説明

核酸包含粘膜接着性作用物質を含有する多粒子投与形、および前記投与形を生成する方法

本発明は、a)核酸作用物質を含むナノ粒子を含み、かつ粘膜接着性作用を有するポリマーのマトリックスに埋包された内部マトリックス層と、b)薬剤的に従来の補助剤、特に軟化剤と共に随意選択で調合されるアニオン性ポリマーまたはコポリマーから実質的になる外部被膜コーティングとから実質的になる50から2500μg(m)mの範囲のサイズのペレットを含有する、経口多粒子投与形に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜接着性に調合された核酸作用物質を含有する多粒子剤形、および剤形を生成する方法に関する。
【0002】
背景技術
WO 02/64148は、ムコ多糖体を含有する調合物、およびムコ多糖体を生成する方法を記述する。この場合、ヘパリンなどのムコ多糖体は、キトサンなどの吸着促進剤と共に調合され、その後、小腸の中央部分または下方部分において作用物質を放出することができるように、腸液において可溶なコーティングを提供する。腸液において可溶で適切なコーティングの例は、Eudragit(登録商標)L、S、L100−55のタイプのアニオン性アクリルポリマーである。調合は、カプセル、タブレット、および顆粒を含むことが可能である。
【0003】
テロメラーゼは、細胞分裂において、特に染色体端部の領域のDNA2重化に寄与する酵素である。したがって、酵素は、無損傷の染色体構造を維持するのに重要である。テロメラーゼの活性は、ほとんどの成人の体細胞において抑制され、テロメラーゼの活性の上昇は、生殖細胞においてだけでなく、多くの腫瘍細胞のタイプにおいても観測される。テロメラーゼは、遺伝子により事前にプログラムされた細胞死まで、細胞の通常の生活環の分子制御において重要な役割を果たすと想定される。通常の細胞とは異なり腫瘍細胞においてテロメラーゼの活性が高いことは、通常の細胞分裂制御が失われている徴候であると解釈される。テロメラーゼおよびそれに関連する遺伝子構造は、腫瘍細胞の遺伝子治療の開始点と見なされる。
【0004】
WO 99/38964は、特にテロメラーゼ遺伝子促進剤を含有する遺伝子治療のための核酸を記載している。このDNAは、たとえば細胞毒素符号化遺伝子など、外来遺伝子に結合することができる。核酸構成体は、腫瘍細胞に向上したテロメラーゼ活性をトランスフェクションするための作用物質として使用することができる。これは、腫瘍細胞の分裂を抑制し、さらに特にこれらの細胞を殺傷することが予測される。WO99/38964に記載されている作用物質のタイプ、およびそれから誘導された剤形を経口投与する可能性が述べられている。
【0005】
Royら(1999年)は、Nature Medicine、Vol.5、No.4、387から391ページ、「Oral gene delivery with chitosan−DNA nanoparticles generates immunologic protection in murine model of peanut allergy」において、マウスにおけるDNA作用物質の経口投与について記載している。プラスミドDNAに関して存在する主要なピーナツ・アレルゲン遺伝子(pCMVArah2)が、複合体に集合化することによって、約390000のMwを有するキトサンと共に、100nmから200nmの範囲のサイズを有するナノ粒子に調合された。これらのナノ粒子は、AKR/Jマウスに経口で投与され、その際、腸上皮細胞において形質導入された遺伝子の発現を検出することが可能であった。このように処置されたマウスは、アレルゲン特有の分泌IgA抗体および血清IgG2a抗体を生成し、制御群と比較してアレルゲン誘発アナフィラキシの低下を示した。
【0006】
Leongら(1998年)は、Journal of Controlled Release 53、183から193ページ、「DNA−polycation nanospheres as non−viral gene delivery vehicles」において、BALB/cマウスにおいてインビボで外来遺伝子の発現を生じる遺伝子導入助剤を記載している。ナノスフェアが、200から700nmの範囲のサイズを有するゼラチンまたはキトサンと共にDNA複合体として生成された。
【0007】
WO 02/094983は、核酸、DNAについて特異性を有する抗体、およびそれに関連付けられたカチオン性高分子複合体の調合を記載している。調合は、ナノ粒子の形態において行われ、トランスフェクション率の増大が、インビトロおよびインビボの両方で検出される。作用物質を遅延放出する経口投与の調合が述べられている。
【0008】
WO 03/007913は、いわゆる複数のパッチの形態において作用物質を含有する経口多粒子剤形を記載している。パッチは、500μmから5mmの直径および100μmから1000μmの高さを有する生体適合性材料で生成されたディスク状の物質である。パッチは、2つの層または側面からなり、その1側面は、水またはエチルセルロースなどで生成さたれ体液についてごく低い浸透性を有し、その第2側面は、タンパク質、多糖類、または小分子などの作用物質を含有し、これらは、キトサン、CMC、ポリアクリル酸、またはペクチンなど、粘膜接着性ポリマーを有する混合物において存在することが可能である。パッチは、タブレットを形成するために圧縮することができ、または、腸液において可溶なコーティングをさらに含有するカプセルに実装することができる。作用物質の調製はまた、脂肪酸、脂肪アルコール、エステル、表面活性物質、およびプロテアーゼ抑制剤など、いわゆる促進剤とさらに組み合わせることも可能である。腸の特定の部分においてなど、活性部位において、カプセルは溶解し、パッチを放出する。放出されたパッチは、粘膜接着側で超粘膜に接着し、そこから遅延方式で腸粘膜に向かって作用物質を送達することができる。パッチの第2のごくわずかに浸透性の側は、腸管腔に面する側から化学的または酵素的不活性化に対してある保護を有する作用物質を提供することを意図する。
【0009】
WO 03/092732は、1000から50000の比較的低分子量Mwを有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーに基づくpH感受性ポリマーを記載している。pH感受性ポリマーはまた、とりわけ、核酸を複合体にするのにも適している。pH感受性ポリマーは、pH7.0もしくはわずかにそれより上の領域では、高濃度においてのみ細胞毒性作用を有し、または全く有さないが、pH6.5より下では低濃度でもインビボで細胞毒性または溶血性あるいは膜溶解性の作用を有する。
【0010】
問題および解決法
WO 99/38964は、ヒトテロメラーゼ遺伝子およびこの遺伝子の促進剤に関する核酸およびベクターを記載している。そこで記載された核酸は、腫瘍細胞の遺伝子治療の有望な作用物質と見なすことが可能である。WO 99/38964に記載された作用物質タイプの経口投与は、非常に一般的にのみ示唆されている。特にヌクレアーゼによる時期尚早の不活性化が起きず、かつ十分な割合の作用物質が対象細胞をトランスフェクションするのに成功するような方式で、熟練者がこのタイプの作用物質を活性部位に送達することを可能にする調合を提案することが必要である。冒頭に述べられ、ナノ粒子における抗体DNA結合複合体を記載するWO 02/094983は、経口剤形の調合についてもかなり一般的な示唆を与えるだけである。
【0011】
WO 03/007913は、腸管腔において放出され、かつ腸管腔において作用することを意図する経口剤形の調製に対する可能な解決法を記載する。この解決法の1つの欠点は、とりわけ、2層パッチ構造の構築および生成が精巧であると見なされる可能性があることである。医薬品の形態が、胃液に対して抵抗性であり、かつ腸液において可溶性であるコーティングを有するカプセルとして提供されることが、特に不利益である。2.5mmを明らかに超えるサイズでは、治療の再現性が不十分であることが懸念される。カプセルが胃を通過する時間は、大きく変化する可能性がある。あらゆる場合において、作用の開始が遅延されることが予測される。さらに、カプセル自体は、コーティングが一部溶解した後、迅速または緩慢に溶解する可能性がある。コーティングおよびカプセルの2つの成分は、この場合不良に重複し、それにより、パッチの放出は、全体的に制御されないことが予測されるはずである。カプセルは、腸液に少なくとも部分的に到達可能である状況において、現在の腸の内容物または腸の蠕動に応じて、完全なままである、または機械的大きく破損している可能性がある。当初コーティングされたカプセルの構造に関する崩壊または機械的応力に応じて、一方では大量のパッチが突然放出される可能性があり、他方では放出が望ましくなく遅延される可能性がある。したがって、より良好に全体的に制御することができる作用物質の送達が望ましい。
【0012】
本発明は、特に遺伝子治療の目的で、核酸作用物質について経口投与することができる剤形に関する。これに関連する一般的な課題は、作用部位において生細胞をトランスフェクションするのに有益である形態で作用物質を調合し、同時に、作用物質または少なくとも十分な量が、トランスフェクションすることができる形態で作用部位に到達することを保証することである。本発明の課題の1つは、核酸作用物質を対象化して効率的に放出するのに適切な剤形を提供することであると見なされた。剤形は、高投与量信頼性を提供し、胃を迅速に通過した後に腸管腔において十分に分布することを意図する。含まれている核酸作用物質は、さらに、物理的、化学的、または核酸分解的な不活性化から十分に保護され、かつ作用物質の大きな割合を身体によって吸収することができるような方式で、確定作用部位において放出されることを意図する。放出部位は、治療の目的に応じて、変動的および確実に調節可能であることを意図する。剤形は、DNA作用物質の他に、薬理学的に許容可能な無毒の成分のみを含有することを意図し、それにより、剤形の摂取が頻繁である、または規則的である場合でさえ、当初から望ましくない副作用が予期されない。
【0013】
前記課題は、
a)核酸作用物質を含有し、粘膜接着作用を有するポリマーのマトリックスに埋包されたナノ粒子を含有し、マトリックスが、薬剤的に有用な助剤を随意選択でさらに含有することが可能である、内部マトリックス層と、
b)薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤を有して随意選択で調合することが可能であるアニオン性ポリマーまたはコポリマーから本質的になる外部被膜コーティングとからなり、
包含されるペレットが、胃のpH範囲において放出され、コーティングが、腸において15分から60分以内に4.0から8.0のpHにおいて溶解し、それにより、作用物質包含粘膜接着マトリックス層が腸粘膜に暴露され、腸粘膜に結合して腸粘膜において作用物質を放出することができるように、外部コーティングが、アニオン性ポリマーまたはコポリマー、ならびに助剤を有するその調合およびその層の厚さを選択することにより調節され、この場合、粘膜接着作用を有するポリマーが、外部コーティングが溶け始めるpHに対して+/−0.5pH単位の範囲において、少なくともη=150から1000mPa・sの粘膜接着作用と、15分で10%から750%の吸水性とを示すように選択され、マトリックス層のナノ粒子の作用物質含有量が、粘膜接着作用を有するポリマーの含有量の40質量%の最大値を有するように、多粒子剤形が調合されることを特徴とする、50μmから2500μmの範囲の平均直径を有するペレットを含有する経口多粒子剤形によって解決される。
【0014】
本発明の実施形態
本発明は、
a)核酸作用物質を含有し、粘膜接着作用を有するポリマーのマトリックスに埋包されたナノ粒子を含有する内部マトリックス層であって、マトリックスが、薬剤的に一般的な助剤を随意選択でさらに含有することが可能である、内部マトリックス層と、
b)薬剤的に有用な助剤、特に可塑剤を有して随意選択で調合することが可能であるアニオン性ポリマーまたはコポリマーから本質的になる外部被膜コーティングとからなる、特にタブレット、ミニタブレット、カプセルに実装されたペレット、サシェット、または乾燥粉末の形態にあり、50μmから2500μm、好ましくは100μmから1000μmの範囲の平均サイズまたは平均直径を有するペレットを含有する、多粒子剤形に関する。
【0015】
多粒子剤形は、包含されるペレットが、胃のpH範囲において放出されるように調合される。
【0016】
本発明の文脈におけるペレットという用語は、本発明において記述される構造およびサイズを有する限り、微小粒子、ビーズ、またはミニタブレットと呼ぶことも可能である円形から球状の凝集物を含む。
【0017】
外部コーティングは、コーティングが、15分から60分、好ましくは20分から40分以内に胃において4.0から8.0、好ましくは、5.5から7.8、特に好ましくは5.8から7.5のpH範囲で溶解し、それにより、作用物質包含粘膜接着マトリックス層が、腸粘膜に暴露され、腸粘膜に結合して腸粘膜において作用物質を放出することができるように、アニオン性ポリマーまたはコポリマー、ならびに助剤を有するその調合およびその層の厚さを選択することによって調節される。
【0018】
粘膜接着作用を有するポリマーまたはコポリマーは、外部コーティングが溶け始めるpHに対して+/−0.5、好ましくは+/−0.3のpH単位の範囲において、η=150から1000、好ましくは150から600mPa・sの粘膜接着作用と、15分で10%から750%、好ましくは10%から250%、特に好ましくは10%から160%の吸水性とを示し、マトリックス層の作用物質含有量が、粘膜接着作用を有するポリマーの含有量の40質量%を超えない、好ましくは0.001質量%から15質量%、または0.05質量%から5質量%であるように選択される。
【0019】
内部マトリックス層
内部マトリックス層は、作用物質の担体として作用する。内部マトリックス層は、作用物質が腸粘膜から体内に入ることができるように、包含される粘膜接着ポリマーによって、作用物質を腸粘膜に結合する機能をさらに有する。内部マトリックス層は、作用物質を物理的、化学的、または酵素的な不活性化から保護する機能をさらに有する。
【0020】
内部マトリックスは、薬剤的助剤、特にGタンパク質結合受容体および配位子(たとえば、WO 02/102407、74から76ページを参照されたい)、特に8‐OH‐DPAT、アミノケタンセリン、アントロピン、ブタクラモール、クロルプロマジン、クロロプロジクセン、キナンセリン、シアノピンドロール、シプロヘプタジン、ドンペリドン、エピ−デプリド、エピ−ネフリン、フェノルドパン、フルペンチキソール、フルフェナジン、ハロペリドール、ヘキソシクリウム、ヒンバシン、イオドメラトニン、ケタンセリン、リセルグ酸誘導体、メソリダジン、メスレリギン、メトクトラミン、メチルセルギド、メトクロプラミン、ミアンセリン、モリンドネン、ムスカリニック、ナロキソン、N−メチルスピペロン、ノルエピネフリン、ペルゴリド、フェントラミン、ピレンゼピン、PPHT−コウマリン、PPHT−ロダミン、PPHT−テキサスレッド、プラゾシン、プロマジン、ラクロプリド、セロトニン、スペペロン、スプリロキサトリン、スルピリド、スマトリプタン、テニラピン、およびトリフルプリマジンをさらに含有することが可能である。
【0021】
内部マトリックスは、浸透促進剤、たとえば、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチルなどの可塑剤、カルボマー、キトサン、キトサン−システイン、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、N−トリメチル化キトサン、ポリカルボフィルシステイン、長鎖脂肪酸、そのエステル(たとえば、モノおよびジグリセリド)などのポリマーおよびラウリン酸、ラウリンスルホン酸、パルミチン酸、カプリル酸、カプリン酸、オレイン酸などの塩、アシルカルニチン、EDTAなどのキレート剤、サリチル酸塩、シクロデキストリン、ポリアクリル酸、コール酸、コリルタウリン、コリルサルコシン、ケノデオキシコール酸などの胆汁酸およびNaコール、Naグリココール、Naタクロコール、Naタウロジヒドロフシジン、Naグリコジヒドロフシジンなどのその塩、表面活性剤および乳化剤、特にポリエチレン−660、12−ヒドロキシステアレート(Solutol(登録商標)HS15)、(Solutol HS15)、ポリソルベート80(Tween80)、ポリオキシエチル化カストール油(Cremophor EL)、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール(Pluronic(登録商標)F68)、毒閉鎖帯毒性(ZOT)、およびビタミンE(トコフェロール)またはビタミンB12などのビタミンをさらに含有することが可能である。
【0022】
薬剤助剤、浸透促進剤、ならびに/あるいはGタンパク質結合受容体および配位子は、内部マトリックス層に存在しないこと、または0.01質量%から10質量%、好ましくは0.05質量%から2質量%、特に好ましくは0.1質量%から1質量%など、少量のみ存在することが好ましい。
【0023】
核酸作用物質
マトリックス層は、核酸作用物質を有するナノ粒子を含有する。核酸作用物質は、哺乳動物細胞、特にヒト細部のDNAとの相互作用を対象部位においてインビボで誘発するタスクを有し、これにより細胞のDNA構造が変化し、または非常に一般的には細胞の特性が変化する。これに関して、遺伝子的に関連する疾患の欠陥遺伝子構造を修復することを目的とするいわゆる遺伝子治療が、主に述べられるべきである。これは、たとえば、腫瘍細胞におけるテロメラーゼ活性などの望ましくない遺伝子活性を不活性化する、または切り替える形態をとることが可能である。これはまた、p53遺伝子活性、長く既知であり、かつ集中的に研究された腫瘍抑制遺伝子など、健康な細胞に通常存在する遺伝子活性を回復する形態をとることも可能である。したがって、本発明は、特に遺伝子治療のために、核酸作用物質について経口投与することができる剤形に関する。
【0024】
核酸作用物質は、一本鎖または二本鎖のDNA(デオキシリボ核酸)またはRNA(リボ核酸)、あるいはDNA‐RNAキメラとすることが可能であり、天然産生のヌクレオチドおよび/または非天然産生の合成改質ヌクレオチドが存在することが可能である。核酸作用物質は、線形または円形の形態にあることが可能である。核酸作用物質は、たとえば10から200塩基または塩基対の長さを有する、オリゴヌクレオチド単位の形態を取ることが可能である。核酸作用物質はまた、たとえば、200から100000、500から10000、または1000から5000塩基または塩基対のより長い単位の形態を取ることも可能である。実際の作用物質として作用する配列、たとえば、対象細胞に存在する、または補充される核酸配列の他に、核酸作用物質はまた、適切であれば、対象細胞に通常は存在せず、対象細胞と相互作用することを意図しないベクター配列を有することも可能である。
【0025】
既知のベクター系の例は、二本鎖DNAに基づき、かつウィルス系に基づいてプラスミドまたはベクターから導出されるものである。既知の例は、組換えアデノ随伴ウィルス・ベクター(rAAV)である。他の二本鎖ベクターは、促進剤またはサイトメガロウィルス(CMV)またはSV40ウィルスからの調節配列を有することが可能である。付着RNA要素の補助で、分解から保護することができる一本鎖DNAから他のベクターを導出することが可能である。また、短いDNA部分、たとえば30から60の塩基が、1から4の塩基の短いRNA部分と共に端部において提供されるいわゆるRDO IおよびRDO II構成物も知られている。半減期またはヌクレアーゼ抵抗は、非天然産生のヌクレオチドをRNAまたはDNAに導入することによって、さらに向上させることができる。これに関連して、たとえば、単一の酸素原子が硫黄原子によって置換され、それによりリン−硫黄ブリッジが得られる(MSO)ことが可能である。遺伝子修復ベクターまたは遺伝子置換ベクターとして適切であり、かつ本発明の文脈において作用物質として使用することができる多様な核酸形態が、たとえば、Nature Reviews Vol.4、2003、679から689ページ、Li Liuらに記載されている。本質的に、作用物質として作用する核酸配列のみを有し、ごく小さい割合のベクターDNAを有する、またはベクターDNAを有しない核酸断片が好ましい。
【0026】
核酸作用物質は、抗体などのカチオン性ポリマーまたはタンパク質を有する、たとえば複合体または結合体において存在することが可能である。複合体化または結合体構成は、化学ブリッジ結合により共役結合で、またはファン・デア・ワールス力(van der Waal‘s forces)、イオン連鎖、疎水性連鎖を介する非共有結合で、可逆的または不可逆的に行うことが可能である。複合体または結合体自体において核酸作用物質の他に示される分子は、治療効果を示さないが、それにより、調合の補助剤と見なされ、作用物質または作用物質の一部とは見なされない。
【0027】
核酸作用物質は、適切であれば、タンパク質またはペプチドの補助で調合することが可能である。しかし、タンパク質またはペプチド自体は、治療効果を示さず、したがって、調合補助剤と見なされ、作用物質または作用物質の一部とは見なされない。
【0028】
核酸は、たとえばWO 02/094983において開示されているように、特定的に核酸に結合する抗体、およびカチオン性物質との複合体の形態にあることが可能である。この尺度は、インビトロおよびインビボの両方においてトランスフェクション率の増大に寄与することができることを示すことが可能であった。これに関して、完全に作用する単クローンIgG抗体またはIgM抗体、あるいは断片として、Fc抗体断片、Fab’抗体断片、F(a,b)’2抗体断片、または半抗体断片が可能であり、かつ好ましいが、これらの断片は、各場合において、少なくとも1つの抗DNA結合部位を有さなければならない。核酸対抗DNA抗体の分子比は、たとえば、1:20から1:5とすることが可能である。
【0029】
核酸作用物質は、たとえば、血友病の治療を目的とし、凝固因子遺伝子、たとえば、ヒト凝固因子KXのcDNA遺伝子を有することが可能である(たとえば、WO 03/028657、またはPalmerら、Blood,1989年、73(2)、438から445ページ、あるいはYaoら、Proc Natl Acad Sci、USA、1992年、89(8):3357から3361ページを参照されたい)。核酸作用物質は、治療有効遺伝子部分の他に、たとえばFas配位子など、免疫寛容誘発遺伝子を有することも可能である。共発現したFas配位子またはFas遺伝子のセクションは、遺伝子を対象細胞に移入した後に特定的に活性化させることができるT細胞において細胞消滅を誘発することができる。白血病細胞における細胞消滅誘発に関連するベクターも、Walenskyら、2004年、「Activation of Apoptosis in Vivo by a Hydrocarbon−Stapled BH3 Helix」、Science、305、1466から1470ページから推測することができる。
【0030】
核酸作用物質は、たとえば、ヒトテロメラーゼ遺伝子の遺伝性セクション、特に促進剤領域を有することが可能である。適切な例は、WO 99/38964に記載されている遺伝子治療ベクターpGT62−codAupp、またはWO 99/38964から当業者によって推測することができる他のベクターである。核酸作用物質は、腫瘍抑制遺伝子セクション、たとえばp53腫瘍抑制遺伝子またはその断片を有することが可能である。US6451593B1が、本発明の文脈において核酸作用物質を生成するのに適切な遺伝子治療のための発現ベクターを構築する原理を記載している。
【0031】
ナノ粒子
剤形は、20nmから1000nm、好ましくは50nmから250nm、特に好ましくは80nmから220nm、とりわけ100nmから200nmの範囲のサイズを有することが好ましい可能性があるナノ粒子を含有する。
【0032】
ナノ粒子に存在する核酸は、カチオン性物質との複合体の形態で存在することが好ましい可能性がある。
【0033】
カチオン性物質は、カチオン性脂質、カチオン性ポリペプチド、および/またはカチオン性ポリマーとすることが可能である。ポリエチレンイミンまたはその誘導体も、適切である可能性がある。
【0034】
カチオン性脂質は、たとえば、N−[1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル]−N−N−N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)とジオレイルフォスファチジルエタノールアミン(DOPE)の商用混合物とすることが可能である。適切な例はまた、N−[1−(2,3−ジオレイロキシ)プロピル]−N−N−N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、ジオレイルフォスファチジルコリン(DOPC)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)である。
【0035】
カチオン性ポリペプチドは、カチオン性側基を有するアミノ酸の合成により調製されたホモポリマーであることが好ましい。ポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、およびポリヒスチジンが述べられるべきである。鎖の長さは、3から20、10から50、50から100、または最高で500、あるいは最高で1000のアミノ酸など、数単位から長単位まで変化することが可能である。たとえばヒストンタンパク質など、主にカチオン特性を有する天然産生のタンパク質を使用することも可能である。
【0036】
比較的わずかな薬理学的経験を有する他の物質に関して、(メタ)アクリレートコポリマーが好ましいが、その理由は、経口投与される医薬品において、数10年にわたり安全に使用されてきたからである。したがって、カチオン性ポリマーは、(メタ)アクリレートコポリマー、特に第3級アミノ基または第4級アミノ基を有する(メタ)アクリレートコポリマーが好ましい可能性がある。カチオン性(メタ)アクリレートコポリマーのガラス転移温度(ISO 11357−2、サブセクション3.3.3)は、40℃から60℃の範囲にあることが好ましく、分子量Mw(質量平均)は、100000から200000である(分子量Mwは、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィによって、または散乱光法によって決定することができる(たとえば、H.F.Markら、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、Vol.10、1ページ以降、J.Wiley、1989年を参照されたい)。腎臓または胆管を介する排出を改善するために、たとえば50000以下、または5000から40000、10000から30000、あるいは15000から25000のMwを有する、低分子量Mwを有するカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーが好ましい。
【0037】
分子量Mw(質量平均)は、たとえば、粘度計またはゲル排除クロマトグラフィ(GPC)によって決定することができる。粘度計の値(限界粘度数)は、23℃のクロロホルムまたはDMF(ジメチルホルムアミド)において決定することができ、10から20、好ましくは11から15nspec/c(cm/g)の範囲にあるべきであることが好ましい。粘度数は、たとえば、ISO 1628−6において規定されているように測定することができる。
【0038】
20質量%から30質量%のメタクリル酸メチル、20質量%から30質量%のメタクリル酸ブチル、および60質量%から40質量%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルの遊離基重合単位からなる(メタ)アクリレートコポリマーが好ましい。(メタ)アクリレートは、特に、10μmから30μmの平均粒子サイズを有するミクロ形態において使用することができる。第3級アミノ基を有する特に適切な商用の(メタ)アクリレートコポリマーは、たとえば、25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のメタクリル酸ブチル、および50質量%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルからなる(Eudragit(登録商標)E100)。10μmから20μmの平均粒子サイズを有するミクロ形態(Eudragit(登録商標)E PO、粉末)が、特に好ましい。この形態は、核酸包含ナノ粒子に特によく処理することができる。この場合の結果は、トランスフェクション率の増大に寄与することが可能である、核酸分子との明らかに特に有益な複合体形成である。
【0039】
核酸作用物質ならびにカチオン性およびアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子
対象細胞のタイプについてのそれぞれの核酸のトランスフェクション率は、核酸作用物質およびカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子の調製において、核酸作用物質およびカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーに基づいて、0.1質量%から40質量%、特に1質量%から30質量%、特に好ましくは2質量%から25質量%の割合のアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーをさらに追加することによって、さらに最適化することができる。その場合、ナノ粒子は、利用可能であれば対象細胞タイプの細胞培養基で、または少なくとも同様であるもしくは同様に反応する細胞タイプで、インビトロ検定においてトランスフェクション率について検査されなければならない。このようにして、複合体における核酸の結合力と、複合体から生細胞への放出との間において適切な均衡を調節することが可能である。カチオン性(メタ)アクリレートコポリマーのみによる結合作用が当初過度に強く、それにより核酸のトランスフェクション率が不十分に低い場合、結合作用は、使用される核酸および対象細胞のタイプに特有である最適値にトランスフェクション率が到達するまで、(メタ)アクリレートコポリマーを添加することによって弱めることができる。この調合モードは、カチオン性およびアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーの両方が薬理学的に許容可能であり、それにより副作用がほとんどまたは全く予期されないという利点を有する。
【0040】
適切で好ましいアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは、外部コーティングについて使用することもできる同じタイプであり、すなわち5質量%から60質量%のアニオン性基を有するモノマー含有量を有する(メタ)アクリレートコポリマー(Eudragit(登録商標)タイプL、S、L100−55、FS)である。多くの場合、トランスフェクション率の驚くべき増大は、
20質量%から33質量%のメチルアクリル酸および/またはアクリル酸、
5質量%から30質量%のアクリル酸メチル、
20質量%から40質量%のアクリル酸エチル、
10質量%から30質量%を超えるメタクリル酸ブチル、
および適切であれば、
ビニルコポリマー化することができる0質量%から10質量%の他のモノマーであって、
モノマーの割合が100質量%まで増大する他のモノマーからなるアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーを使用することによって達成することができ、
ISO 11357‐2、サブセクション3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度(中点温度Tmg)が、55℃から70℃であることを条件とする。
【0041】
上述されたコポリマーは、特に、
20質量%から33質量%、好ましくは25質量%から32質量%、特に好ましくは28質量%から31質量%のメタクリル酸またはアクリル酸であり、好ましくはメタクリル酸と、
5質量%から30質量%、好ましくは10質量%から28質量%、特に好ましくは15質量%から25質量%のアクリル酸メチルと、
20質量%から40質量%、好ましくは25質量%から35質量%、特に好ましくは18質量%から22質量%のアクリル酸エチルと、
10質量%から30質量%、好ましくは15質量%から25質量%、特に好ましくは18質量%から22質量%を超えるアクリル酸ブチルとの遊離基重合からなり、
モノマーの組成は、コポリマーのガラス転移温度が、55℃から70℃、好ましくは59℃から66℃、特に好ましくは60℃から65℃であるように選択される。
【0042】
腎臓または胆管を介した排出を改善するために、低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーが好ましく、たとえば、50000以下、5000から40000、10000から30000、または15000から25000のMwを有することが好ましい。
【0043】
分子量Mw(質量平均)は、たとえば、粘度計またはゲル排除クロマトグラフィ(GPC)によって決定することができる。粘度計の値(限界粘度数)は、23℃のクロロホルムまたはDMF(ジメチルホルムアミド)において決定することができ、10から20、好ましくは11から15nspec/c(cm/g)の範囲にあるべきであることが好ましい。粘度数は、たとえば、ISO 1628−6において規定されているように測定することができる。
【0044】
低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは、pH7.0もしくはわずかにそれより上の領域では、高濃度においてのみ細胞毒性作用を有し、または全く有さないが、pH6.5.より下では低濃度でもインビボで溶血性および膜溶解性の作用を有するpH感受性ポリマーである。ポリマーは、ナノ粒子において核酸作用物質とカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーの間の結合力変調剤として作用することができ、同時に、トランスフェクション率に対して有益な影響を有する。ナノ粒子において低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーの特性は、その後の不安定化または溶解によりエンドソーム内に摂取した後、特に核酸作用物質の細胞内放出に寄与することができる。
【0045】
ナノカプセル化のための低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマー
好ましい実施形態では、50000以下、5000から40000、10000から30000、または15000から25000のMwなど、低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーが、ナノカプセル化によってシェルとして、核酸作用物質およびカチオン性ポリマー、好ましくはカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子に加えられる。ナノ粒子の表面上において低分子量を有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーは、特に、その後の不安定化または溶解によりエンドソーム内に摂取した後、特に核酸作用物質の細胞内放出に寄与することができる。さらに、核酸作用物質は、内部において核酸の分解からより良好に保護され、それにより、より多くの作用物質が、対象部位に到達することができる。
【0046】
作用物質の割合
マトリックス層におけるナノ粒子の割合は、粘膜接着作用を有するポリマーの含有量の40質量%を超えない、特に0.001質量%から15質量%、または0.05質量%から5質量%であることが好ましい。ナノ粒子における核酸作用物質の割合は、たとえば、1質量%から50質量%、好ましくは2質量%から25質量%とすることができる。
【0047】
ナノ粒子の調製
ナノ粒子の調製は既知である。既知の方法は、コアセルベーション、複合体形成、エマルジョン沈殿、油中水エマルジョンからの有機溶媒含有物の蒸発であり、水溶性相においてナノ粒子を得る。Leongら(1998年)が、Journal of Controlled Release 53、183〜193ページ、「DNA polycation nanospheres as non−viral gene delivery vehicles」において、ナノ粒子の準備を記載している。Leongら(1998年)が、Journal of Controlled Release 53、183から193ページ、「DNA polycation nanospheres as non−viral gene delivery vehicles」において、ナノ粒子の調製を記載している。Royら(1999年)が、Nature Medicine、Vol.5、No.4、387から391ページ、「Oral gene delivery with chitosan−DNA nanoparticles generates immunologic problems in murine model of peanut allergy」おいて、ナノ粒子の調製を記載している。
【0048】
ナノカプセル化は、境界層重合法である(たとえば、Chouinard F.ら、Pharm Res.、1994年、June 11(6):869から874ページを参照されたい)。ナノカプセルは、水溶性媒体においてナノ粒子を不溶性複合体として分散させ、有機溶媒において分散を乳化することによって生成することができる。有機溶媒の分散は、たとえば、(メタ)アクリレートコポリマーを含有する。有機溶媒が蒸発する際、(メタ)アクリレートコポリマーは沈殿し、ナノ粒子の周りにシェルを形成する。ナノ粒子のカプセル化は有利であるが、その理由は、複合体化した核酸の追加の保護が、結腸腸細胞および肝臓による吸収プロセス中に保証されるからである。
【0049】
粘膜接着作用を有するポリマー
マトリックス層は、粘膜接着作用を有するポリマーをさらに含有する。粘膜接着作用を有する適切なポリマーは、特にキトサン(キトサンおよび誘導体、キトサン)、20質量%から45質量%のメチルメタクリレートおよび55質量%から80質量%のメタクリル酸からなる(メタ)アクリレートコポリマー、セルロース、特にNaカルボキシメチルセルロース(たとえば、Blanose(登録商標)またはMethocel(登録商標))などのメチルセルロースである。比較的わずかな薬理学的経験を有する他の物質に関して、(メタ)アクリレートコポリマーが好ましいが、その理由は、経口投与された医薬品において数10年にわたり安全に使用されてきたからである。
【0050】
粘膜接着作用を有するポリマーは、外部コーティングが溶け始めるpHに関して、+/−0.5、好ましくは+/−0.3のpH単位の範囲において、15分で10%から750%、好ましくは10%から250%、特に好ましくは10%から160%の吸水性を示すように選択される。
【0051】
粘膜接着特性の測定
粘膜接着特性を特徴付ける適切な測定方法が、HassanおよびGallo(1990年)に含まれている(Hassan E.E.およびGallo J.M.「A Simple Rheological Method for the in Vitro Assessment of Mucin−Polymer Bioadhesive Bond Strength」、Pharma Res.7(5)、491(1990年)を参照されたい)。この方法は、ポリマーを有するムチンの混合物の粘性(η、動的粘性または粘性係数)が、個々の構成要素の粘性の全体とは異なるという想定に基づく。適用される関係は、ηポリマーとムチンとの混合物=ηムチン+ηポリマー+ηであり、ηは差を表す。より高いηは、より優れた粘膜接着特性を意味する。個々の構成要素は、回転粘度計を使用して粘性について当初測定された。粘膜接着ポリマーの0.5%強度(W/W)水溶液および豚の胃粘素の15%強度溶液が使用される。粘膜接着特性ηを決定するために、ムチンおよびポリマーは単独で測定され、述べられた濃度で混合される。
【0052】
粘膜接着作用を有するポリマーは、外部コーティングが溶け始めるpHに関して、+/‐0.5、好ましくは+/−0.3pH単位の範囲において、150から1000、好ましくは150から600mPa・sの粘性ηとして測定された粘膜接着作用を示すように選択される。
【0053】
水和および吸水
ポリマーの水和は、水を吸収するポリマーの親和力に基づく。ポリマーは、この水の摂取により膨潤する。これは、ポリマーの水と周囲媒質の水の化学的電位の間の不均衡に関連する。水は、内相と外相の間で平衡に到達するまで、ポリマーの浸透圧のために吸収される。したがって、ポリマーは、100%水和される。その場合、低平均分子量を有するポリマーは、溶液の形態にある。より高い分子量を有するポリマーまたは架橋ポリマーで、ゲルが生成される。均衡が設定されるまでの水の吸収は、たとえば、ポリマー質量の1000%に対応して、最高で固有質量の10倍に達する可能性がある。
【0054】
吸水性の割合の測定
吸水性の割合の測定は、当業者には周知である。適切な方法が、たとえば、Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie/Rudolf Voigt、Basel:Verlag Chemie、第5完全改定版、1984年、151ページ、7.7.6under「Aufsaugvermogen」に記載されている。この方法は、いわゆるインシュリン装置を使用し、ガラス吸引フィルタ漏斗が、管によって目盛り付きピペットに接続される。ピペットは、ガラス・フリットと同じレベルにあるように、正確に水平に取り付けられる。100%の吸水性は、この場合は、15分における粘膜接着作用を有するポリマーの1gあたりの1mlの水の吸水性として確定される。
【0055】
比較的迅速な水の摂取または水和、ならびに高程度の水和は、外部コーティングが溶け始めるのと同時に、作用物質を迅速に保護すること、および腸粘膜に直接結合することを保証する。粘膜接着マトリックスにおける作用物質の結合は、作用物質が腸粘膜から体内に直接通過することができるように、ごく小さくあるべきである。
【0056】
マトリックスpHの制御
粘膜接着作用は、多くの粘膜接着ポリマーについてpH依存性である。マトリックスのpHは、酸、塩基、または緩衝系を追加することにより特定的に制御することができる。内部マトリックスは、粘膜接着作用を有するポリマーとして、酢酸塩緩衝系と共に使用されるキトサンを含有することが可能である。たとえばpH5.0から5.5に調節された酢酸塩/Na酢酸塩緩衝剤が、マトリックスにおいて添加剤として存在する、またはマトリックスが上に加えられているコアに加えることができる。このようにして、pH6.0から8.0.など、より高いpH値において溶け始める膜コーティングと組み合わせて、キトサンを使用することも可能である。高い周囲pHにもかかわらず、低いpHが、マトリックスのミクロ環境において維持される。したがって、そうでない場合には粘膜接着特性を有さない、またはこの程度には有さないpH範囲において、ポリマーの粘膜接着作用を利用することが可能である。これは、pH最適値がより高いpH範囲にあるヌクレアーゼに対してある保護を達成することができるという利点を有する。同じ原理は、塩基を追加し、より低いpH値で溶ける膜コーティングと組み合わせることによって、マトリックスのpH値を上げることによっても、反対の方式で同じ原理を適用することができる。
【0057】
適切な粘膜接着ポリマーの選択の実施例
適切な粘膜接着ポリマーの選択の実施例は、粘膜接着特性および吸水性能力に基づく。ポリマーは、それぞれのpH範囲において15分で、少なくともη=150から1000mPa・sの粘膜接着作用および10%から750%の吸水性を有するべきである。以下の表は、実施例の方法としてリストを与える。
【0058】
キトサンは、マトリックスpH領域が、たとえば緩衝系の補助で、約pH5.5の領域に調節されている限り、たとえば、pH5.5(十二指腸)の周囲pH領域または他の周囲pH領域(回腸または結腸)において使用するのに適している。
【0059】
表に列挙された(メタ)アクリレートコポリマーは、約pH5.5.のpH領域について、よりpH7.2のpH領域について適している。
【0060】
アルギン酸は、pH7.2についてではなく、約pH5.5のpH領域に適している。
【0061】
Naカルボキシメチルセルロースおよび架橋ポリアクリル酸は、5.5から7.2の広いpH範囲にわたって適している。
【0062】
【表1】

【0063】
*=30質量%のメタクリル酸メチルおよび70質量%のメタアクリル酸からなる(メタ)アクリレートコポリマー
アニオン性(メタ)アクリレートコポリマーの外部コーティング
アニオン性(メタ)ポリマーまたはコポリマーの外部コーティングは、内部マトリックス層を胃液から保護するために、胃液に対して耐性コーティングとして作用する。外部コーティングは、コーティングが溶け始める腸のセクション(十二指腸、空腸、回腸、または結腸)にコーティングが到達する時間まで、作用物質を核酸分解酵素から保護するようにさらに作用する。外部コーティングは、この場合、いわゆる「胃腸対象化」、すなわち優勢であるpHによって決定される腸のセクションにおける内部マトリックス層の対象放出について作用する。内部マトリックス層への送達に障害がないように、外部コーティングの(メタ)アクリレートコポリマーは、内部マトリックス層の作用物質または粘膜接着ポリマーと最小限またはごくわずかな相互作用を提示するべきである。
【0064】
適切なアニオン性ポリマーおよびコポリマーは、グリコール酸セルロース(Duodcell(登録商標)、酢酸フタル酸セルロース(CAP、酢酸セルロース、PhEur、酢酸フタル酸セルロース、NF、Aquateric(登録商標)、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、酢酸トリメトリット酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP、HP50、HP55)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS−LF、−MF、−HF)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP、Sureteric(登録商標)、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー(PVAc、Kollidon(登録商標)VA64)、酢酸ビニル:クロトン酸9:1コポリマー(VAC:CRA、Kollicoat(登録商標)VAC)、および/またはシェラックである。述べられたポリマーおよびコポリマーは、多くの場合、pH特有の溶解を達成することが可能であるように、完全に申し分のない方式で調合することができる。
【0065】
外部被膜コーティングは、薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤を有して随意選択で調合することが可能である5質量%から60質量%のアニオン性基を有するモノマーの含有量を有する(メタ)アクリレートコポリマーから本質的になることが特に好ましい。最初に述べられたポリマーと比較して、述べられたアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーにより、本発明の範囲内において、多くの場合、溶解pHのpH特有の調節がさらにより正確かつ再現的に調節されることが可能になる。取扱いおよび適用も、一般的には、より精緻ではないと見なされる。
【0066】
外部コーティングの(メタ)アクリレートコポリマーは、アクリル酸またはメタクリル酸の遊離基重合C−からC−アルキルエステルの40質量%から95質量%、好ましくは45質量%から90質量%、特に30質量%からなることが好ましく、アニオン性基を有する(メタ)アクリレートモノマーの5質量%から60質量%、好ましくは8質量%から40質量%、特に20質量%から35質量%を含有することが可能である。
【0067】
述べられた割合は、通常、100質量%まで増大する。しかし、これにより本質的な特性を阻害または変更せずに、メタクリル酸ヒドロキシエチルまたはアクリル酸ヒドロキシエチルなど、ビニル共重合することができる他のモニマーの0質量%から10質量%、たとえば1質量%から5質量%の領域において少量が存在することが可能である。
【0068】
アクリル酸またはメタクリル酸のC−からC−アルキルエステルは、特に、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルである。
【0069】
アニオン性基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、たとえば、アクリル酸とすることが可能であるが、メタクリル酸であることが好ましい。
【0070】
また、40質量%から60質量%のメタクリル酸、および60質量%から40質量%のメタクリル酸メチルまたは60質量%から40質量%のアクリル酸エチルからなるアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーも適切である(Eudragit(登録商標)LまたはEudragit(登録商標)L100−55のタイプ)。このタイプのガラス転移温度(ISO 11357−2、ポイント3.3.3)は、105℃から160℃の範囲にあり、分子量Mwは、100000から300000である(分子量Mwは、たとえば、ゲル浸透クロマトグラフィによって、または散乱光方法によって決定することができる(たとえば、H.F.Markら、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、Vol.10、1ページ以降、J.Wiley、1989年を参照されたい))。
【0071】
Eudragit(登録商標)Lは、50質量%のメタクリル酸メチルおよび50質量%のメタクリル酸のコポリマーである。この(メタ)アクリレートコポリマーは、約pH6.0から6.5のpH領域(空腸)における溶解に特に適している。
【0072】
Eudragit(登録商標)L100−55は、50質量%のアクリル酸エチルおよび50質量%のメタクリル酸のコポリマーである。Eudragit(登録商標)L 30D−55は、30質量%のEudragite(登録商標)L 100−55を含有する分散液である。この(メタ)アクリレートコポリマーは、約pH5.5から6.0のpH領域(十二指腸)における溶解に特に適している。
【0073】
同様に、20質量%から40質量%のメタクリル酸および80質量%から60質量%のメタクリル酸メチルのアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーも適している(Eudragite(登録商標)Sタイプ)。この(メタ)アクリレートコポリマーは、約pH6.5から7.0のpH領域(空腸または回腸)における溶解に特に適している。このタイプのガラス転移温度は、140℃から180℃の範囲にあり、分子量Mwは、100000から150000である。
【0074】
特に適切な(メタ)アクリレートコポリマーは、10質量%から30質量%のメタクリル酸メチル、50質量%から70質量%のアクリル酸メチル、および5質量%から15質量%のメタクリル酸からなるものである。
【0075】
Eudragit(登録商標)FSタイプは、25質量%のメタクリル酸メチル、65質量%のアクリル酸メチル、および10質量%のメタクリル酸のコポリマーである。Eudragit(登録商標)FS 30Dは、30質量%のFSタイプのコポリマーを含有する分散液である。この(メタ)アクリレートコポリマーは、約pH7.0から7.8のpH領域(回腸または結腸)における溶解に特に適している。
【0076】
20質量%から34質量%のメタクリル酸および/またはアクリル酸、
20質量%から69質量%のアクリル酸メチル、
0質量%から40質量%のアクリル酸エチル、および/または適切であれば、
ビニル共重合することができる0質量%から10質量%の他のモノマーからなるコポリマーがさらに適切であり、
ISO 11357−2、サブセクション3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度が60℃を超えないことを条件とする。この(メタ)アクリレートコポリマーは、ペレットをタブレットに圧縮するための破壊特性における良好な延びのために、特に適している。
【0077】
20質量%から33質量%のメタクリル酸および/またはアクリル酸、
5質量%から30質量%のアクリル酸メチル、
20質量%から40質量%のアクリル酸エチル、
10質量%から30質量%を超えるメタクリル酸ブチル、および適切であれば、
ビニル共重合することができる0質量%から10質量%の他のモノマーからなり、
モノマーの割合が100質量%まで増大する、コポリマーがさらに適切であり、
ISO 11357−2、ポイント3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度が55℃から70℃であることを条件とする。このタイプのコポリマーは、ペレットをタブレットに圧縮するための良好な機械的特性のために、特に適している。
【0078】
上述されたコポリマーは、特に、
20質量%から33質量%、好ましくは25質量%から32質量%、特に好ましくは28質量%から31質量%のメタクリル酸またはアクリル酸、好ましくはメタクリル酸と、
5質量%から30質量%、好ましくは10質量%から28質量%、特に好ましくは15質量%から25質量%のアクリル酸メチルと、
20質量%から40質量%、好ましくは25質量%から35質量%、特に好ましくは18質量%から22質量%のアクリル酸エチルと、
10質量%から30質量%、好ましくは15質量%から25質量%、特に好ましく18質量%から22質量%を超えるメタクリル酸ブチルとの遊離基重合単位からなり、
モノマー組成物は、コポリマーのガラス転移温度が、55℃から70℃、好ましくは59℃から66℃、特に好ましくは60℃から65℃であるように選択される。
【0079】
また、特定の放出プロファイルまたは放出部位を調節するために、述べられたコポリマーの混合物を使用することも可能である。
【0080】
ガラス転移温度は、これに関して、ISO 11357−2、ポイント3.3.3による特に中点温度Tmgを意味する。測定は、可塑剤を追加せずに、100ppm未満の残留モノマー含有量(REMO)、10℃/minの加熱率、窒素大気下において行われる。
【0081】
コポリマーは、上述された量の範囲において、モノマーの90質量%、95質量%、または99質量%から100質量%のメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびメタクリル酸ブチルから本質的から排他的になることが好ましい。
【0082】
しかし、これにより本質的な特性を必ずしも損なわずに、たとえばメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ビニルピロリドン、マロイン酸ビニル、スチレン、ビニルアルコール、酢酸ビニルおよび/またはその誘導体など、ビニル重合することができる他のモノマーの0質量%から10質量%、たとえば1質量%から5質量%の範囲において少量がさらに存在することが可能である。
【0083】
コポリマーは、遊離基バルク、溶液、ビーズ、またはエマルジョン重合によって、本質的に既知の方式で得られる。コポリマーは、処理の前に、適切な研摩、乾燥、または噴霧の方法によって、本発明の粒子サイズ範囲にされなければならない。これは、押し出されて冷却されたペレットを単に粉砕する、または高温切断することによって行うことができる。
【0084】
粉末の使用は、他の粉末または液体との混合物について特に有利である可能性がある。粉末を生成するのに適切な装置は、当業者には周知であり、空気ジェットミル、ピン止めディスクミル、区画ミルなどがある。適切であれば、適切なふるい工程を含むことが可能である。産業用の大量に適切なミルは、たとえば、約6バールのゲージ圧力で動作する対向ジェット・ミル(Multi No.4200)である。
【0085】
コポリマーの調製
述べられたすべての(メタ)アクリレートコポリマーは、ブロック、ビーズ、またはエマルジョン重合およびポリマーの放出によって、重合開始剤および分子量調節剤が存在する状態で、モノマーの遊離基重合によって得ることができる(たとえば、EP 0704207A2、EP 0704208A2、またはWO 03/092732を参照されたい)。(メタ)アクリレートコポリマーは、たとえばDE‐C 2135073に記載されている方法によって、好ましくはアニオン性乳化剤が存在する状態で、水溶性相におけるエマルジョン重合によって本質的に既知の方式で調製することができる。原理的にやはり適切である他の調製方法は、基移入重合(GTP)または原子移入遊離基重合(ATRP)である(たとえばMatyjaszewski,K.ら、Chem.Rev.2001年、101、2921から2990ページを参照されたい)。結果として得られるポリマー構造は、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0086】
2質量%から15質量%の分子量調整剤、0.1質量%から2質量%の範囲の乳化剤含有量、重合開始剤、0.02質量%から0.4質量%の範囲の重合開始剤の量が存在し、および65℃から90℃の温度におけるエマルジョン重合が好ましい。たとえば0.1質量%から0.5質量%のラウリル硫酸ナトリウム、およびたとえば0.4質量%から1.5質量%のポリオキシエチレン−20ソルビタンモノオレエートからなる乳化剤混合物が好ましい。特に適切な開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、またはペルオキソ二硫酸アンモニウムである。このようにして、たとえば、20質量%から40質量%の固体含有量を有する分散を調製し、噴霧乾燥によって、または押出し器において水を凝固させて排除することによって、コポリマーを隔離することが可能である。ポリマーは、その後好ましくは有機溶媒において溶解し、水に対して多重透析することによって精製され、好ましくは凍結乾燥される。
【0087】
重合開始剤について述べることが可能である例は、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)または2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物、たとえば第3級アミンと過酸化物または好ましくは過酸化物の組合わせなどの酸化還元系である(これに関連して、たとえば、H.Rauch−Puntigam、Th.Volker、「Acryl− und Methacrylverbindungen」、Springer、Heidelberg、1967年、またはKirk−Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、Vol.1、386ページ以降、J.Wiley、ニューヨーク、1978年を参照されたい)。適切な酸化物重合開始剤の例は、過酸化ジラウロイル、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペリソノナノエート、ジシクロヘキシルペロキシジカーボネート、過酸化ジベンゾイル、または2,2−ビス(t−ブチルペロキシ)ブタンである。
【0088】
重合はまた、重合中に異なる重合温度において遊離基の流れを一定に維持するために、過酸化ジラウロイルおよび2,2−ビス(t−ブチルペロキシ)ブタンなど、半減期が異なる重合開始剤で実施することができることも好ましい。使用される重合開始剤の量は、モノマー混合物に基づいて、一般的に0.01質量%から最大で1質量%である。
【0089】
分子量Mwは、分子量調整剤が存在する状態で、モノマー混合物を重合することによって調節することができる。適切な分子量調整剤は、特に、たとえば、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、または2−エチルヘキシルチオグリコレートなどのメルカプタンであり、一般的に使用される分子量調整剤は、モノマー混合物に基づいて、0.05質量%から15質量%の量、好ましくはモノマー混合物に基づいて0.1質量%から10質量%の量、特に好ましくは2質量%から12質量%の量である(たとえば、H.Rauch−Puntigam、Th.Volker、「Acryl− und Methacrylverbindungen」、Springer、Heidelberg、1967年;Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie、Vol.XIV/1、66ページ、Georg Thieme、Heidelberg、1961年、またはKirk−Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、Vol.1、296ページ以降、J.Wiley、ニューヨーク、1978年を参照されたい)。使用される分子量調整剤は、n−ドデシルメルカプタンまたは2−エチルヘキシルチオグリコレートである。エチルヘキシルチオグリコレートは、(メタ)アクリレートコポリマーの疎水性に影響を与えることができるという利点を有するが、その理由は、調整剤が末端において分子に組み込まれているからである。使用される好ましい量は、5質量%から15質量%のドデシルメルカプタン、または2質量%から10質量%の2−エチルヘキシルチオグリコレートである。
【0090】
有機溶液
述べられた(メタ)アクリレートコポリマーは、たとえば10質量%から30質量%の濃度において、有機溶液の形態で提供することができる。使用することが可能である溶媒は、たとえば、アセトン、イソプロパノール、またはエタノール、あるいはその混合物であり、これらは、適切であれば、約10質量%までの割合で水を含有することが可能である。しかし、水溶性分散が好ましい。
【0091】
分散
述べられた(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは10質量%から50質量%、特に20質量%から40質量%の強度の水溶性分散の形態で、エマルジョンポリマーとして生成および使用することができる。30質量%の固体含有量が、商用形態として好ましい。処理のためにメタクリル酸単位の部分中和を分散させることができる。しかし、たとえば、コーティング組成分散を安定させる、または厚くすることが望ましい場合、最高で5mol%または10mol%の程度まで可能である。ラテックス粒子の質量平均サイズは、通常、40nmから100nm、好ましくは50nmから70nmであり、それにより、処理に有益な1000mPa・sより小さい粘性を保証する。
【0092】
10mol%から50mol%などのより高い中和度、または完全な中和では、コポリマーを溶解状態に変換することが可能である。
【0093】
アニオン性コポリマーの溶液を調製するために、酸基を部分的にまたは完全に中和することが通常必要である。アニオン性コポリマーは、たとえば、1質量%から40質量%の最終濃度において、水の中に徐々に撹拌し、同時に、たとえばNaOH、KOH、水酸化アンモニウムなどの塩基物質、またはたとえばトリエタノールアミンなどの有機塩基を追加することによって、部分的にまたは完全に中和することが可能である。また、NaOHなどの塩基が(部分)中和のために調製中に追加されているコポリマーの粉末を使用することも可能であり、それにより、粉末は、すでに(部分的に)中和されているポリマーである。溶液のpHは、4から約7など、通常4より大きい。
【0094】
分散は、たとえば、本質的に既知の方式で噴霧乾燥または凍結乾燥し、再分散可能な粉末の形態で提供することもできる(たとえば、EP−A 0262326を参照されたい)。代替方法は、凍結乾燥または凝固して、押出し器の水から圧搾し、その後顆粒化する(たとえば、EP−A 0683028を参照されたい)。
【0095】
驚くべきことに、噴霧または凍結乾燥され、再分散された粉末からのコポリマー分散は、剪断安定性の向上を示すことが判明した。これは、噴霧応用分野の場合に特に有利である。この利点は、分散に存在するコポリマーが、2mol%から10mol%の程度まで部分的に中和されているとき、特に明らかである。(コポリマーに存在する酸基に基づく)。NaOHを追加することによる部分中和が、この目的には好ましい。アニオン性乳化剤が、0.1質量%から2質量%の量で存在することが好ましい。ラウリル硫酸ナトリウムが、乳化剤として特に好ましい。
【0096】
層の厚さ
外部コーティングの層の厚さは、2μmから200μm、好ましくは50μmから120μmの範囲にあることが好ましい。
【0097】
多粒子剤形の生成
本発明は、
a)既知の方式で助剤を有する核酸作用物質をナノ粒子に調合することと、
b)ナノ粒子の形態の核酸作用物質、および粘膜接着作用を有するポリマーを含有する内部マトリックス層、ならびに適切であれば他の薬剤的に一般的な助剤の噴霧を適用することによってコアの上に、またはコア有さずに球状集塊(rotagglomeration)、沈殿、または噴霧の方法によって生成することと、その後、
c)薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤を有して随意選択で調合することが可能であるアニオン性ポリマーから本質的になる外部被膜コーティングの噴霧の適用によって加え、それにより、作用物質を含有する包皮ペレットが得られることと、
d)結果として得られるペレットを薬剤的に一般的な助剤によって、および本質的に既知の方式で、多粒子剤形に処理する、特に、包含されるペレットが胃のpH範囲において放出されるように調合されるペレット包含タブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェット、または乾燥粉末の形態に処理することとによって、多粒子剤形を生成する方法にさらに関する。
【0098】
前ペレットおよびペレットの生成
ペレット化は、作用物質フリービーズ(ノンパレイユ(nonpareilles))上で行うことができ、またはコアフリーペレットを生成することができる。
【0099】
第1に、作用物質包含ナノ粒子が生成される。
【0100】
その後、内部マトリックス層が、コアを有してまたはコアを有さずに生成される。これはまだコーティングされていないので、丸い層は、前ペレット(ペレットのコア)と呼ぶことができる。
【0101】
流動床方法によって、溶媒または懸濁剤が蒸発することで、核酸作用物質を有するナノ粒子を含有する粘膜接着ポリマーの溶液または懸濁液をプラセボ・ペレットまたは他の適切な担体材料に加えることが可能である。生成方法に、乾燥工程が続くことができる。
【0102】
核酸作用物質は、粘膜接着作用を有するポリマーを有するナノ粒子の形態で、有機溶媒または水に導入されて混合される。混合物の十分な噴霧性を保証するために、低粘性の混合物を調合することが一般に必要である。この目的では、1質量%から最大で10質量%、好ましくは2質量%から5質量%など、比較的低濃度の粘膜接着作用を有するポリマーを使用することが有益である可能性がある。0.1質量%から20質量%,好ましくは0.5質量%から10質量%の濃度で、Tweenなどの界面活性剤を追加することが、表面張力を低減するためにさらに有利である可能性がある。
【0103】
作用物質の他に、他の薬剤助剤が存在することが可能である:セルロースおよびその誘導体などの結合剤、ポリビニルピロリドン(PVP),湿潤、崩壊促進剤、潤滑崩壊剤、(メタ)アクリレート、スターチおよびその誘導体、糖、可溶化剤、またはその他。
【0104】
適切な加える方法が、たとえば、Bauer、Lehmann、Osterwald、Rothgang、「Uberzogene Arzneiformen」Wissenschaftliche Verlags−gesellschaft mbH Stuttgart、第7章、165から196ページにおいて開示されている。
【0105】
詳細が、テキストブックから当業者にさらに開示されている。たとえば、
Voigt,R.(1984年):Lehrbuch der pharmazeutischen Technologie;Verlag Chemie Weinheim−Beerfield Beach/Florida−Basel、
Sucker,H.、Fuchs,P.、Speiser,P.:Pharmazeutische Technologie、Georg Thieme Verlag Stuttgart(1991年)、特に第15章および第16章、626から642ページ、
Gennaro,A.,R.(Editor)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton Pennsylvania(1985年)、第88章、1567から1573ページ、
List,P.H.(1982年):Arzneiformenlehre、Wissen−schaftliche Verlagsgesellschaft mbH、Stuttgart.
を参照されたい。
【0106】
内部マトリックは、不活性コアの補助を有さずに生成することもできる(ノンパレイユ)。内部マトリックスの成分は、この場合、球状集塊、沈殿、または噴霧方法などの方法、特に超音波流動化噴霧方法によって、50μmから1000μmなどの確定サイズの未コーティング・ペレット(前ペレット)に丸くすることが可能である。これは、コア全体の容積が作用物質を装填するのに利用可能であるという利点を有する。したがって、作用物質の装填は、不活性コアを有する実施形態と比較して、さらに増大させることができる。
【0107】
内部マトリックス・コアの(または前ペレットの)生成後、これらは、好ましくは噴霧方法において、外部コーティング提供され、完成ペレットとなる。ペレットは、有機溶媒から、または好ましくは水溶性懸濁液から噴霧を適用することによって生成される。この場合、一様なポアフリーコーティングが生成されることが、実施について決定的である。
【0108】
トップコート
ペレットは、顔料コーティングをさらに設けることができるが、顔料コーティングは、溶解pHに影響を与えてはならない。適切な例は、顔料ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または水において可溶であるもしくは水において迅速に崩壊する他のポリマーである。
【0109】
薬剤的に一般的な助剤
生成中に、一般的な助剤または添加剤を本発明の調合に追加することができる。当然、使用されるすべての物質が、患者にとって危険ではなく、毒性学的に許容可能であり、特に医薬品において使用可能であることが常に必要である。
【0110】
医薬品コーティングまたは層における一般的な添加剤の使用される量および使用法は、当業者には周知である。一般的な添加剤の可能な例は、可塑剤、放出剤、顔料、安定剤、酸化防止剤、ポア形成剤、浸透促進剤、光沢剤、芳香族化剤、界面活性剤、潤滑剤、または着香剤である。これらは、処理補助剤として作用し、確実で再現性の生成方法および良好な長期貯蔵安定性を保証することを意図し、または、剤形について追加の有利な特性を達成する。これらは、処理の前にポリマー調製に追加され、コーティングの浸透性に影響を与えることが可能であり、適切であれば、追加の制御パラメータとして使用することが可能である。
【0111】
放出剤
放出剤は、通常、親油性を有し、通常、噴霧懸濁液に追加される。放出剤は、膜コーティング中にコアが凝集するのを防止する。タルク、ステアリン酸Mgまたはステアリン酸Ca、研摩シリカ、カオリン、あるいは3と8の間のHLBを有する非イオン乳化剤が使用されることが好ましい。本発明のコーティング剤および結合剤の放出剤に使用される通常の量は、コポリマー基づいて0.5質量%から100質量%である。
【0112】
顔料
コーティング剤を有する不適合の顔料は、特に、(メタ)アクリレートコポリマーの乾燥質量に基づいて、たとえば20質量%から400質量%の通常使用量において、撹拌などによって(メタ)アクリレートコポリマー分散に直接追加される場合、不均一性または同様の望ましくない効果の徴候まで分散を不安定にし、凝集させる顔料である。使用される顔料は、さらに無毒であり、薬剤の目的に適している。これに関して、たとえば、Deutsche Forschungsgemeinschaft、Farbstoffe fur Lebensmittel、Harald Boldt Verlag KG、Boppard(1978年);Deutsche Lebensmittelrundschau 74、第4、156ページ(1978年);Arzneimittelfarbstoffverordnung AmFarbV、25.08.1980年も参照されたい。
【0113】
コーティング剤を有する不適合の顔料は、たとえば、アルミナ顔料である可能性がある。不適合顔料の例は、オレンジ・イエロー、コチニール・レッド・レーキ、アルミナまたはアゾ染料に基づく着色顔料、スルホン酸染料、オレンジ・イエローS(E110、C.I.15985、FD&C Yellow6)、インドゴ・カルミン(E132、C.I.73015、FD&C Blue2)、タルトラジン(E102、C.I.19140、FD&C Yellow5),ポンソー4R(E125、C.I.16255、FD&C Cochineal Red A)、キノリン・イエロー(E104、C.I.47005、FD&C Yellow10)、エリスロシン(E127、C.I.45430、FD&C Red3)、アゾルビン(E122、C.I.14720、FD&C Carmoisine)、アマランス(E123、C.I.16185、FD&C Red 2)、酸ブリリアント・グリーン(E142、C.I.44090、FD&CGreenS)である。
【0114】
顔料について示されるE数は、EU番号に関係する。これに関して、「Deutsche Forschungsgemeinschaft、Farbstoffe、fur Lebensmittel、Harald Boldt Verlag KG、Boppard(1978年);Deutsche Lebensmittelrundschau 74、第4、156ページ(1978年);Arzneimittelfarbstoffverordnung AmFarbV、25.08.1980年も参照されたい。FD&C数は、米国食品医薬品局、食品安全および応用栄養センター、化粧品および色局、連邦規制コード−タイトル21色添加規制パート82、承認された暫定的に列挙されたおよび仕様(CFR21パート82)(U.S.Food and Drug Administration、Center for Food Safety and Applied Nutrition、Office of Cosmetics and Colors:Code of Federal Regulations −Title 21 Color Additive Regulations Part 82、Listing of Certified Provisionally Listed Colors and Specifications(CFR 21 Part 82)に記載されている、米国食品医薬品(FDA)による食品、医薬品、および化粧品の承認に関係する。
【0115】
可塑剤
他の添加剤は、可塑剤とすることも可能である。一般的な量は、0質量%と50質量%の間、好ましくは2質量%から20質量%、特に好ましくは5質量%から10質量%である。
【0116】
可塑剤は、タイプ(親油性または親水性)および追加される量に応じて、ポリマー層の機能に影響を与える可能性がある。可塑剤は、ポリマーと物理的に相互作用することにより、追加される量に応じて、ガラス転移温度の低下を達成し、膜の形成を促進する。適切な物質は、通常、100と20000の間の分子量を有し、水酸基、エステル基、またはアミノ基など、1つまたは複数の親水基を分子において有する。
【0117】
適切な可塑剤の例は、クエン酸アルキル、グリセロールエステル、フタル酸アルキル、セバシン酸アルキル、ショ糖エステル、ソルビタンエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、およびポリエチレングリコール200から12000である。好ましい可塑剤は、クエン酸トリエチル(TEC)およびクエン酸アセチルトリエチル(ATEC)である。さらに、クエン酸塩、フラル酸塩、セバシン酸塩、またはカストール油など、室温で通常液体であるエステルが述べられるべきである。クエン酸およびサバシン酸のエステルが使用されることが好ましい。
【0118】
可塑剤を調合に追加することは、直接、水溶性溶液において、または混合物を熱処理した後、既知の方式で行うことができる。また、可塑剤の混合物を使用することも可能である。
【0119】
多粒子剤形の生成
作用物質包含コーティング・ペレットは、薬剤的に一般的な助剤によって、本質的に既知の方式で、多粒子剤形、特にペレット包含タブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェット、または乾燥粉末に処理することができ、これらは、包含されているペレットが胃のpH範囲において放出されるように調合される。調製は、多粒子剤形が高投与量信頼性を提示するので、ペレットが腸管腔において良好に分布するという利点を提供する。本発明の多粒子剤形はまた、異なる作用物質および/または異なるペレット構造を有する異なるペレット・タイプをもさらに有することが可能である。
【0120】
圧縮タブレット
作用物質包含粒子と共に薬剤的に一般的な結合剤を圧縮することによる多粒子剤形の生成は、たとえば、Beckertら(1996年)、「Compression of enteric−coated pellets to disintegrating tablets」、International Journal of Pharmaceutics 143、13から23ページ、およびWO 96/01624に記載されている。
【0121】
作用物質包含ペレットの膜コーティングは、通常、流動床装置において加えられる。膜形成剤が、通常、適切な方法によって、可塑剤および放出剤と混合される。この場合、膜形成剤が溶液または懸濁液の形態にあることが可能である。膜形成の助剤は、同様に、溶解または懸濁することが可能である。有機または水溶性の溶媒または分散剤を使用することができる。分散を安定させるために、安定剤をさらに使用することができる(例:Tween80または適切な乳化剤もしくは安定剤)。
【0122】
放出剤の例は、モノステアリン酸グリセロールまたは他の適切な脂肪酸誘導体、シリカ誘導体、タルクなどである。可塑剤の例は、プロピレングリコール、フタル酸塩、ポリエチレングリコール、セバシン酸、またはクエン酸、および文献において述べられた他の物質である。
【0123】
作用物質包含層と可溶性コポリマー層の間に分離層を加えることができ、分離層は、相互作用を防ぐ目的で、作用物質とコーティング材料を分離するように作用する。この層は、不活性膜形成剤(たとえばHPMC、HPC、もしくは(メタ)アクリル酸コポリマー)、またはたとえばタルクもしくは他の適切な薬剤物質からなることが可能である。同様に、膜形成剤とタルクまたは同様の物質の組合わせを使用することが可能である。また、部分的または完全に中和された(メタ)アクリレートコポリマー分散からなる分離層を加えることも可能である。
【0124】
分離層はまた、下にあるマトリックス層においてのように、同じまたは異なる粘膜接着ポリマーからなることも可能である。作用物質または粘膜接着ポリマーと膜形成(メタ)アクリレートコポリマー層との可能な相互作用または不適合は、このようにして相殺することができる。
【0125】
コーティング粒子からなるタブレットを生成するための混合物は、タブレット化に適切な結合剤とペレットを混合し、必要であれば崩壊促進物質を追加し、および必要であれば潤滑剤を追加することによって調製される。混合は、適切な機械において行うことができる。不適切なミキサは、すき刃ミキサなど、コーティング粒子を損傷することになるミキサである。適切な短い崩壊時間を達成するために、助剤を特定の配列でコーティング粒子に追加することが必要である可能性がある。コーティング粒子を潤滑剤または離型剤のステアリン酸マグネシウムと事前に混合することによって、表面を疎水性にし、それにより接着を回避することが可能である。
【0126】
タブレット化に適切な混合物は、通常、Kollidon CLなど、3質量%から15質量%の崩壊補助剤、ならびにステアリン酸マグネシウムなどの0.1質量%から1質量%の潤滑剤および離型剤を含有する。結合剤の割合は、コーティング粒子の必要な割合によって決定される。
【0127】
通常の結合剤の例は、Cellactose(登録商標)、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、Ludipress(登録商標)、ラクトース、または他の適切な糖、硫酸カルシウム、もしくはスターチ誘導体である。低バルク密度の物質が好ましい。
【0128】
通常の崩壊補助剤(崩壊剤)は、架橋スターチ誘導体またはセルロース誘導体、および架橋ポリビニルピロリドンである。セルロース誘導体も同様に適切である。適切な結合剤を選択することにより、崩壊補助剤を不要にすることが可能である。
【0129】
通常の潤滑剤および離型剤は、ステアリン酸マグネシウムまたは脂肪酸の他の適切な塩、あるいはこの目的のために文献において詳述されている物質である(たとえば、ラウリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルクなど)。適切な機械(たとえば、外部潤滑を有するタブレット・プレス)または適切な調合の使用の際に、混合物における潤滑剤および離型剤の使用を不要にすることが可能である。
【0130】
適切であれば、流れを改善するために、補助剤を混合物に追加することが可能である(たとえば、コロイドシリカ誘導体、タルクなど)。
【0131】
タブレット化は、通常のタブレット・プレス、偏心プレス、または回転タブレット・プレス上で行うことができ、圧縮力は5kNから40kN、好ましくは10kNから20kNである。タブレット・プレスは、外部潤滑用系を装備することができる。インペラ・パドルによるダイの充填を回避するダイ充填用の特別な系が、適切であれば使用される。
【0132】
他の多粒子剤形
圧縮タブレットまたはミニタブレットの代替として、作用物質包含コーティング・ペレットは、あらゆる他の経口投与多粒子剤形に処理されることも可能である。コーティングされたペレットは、たとえば、ゼラチン・カプセルなどのカプセルに実装することができ、またはサシェットもしくは乾燥粉末に調合することができる。
【0133】
本発明の有利な効果
本発明の剤形は、核酸作用物質の対象化した効率的な放出に適している。剤形は、高投与量信頼性を示し、胃および腸管腔において十分に分布する。包含されている核酸作用物質は、さらに、物理的または核酸分解的な不活性化から実質的に保護され、高い割合の作用物質を身体によって摂取することができるように、確定作用部位において放出することができる。したがって、剤形は、失われる作用物質がごくわずかなので、少ない作用物質で間に合う。副作用の危険性は、対象化送達によって全体的に低減される。作用部位は、治療目的に応じて変動的に調節することができる。したがって、作用物質摂取のタイミングは、よりよく制御することができる。剤形は経口使用についてなので、他の投与形と比較して、患者によって全体的により良好に受け取られる(患者服薬遵守)。したがって、大量の核酸作用物質を経口使用に利用可能とすることができる。投与の危険性は、特に非経口投与よりしばしば低い。投与のコストも、低く維持することができるが、その理由は、投与のための熟練スタッフを必要としないからである。
【0134】
親油性マトリックス
本発明の特別な態様は、作用物質が、約37℃、好ましくは約45℃、特に好ましくは約55℃の融点を有する親油性マトリックスにナノ粒子の形態で組み込まれるとき、出現し、作用物質包含親油性マトリックスは、粘膜接着作用を有するポリマーからなるマトリックスに組み込まれる。親油性マトリックスの調合の目的は、作用物質、好ましくは控えめにまたはわずかに可溶性の作用物質の可溶性および生体適合性(DAB10、2003年において確定されている)を改善させることである。
【0135】
親油性マトリックスは、本発明の文脈では、作用物質を溶解する、懸濁する、または乳化することができる物質または物質の混合物を意味する。親油性マトリックスの1つまたは複数の物質は、粘膜接着作用を有する通常の薬剤助剤およびポリマーとは異なる。親油性マトリックスの1つまたは複数の物質は、疎水性または両親媒性の特徴を有することが好ましい。親油性マトリックスはまた、両親媒性マトリックスまたは類脂質性マトリックスと呼ぶことも可能である。
【0136】
親油性マトリックスは、脂質など、単一の物質からなる、または脂質の混合物など、物質の混合物からなることが可能である。混合物の場合、DAB10による水可溶性について以下で記述される特性、分配係数、および/またはHLB値が、部分の質量による算術平均および混合物の物質の値から各場合において計算される。使用される物質は、毒性であってはならない。
【0137】
粘膜接着作用を有する親油性マトリックス/ポリマー
好ましい実施形態では、親油性マトリックスと、粘膜接着作用を有するポリマーとの可能な相互作用が考慮される。制御不可能な相互作用を回避するために、親油性マトリックスを形成する1つまたは複数の物質、および粘膜接着作用を有するポリマーは、同じイオン特性を有するべきである。すなわち、両方とも、調和して少なくとも主にカチオン、または調和してアニオン性の特性を有するべきである。反対のイオン特性を有する物質が選択される場合、粘膜接着作用を有するポリマーは、少なくとも50%、特に好ましくは100%の中和形態で存在するべきである。中和は、既知の方式で酸または塩基を追加することによって行うことができる。
【0138】
親油性マトリックスをアセンブルするための1つまたは複数の物質
親油性マトリックスは、0から15、好ましくは2から10の(平均)HLBを有する物質または物質の混合物の80質量%から100質量%、好ましくは90質量%から100質量%、特に好ましくは100質量%からなることが好ましい。親油性マトリックスは、薬剤的に一般的な助剤、特に安定剤、増粘剤、または吸着剤の0質量%から20質量%、好ましくは0質量%から10質量%からなることが可能である。薬剤的に一般的な助剤が存在することが特に好ましい。
【0139】
親油性マトリックスを形成することが可能である1つまたは複数の物質は、たとえば、油、脂肪、モノ−、ジ−、またはトリグリセリド、脂肪酸、脂肪アルコール、特に、塩、エーテル、エステルを含むCからC20の脂肪酸および/またはCからC20のアルコール、あるいはアミド誘導体、リン脂質、レクチン、乳化剤、類脂質、脂溶性ビタミン、または表面活性剤の群に属することが可能である。
親油性マトリックスは、たとえば、以下の脂質製剤の1つを含有することが可能である:(Imwitor308)80%以下のモノエステル含有量を有するグリセリルモノカプリレート、(Imwitor312)90%以下のモノエステル含有量を有するグリセリルモノラウレート、(Imwitor491)90%以下のモノエステル含有量を有するグリセロールモノステアレート(C16+C18)、(Imwitor900P)40%から55%のモノエステル含有量および40%から60%のC18含有量を有するモノステアリン酸グリセロール、(Imwitor900K)40%から55%のモノエステル含有量および60%から80%のC18含有量を有するモノステリン酸グリセロール、(Imwitor742)45%から55%のモノエステル含有量を有する中鎖長CおよびC10グリセリド、(Imwitor928)C12の主含有量を有し、かつ34%から36%のCおよびC10グリセリド、Naカプリレート、またはNaカプリエートのモノエステル含有量を有する飽和植物性脂肪酸。
【0140】
親油性マトリックスは、たとえば、以下の脂質製剤の1つを含有することが可能である:飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸ならびにその混合物のモノ−、ジ−、トリグリセリド。特に、グリセロールステアリン酸エステル、グリセロールパルミチン酸エステル、グリセロールミリスチン酸エステル、グリセロールパルミチン酸ステアリン酸エステル、グリセロールラウリン酸エステル、グリセロールカプリリル酸エステル、グリセロールオレイン酸エステル、これらのエステルの例は、Imwitor(登録商標)−308、−312、−491、−742、−900、−928、−988、およびGelucire(登録商標)44/14、−50/13、Geleol、Compritol E ATO、Dynasan 114、Softisan、Witepsol、Dynacet212、ココナツ脂肪、たとえばカストール油、ゴマ油、ひまわり油、綿実油、コーン油、アーモンド油、ピーナツ油、オリーブ油、ココナツ油、キャロット油、麦芽油、クルミ油などの油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソプロピルステアレート中鎖長トリグリセリド、(Miglyole(登録商標))である。
【0141】
たとえばフタル酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、グリセロールトリアセテートなどの単鎖脂肪族および芳香族カルボン酸エステル、
たとえばカナウバ・ワックス、蜜蝋、ウールワックスなどのワックス、
グリセロールベヘン酸エステル、
たとえばステアルアミド、パルミトアミド、ラウルアミドなどの脂肪酸アミド、
たとえばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、カプリル酸、リノレン酸、リノレン酸、リノレン酸などの脂肪酸長鎖カルボン酸、ならびにそのNa塩、Al塩、およびMg塩、
たとえばステアリルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチンアルコール、グリセロール形式、などの脂肪族アルコール、
たとえばコレステロール、モノステアリン酸グリセロール、モノステアリン酸エチレングリコール、ソルビタンモノオレエート(Span(登録商標)80)、ソルビタンモノパルミテート(Span(登録商標)40)、ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20)、モノステアリン酸ソルビタン(Span(登録商標)60)、ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)、ソルビタントリステアレート(Span(登録商標)65)、ソルビタンセスキノレエート(Arlacel(登録商標)83)、Ca、Al、Mgステアレート、ポリオキシエチレン、ソルビタントリステアレート(Tween(登録商標)65)、ポロキシエチレンソルビタントリオレエート(Tween(登録商標)85)などのW/O乳化剤、
たとえばマクロゴールステアレート400(Chremophor(登録商標)A)、マクロゴールラウリルエーテル、ポリエチレングリコール20ソルビタンモノラウレート、モノステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、マクロゴール1500グリセロールトリリシノレート、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(Cremophor(登録商標)RH)、マクロゴール1000グリセロールモノラウレート、モノステアリン酸、モノオレエート、モノステアリン酸スクロース。ポリソルベート60(Tween(登録商標)60)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(Myrj49)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)、ポロキサマ407(Lutrol(登録商標)F127)、ポロキサマ188(Lutrol(登録商標)F68)、ポリオキシエチレンリシノレート(Cremophor(登録商標)EL)、ポリオキシエチレン5ステアリルステアレートなどの非イオンO/W乳化剤、
たとえばセチルステアリルスルフェート(Lanette(登録商標)E)、Naラウリルスルフェート(Texapon(登録商標)Z)、Naグリココレート、ヘデラゲニンなどのイオンO/W乳化剤、
たとえば卵ホスファチジルコリン(卵レシチン)、大豆ホスファチジルコリン(大豆レシチン)、ベタイン、スルフォベタイン、セラミド(スフィンゴミエリン)などの両親媒性乳化剤、
たとえばレチノール(ビタミンA)、コレカルシフェロール(ビタミンD)、アルファトコフェロールおよび酢酸アルファトコフェロール(ビタミンE)、フィロキノン(ビタミンK)などのビタミン、
他の助剤は、たとえば、モノガラクトシルジアシルグリセロール、ジガラクトシルジアシルグリセロール、トリガラクトシルジアシルグリセロールなどのガラクトリピド、およびたとえばアニス油、シトロネラ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、カモミール油、ショウズク油、マツ葉油、キャラウエイ油、ドワーフ・パイン油、ラベンダー油、ミント油、マスカット油、クローブ油、ペパーミント油、ローズマリー油、サルビア油などの芳香族油、ならびにたとえばメントール、リナロール、1,4−シネオール、ピレトリン、ボルネオール、ユーデスモール、フィトール、マヌール、アザジラクチン、ニムビンなどのテルペンである。
【0142】
内部マトリックス層a)の作用物質包含脂質マトリックスの含有量は、1質量%から50質量%、好ましくは10質量%から20質量%とすることができる。
【0143】
親油性マトリックスは、少なくとも50質量%のグリセロールモノカプリレート、最高で10質量%のNaコラート、最高で10質量%のコハク酸トコフェロール、1質量%から5質量%の排出ポンプ抑制剤を含有することが可能であり、この場合、作用物質は、Solutol HS15などのPgP排出ポンプの基質、トリグリセリド、特にトリステアレートであり、構成要素は100%まで増加する。この親油性マトリックスは、粘膜接着ポリマーに直接組み込む、または水において乳化させ、粘膜接着ポリマーに組み込むことができる。後者の場合、水溶性相は、たとえばクエン酸などの弱酸を含有することが可能である。
【0144】
方法
本発明はまた、
a)親油性マトリックスを形成する物質、および適切であれば他の薬剤的に一般的な助剤と共に、核酸作用物質を含有するナノ粒子を勢いよく混合する、または融解することによって、作用物質包含親油性マトリックスを生成する工程と、
b)作用物質包含親油性マトリックスと混合された粘膜接着性ポリマーをコアの上に噴霧で加えることによって、またはコアを有さずに球状集塊、沈殿、もしくは噴霧の方法によって前ペレット(ペレット・コア)を生成する工程と、
c)薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤および放出剤の混合物を随意選択で含有することが可能であるアニオン性ポリマーまたはコポリマーのコーティングを、分散または有機溶液から工程b)の前ペレットの上に噴霧で加えることによってペレットを生成する工程と、
d)本質的に既知の方式で、適切であれば薬剤的に一般的な助剤を使用して、特にペレット包含タブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェット、または乾燥粉末に処理することによって、工程c)のペレットを充填するまたは組み込むことによって多粒子剤形を生成する工程とで、多粒子剤形を生成する方法にも関する。
【0145】
好ましい方法
方法工程a)およびb)は、以下のように実施されることが好ましい:
a)親油性マトリックス用の物質、および適切であれば他の薬剤的に一般的な助剤と共に核酸作用物質を含有するナノ粒子のエマルジョンまたは懸濁液を、水において成分を勢いよく混合し、60μmを超えない、好ましくは20μmを超えない平均粒子サイズを有する水中油製剤を生成することによって調製することによる内部マトリックス層の生成、
b)工程a)の水中油製剤を、他の薬剤的に一般的な助剤の混合物を随意選択で含有することが可能である粘膜接着ポリマーの上に噴霧で加えることによる前ペレットの生成、この場合、成分は、たとえば球状集塊、押出し、または顆粒化によって、10μmから100μmの平均粒子サイズを有するミクロ粉末の形態にある。
【0146】
実施例
実施例は、本発明に一般的な手続きを示す。
【0147】
実施例1
カチオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子の調製
たとえば3000から10000の塩基対を有し、ヒトの細胞において発現し、かつ治療効果を有することを意図する遺伝子を有する二本鎖プラスミドDNAからなる遺伝子治療ベクターなど、2mgのDNA(核酸作用物質)を、pH7.4の4mlのリン酸緩衝剤に溶解し、2mlのマウス単クローン抗ヒトDNA IgM溶液(1mg/ml)と混合し、37℃で1時間培養する。次いで、1mlのLipofectin(商標)または好ましくは3ml(1mg/ml)の改質Eudragit(登録商標)E(25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のメタクリル酸ブチル、および50質量%のメタクリル酸ジメルアミノエチルの(メタ)アクリレートコポリマー、低分子量、腎臓排泄Mw=21000)を混合し、37℃に維持して、約30分ゆっくり撹拌する。この時間の後、pHを測定し、0.001NのHClで7.4に調節する。この時間の後、pHを測定し、0.001NのHClでpHを7.4に調節する。たとえばヴォルテックス上で勢いよく混合して、Lipofectin(登録商標)の使用で約250nmの平均径およびEudragit(登録商標)の使用の際に約150nmの平均径を有するナノ粒子を得る。ナノ粒子の懸濁液を透析によって精製する。懸濁液は、さらに直接処理することができ、または凍結乾燥によってナノ粒子を分離することができる。
【0148】
実施例2
カチオン性およびアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子
適切なヒト細胞培養基での予備試験において、たとえば10%の割合のアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーEudragit(登録商標)L(改質)がカチオン性Eudragit(登録商標)E(改質)に追加されるとき、核酸作用物質の最適なトランスフェクション率を達成することができることが判明している。
【0149】
たとえば3000から10000の塩基対を有し、ヒトの細胞において発現し、かつ治療効果を有することを意図する遺伝子を有する二本鎖プラスミドDNAからなる遺伝子治療ベクターなど、2mgのDNA(核酸作用物質)を、pH7.4の4mlのリン酸緩衝剤に溶解し、2mlのマウス単クローン抗ヒトDNA IgM溶液(1mg/ml)と混合し、37℃で1時間培養する。次いで、1.1ml、4ml(1mg/ml)の改質Eudragit(登録商標)E(25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のメタクリル酸ブチル、および50質量%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルの(メタ)アクリレートコポリマー、低分子量、腎臓排泄Mw=21000)、ならびに0.4ml(1mg/ml)の改質Eudragit(登録商標)L(50質量%のメタクリル酸メチル、および50質量%のメタクリル酸、低分子量、腎臓排泄Mw=21000)を混合し、37℃に維持して、約30分ゆっくり撹拌する。たとえばヴォルテックス上で勢いよく混合して、約250nmの平均直径を有するナノ粒子を得る。ナノ粒子の懸濁液を透析によって精製する。懸濁液は、さらに直接処理することができ、または凍結乾燥によってナノ粒子を分離することができる。
【0150】
実施例3
表面改質ナノ粒子(アニオン性(メタ)アクリレートコポリマーのシェルを有するカチオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有するナノ粒子)
たとえば3000から10000の塩基対を有し、ヒトの細胞において発現し、かつ治療効果を有することを意図する遺伝子を有する二本鎖プラスミドDNAからなる遺伝子治療ベクターなど、2mgのDNA(核酸作用物質)を、pH7.4の4mlのDulbeccoリン酸緩衝剤に溶解し、2mlのマウス単クローン抗ヒトDNA IgM溶液(1mg/ml)と混合し、37℃で1時間培養する。次いで、4ml(1mg/ml)の改質Eudragit(登録商標)E(25質量%のメタクリル酸メチル、25質量%のメタクリル酸ブチル、および50質量%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルの(メタ)アクリレートコポリマー、低分子量、腎臓排泄Mw=21000)を混合し、37℃に維持して、約30分ゆっくり撹拌する。この時間の後、pHを測定し、0.001NのHClで7.4に調節する。
【0151】
リン酸緩衝剤(pH7.4、0.5mg/ml)における1mlの改質Eudragit(登録商標)Lの溶液(1mg/ml)(50質量%のメタクリル酸メチル、および50質量%のメタクリル酸の(メタ)アクリレートコポリマー、低分子量、腎臓排泄Mw=21000)を混合し、結果として得られるラテックス状緩衝分散に、0.001Mのクエン酸をpH5.0になるまで追加する。ナノ粒子の懸濁液を透析によって精製する。懸濁液は、さらに直接処理することができ、または被覆されたナノ粒子を凍結乾燥によって分離することができる。
【0152】
実施例4
実施例1、2、または3からのナノ粒子を、キトサンを含有し、かつ酸でpH5.0から5.5に調節される内部マトリックス層に組み込むことによる未コーティング・ペレット(前ペレット)としての粘膜接着の生成
粘膜接着溶液の調製
4gの酢酸キトサンを20gの水に溶解する。次いで、迅速に撹拌しながら、2gのクエン酸一水和物を追加する。pHを5.2に設定する。次いで、0.4gのNaドデカネートを、得られた澄んだ黄色状の粘性溶液に追加する。実施例1、2、または3からの懸濁液をゆっくり撹拌してこの溶液に混合する。
【0153】
前ペレットの調製
5から8g/分/kgの撹拌率で流動床装置(HuttlingからのMicro−Lab)を使用して、混合された懸濁液を、30℃の吸気温度で約400μmから600μmの直径を有する40gの中和ペレットの上に噴霧する。この場合、吸気は、35から45m/hに設定される。この場合の歩留まりは85%から90%である。
【0154】
実施例5
(コーティング)ペレットの生成
実施例4において生成した前ペレットを流動床方法において、Eudragit(登録商標)L12.5(50質量%のメタクリル酸メチルおよび50質量%のメタクリル酸の(メタ)アクリレートコポリマー、Mw=約200000、イソプロパノール/アセトン3:2において12.5%強度の有機溶液)でコーティングする。加えるポリマーの量は、コアの質量に基づいて40質量%になる。コーティング用の懸濁液は、
Eudragit(登録商標)L12.5 53.5%
クエン酸トリエチル 1.33%
イソプロパノール 38.3%
タルク 2.0%
水 5.0%
からなる。
胃液に対して耐性であり、外皮が十二指腸または空腸において約pH6.0で迅速に溶解し、粘膜接着前ペレットを放出する一様に被覆されたペレットを得る。
【0155】
実施例6
カプセル形態の多粒子剤形の生成
実施例5において生成したペレットを、カプセル充填装置によって、サイズが0のカプセルである固いゼラチン・カプセルに直接実装し、550mgの充填質量を有する単位を与える。経口投与後、カプセルは、胃のpH範囲において迅速に溶解し、胃においてさえ一様に分布するペレットを放出する。
【0156】
実施例7
タブレット形態の多粒子剤形の生成
実施例5において生成したペレットをタブレット化補助剤、結合剤、崩壊促進剤、および潤滑剤と共に調合する。550gのペレットを390gの微結晶性セルロース、150gのNaカルボキシメチル−スターチ、および10gのMgステアレートと混合する。混合物をタブレット・プレスにおいて1100mgの全質量を有するコンパクトに圧縮する。経口投与後、タブレットは、胃のpH範囲において崩壊し、胃においてさえ一様に分布するペレットを放出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50μmから2500μmの範囲の平均直径を有するペレットを含有する経口多粒子剤形であって、主として
a)核酸作用物質を含有し、粘膜接着作用を有するポリマーのマトリックスに埋包されたナノ粒子を含有し、該マトリックスが、他の薬剤的に一般的な助剤を随意選択で含有してよい、内部マトリックス層と、
b)薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤と共に随意選択で調合してよいアニオン性ポリマーまたはコポリマーから本質的になる外部被膜コーティングとから構成される経口多粒子剤形において、
包含されるペレットが、胃のpH範囲において放出され、外部コーティングが、腸において15分から60分以内に4.0から8.0のpHにおいて溶解し、それにより、作用物質包含粘膜接着マトリックス層が暴露され、腸粘膜に結合してそこで作用物質を放出することができるように、アニオン性ポリマーまたはコポリマーの選択、ならびに助剤とのその調合およびその層の厚さを選択することにより調節され、この場合、粘膜接着作用を有するポリマーが、外部コーティングが溶け始めるpHに対して+/−0.5pH単位の範囲において、少なくともη=150から1000mPa・sの粘膜接着作用と、15分で10%から750%の吸水性とを示すように選択され、マトリックス層のナノ粒子の作用物質含有量が、粘膜接着作用を有するポリマーの含有量の最大40質量%を有するように多粒子剤形が調合されていることを特徴とする、経口多粒子剤形。
【請求項2】
ナノ粒子が、20nmから1000nmの範囲のサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
ナノ粒子に含まれる核酸が、カチオン性物質との複合体の形態で存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の剤形。
【請求項4】
カチオン性物質が、カチオン性脂質、カチオン性ポリペプチド、および/またはカチオン性ポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載の剤形。
【請求項5】
カチオン性ポリマーが、第3級アミノ基または第4級アミノ基を有する(メタ)アクリレートコポリマーであることを特徴とする、請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
(メタ)アクリレートコポリマーが、20質量%から30質量%のメタクリル酸メチル、20質量%から30質量%のメタクリル酸ブチル、および60質量%から40質量%のメタクリル酸ジメチルアミノエチルの遊離基重合単位からなることを特徴とする、請求項5に記載の剤形。
【請求項7】
ナノ粒子に含まれる核酸作用物質が、カチオン性およびアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーとの複合体の形態で存在することを特徴とする、請求項3から6までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項8】
アニオン性(メタ)アクリレートコポリマーが、5質量%から60質量%のアニオン性基を有するモノマーの含有量を有することを特徴とする、請求項7に記載の剤形。
【請求項9】
アニオン性(メタ)アクリレートコポリマーが存在し、これが、
20質量%から33質量%のメタクリル酸および/またはアクリル酸、
5質量%から30質量%のアクリル酸メチル、
20質量%から40質量%のアクリル酸エチル、
10質量%から30質量%を超えるメタクリル酸ブチル、
およびに適切であれば、
0質量%から10質量%の、ビニル共重合可能な他のモノマーとからなり、それらのモノマーの割合を、100質量%までとするが、但し、ISO 11357‐2 ポイント3.3.3によるコポリマーのガラス転移温度(中点温度Tmg)が、55℃から70℃であることを特徴とする、請求項7または8に記載の剤形。
【請求項10】
ナノ粒子が、50000以下の平均分子量Mwを有するカチオン性またはアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含有することを特徴とする、請求項3から9までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項11】
ナノ粒子が、50000以下の平均分子量Mwを有するアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーによる被包を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項12】
核酸作用物質が、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAあるいはDNA−RNAキメラであり、その際、天然産生のヌクレオチドおよび/または非天然産生の合成改質ヌクレオチドが存在してよいことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項13】
核酸が、核酸に特定的に結合する抗体、およびカチオン性物質との複合体の形態で存在することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項14】
外部被膜コーティングが、グリコール酸セルロース(Duodcell(登録商標))、酢酸フタル酸セルロース(CAP、酢酸セルロース、PhEur、酢酸フタル酸セルロース、NF、Aquateric(登録商標))、酢酸コハク酸セルロース(CAS)、酢酸トリメリット酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP、HP50、HP55)、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(PMCAS−LF、−MF、−HF)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP、Sureteric(登録商標))、酢酸ビニル−ビニルピロリドンコポリマー(PVAc、Kollidon(登録商標)VA64)、酢酸ビニル:クロトン酸9:1コポリマー(VAC:CRA,Kollicoat(登録商標)VAC)、および/またはシェラックであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項15】
外部被膜コーティングが、5質量%から60質量%のアニオン性基を有するモノマーの含有量を有する(メタ)アクリレートコポリマーからなることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項16】
外部コーティングの層の厚さが、20μmから200μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項17】
内部マトリックスが、塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、あるいはアミド誘導体を含むC10からC20の脂肪酸および/またはC10からC20のアルコールおよび/または脂質および/またはリン脂質および/または脂質可溶性ビタミンおよび/または浸透促進剤を含有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項18】
粘膜接着作用を有するポリマーが、キトサン、20質量%から40質量%のメタクリル酸メチル、および60質量%から80質量%のメタクリル酸からなる(メタ)アクリレートコポリマー、ならびに/あるいはセルロース、特にNaカルボキシメチルセルロース、架橋および/または未架橋ポリアクリル酸、レクチン、Naアルギネート、ならびに/あるいはペクチンであることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項19】
内部マトリックスが、粘膜接着作用を有するポリマーとしてキトサンを含有し、キトサンが、酸または緩衝系と共に使用され、これらは、マトリックス中に存在するか、またはマトリックスが施与されるコア中、もしくはコア上に存在することを特徴とする、請求項18に複数に記載の剤形。
【請求項20】
内部マトリックス層が、キトサンを含有し、酸または緩衝系でpH5.0から5.5に調節され、pH6.0から8.0の領域において溶け始める外部被膜コーティングと組み合わされることを特徴とする、請求項19に記載の剤形。
【請求項21】
作用物質を含有するマトリックス層と外部被膜コーティング層との間に分離層が施与されることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項記載の剤形。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項記載の多粒子剤形の製造方法において、
a)核酸作用物質と助剤とを自体公知のように調合して、ナノ粒子にする工程と、
b)ナノ粒子の形態の核酸作用物質および粘膜接着作用を有するポリマー、ならびに適切であれば、他の薬剤的に一般的な助剤を含有する内部マトリックス層を、コアの上に噴霧で施与することによって、またはコアを有さずに窮状集塊、沈殿、もしくは噴霧法によって調合して、前ペレットを形成する工程と、その後、
c)薬剤的に一般的な助剤、特に可塑剤と共に随意選択で調合してよいアニオン性ポリマーから主としてなる外部被膜コーティングを、前ペレット上に噴霧によって施与し、それにより、作用物質を含有する包皮ペレットを得る工程と、
d)結果として得られるペレットを薬剤的に一般的な助剤によって、および自体公知のように加工して多粒子剤形、特にペレット含有タブレット、ミニタブレット、カプセル、サシェット、または乾燥粉末の形態を得る工程によって、包含されるペレットが胃のpH範囲において放出されるように調合する多粒子剤形の製造方法。

【公表番号】特表2008−522989(P2008−522989A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544750(P2007−544750)
【出願日】平成17年11月5日(2005.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011864
【国際公開番号】WO2006/061069
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】