核酸検出用カートリッジ及び核酸検出方法
【課題】 本発明の課題は、試料に含まれる核酸の精製、増幅および検出について、一貫してカートリッジ内で行い、多項目の同時検出を実現する核酸検出用カートリッジを、簡単な構造で、安価に構築することである。
【解決手段】 核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を選択的に捕捉させた後、捕捉した核酸を溶出、複数の反応槽に搬送した後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、増幅された産物を検出する一連の工程を、カートリッジ内で達成することにより、試料中の核酸の有無を迅速簡便に検出することのできることを実現する。
【解決手段】 核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を選択的に捕捉させた後、捕捉した核酸を溶出、複数の反応槽に搬送した後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、増幅された産物を検出する一連の工程を、カートリッジ内で達成することにより、試料中の核酸の有無を迅速簡便に検出することのできることを実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造を有する核酸検出用カートリッジ及びそれを使用する核酸検出方法に関する。より詳しくは、本発明は、核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を捕捉させた後、試薬溶解用バッファー等を核酸捕捉物質に流すことにより捕捉された核酸を捕捉物質より溶出し、増幅反応を行う反応槽に移送する。その後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、核酸増幅反応の有無を検出する。これら一連の工程を行うのに用いられる核酸検出用カートリッジ及び該カートリッジを使用した核酸検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療における臨床検査の現場では、患者から採取した試料を、臨床の現場において、迅速、かつ、簡便に検査し、結果を判断してすぐに診療に生かす、いわゆる”ポイント・オブ・ケアー・テスティング(POCT)”と呼ばれる診断法が求められている。また、河川、海洋、廃棄物中の有害物質の分析といった環境分野や、食品の細菌や毒物による汚染検査といった食品分野の分析についても、それぞれの現場または現場の近傍で分析・計測を行う”ポイント・オブ・フィールド・テスティング”が注目されている。これらの簡易迅速検査においては、できるだけ短時間に、手動で行う操作を減らすことが要求される。すなわち、試料の前処理から検出までの一連の工程を、”カートリッジ”と呼ばれる装置の中で完結することが望ましい。
【0003】
特許文献1に記載の「核酸抽出、増幅および検出を統合する自己充足装置」には、核酸抽出、増幅および検出を行うシリンダー状の装置が開示されている。この発明は、核酸抽出、増幅および検出を統合するとしてものと規定されている。しかし、この発明は、装置内での反応液などの送液の問題が充分に解決されていない。実際、この特許文献の実施例に示されているのは、核酸の抽出工程、増幅工程および検出工程について、それぞれの要素技術を開示しているにとどまり、「自己充足装置」として要求される各工程を一貫して実施した例は開示されていない。すなわち、シリンダー状の装置を用い圧を掛けながら液送りを試みる方式では、(イ)液体を送液する場合の流路を作成したり、弁構造を導入する場合に於いて複雑な構造を要求され安価に製造することが困難になる、(ロ)装置内の溶液を送液する場合において、弁を用いずに要求される流路のみに液体を導くことが困難である、といった問題がある。
【0004】
また、本出願人に係る特許文献2に記載の「核酸検出用カートリッジ」には、核酸抽出、増幅、検出を行うカートリッジの記載があるが、核酸抽出と増幅を行う反応槽が同一であり、かつ核酸を溶出する機能は持たないため、複数の反応を同時に行おうとすると、核酸抽出部を複数形成する必要があり、構造が複雑になるだけで無く、試料を大量に用意しなければならない。
【0005】
また、本出願人に係る特許文献3に記載の「不織布を用いた核酸精製法及び検出法」には、核酸抽出に供された物質より再度核酸を溶出し、増幅反応を行う技術の記載があるが、これをカートリッジ上で実現する手法についての記述はなされていない。
以上のように、現在、前記の要求を満たすものは、未だ実用化されていない。
【特許文献1】特表平12-509100号公報
【特許文献2】特開2004-208512号公報
【特許文献3】WO 03/006650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、試料に含まれる核酸の精製、増幅および検出について、一貫してカートリッジ内で行い、多項目の同時検出を実現する核酸検出用カートリッジを、簡単な構造で、安価に構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、カートリッジ内に吸引の特性を活かした試料及び試薬の流路構成を作成し、カートリッジ内で反応を行うことができる弁構造を不要とした核酸検出用カートリッジを実現し本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明において、核酸とは、DNA(deoxyribonucleic acid)またはRNA(ribonucleic acid)を意味し、対象となる材料に含まれるDNAまたはRNAを意味する。
【0009】
本発明は、次のとおりの核酸検出用カートリッジ及びそれを用いる核酸検出方法に関する。
【0010】
(1) 核酸を含む試料中の核酸を核酸捕捉物質に捕捉させ、その後核酸捕捉物質に捕捉した核酸を溶出して核酸増幅反応槽に移送した後、該核酸を鋳型として核酸増幅反応を行わせ、核酸増幅反応の有無を検出するための核酸検出用カートリッジであって、該カートリッジは、
(イ) 核酸を含む試料をカートリッジに導入する少なくとも1つの試料注入口または試料槽、
(ロ) 該注入口または試料槽と連通する少なくとも1つの排出口または廃液槽、
(ハ) (イ)と(ロ)を連通する流路、
(ニ) 前記核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体をカートリッジに導入する少なくとも1つの溶液注入口または溶液槽、
(ホ) 少なくとも2つの核酸増幅反応試薬用リザーバー、
(ヘ) (ニ)と(ホ)を連通する流路、
(ト) (ハ)及び(ヘ)は共通する流路部分を有し、該共通する流路部分に設置させる前記核酸捕捉物質、
(チ) (ロ)及び(ホ)にそれぞれ備えられたベント構造、
を有することを特徴とする核酸検出用カートリッジ。
【0011】
(2) それぞれのベント構造に吸引手段が接続されていることを特徴とする前記(1)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(3) (ホ)に備えられたベント構造が、少なくとも2つのリザーバーの出口を一にするカプラを含むことを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(4) ベント構造が多孔質かつ疎水性の膜を含むことを特徴とする、前記(1)ないし前記(3)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(5) 排出口または廃液槽と連通し、核酸捕捉物質の洗浄を目的とする液をカートリッジに導入する少なくとも1つの注入口または溶液槽を、さらに包含することを特徴とする前記(1)ないし前記(4)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(6) 廃液槽内に吸水能力を備える物質を備え、同時に廃液槽への入り口と排出口を貫通する吸水能力を持つ物質が存在しない流路を備えることを特徴とする、前記(1)ないし前記(5)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0012】
(7) 試料供給口及び溶液供給口が開閉可能な蓋を備え、蓋の開閉により、流れる液を制御することを特徴とする前記(1)ないし前記(6)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(8) 核酸増幅反応用リザーバーに少なくとも1種の核酸増幅用反応試薬が収納されたことを特徴とする前記(1)ないし前記(7)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(9) 核酸増幅反応試薬の少なくとも1種が非流動性を備え、あらかじめ核酸増幅反応用リザーバーに収容されたことを特徴とする前記(8)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(10) 核酸溶出に供される溶液が非流動性を備える該反応試薬の溶解液も兼ねることを特徴とする前記(9)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(11) 核酸溶出に供される溶液が陰イオン系あるいは非イオン系、または等電点以上のpH溶液における両イオン性表面活性剤を含むものであることを特徴とする前記(1)ないし前記(10)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(12) 試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えることを特徴とするゲル濾過デバイスが接続されることを特徴とする、前記(1)ないし前記(11)のいずれかにに記載の核酸検出用カートリッジ。
(13) 核酸を含む試料が核酸を捕捉させるために核酸捕捉物質を通過する方向と、該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体が該核酸捕捉物質を通過する方向が、相対向することを特徴とする前記(1)ないし前記(12)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0013】
(14) 核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体の流れる方向が、核酸捕捉物質の上面から下面に向かう方向であることを特徴とする前記(1)ないし前記(13)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(15) 核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターからなることを特徴とする前記(1)ないし前記(14)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(16) 核酸捕捉フィルターが、濾紙、織布、不織布、マトリックスまたは膜からなることを特徴とする前記(15)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(17) カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御する手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(16)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(18) 温度制御する手段が等温度制御するものであることを特徴とする前記(17)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(19) 核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(18)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(20) 核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出するものであることを特徴とする前記(19)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(21) 蛍光強度が変化する物質が核酸インターカレーターであることを特徴とする前期(20)に記載の核酸検出カートリッジ。
(22) 核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、該核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出するものであることを特徴とする前記(19)ないし前記(21)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(23) 核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(18)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(24) ピロリン酸イオンの検出手段が、不溶性沈殿を生成させる化学反応を利用したものであることを特徴とする前記(23)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(25) 不溶性沈殿を肉眼で観察することにより検出することを特徴とする前記(24)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(26) 不溶性沈殿を含む懸濁液に光を照射し、照射された光の散乱を検出することを特徴とする前記(24)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(27) ピロリン酸イオンの検出手段が、有色の色素を生成させる化学反応を利用したものであることを特徴とする前記(23)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(28) 有色色素を計測するピロリン酸イオンの検出手段が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果を利用したものであることを特徴とする前記(27)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(29) 化学反応が、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤の反応であることを特徴とする前記(27)または前記(28)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(30) 核酸増幅反応が、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの反応であることを特徴とする前記(24)から前記(26)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(31) カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が検出に必要な波長の電磁波を透過するものであることを特徴とする、前記(20)ないし前記(30)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(32) カートリッジを形成する素材が樹脂である前記(1)ないし前記(31)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(33) カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が透明である前記(1)ないし前記(32)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0014】
(34) 少なくとも1つの排出口または廃液槽に備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、試料注入口または試料槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも1つの排出口または廃液槽に向かって試料を移動させて試料中の核酸を該核酸捕捉物質に捕捉させ、次いで、少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、溶液注入口または溶液槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに向かって溶液を移動させて外核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶離し溶液とともに核酸増幅反応試薬リザーバーに移送させることを特徴とする、前記(1)に記載の核酸検出用カートリッジを使用した核酸検出方法。
(35) 核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出であることを特徴とする前記(34)に記載の核酸検出方法。
(36) 核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出であることを特徴とする前記(34)に記載の核酸検出方法。
(37) ピロリン酸イオンの検出が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果によるものであることを特徴とする前記(36)に記載の核酸検出方法。
(38) 核酸増幅反応が、等温度の反応によって行われることを特徴とする前記(34)ないし前記(37)のいずれかに記載の核酸検出方法。
【0015】
さらに詳細に本発明について述べる。
本発明で開示される技術は、核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を選択的に捕捉させた後、試薬溶解用バッファー等をこの核酸捕捉物質に流すことにより捕捉された核酸を捕捉物質より溶出し、増幅反応を行う反応槽に移送する。その後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、核酸増幅反応の有無を検出する一連の操作を実施することを可能にする。検出試薬は、核酸増幅反応試薬の中に含まれる。この場合、検出試薬は、核酸増幅反応に影響を与えないような物質である必要がある。本発明では、試料は導入口から入り、核酸を捕捉した後の不要分は廃棄槽などへ導かれる。そして、捕捉された核酸は、試薬バッファ等の液体を捕捉物質に流すことで再度溶出し、そしてこの場合廃棄槽ではなく反応槽に移送される。このようにすることで、反応槽内にはDNA、反応試薬など必要な物質のみを存在させることとなり、前工程の不要な溶液を意図して除くといった追加の工程は不要である。すなわち、各リザーバー、導入口等から順に試料、各試薬溶液等を供給していくことだけで、核酸検出まで行うことができる。また、カートリッジの試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えるゲル濾過デバイスを接続すれば、試料の前処理もカートリッジでのみで行うことができ便利である。
【0016】
本発明で示される核酸捕捉物質から核酸を溶出する工程を実施することは、同一のカートリッジ上で、複数の反応を同時に行うことを可能とし、実際の使用に際して大きなメリットとなる。すなわち、溶出した後の流路を分岐し、複数の反応槽に溶出した核酸を導くことで複数の検査を同時に実施することも可能である。特に複数の反応槽内に異なる反応試薬を含ませることで、複数の異なる反応を同時に実施することが可能となり、核酸捕捉物質に捕捉された状態で増幅反応、検出を行う場合は単一の反応しか行えないのに比べ大きなメリットとなる。例えば、核酸増幅反応が正しく達成させたことを確認する陽性対照(ポジティブコントロール)および/または核酸増幅反応が正しく達成されなかったことを確認する陰性対照(ネガティブコントロール)を同一のカートリッジ内で達成できるようにすることが好ましい。また、このカートリッジにおいて、廃棄槽と連通し、洗浄液が収納された少なくとも1つの洗浄液リザーバーを、さらに包含していてもよい。これにより、核酸を含む試料中に、核酸増幅反応を阻害する物質が含まれている場合において、核酸捕捉物質に核酸を捕捉させた後、溶出、移送、核酸増幅反応といった手順を踏む前に、核酸捕捉物質を洗浄、阻害物質を除去することができるので、核酸増幅反応が阻害されなくなるので好ましい。
【0017】
本発明における以上述べた機能を有するカートリッジは、図1に示されるように2段階のプロセスを実現する構造を有する。すなわち、検出したい核酸を含む試薬を核酸を捕捉する捕捉物質に導入し核酸を捕捉させる工程。そして、試薬バッファー等を核酸を捕捉した捕捉物質に送り捕捉された核酸を溶出した後、試薬等を含む反応槽に送る工程、である。その際、核酸を捕捉させる膜に対して液体が流れる向きには、捕捉時と溶出時で捕捉物質に対して同じ向きに液体が流れる場合と、図1のようにそれぞれが逆向きに流れるという2通りが考えられる。ここでは以後、逆向きに流れるものを例として、カートリッジの構造について述べるが、核酸を捕捉、溶出、増幅、検出という本発明カートリッジの機能を実現するものであれば、同じ向きに流れるものであっても構わない。同じ向きに流れるものの場合、各液の供給口及び核酸捕捉物質までの流路を共通とすることも可能である。
【0018】
図2では廃液槽、反応槽ともカートリッジ下面側に吸引のための外部とのアクセス孔がある構造となっている。アクセス孔の位置はカートリッジの下面、上面側面、いずれにあっても核酸の捕捉、溶出などに影響を与えないのであれば構わない。図3は廃液槽、反応槽のアクセス孔を上面にまとめた例である。図4は図3を実現するための流路設計例を示す平面図である。ここでは試料および捕捉された核酸溶出用の溶液はそれぞれ、各アクセス孔からの吸引を制御することで図1の2つの動作を弁口構造なしで実現している。なお、図4が図3に示された機能を実現するための唯一の構成でないことは言うまでも無い。図3では試料ならびに核酸溶出用の溶液の核酸捕捉物質に対する流れの向きは、それぞれ上面から下面方向、下面方向から上面方向、となっている。これは図5に示すように反対、すなわち試料が下面から上面方向、上面から下面方向にすることも可能である。しかし、溶液が核酸捕捉物質を通過する際に泡が発生する可能性を考慮すると、試薬バッファーを核酸捕捉物質の上面から下面に向かって流す方向にする方が、泡は上方に移動するため、反応槽へ向かう流路へ混入する可能性を低くでき、反応槽への泡混入を防ぐ効果が得られるためより好ましい。また反応槽の配置については、図4のように流路分岐点から放射線上に配置すれば、各反応槽までの距離が同一になり好ましいが、図6のように一列に並べても、後述のカプラの構造など簡単になるメリットが有り、特に限定されるものでは無い。
【0019】
次にカートリッジ構造を完成させるに必要な要素技術について述べる。
「ベント構造」
試料や試薬溶液のカートリッジ内の移動を実現するためには、移動先に至るキャピラリ(溝)の中の空気を、流路外へ排出するベント構造を形成する必要がある。液体がカートリッジ外にあふれ出てしまう状況になると周囲を試料で汚染してしまう恐れがある。その際、カートリッジ内に液体を確実に留めるには、気体は通して液体は通さない機構をベントとして流路の端部に設けることが望ましい。
気体を通すが液体は通さない目的を達成するために、疎水性の小孔や疎水性膜を、液体を通さずに空気のみを通すベントとする技術が、キャピラリーの場合より遥に大きな液量を対象として、かなり以前から検討されている。例えば、人工透析装置などの血液処理装置における血液からの空気抜きは、特開昭57-17659号公報や特表平09-500809号公報等に記載されている。また、一般の工場などで用いる薬液や水中の自動空気抜きフィルターとして、カートリッジよりも相当大きな装置に設ける例が、特開平02-2812号公報に記載されている。これらはいずれも、本発明が対象とする1μl以下の液量に比べ、かなり大量の液体を対象としたものである。
【0020】
1μl程度の液量を対象としたカートリッジ内での、このような空気抜きベントに用いられるものとしては、3μm程度の微小な疎水性の穴(HMCV(Hydrophobic Micro Capillary Vent))が知られている(Proceedings of the μTAS '98 Workshop, held in Banff, Canada, 13-16 October 1998. Editors: D.Jed Harrison and Albert van den Berg, Kluwer Academic Publishers、p307-310 Hydrophobic Microcapillary vent for pneumatic manipulation of liquid in オTAS、Kazuo Hosokawa, Teruo Fuji, and Isao Endo 、電気学会研究会資料:化学センサシステム研究会 CS-99-1~12,p19-22,1999年3月16日、藤井輝夫、細川和生、Hong Jong Wook、関実、遠藤勲 等)。
【0021】
また、疎水性の膜を流路の端部に設ける技術も開示されている(Affymetrix社 Andersonら,Proceeding of Transducers '97. 1997 International Conference on Solid State Sensors and Actuators 2C1.02,国際公開WO第9702357号公報,米国特許第5856174号公報)。この技術では、カートリッジ外部の試薬溶液や試料をチューブでカートリッジに接続し、カートリッジ内に設けたダイアフラムバルブ(カートリッジ外の力で開閉)で、前記試薬溶液や前記試料を流すキャピラリを選択するようになっている。そして、キャピラリ内の空気を、流路端部の疎水性の膜からなるベントを通して流路外へ押し出しながら送液するようになっている。前記ベントは常に外部に開放されており、前記ベントに通じる流路の圧損や、ブレイカブルシールで圧逃げ穴をあけることによって、送液の制御を行っているため、その構造が極めて複雑となる問題点を有している。
【0022】
Anderson et al. (USP6,197,595)および本出願人に係るWO01/13127ではベント膜を備える流路構造が記載されている。しかし、その目的は2種の液体を合体されるためであり、反応試薬を溶解するため等のためにリザーバーに液を満たすといったものである。しかし、本願に示される構造は、液体だけではなく、試料に含まれるであろう核酸といった物質の外部への排出を防ぐために排出口に形成されており、その形成場所、効果には大きな違いがある。
【0023】
また、ベント部分の構造については、図7のようにリザーバー部分にベント膜を形成しても良いし、図8のようにリザーバー部分からベント用流路をさらに形成し、その先の開口部に形成しても構わない。すなわち、ベントはリザーバーに付随するものであっても良いし、リザーバーとは別にベントのみを形成する形態であっても構わない。
【0024】
このベントに用いられる膜のカートリッジへの接着は両面テープや接着剤などが使用可能であり、特に限定されるものでは無い。ただし、使用する溶液に対する耐性に気をつける必要がある。また、複数リザーバーを単一の膜で同時にベントする場合は、リザーバー間が導通しないようリザーバー間も接着されるよう貼り付けることが好ましい。
【0025】
「廃棄部分に設置のベント」
本発明のカートリッジは、核酸増幅反応以降の工程を、カートリッジの中の密閉された空間内で達成することが可能な構造を備える。これにより核酸の捕捉、増幅反応およびそれ以降の工程が密閉された空間内で達成されるので、核酸増幅反応によって増幅された特定の配列の核酸が、別の試料に混入することが避けられる。もし、このような混入が起きた場合には、もともとの試料には、目的の核酸が含まれていないにもかかわらず、核酸が含まれているという誤った結果を与えることになる。
【0026】
密閉構造を達成するための構造は特に限定されないが既に述べたように、排出口などの外気に接触する部分、ならびにカートリッジ内の液体や気体と外気との接触部分にベント構造を形成し、汚染物質を含む液体を閉じ込めることで実現できる。さらに、排出口にDNAなどの汚染の原因になる物質が外部に排出されないよう、汚染の原因物質を捕捉する膜を設置するのが好ましい。特にDNAの外部への汚染を抑える場合はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような疎水性多孔質の膜が廃液類の排出の抑制にも効果が有り好ましい。
【0027】
また、廃液槽を密閉構造にする場合、一度廃液槽に入った不要物質を含む液体が逆流したり、ベント部分が液体で覆われてしまう、などの不具合が発生しないよう吸水パッドを設置することが望ましい。特に排出口がベント構造になっている場合、液体がベント膜全面を覆い空気の通り道を塞いでしまう状況になると、それ以降は吸引の効果が得られなくなるため、吸水パッドを設置しベント部への液体の到達を防ぐことが必須である。吸水パッドの配置については、図9に示すように流路から排出口に行くまでに廃液が十分吸水パッドに吸収されるよう、廃液が吸水パッドに沿って流れるような構造にするのが効果的であり好ましい。廃液が排出口に到達するまでの吸水パッドに沿って移動する距離を長くするほど吸水パッドに吸収される比率が高まることが期待できる。さらに言えば、もしこの吸水パッドが廃液槽に充填され、液体の流れる流路を残さない構造になると、吸水パッドに液体が取り込まれることで、液を流すに必要な吸引圧が非常に高くなる可能性があり好ましくないことが判った。すなわち、廃液が吸水パッドに沿って流れるような構造、もしくは廃液槽入り口から排出口に向かって、吸水パッドが存在しない少なくとも一本の流路領域を残しておくのが好ましい。
「液送り(吸引)」
【0028】
また本願発明の特徴はカートリッジの構造を複雑にさせる原因ともなる弁構造を含まないことである。これは、試料導入口〜排出槽、核酸溶出用溶液導入口〜反応槽と連通する流路に対し、排出槽または反応槽に設けたベント構造側からの吸引により液送りを行うことで実現される。液送りの手段として液を押し出す方式の場合、流路途中に分岐が存在すると分岐先が閉止されていても幾分かの液体の侵入をも発生させないことは困難であり、一度侵入してしまうと除去はさらに困難である。しかし、吸引方式では、分岐点より不要な気体を取り込むことは有り得るが、排出槽、反応槽をベント構造を備えるものとすることで不要な気体を排出することが可能であり、この悪影響を抑えることができる。ベントは既に述べたように多孔質の疎水性膜を含む構造となっており、吸引によって、連通部分に空気が存在したとしてもベント膜を通過してカートリッジより抜けて行くが、不要となった試料、試薬を溶解するに必要な試薬溶液は、それぞれ廃液槽、反応槽に残り必要な反応が実施されることとなる。そしてこのような構造を持つことでカートリッジ外部を汚染することも防ぐことができる。
【0029】
吸引のための手段は特に限定されるものではない。たとえば、図10及び図12のように排出口にシリンジを接続し、機械もしくは人間の手により引くことでも実現される。もちろん真空ポンプを利用することも可能だが、適当な吸引力を発生させるためのなんらかの調整手段が必要となる場合もある。
【0030】
シリンジもしくはピストンを利用した液送りの手法は既にさまざまな応用例が存在するが、本発明ではこれらを吸引のための手段としてベント構造を介して液の移動に使用すると同時に、吸引の特性を活かした流路構成をとることで、弁構造を不要とするカートリッジを実現した。
【0031】
「カプラ」
試薬を擁する反応槽に核酸を含む液体を導入し、試薬を溶解させると同時に反応を行う時、複数の反応槽が存在し、それぞれに繋がる流路がカートリッジ内で合流している場合、それぞれを別に用意された手段で吸引すると、圧力の差などにより、反応槽によっては逆流が発生、液体が反応槽より流出する可能性がある。そのため、本発明ではベント構造を持つ複数のリザーバーを同時に吸引できるようカプラ構造を設けている。
【0032】
カプラの構造、材質としては特に限定は無いが、複数のリザーバーを覆い、且つ吸引手段との接続が一箇所のみであるのが先述の逆流の発生を抑える点では好ましい。また、カプラはカートリッジと一体になっていても構わないし、接着剤、両面テープなどでカートリッジに接着され、使用後取り外して再利用しても構わないし、カートリッジと一緒に廃棄されるものでも構わない。図13にカプラを備えるカートリッジの一例を示す。
【0033】
「フィルタ」
本発明のカートリッジにおいて、核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターで構成されていてもよい。ここでフィルターとは、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有する通気性のフィルム、シート、膜、板、塊状、繊維状、粒状等の任意の形態を意味する。フィルターの孔の形状やその連通状態、フィルターの厚さ、寸法等は、試料導入口から廃液槽に至る連通部分のいずれかに設置できるものであればよい。
【0034】
多孔質体からなるフィルターは、有機材料および無機材料のいずれからなっていてもよく、また天然材料、合成材料または半合成材料からなっていてもよい。具体的には、ナイロン、ポリプロピレン、セルロース、セルロースアセテートとニトロセルロースの混合物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ガラス、テフロン(R)、ポリエチレン、セラミック、金属、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロースエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、XRレジンまたはパーフルオロスルホン(カルボン)酸などがフィルターの素材として使用可能である。
【0035】
フィルターの例としては、天然、合成、半合成または再生の、有機または無機繊維からなる多孔質体;有機または無機発泡体(例えばスポンジ、フォームなど);孔成分の溶出、焼結、延伸、穿孔などにより孔形成された有機、無機多孔質体;有機または無機の微粒子や細片を充填または結合した多孔質体などを挙げることができる。
【0036】
膜の種類としては、焼結膜、延伸膜、飛跡―浸蝕膜、非対称型・多孔質相転換膜、非対称膜、複合膜、均質膜、イオン交換膜などが挙げられる(バイオ分離工学ハンドブック p230、 サイエンスフォーラム)。具体的には、ワットマン社製の濾紙、ミリポア社製のミリポアフィルター、多孔質ポリウレタンシート(テルモ社製のイムガード(R) III―RCのメインフィルターなど)、GENERATION(R) DNA Purification Capture ColumnTMで使用されているマトリックス(Gentra Systems社製)、シリカ膜などが使用可能である。
【0037】
本発明でいうメンブランフィルターとは、前記のミリポアフィルターに代表される均一な細孔を有する合成高分子膜のことである。ネットフィルターとは、縦糸と横糸とが交錯して規則正しい網目構造を形成している網のことである。本発明には、孔径が0.2〜30μmのメンブランフィルターまたはネットフィルターを使用できる。フィルターの孔径が0.2μm未満では濾過が困難になり、30μmを越えると核酸の捕捉が起こりにくくなる。
【0038】
核酸捕捉フィルターとして濾紙を用いた場合は、材料として安価であり、実験用の資材として市販されているものを用いることができるので好ましい。濾紙として、セルロースを主成分とする濾紙を用いることが好ましい。
【0039】
織布または不織布は、材料として安価である上に、濾紙よりも機械的強度が強いので好ましい。織布とは、縦糸と横糸とが交錯してできた布地を意味する。不織布とは、短繊維またはフィラメントを機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着または交絡させて作るシート状またはウェブ構造のものである(第二版 繊維便覧 繊維学会編 丸善)。
【0040】
不織布は、さまざまな方法で生産されるが、基本的な工程は、ウェブ(繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のもの)の形成工程、ウェブの接着工程、および仕上げ工程である。不織布には天然繊維から化学繊維まで種々の繊維が用いられているが、一般的に用いられているのは綿、レーヨン、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維であり、その他にもアクリル繊維、ビニロン、ガラス繊維、パルプ、炭素繊維なども使用される。ウェブを形成する方式は、湿式、乾式および直接式に大別される。直説法は、紡糸直結式ともいわれる方法で、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程である。これに含まれる方法は、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などであるが、本発明には、メルトブロー法でつくられた超極細繊維不織布が最も適している。
【0041】
このような不織布として、本出願人に係る国際特許出願PCT/JP02/06939号公報には、核酸を単離し増幅する方法に用いられる不織布が開示されている。不織布の孔径は2〜150μmのものが好ましく、7〜13μmのものがより好ましい。ここで、不織布の平均孔径とは、水銀ポロシメーターによって測定した測定値(メディアン値)をいう。平均孔径は、フィルター要素を構成する繊維の絡み具合や空隙の大きさに関連している指標である。
【0042】
織布の素材としては、木綿、絹、人絹、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などが用いられる。その他、布地に織ることができるもの、不織布に加工できるものであれば素材は限定されない。
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維からなる織布および不織布が好ましい。
【0043】
本発明の核酸捕捉物質として、核酸捕捉樹脂を用いてもよい。核酸捕捉樹脂は、フィルター以外の形状にも加工することができるため、反応槽への設置の制約が少ないので好ましい。この樹脂は、流路内で液体の流れによって移動しないように、メッシュ状のもので固定されていることが好ましい。樹脂の材質として、例えば、国際公開第98/46797パンフレットに記載されているシリコン、硼素、アルミニウムの元素を含むものを用いることが好ましい。このような樹脂としてXtrana社よりXtraAmpTM商品名で市販されている、プラスチック容器内に固定されている核酸捕捉樹脂を用いることができる。
【0044】
「界面活性剤」
また本発明の特徴は、核酸捕捉物質より核酸を溶出させる溶液に、界面活性剤を含んでいることである。溶出に用いる界面活性剤としては陰イオン系、非イオン系を用いることができる。また等電点以上のpH条件において陰イオン性を帯びる一部の両イオン性界面活性剤も用いることが可能である。本発明における陰イオン系界面活性剤として、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル-N-サルコシン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等が挙げられる。非イオン系界面活性剤として、例えばポリオキシエチレン(POE)高級アルコールエーテル、POE第2級アルコールエトキシレート、POEアルキルフェニルエーテル、POE脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。さらに、両イオン性界面活性剤として、例えばアルキルジアミノエチルグリシン、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、パルミトイルリゾレシチン、ドデシル-N-ベタイン、ドデシル-β-アラニン等が挙げられる。
【0045】
溶出液中に溶出された核酸を直接核酸の増幅反応に用いる工程においては界面活性剤の濃度を反応を阻害しない程度に抑えることが必要である。その濃度は界面活性剤の種類によって決まる。その点では一般的に1%ぐらいの濃度では増幅反応を阻害しない非イオン性のTween系あるいはTriton系の界面活性剤が好ましい。これらは反応槽にあらかじめ備えられる固形試薬の溶解液としても機能することが望まれる。
【0046】
「温調」
カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御することにより本発明の核酸増幅反応が遂行される。この核酸増幅反応は、等温度の反応によって行われる反応を用いることが好ましい。例えば、核酸増幅反応として広く実施されているポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を用いる場合、カートリッジ内における核酸捕捉物質が保持されている反応槽の部分を、少なくとも2つの異なる温度に交互に加温、冷却を繰り返す必要がある。しかし、核酸増幅反応が等温度で進行する反応を用いれば、一定温度への制御のみで核酸増幅反応が実施される。そのため、2つの温度に加温と冷却を行う場合に比べて、はるかに容易に実施することが可能である。
【0047】
等温度の核酸増幅反応を行う為には、カートリッジ全体を核酸増幅反応の温度に加温しても良いが、カートリッジの反応槽領域のみを集中的に加熱しても構わない。加熱は、カートリッジの外部に設置した装置で行うことができる。例えば、温度検出器、電気による発熱体および制御装置を組み合わせた外部装置によって達成される。温度制御をより厳密に行うために冷却装置を付け加えて、加熱と冷却を同時に行ってもよい。温度検出器としては、熱電対が使われるが、その他の温度検出器も使用可能である。
【0048】
発熱源として、温度によって抵抗値の変わる素子(PTC素子)を利用して一定温度の加熱を達成することもできる。この場合は、温度検出器を省略することができる。外部装置を必要としない、カートリッジ内に加温装置を備えた構造にすることも可能である。この場合、カートリッジ内に、加熱および/または冷却するためのエネルギー源を必要とする。例えば、エネルギー源として乾電池を用いて、カートリッジ内の発熱源を加熱および/または冷却して温度制御を行うことができる。
発熱源をカートリッジ内部に、エネルギー源をカートリッジ外部にすることも可能である。また、中和反応や水和反応などの化学的な発熱および/または吸熱反応を用いてもよい。
【0049】
カートリッジへの加熱および/または冷却が正しく行われることを確認するために、(イ)カートリッジまたは反応槽に近い部分に温度計を設置する、(ロ)カートリッジまたは反応槽に近い部分に、温度によって変色するラベルなどを貼付する、ことも有用である。加熱および/または冷却は、核酸増幅反応に必要な時間だけ行われればよいので、所要時間経過した後、温度制御を停止したり、警報を鳴らす為のタイマーを設置してもよい。
【0050】
「核酸増幅法」
等温度の核酸増幅反応として、既に実用化されている方法を用いることが好ましい。このような反応として、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification),ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids),SDA(Strand Displacement Amplification)、TMA(Transcription―Mediated Amplification)、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、SCAR、SMART、bDNA(Branched DNA Assay)、CPT(Cycling Probe Technology)、Q―Beta Replicase Amplification Technology、RCAT(Rolling Circle Amplification Technology)、などが挙げられる。特に、LAMP法は、増幅の効率が高く、反応時間が短いので好ましい。
【0051】
「検出法」
本発明における検出方法は、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を検出する方法であることが好ましい。その方法として、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出する方法がより好ましい。このような物質として、核酸インターカレーターを用いると検出が容易になるので好ましい。インターカレーターは、核酸増幅反応により生成した核酸と結合し、照射した光(励起光)よりも波長の長い光(放出光)を発するようになる(一般的に蛍光と呼ばれる)。例えば、エチジウムブロマイド、サイバーグリーン(SYBR(R) Green、Molecular Probes社製)、ピコグリーン(PicoGreen(R)、Molecular Probes社製)、オリグリーン(OliGreen(R)、Molecular Probes社製)、ヘキスト33256(Hoechst33258、Molecular Probes社製)などの、市販のインターカレーターを用いることができる。
【0052】
インターカレーターの代わりに、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出すれば、増幅された核酸の配列を特異的に検出することが可能になり好ましい。このような物質として、増幅された核酸と相補的な配列をもつオリゴ核酸に蛍光を発する低分子や、該蛍光を消光させる低分子を結合させたプローブを用いることができる。プローブは、増幅により生成した核酸とハイブリダイズさせることにより蛍光を発するようになる、またはプローブがもともと持っている蛍光が消失するように設計することが可能である。
【0053】
検出は、これらの物質が核酸と共存することにより、紫外線や可視光線等を照射した場合の蛍光や蛍光の消失を、光センサーや目視で行う。簡便な検出が必要な場合には、目視によって識別できる方法が好ましい。一方、検出結果を電子媒体などに記憶する場合には、光センサーを用いて電気的に検出する方法が好ましい。
【0054】
励起光および放出光の波長は、使用する物質により最適な値が異なる。励起光が紫外線で、放出光が可視光となる物質を使用した場合、カートリッジの反応槽に紫外線をあてることにより、目視で検出することができる。励起光と放出光が、共に可視光となる物質を使用した場合は、励起光を通さず、放出光を通すフィルター(干渉フィルター)、または励起光を通し、放出光を通さないフィルターを用いる方法が用いられる。これらの干渉フィルターを両方使用してもよい。フィルターの代わりに分光器(プリズム、グレーディング等)を用いる方法もあるが、検出する機器が高価になる。
【0055】
核酸増幅反応においては、目的の核酸が存在しない場合でも、核酸増幅反応に用いるプライマーどうしが酵素の働きにより二本鎖のDNAになる、いわゆるプライマーダイマーを生成する場合がある。この場合、インターカレーターは、プライマーダイマーにも反応するので、単なる蛍光の検出だけでは、試料中に目的の核酸が存在したことによる特異的な増幅なのか、プライマーダイマー生成による非特異増幅なのか区別がつきにくい場合がある。このような場合には、プローブを用いた検出が好ましい。
【0056】
本発明における別の検出方法として、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンを検出することによる核酸増幅反応の検出も適用可能である。ピロリン酸イオンを検出する方法としては、化学反応による方法が有用である。さらに、化学反応が、沈殿形成の反応または、有色の発色反応であれば、肉眼による検出、吸光度測定、散乱光測定、熱レンズを用いた検出などが可能になる。化学反応が発光を伴う反応であれば、肉眼での検出、光センサーを用いた検出などが可能になる。簡便な検出が必要な場合には、目視よって識別できる方法が好ましい。
【0057】
一方、検出結果を電子媒体等に記憶する場合には、吸光度、散乱光、熱レンズ、光センサー等、電気的信号として測定結果を取り出せる測定方法が好ましい。
検出する方法として、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの化学反応による白色の沈殿形成反応を利用する場合には、検出試薬としてマグネシウムイオンを核酸増幅反応試薬にあらかじめ添加しておけば、化学反応として、検出試薬リザーバーを別途カートリッジ内に設置する必要が無いので好ましい。
【0058】
その他、ピロリン酸イオンと化学反応して白色の沈殿を生じる物質として、バリウムイオン、銀イオン、マグネシウムイオン、カドミウムイオンが挙げられる。銅イオンは青白色の沈殿を生じる。これらのイオンを含む溶液を検出試薬として使用することができる。
検出する方法として、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤による化学反応を用いる場合、モリブデン酸塩としては、ピロリン酸イオンと錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としては、モリブデン酸アンモニウムがある。還元剤としては、ピロリン酸イオンとモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して、青緑色の化合物を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DL-ジチオトレイトール(DTT)などのメルカプト基を有する還元剤が挙げられる。
【0059】
その他、ピロリン酸をATPに変換してルシフェリン−ルシフェラーゼの系で発光させて検出する方法は、感度が高いので核酸増幅反応が微妙にしか起こらない場合に検出手法として有用である。ピロリン酸イオンをリン酸イオンに分解して、リン酸イオンを検出することも可能である。
【0060】
これらの反応をカートリッジ内で実施する場合、必要な物質を全て含む状態での試薬を核酸捕捉物質からの核酸溶出に用いても良い。また、あらかじめ試薬類を乾燥させた状態でカートリッジのリザーバー内に保存しておき、核酸溶出のためにはこれら乾燥試薬の溶解試薬を用いても構わない。特に試薬類を乾燥保存しておくものは、試薬を混ぜ合わせた状態で保存する場合に比べ、長期保存の間で試薬同士での反応が起こりにくいため好ましい。
いずれにしろ、光学的な手法により検出する場合、反応槽を取り囲む領域の少なくとも一部分は検出に必要な波長の電磁波を透過することが必要である。
【0061】
「カートリッジ製作」
本発明のカートリッジの材質としては、金属、ガラス、セラミックスなどを用いることもできるが、加工の容易さからプラスチックが好ましい。プラスチックを素材として利用するのは生体物質を取り扱うためカートリッジをディスポーザブルにする上でも好ましいといえる。使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
特に、透明な素材を使用すると、カートリッジ内の液の流れを目視しながら吸引操作が行えるので好ましい。
【0062】
本発明のカートリッジの作成方法は、特に限定するものではない。例えば、プラスチックを材質として用いる場合であれば、ニッケル等を加工することで母型を形成し、射出成形、熱プレス等の工業製品の加工に用いられる一般的な加工技術により容易に作成することが可能である。また、NC工作機械によりプラスチック表面を直接切削することで加工することも可能である。
【0063】
流路として液体類が内部を流れるようにし、カートリッジを完成させるためには、射出成形、機械加工等により表面を加工されたプラスチック部品を複数組み合わせる必要がある。例えば、表面に流路の形に溝を切られた平板に、さらにもう一枚の平板を貼りあわせることで、流路を形成することができる。貼り合わせの手法としては接着剤、両面テープ、熱または圧力を同時に掛けることによる熱圧着、薄いプラスチックシートによるラミネーションなどが採用可能であり、溝を埋めてしまうものでなければ、特に限定されるものではない。ただし、接着剤、両面テープなどについては、流路内を流れる液体により溶解、溶出しないことが好ましい。
ベント構造に用いられる膜の設置についても、貼り合わせ同様、接着剤、両面テープ、熱溶着等が使用可能である。これについては、膜の性質を変えてしまわない方法を用いるよう気をつける必要がある。
【0064】
カートリッジとしての形状を完成するための部品、加熱および/または冷却する場合において熱を効率良く伝える為の部品などは、プラスチックの他、アルミニウム、真鍮、鉄、銅、ステンレス、チタン合金、マグネシウム合金、ジュラルミンなどの金属であってもよい。カートリッジに熱を加える場合には、その加熱部分が設定した温度において、機械的強度を維持できる材質が必要である。
【0065】
本発明のカートリッジにおいて、測定する試料を区別するためにラベルを貼付したり、コンピューター等に読みとらせることが可能なバーコードやICチップなどを取り付けておくことは有用である。
【0066】
「測定対象」
本発明の核酸検出用カートリッジを用いて行う検出対象となる核酸を含有する材料としては、例えば、人の疾患の診断に用いる臨床試料である喀痰、唾液、尿、便、精液、血液、組織、臓器、その他の体液、これらの体液の分画、微生物汚染の検査に用いる食品、飲料水、土壌、排水、河川水、海水、ふき取り液、ふき取り綿などが挙げられる。また、例えば大腸菌などの細菌懸濁液を使用することができる。カートリッジに導入するまでの試料の前処理については、マイクロピペットなどを用いて手動で遂行する。試料を直接カートリッジに導入することも可能である。また前処理操作をカートリッジ内の工程に組み込むことも可能である。
【発明の効果】
【0067】
本発明により、核酸を含有する試料から特定の配列の核酸を増幅させ、核酸増幅反応物の有無を検出することができ、特定の配列の核酸について、試料中の存在の有無を簡便に高感度に検出することが可能になる。そのため、試料中の特定微生物の存在を検出する場合や、人の遺伝子診断を行ったりする場合において、高感度の検出が容易に達成される。すなわち、本発明による核酸検出用カートリッジを使って、医療分野、食品分野、環境分野等における遺伝子診断を、簡便、迅速、安全に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、何らこれに限定されるものではない。
実施例中に記載された長さ、深さ、直径等の数値は単なる例示であって、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。なお、実施例で用いた図面中、寸法の単位はmmである。
【実施例1】
【0069】
カートリッジの基材としてアクリル板(日東樹脂製:クラレックス)を使用した。カートリッジは計3枚のアクリル板からなり、中心の板の厚さは2mm、中心の板の両側を挟む形でカバーシートともなる2枚の板の厚さは共に0.5mmである。
カートリッジに形成される流路の全体像を図8に示されているものである。そしてこの構造を実現するために、3枚のアクリル板に対し図11のように溝を刻む。図11に示されたカバーシートに挟めれる真中の板は両面に溝を形成するため、片面を加工した後、反転して他の面の加工を行った。溝の加工にはNC工作機(ローラント゛DG社製:EGX-300)を用いた。使用したCADはAutodesk社製のAutoCAD LTとInventorで、まずAutoCAD LTを用いて2D図面を製作した後、Inventorにより3D構造へ変換する。その後、NC工作機が使用するフォーマットへとローラント゛DG社が供給するソフト(MODELA Player)を用いて変換した。なお、2枚のカバーシートに挟まれる真中のアクリル板に対しては両面に溝形成を行うため、一方の流路パターンについてはCAD上で鏡面コピーを施して使用することに気をつける必要がある。
【0070】
3枚の板に溝を形成した後、これらを貼り合わせる前に、DNAを抽出するフィルター、ベント部分の疎水ベント膜をそれぞれの板に貼り付けた。貼り付けのためには両面テープを用いた。本実施例ではDNA抽出用のフィルターとしては不織布(マイクロウェブA040C01、旭化成株式会社)を使用し、疎水ベント膜にはPTFEフィルター(孔径0.1μm、ADVANTEC社)を使用した。
【0071】
これらのフィルターを形成した後、3枚の板を両面テープで貼り合わせることでカートリッジとするが、実験の便宜上、試薬、試料の導入部分にピペットチップを加工して液リザーバーを形成した。これの接着はエポキシ系の接着剤で行った。
次に反応槽のベント部分を覆う形状を持つカプラを両面テープで接着することで、カートリッジとして完成される。完成されたカートリッジを図14、図15に示す。
廃液槽の排出口、及びカプラにはピペットチップ先端部を切り取ったものを接着剤で貼り付けてあり、このピペットチップにシリコンゴム製チューブをはめ込み、反対端に10mLのシリンジ(テルモ製)をはめ込んだ。
なお、本実施例では、乾燥試薬は用いず、DNA溶出時の試薬に必要な全てを含ませて実験を行った。
反応に必要なカートリッジの加熱は、カートリッジを必要な温度に調整された鉄板上に置くことで行ったが、これはカートリッジ本体の厚みが薄いこともあって問題無いことを確認した後、実験を実施した。
【0072】
ここでは具体的な測定対象として牛胎児胚雌雄の判別を行った。
牛血液1μlを、1mlの0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、25mMのEDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むpH=7.6の10mMのトリス緩衝液で溶解し、核酸を含む試料とした。
洗浄液1:0.2mlの0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、25mMのEDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むpH=7.6の10mMのトリス緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン/塩酸)
洗浄液2:0.2mlの1Mの塩化ナトリウムを含むpH=7.4の10mMのリン酸ナトリウム緩衝液
洗浄液3:0.2mlのTE緩衝液(1mMのEDATを含む10mMのトリス緩衝液)
核酸増幅反応試薬:50μlの牛胎児胚雌雄判別キット(栄研化学)の反応液(プライマー、基質、酵素を含む)なお、本キットで使用されている増幅法は栄研化学が開発したLAMP法である。
実験は乾燥試薬を使用しなかったため2つのカートリッジを使用し、それぞれ雄特異的プライマー、雌雄共通プライマーを含む試薬で実験を行った。それぞれのプライマーを乾燥試薬化し、別々の反応槽に設置すればカートリッジは1個で足りるのは云うまでもない。
【0073】
試料注入口側の蓋を開け、ピペットで試料を500μL導入する。蓋を開けた状態のまま、廃液槽の排出口に接続されたシリンジをゆっくり引き、導入したサンプルを吸引し、その結果設置した不織布に検出すべきDNAが抽出され、廃液は反応槽側に入ることなく廃液槽側に流れていき、設置された吸水シートに吸収された。この際PTFEフィルターが設置された排出口からの液の漏れは観測されなかった。
【0074】
次に同じ試料注入口にピペットで洗浄液1を500μLずつ導入、蓋を開けた状態のまま、廃液槽の排出口に接続されたシリンジをゆっくり引き、導入した洗浄液を吸引し、その結果DNAを抽出した不織布に取り残された不要の薬品類が洗浄され、廃液は反応槽側に入ることなく廃液槽側に流れていき、設置された吸水シートに吸収された。この際も試料導入時同様PTFEフィルターが設置された排出口からの液の漏れは観測されなかった。洗浄液2、3についても同様に行った。
【0075】
次に試料注入口の蓋を閉め、試薬注入口の蓋を開ける。ピペットで試薬を500μL導入する。蓋を開けた状態のまま、反応槽部のカプラに接続されたシリンジをゆっくり引き、導入した試薬を吸引する。その結果、DNAを抽出した不織布よりDNAが溶出されると同時に、分岐に従い形成した13ヶの反応槽に気泡を含むことなく送られた。(図13参照、写真は流路の様子が見え易くするため、実際の試薬では無く色素を流している。)各反応槽ではベント構造を通して空気が排出され液が充填されると共に、反応が開始される。なお、カートリッジの温度は65℃にあらかじめ設定しておいた。
【0076】
30分間、核酸増幅反応を行い目視にて反応槽内部の観測を行った結果、2つのカートリッジの全ての反応槽において内容物が白濁しているのが観測された。すなわち、本実施例のカートリッジにより、試料に含まれる牛胎児胚由来のDNAが検出されると共に雄であることが確認された。
【実施例2】
【0077】
実施例1において、試薬として、反応槽に事前に凍結乾燥しておいた試薬を保存し同様の実験を実施した。実施例1との違いは、一部の反応槽内にLAMP法による核酸の増幅のために必要なプライマーを意図的に入れずに置いたことである。
核酸の捕捉、抽出、増幅のための操作は実施例1と同様に行い、反応槽内容物の変化を観測した。その結果、実施例1と同様に白濁する反応槽が見られる一方、増幅のために必要なプライマーが存在しない反応槽では白濁は見られなかった。すなわち、このカートリッジにより、試料に含まれる牛胎児胚由来のDNAを特異的に検出されたことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本カートリッジの機能を示す図面、
【図2】図1に示した動作を弁構造なしに実現する例を示す図面、
【図3】アクセス孔を上面にまとめた例を示す図面、
【図4】図3の例の平面図、
【図5】図3の試料と試薬との流れを逆にした例を示す図面、
【図6】反応槽を1列に並べた例を示す図面、
【図7】リザーバー部分にベント膜を形成した例を示す図面、
【図8】リザーバーとは別にベント膜を形成した例を示す図面、
【図9】吸収パッドの配置例を示す図面、
【図10】本カートリッジの全体像を示す図面、
【図11】カートリッジ用の溝を刻んだアクリル板(写真)、
【図12】吸引手段としてシリンジを使用した例(写真)、
【図13】シリンジにより試薬を吸引した状態(写真)
【図14】本カートリッジの完成品の例(写真)
【図15】本カートリッジの完成品の例(写真)
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な構造を有する核酸検出用カートリッジ及びそれを使用する核酸検出方法に関する。より詳しくは、本発明は、核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を捕捉させた後、試薬溶解用バッファー等を核酸捕捉物質に流すことにより捕捉された核酸を捕捉物質より溶出し、増幅反応を行う反応槽に移送する。その後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、核酸増幅反応の有無を検出する。これら一連の工程を行うのに用いられる核酸検出用カートリッジ及び該カートリッジを使用した核酸検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療における臨床検査の現場では、患者から採取した試料を、臨床の現場において、迅速、かつ、簡便に検査し、結果を判断してすぐに診療に生かす、いわゆる”ポイント・オブ・ケアー・テスティング(POCT)”と呼ばれる診断法が求められている。また、河川、海洋、廃棄物中の有害物質の分析といった環境分野や、食品の細菌や毒物による汚染検査といった食品分野の分析についても、それぞれの現場または現場の近傍で分析・計測を行う”ポイント・オブ・フィールド・テスティング”が注目されている。これらの簡易迅速検査においては、できるだけ短時間に、手動で行う操作を減らすことが要求される。すなわち、試料の前処理から検出までの一連の工程を、”カートリッジ”と呼ばれる装置の中で完結することが望ましい。
【0003】
特許文献1に記載の「核酸抽出、増幅および検出を統合する自己充足装置」には、核酸抽出、増幅および検出を行うシリンダー状の装置が開示されている。この発明は、核酸抽出、増幅および検出を統合するとしてものと規定されている。しかし、この発明は、装置内での反応液などの送液の問題が充分に解決されていない。実際、この特許文献の実施例に示されているのは、核酸の抽出工程、増幅工程および検出工程について、それぞれの要素技術を開示しているにとどまり、「自己充足装置」として要求される各工程を一貫して実施した例は開示されていない。すなわち、シリンダー状の装置を用い圧を掛けながら液送りを試みる方式では、(イ)液体を送液する場合の流路を作成したり、弁構造を導入する場合に於いて複雑な構造を要求され安価に製造することが困難になる、(ロ)装置内の溶液を送液する場合において、弁を用いずに要求される流路のみに液体を導くことが困難である、といった問題がある。
【0004】
また、本出願人に係る特許文献2に記載の「核酸検出用カートリッジ」には、核酸抽出、増幅、検出を行うカートリッジの記載があるが、核酸抽出と増幅を行う反応槽が同一であり、かつ核酸を溶出する機能は持たないため、複数の反応を同時に行おうとすると、核酸抽出部を複数形成する必要があり、構造が複雑になるだけで無く、試料を大量に用意しなければならない。
【0005】
また、本出願人に係る特許文献3に記載の「不織布を用いた核酸精製法及び検出法」には、核酸抽出に供された物質より再度核酸を溶出し、増幅反応を行う技術の記載があるが、これをカートリッジ上で実現する手法についての記述はなされていない。
以上のように、現在、前記の要求を満たすものは、未だ実用化されていない。
【特許文献1】特表平12-509100号公報
【特許文献2】特開2004-208512号公報
【特許文献3】WO 03/006650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、試料に含まれる核酸の精製、増幅および検出について、一貫してカートリッジ内で行い、多項目の同時検出を実現する核酸検出用カートリッジを、簡単な構造で、安価に構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、これらの課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、カートリッジ内に吸引の特性を活かした試料及び試薬の流路構成を作成し、カートリッジ内で反応を行うことができる弁構造を不要とした核酸検出用カートリッジを実現し本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明において、核酸とは、DNA(deoxyribonucleic acid)またはRNA(ribonucleic acid)を意味し、対象となる材料に含まれるDNAまたはRNAを意味する。
【0009】
本発明は、次のとおりの核酸検出用カートリッジ及びそれを用いる核酸検出方法に関する。
【0010】
(1) 核酸を含む試料中の核酸を核酸捕捉物質に捕捉させ、その後核酸捕捉物質に捕捉した核酸を溶出して核酸増幅反応槽に移送した後、該核酸を鋳型として核酸増幅反応を行わせ、核酸増幅反応の有無を検出するための核酸検出用カートリッジであって、該カートリッジは、
(イ) 核酸を含む試料をカートリッジに導入する少なくとも1つの試料注入口または試料槽、
(ロ) 該注入口または試料槽と連通する少なくとも1つの排出口または廃液槽、
(ハ) (イ)と(ロ)を連通する流路、
(ニ) 前記核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体をカートリッジに導入する少なくとも1つの溶液注入口または溶液槽、
(ホ) 少なくとも2つの核酸増幅反応試薬用リザーバー、
(ヘ) (ニ)と(ホ)を連通する流路、
(ト) (ハ)及び(ヘ)は共通する流路部分を有し、該共通する流路部分に設置させる前記核酸捕捉物質、
(チ) (ロ)及び(ホ)にそれぞれ備えられたベント構造、
を有することを特徴とする核酸検出用カートリッジ。
【0011】
(2) それぞれのベント構造に吸引手段が接続されていることを特徴とする前記(1)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(3) (ホ)に備えられたベント構造が、少なくとも2つのリザーバーの出口を一にするカプラを含むことを特徴とする前記(1)または前記(2)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(4) ベント構造が多孔質かつ疎水性の膜を含むことを特徴とする、前記(1)ないし前記(3)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(5) 排出口または廃液槽と連通し、核酸捕捉物質の洗浄を目的とする液をカートリッジに導入する少なくとも1つの注入口または溶液槽を、さらに包含することを特徴とする前記(1)ないし前記(4)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(6) 廃液槽内に吸水能力を備える物質を備え、同時に廃液槽への入り口と排出口を貫通する吸水能力を持つ物質が存在しない流路を備えることを特徴とする、前記(1)ないし前記(5)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0012】
(7) 試料供給口及び溶液供給口が開閉可能な蓋を備え、蓋の開閉により、流れる液を制御することを特徴とする前記(1)ないし前記(6)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(8) 核酸増幅反応用リザーバーに少なくとも1種の核酸増幅用反応試薬が収納されたことを特徴とする前記(1)ないし前記(7)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(9) 核酸増幅反応試薬の少なくとも1種が非流動性を備え、あらかじめ核酸増幅反応用リザーバーに収容されたことを特徴とする前記(8)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(10) 核酸溶出に供される溶液が非流動性を備える該反応試薬の溶解液も兼ねることを特徴とする前記(9)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(11) 核酸溶出に供される溶液が陰イオン系あるいは非イオン系、または等電点以上のpH溶液における両イオン性表面活性剤を含むものであることを特徴とする前記(1)ないし前記(10)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(12) 試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えることを特徴とするゲル濾過デバイスが接続されることを特徴とする、前記(1)ないし前記(11)のいずれかにに記載の核酸検出用カートリッジ。
(13) 核酸を含む試料が核酸を捕捉させるために核酸捕捉物質を通過する方向と、該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体が該核酸捕捉物質を通過する方向が、相対向することを特徴とする前記(1)ないし前記(12)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0013】
(14) 核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体の流れる方向が、核酸捕捉物質の上面から下面に向かう方向であることを特徴とする前記(1)ないし前記(13)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(15) 核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターからなることを特徴とする前記(1)ないし前記(14)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(16) 核酸捕捉フィルターが、濾紙、織布、不織布、マトリックスまたは膜からなることを特徴とする前記(15)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(17) カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御する手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(16)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(18) 温度制御する手段が等温度制御するものであることを特徴とする前記(17)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(19) 核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(18)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(20) 核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出するものであることを特徴とする前記(19)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(21) 蛍光強度が変化する物質が核酸インターカレーターであることを特徴とする前期(20)に記載の核酸検出カートリッジ。
(22) 核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、該核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出するものであることを特徴とする前記(19)ないし前記(21)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(23) 核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出手段を有することを特徴とする前記(1)ないし前記(18)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(24) ピロリン酸イオンの検出手段が、不溶性沈殿を生成させる化学反応を利用したものであることを特徴とする前記(23)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(25) 不溶性沈殿を肉眼で観察することにより検出することを特徴とする前記(24)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(26) 不溶性沈殿を含む懸濁液に光を照射し、照射された光の散乱を検出することを特徴とする前記(24)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(27) ピロリン酸イオンの検出手段が、有色の色素を生成させる化学反応を利用したものであることを特徴とする前記(23)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(28) 有色色素を計測するピロリン酸イオンの検出手段が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果を利用したものであることを特徴とする前記(27)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(29) 化学反応が、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤の反応であることを特徴とする前記(27)または前記(28)に記載の核酸検出用カートリッジ。
(30) 核酸増幅反応が、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの反応であることを特徴とする前記(24)から前記(26)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(31) カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が検出に必要な波長の電磁波を透過するものであることを特徴とする、前記(20)ないし前記(30)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(32) カートリッジを形成する素材が樹脂である前記(1)ないし前記(31)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
(33) カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が透明である前記(1)ないし前記(32)のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【0014】
(34) 少なくとも1つの排出口または廃液槽に備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、試料注入口または試料槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも1つの排出口または廃液槽に向かって試料を移動させて試料中の核酸を該核酸捕捉物質に捕捉させ、次いで、少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、溶液注入口または溶液槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに向かって溶液を移動させて外核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶離し溶液とともに核酸増幅反応試薬リザーバーに移送させることを特徴とする、前記(1)に記載の核酸検出用カートリッジを使用した核酸検出方法。
(35) 核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出であることを特徴とする前記(34)に記載の核酸検出方法。
(36) 核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出であることを特徴とする前記(34)に記載の核酸検出方法。
(37) ピロリン酸イオンの検出が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果によるものであることを特徴とする前記(36)に記載の核酸検出方法。
(38) 核酸増幅反応が、等温度の反応によって行われることを特徴とする前記(34)ないし前記(37)のいずれかに記載の核酸検出方法。
【0015】
さらに詳細に本発明について述べる。
本発明で開示される技術は、核酸を含む試料から、核酸捕捉物質に核酸を選択的に捕捉させた後、試薬溶解用バッファー等をこの核酸捕捉物質に流すことにより捕捉された核酸を捕捉物質より溶出し、増幅反応を行う反応槽に移送する。その後、溶出された核酸を鋳型にして核酸増幅反応を行い、核酸増幅反応の有無を検出する一連の操作を実施することを可能にする。検出試薬は、核酸増幅反応試薬の中に含まれる。この場合、検出試薬は、核酸増幅反応に影響を与えないような物質である必要がある。本発明では、試料は導入口から入り、核酸を捕捉した後の不要分は廃棄槽などへ導かれる。そして、捕捉された核酸は、試薬バッファ等の液体を捕捉物質に流すことで再度溶出し、そしてこの場合廃棄槽ではなく反応槽に移送される。このようにすることで、反応槽内にはDNA、反応試薬など必要な物質のみを存在させることとなり、前工程の不要な溶液を意図して除くといった追加の工程は不要である。すなわち、各リザーバー、導入口等から順に試料、各試薬溶液等を供給していくことだけで、核酸検出まで行うことができる。また、カートリッジの試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えるゲル濾過デバイスを接続すれば、試料の前処理もカートリッジでのみで行うことができ便利である。
【0016】
本発明で示される核酸捕捉物質から核酸を溶出する工程を実施することは、同一のカートリッジ上で、複数の反応を同時に行うことを可能とし、実際の使用に際して大きなメリットとなる。すなわち、溶出した後の流路を分岐し、複数の反応槽に溶出した核酸を導くことで複数の検査を同時に実施することも可能である。特に複数の反応槽内に異なる反応試薬を含ませることで、複数の異なる反応を同時に実施することが可能となり、核酸捕捉物質に捕捉された状態で増幅反応、検出を行う場合は単一の反応しか行えないのに比べ大きなメリットとなる。例えば、核酸増幅反応が正しく達成させたことを確認する陽性対照(ポジティブコントロール)および/または核酸増幅反応が正しく達成されなかったことを確認する陰性対照(ネガティブコントロール)を同一のカートリッジ内で達成できるようにすることが好ましい。また、このカートリッジにおいて、廃棄槽と連通し、洗浄液が収納された少なくとも1つの洗浄液リザーバーを、さらに包含していてもよい。これにより、核酸を含む試料中に、核酸増幅反応を阻害する物質が含まれている場合において、核酸捕捉物質に核酸を捕捉させた後、溶出、移送、核酸増幅反応といった手順を踏む前に、核酸捕捉物質を洗浄、阻害物質を除去することができるので、核酸増幅反応が阻害されなくなるので好ましい。
【0017】
本発明における以上述べた機能を有するカートリッジは、図1に示されるように2段階のプロセスを実現する構造を有する。すなわち、検出したい核酸を含む試薬を核酸を捕捉する捕捉物質に導入し核酸を捕捉させる工程。そして、試薬バッファー等を核酸を捕捉した捕捉物質に送り捕捉された核酸を溶出した後、試薬等を含む反応槽に送る工程、である。その際、核酸を捕捉させる膜に対して液体が流れる向きには、捕捉時と溶出時で捕捉物質に対して同じ向きに液体が流れる場合と、図1のようにそれぞれが逆向きに流れるという2通りが考えられる。ここでは以後、逆向きに流れるものを例として、カートリッジの構造について述べるが、核酸を捕捉、溶出、増幅、検出という本発明カートリッジの機能を実現するものであれば、同じ向きに流れるものであっても構わない。同じ向きに流れるものの場合、各液の供給口及び核酸捕捉物質までの流路を共通とすることも可能である。
【0018】
図2では廃液槽、反応槽ともカートリッジ下面側に吸引のための外部とのアクセス孔がある構造となっている。アクセス孔の位置はカートリッジの下面、上面側面、いずれにあっても核酸の捕捉、溶出などに影響を与えないのであれば構わない。図3は廃液槽、反応槽のアクセス孔を上面にまとめた例である。図4は図3を実現するための流路設計例を示す平面図である。ここでは試料および捕捉された核酸溶出用の溶液はそれぞれ、各アクセス孔からの吸引を制御することで図1の2つの動作を弁口構造なしで実現している。なお、図4が図3に示された機能を実現するための唯一の構成でないことは言うまでも無い。図3では試料ならびに核酸溶出用の溶液の核酸捕捉物質に対する流れの向きは、それぞれ上面から下面方向、下面方向から上面方向、となっている。これは図5に示すように反対、すなわち試料が下面から上面方向、上面から下面方向にすることも可能である。しかし、溶液が核酸捕捉物質を通過する際に泡が発生する可能性を考慮すると、試薬バッファーを核酸捕捉物質の上面から下面に向かって流す方向にする方が、泡は上方に移動するため、反応槽へ向かう流路へ混入する可能性を低くでき、反応槽への泡混入を防ぐ効果が得られるためより好ましい。また反応槽の配置については、図4のように流路分岐点から放射線上に配置すれば、各反応槽までの距離が同一になり好ましいが、図6のように一列に並べても、後述のカプラの構造など簡単になるメリットが有り、特に限定されるものでは無い。
【0019】
次にカートリッジ構造を完成させるに必要な要素技術について述べる。
「ベント構造」
試料や試薬溶液のカートリッジ内の移動を実現するためには、移動先に至るキャピラリ(溝)の中の空気を、流路外へ排出するベント構造を形成する必要がある。液体がカートリッジ外にあふれ出てしまう状況になると周囲を試料で汚染してしまう恐れがある。その際、カートリッジ内に液体を確実に留めるには、気体は通して液体は通さない機構をベントとして流路の端部に設けることが望ましい。
気体を通すが液体は通さない目的を達成するために、疎水性の小孔や疎水性膜を、液体を通さずに空気のみを通すベントとする技術が、キャピラリーの場合より遥に大きな液量を対象として、かなり以前から検討されている。例えば、人工透析装置などの血液処理装置における血液からの空気抜きは、特開昭57-17659号公報や特表平09-500809号公報等に記載されている。また、一般の工場などで用いる薬液や水中の自動空気抜きフィルターとして、カートリッジよりも相当大きな装置に設ける例が、特開平02-2812号公報に記載されている。これらはいずれも、本発明が対象とする1μl以下の液量に比べ、かなり大量の液体を対象としたものである。
【0020】
1μl程度の液量を対象としたカートリッジ内での、このような空気抜きベントに用いられるものとしては、3μm程度の微小な疎水性の穴(HMCV(Hydrophobic Micro Capillary Vent))が知られている(Proceedings of the μTAS '98 Workshop, held in Banff, Canada, 13-16 October 1998. Editors: D.Jed Harrison and Albert van den Berg, Kluwer Academic Publishers、p307-310 Hydrophobic Microcapillary vent for pneumatic manipulation of liquid in オTAS、Kazuo Hosokawa, Teruo Fuji, and Isao Endo 、電気学会研究会資料:化学センサシステム研究会 CS-99-1~12,p19-22,1999年3月16日、藤井輝夫、細川和生、Hong Jong Wook、関実、遠藤勲 等)。
【0021】
また、疎水性の膜を流路の端部に設ける技術も開示されている(Affymetrix社 Andersonら,Proceeding of Transducers '97. 1997 International Conference on Solid State Sensors and Actuators 2C1.02,国際公開WO第9702357号公報,米国特許第5856174号公報)。この技術では、カートリッジ外部の試薬溶液や試料をチューブでカートリッジに接続し、カートリッジ内に設けたダイアフラムバルブ(カートリッジ外の力で開閉)で、前記試薬溶液や前記試料を流すキャピラリを選択するようになっている。そして、キャピラリ内の空気を、流路端部の疎水性の膜からなるベントを通して流路外へ押し出しながら送液するようになっている。前記ベントは常に外部に開放されており、前記ベントに通じる流路の圧損や、ブレイカブルシールで圧逃げ穴をあけることによって、送液の制御を行っているため、その構造が極めて複雑となる問題点を有している。
【0022】
Anderson et al. (USP6,197,595)および本出願人に係るWO01/13127ではベント膜を備える流路構造が記載されている。しかし、その目的は2種の液体を合体されるためであり、反応試薬を溶解するため等のためにリザーバーに液を満たすといったものである。しかし、本願に示される構造は、液体だけではなく、試料に含まれるであろう核酸といった物質の外部への排出を防ぐために排出口に形成されており、その形成場所、効果には大きな違いがある。
【0023】
また、ベント部分の構造については、図7のようにリザーバー部分にベント膜を形成しても良いし、図8のようにリザーバー部分からベント用流路をさらに形成し、その先の開口部に形成しても構わない。すなわち、ベントはリザーバーに付随するものであっても良いし、リザーバーとは別にベントのみを形成する形態であっても構わない。
【0024】
このベントに用いられる膜のカートリッジへの接着は両面テープや接着剤などが使用可能であり、特に限定されるものでは無い。ただし、使用する溶液に対する耐性に気をつける必要がある。また、複数リザーバーを単一の膜で同時にベントする場合は、リザーバー間が導通しないようリザーバー間も接着されるよう貼り付けることが好ましい。
【0025】
「廃棄部分に設置のベント」
本発明のカートリッジは、核酸増幅反応以降の工程を、カートリッジの中の密閉された空間内で達成することが可能な構造を備える。これにより核酸の捕捉、増幅反応およびそれ以降の工程が密閉された空間内で達成されるので、核酸増幅反応によって増幅された特定の配列の核酸が、別の試料に混入することが避けられる。もし、このような混入が起きた場合には、もともとの試料には、目的の核酸が含まれていないにもかかわらず、核酸が含まれているという誤った結果を与えることになる。
【0026】
密閉構造を達成するための構造は特に限定されないが既に述べたように、排出口などの外気に接触する部分、ならびにカートリッジ内の液体や気体と外気との接触部分にベント構造を形成し、汚染物質を含む液体を閉じ込めることで実現できる。さらに、排出口にDNAなどの汚染の原因になる物質が外部に排出されないよう、汚染の原因物質を捕捉する膜を設置するのが好ましい。特にDNAの外部への汚染を抑える場合はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のような疎水性多孔質の膜が廃液類の排出の抑制にも効果が有り好ましい。
【0027】
また、廃液槽を密閉構造にする場合、一度廃液槽に入った不要物質を含む液体が逆流したり、ベント部分が液体で覆われてしまう、などの不具合が発生しないよう吸水パッドを設置することが望ましい。特に排出口がベント構造になっている場合、液体がベント膜全面を覆い空気の通り道を塞いでしまう状況になると、それ以降は吸引の効果が得られなくなるため、吸水パッドを設置しベント部への液体の到達を防ぐことが必須である。吸水パッドの配置については、図9に示すように流路から排出口に行くまでに廃液が十分吸水パッドに吸収されるよう、廃液が吸水パッドに沿って流れるような構造にするのが効果的であり好ましい。廃液が排出口に到達するまでの吸水パッドに沿って移動する距離を長くするほど吸水パッドに吸収される比率が高まることが期待できる。さらに言えば、もしこの吸水パッドが廃液槽に充填され、液体の流れる流路を残さない構造になると、吸水パッドに液体が取り込まれることで、液を流すに必要な吸引圧が非常に高くなる可能性があり好ましくないことが判った。すなわち、廃液が吸水パッドに沿って流れるような構造、もしくは廃液槽入り口から排出口に向かって、吸水パッドが存在しない少なくとも一本の流路領域を残しておくのが好ましい。
「液送り(吸引)」
【0028】
また本願発明の特徴はカートリッジの構造を複雑にさせる原因ともなる弁構造を含まないことである。これは、試料導入口〜排出槽、核酸溶出用溶液導入口〜反応槽と連通する流路に対し、排出槽または反応槽に設けたベント構造側からの吸引により液送りを行うことで実現される。液送りの手段として液を押し出す方式の場合、流路途中に分岐が存在すると分岐先が閉止されていても幾分かの液体の侵入をも発生させないことは困難であり、一度侵入してしまうと除去はさらに困難である。しかし、吸引方式では、分岐点より不要な気体を取り込むことは有り得るが、排出槽、反応槽をベント構造を備えるものとすることで不要な気体を排出することが可能であり、この悪影響を抑えることができる。ベントは既に述べたように多孔質の疎水性膜を含む構造となっており、吸引によって、連通部分に空気が存在したとしてもベント膜を通過してカートリッジより抜けて行くが、不要となった試料、試薬を溶解するに必要な試薬溶液は、それぞれ廃液槽、反応槽に残り必要な反応が実施されることとなる。そしてこのような構造を持つことでカートリッジ外部を汚染することも防ぐことができる。
【0029】
吸引のための手段は特に限定されるものではない。たとえば、図10及び図12のように排出口にシリンジを接続し、機械もしくは人間の手により引くことでも実現される。もちろん真空ポンプを利用することも可能だが、適当な吸引力を発生させるためのなんらかの調整手段が必要となる場合もある。
【0030】
シリンジもしくはピストンを利用した液送りの手法は既にさまざまな応用例が存在するが、本発明ではこれらを吸引のための手段としてベント構造を介して液の移動に使用すると同時に、吸引の特性を活かした流路構成をとることで、弁構造を不要とするカートリッジを実現した。
【0031】
「カプラ」
試薬を擁する反応槽に核酸を含む液体を導入し、試薬を溶解させると同時に反応を行う時、複数の反応槽が存在し、それぞれに繋がる流路がカートリッジ内で合流している場合、それぞれを別に用意された手段で吸引すると、圧力の差などにより、反応槽によっては逆流が発生、液体が反応槽より流出する可能性がある。そのため、本発明ではベント構造を持つ複数のリザーバーを同時に吸引できるようカプラ構造を設けている。
【0032】
カプラの構造、材質としては特に限定は無いが、複数のリザーバーを覆い、且つ吸引手段との接続が一箇所のみであるのが先述の逆流の発生を抑える点では好ましい。また、カプラはカートリッジと一体になっていても構わないし、接着剤、両面テープなどでカートリッジに接着され、使用後取り外して再利用しても構わないし、カートリッジと一緒に廃棄されるものでも構わない。図13にカプラを備えるカートリッジの一例を示す。
【0033】
「フィルタ」
本発明のカートリッジにおいて、核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターで構成されていてもよい。ここでフィルターとは、一方の面から他方の面に連通する多数の微細な孔を有する通気性のフィルム、シート、膜、板、塊状、繊維状、粒状等の任意の形態を意味する。フィルターの孔の形状やその連通状態、フィルターの厚さ、寸法等は、試料導入口から廃液槽に至る連通部分のいずれかに設置できるものであればよい。
【0034】
多孔質体からなるフィルターは、有機材料および無機材料のいずれからなっていてもよく、また天然材料、合成材料または半合成材料からなっていてもよい。具体的には、ナイロン、ポリプロピレン、セルロース、セルロースアセテートとニトロセルロースの混合物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフロライド、ガラス、テフロン(R)、ポリエチレン、セラミック、金属、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロースエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、XRレジンまたはパーフルオロスルホン(カルボン)酸などがフィルターの素材として使用可能である。
【0035】
フィルターの例としては、天然、合成、半合成または再生の、有機または無機繊維からなる多孔質体;有機または無機発泡体(例えばスポンジ、フォームなど);孔成分の溶出、焼結、延伸、穿孔などにより孔形成された有機、無機多孔質体;有機または無機の微粒子や細片を充填または結合した多孔質体などを挙げることができる。
【0036】
膜の種類としては、焼結膜、延伸膜、飛跡―浸蝕膜、非対称型・多孔質相転換膜、非対称膜、複合膜、均質膜、イオン交換膜などが挙げられる(バイオ分離工学ハンドブック p230、 サイエンスフォーラム)。具体的には、ワットマン社製の濾紙、ミリポア社製のミリポアフィルター、多孔質ポリウレタンシート(テルモ社製のイムガード(R) III―RCのメインフィルターなど)、GENERATION(R) DNA Purification Capture ColumnTMで使用されているマトリックス(Gentra Systems社製)、シリカ膜などが使用可能である。
【0037】
本発明でいうメンブランフィルターとは、前記のミリポアフィルターに代表される均一な細孔を有する合成高分子膜のことである。ネットフィルターとは、縦糸と横糸とが交錯して規則正しい網目構造を形成している網のことである。本発明には、孔径が0.2〜30μmのメンブランフィルターまたはネットフィルターを使用できる。フィルターの孔径が0.2μm未満では濾過が困難になり、30μmを越えると核酸の捕捉が起こりにくくなる。
【0038】
核酸捕捉フィルターとして濾紙を用いた場合は、材料として安価であり、実験用の資材として市販されているものを用いることができるので好ましい。濾紙として、セルロースを主成分とする濾紙を用いることが好ましい。
【0039】
織布または不織布は、材料として安価である上に、濾紙よりも機械的強度が強いので好ましい。織布とは、縦糸と横糸とが交錯してできた布地を意味する。不織布とは、短繊維またはフィラメントを機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着または交絡させて作るシート状またはウェブ構造のものである(第二版 繊維便覧 繊維学会編 丸善)。
【0040】
不織布は、さまざまな方法で生産されるが、基本的な工程は、ウェブ(繊維の方向がある程度揃った繊維塊のシート状のもの)の形成工程、ウェブの接着工程、および仕上げ工程である。不織布には天然繊維から化学繊維まで種々の繊維が用いられているが、一般的に用いられているのは綿、レーヨン、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維であり、その他にもアクリル繊維、ビニロン、ガラス繊維、パルプ、炭素繊維なども使用される。ウェブを形成する方式は、湿式、乾式および直接式に大別される。直説法は、紡糸直結式ともいわれる方法で、溶融高分子溶液から紡糸された繊維を集めて直接ウェブとする工程である。これに含まれる方法は、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などであるが、本発明には、メルトブロー法でつくられた超極細繊維不織布が最も適している。
【0041】
このような不織布として、本出願人に係る国際特許出願PCT/JP02/06939号公報には、核酸を単離し増幅する方法に用いられる不織布が開示されている。不織布の孔径は2〜150μmのものが好ましく、7〜13μmのものがより好ましい。ここで、不織布の平均孔径とは、水銀ポロシメーターによって測定した測定値(メディアン値)をいう。平均孔径は、フィルター要素を構成する繊維の絡み具合や空隙の大きさに関連している指標である。
【0042】
織布の素材としては、木綿、絹、人絹、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維などが用いられる。その他、布地に織ることができるもの、不織布に加工できるものであれば素材は限定されない。
これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維からなる織布および不織布が好ましい。
【0043】
本発明の核酸捕捉物質として、核酸捕捉樹脂を用いてもよい。核酸捕捉樹脂は、フィルター以外の形状にも加工することができるため、反応槽への設置の制約が少ないので好ましい。この樹脂は、流路内で液体の流れによって移動しないように、メッシュ状のもので固定されていることが好ましい。樹脂の材質として、例えば、国際公開第98/46797パンフレットに記載されているシリコン、硼素、アルミニウムの元素を含むものを用いることが好ましい。このような樹脂としてXtrana社よりXtraAmpTM商品名で市販されている、プラスチック容器内に固定されている核酸捕捉樹脂を用いることができる。
【0044】
「界面活性剤」
また本発明の特徴は、核酸捕捉物質より核酸を溶出させる溶液に、界面活性剤を含んでいることである。溶出に用いる界面活性剤としては陰イオン系、非イオン系を用いることができる。また等電点以上のpH条件において陰イオン性を帯びる一部の両イオン性界面活性剤も用いることが可能である。本発明における陰イオン系界面活性剤として、例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル-N-サルコシン酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム等が挙げられる。非イオン系界面活性剤として、例えばポリオキシエチレン(POE)高級アルコールエーテル、POE第2級アルコールエトキシレート、POEアルキルフェニルエーテル、POE脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。さらに、両イオン性界面活性剤として、例えばアルキルジアミノエチルグリシン、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸、パルミトイルリゾレシチン、ドデシル-N-ベタイン、ドデシル-β-アラニン等が挙げられる。
【0045】
溶出液中に溶出された核酸を直接核酸の増幅反応に用いる工程においては界面活性剤の濃度を反応を阻害しない程度に抑えることが必要である。その濃度は界面活性剤の種類によって決まる。その点では一般的に1%ぐらいの濃度では増幅反応を阻害しない非イオン性のTween系あるいはTriton系の界面活性剤が好ましい。これらは反応槽にあらかじめ備えられる固形試薬の溶解液としても機能することが望まれる。
【0046】
「温調」
カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御することにより本発明の核酸増幅反応が遂行される。この核酸増幅反応は、等温度の反応によって行われる反応を用いることが好ましい。例えば、核酸増幅反応として広く実施されているポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を用いる場合、カートリッジ内における核酸捕捉物質が保持されている反応槽の部分を、少なくとも2つの異なる温度に交互に加温、冷却を繰り返す必要がある。しかし、核酸増幅反応が等温度で進行する反応を用いれば、一定温度への制御のみで核酸増幅反応が実施される。そのため、2つの温度に加温と冷却を行う場合に比べて、はるかに容易に実施することが可能である。
【0047】
等温度の核酸増幅反応を行う為には、カートリッジ全体を核酸増幅反応の温度に加温しても良いが、カートリッジの反応槽領域のみを集中的に加熱しても構わない。加熱は、カートリッジの外部に設置した装置で行うことができる。例えば、温度検出器、電気による発熱体および制御装置を組み合わせた外部装置によって達成される。温度制御をより厳密に行うために冷却装置を付け加えて、加熱と冷却を同時に行ってもよい。温度検出器としては、熱電対が使われるが、その他の温度検出器も使用可能である。
【0048】
発熱源として、温度によって抵抗値の変わる素子(PTC素子)を利用して一定温度の加熱を達成することもできる。この場合は、温度検出器を省略することができる。外部装置を必要としない、カートリッジ内に加温装置を備えた構造にすることも可能である。この場合、カートリッジ内に、加熱および/または冷却するためのエネルギー源を必要とする。例えば、エネルギー源として乾電池を用いて、カートリッジ内の発熱源を加熱および/または冷却して温度制御を行うことができる。
発熱源をカートリッジ内部に、エネルギー源をカートリッジ外部にすることも可能である。また、中和反応や水和反応などの化学的な発熱および/または吸熱反応を用いてもよい。
【0049】
カートリッジへの加熱および/または冷却が正しく行われることを確認するために、(イ)カートリッジまたは反応槽に近い部分に温度計を設置する、(ロ)カートリッジまたは反応槽に近い部分に、温度によって変色するラベルなどを貼付する、ことも有用である。加熱および/または冷却は、核酸増幅反応に必要な時間だけ行われればよいので、所要時間経過した後、温度制御を停止したり、警報を鳴らす為のタイマーを設置してもよい。
【0050】
「核酸増幅法」
等温度の核酸増幅反応として、既に実用化されている方法を用いることが好ましい。このような反応として、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification),ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids),SDA(Strand Displacement Amplification)、TMA(Transcription―Mediated Amplification)、NASBA(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)、SCAR、SMART、bDNA(Branched DNA Assay)、CPT(Cycling Probe Technology)、Q―Beta Replicase Amplification Technology、RCAT(Rolling Circle Amplification Technology)、などが挙げられる。特に、LAMP法は、増幅の効率が高く、反応時間が短いので好ましい。
【0051】
「検出法」
本発明における検出方法は、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を検出する方法であることが好ましい。その方法として、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出する方法がより好ましい。このような物質として、核酸インターカレーターを用いると検出が容易になるので好ましい。インターカレーターは、核酸増幅反応により生成した核酸と結合し、照射した光(励起光)よりも波長の長い光(放出光)を発するようになる(一般的に蛍光と呼ばれる)。例えば、エチジウムブロマイド、サイバーグリーン(SYBR(R) Green、Molecular Probes社製)、ピコグリーン(PicoGreen(R)、Molecular Probes社製)、オリグリーン(OliGreen(R)、Molecular Probes社製)、ヘキスト33256(Hoechst33258、Molecular Probes社製)などの、市販のインターカレーターを用いることができる。
【0052】
インターカレーターの代わりに、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出すれば、増幅された核酸の配列を特異的に検出することが可能になり好ましい。このような物質として、増幅された核酸と相補的な配列をもつオリゴ核酸に蛍光を発する低分子や、該蛍光を消光させる低分子を結合させたプローブを用いることができる。プローブは、増幅により生成した核酸とハイブリダイズさせることにより蛍光を発するようになる、またはプローブがもともと持っている蛍光が消失するように設計することが可能である。
【0053】
検出は、これらの物質が核酸と共存することにより、紫外線や可視光線等を照射した場合の蛍光や蛍光の消失を、光センサーや目視で行う。簡便な検出が必要な場合には、目視によって識別できる方法が好ましい。一方、検出結果を電子媒体などに記憶する場合には、光センサーを用いて電気的に検出する方法が好ましい。
【0054】
励起光および放出光の波長は、使用する物質により最適な値が異なる。励起光が紫外線で、放出光が可視光となる物質を使用した場合、カートリッジの反応槽に紫外線をあてることにより、目視で検出することができる。励起光と放出光が、共に可視光となる物質を使用した場合は、励起光を通さず、放出光を通すフィルター(干渉フィルター)、または励起光を通し、放出光を通さないフィルターを用いる方法が用いられる。これらの干渉フィルターを両方使用してもよい。フィルターの代わりに分光器(プリズム、グレーディング等)を用いる方法もあるが、検出する機器が高価になる。
【0055】
核酸増幅反応においては、目的の核酸が存在しない場合でも、核酸増幅反応に用いるプライマーどうしが酵素の働きにより二本鎖のDNAになる、いわゆるプライマーダイマーを生成する場合がある。この場合、インターカレーターは、プライマーダイマーにも反応するので、単なる蛍光の検出だけでは、試料中に目的の核酸が存在したことによる特異的な増幅なのか、プライマーダイマー生成による非特異増幅なのか区別がつきにくい場合がある。このような場合には、プローブを用いた検出が好ましい。
【0056】
本発明における別の検出方法として、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンを検出することによる核酸増幅反応の検出も適用可能である。ピロリン酸イオンを検出する方法としては、化学反応による方法が有用である。さらに、化学反応が、沈殿形成の反応または、有色の発色反応であれば、肉眼による検出、吸光度測定、散乱光測定、熱レンズを用いた検出などが可能になる。化学反応が発光を伴う反応であれば、肉眼での検出、光センサーを用いた検出などが可能になる。簡便な検出が必要な場合には、目視よって識別できる方法が好ましい。
【0057】
一方、検出結果を電子媒体等に記憶する場合には、吸光度、散乱光、熱レンズ、光センサー等、電気的信号として測定結果を取り出せる測定方法が好ましい。
検出する方法として、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの化学反応による白色の沈殿形成反応を利用する場合には、検出試薬としてマグネシウムイオンを核酸増幅反応試薬にあらかじめ添加しておけば、化学反応として、検出試薬リザーバーを別途カートリッジ内に設置する必要が無いので好ましい。
【0058】
その他、ピロリン酸イオンと化学反応して白色の沈殿を生じる物質として、バリウムイオン、銀イオン、マグネシウムイオン、カドミウムイオンが挙げられる。銅イオンは青白色の沈殿を生じる。これらのイオンを含む溶液を検出試薬として使用することができる。
検出する方法として、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤による化学反応を用いる場合、モリブデン酸塩としては、ピロリン酸イオンと錯体をつくるものであれば如何なるものでも使用可能である。このようなモリブデン酸塩の例としては、モリブデン酸アンモニウムがある。還元剤としては、ピロリン酸イオンとモリブデン酸アンモニウムが反応してできる錯体を還元して、青緑色の化合物を生成させるものであれば如何なるものでも使用可能である。このような還元剤の例としては、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、DL-ジチオトレイトール(DTT)などのメルカプト基を有する還元剤が挙げられる。
【0059】
その他、ピロリン酸をATPに変換してルシフェリン−ルシフェラーゼの系で発光させて検出する方法は、感度が高いので核酸増幅反応が微妙にしか起こらない場合に検出手法として有用である。ピロリン酸イオンをリン酸イオンに分解して、リン酸イオンを検出することも可能である。
【0060】
これらの反応をカートリッジ内で実施する場合、必要な物質を全て含む状態での試薬を核酸捕捉物質からの核酸溶出に用いても良い。また、あらかじめ試薬類を乾燥させた状態でカートリッジのリザーバー内に保存しておき、核酸溶出のためにはこれら乾燥試薬の溶解試薬を用いても構わない。特に試薬類を乾燥保存しておくものは、試薬を混ぜ合わせた状態で保存する場合に比べ、長期保存の間で試薬同士での反応が起こりにくいため好ましい。
いずれにしろ、光学的な手法により検出する場合、反応槽を取り囲む領域の少なくとも一部分は検出に必要な波長の電磁波を透過することが必要である。
【0061】
「カートリッジ製作」
本発明のカートリッジの材質としては、金属、ガラス、セラミックスなどを用いることもできるが、加工の容易さからプラスチックが好ましい。プラスチックを素材として利用するのは生体物質を取り扱うためカートリッジをディスポーザブルにする上でも好ましいといえる。使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
特に、透明な素材を使用すると、カートリッジ内の液の流れを目視しながら吸引操作が行えるので好ましい。
【0062】
本発明のカートリッジの作成方法は、特に限定するものではない。例えば、プラスチックを材質として用いる場合であれば、ニッケル等を加工することで母型を形成し、射出成形、熱プレス等の工業製品の加工に用いられる一般的な加工技術により容易に作成することが可能である。また、NC工作機械によりプラスチック表面を直接切削することで加工することも可能である。
【0063】
流路として液体類が内部を流れるようにし、カートリッジを完成させるためには、射出成形、機械加工等により表面を加工されたプラスチック部品を複数組み合わせる必要がある。例えば、表面に流路の形に溝を切られた平板に、さらにもう一枚の平板を貼りあわせることで、流路を形成することができる。貼り合わせの手法としては接着剤、両面テープ、熱または圧力を同時に掛けることによる熱圧着、薄いプラスチックシートによるラミネーションなどが採用可能であり、溝を埋めてしまうものでなければ、特に限定されるものではない。ただし、接着剤、両面テープなどについては、流路内を流れる液体により溶解、溶出しないことが好ましい。
ベント構造に用いられる膜の設置についても、貼り合わせ同様、接着剤、両面テープ、熱溶着等が使用可能である。これについては、膜の性質を変えてしまわない方法を用いるよう気をつける必要がある。
【0064】
カートリッジとしての形状を完成するための部品、加熱および/または冷却する場合において熱を効率良く伝える為の部品などは、プラスチックの他、アルミニウム、真鍮、鉄、銅、ステンレス、チタン合金、マグネシウム合金、ジュラルミンなどの金属であってもよい。カートリッジに熱を加える場合には、その加熱部分が設定した温度において、機械的強度を維持できる材質が必要である。
【0065】
本発明のカートリッジにおいて、測定する試料を区別するためにラベルを貼付したり、コンピューター等に読みとらせることが可能なバーコードやICチップなどを取り付けておくことは有用である。
【0066】
「測定対象」
本発明の核酸検出用カートリッジを用いて行う検出対象となる核酸を含有する材料としては、例えば、人の疾患の診断に用いる臨床試料である喀痰、唾液、尿、便、精液、血液、組織、臓器、その他の体液、これらの体液の分画、微生物汚染の検査に用いる食品、飲料水、土壌、排水、河川水、海水、ふき取り液、ふき取り綿などが挙げられる。また、例えば大腸菌などの細菌懸濁液を使用することができる。カートリッジに導入するまでの試料の前処理については、マイクロピペットなどを用いて手動で遂行する。試料を直接カートリッジに導入することも可能である。また前処理操作をカートリッジ内の工程に組み込むことも可能である。
【発明の効果】
【0067】
本発明により、核酸を含有する試料から特定の配列の核酸を増幅させ、核酸増幅反応物の有無を検出することができ、特定の配列の核酸について、試料中の存在の有無を簡便に高感度に検出することが可能になる。そのため、試料中の特定微生物の存在を検出する場合や、人の遺伝子診断を行ったりする場合において、高感度の検出が容易に達成される。すなわち、本発明による核酸検出用カートリッジを使って、医療分野、食品分野、環境分野等における遺伝子診断を、簡便、迅速、安全に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、何らこれに限定されるものではない。
実施例中に記載された長さ、深さ、直径等の数値は単なる例示であって、本発明はこれらの数値に限定されるものではない。なお、実施例で用いた図面中、寸法の単位はmmである。
【実施例1】
【0069】
カートリッジの基材としてアクリル板(日東樹脂製:クラレックス)を使用した。カートリッジは計3枚のアクリル板からなり、中心の板の厚さは2mm、中心の板の両側を挟む形でカバーシートともなる2枚の板の厚さは共に0.5mmである。
カートリッジに形成される流路の全体像を図8に示されているものである。そしてこの構造を実現するために、3枚のアクリル板に対し図11のように溝を刻む。図11に示されたカバーシートに挟めれる真中の板は両面に溝を形成するため、片面を加工した後、反転して他の面の加工を行った。溝の加工にはNC工作機(ローラント゛DG社製:EGX-300)を用いた。使用したCADはAutodesk社製のAutoCAD LTとInventorで、まずAutoCAD LTを用いて2D図面を製作した後、Inventorにより3D構造へ変換する。その後、NC工作機が使用するフォーマットへとローラント゛DG社が供給するソフト(MODELA Player)を用いて変換した。なお、2枚のカバーシートに挟まれる真中のアクリル板に対しては両面に溝形成を行うため、一方の流路パターンについてはCAD上で鏡面コピーを施して使用することに気をつける必要がある。
【0070】
3枚の板に溝を形成した後、これらを貼り合わせる前に、DNAを抽出するフィルター、ベント部分の疎水ベント膜をそれぞれの板に貼り付けた。貼り付けのためには両面テープを用いた。本実施例ではDNA抽出用のフィルターとしては不織布(マイクロウェブA040C01、旭化成株式会社)を使用し、疎水ベント膜にはPTFEフィルター(孔径0.1μm、ADVANTEC社)を使用した。
【0071】
これらのフィルターを形成した後、3枚の板を両面テープで貼り合わせることでカートリッジとするが、実験の便宜上、試薬、試料の導入部分にピペットチップを加工して液リザーバーを形成した。これの接着はエポキシ系の接着剤で行った。
次に反応槽のベント部分を覆う形状を持つカプラを両面テープで接着することで、カートリッジとして完成される。完成されたカートリッジを図14、図15に示す。
廃液槽の排出口、及びカプラにはピペットチップ先端部を切り取ったものを接着剤で貼り付けてあり、このピペットチップにシリコンゴム製チューブをはめ込み、反対端に10mLのシリンジ(テルモ製)をはめ込んだ。
なお、本実施例では、乾燥試薬は用いず、DNA溶出時の試薬に必要な全てを含ませて実験を行った。
反応に必要なカートリッジの加熱は、カートリッジを必要な温度に調整された鉄板上に置くことで行ったが、これはカートリッジ本体の厚みが薄いこともあって問題無いことを確認した後、実験を実施した。
【0072】
ここでは具体的な測定対象として牛胎児胚雌雄の判別を行った。
牛血液1μlを、1mlの0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、25mMのEDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むpH=7.6の10mMのトリス緩衝液で溶解し、核酸を含む試料とした。
洗浄液1:0.2mlの0.5%ラウリル硫酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム、25mMのEDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むpH=7.6の10mMのトリス緩衝液(トリスヒドロキシメチルアミノメタン/塩酸)
洗浄液2:0.2mlの1Mの塩化ナトリウムを含むpH=7.4の10mMのリン酸ナトリウム緩衝液
洗浄液3:0.2mlのTE緩衝液(1mMのEDATを含む10mMのトリス緩衝液)
核酸増幅反応試薬:50μlの牛胎児胚雌雄判別キット(栄研化学)の反応液(プライマー、基質、酵素を含む)なお、本キットで使用されている増幅法は栄研化学が開発したLAMP法である。
実験は乾燥試薬を使用しなかったため2つのカートリッジを使用し、それぞれ雄特異的プライマー、雌雄共通プライマーを含む試薬で実験を行った。それぞれのプライマーを乾燥試薬化し、別々の反応槽に設置すればカートリッジは1個で足りるのは云うまでもない。
【0073】
試料注入口側の蓋を開け、ピペットで試料を500μL導入する。蓋を開けた状態のまま、廃液槽の排出口に接続されたシリンジをゆっくり引き、導入したサンプルを吸引し、その結果設置した不織布に検出すべきDNAが抽出され、廃液は反応槽側に入ることなく廃液槽側に流れていき、設置された吸水シートに吸収された。この際PTFEフィルターが設置された排出口からの液の漏れは観測されなかった。
【0074】
次に同じ試料注入口にピペットで洗浄液1を500μLずつ導入、蓋を開けた状態のまま、廃液槽の排出口に接続されたシリンジをゆっくり引き、導入した洗浄液を吸引し、その結果DNAを抽出した不織布に取り残された不要の薬品類が洗浄され、廃液は反応槽側に入ることなく廃液槽側に流れていき、設置された吸水シートに吸収された。この際も試料導入時同様PTFEフィルターが設置された排出口からの液の漏れは観測されなかった。洗浄液2、3についても同様に行った。
【0075】
次に試料注入口の蓋を閉め、試薬注入口の蓋を開ける。ピペットで試薬を500μL導入する。蓋を開けた状態のまま、反応槽部のカプラに接続されたシリンジをゆっくり引き、導入した試薬を吸引する。その結果、DNAを抽出した不織布よりDNAが溶出されると同時に、分岐に従い形成した13ヶの反応槽に気泡を含むことなく送られた。(図13参照、写真は流路の様子が見え易くするため、実際の試薬では無く色素を流している。)各反応槽ではベント構造を通して空気が排出され液が充填されると共に、反応が開始される。なお、カートリッジの温度は65℃にあらかじめ設定しておいた。
【0076】
30分間、核酸増幅反応を行い目視にて反応槽内部の観測を行った結果、2つのカートリッジの全ての反応槽において内容物が白濁しているのが観測された。すなわち、本実施例のカートリッジにより、試料に含まれる牛胎児胚由来のDNAが検出されると共に雄であることが確認された。
【実施例2】
【0077】
実施例1において、試薬として、反応槽に事前に凍結乾燥しておいた試薬を保存し同様の実験を実施した。実施例1との違いは、一部の反応槽内にLAMP法による核酸の増幅のために必要なプライマーを意図的に入れずに置いたことである。
核酸の捕捉、抽出、増幅のための操作は実施例1と同様に行い、反応槽内容物の変化を観測した。その結果、実施例1と同様に白濁する反応槽が見られる一方、増幅のために必要なプライマーが存在しない反応槽では白濁は見られなかった。すなわち、このカートリッジにより、試料に含まれる牛胎児胚由来のDNAを特異的に検出されたことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本カートリッジの機能を示す図面、
【図2】図1に示した動作を弁構造なしに実現する例を示す図面、
【図3】アクセス孔を上面にまとめた例を示す図面、
【図4】図3の例の平面図、
【図5】図3の試料と試薬との流れを逆にした例を示す図面、
【図6】反応槽を1列に並べた例を示す図面、
【図7】リザーバー部分にベント膜を形成した例を示す図面、
【図8】リザーバーとは別にベント膜を形成した例を示す図面、
【図9】吸収パッドの配置例を示す図面、
【図10】本カートリッジの全体像を示す図面、
【図11】カートリッジ用の溝を刻んだアクリル板(写真)、
【図12】吸引手段としてシリンジを使用した例(写真)、
【図13】シリンジにより試薬を吸引した状態(写真)
【図14】本カートリッジの完成品の例(写真)
【図15】本カートリッジの完成品の例(写真)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含む試料中の核酸を核酸捕捉物質に捕捉させ、その後核酸捕捉物質に捕捉した核酸を溶出して核酸増幅反応槽に移送した後、該核酸を鋳型として核酸増幅反応を行わせ、核酸増幅反応の有無を検出するための核酸検出用カートリッジであって、該カートリッジは、
(イ) 核酸を含む試料をカートリッジに導入する少なくとも1つの試料注入口または試料槽、
(ロ) 該試料注入口または試料槽と連通する少なくとも1つの排出口または廃液槽、
(ハ) (イ)と(ロ)を連通する流路、
(ニ) 前記核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体をカートリッジに導入する少なくとも1つの溶液注入口または溶液槽、
(ホ) 少なくとも2つの核酸増幅反応用リザーバー、
(ヘ) (ニ)と(ホ)を連通する流路、
(ト) (ハ)及び(ヘ)は共通する流路部分を有し、該共通する流路部分に設置させる前記核酸捕捉物質、
(チ) (ロ)及び(ホ)にそれぞれ備えられたベント構造、
を有することを特徴とする核酸検出用カートリッジ。
【請求項2】
それぞれのベント構造に吸引手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項3】
(ホ)に備えられたベント構造が、少なくとも2つのリザーバーの出口を一にするカプラを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項4】
それぞれのベント構造が多孔質かつ疎水性の膜を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項5】
排出口または廃液槽と連通し、核酸捕捉物質の洗浄を目的とする液をカートリッジに導入する少なくとも1つの注入口または溶液槽を、さらに包含することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項6】
廃液槽内に吸水能力を備える物質を備え、同時に廃液槽への入り口と排出口を貫通する吸水能力を持つ物質が存在しない流路を備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項7】
試料注入口および溶液注入口が開閉可能な蓋を備え、蓋の開閉により、流れる液を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項8】
核酸増幅反応用リザーバーに少なくとも1種の核酸増幅用反応試薬が収納されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項9】
核酸増幅反応試薬の少なくとも1種が非流動性を備え、あらかじめ核酸増幅反応用リザーバーに収納されたことを特徴とする請求項8に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項10】
核酸溶出に供される溶液が非流動性を備える該反応試薬の溶解液も兼ねることを特徴とする請求項9に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項11】
核酸溶出に供される溶液が陰イオン系あるいは非イオン系、または等電点以上のpH溶液における両イオン性表面活性剤を含むものであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項12】
試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えることを特徴とするゲル濾過デバイスが接続されることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項13】
核酸を含む試料が核酸を捕捉させるために核酸捕捉物質を通過する方向と、該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体が該核酸捕捉物質を通過する方向が、相対向することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項14】
核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体の流れる方向が、核酸捕捉物質の上面から下面に向かう方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項15】
核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターからなることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項16】
核酸捕捉フィルターが、濾紙、織布、不織布、マトリックスまたは膜からなることを特徴とする請求項15に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項17】
カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御する手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項18】
温度制御する手段が等温度制御するものであることを特徴とする請求項17に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項19】
核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項20】
核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出するものであることを特徴とする請求項19に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項21】
蛍光強度が変化する物質が核酸インターカレーターであることを特徴とする請求項20に記載の核酸検出カートリッジ。
【請求項22】
核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、該核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出するものであることを特徴とする請求項19ないし請求項21のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項23】
核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項24】
ピロリン酸イオンの検出手段が、不溶性沈殿を生成させる化学反応を利用するものであることを特徴とする請求項23に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項25】
不溶性沈殿を肉眼で観察することにより検出することを特徴とする請求項24に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項26】
不溶性沈殿を含む懸濁液に光を照射し、照射された光の散乱を検出することを特徴とする請求項24に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項27】
ピロリン酸イオンの検出手段が、有色の色素を生成させる化学反応を利用するものであることを特徴とする請求項23に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項28】
有色色素を計測するピロリン酸イオンの検出手段が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果を利用するものであることを特徴とする請求項27に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項29】
化学反応が、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤の反応であることを特徴とする請求項27または請求項28に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項30】
化学反応が、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの反応であることを特徴とする請求項24から請求項26のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項31】
カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が検出に必要な波長の電磁波を透過するものであることを特徴とする、請求項20ないし請求項30のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項32】
カートリッジを形成する素材が樹脂である請求項1ないし請求項31のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項33】
カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が透明である請求項1ないし請求項32のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項34】
少なくとも1つの排出口または廃液槽に備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、試料注入口または試料槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも1つの排出口または廃液槽に向かって試料を移動させて試料中の核酸を該核酸捕捉物質に捕捉させ、次いで、少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、溶液注入口または溶液槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに向かって溶液を移動させて該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶離し溶液とともに核酸増幅反応試薬リザーバーに移送させることを特徴とする、請求項1に記載の核酸検出用カートリッジを使用した核酸検出方法。
【請求項35】
核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を検出するものであることを特徴とする請求項34に記載の核酸検出方法。
【請求項36】
核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンを検出するものであることを特徴とする請求項34に記載の核酸検出方法。
【請求項37】
ピロリン酸イオンの検出が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果によるものであることを特徴とする請求項36に記載の核酸検出方法。
【請求項38】
核酸増幅反応が、等温度の反応によって行われることを特徴とする請求項34ないし請求項37のいずれかに記載の核酸検出方法。
【請求項1】
核酸を含む試料中の核酸を核酸捕捉物質に捕捉させ、その後核酸捕捉物質に捕捉した核酸を溶出して核酸増幅反応槽に移送した後、該核酸を鋳型として核酸増幅反応を行わせ、核酸増幅反応の有無を検出するための核酸検出用カートリッジであって、該カートリッジは、
(イ) 核酸を含む試料をカートリッジに導入する少なくとも1つの試料注入口または試料槽、
(ロ) 該試料注入口または試料槽と連通する少なくとも1つの排出口または廃液槽、
(ハ) (イ)と(ロ)を連通する流路、
(ニ) 前記核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体をカートリッジに導入する少なくとも1つの溶液注入口または溶液槽、
(ホ) 少なくとも2つの核酸増幅反応用リザーバー、
(ヘ) (ニ)と(ホ)を連通する流路、
(ト) (ハ)及び(ヘ)は共通する流路部分を有し、該共通する流路部分に設置させる前記核酸捕捉物質、
(チ) (ロ)及び(ホ)にそれぞれ備えられたベント構造、
を有することを特徴とする核酸検出用カートリッジ。
【請求項2】
それぞれのベント構造に吸引手段が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項3】
(ホ)に備えられたベント構造が、少なくとも2つのリザーバーの出口を一にするカプラを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項4】
それぞれのベント構造が多孔質かつ疎水性の膜を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項5】
排出口または廃液槽と連通し、核酸捕捉物質の洗浄を目的とする液をカートリッジに導入する少なくとも1つの注入口または溶液槽を、さらに包含することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項6】
廃液槽内に吸水能力を備える物質を備え、同時に廃液槽への入り口と排出口を貫通する吸水能力を持つ物質が存在しない流路を備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項7】
試料注入口および溶液注入口が開閉可能な蓋を備え、蓋の開閉により、流れる液を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項8】
核酸増幅反応用リザーバーに少なくとも1種の核酸増幅用反応試薬が収納されたことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項9】
核酸増幅反応試薬の少なくとも1種が非流動性を備え、あらかじめ核酸増幅反応用リザーバーに収納されたことを特徴とする請求項8に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項10】
核酸溶出に供される溶液が非流動性を備える該反応試薬の溶解液も兼ねることを特徴とする請求項9に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項11】
核酸溶出に供される溶液が陰イオン系あるいは非イオン系、または等電点以上のpH溶液における両イオン性表面活性剤を含むものであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項12】
試料注入口に核酸と夾雑物とを分離する能力を備えることを特徴とするゲル濾過デバイスが接続されることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項13】
核酸を含む試料が核酸を捕捉させるために核酸捕捉物質を通過する方向と、該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体が該核酸捕捉物質を通過する方向が、相対向することを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項14】
核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶出するために供される液体の流れる方向が、核酸捕捉物質の上面から下面に向かう方向であることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項15】
核酸捕捉物質が、核酸捕捉フィルターからなることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項16】
核酸捕捉フィルターが、濾紙、織布、不織布、マトリックスまたは膜からなることを特徴とする請求項15に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項17】
カートリッジの少なくとも一部を加熱および/または冷却して温度制御する手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項18】
温度制御する手段が等温度制御するものであることを特徴とする請求項17に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項19】
核酸増幅反応によって新たに生成した核酸の検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項20】
核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、核酸と共存させることにより蛍光強度が変化する物質を用いて、光学的に検出するものであることを特徴とする請求項19に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項21】
蛍光強度が変化する物質が核酸インターカレーターであることを特徴とする請求項20に記載の核酸検出カートリッジ。
【請求項22】
核酸の検出手段が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を、該核酸と相補的な配列を持つ核酸を含む物質を用いて検出するものであることを特徴とする請求項19ないし請求項21のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項23】
核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンの検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項24】
ピロリン酸イオンの検出手段が、不溶性沈殿を生成させる化学反応を利用するものであることを特徴とする請求項23に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項25】
不溶性沈殿を肉眼で観察することにより検出することを特徴とする請求項24に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項26】
不溶性沈殿を含む懸濁液に光を照射し、照射された光の散乱を検出することを特徴とする請求項24に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項27】
ピロリン酸イオンの検出手段が、有色の色素を生成させる化学反応を利用するものであることを特徴とする請求項23に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項28】
有色色素を計測するピロリン酸イオンの検出手段が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果を利用するものであることを特徴とする請求項27に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項29】
化学反応が、ピロリン酸イオン、モリブデン酸塩および還元剤の反応であることを特徴とする請求項27または請求項28に記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項30】
化学反応が、ピロリン酸イオンとマグネシウムイオンの反応であることを特徴とする請求項24から請求項26のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項31】
カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が検出に必要な波長の電磁波を透過するものであることを特徴とする、請求項20ないし請求項30のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項32】
カートリッジを形成する素材が樹脂である請求項1ないし請求項31のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項33】
カートリッジを形成する素材の少なくとも一部が透明である請求項1ないし請求項32のいずれかに記載の核酸検出用カートリッジ。
【請求項34】
少なくとも1つの排出口または廃液槽に備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、試料注入口または試料槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも1つの排出口または廃液槽に向かって試料を移動させて試料中の核酸を該核酸捕捉物質に捕捉させ、次いで、少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに備えられたベント構造の吸引手段を作動させ、溶液注入口または溶液槽から核酸捕捉物質を通過して少なくとも2つの核酸増幅反応試薬リザーバーに向かって溶液を移動させて該核酸捕捉物質に捕捉された核酸を溶離し溶液とともに核酸増幅反応試薬リザーバーに移送させることを特徴とする、請求項1に記載の核酸検出用カートリッジを使用した核酸検出方法。
【請求項35】
核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって新たに生成した核酸を検出するものであることを特徴とする請求項34に記載の核酸検出方法。
【請求項36】
核酸の検出方法が、核酸増幅反応によって生成したピロリン酸イオンを検出するものであることを特徴とする請求項34に記載の核酸検出方法。
【請求項37】
ピロリン酸イオンの検出が、励起光が該有色色素に吸収される波長を持ち、それにより発生する光熱変換効果によるものであることを特徴とする請求項36に記載の核酸検出方法。
【請求項38】
核酸増幅反応が、等温度の反応によって行われることを特徴とする請求項34ないし請求項37のいずれかに記載の核酸検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−149215(P2006−149215A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340206(P2004−340206)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
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