説明

棚板固定構造

【課題】 棚板を水平に配置して棚本体に固定する棚板固定構造において、見栄えを向上すると共に、装着もより容易に行うことができる棚板固定構造を提供すること。
【解決手段】 この棚板固定構造は、棚板10と棚板固定具20とによって構成され、上部固定部202にはボルト固定孔202aが形成され、ボルト固定孔202aに固定されるボルト40が挿通されるように下部固定部203にはボルト挿通孔203aが形成されており、ブッシュ30はボルト挿通孔203aに挿通可能なように構成されると共に、ブッシュ30には、ボルト40の頭に係合してブッシュ30からボルト40が脱落するのを防止するボルト係合爪303が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に配置された棚板を棚本体に固定する棚板固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棚板を固定する手法として、棚板にボルト挿通のための孔を設け、ブラケットといった棚板支持具に対して、その孔に挿通したボルトを締めこんで固定する手法が知られている。この場合、棚板の上面を広く使うために、ブラケットが棚板を下方から支持するように構成されているので、棚板の上面に露出するボルトの頭を隠すための化粧キャップが用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−12160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の技術では、棚板を固定するためのボルトの頭が露出したり、化粧キャップを設けたとしてもその化粧キャップが露出してしまうために、棚板の材料との質感の差が大きく、高級感を損ねる場合もあった。また、化粧キャップを設けた場合には装着が面倒なものとなる上に、コストアップの要因ともなっていた。
【0004】
そこで本発明は、棚板を水平に配置して棚本体に固定する棚板固定構造において、見栄えを向上すると共に、装着もより容易に行うことができる棚板固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る棚板固定構造は、棚板を水平方向に配置して棚本体に固定する棚板固定構造であって、前記棚本体に固定され、上部固定部と下部固定部とを有し、該上部固定部と該下部固定部との間に前記棚板を支持するための水平方向に延びる溝部が形成された断面凹字状の棚板固定具と、前記下部固定部に取り付けられ、前記棚板を固定するためのボルトが挿通されるようにボルト挿通部が略中央に形成されてなるブッシュと、を備え、前記上部固定部にはボルト固定孔が形成され、該ボルト固定孔に固定される前記ボルトが下方から挿通されるように前記下部固定部にはボルト挿通孔が形成されており、前記ブッシュは前記ボルト挿通孔に挿通可能なように構成されると共に、前記ブッシュには、前記ボルトの頭に係合して前記ブッシュから前記ボルトが脱落するのを防止するボルト係合部が形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る棚板固定構造では、上部固定部にはボルト固定孔が形成され、そのボルト固定孔に固定されるボルトが挿通されるように下部固定部にボルト挿通孔が形成されているので、棚板を固定するためのボルトを下部固定部の下側からボルト挿通孔に挿入し、棚板を貫通して上部固定部のボルト固定孔に固定することができる。従って、ボルトによって棚板を棚板固定具に対して下方から固定することができるので、上方から棚板を見た場合にボルトそのものが露出せず、見栄えが向上する。更に、ボルト挿通部が形成されてなるブッシュを用いており、そのブッシュにはボルトが脱落しないようにボルト係合部が形成されているので、ブッシュとボルトとを一体的にまとめてボルト挿通孔に挿入して取り付けることができ、装着がより容易なものとなる。
【0007】
本願請求項2に係る棚板固定構造では、前記ボルト係合部は前記ブッシュの一端に形成され、前記ブッシュの他端には、前記棚板に係合する棚板係合部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、ボルト係合部をブッシュの一端に形成し、棚板係合部をブッシュの他端に形成するので、棚板係合部を棚板に係合させることでブッシュを棚板に取り付けることができる。従って、ボルトがボルト固定孔に固定されていない状態であっても、ボルトがブッシュから脱落しないようにボルトをブッシュのボルト係合部で保持しつつ、ブッシュ及びボルトを棚板に対し仮止めすることができる。従って、ボルトをボルト固定孔に固定させる作業が容易なものとなる。
【0009】
本願請求項3に係る棚板固定構造は、上述した請求項2の構成において、前記溝部の上下方向の幅は、前記棚板の厚みよりも幅広に形成されており、前記棚板係合部の長さは、前記棚板の厚みと略同等とし、前記ボルト係合部の長さは、前記ボルト挿通孔の長さと、前記溝部に前記棚板を挿入した際の隙間の長さとの和と略同じかやや短くなるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
この態様によれば、棚板係合部の長さが棚板の厚みと略同等となっているので、棚板に係合したブッシュは、溝部内における棚板の上下動に伴って上下に動くように構成される。ボルト係合部の長さは、ボルト挿通孔の長さと溝部に棚板を挿入した際の隙間の長さとの和と略同じかやや短くなるように形成されているので、棚板がボルトによって正規に棚板固定具に取り付けられていれば、ブッシュはボルト挿通孔から顕著に飛び出すことなく収容される。一方、棚板がボルトによって正規に棚板固定具に取り付けられていない場合、例えば、ボルトが仮止めの状態やボルトが緩んだりした状態の場合には、ブッシュの下端がボルト挿通孔から飛び出すため、ボルト固定孔へのボルトの固定が不完全であることを容易に目視することができる。
【0011】
本願請求項4に係る棚板固定構造は、上述した請求項2の構成において、前記棚板に前記ブッシュを挿通するためのブッシュ挿通孔を形成し、該ブッシュ挿通孔に前記棚板係合部を挿通した状態で前記ブッシュを前記棚板に係合固定させ、前記ボルトの仮止め状態では、前記ボルトの先端が前記棚板係合部の先端から所定量下方の中間部に位置するように構成したことを特徴とする。
【0012】
この態様によれば、ブッシュの棚板係合部が棚板のブッシュ挿通孔に挿通して係合固定されるとともに、ボルトがボルト固定孔へ固定されていない状態であるボルトの仮止め状態では、ボルトの先端が棚板係合部の先端から所定量下方の中間部に位置するように構成されている。したがって、棚板係合部の内側への変形がボルトによって抑制されるため、棚板係合部が棚板から外れてしまうことが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、棚板を水平に配置して棚本体に固定する棚板固定構造において、見栄えを向上すると共に、装着もより容易に行うことができる棚板固定構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
本発明の実施形態である棚板固定構造について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の棚板固定構造によって棚板10を棚本体としての壁面Wに固定した状態を示す斜視図である。図2は、図1における棚板10と棚板固定具20とを取り外した状態を示す分解斜視図である。本実施形態の説明において、「水平方向」とは図1のx方向を示し、「上下方向」とは図1のy方向を示すものである。
【0016】
棚板10を壁面Wに固定する棚板固定具20は、本実施形態の場合一対設けられている。それぞれの棚板固定具20は、木ネジ50によって壁面Wに固定されている。棚板固定具20には、棚板10を支持するための溝部201が設けられている。溝部201は、棚板10を支持した状態では水平方向(x方向)に延びるように形成されている。従って、棚板固定具20は、溝部201が延びる方向と直交する方向の断面が凹字状となるように形成されている。
【0017】
棚板固定具20には、ボルト挿通孔203aが設けられている。ボルト挿通孔203aに挿通されるボルト40は、ブッシュ30に挿通された状態でボルト挿通孔203aに挿通され、棚板10に形成されているブッシュ挿通孔101を貫通する。
【0018】
ブッシュ30の構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、ブッシュ30を示す斜視図である。ブッシュ30は、第一部分301と第二部分302とによって構成されている。第一部分301と第二部分302とは、中間円盤部305を介して繋がっている。中間円盤部305の中心部分にはボルト40が貫通する貫通孔305aが形成されている。
【0019】
第一部分301は、本発明のボルト挿通部及び棚板係合部として機能する部分である。第一部分301は、中間円盤部305に形成された貫通孔305aを囲むように立設配置されている4本の棚板係合爪304を有している。棚板係合爪304はそれぞれ、ストレート部304aと外爪部304bとを有している。
【0020】
ストレート部304aは、中間円盤部305から一方向に延出するように配置されている。外爪部304bはストレート部304aの先端に設けられ、その爪が外側を向くように形成されている。ストレート部304aの長さは、棚板10の厚みと略同等に設定されているので、外爪部304bと中間円盤部305との間に棚板10を挟みこみ、ブッシュ30が棚板10のブッシュ挿通孔101に挿通されると棚板10に係合するように構成されている。従って、第一部分301は、その外側に向って本発明における棚板係合部が形成されている。
【0021】
一方、ストレート部304aの内側面と外爪部304bの内側面とは、特段の凹凸が無く平坦に形成されている。4本の棚板係合爪304の内側面は、ボルト40のネジ径と略同等に形成されているので、ボルト40が挿通可能なように構成されている。従って、第一部分301は、その内側に向って本発明におけるボルト挿通部が形成されている。
【0022】
第二部分302は、本発明のボルト係合部として機能する部分である。第2部分は、中間円盤部305の外周を囲むように立設配置されている4本のボルト係合爪303を有している。ボルト係合爪303は、棚板係合爪304とは反対方向に延出するように形成されている。ボルト係合爪303はそれぞれ、ストレート部303aと内爪部303bとを有している。ストレート部303aは、中間円盤部305から棚板係合爪304とは反対方向に延出するように配置されている。内爪部303bはストレート部303aの先端に設けられ、その爪が内側を向くように形成されている。
【0023】
ボルト係合爪303の形態の詳細について図4を参照しながら説明する。図4は、棚板固定具20に棚板10を固定した場合の部分断面図を示している。図4に示すように、棚板固定具20は、上部固定部202と下部固定部203とを有している。上部固定部202と下部固定部203との間には、棚板10を支持するための溝部201が水平方向(図1におけるx方向)に延びるように形成されている。
【0024】
図4に示す状態では、ボルト40はブッシュ30の棚板係合爪304の間に挿通され、一体化された状態で棚板10のブッシュ挿通孔101に挿通されている。ボルト40は上部固定部202に形成されているボルト固定孔202aに螺合されている。棚板10の厚みH2は溝部201の上下方向(図1におけるy方向)の幅H1よりも薄くなるように形成されている。従って、ボルト40をボルト固定孔202aにねじ込んでいくと、棚板10は上部固定部202に押し付けられ、棚板10と下部固定部203との間には隙間が生じる。
【0025】
ボルト係合爪303の長さLは、図4の状態における棚板10と下部固定部203との間の隙間の長さ(H1−H2)と、ボルト挿通孔203aの長さH3との和と略同じかやや短くなるように形成されている。従って、図4の状態では、下部固定部203からボルト係合爪303が突出しないように構成されている。
【0026】
図4に示す状態からボルト40がやや緩んだ状態を図5に示す。ボルト40が緩むと上部固定部202に押し付けられていた棚板10は下降し、下部固定部203に当接する。従って、図4の状態における棚板10と下部固定部203との間の隙間の長さ(H1−H2)だけ下降するので、下部固定部203からボルト係合爪303が突出し、ユーザがボルト係合爪303を視認することができる。これによって、ボルト40が完全に外れてしまう前に、ボルト40が緩んでいることをユーザに報知することが可能となる。
【0027】
図5に示す状態から更にボルト40が緩んだ状態を図6に示す。ボルト40が更に緩むとボルト固定孔202aから脱落し、ボルト係合爪303の内爪部303bによって保持される。このように、ボルト40がボルト固定孔202aから脱落しても、ボルト係合爪303によって保持されるので、完全に落下してしまうことがなく、ボルト40を紛失してしまうこともない。また、図5のような状態になっても、ブッシュ30が、下部固定部203のボルト挿通孔203aと棚板10のブッシュ挿通孔101とを貫通した状態が保たれるので、棚板10が棚板固定具20から脱落してしまうことがない。
【0028】
図5に示す状態は、棚板10を棚板固定具20に固定する場合の、ボルト40の仮止め状態でもある。棚板10を棚板固定具20に固定する場合には、棚板10を棚板固定具20の溝部201に挿入し、ボルト挿通孔203aの位置とブッシュ挿通孔101の位置とを合わせる。その後、ブッシュ30に装着したボルト40をボルト挿通孔203aからブッシュ挿通孔101へと挿入する。このようなボルト40の仮止め状態において、ボルト40の先端は、棚板係合部としての棚板係合爪304の先端から所定量下方の中間部に位置するように構成されている。このため、ボルト40の仮止め状態において、ボルト40が棚板係合爪304の内側への撓みを抑制するので、ブッシュ30が棚板10から脱落してしまうことが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る棚板固定構造を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る棚板固定構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示すブッシュの詳細を示す斜視図である。
【図4】棚板固定具に棚板を固定した場合の部分断面図である。
【図5】図4の状態からボルトがやや緩んだ状態を示す部分断面図である。
【図6】図5の状態から更にボルトが緩んだ状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0030】
10:棚板
20:棚板固定具
30:ブッシュ
40:ボルト
50:木ネジ
101:ブッシュ挿通孔
201:溝部
202:上部固定部
202a:ボルト固定孔
203:下部固定部
203a:ボルト挿通孔
301:第一部分
302:第二部分
303:ボルト係合爪
303a:ストレート部
303b:内爪部
304:棚板係合爪
304a:ストレート部
304b:外爪部
305:中間円盤部
305a:貫通孔
W:壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板を水平方向に配置して棚本体に固定する棚板固定構造であって、
前記棚本体に固定され、上部固定部と下部固定部とを有し、該上部固定部と該下部固定部との間に前記棚板を支持するための水平方向に延びる溝部が形成された断面凹字状の棚板固定具と、
前記下部固定部に取り付けられ、前記棚板を固定するためのボルトが挿通されるようにボルト挿通部が略中央に形成されてなるブッシュと、を備え、
前記上部固定部にはボルト固定孔が形成され、該ボルト固定孔に固定される前記ボルトが下方から挿通されるように前記下部固定部にはボルト挿通孔が形成されており、
前記ブッシュは前記ボルト挿通孔に挿通可能なように構成されると共に、前記ブッシュには、前記ボルトの頭に係合して前記ブッシュから前記ボルトが脱落するのを防止するボルト係合部が形成されていることを特徴とする棚板固定構造。
【請求項2】
前記ボルト係合部は前記ブッシュの一端に形成され、
前記ブッシュの他端には、前記棚板に係合する棚板係合部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棚板固定構造。
【請求項3】
前記溝部の上下方向の幅は、前記棚板の厚みよりも幅広に形成されており、
前記棚板係合部の長さは、前記棚板の厚みと略同等とし、
前記ボルト係合部の長さは、前記ボルト挿通孔の長さと、前記溝部に前記棚板を挿入した際の隙間の長さとの和と略同じかやや短くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の棚板固定構造。
【請求項4】
前記棚板に前記ブッシュを挿通するためのブッシュ挿通孔を形成し、該ブッシュ挿通孔に前記棚板係合部を挿通した状態で前記ブッシュを前記棚板に係合固定させ、
前記ボルトの仮止め状態では、前記ボルトの先端が前記棚板係合部の先端から所定量下方の中間部に位置するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の棚板固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−136753(P2010−136753A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313146(P2008−313146)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】