説明

査証発行装置、本人確認装置、査証偽変造対策システム、査証発行方法および本人確認方法

【課題】読取性能の低い機器を用いても、査証の偽変造を確実に検出し、申請者が在外公館に出向かなくても顔情報付査証が発行可能であることを目的とする。
【解決手段】査証発行装置2は、IC旅券6のICチップから、顔画像情報を読み出し、読み出した顔画像情報を、2次元バーコードに変換した後、査証面上に印刷することで顔情報付査証5を発行する。また、本人確認装置3は、顔情報付査証5、IC旅券6、カメラ部4からそれぞれ取得した顔画像情報を比較することによって本人確認を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、査証における査証発行装置、本人確認手段、査証偽変造対策システム、査証発行方法および本人確認方法の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、使用されている日本国査証(ビザ)は、機械読み取り可能査証(Machine Readable Visa:MRV)であり、顔写真付きでシール式、表面にラミネート加工されているものである。このMRVにおいては、入国時において、MRVに印刷されている文字を、スキャナなどの光学読取装置で読み取り、コンピュータがこれらの文字を識別した上で、情報として認識する。
そして、入国時における査証の本人確認は、入国審査官が入国者の顔と査証券面状の顔写真とを目視することによって行っている。このような本人確認は、MRVも、MRVでない査証も同様の手順で行われている。
【0003】
ところで、顔写真などの入った身分証明書、旅券などにおいて、顔画像情報を2次元バーコードとして印刷し、当該身分証明書や、パスポートなどをリーダに通すことによって顔画像を再現(復元)し、当該身分証明書や、パスポートなどに貼付された顔写真と照合検証する顔写真検証システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、旅券ID(Identification)情報としてパスポート申請者の顔画像データ(顔画像情報)を登録したIDチップ付きパスポート(IC(Integrated Circuit)旅券)を用いる技術として、以下に記載する技術がある。すなわち、IDチップ読み出し装置によって、IDチップ付きパスポートから、顔画像データを読み出し、さらに、画像入力装置が、IDチップ付きパスポートに印刷されている証明用顔写真(顔写真)を読み込む。そして、処理装置が、読み込んだ情報を基に、IDチップ付きパスポートに印刷されている顔と、IDチップから読み出した顔画像データとの相違点を検出することによって、IDチップ付きパスポートの偽造を自動的に検出するパスポート偽造自動検出装置およびパスポート偽造自動検出システムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−198573号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2003−248802号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MRVなどの査証に貼付された顔写真が張り替えられたり、査証そのものが偽変造されたりしている場合、目視による確認では、このような顔写真の張り替えや、偽変造を発見することが困難であった。
【0006】
また、特許文献1および特許文献2では、パスポート上に印刷された顔写真を読み込んだデータを用いて、整合性のチェックを行うため、画像入力装置の写真読取性能にチェックの結果が左右されるという問題がある。
そして、特許文献2では、旅券の所持者と、当該旅券に記載されている人物とが同一人物であるか否かをチェックするものであり、査証までチェックすることを想定したものではない。
【0007】
さらに、例えば特許文献1に記載されている技術を査証に適用することによって生体情報付査証を作成する場合、査証に生体情報を格納する際、すなわち査証の発行時に、生体情報を提供するために申請者本人が在外公館を訪れなければならないといった問題があった。
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明の一の手段は、生体情報を格納する生体情報付査証の発行において、IC旅券に格納されている生体情報を取得し、取得した生体情報を、データコードへ変換し、このデータコードを生体情報付査証面上に印刷することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の他の手段は、IC旅券および生体情報を示すデータコードが印刷されている生体情報付査証に格納されている生体情報を基にしたIC旅券および生体情報付査証の所有者の正当性の判定において、生体情報付査証に印刷されているデータコードを読み取り、読み取ったデータコードから、第1の生体情報を復元し、IC旅券に格納されている第2の生体情報を取得し、査証およびIC旅券を所有者に関する第3の生体情報を取得し、第1の生体情報、第2の生体情報および第3の生体情報を比較することによって、第1の生体情報、第2の生体情報および第3の生体情報が、同一人物から得られた生体情報であるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
一の発明によれば、IC旅券に格納されている生体情報を、査証面上へ移すことができる。これにより、例えば代理人がIC旅券を持参すれば、生体情報付査証を作成することが可能であり、申請者本人が在外公館を訪れる必要がない。
【0011】
さらに、他の発明によれば、査証に格納されている生体情報、IC旅券に格納されている生体情報、査証およびIC旅券の所有者に関する生体情報といった、3つの生体情報を比較することにより、査証の偽変造の検出を確実にすることができる。また、データコードを読み取ればいいので、査証に貼付されている顔写真を読み込む必要がなく、読取性能の低い光学読取装置を用いて実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明による査証偽変造対策システム1の実施形態について説明する。
なお、本実施形態における顔情報付査証5(生体情報付査証)とは、MRV上に生体情報としての顔画像情報を2次元バーコード(データコード)として印刷した査証である。以下、MRVを「査証」と記載することとする。
【0013】
図1は、本実施形態に係る査証偽変造対策システムの機能ブロック図である。
査証偽変造対策システム1は、在外公館に設置される(在外公館側)査証発行装置2と、国際空港に設置される(国際空港側)本人確認装置3とを有してなる。
査証発行装置2は、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報を読み込み、この顔画像情報を2次元バーコードの情報へ変換した後、変換した2次元バーコードの情報を査証面上へ印刷することによって、顔情報付査証5を発行する機能を有する。
なお、これより以降、顔情報付査証5に2次元バーコードの形で格納されている顔画像情報を「顔画像情報A(第1の生体情報)」とし、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報を「顔画像情報B(第2の生体情報)」とし、カメラ部4で入国者の顔を撮影することにより生成される顔画像情報を「顔画像情報C(第3の生体情報)」として、それぞれの顔画像情報を適宜区別することとする。
【0014】
本人確認装置3は、査証発行装置2によって発行された顔情報付査証5から顔画像情報Aを読み取り、IC旅券6に設けられたICチップに格納されている顔画像情報Bを読み取り、さらに外部装置であるカメラ部4で入国者の顔を撮影した結果生成される顔画像情報Cを取得し、顔画像情報A〜Cのそれぞれを比較することによって、本人確認を行う機能を有する。
【0015】
次に、査証発行装置2について詳細に説明する。
査証発行装置2は、顔画像読取部201(生体情報読取部)、暗号化部202、バーコード部203(データコード部)および印刷部204を有してなる。
顔画像読取部201は、IC旅券6に設けられているICチップに格納されている顔画像情報を読み取る機能を有する。暗号化部202は、顔画像読取部201が読み取った顔画像情報に暗号化を施す機能を有する。バーコード部203は、暗号化部202によって暗号化を施された顔画像情報を2次元バーコードの情報へ変換する機能を有する。そして、印刷部204は、バーコード部203で変換された2次元バーコードの情報を、査証面上へ印刷することによって、顔情報付査証5を発行する機能を有する。
【0016】
なお、図1において、IC旅券6と、顔情報付査証5とは、便宜上分離した状態で描画されているが、実際には、顔情報付査証5は、発行後、IC旅券6に貼付される。
【0017】
次に、本人確認装置3について詳細に説明する。
本人確認装置3は、査証情報読取部301、復号化部302、顔画像復元部303(生体情報復元部)、IC旅券情報読取部304、カメラ画像取得部305(第3生体情報取得部)、顔画像比較部306(生体情報比較部)、表示処理部307および表示部308を有してなる。
査証情報読取部301は、顔情報付査証5に印刷されている2次元バーコードを読み取ることによって、2次元バーコードの情報を読み取る機能を有する。査証情報読取部301は、具体的には、スキャナなどの光学読取装置によって構成される。復号化部302は、査証発行装置2の暗号化部202によって施された暗号を復号化する機能を有する。顔画像復元部303は、復号化した2次元バーコードの情報から顔画像情報A(図示せず)を復元する機能を有する。
【0018】
IC旅券情報読取部304は、IC旅券6に設けられているICチップの顔画像情報Bを読み取る機能を有する。カメラ画像取得部305は、カメラ部4で生成された顔画像情報Cを取得する機能を有する。
そして、顔画像比較部306は、顔画像復元部303、IC旅券情報読取部304およびカメラ画像取得部305のそれぞれから顔画像情報A〜Cを取得し、取得した顔画像情報A〜Cのそれぞれを比較することによって、顔画像情報A〜Cが同一人物から得られた顔画像であるか否かを判定する機能を有する。
表示処理部307は、顔画像比較部306による判定の結果を表示部308に表示させる機能を有する。そして、表示部308は、具体的には、ディスプレイなどからなり、表示処理部307が指示した内容を表示する機能を有する。
なお、本実施形態において、カメラ部4は、本人確認装置3の外部装置であるとしたが、これに限らず、本人確認装置3に含まれる構成としてもよい。
【0019】
なお、査証発行装置2における各部201〜204、および本人確認装置における各部301〜307は、図示しないRAM(Random Access Memory)や、HD(Hard Disk)に格納された査証発行プログラムや、本人確認プログラムがROM(Read Only Memory)などに展開され、CPU(Central Processing Unit)が、実行することにより具現化する。
【0020】
次に、図1を参照しつつ、図2に沿って査証発行装置2における査証発行方法を説明する。
図2は、本実施形態に係る査証発行方法における処理の流れを示すフローチャートである。
なお、処理に先立って、IC旅券6のICチップには、顔画像情報が、所定の手順により格納されているものとする。
まず、査証発行装置2にIC旅券6がセットされると、顔画像読取部201が、IC旅券6のICチップから顔画像情報を読み取る(S101)。
次に、顔画像読取部201は、読み取った顔画像情報を、暗号化部202へ送り、暗号化部202は、送られた顔画像情報に暗号化を施す(S102)。
暗号化部202は、暗号化された顔画像情報をバーコード部203へ送り、バーコード部203は、送られた顔画像情報を2次元バーコードの情報へ変換する(S103)。
そして、バーコード部203は、変換した2次元バーコードの情報を印刷部204へ送り、印刷部204は、送られた2次元バーコードの情報を、特殊なインクを用いて査証面上に印刷する(S104)ことによって、顔情報付査証5が発行される。なお、特殊なインクとは、所定の波長の電磁波によって視認可能となるインクである。例えば、可視光下では透明だが、紫外線を照射すると視認可能となるインクなどを用いて印刷される。
当該手順で発行された顔情報付査証5は、IC旅券6に貼付される。
【0021】
次に、図1を参照しつつ、図3に沿って本人確認装置3における本人確認方法を説明する。
図3は、本実施形態に係る本人確認方法における処理の流れを示すフローチャートである。
まず、本人確認装置3の査証情報読取部301に顔情報付査証5がセットされると、査証情報読取部301が、顔情報付査証5面上に印刷されている2次元バーコードの情報を読み取る(S201)。前記したように、紫外線照射によって視認可能となるインクを用いて、2次元バーコードを印刷した場合、ステップS201の処理は、例えば、以下のような手順で行われる。すなわち、図示しない紫外線照射部が、顔情報付査証5の面に紫外線を照射し、この紫外線照射の結果、視認可能となった2次元バーコードを査証情報読取部301が読み取る。
【0022】
査証情報読取部301は、読み取った2次元バーコードの情報を復号化部302へ送り、復号化部302は、送られた2次元バーコードの情報を復号化する(S202)。
顔画像復元部303は、復号化した2次元バーコードの情報から、顔画像情報Aを復元する(S203)。そして、顔画像復元部303は、復元した顔画像情報Aを、顔画像比較部306へ送る。
【0023】
続いて、IC旅券情報読取部304が、IC旅券6に設けられているICチップから、ICチップに格納されている顔画像情報Bを読み取る(S204)。IC旅券6読取部は、読み取った顔画像情報Bを、顔画像比較部306へ送る。
また、入国ブースに備えられているカメラ部4で、IC旅券6および顔情報付査証5の所有者の顔が撮影され、撮影された顔写真を基に、顔画像情報Cを生成し、カメラ部4は、本人確認装置3のカメラ画像取得部305へ生成した顔画像情報Cを送り、本人確認装置3のカメラ画像取得部305は、送られた顔画像情報Cを取得する(S205)。顔画像情報Cを取得したカメラ画像取得部305は、顔画像比較部306へ、取得した顔画像情報Cを送る。ステップS205の処理は、例えば、デジタルカメラなどで、IC旅券6および顔情報付査証5の所有者の顔を撮影するなどして、顔画像情報Cを生成する。カメラ部4は、生成した顔画像情報Cを顔画像比較部306へ送る。
【0024】
顔画像比較部306は、送られた顔画像情報A,B,Cを比較し、これらが同一人物から得られた顔画像であるか否かを判定する(S206)ことによって、顔情報付査証5の偽変造の有無を判定する。
ステップS206の判定の結果、顔画像比較部306が、同一人物から得られた顔画像ではないと判定した場合(S206→No)、表示処理部307が、表示部308に同一人物ではない旨の警告を表示させる(S207)。
ステップS206の判定の結果、顔画像比較部306が、同一人物から得られた顔画像であると判定した場合(S206→Yes)、表示処理部307が、表示部308に同一人物である旨の表示をさせる(S208)。
そして、出国時には、該顔情報付査証5の再使用を防止するため、顔情報付査証5面上の2次元バーコードの箇所にスタンプを押印する(図示せず)。
【0025】
なお、ステップS201において、査証情報読取部301が、顔情報付査証5面上に印刷されているコンピュータ読取可能な文字を読み込んで、当該文字が示す情報を表示処理部307が表示部308に表示させてもよい。
【0026】
ここで、図4および図5を参照して、本実施形態に係る顔情報付査証5の申請から出入国審査までの手順を説明する。なお、図4〜図7において、IC旅券6と、顔情報付査証5とは、便宜上分離した状態で描画されているが、実際には、顔情報付査証5は、IC旅券6に貼付された状態となっている。
図4は、本実施形態に係る顔情報付査証の申請から発給までの手順を示す図である。
まず、申請者101は、IC旅券6、申請者101自身の顔写真が添付されている申請書100などを、在外公館へ提出することによって、顔情報付査証5の申請を行う。
次に、在外公館の職員によって申請書100の内容などが審査され、当該職員がOKの判断を下すと、職員によってIC旅券6が査証発行装置2にかけられる。査証発行装置2は、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報を読み取り、暗号化を施した後に、2次元バーコードとして査証面上に印刷することによって、顔情報付査証5を発行する。発行された顔情報付査証5は、顔写真が貼付された後、IC旅券6に貼付され、申請者101に渡されることによって顔情報付査証5が発給される。
【0027】
図5は、本実施形態に係る入国審査の手順を示す図である。
図5において、IC旅券6に関する審査は、図7を参照して後記する手順と同様であるため、説明を省略し、顔情報付査証5に関する審査の手順のみ記述することとする。
国際空港に到着した出入国者102は、入国審査において、IC旅券6と、顔情報付査証5とを審査官にわたす。
入国審査官は、渡された顔情報付査証5と、IC旅券6とを順に、本人確認手段にかける。
さらに、入国ブースに設けられたカメラ部4で、出入国者102の顔が撮影されることにより、顔画像情報Cが本人確認装置3に入力される。
本人確認装置3は、顔情報付査証5と、IC旅券6と、カメラ部4とから入力された顔画像情報を比較することにより、顔情報付査証5の偽変造の有無を判定する。
出国の手順に関しては、図7と同様であるため、図7において後記し、ここでは説明を省略する。
【0028】
ここで、図6および図7を参照して、現況における査証の申請から出入国審査までの手順を比較例として説明する。
図6は、比較例に係る査証の申請から発給までの手順を示す図である。
まず、申請者101は、IC旅券6、申請者101自身の顔写真が添付された申請書100などを、在外公館へ提出することによって、査証5’の申請を行う。
次に、在外公館の職員によって申請書100の内容などが審査され、当該職員がOKの判断を下すと、査証発行装置2’によって申請者101の顔写真付きの査証5’(写真付査証)が発行される。発行された査証5’が、申請者101に渡されることによって、査証5’の発給が完了する。
なお、発行される査証5’が、MRVであれば、査証発行装置2’は、査証5’面上に印刷される文字列を、コンピュータが読み取り可能な文字列として査証5’面上に印刷する。
【0029】
図7は、比較例に係る出入国審査の手順を示す図である。
国際空港に到着した出入国者102は、査証5’と、IC旅券6を入国審査官に提出する。そして、入国審査官によって当該IC旅券6がIC旅券確認装置103にかけられ、IC旅券6に設けられたICチップに格納されている顔画像情報がIC旅券確認装置103によって読み取られ、表示部308に読み出された顔画像が表示される。
表示された顔画像と、本人の顔とを入国審査官が目視することによって、本人確認を行ったり、図示しないカメラで撮影された結果生成される顔画像情報と、IC旅券6から読み取った顔画像情報とを、図示しない本人確認装置3が照合することによって本人確認を行ったりする。
このとき、査証5’に貼付されている顔写真と、本人の顔とを入国審査官が目視によって比較することにより、本人確認を行う。
また、査証5’がMRVであれば、入国審査官によって、査証5’(MRV)が光学読取装置(図示せず)にかけられ、光学読取装置が読み取った査証5’面上の文字情報が、図示しない表示部308に表示される。
【0030】
出国の際には、出入国者102は、出国審査官にIC旅券6を提出する。出国審査官によって、当該IC旅券6がIC旅券確認装置103にかざされる。これ以降の処理は、入国時と同様のため、説明を省略する。
【0031】
以下、図1、図4および図5を適宜参照して、本実施形態の効果を説明する。
比較例(図7参照)における査証のチェックは、基本的に入国審査官による目視であるため、入国審査にかかる1人あたりの審査時間がかかる傾向がある。さらに、目視によるチェックのため、入国審査官が、偽造査証を看過するおそれがある。
このような問題に対し、本実施形態では、本人確認装置3内で顔画像の比較を行い、偽造査証のチェックを行うため、1人あたりの審査時間を減少させることが可能となり、また入国審査官の負担を減少させることが可能となる。そして、本人確認装置3内で顔画像を比較することにより、偽造査証の看過を防止することが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態における査証偽変造対策システム1を、消費者金融機関などで使用されている無人契約機に適用することも可能である。
すなわち、無人契約機では、旅券を身分証明書とすることが可能であるが、本実施形態における顔情報付査証5を身分証明書として、旅券と共に用いてもよい。
このとき、この無人契約機に、本実施形態で記載した本人確認装置3の機能を内蔵させてもよい。
【0033】
本実施形態によれば、顔情報付査証5に印刷されている2次元バーコードから復元された顔画像情報、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報、および入国ブースにおいて撮影された入国者の顔画像情報といった3つの顔画像情報を比較することにより、本人確認を行っている。そのため、顔写真の張り替えなどによる顔情報付査証5の偽変造を困難にすることができる。
そして、顔情報付査証5に貼付されている顔写真を読み込む必要がないので、読取性能の低い機器を用いて実現することができる。
【0034】
さらに、例えば特許文献1に記載されている技術を用いて顔情報付査証5を作成する場合において、査証に顔画像情報を格納する際、すなわち顔情報付査証5の発行時に、生体情報(顔画像情報)を提供するために、本人が大使館を訪れなければならないといった問題があった。
このような問題に対し、本実施形態では、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報を、査証面上へ移すことにより、例えば代理人がIC旅券6を持参すれば、顔情報付査証5を作成することが可能であり、申請者101本人が在外公館を訪れる必要がない。
【0035】
また、IC旅券6のICチップに格納されている顔画像情報を、2次元バーコードに変換した上で、査証面上にコピーするため、コストの削減が可能となる。すなわち、査証発行装置2の顔画像読取部201としては、ICチップリーダさえ用意すればよく、顔画像を撮影するためのカメラや、カメラに付随するフラッシュなどを査証発行装置2に設ける必要がない。従って、安価に査証発行装置2を構成でき、コストの削減が可能となる。さらに、顔画像を撮影するための部屋などを在外公館に設ける必要がない。従って、小さなスペースに査証発行装置2を設置することが可能となる
【0036】
また、欧州の一部の国や、アメリカでは、査証に生体情報を搭載する生体情報搭載ビザ発給システムが導入されている。当該システムで用いられる生体情報は、ICチップに格納することが前提となっている。
このような生体情報搭載ビザ発給システムでは、IC旅券6に、生体情報が格納されているICチップが設けられている査証を貼付する。そのため、IC旅券6のICチップと、査証のICチップとが重複する形になってしまう。このため、IC旅券6のICチップから送信される情報と、査証のICチップから送信される情報とが、重畳してしまい、読み取りが困難になってしまう状況が発生しているという問題がある。
このような問題に対し、本実施形態では、顔画像情報を2次元バーコードとして顔情報付査証5面に印刷することにより、ICチップから送信される情報を一元化し、情報の重畳を防止している。
【0037】
さらに、2次元バーコード内に顔画像情報以外の本人識別情報を格納してもよい。このようにすることによって、本人確認装置3が、当該顔情報付査証5の使用履歴を取得することも可能である。すなわち、本人確認装置3が、本人識別情報を格納する識別情報データベースをさらに有し、本人確認装置3が読み取った本人識別情報をキーに、当該識別情報データベースを検索して、一致するデータベース内の本人識別情報が存在する場合は、当該本人識別情報にひもづけされた使用履歴を+1する。
【0038】
さらに、バーコード部203が、顔画像情報を2次元バーコードに変換する際に、顔画像情報の圧縮、または顔画像情報の一部の省略(顔画像情報の間引き)を行ってもよい。このようにすることで、2次元バーコードの情報量を削減することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態における顔情報付査証5は、MRVに2次元バーコードを印刷しているが、MRVに限らず、MRV以外の査証に2次元バーコードを印刷してもよい。
さらに、本実施形態では、生体情報を顔画像情報であるとしたが、これに限らずIC旅券6のICチップに格納されている生体情報であれば、指紋情報なども可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る査証偽変造対策システムの機能ブロック図である。
【図2】本実施形態に係る査証発行方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る本人確認方法における処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る顔情報付査証の申請から発給までの手順を示す図である。
【図5】本実施形態に係る入国審査の手順を示す図である。
【図6】比較例に係る査証の申請から発給までの手順を示す図である。
【図7】比較例に係る出入国審査の手順を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 査証偽変造対策システム
2,2’ 査証発行装置
3 本人確認装置
4 カメラ部
5 顔情報付査証(生体情報付査証)
5’ 査証
6 IC旅券
100 申請書
101 申請者
102 出入国者
103 IC旅券確認装置
201 顔画像読取部(生体情報読取部)
202 暗号化部
203 バーコード部(データコード部)
204 印刷部
301 査証情報読取部
302 復号化部
303 顔画像復元部(生体情報復元部)
304 IC旅券情報読取部
305 カメラ画像取得部(第3生体情報取得部)
306 顔画像比較部(生体情報比較部)
307 表示処理部
308 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を格納する生体情報付査証を発行する査証発行装置であって、
IC旅券に格納されている生体情報を取得する生体情報読取部、
前記取得した生体情報を、データコードへ変換するデータコード部、
および前記データコードを前記生体情報付査証面上に印刷する印刷部を有することを特徴とする査証発行装置。
【請求項2】
前記データコードとは、2次元バーコードであることを特徴とする請求項1に記載の査証発行装置。
【請求項3】
前記生体情報とは、顔画像の情報である顔画像情報であることを特徴とする請求項1に記載の査証発行装置。
【請求項4】
前記査証発行装置は、
前記生体情報読取部によって、取得された生体情報に対して、暗号化を施し、前記暗号化を施された生体情報を、前記データコード部へ送る暗号化部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の査証発行装置。
【請求項5】
前記印刷部は、
前記データコードを、特殊なインクによって前記生体情報付査証面上に印刷する機能をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の査証発行装置。
【請求項6】
生体情報が格納されたIC旅券および生体情報を示すデータコードが印刷されている生体情報付査証に格納されている生体情報を基に、前記IC旅券および前記生体情報付査証の所有者の正当性を判定する本人確認装置であって、
前記生体情報付査証に印刷されているデータコードを読み取る査証情報読取部、
前記読み取ったデータコードから、第1の生体情報を復元する生体情報復元部、
IC旅券に格納されている第2の生体情報を取得するIC旅券情報読取部、
前記生体情報付査証および前記IC旅券の所有者に関する第3の生体情報を取得する第3生体情報取得部、
および前記第1の生体情報、前記第2の生体情報および前記第3の生体情報を比較することによって、前記第1の生体情報、前記第2の生体情報および前記第3の生体情報が、同一人物から得られた生体情報であるか否かを判定する生体情報比較部を有することを特徴とする本人確認装置。
【請求項7】
前記データコードとは、2次元バーコードであることを特徴とする請求項6に記載の本人確認装置。
【請求項8】
前記データコードが示す情報は、暗号化された生体情報であり、
前記本人確認装置は、
前記査証情報読取部が読み取ったデータコードを、復号化して、前記複合化されたデータコードを、前記生体情報復元部へ送る復号化部をさらに有することを特徴とする請求項6に記載の本人確認装置。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の査証発行装置、および請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の本人確認装置を含んで構成されることを特徴とする査証偽変造対策システム。
【請求項10】
生体情報を格納する生体情報付査証を発行する査証発行装置における査証発行方法であって、
IC旅券に格納されている生体情報を取得するステップと、
前記取得した生体情報を、データコードへ変換するステップと、
前記データコードを前記生体情報付査証面上に印刷するステップとを有することを特徴とする査証発行方法。
【請求項11】
生体情報が格納されたIC旅券および生体情報を示すデータコードが印刷されている生体情報付査証に格納されている生体情報を基に、前記IC旅券および前記生体情報付査証の所有者の正当性を判定する本人確認装置における本人確認方法であって、
前記生体情報付査証に印刷されているデータコードを読み取るステップと、
前記読み取ったデータコードから、第1の生体情報を復元するステップと、
IC旅券に格納されている第2の生体情報を取得するステップと、
前記生体情報付査証および前記IC旅券の所有者に関する第3の生体情報を取得するステップと、
前記第1の生体情報、前記第2の生体情報および前記第3の生体情報を比較することによって、前記第1の生体情報、前記第2の生体情報および前記第3の生体情報が、同一人物から得られた生体情報であるか否かを判定するステップとを有することを特徴とする本人確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179014(P2008−179014A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12915(P2007−12915)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)沖ソフトウェア株式会社 (173)
【Fターム(参考)】