梱包用具、梱包容器、梱包体、ガラス基板の梱包方法および梱包体の開梱方法
【課題】板ガラス自体の自重で破損する虞が無く、収納率にも優れる梱包用具を提供する。
【解決手段】被梱包物であるガラス基板の収容領域24を囲む枠体2と、枠体2に取り付けられてガラス基板を収容領域24に吊り下げる吊下器具3と、を具備してなることを特徴とする梱包用具1を採用する。
【解決手段】被梱包物であるガラス基板の収容領域24を囲む枠体2と、枠体2に取り付けられてガラス基板を収容領域24に吊り下げる吊下器具3と、を具備してなることを特徴とする梱包用具1を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包用具、梱包容器、梱包体、ガラス基板の梱包方法および梱包体の開梱方法に関するものであり、特にガラス基板として、フラットパネルディスプレイ(FPD)、即ち液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等用の大型ガラス基板やその製造過程における中間製品の大型ガラス基板等を梱包し、搬送後再び開梱する用に用いられる梱包用具、梱包容器、梱包体、ガラス基板の梱包方法および梱包体の開梱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD用ガラス等に用いられる大型板ガラスのニーズが高まっている。このような大型板ガラスを収納・搬送する手段としては、特許文献1に示すように、複数枚の板ガラスを立てて並べた状態で各板ガラスを固定した梱包ラックが知られている。しかし、大型板ガラスで、たとえば高さが2m以上のものは、従来トラックへの積層が不可能であり、低床トラックを必要とする。また、板ガラスを立てた状態で運搬する場合には、梱包箱の安定性確保のため底面の一辺の寸法が大きくなる(たとえば、梱包箱の高さの0.5倍等)。しかし、従来フォークリフトの可搬重量および製造場所の床耐荷重による制約より、1つの梱包箱に積載できる板ガラス枚数が制限されるため、積載する板ガラス枚数に対して梱包箱の容積および重量が増大し、収納効率および搬送効率が低下する。
また、板ガラスを立てた状態で搬送すると、板ガラスの自重がガラスの底辺部に集中し、僅かな衝撃で板ガラスが破損する虞もあった。
【0003】
また、特許文献2および3には複数枚の板ガラスを平置きにして収納する梱包方法が示されている。特許文献2では、発泡樹脂シートで板ガラスを挟み、発泡樹脂シートを板ガラスより大きくし、これを収納空間とほぼ同一にすることで、板ガラスの移動を制御できると記載がある。しかし、トラックの加減速および振動等が加わった場合、ガラス板は所定の位置からズレて、後工程で自動板取りが困難になる。さらに板ガラスが大きくズレると箱体と接触し、板ガラスは欠け、瑕、割れ等の欠陥を生じてしまう。
また、平置きした板ガラスを1枚ずつ取り出す際には、梱包の段階で板ガラス同士の間にある程度の隙間を持たせておき、この隙間に取り出し用の治具等を挿入して板ガラスを持ち上げるのが一般的である。しかし、梱包の際に板ガラス同士の間に隙間を設けると、収納空間に対する板ガラスの収容枚数が低下する虞があった。
また特許文献3では、支持部材で板ガラスを吸着保持する梱包方法が記載されている。しかし、この方法では収納効率が悪く、また、梱包ケースが複雑で高価なものとなる上、運用面も手間がかかることになる。
【0004】
以上、板ガラスについて述べたが、樹脂板、金属板等の板状体についても同様である。
【特許文献1】特開2000−272684号公報
【特許文献2】特開2005−75366号公報
【特許文献3】特開2005−75433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状を考慮したものであって、板ガラス自体の自重で破損する虞が無く、収納率にも優れる梱包用具、梱包容器および梱包体の提供を目的とする。また、この板ガラスの梱包方法および梱包体の開梱方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の梱包用具は、被梱包物であるガラス基板の収容領域を囲む枠体と、前記枠体の内側上部に取り付けられて前記ガラス基板を前記収容領域に吊り下げる吊下器具と、を具備してなることを特徴とする。
また本発明の梱包用具においては、前記枠体に、吊り下げられた前記ガラス基板の揺れを防止する押え部材が備えられていることが好ましい。
さらにまた本発明の梱包用具においては、前記枠体が、前記収納領域を囲む複数のフレームを一体化させてなり、かつ前記各フレーム毎に分解自在であることが好ましい。
【0007】
次に本発明の梱包容器は、先のいずれかに記載の梱包用具が複数備えられ、前記各枠体の厚み方向に相互に連結するように前記各枠体が重ね合わされてなることを特徴とする。
また本発明の梱包体は、先の何れかに記載の梱包用具または梱包容器の前記収納領域に配された吊下器具により、ガラス基板が吊り下げられてなることを特徴とする。
【0008】
上記の梱包用具によれば、吊下器具によってガラス基板を収納領域に吊り下げるので、ガラス基板の底面が浮いた状態になって底面にガラス基板の自重が集中する虞が無く、ガラス基板の破損が防止される。また、収納領域が枠体によって囲まれているので、吊り下げられたガラス基板が枠体によって保護される。
また、搬送用具に押え部材が備えられているので、ガラス基板が収容領域からはみ出す虞が無く、ガラス基板の破損を防止できる。また、複数の搬送用具が重ね合わされた場合には、押え部材によってガラス基板同士の接触が防止され、これによりガラス基板の破損が抑制される。
また、上記の梱包用具は、表示装置用のガラス基板を梱包する際に好適に用いられる。
さらに、枠体を構成するフレーム部材が分解自在であれば、ガラス基板を収容しない場合に枠体を解体でき、枠体の保管スペースを小さくできる。
次に、上記の梱包容器によれば、複数の枠体を重ね合わせることで各枠体が一体になって一つの容器になり、この容器の内部に複数のガラス基板が吊り下げられ、これをそのまま搬送用容器として利用できる。また、収容領域同士の間隔を狭くできるので収納率も高められる。
次に上記の梱包体によれば、ガラス基板を梱包した状態でガラス基板を破損させることなく搬送できる。
【0009】
次に本発明のガラス基板の梱包方法は、先の何れかに記載の梱包用具を複数用意し、各梱包用具の収容領域に配された吊下器具によりそれぞれ前記ガラス基板を吊り下げてから、各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせることを特徴とする。
また本発明の梱包体の開梱方法は、先の何れかに記載の梱包用具が複数備えられ、各梱包用具の前記収納領域に配された吊下器具によりガラス基板がそれぞれ吊り下げられ、各梱包用具の枠体が相互に重ね合わされてなる梱包体の開梱方法であり、前記の各梱包用具のうち、重ね合わせ方向一端側に位置する梱包用具の吊下治具によりに吊り下げられたガラス基板を取り出すとともに除去後の梱包用具を取り外す操作を繰り返し行うことを特徴とする。
【0010】
上記の梱包方法によれば、各梱包用具の収容領域にガラス基板を吊り下げてから各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせるので、吊下げ作業が枠体の近くで効率よく、安全にでき、またガラス基板を吊り下げる操作以外はガラス基板に触れる必要が無く、ガラス基板に汚れ等を付着させる虞がない。また梱包用具を介してガラス基板を取り扱うことになるので、ガラス基板のハンドリングが容易になる。
次に上記の梱包体の開梱方法によれば、梱包用具に吊り下げられたガラス基板を取り出し、続いてその梱包用具を取り外す操作を繰り返すことで、梱包状態のガラス基板を容易に開梱できる。また、ガラス基板間に空間があるので、ガラス基板体取り出しの際、他のガラス基板との接触等でガラス基板を破損する虞もなく、ガラス基板の取り出しのときの空気の流れや静電気により次のガラス基板を倒す虞もない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス基板自体の自重で破損する虞が無く、収納率にも優れる梱包用具、梱包容器および梱包体を提供できる。また、このガラス基板の梱包作業および開梱作業が容易に行える梱包方法および開梱方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である梱包用具、梱包容器、梱包体、梱包方法および開梱方法について図面を参照して順次説明する。尚、以下の説明において参照する図面は、梱包用具等の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の梱包用具等の寸法関係とは異なる場合がある。
【0013】
「搬送用具」
図1は、本実施形態の梱包用具の一例を示す正面図であり、図2は、図1のA−A’線に対応する断面図であり、図3(A)および図3(B)は梱包用具の一部を示す拡大断面模式図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の梱包用具1は、枠体2と、枠体2に取り付けられた吊下器具3とから概略構成されている。
枠体2は、上部フレーム21と、下部フレーム22と、上部フレーム21および下部フレーム22を連結する一対の側部フレーム23,23とから構成されている。そして、各フレーム21〜23によって囲まれた領域が収納領域24とされている。収納領域24は、被梱包物であるガラス基板を収容する空間であり、ガラス基板の大きさよりも一回り大きく形成されている。枠体2はたとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料、樹脂材料等から構成されている。また、枠体2を構成する各フレーム21〜23の厚みは、被梱包物であるガラス基板の厚みの数倍乃至数十倍程度の厚みに設定されており、例えば5〜40mmであることが好ましい。なお、各フレーム21〜23は相互に分割可能であり、梱包用具1が未使用の場合には枠体2を分解できるようになっている。
【0014】
また、図1〜図3に示すように、枠体2にはその一方の面2a側に凸部2cが設けられ、他方の面2b側には凹部2dが設けられている。凸部2cおよび凹部2dは、収容領域24を囲むように形成されている。また、凸部2cおよび凹部2dは相互に嵌め合わせ可能な形状に成形されている。従って、梱包用具1が複数用意された場合に、各梱包用具1の凸部2cと凹部2dを嵌め合わせることによって、各梱包用具1を相互に一体化できるようになっている。
【0015】
次に、吊下器具3は、ガラス基板を収容領域24に吊り下げて固定するものであって、たとえば図3に示すように、ガラス基板をその厚み方向両側から挟んで把持するクリップ3aが挙げられる。このクリップ3aは、板状の支持部材3bによって上部フレーム21に取り付けられている。また図1に示すように、クリップ3a(吊下器具3)は、上部フレーム21の長手方向に沿って延在されており、これによりガラス基板の一辺全体を固定できるようになっているが、二つ以上に分割されていても良い。クリップ3aおよび支持部材3bの材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料から構成されている。また、クリップ3aのうち、ガラス基板と接触する部分には、ガラス基板の疵発生防止のために樹脂またはゴムからなる保護層を貼り付けてもよい。
【0016】
また梱包用具1には、吊り下げられたガラス基板の揺れを防止する押え部材4が備えられている。図1に示す梱包用具1においては、押え部材4として、側部フレーム23同士の間に張られた2本の線材4a、4bが図示されている。各線材4a、4bは、ガラス基板の厚さ方向一方の面2a側および他方の面2b側にそれぞれ配置されており、線材4a、4bによってガラス基板を挟む構成になっている。線材4a、4bは、梱包用具1に容易に脱着可能に取り付けられており、ガラス基板を収納および取り出すときには、線材4aまたは/および4bを取り外す。線材4a、4bの材質は、ガラス基板の疵付防止の観点から樹脂またはゴム等が好ましく、また金属製の線材を用いる場合にはその表面を樹脂等で被覆するのが好ましい。また押え部材としては、線材に代えて帯状部材を用いてもよい。また、下部フレーム22または側部フレーム23にストッパを設け、このストッパを押え部材としてもよい。
【0017】
図4および図5には、梱包用具1にガラス基板を装着した状態を示す。図4に示すガラス基板としてたとえば、フラットパネルディスプレイ等の表示装置用のガラス基板5が挙げられる。このガラス基板5は、縦・横のいずれか一辺の長さが2m以上の平面視矩形状であって、厚みが0.4〜1.1mmのガラス基板である。ガラス基板5は、その一辺5aが吊下器具3に狭持されて収容領域24に吊り下げられている。収容領域24は、前述したようにガラス基板5よりも一回り大きく形成されているため、ガラス基板5の底辺5bを含む3辺は何れも枠体2から離間され、枠体2に接触されない。従ってガラス基板5に印加される応力は、吊下器具3によって把持された一辺5a近傍に集中し、他の部分には印加されない。またガラス基板5の外周部分は非有効領域であり、この非有効領域が吊下器具3に把持されることになる。非有効領域とは、ガラス基板5が最終的にフラットパネルディスプレイに加工された際に、表示回路等が形成されない部分である。
従って仮に、吊下器具3の接触によって非有効領域に疵の発生や汚れの付着があったとしても、この非有効領域には表示回路等が形成されないので、フラットパネルディスプレイの品質に影響を及ぼす虞はない。
【0018】
上記の梱包用具1によれば、吊下器具3によってガラス基板5を収納領域24に吊り下げるので、ガラス基板5の底面5bが浮いた状態になり、この底面5bにガラス基板5の自重が集中する虞が無い。これによりガラス基板5の破損が防止される。また、収納領域24が枠体2によって囲まれているので、吊り下げられたガラス基板5が枠体2によって保護される。
また、搬送用具1に押え部材としての線状材4a、4bが備えられているので、ガラス基板5が収容領域24からはみ出る虞が無く、ガラス基板5の破損を防止できる。
さらに、上記の搬送用具1によれば、枠体2を構成するフレーム21〜23が分解可能とされており、ガラス基板5を収容しない場合に枠体2を解体でき、枠体2の保管スペースを小さくできる。
さらにまた、上記の梱包用具1は、次に説明する梱包容器の構成部材として好適に用いられる。
【0019】
「梱包容器」
次に、本実施形態の梱包容器について、図面を参照して説明する。図6は、本実施形態の梱包容器の一例を示す斜視図であり、図7は、図6に示す梱包容器の断面図である。
図6および図7に示す梱包容器51は、複数の梱包用具1が重ね合わされてなる容器本体52と、容器本体52を梱包用具の厚み方向の両端から挟む一対の保護板53、53と、容器本体52および保護板53を載置するパレット板54とから概略構成されている。尚、図6および図7に示す梱包容器51には、複数のガラス基板5が梱包された状態になっており、これら梱包容器51とガラス基板5とによって梱包体61が構成されている。
【0020】
図7に示すように、容器本体52は、たとえば100個程度の梱包用具1がその厚み方向に重ね合わされて構成されている。また、梱包用具1の重ね合わせ方向は、水平方向もしくは水平方向から多少傾斜した方向とすることが、ガラス基板5を吊り下げかつガラス基板5同士の接触を防止できる点で好ましい。
各梱包用具1は、枠体2に設けられた凸部2cおよび凹部2dが相互に嵌め合わされることによって一体化される。また、各梱包用具1が一体化される際には、各収容領域24が相互に連通するように重ね合わされる。これにより容器本体52には、各収容領域24が連通されてなる中空部52aが形成される。そしてこの中空部52aにガラス基板5が吊り下げられる。
【0021】
また、容器本体52には、一対の保護板53、53が装着される。保護板53、53は、容器本体52の中空部52aを塞ぐように、中空部52aの両側から装着される。一方の保護板53aには枠体2の凸部2cに対応する凹部53bが設けられており、この凹部53bと凸部2cとが相互に嵌め合わされることで保護板53aが容器本体52に装着される。同様に、他方の保護板53cには枠体2の凹部2dに対応する凸部53dが設けられており、この凸部53dと凹部2dとが相互に嵌め合わされることで保護板53cが容器本体52に装着される。なお、一方の保護板53aに凹部53bを設けなくてもよく、安定しないようであれば凸部2cの厚みの板材を挟み込んでもよい。また、他方の保護板53cには、凸部53dを設けなくてもよい。
さらに、図6に示すように、容器本体52および保護板53には固定バンド55が装着される。この固定バンド55によって容器本体52および保護板53が相互に固定される。固定バンド55はたとえば、弾性のある樹脂、ゴム、ポリプロピレン等や、弾性のない樹脂等から構成される。また、保護板53は、たとえば発泡樹脂等により構成される。
また、保護板53および固定バンド55に代えて、重ね合わせた枠体2をラッピングフィルム等で包んで固定してもよい。
【0022】
容器本体52および保護板53は、パレット板54の上に載置される。パレット板54上には位置決め用の突起54aが設けられており、この突起54aに容器本体52および保護板53が係合された状態でパレット板54上に位置決めされる。またパレット板54にはフォークリフト等のフォークが挿入可能な挿入孔54bが設けられている。なお、梱包用具1夫々にフォークリフト等のフォークが挿入可能な孔を設け、パレット板54を用いなくても良い。
また、容器本体52および保護板53には、角部を保護するための保護金具56が装着される。保護金具56は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料から構成される。
【0023】
次に、上記の梱包容器51にガラス基板5を梱包する方法を説明する。図8に示すように、複数の梱包用具1を用意し、各梱包用具1の押さえ部材4である線材4aまたは/および4bを取り外し、各梱包用具1の吊下器具3にガラス基板5を把持させてガラス基板5を収容領域24に吊り下げる。そして、梱包用具1を厚さ方向に沿って重ね合わせる。重ね合わせる際には、一方の保護板53aをパレット板54上に載置し、次いで梱包用具1をパレット板54上に載置させつつ重ね合わせるとよい。全ての梱包用具1を重ね合わせて容器本体52を形成したら、容器本体52に他方の保護板53bを装着し、さらに固定バンド55を装着する。さらに、容器本体52および保護板53の角部に保護金具56を装着する。以上のようにして、ガラス基板5を梱包すると同時に、梱包容器51(梱包体61)を形成する。なお、パレット板54を使用しない場合、及び保護板53の下辺の左右角部にパレット板54上の位置決め用の突起54に相当する部分に、突起54と干渉しないよう切欠きを設けた場合には、容器本体52を形成した後に一対の保護板53を装着しても良い。
形成された梱包容器51は、ガラス基板5の搬送に好適に用いられる。
【0024】
次に、上記の梱包容器51(梱包体61)の開梱方法について説明する。まず、固定バンド55および保護金具56を取り外した後、図9に示すように、何れか一方の保護板53を取り外す。これにより、保護板53を装着していた梱包用具1aが現れる。この梱包用具1aは、梱包用具1の重ね合わせ方向一端側に位置しているものであり、梱包用具1aが現れることによって、梱包用具1aに吊り下げられたガラス基板5cも同時に現れる。
次に、図10に示すように、梱包用具1aからガラス基板5cを取り外す。ガラス基板5cを取り外す際には、吊下器具3による把持状態を解除しつつ、の押さえ部材4である線材4aまたは/および4bを取り外し、ガラス基板5cと枠体2の間の隙間に取出治具等を挿入してガラス基板5cをそのまま手前側に引き出す。
次に図11に示すように、梱包用具1aを取り外す。これにより、次の梱包用具1bが現れる。梱包用具1bには別のガラス基板5dが吊り下げられている。そして、ガラス基板5dおよび梱包用具1bの取り外しを順次行う。以後、同様の操作を繰り返すことによって、梱包されているガラス基板5が全て取り出される。尚、取り外した梱包用具1は、各フレーム21〜23毎に解体することが省スペースの観点から好ましい。
【0025】
以上説明したように、上記の梱包容器51によれば、複数の梱包用具1を重ね合わせることで各梱包用具1が一体になって一つの容器本体52になり、この容器本体52の内部に複数のガラス基板5が吊り下げられるので、これをそのまま搬送用の容器として利用できる。また、ガラス基板5同士の間隔を狭くできるので、収納率も高められる。
また、梱包用具1が相互に嵌め合わせつつ一体化し、容器本体52の中空部52aが保護板53によって塞がれるので、外部からの異物の侵入が防止され、ガラス基板5を異物等で汚染させることがない。
【0026】
また、梱包用具1を構成する枠体2には凸部2cおよび凹部2dが設けられており、凸部2cおよび凹部2dが相互に嵌め合されて容器本体52が形成されるので、各搬送用具1がずれて容器本体52が分解される虞が無い。さらに、固定バンド55および保護金具56によって容器本体52および保護板53が固定されているので、容器本体52が分解される虞が無い。
このように容器本体52の分解の虞が無いので、梱包容器51自体をそのままトラック等に積載して搬送できる。
また、梱包用具1を重ね合わせることで容器本体52の剛性が向上するので、サイズの大きなガラス基板の梱包にも強度的に充分に耐え得る。
【0027】
さらに、各梱包用具1にはガラス基板5の揺れを抑制する押え部材が備えられているので、搬送中の梱包容器51に揺動が加わったとしても、ガラス基板5同士が接触して破損する虞がない。
また、ガラス基板5が所定の間隔をあけて1枚ずつ吊り下げられているので、ガラス基板5の間に保護シートや保護紙等を介在させる必要が無く、保護シート等の梱包材料が不要になり、また、紙粉や異物によりガラスが汚れにくくなる。
また、梱包用具1自体の構成が単純なため、搬送容器51の軽量化が図られる。
【0028】
また、上記の梱包方法によれば、容易にガラス基板5を梱包用具1に取付けすることができ、ガラス基板5を梱包用具1に装着した後は、梱包作業中にガラス基板5に直接触れる必要が無く、ガラス基板5の破損や汚染を防止できる。
また上記の開梱方法によれば、吊り下げられたガラス基板5を取り外して手前に引き出すだけでよく、作業効率を大幅に向上できる。また、ガラス基板5が取り外された梱包用具1は順次分解されて片付けられるため、保管スペースを確保する必要が無く、省スペース化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施形態である梱包用具を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A’線に対応する断面図である。
【図3】図3は、梱包用具の一部を示す図であって、(A)は上部フレームおよび吊下器具を示す拡大断面模式図であり、(B)は下部フレームを示す拡大断面模式図である。
【図4】図4は、図1に示す梱包用具にガラス基板を装着した状態を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B’線に対応する断面図である。
【図5】図5は、ガラス基板が吊下器具によって吊り下げられた状態を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態である梱包容器を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6に示す梱包容器の断面図である。
【図8】図8は、ガラス基板の梱包方法を説明する断面図である。
【図9】図9は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【図10】図10は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【図11】図11は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…梱包用具、2…枠体、3…吊下器具、4…押え部材、4a、4b…線状材(押え部材)、5…ガラス基板、21…上部フレーム(フレーム)、22…下部フレーム(フレーム)、23…側部フレーム(フレーム)、24…収容領域、51…梱包容器、61…梱包体
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包用具、梱包容器、梱包体、ガラス基板の梱包方法および梱包体の開梱方法に関するものであり、特にガラス基板として、フラットパネルディスプレイ(FPD)、即ち液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等用の大型ガラス基板やその製造過程における中間製品の大型ガラス基板等を梱包し、搬送後再び開梱する用に用いられる梱包用具、梱包容器、梱包体、ガラス基板の梱包方法および梱包体の開梱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD用ガラス等に用いられる大型板ガラスのニーズが高まっている。このような大型板ガラスを収納・搬送する手段としては、特許文献1に示すように、複数枚の板ガラスを立てて並べた状態で各板ガラスを固定した梱包ラックが知られている。しかし、大型板ガラスで、たとえば高さが2m以上のものは、従来トラックへの積層が不可能であり、低床トラックを必要とする。また、板ガラスを立てた状態で運搬する場合には、梱包箱の安定性確保のため底面の一辺の寸法が大きくなる(たとえば、梱包箱の高さの0.5倍等)。しかし、従来フォークリフトの可搬重量および製造場所の床耐荷重による制約より、1つの梱包箱に積載できる板ガラス枚数が制限されるため、積載する板ガラス枚数に対して梱包箱の容積および重量が増大し、収納効率および搬送効率が低下する。
また、板ガラスを立てた状態で搬送すると、板ガラスの自重がガラスの底辺部に集中し、僅かな衝撃で板ガラスが破損する虞もあった。
【0003】
また、特許文献2および3には複数枚の板ガラスを平置きにして収納する梱包方法が示されている。特許文献2では、発泡樹脂シートで板ガラスを挟み、発泡樹脂シートを板ガラスより大きくし、これを収納空間とほぼ同一にすることで、板ガラスの移動を制御できると記載がある。しかし、トラックの加減速および振動等が加わった場合、ガラス板は所定の位置からズレて、後工程で自動板取りが困難になる。さらに板ガラスが大きくズレると箱体と接触し、板ガラスは欠け、瑕、割れ等の欠陥を生じてしまう。
また、平置きした板ガラスを1枚ずつ取り出す際には、梱包の段階で板ガラス同士の間にある程度の隙間を持たせておき、この隙間に取り出し用の治具等を挿入して板ガラスを持ち上げるのが一般的である。しかし、梱包の際に板ガラス同士の間に隙間を設けると、収納空間に対する板ガラスの収容枚数が低下する虞があった。
また特許文献3では、支持部材で板ガラスを吸着保持する梱包方法が記載されている。しかし、この方法では収納効率が悪く、また、梱包ケースが複雑で高価なものとなる上、運用面も手間がかかることになる。
【0004】
以上、板ガラスについて述べたが、樹脂板、金属板等の板状体についても同様である。
【特許文献1】特開2000−272684号公報
【特許文献2】特開2005−75366号公報
【特許文献3】特開2005−75433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような現状を考慮したものであって、板ガラス自体の自重で破損する虞が無く、収納率にも優れる梱包用具、梱包容器および梱包体の提供を目的とする。また、この板ガラスの梱包方法および梱包体の開梱方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の梱包用具は、被梱包物であるガラス基板の収容領域を囲む枠体と、前記枠体の内側上部に取り付けられて前記ガラス基板を前記収容領域に吊り下げる吊下器具と、を具備してなることを特徴とする。
また本発明の梱包用具においては、前記枠体に、吊り下げられた前記ガラス基板の揺れを防止する押え部材が備えられていることが好ましい。
さらにまた本発明の梱包用具においては、前記枠体が、前記収納領域を囲む複数のフレームを一体化させてなり、かつ前記各フレーム毎に分解自在であることが好ましい。
【0007】
次に本発明の梱包容器は、先のいずれかに記載の梱包用具が複数備えられ、前記各枠体の厚み方向に相互に連結するように前記各枠体が重ね合わされてなることを特徴とする。
また本発明の梱包体は、先の何れかに記載の梱包用具または梱包容器の前記収納領域に配された吊下器具により、ガラス基板が吊り下げられてなることを特徴とする。
【0008】
上記の梱包用具によれば、吊下器具によってガラス基板を収納領域に吊り下げるので、ガラス基板の底面が浮いた状態になって底面にガラス基板の自重が集中する虞が無く、ガラス基板の破損が防止される。また、収納領域が枠体によって囲まれているので、吊り下げられたガラス基板が枠体によって保護される。
また、搬送用具に押え部材が備えられているので、ガラス基板が収容領域からはみ出す虞が無く、ガラス基板の破損を防止できる。また、複数の搬送用具が重ね合わされた場合には、押え部材によってガラス基板同士の接触が防止され、これによりガラス基板の破損が抑制される。
また、上記の梱包用具は、表示装置用のガラス基板を梱包する際に好適に用いられる。
さらに、枠体を構成するフレーム部材が分解自在であれば、ガラス基板を収容しない場合に枠体を解体でき、枠体の保管スペースを小さくできる。
次に、上記の梱包容器によれば、複数の枠体を重ね合わせることで各枠体が一体になって一つの容器になり、この容器の内部に複数のガラス基板が吊り下げられ、これをそのまま搬送用容器として利用できる。また、収容領域同士の間隔を狭くできるので収納率も高められる。
次に上記の梱包体によれば、ガラス基板を梱包した状態でガラス基板を破損させることなく搬送できる。
【0009】
次に本発明のガラス基板の梱包方法は、先の何れかに記載の梱包用具を複数用意し、各梱包用具の収容領域に配された吊下器具によりそれぞれ前記ガラス基板を吊り下げてから、各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせることを特徴とする。
また本発明の梱包体の開梱方法は、先の何れかに記載の梱包用具が複数備えられ、各梱包用具の前記収納領域に配された吊下器具によりガラス基板がそれぞれ吊り下げられ、各梱包用具の枠体が相互に重ね合わされてなる梱包体の開梱方法であり、前記の各梱包用具のうち、重ね合わせ方向一端側に位置する梱包用具の吊下治具によりに吊り下げられたガラス基板を取り出すとともに除去後の梱包用具を取り外す操作を繰り返し行うことを特徴とする。
【0010】
上記の梱包方法によれば、各梱包用具の収容領域にガラス基板を吊り下げてから各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせるので、吊下げ作業が枠体の近くで効率よく、安全にでき、またガラス基板を吊り下げる操作以外はガラス基板に触れる必要が無く、ガラス基板に汚れ等を付着させる虞がない。また梱包用具を介してガラス基板を取り扱うことになるので、ガラス基板のハンドリングが容易になる。
次に上記の梱包体の開梱方法によれば、梱包用具に吊り下げられたガラス基板を取り出し、続いてその梱包用具を取り外す操作を繰り返すことで、梱包状態のガラス基板を容易に開梱できる。また、ガラス基板間に空間があるので、ガラス基板体取り出しの際、他のガラス基板との接触等でガラス基板を破損する虞もなく、ガラス基板の取り出しのときの空気の流れや静電気により次のガラス基板を倒す虞もない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス基板自体の自重で破損する虞が無く、収納率にも優れる梱包用具、梱包容器および梱包体を提供できる。また、このガラス基板の梱包作業および開梱作業が容易に行える梱包方法および開梱方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である梱包用具、梱包容器、梱包体、梱包方法および開梱方法について図面を参照して順次説明する。尚、以下の説明において参照する図面は、梱包用具等の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の梱包用具等の寸法関係とは異なる場合がある。
【0013】
「搬送用具」
図1は、本実施形態の梱包用具の一例を示す正面図であり、図2は、図1のA−A’線に対応する断面図であり、図3(A)および図3(B)は梱包用具の一部を示す拡大断面模式図である。
図1および図2に示すように、本実施形態の梱包用具1は、枠体2と、枠体2に取り付けられた吊下器具3とから概略構成されている。
枠体2は、上部フレーム21と、下部フレーム22と、上部フレーム21および下部フレーム22を連結する一対の側部フレーム23,23とから構成されている。そして、各フレーム21〜23によって囲まれた領域が収納領域24とされている。収納領域24は、被梱包物であるガラス基板を収容する空間であり、ガラス基板の大きさよりも一回り大きく形成されている。枠体2はたとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料、樹脂材料等から構成されている。また、枠体2を構成する各フレーム21〜23の厚みは、被梱包物であるガラス基板の厚みの数倍乃至数十倍程度の厚みに設定されており、例えば5〜40mmであることが好ましい。なお、各フレーム21〜23は相互に分割可能であり、梱包用具1が未使用の場合には枠体2を分解できるようになっている。
【0014】
また、図1〜図3に示すように、枠体2にはその一方の面2a側に凸部2cが設けられ、他方の面2b側には凹部2dが設けられている。凸部2cおよび凹部2dは、収容領域24を囲むように形成されている。また、凸部2cおよび凹部2dは相互に嵌め合わせ可能な形状に成形されている。従って、梱包用具1が複数用意された場合に、各梱包用具1の凸部2cと凹部2dを嵌め合わせることによって、各梱包用具1を相互に一体化できるようになっている。
【0015】
次に、吊下器具3は、ガラス基板を収容領域24に吊り下げて固定するものであって、たとえば図3に示すように、ガラス基板をその厚み方向両側から挟んで把持するクリップ3aが挙げられる。このクリップ3aは、板状の支持部材3bによって上部フレーム21に取り付けられている。また図1に示すように、クリップ3a(吊下器具3)は、上部フレーム21の長手方向に沿って延在されており、これによりガラス基板の一辺全体を固定できるようになっているが、二つ以上に分割されていても良い。クリップ3aおよび支持部材3bの材質は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料から構成されている。また、クリップ3aのうち、ガラス基板と接触する部分には、ガラス基板の疵発生防止のために樹脂またはゴムからなる保護層を貼り付けてもよい。
【0016】
また梱包用具1には、吊り下げられたガラス基板の揺れを防止する押え部材4が備えられている。図1に示す梱包用具1においては、押え部材4として、側部フレーム23同士の間に張られた2本の線材4a、4bが図示されている。各線材4a、4bは、ガラス基板の厚さ方向一方の面2a側および他方の面2b側にそれぞれ配置されており、線材4a、4bによってガラス基板を挟む構成になっている。線材4a、4bは、梱包用具1に容易に脱着可能に取り付けられており、ガラス基板を収納および取り出すときには、線材4aまたは/および4bを取り外す。線材4a、4bの材質は、ガラス基板の疵付防止の観点から樹脂またはゴム等が好ましく、また金属製の線材を用いる場合にはその表面を樹脂等で被覆するのが好ましい。また押え部材としては、線材に代えて帯状部材を用いてもよい。また、下部フレーム22または側部フレーム23にストッパを設け、このストッパを押え部材としてもよい。
【0017】
図4および図5には、梱包用具1にガラス基板を装着した状態を示す。図4に示すガラス基板としてたとえば、フラットパネルディスプレイ等の表示装置用のガラス基板5が挙げられる。このガラス基板5は、縦・横のいずれか一辺の長さが2m以上の平面視矩形状であって、厚みが0.4〜1.1mmのガラス基板である。ガラス基板5は、その一辺5aが吊下器具3に狭持されて収容領域24に吊り下げられている。収容領域24は、前述したようにガラス基板5よりも一回り大きく形成されているため、ガラス基板5の底辺5bを含む3辺は何れも枠体2から離間され、枠体2に接触されない。従ってガラス基板5に印加される応力は、吊下器具3によって把持された一辺5a近傍に集中し、他の部分には印加されない。またガラス基板5の外周部分は非有効領域であり、この非有効領域が吊下器具3に把持されることになる。非有効領域とは、ガラス基板5が最終的にフラットパネルディスプレイに加工された際に、表示回路等が形成されない部分である。
従って仮に、吊下器具3の接触によって非有効領域に疵の発生や汚れの付着があったとしても、この非有効領域には表示回路等が形成されないので、フラットパネルディスプレイの品質に影響を及ぼす虞はない。
【0018】
上記の梱包用具1によれば、吊下器具3によってガラス基板5を収納領域24に吊り下げるので、ガラス基板5の底面5bが浮いた状態になり、この底面5bにガラス基板5の自重が集中する虞が無い。これによりガラス基板5の破損が防止される。また、収納領域24が枠体2によって囲まれているので、吊り下げられたガラス基板5が枠体2によって保護される。
また、搬送用具1に押え部材としての線状材4a、4bが備えられているので、ガラス基板5が収容領域24からはみ出る虞が無く、ガラス基板5の破損を防止できる。
さらに、上記の搬送用具1によれば、枠体2を構成するフレーム21〜23が分解可能とされており、ガラス基板5を収容しない場合に枠体2を解体でき、枠体2の保管スペースを小さくできる。
さらにまた、上記の梱包用具1は、次に説明する梱包容器の構成部材として好適に用いられる。
【0019】
「梱包容器」
次に、本実施形態の梱包容器について、図面を参照して説明する。図6は、本実施形態の梱包容器の一例を示す斜視図であり、図7は、図6に示す梱包容器の断面図である。
図6および図7に示す梱包容器51は、複数の梱包用具1が重ね合わされてなる容器本体52と、容器本体52を梱包用具の厚み方向の両端から挟む一対の保護板53、53と、容器本体52および保護板53を載置するパレット板54とから概略構成されている。尚、図6および図7に示す梱包容器51には、複数のガラス基板5が梱包された状態になっており、これら梱包容器51とガラス基板5とによって梱包体61が構成されている。
【0020】
図7に示すように、容器本体52は、たとえば100個程度の梱包用具1がその厚み方向に重ね合わされて構成されている。また、梱包用具1の重ね合わせ方向は、水平方向もしくは水平方向から多少傾斜した方向とすることが、ガラス基板5を吊り下げかつガラス基板5同士の接触を防止できる点で好ましい。
各梱包用具1は、枠体2に設けられた凸部2cおよび凹部2dが相互に嵌め合わされることによって一体化される。また、各梱包用具1が一体化される際には、各収容領域24が相互に連通するように重ね合わされる。これにより容器本体52には、各収容領域24が連通されてなる中空部52aが形成される。そしてこの中空部52aにガラス基板5が吊り下げられる。
【0021】
また、容器本体52には、一対の保護板53、53が装着される。保護板53、53は、容器本体52の中空部52aを塞ぐように、中空部52aの両側から装着される。一方の保護板53aには枠体2の凸部2cに対応する凹部53bが設けられており、この凹部53bと凸部2cとが相互に嵌め合わされることで保護板53aが容器本体52に装着される。同様に、他方の保護板53cには枠体2の凹部2dに対応する凸部53dが設けられており、この凸部53dと凹部2dとが相互に嵌め合わされることで保護板53cが容器本体52に装着される。なお、一方の保護板53aに凹部53bを設けなくてもよく、安定しないようであれば凸部2cの厚みの板材を挟み込んでもよい。また、他方の保護板53cには、凸部53dを設けなくてもよい。
さらに、図6に示すように、容器本体52および保護板53には固定バンド55が装着される。この固定バンド55によって容器本体52および保護板53が相互に固定される。固定バンド55はたとえば、弾性のある樹脂、ゴム、ポリプロピレン等や、弾性のない樹脂等から構成される。また、保護板53は、たとえば発泡樹脂等により構成される。
また、保護板53および固定バンド55に代えて、重ね合わせた枠体2をラッピングフィルム等で包んで固定してもよい。
【0022】
容器本体52および保護板53は、パレット板54の上に載置される。パレット板54上には位置決め用の突起54aが設けられており、この突起54aに容器本体52および保護板53が係合された状態でパレット板54上に位置決めされる。またパレット板54にはフォークリフト等のフォークが挿入可能な挿入孔54bが設けられている。なお、梱包用具1夫々にフォークリフト等のフォークが挿入可能な孔を設け、パレット板54を用いなくても良い。
また、容器本体52および保護板53には、角部を保護するための保護金具56が装着される。保護金具56は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、SS等の金属材料から構成される。
【0023】
次に、上記の梱包容器51にガラス基板5を梱包する方法を説明する。図8に示すように、複数の梱包用具1を用意し、各梱包用具1の押さえ部材4である線材4aまたは/および4bを取り外し、各梱包用具1の吊下器具3にガラス基板5を把持させてガラス基板5を収容領域24に吊り下げる。そして、梱包用具1を厚さ方向に沿って重ね合わせる。重ね合わせる際には、一方の保護板53aをパレット板54上に載置し、次いで梱包用具1をパレット板54上に載置させつつ重ね合わせるとよい。全ての梱包用具1を重ね合わせて容器本体52を形成したら、容器本体52に他方の保護板53bを装着し、さらに固定バンド55を装着する。さらに、容器本体52および保護板53の角部に保護金具56を装着する。以上のようにして、ガラス基板5を梱包すると同時に、梱包容器51(梱包体61)を形成する。なお、パレット板54を使用しない場合、及び保護板53の下辺の左右角部にパレット板54上の位置決め用の突起54に相当する部分に、突起54と干渉しないよう切欠きを設けた場合には、容器本体52を形成した後に一対の保護板53を装着しても良い。
形成された梱包容器51は、ガラス基板5の搬送に好適に用いられる。
【0024】
次に、上記の梱包容器51(梱包体61)の開梱方法について説明する。まず、固定バンド55および保護金具56を取り外した後、図9に示すように、何れか一方の保護板53を取り外す。これにより、保護板53を装着していた梱包用具1aが現れる。この梱包用具1aは、梱包用具1の重ね合わせ方向一端側に位置しているものであり、梱包用具1aが現れることによって、梱包用具1aに吊り下げられたガラス基板5cも同時に現れる。
次に、図10に示すように、梱包用具1aからガラス基板5cを取り外す。ガラス基板5cを取り外す際には、吊下器具3による把持状態を解除しつつ、の押さえ部材4である線材4aまたは/および4bを取り外し、ガラス基板5cと枠体2の間の隙間に取出治具等を挿入してガラス基板5cをそのまま手前側に引き出す。
次に図11に示すように、梱包用具1aを取り外す。これにより、次の梱包用具1bが現れる。梱包用具1bには別のガラス基板5dが吊り下げられている。そして、ガラス基板5dおよび梱包用具1bの取り外しを順次行う。以後、同様の操作を繰り返すことによって、梱包されているガラス基板5が全て取り出される。尚、取り外した梱包用具1は、各フレーム21〜23毎に解体することが省スペースの観点から好ましい。
【0025】
以上説明したように、上記の梱包容器51によれば、複数の梱包用具1を重ね合わせることで各梱包用具1が一体になって一つの容器本体52になり、この容器本体52の内部に複数のガラス基板5が吊り下げられるので、これをそのまま搬送用の容器として利用できる。また、ガラス基板5同士の間隔を狭くできるので、収納率も高められる。
また、梱包用具1が相互に嵌め合わせつつ一体化し、容器本体52の中空部52aが保護板53によって塞がれるので、外部からの異物の侵入が防止され、ガラス基板5を異物等で汚染させることがない。
【0026】
また、梱包用具1を構成する枠体2には凸部2cおよび凹部2dが設けられており、凸部2cおよび凹部2dが相互に嵌め合されて容器本体52が形成されるので、各搬送用具1がずれて容器本体52が分解される虞が無い。さらに、固定バンド55および保護金具56によって容器本体52および保護板53が固定されているので、容器本体52が分解される虞が無い。
このように容器本体52の分解の虞が無いので、梱包容器51自体をそのままトラック等に積載して搬送できる。
また、梱包用具1を重ね合わせることで容器本体52の剛性が向上するので、サイズの大きなガラス基板の梱包にも強度的に充分に耐え得る。
【0027】
さらに、各梱包用具1にはガラス基板5の揺れを抑制する押え部材が備えられているので、搬送中の梱包容器51に揺動が加わったとしても、ガラス基板5同士が接触して破損する虞がない。
また、ガラス基板5が所定の間隔をあけて1枚ずつ吊り下げられているので、ガラス基板5の間に保護シートや保護紙等を介在させる必要が無く、保護シート等の梱包材料が不要になり、また、紙粉や異物によりガラスが汚れにくくなる。
また、梱包用具1自体の構成が単純なため、搬送容器51の軽量化が図られる。
【0028】
また、上記の梱包方法によれば、容易にガラス基板5を梱包用具1に取付けすることができ、ガラス基板5を梱包用具1に装着した後は、梱包作業中にガラス基板5に直接触れる必要が無く、ガラス基板5の破損や汚染を防止できる。
また上記の開梱方法によれば、吊り下げられたガラス基板5を取り外して手前に引き出すだけでよく、作業効率を大幅に向上できる。また、ガラス基板5が取り外された梱包用具1は順次分解されて片付けられるため、保管スペースを確保する必要が無く、省スペース化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の実施形態である梱包用具を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A’線に対応する断面図である。
【図3】図3は、梱包用具の一部を示す図であって、(A)は上部フレームおよび吊下器具を示す拡大断面模式図であり、(B)は下部フレームを示す拡大断面模式図である。
【図4】図4は、図1に示す梱包用具にガラス基板を装着した状態を示す図であって、(A)は正面図であり、(B)は(A)のB−B’線に対応する断面図である。
【図5】図5は、ガラス基板が吊下器具によって吊り下げられた状態を示す拡大斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態である梱包容器を示す斜視図である。
【図7】図7は、図6に示す梱包容器の断面図である。
【図8】図8は、ガラス基板の梱包方法を説明する断面図である。
【図9】図9は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【図10】図10は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【図11】図11は、図6に示す梱包容器の開梱方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1…梱包用具、2…枠体、3…吊下器具、4…押え部材、4a、4b…線状材(押え部材)、5…ガラス基板、21…上部フレーム(フレーム)、22…下部フレーム(フレーム)、23…側部フレーム(フレーム)、24…収容領域、51…梱包容器、61…梱包体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被梱包物であるガラス基板の収容領域を囲む枠体と、前記枠体の内側上部に取り付けられて前記ガラス基板を前記収容領域に吊り下げる吊下器具と、を具備してなることを特徴とする梱包用具。
【請求項2】
前記枠体に、吊り下げられた前記ガラス基板の揺れを防止する押え部材が備えられている請求項1に記載の梱包用具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具が複数備えられ、前記各枠体の厚み方向に相互に連結するように前記各枠体が重ね合わされてなることを特徴とする梱包容器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具または請求項3に記載の梱包容器の前記収納領域に配された吊下器具により、ガラス基板が吊り下げられてなることを特徴とする梱包体。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具を複数用意し、各梱包用具の収容領域に配された吊下器具によりそれぞれ前記ガラス基板を吊り下げてから、各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせることを特徴とするガラス基板の梱包方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具が複数備えられ、各梱包用具の前記収納領域に配された吊下器具によりガラス基板がそれぞれ吊り下げられ、各梱包用具の枠体が相互に重ね合わされてなる梱包体の開梱方法であり、
前記の各梱包用具のうち、重ね合わせ方向一端側に位置する梱包用具の吊下治具によりに吊り下げられたガラス基板を取り出すとともに除去後の梱包用具を取り外す操作を繰り返し行うことを特徴とする梱包体の開梱方法。
【請求項1】
被梱包物であるガラス基板の収容領域を囲む枠体と、前記枠体の内側上部に取り付けられて前記ガラス基板を前記収容領域に吊り下げる吊下器具と、を具備してなることを特徴とする梱包用具。
【請求項2】
前記枠体に、吊り下げられた前記ガラス基板の揺れを防止する押え部材が備えられている請求項1に記載の梱包用具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具が複数備えられ、前記各枠体の厚み方向に相互に連結するように前記各枠体が重ね合わされてなることを特徴とする梱包容器。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具または請求項3に記載の梱包容器の前記収納領域に配された吊下器具により、ガラス基板が吊り下げられてなることを特徴とする梱包体。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具を複数用意し、各梱包用具の収容領域に配された吊下器具によりそれぞれ前記ガラス基板を吊り下げてから、各梱包用具の枠体を相互に重ね合わせることを特徴とするガラス基板の梱包方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の梱包用具が複数備えられ、各梱包用具の前記収納領域に配された吊下器具によりガラス基板がそれぞれ吊り下げられ、各梱包用具の枠体が相互に重ね合わされてなる梱包体の開梱方法であり、
前記の各梱包用具のうち、重ね合わせ方向一端側に位置する梱包用具の吊下治具によりに吊り下げられたガラス基板を取り出すとともに除去後の梱包用具を取り外す操作を繰り返し行うことを特徴とする梱包体の開梱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−326584(P2007−326584A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157045(P2006−157045)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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