厚さよりも大きく,突起13とガラス板30との間に所定の隙間(面クリアランスR)が生じるように,一対の突起13の配置が調整されている。これにより,柱材10の突起13とガラス板30とが直接接触しないようにでき,双方の間にシーリング材35が介在するためのスペースを確保できる。
【0035】
シーリング材35は,柱材10とガラス板30との隙間の水密性・気密性を得るための隙間充填部材である。シーリング材35は,例えば,シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系などの合成樹脂等で形成され,ある程度の柔軟性を有する。このシーリング材35は,ガラス板30の端部の両側に配設されて,上記一対の突起13とガラス板30の端部との間に介在される。かかるシーリング材35を介在させることにより,上記柱材10とガラス板30との隙間の水密性・気密性が得られるだけでなく,硬質の柱材10の突起13が,脆性材料からなるガラス板30に直接接触して,ガラス板30が破損してしまうことを防止できる。
【0036】
以上のように,本実施形態にかかる柱材10は,構造用断面の一部となる一対の突起13からなる狭持部14を有しており,この狭持部14によって,シーリング材35を介してガラス板30の外周端部を両側から狭持することができる。そして,上記一対の突起13からなる狭持部14を柱材10の両側面(左側面と右側面)にそれぞれ設けることにより,1つの柱材10が,その左右両側に配される2枚のガラス板30の外周端部をそれぞれ狭持できる。
【0037】
次に,梁材20の構造について詳細に説明する。図2に示すように,梁材20は,例えば,壁体の仕上面に対して起立して配された平板部21と,この平板部21の仕上面垂直方向の両側に対称形状で配設された断面コの字形のフランジ部22と,上記平板部21及び一対のフランジ部22の底部22aとで構成される溝状の狭持部24と,を備える。
【0038】
平板部21は,一対のフランジ部22の底部22aの中央部を相互に連結している。一側のフランジ部22の底部22aと他側のフランジ部22の底部22aとは,ともに仕上面方向に平行な平面であり,所定間隔で対向配置されている。このような構造により,梁材20の仕上面方向の両側面(上面,下面)には,例えば断面コの字形の溝部25がそれぞれ形成される。この溝部25は,上記平板部21を底面とし,上記一対のフランジ部22の底部22aをそれぞれ側壁としている。
【0039】
狭持部24は,本実施形態にかかる特徴的構成要素であり,仕上面材であるガラス板30の支持部材として機能する。この狭持部24は,上記溝部25を形成する平板部21及び一対のフランジ部22の底部22aで構成される。かかる狭持部24は,溝部25の両側壁(つまり,一対のフランジ部22の底部22a)の間に,ガラス板30の外周端部(上端部又は下端部)を狭持できるようになっている。
【0040】
このような狭持部24を成す溝部25は,梁材20の軸方向に沿って延設されており,梁材20の軸方向の上端から下端にかけて同一断面形状(コの字形)で連続的に陥没形成されている。これにより,溝部25を含む狭持部24,つまり,当該溝部25を形成する上記平板部21及び一対のフランジ部22の底部22aは,梁材20の構造用断面に含まれるようになり,梁材20の軸方向の荷重(水平荷重)を受け持つことができるようになる。なお,図1に示したように,水平方向の同一軸線上に接合される複数の梁材20の間には,柱材10が介在しているが,各梁材20の狭持部24は,この柱材10と密接しているので,柱材10を介して水平荷重を相互に伝達可能である。
【0041】
このような梁材20の狭持部24は,上記溝部25に所定の係り代で差し込まれたガラス板30の外周端部を,当該溝部25の両側壁(一対のフランジ部22の底部22a)によって,シーリング材35を介して狭持する。
【0042】
このとき,上記柱材10と同様に,ガラス板30の上端面若しくは下端面と,梁材20の平板部21との間に,所定の隙間(上記エッジクリアランスQ:図3参照)が生じるように,梁材20の狭持部24は,ガラス板30の外周端部を仕上面垂直方向両側から挟持する。これにより,地震等により柱・梁構造がある程度変形した場合であっても,梁材20の挟持部24とガラス板30とが直接接触しないようにできるので,ガラス板30の破損を好適に防止できる。
【0043】
また,上記柱材10と同様に,狭持部24をなす溝部25の幅がガラス板30の厚さよりも大きく,各フランジ部22の底部22aとガラス板30との間に所定の隙間(上記面クリアランスR)が生じるように,フランジ部22の底部22aの配置が調整されている。これにより,梁材20のフランジ部22とガラス板30とが直接接触しないようにでき,シーリング材35が介在するためのスペースを確保できる。なお,梁材20の狭持部24に用いられるシーリング材35は,上記柱材10の狭持部14に用いられるシーリング材35と略同一の機能構成を有するので,詳細説明は省略する。
【0044】
以上のように,本実施形態にかかる梁材20は,構造用断面の一部となる溝状の狭持部24を有しており,この溝状の狭持部24によって,シーリング材35を介してガラス板30の外周端部を両側から狭持することができる。そして,上記溝状の狭持部24を梁材20の両側面(上側面と下側面)にそれぞれ設けることにより,1つの梁材20が,その上下両側に配される2枚のガラス板30の外周端部をそれぞれ狭持できる。
【0045】
以上,本実施形態にかかる柱材10及び梁材20の構造について説明した。かかる柱材10及び梁材20では,ガラス板30を狭持するための狭持部14,24が鋼製であり,かつ軸方向に同一断面形状で延設されている。この点,従来のサッシ枠が,柱材と梁材で囲まれる各格子空間に,構造部材とは別部材として独立して配設され,サッシ枠同士は分断されていた構造とは大きく相違する。
【0046】
このような狭持部14,24を有する柱・梁構造では,上記狭持部14,24が構造用断面に含まれるようになるため,建築構造物の自重等により柱材10又は梁材20に作用する軸方向の大荷重を,上記狭持部14,24によっても負担できる。さらに,この構造用断面としての狭持部14,24は,ガラス板30の支持部材(サッシ枠)としての機能も兼ね備える。よって,柱材10や梁材20の他に,ガラス板30等の仕上面材を支持する部材(例えば従来のアルミニウム合金製のサッシ枠など)を別部材として設置する必要がないので,柱材10及び梁材20を構成する部品数を低減できるとともに,その組立施工を容易化できる。
【0047】
次に,上記のような狭持部14,24を備えた鋼製の柱材10及び梁材20の製造方法について説明する。上記柱材10及び梁材20は,一般的な柱材及び梁材と比べて,狭持部14,24が設けられている分だけ断面形状が複雑であるので,鋼で製造することが困難である。そこで,本実施形態では,上記柱材10及び梁材20を熱押形鋼で構成している。この熱押形鋼は,熱間押出法により製造される形鋼であり,例えば,1200℃前後に加熱した丸ビレットを,所望の断面形状に機械加工されたダイスを通して押し出して成形されるものである。
【0048】
このような熱押形鋼を柱材10及び梁材20に適用することにより,上記構造材の機能と仕上面材の支持部材の機能とを兼ね備えた複雑な断面形状を有する柱材10及び梁材20を,比較的容易に製造できる。さらに,熱押形鋼を使用することにより,柱材10及び梁材20を一つの部材で一体構成することができる。即ち,柱材10及び梁材20の構造用断面と,仕上面材の支持部材としての狭持部14,24の断面とを一体に形成することができる。
【0049】
従って,当該柱材10及び梁材20を製造するための部品数を低減でき,複数部品の組立作業が不要となる。また,上記特許文献1に記載のように複数部品をカシメて構造材を製造する場合と比して,柱材10及び梁材20の成形加工精度も緩和できる。よって,上記柱材10及び梁材20の製造を容易化し,製造コストも低減できる。なお,柱材10及び梁材20は,上記熱押形鋼の例に限定されず,例えば,鋳造等によって製造することもできる。
【0050】
次に,図4〜図6を参照して,柱材10及び梁材20の変更例について説明する。なお,以下の変更例の説明では,柱材10の例を挙げて詳細に説明するが,梁材20についても柱材10と同様に構成することができる。
【0051】
まず,図4を参照して,柱材10の挟持部14の配置の変更例について説明する。図4に示すように,例えば,柱材10の挟持部14をなす一対の突起13を,平板部11の仕上面垂直方向の一端部に配設することもできる。これにより,平板部11の一端部に配された挟持部14と,他端部に配された肉厚部12とによって,柱材10の仕上面垂直方向の両端部分の断面積が大きくできるので,少ない鋼材量で効率的に柱材10の剛性を高めることができる。
【0052】
なお,柱材10の挟持部14をなす一対の突起13は,柱材10の仕上面垂直方向の中央部(図3参照)や,一端部(図4参照)のみならず,柱材10の断面内で自由な位置に配置することができる。また,上記図3,図4のように柱材10の両側にそれぞれ1つずつ挟持部14を設置するのではなく,柱材10の両側に,それぞれ複数の挟持部14を配設することもできる。これにより,1つの柱材10により,複数組の仕上面材を挟持することができるようになる。
【0053】
次に,図5,図6を参照して,複数の部材を接合して1つの柱材10を構成することで,柱材10を大断面化する変更例について説明する。
【0054】
図5に示す例の柱材10は,中央に配置される1つの平板部材101と,この平板部材101の両側にそれぞれ2つずつ配置される合計4つの挟持部材102とを接合して構成される。この平板部材101と挟持部材102は,例えばボルト接合又は溶接等により相互に接合されており,双方とも柱材10の構造用断面に含まれる。
【0055】
各挟持部材102の外側の端部には,柱材10の剛性を高めるための上記肉厚部12が形成され,内側の端部には,ガラス板30を挟持するための上記突起13が形成されている。平板部材101の各側面に配される一対の挟持部材102は,それぞれの突起13が所定間隔を空けて対向するように配置されている。この一対の挟持部材102の突起13は,上記挟持部14として機能し,当該対向する一対の突起13の間に,シーリング材35を介してガラス板30を挟持することができる。このように複雑な断面形状を有する挟持部材102は,例えば熱押形鋼で構成することが好適であるが,かかる例に限定されない。
【0056】
また,図6に示す例の柱材10は,上記図3に示した柱材10を,平板部11,肉厚部12,挟持部14という3つの機能毎に,合計5つの部材に分断した構造である。具体的には,図6に示す例の柱材10は,中央に配置される1つの挟持部材103と,この挟持部材103の両側に仕上面垂直方向に起立して配設される2つの平板部材104と,この平板部材104の外側に配設される断面略三角形の2つの肉厚部材105とを接合して構成される。これら挟持部材103と平板部材104と肉厚部材105とは,例えばボルト接合又は溶接等により相互に接合されており,全ての部材が柱材10の構造用断面に含まれる。
【0057】
上記挟持部材103の仕上面方向の両側には,上記一対の突起13が所定間隔を空けてそれぞれ突出形成されている。この挟持部材103の両側にそれぞれ配される一対の突起13は,上記挟持部14として機能し,当該一対の突起13の間に,シーリング材35を介してガラス板30を挟持することができる。このような突起13を有し複雑な断面形状を有する挟持部材103は,例えば熱押形鋼で構成することが好適であるが,かかる例に限定されない。
【0058】
以上のように,図5及び図6に示す柱材10は,複数の部材を接合して構成されるため,柱材10の構造用断面を大型化することができ,これにより,鉛直方向の大荷重に耐えることができるという利点がある。なお,上記複数の部材の全てを熱押形鋼で構成してもよいし,或いは,断面形状が複雑な部材だけを熱押形鋼で構成してもよい。また,柱材10及び梁材20を構成する複数の部材の形状,設置数は,上記図5,図6の例に限定されず,多様に設計変更可能である。
【0059】
(第2の実施形態)
次に,本発明の第2の実施形態にかかる柱・梁構造について説明する。第2の実施形態にかかる柱・梁構造は,上記第1の実施形態にかかる柱・梁構造と比して,一部の仕上面材の代わりに,補強面材が配設されている点で相違するのみであり,その他の機能構成は上記第1の実施形態の場合と略同一であるので,その詳細説明は省略する。
【0060】
図7は,第2の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。図7に示すように,柱材10及び梁材20で囲まれる架構面内には,一部のガラス板30の代わりに,補強面材の一例である補強鋼板40が配設されている。例えば,図7の例では,最上段及び最下段の4つの格子空間のうち中央側の2つ格子空間に,ガラス板30に代えて補強鋼板40が嵌め込まれており,また,第2段及び第3段の4つの格子空間のうち両サイド側の2つ格子空間に,ガラス板30に代えて補強鋼板40が嵌め込まれている。
【0061】
この補強鋼板40は,例えば,矩形状を有する鋼製の補強プレートであり,上記柱・梁構造を補強する。この補強鋼板40は,左右2本の柱材10と上下2本の梁材20で囲まれる各格子空間に嵌め込まれたときに,補強鋼板40の上下左右の各端面と柱材10及び梁材20とが密接するような大きさとなっている。つまり,格子空間に補強鋼板40を嵌め込んだ場合は,図3で示したようなガラス板30の端面30aと柱材10又は梁材20との間のエッジクリアランスQが生じず,補強鋼板40の各端面と柱材10又は梁材20の平板部11,21とは,ほぼ隙間なく面接触するようになっている。
【0062】
このようにして,ガラス板30に代えて補強鋼板40が配設された格子空間では,上下の梁材20の間,左右の柱材10の間,並びに,柱材10と梁材20との間で,補強鋼板40を介して荷重を伝達できる。このため,補強鋼板40が補助構造材として機能し,柱・梁構造の仕上面内の剛性を高めることができる。例えば,地震時などに柱・梁構造に水平荷重が作用して変形したとしても,当該水平荷重を補強鋼板40により受け持って他の柱材10,梁材20に分散させることができるので,柱・梁構造を好適に補強して,耐震・制震構造とすることができる。
【0063】
なお,図7に示すような本実施形態にかかる補強鋼板40が適用された柱・梁構造は,従来の壁構造とは異なる。従来の壁構造では,補強面材(補強鋼板等の壁パネル)は,壁体の上端部から下端部にかけて垂直方向に連続して配列されるか,或いは,壁体の左端部から右端部にかけて水平方向に連続して配列される必要があった。これに対し,本実施形態にかかる柱・梁構造では,図7に示すように,補強鋼板40等の補強面材は,斜め方向に配列されてもよく,必ずしも垂直方向又は水平方向に連続して配置されなくてもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
次に,本発明の第3の実施形態にかかる柱・梁構造について説明する。第3の実施形態にかかる柱・梁構造は,上記第1の実施形態にかかる柱・梁構造と比して,筋交材(ブレース材)が追加して配設されている点で相違するのみであり,その他の機能構成は上記第1の実施形態の場合と略同一であるので,その詳細説明は省略する。
【0065】
図8は,第3の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。図8に示すように,本実施形態にかかる柱・梁構造では,柱材10と梁材20で囲まれる各格子空間の一部に,例えば鋼製の筋交材50が追加設置されており,この筋交材50は,柱材10と梁材20との接合部相互間を斜めに結ぶ対角線上に架け渡されている。図8の例では,16個の格子空間のうち8つの格子空間にそれぞれ筋交材50が配設され,この8つの筋交材50は全体として矩形状の外観をなすように配置されている。このような,筋交材50を追加設置することにより,柱・梁構造を補強して剛性を向上させ,耐震・制震構造とすることができる。
【0066】
図9は,第3の実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図である。図8及び図9に示すように,上記筋交材50が配設される格子空間では,仕上面材である矩形状のガラス板30は,筋交材50が配置される箇所で斜めに分断されており,上下2つの直角三角形のガラス板30A,30Bに分割されている。そして,筋交材50は,上記分割された直角三角形のガラス板30A,Bの端部(斜辺部)を挟持する挟持部53を備えている。
【0067】
詳細には,図9に示すように,筋交材50は,例えば,ウェブ51と一対のフランジ53とからなるH形鋼で構成されている。この筋交材50の一対のフランジ53は,上記分割されたガラス板30A,30Bの斜辺部を挟持する挟持部54を構成している。この筋交材50の挟持部54は,一対のフランジ53によって,シーリング材35を介して,ガラス板30A,30Bの斜辺部を仕上面垂直方向両側から挟持することができる。このように,上記柱材10及び梁材20のみならず,筋交材50によっても,ガラス板30A,30Bを挟持することにより,より安定的にガラス板30A,Bを支持できるようになる。
【0068】
なお,筋交材50は,上記とは異なり,ガラス板30等の仕上面材を挟持しないように配設されてもよい。例えば,筋交材50をガラス板30の仕上面垂直方向の手前側若しくは奥側に配置して,ガラス板30を分割しなくて済む位置に筋交材50を配設してもよい。この場合には,筋交材50は,ガラス板30と干渉しない位置で,柱材10と梁材20との接合部間に斜めに架け渡されて,柱・梁構造を補強する機能だけを有するようになる。
【0069】
(第4の実施形態)
次に,本発明の第4の実施形態にかかる柱・梁構造について説明する。第4の実施形態にかかる柱・梁構造は,上記第1の実施形態にかかる柱・梁構造と比して,張弦部材が追加して配設されている点で相違するのみであり,その他の機能構成は上記第1の実施形態の場合と略同一であるので,その詳細説明は省略する。
【0070】
図10は,第4の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図であり,図11は,第4の実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図であり,図12は,図11のB−B矢視断面図である。なお,図11では,説明の便宜上,ガラス板30及びシーリング材35は図示を省略してある。
【0071】
図10に示すように,本実施形態にかかる柱・梁構造では,各柱材10に,補助構造材として張弦部材60がそれぞれ取り付けられている。この張弦部材60は,柱材10を含む垂直平面内で柱材10の軸方向に沿って延設される略弧状の補強部材であり,柱材10に対して複数(図10では5つ)の束材61を介して取り付けられる。
【0072】
詳細には,図11に示すように,張弦部材60は,複数(図10では6つ)の直線状の棒鋼62と,この棒鋼62の両端に配置されて棒鋼62の端部を収容する端部金物63と,上下両側に端部金物63がボルト接合されるガセットプレート64とから構成される。また,束材61は,棒鋼や鋼管などで構成された連結部材であり,柱材10と張弦部材60との間に水平方向に延設されて,その一端が上記ガセットプレート64に連結され,その他端が柱材10と梁材20との接合部に連結される。
【0073】
上記のように,張弦部材60は,複数の棒鋼62を端部金物63及びガセットプレート64により全体として略円弧状となるように接合したものである。そして,この略円弧状の張弦部材60は,柱材10から離隔した位置に配置されるように,長さの異なる複数の束材61によって柱材10に取り付けられている。なお,張弦部材60の上下両端部では,ガセットプレート64が束材61を介さずに直接に柱材10に接合されている。
【0074】
このような張弦部材60を設置することにより,図12に示すように,柱材10から仕上面垂直方向(水平方向)に遠く離れた位置に,張弦部材60の棒鋼62の断面である構造用断面を増設できるので,柱材10を効果的に補強して,柱・梁構造の剛性を高めることができる。
【0075】
さらに,上記のような張弦部材60を設けた結果,図12に示すように,柱材10の断面における仕上面垂直方向の幅を小さくすることができる。つまり,上記第1の実施形態(図3)のように,張弦部材60が設置されていない柱・梁構造の場合には,柱材10の仕上面垂直方向の幅を大きくしなければ,構造材としての剛性を確保できなかった。これに対し,本実施形態(図12)のように,柱材10に張弦部材60を取り付けて補強した場合には,柱材10の仕上面垂直方向の幅を小さくしても,柱・梁構造全体の剛性を確保することができる。
【0076】
このため,図12に示すように,本実施形態にかかる柱材10は,仕上面内方向の両側にガラス板30を挟持する挟持部19としての断面コの字形の溝18がそれぞれ設けられたコンパクトな断面形状となっている。具体的には,本実施形態にかかる柱材10は,例えば,仕上面方向に対して起立した平板部16と,この平板部16の仕上面垂直方向の両側に対称形状で配設された断面半円形状のフランジ部17と,上記平板部16及び一対のフランジ部17の底部17aとで形成される溝部18を含む狭持部19と,を備える。この溝部18を成す部材(一対のフランジ部17の底部17a,及び平板部16)で構成される挟持部19は,上記第1の実施形態の梁材20の挟持部24と同様に,構造用断面に含まれる。そして,この挟持部19は,溝部18に所定の係り代で差し込まれたガラス板30の外周端部を,当該溝部18の両側壁(一対のフランジ部17の底部17a)によって,シーリング材35を介して狭持できる。
【0077】
このように,本実施形態では,補助構造部材として張弦部材60を設けて柱材10を補強することによって,柱材10の仕上面垂直方向の幅を小さくすることができる。なお,張弦部材60は,柱・梁構造の仕上面垂直方向の両側に設置してもよいし,或いは,片側にのみ設置してもよい。
【0078】
以上,第1〜第4の実施形態にかかる柱・梁構造の構成についてそれぞれ説明した。ここで,上記実施形態にかかる柱・梁構造の施工方法の例について説明する。
【0079】
第1の施工方法としては,例えば,まず,鋼材製造工場において上記柱材10及び梁材20を熱押形鋼で一体構成して製造し,次いで,施工現場において,柱材10及び梁材20を組み立てながら,随時,ガラス板30等の仕上面材を嵌め込んでいき(例えば,複数の柱材10を立設した後に,当該柱材10の間に1本の梁材20を接合する度にガラス板30を嵌め込んでいくことを繰り返す),柱材10及び梁材20による架構面内に仕上面材を挟持・固定する手法がある。
【0080】
また,第2の施工方法としては,例えば,まず,鋼材製造工場において上記柱材10及び梁材20を構成する複数部材(例えば図5参照)を熱押形鋼等で製造し,次いで,施工現場において,柱材10及び梁材20を組み立てて柱・梁構造の基本構造を構築し,さらに,上記挟持部14,24を構成する一側の部材(突起13を含む鋼材,例えば,図5の一側の挟持部材102)を取り付けた後に,ガラス板30等の仕上面材を設置し,その後に,挟持部14,24を構成する他側の部材(例えば,図5の他側の挟持部材102)を取り付けて,仕上面材を挟持・固定する手法がある。
【0081】
また,第3の施工方法としては,例えば,鋼材製造工場において挟持部14を有する柱材10と,挟持部24を有しない梁材20とを製造し,次いで,施工現場において,柱材10及び梁材20を組み立てて柱・梁構造を構築し,その後,柱材10及び梁材20で囲まれる各格子空間に,障子を嵌め込むようにして,ガラス板30等の仕上面材を柱材10の挟持部14に嵌め込んで固定する手法がある。このとき,上記柱材10の挟持部14には上記エッジクリアランスQが生じるように,仕上面材の大きさが設計されているので,柱・梁構造の構築後に仕上面材を嵌め込むことは可能である。
【0082】
以上,第1〜第4の実施形態にかかる柱・梁構造について詳細に説明した。上記実施形態にかかる柱・梁構造によれば,構造材である柱材10及び梁材20と,ガラス板30等の仕上面材を支持する支持部材(挟持部14,24,19)とを同一部材で構成できるので,建築構造の壁体を構築するための部品数,及びその製造コストを低減できる。さらに,当該構造材と支持部材とを別部材とする場合と比べて,各部材の組み立てに伴う施工の煩雑さを改善して施工を容易化し,施工コスト及び施工工期も低減できる。
【0083】
特に,熱押形鋼を用いて柱材10及び梁材20を製造することで,構造用断面と支持部材とを一体成形できるので,部品数を更に低減できる。また,構造用断面と支持部材とを別部材で成形する場合(図5等参照)であっても,支持部材として機能する挟持部14,24,19は,鋼製であるので,従来のアルミニウム合金製のサッシ枠(上記特許文献1参照)を用いる場合と比べて,鋼製の柱材10及び梁材20本体との接合が容易(例えば,溶接,ボルト接合等で簡単に接合可能)である。さらに,従来技術(上記特許文献1参照)のように,構造材とサッシ枠とをカシメて接合する必要もないので,組立が容易であるため施工性が向上するだけでなく,各部材の成形精度の制限を緩和することもできる。
【0084】
また,柱・梁構造が基本であるので,仕上面材の種類も自由に選択することができる。また,仕上面材に代えて,補強鋼板等の補強鋼板40を設置することで,壁構造とすることもできる。
【0085】
また,柱材10,梁材20,筋交材50,張弦部材60等の全ての部材が鋼製であるので,各部材を溶接,ボルト接合等によって容易に接合でき,組立施工が容易である。
【0086】
また,上記仕上面材を支持する支持部材である挟持部14,24,19は,構造用断面に含まれるので,仕上面材を負担する荷重だけではなく,建築構造物の大荷重も負担できる。
【0087】
また,仕上面材の代わりに補強鋼板40等の補強面材を設置したり,筋交材50を追加設置したりすることにより,柱・梁構造を耐震・制震壁とすることもできる。また,上記張弦部材60等の他の構造体と組み合わせることによって,柱・梁構造の剛性をさらに高めることもできる。
【0088】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0089】
例えば,上記実施形態では,柱材10及び梁材20の双方に狭持部14,24を設ける例について説明したが,かかる例に限定されず,柱材10又は梁材20のいずれか一方にのみ狭持部を設けてもよい。
【0090】
また,柱材10と梁材20の断面形状は,上記実施形態の例に限定されるものではなく,ガラス板30等の仕上面材を挟持可能な形状であれば,任意の断面形状であってよい。例えば,柱材10の断面形状を,上記第1の実施形態にかかる梁材20のような溝状の挟持部24を有する断面形状(図2参照)としてもよいし,逆に,梁材20の断面形状を上記第1の実施形態にかかる柱材10のような突起状の挟持部14を有する断面形状(図3参照)や,第4の実施形態にかかる柱材10のような溝状の挟持部19を有する断面形状(図11参照)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は,建築構造物を構築するための柱・梁構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。
【図2】同実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】同実施形態にかかる柱材の変更例を示す断面図である。
【図5】同実施形態にかかる柱材の変更例を示す断面図である。
【図6】同実施形態にかかる柱材の変更例を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。
【図9】同実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態にかかる柱・梁構造を示す斜視図である。
【図11】同実施形態にかかる柱・梁構造を示す部分拡大斜視図である。
【図12】図11のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10 柱材
11 平板部
12 肉厚部
13 突起
14 挟持部
15 溝部
16 平板部
17 フランジ部
18 溝部
19 挟持部
20 梁材
21 平板部
22 フランジ部
24 挟持部
25 溝部
30 ガラス板
30a 端面
35 シーリング材
40 補強鋼板
50 筋交材
51 ウェブ
53 フランジ
54 挟持部
60 張弦部材
61 束材
62 棒鋼
63 端部金物
64 ガセットプレート
101 平板部材
102 挟持部材
103 挟持部材
104 平板部材
105 肉厚部材
P 係り代
Q エッジクリアランス
R 面クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕上面材の支持機能を兼ね備えた柱・梁構造であって:
構造物の壁体を構成する構造材として,複数の鋼製の柱材及び複数の鋼製の梁材と;
前記柱材及び前記梁材で囲まれる架構面内に配設される複数の仕上面材と;
を含み,
前記柱材又は前記梁材のいずれか一方若しくは双方には,前記仕上面材の外周端部を狭持する挟持部が設けられており,
前記挟持部は,前記柱材又は前記梁材の構造用断面に含まれるように,前記柱材又は前記梁材の軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に形成されていることを特徴とする,柱・梁構造。
【請求項2】
前記挟持部は,前記柱材又は前記梁材の少なくとも一側面に,軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に突出形成された一対の突起を有し,前記一対の突起の間に前記仕上面材の外周端部を狭持することを特徴とする,請求項1に記載の柱・梁構造。
【請求項3】
前記挟持部は,前記柱材又は前記梁材の少なくとも一側面に,軸方向の一端から他端にかけて同一断面形状で連続的に陥没形成された溝部を有し,前記溝部の両側壁の間に前記仕上面材の外周端部を狭持することを特徴とする,請求項1に記載の柱・梁構造。
【請求項4】
前記挟持部は,シーリング材を介して,前記仕上面材の外周端部を狭持することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の柱・梁構造。
【請求項5】
前記挟持部は,前記柱材又は前記梁材と前記仕上面材の端面との間に隙間を空けるようにして,前記仕上面材の外周端部を仕上面垂直方向両側から挟持することを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の柱・梁構造。
【請求項6】
前記柱材及び/又は前記梁材は,1又は2本以上の熱押形鋼で構成されることを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の柱・梁構造。
【請求項7】
前記柱材及び前記梁材で囲まれる架構面内には,一部の前記仕上面材の代わりに補強面材が配設されており,
前記柱材又は前記梁材と前記補強面材の端面とは密接していることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の柱・梁構造。
【請求項8】
前記柱材と前記梁材との接合部相互間に架け渡される筋交材をさらに含むことを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の柱・梁構造。
【請求項9】
前記仕上面材は,前記筋交材が配置される箇所で分割されており,
前記筋交材は,前記分割された仕上面材の端部を挟持する挟持部を備えることを特徴とする,請求項8に記載の柱・梁構造。
【請求項10】
前記柱材の軸方向に沿って略弧状に延設され,前記柱材に対して1又は2以上の束材を介して取り付けられる張弦部材をさらに含むことを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の柱・梁構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−154480(P2007−154480A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349227(P2005−349227)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】