説明

梱包用トレイ

【課題】梱包用トレイを、商品を収納した状態で落下や振動により衝撃が加わっても側壁が外れることはなく、かつ組立が容易なものにする。
【解決手段】梱包用トレイ1に、一枚の段ボールシートを複数回折り曲げることにより、側壁3,4,5,6間に上下に複数の平面部7,8,9を形成し、上下中間の第2平面部8を凹部底面として上方に開口した収納凹部10を形成する。凹部底面に略T字形の差込用孔11を形成し、収納凹部10の側面の1つを構成する仕切板12の底辺12aに複数段に突出し、差込用孔11に差し込まれる差込突部13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯電話機などの電子機器を梱包するための梱包用トレイであって、特にその輸送時の落下や振動対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、梱包関係においては環境負荷を減らすために、段ボールのような容易にリサイクルできる材料を使用し、梱包材料や接着剤をできるだけ使用しないようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1は、一枚の段ボールを複雑に折り曲げ、孔に差込み口を挿入することにより結合し、接着剤の使用を避けたり、ステップル等の金属での結合を避けている。また、商品の梱包に使用する商品保護枠として、未使用時の折畳み形態から使用時の製品収容凹所を備える箱枠形態になるように、簡単な操作で容易に組み立てることができ、かつ箱枠形態での剛性が大きく形態安定性に優れ、商品を適度な緩衝状態で確実に固定でき、また商品が複数の製品パーツを1セットにしたものであっても、各製品パーツに対応した大きさの異なる複数の製品収容凹所を簡単に構成できるものとなっている。
【特許文献1】特開2006−16040公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、製品収容凹所に電子機器等の製品を収納した状態で落下等の衝撃が加わると、上下両側から仕切板で狭持されているものの、仕切板の差込量が十分とはいえないので、製品が仕切板に衝突して仕切板が差込孔から外れ、製品が仕切板を越えるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、梱包用トレイを、組立が極めて容易で落下や振動に強いものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために第1の発明では、一枚のシートを複数回折り曲げることにより、外周の側壁間に上下に複数の平面部が形成され、
該複数の平面部のうち、上下中間の平面部を底面として上方に開口した収納凹部が形成される梱包用トレイを対象とする。
【0007】
そして、上記梱包用トレイにおいて、
上記収納凹部を形成する底面には、略T字形の差込用孔が形成され、
上記収納凹部の側面の1つを構成する仕切板の底辺には、複数段に突出し、上記差込用孔に差し込まれる差込突部が形成されている。
【0008】
上記の構成によると、仕切板を折り曲げるときには、複数段に突出形成された差込突部の先端部が差込用孔のT字形の直線部分を通過するので、先端部を長くしても組立が容易である。また、差込突部の中間の段が差込用孔に差し込まれた状態で、側壁の底辺が差込用孔周縁に当接するので、差込突部がさらに奥に入り込むことはない。差込後は、先端部が差込用孔の奥まで差し込まれているので、製品を梱包した状態で落下や振動により外力が加わっても、差込突部が差込用孔から容易に外れない。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
上記仕切板を折り曲げて収納凹部の側面とするときに、差込突部の先端部が上記差込用孔の直線部内を通過し、差込位置では、該差込突部の中間部が上記直線部に垂直な垂直部に差し込まれて抜け止めされるように構成されている。
【0010】
上記の構成によると、仕切板を折り曲げるときには、差込突部の先端部が差込用孔の直線部内を通過するので、組立が容易である。また、差込突部の中間部が垂直部に挿入され、その周縁部に当接して抜け止めされる。さらに、仕切板の底辺が収納凹部の底面に当接する。このため、製品を梱包した状態で落下や振動により外力が加わっても、先端部が奥まで入り込んでいるので、差込突部が差込用孔から容易に外れない。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、
上記差込突部の先端部は、上記直線部の幅よりも幅が狭く、中間部は、該直線部の幅よりも太く、かつ垂直部の長さよりも短い。
【0012】
上記の構成によると、差込突部の先端部の幅は直線部の幅よりも細いので、仕切板を折り曲げるときに差込突部の先端部が容易に差込用孔の直線部内を通過する。また、差込突部の中間部は、直線部の幅よりも太く、かつ垂直部の長さよりも短いので、垂直部に挿入された後、抜け止めされる。このため、製品を梱包した状態で落下や振動により外力が加わっても、先端部が奥まで入り込んでいるので、差込突部が差込用孔から外れることはない。
【0013】
第4の発明では、第3の発明において、
上記仕切板が折り曲げられて収納凹部の側面となったときに、上記中間部が上記垂直部に差し込まれると共に、該仕切板の底辺が上記収納凹部底面に当接している。
【0014】
上記の構成によると、仕切板は、垂直部の遊び分だけ傾斜可能であるが、先端部が垂直部の奥へ差し込まれているので、仕切板が差込用孔から外れることはない。
【0015】
第5の発明では、第1乃至第4の発明のいずれか1つにおいて、
上記差込用孔及び仕切板は、上記収納凹部に複数組設けられている。
【0016】
上記の構成によると、収納凹部を外周側壁の角部に設けず、対向する側壁を仕切板とするときにも、組立が容易である。
【0017】
第6の発明では、第1乃至第5の発明のいずれか1つにおいて、
上記収納凹部には、携帯電話機が収納される。
【0018】
すなわち、携帯電話機は、携帯電話機本体だけでなく、付属部品であるケーブル、電装品、電池等も梱包される。特に比重の大きい携帯電話機本体は、落下や振動による外力を受けて仕切板を越えやすいが、本発明の構成により、仕切板が外れることはないので、携帯電話機の運搬が容易である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によると、一枚の段ボールを複数回折り曲げ、収納凹部の底面に設けた差込用孔に複数段に突出した差込突部を挿入することにより、仕切板を確実に固定するようにした。このため、組立が極めて容易で、落下、振動に強い梱包用トレイが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1及び図2は本発明の実施形態の梱包用トレイ1を示し、図3に折り畳む前の段ボールシート2を示す。
【0022】
梱包用トレイ1は、一枚の段ボールシート2を複数回折り曲げることにより、直方体状に組み立てられる。具体的には、梱包用トレイ1は、外周を囲む第1〜第4側壁3,4,5,6と、上下に並んだ第1〜第3平面部7,8,9とを有する。
【0023】
第1側壁3及び第3側壁5は、梱包用トレイ1の幅方向を塞ぐもので、先端にそれぞれ折り込み用のフラップ部3a,5aを備えている。フラップ部3a,5aは、梱包用トレイ1の幅方向に延びる幅方向折曲線31で折り曲げ可能となっている。第2側壁4は、梱包用トレイ1の底面を構成する第3平面部9に連続し、この第3平面部9は、糊付用のフラップ部9aを備えている。第4側壁6は、第2平面部8に連続している。第2側壁4と第3平面部9、第3平面部9とそのフラップ部9a及び第4側壁6と第2平面部8の間には、それぞれ折り曲げやすいようにH形のスリット30が複数加工されている。スリット30のないところには、長手方向に延びる長手方向折曲線32が形成されている。
【0024】
上記第1〜第3平面部7,8,9のうち、上下中間の第2平面部8を底面として上方に開口した収納凹部10が形成されている。この収納凹部10には、携帯電話機本体50が収納されるようになっている。つまり、第2平面部8は、携帯電話機本体50が収納状態でぐらつかないように、上げ底になっている。
【0025】
上記収納凹部10を形成する第2平面部8には、一対の略T字形の差込用孔11が向かい合うように形成されている。差込用孔11は、梱包用トレイ1の長手方向に平行なT字形の直線部11aと、直線部11aに垂直な垂直部11bとからなる。直線部11aは、先端が丸く形成され、垂直部11bは略矩形に形成されている。
【0026】
上記収納凹部10の側面を構成する一対の仕切板12の底辺12aには、複数段に突出し、上記差込用孔11に差し込まれる差込突部13が形成されている。差込突部13の先端部13aは、直線部11aの幅よりも幅が狭く、中間部13bは、直線部11aの幅よりも太く、かつ垂直部11bの長さよりも短くなっている。このことで、仕切板12を幅方向折曲線31に沿って折り曲げて収納凹部10の側面とするときに、差込突部13の先端部13aが差込用孔11の直線部11a内を通過し、差込位置では、差込突部13の中間部13bが直線部11aに垂直な垂直部11bに差し込まれて抜け止めされるように構成されている。また、仕切板12の底辺12aは、このとき第2平面部8に当接している。
【0027】
第2平面部8に連続する収納凹部10の凹部長手方向側壁10aは、下端に起立部10bが切り込まれ、組み立てられたときに、その起立部10b先端が第3平面部9に当接するようになっている。
【0028】
梱包用トレイ1は、収納凹部10に並んで、付属部品であるケーブル、電装品、電池等が梱包される付属品収容部20を備えている。この付属品収容部20の底面は、最も低い第3平面部9で構成されている。付属品収容部20の収容部長手方向側壁20aは、糊付部20bを介して凹部長手方向側壁10aに連続し、下端に一対の切込部20cを備えている。この切込部20cには、第1平面部7に連続して付属品収容部20の側壁を構成する収容部幅方向側壁20dが幅方向折曲線31で折り曲げられた起立状態で差し込まれるようになっている。
【0029】
−梱包用トレイ1の組立手順−
次に、本実施形態にかかる梱包用トレイ1の組立手順について説明する。
【0030】
まず、一枚の段ボールシート2を図3に示す展開図のように切り抜き、スリット30及び幅方向折曲線31及び長手方向折曲線32を形成する。このとき、差込用孔11、仕切板12、差込突部13、起立部10b、切込部20c等も切り込み加工しておく。
【0031】
次いで、第4側壁6及び糊付部20bに糊を塗布しておく。
【0032】
次いで、長手方向折曲線32に沿って順次段ボールシート2を折り曲げる。すると、糊を塗布した第4側壁6とフラップ部9aとが貼り付けられ、糊付部20bと第1平面部7裏面とが貼り付けられる。この状態で段ボールシート2は、幅方向に折り畳み可能となり、折り畳んで第1〜第3平面部7,8,9が重なった状態の段ボールシート2を商品梱包場所に運搬すると、かさが減って運搬しやすい。
【0033】
次いで、一対の仕切板12を幅方向折曲線31に沿って折り曲げる。仕切板12を折り曲げるときには、複数段に突出形成された差込突部13の先端部13aが差込用孔11のT字形の直線部11aを通過するので、先端部13aを長くしても組立が容易である。また、差込突部13の中間の段である中間部13bが差込用孔11に差し込まれた状態で、側壁の底辺12aが収納凹部10の凹部底面(第2平面部8)の差込用孔11周縁に当接するので、差込突部13がさらに奥に入り込むことはない。差込後は、先端部13aが差込用孔11の奥まで差し込まれているので、製品を梱包した状態で落下や振動により外力が加わっても、差込突部13が差込用孔11から容易に外れない。
【0034】
仕切板12は、垂直部11bの幅で決まる遊び分だけ傾斜可能であるが、先端部13aが垂直部11bの奥へ差し込まれているので、仕切板12が差込用孔11から外れることはない。
【0035】
最後に第1側壁3のフラップ部3a及び第3側壁5のフラップ部5aを第3平面部9側に差し込んで梱包用トレイ1の組立が完了する。
【0036】
この状態で、図4に示すように、収納凹部10に携帯電話機本体50を挿入し、付属品収容部20に付属品を収容する。この後、外箱51に挿入し、外箱51の第1フラップ部51aを折り込んだ上で取扱説明書52等が収納され、第2フラップ部51bで蓋をすることで携帯電話機の梱包作業が完成する。
【0037】
このとき、携帯電話機は、携帯電話機本体50のように比重の大きいものが、落下や振動により外力を受けて仕切板12に衝撃を与えやすいが、差込突部13の作用により、仕切板12が外れることはないので、携帯電話機等の運搬が容易である。
【0038】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる梱包用トレイ1によると、一枚の段ボールを複数回折り曲げ、収納凹部10の底面に設けた差込用孔11に複数段に突出した差込突部13を挿入することにより、仕切板12を確実に固定するようにした。このため、組立が極めて容易で、落下、振動に強い梱包用トレイ1が得られる。
【0039】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0040】
すなわち、上記実施形態では、差込用孔11及び仕切板12は、上記収納凹部10に一対設けたが、収納凹部を外周側壁の角部に設けた場合には、角部と反対側にのみ仕切板12としてもよい。
【0041】
上記実施形態では、収納凹部10に携帯電話機本体50を挿入したが、これに限定されず、PHS、PDA、PC、モバイルツール、電子辞書、電卓、複写機等幅広い用途がある。
【0042】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態にかかる梱包用トレイの斜視図である。
【図2】梱包用トレイの平面図である。
【図3】組立前の梱包用トレイの展開図である。
【図4】梱包用トレイを外箱に挿入した様子を示す斜視図である。
【図5】梱包用トレイを挿入後、取扱説明書を挿入する様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 梱包用トレイ
2 段ボールシート(シート)
3 第1側壁
4 第2側壁
5 第3側壁
6 第4側壁
7 第1平面部
8 第2平面部
9 第3平面部
10 収納凹部
11 差込用孔
11a 直線部
11b 垂直部
12 仕切板
12a 底辺
13 差込突部
13a 先端部
13b 中間部
50 携帯電話機本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚のシートを複数回折り曲げることにより、外周の側壁間に上下に複数の平面部が形成され、
該複数の平面部のうち、上下中間の平面部を底面として上方に開口した収納凹部が形成される梱包用トレイであって、
上記収納凹部を形成する底面には、略T字形の差込用孔が形成され、
上記収納凹部の側面の1つを構成する仕切板の底辺には、複数段に突出し、上記差込用孔に差し込まれる差込突部が形成されている
ことを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の梱包用トレイであって、
上記仕切板を折り曲げて収納凹部の側面とするときに、差込突部の先端部が上記差込用孔の直線部内を通過し、差込位置では、該差込突部の中間部が上記直線部に垂直な垂直部に差し込まれて抜け止めされるように構成されている
ことを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項3】
請求項2に記載の梱包用トレイであって、
上記差込突部の先端部は、上記直線部の幅よりも幅が狭く、中間部は、該直線部の幅よりも太く、かつ垂直部の長さよりも短い
ことを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項4】
請求項3に記載の梱包用トレイにおいて、
上記仕切板が折り曲げられて収納凹部の側面となったときに、上記中間部が上記垂直部に差し込まれると共に、該仕切板の底辺が上記収納凹部底面に当接している
ことを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の梱包用トレイにおいて、
上記差込用孔及び仕切板は、上記収納凹部に複数組設けられている
ことを特徴とする梱包用トレイ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の梱包用トレイにおいて、
上記収納凹部には、携帯電話機が収納される
ことを特徴とする梱包用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−90996(P2009−90996A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262056(P2007−262056)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】