説明

植物茎を用いたボード及び複合ボード並びにそれらの製造方法

【課題】植物茎同士を容易にかつ強力に接着し、これにより製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずに済み、また加熱せずに室温で芯部同士を接着しても強力に接着する。
【解決手段】本発明のボード10は、葉が切除され各茎が同一厚さになるように扁平に圧縮成形されかつ一対の扁平面の表皮層11aが除去されて芯部11bが露出する複数本の植物茎11と、複数本の植物茎11の両扁平面に塗布され複数本の植物茎11を一列に並べて扁平面に露出した芯部11b同士を接着する第1接着剤21とを備える。上記植物茎11は、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きび等の茎を用いたボードと、このボードに面材が積層接着された複合ボードと、これらのボードを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のボードとして、それぞれ繊維方向に切開かれずに表皮、芯及び節を有する複数本の高りゃん茎が互いに平行にかつ密接に配列されて高りゃん茎層を形成し、この高りゃん茎層が複数積層され、かつ各高りゃん茎が扁平な状態で互いに接着してなる積層材が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この積層材では、高りゃん茎層が圧延された複数本の高りゃん茎からなり、高りゃん茎層を構成する高りゃん茎が高りゃん茎層毎に交差するように積層される。
【0003】
このように構成された積層材は、高りゃん茎を繊維方向に切開かずに表皮、芯及び節を有したまま圧延し、圧延面が層表面及び層裏面となるように複数本の高りゃん茎を互いに平行にかつ密接に配列して高りゃん茎層を形成し、この高りゃん茎層にイソシアネート系接着剤等の接着剤を塗布し、この接着剤を塗布した複数本の高りゃん茎層を積層して加圧成形することにより製造される。ここで、構成要素の高りゃん茎を扁平にするには、圧延機又はプレス装置単独で行う方法或いはこれらを組合せた方法がある。例えば、圧延機のロール間隔を広げて高りゃん茎毎に仮圧延した後、高りゃん茎層を形成してイソシアネート系接着剤等の接着剤を塗布し、これらの高りゃん茎層を積層してプレス装置で更に圧縮成形する方法を用いると、高い強度の積層材となり好ましい。なお、イソシアネート系接着剤等の接着剤を塗布した複数本の高りゃん茎層を積層して圧縮成形するときの加圧条件は、使用する接着剤、高りゃん茎層の積層数、積層材の目標比重等に応じて常温〜180℃の温度と0.5〜3MPaの圧力の範囲から選ばれるが、接着効果を高めるために加温して加圧することが好ましい。
【0004】
このように製造された積層材は、世界的に豊富に存在し、廃棄処分すら困難であった高りゃん茎を主原料とし、従来の切開き工程を不要とする簡略化された工程で高い作業効率で製造できるためより一層低価格となる。また上記積層材は高りゃん茎を切開かずに芯を残すので、内部に多数の微細孔を有するようになり、より一層軽量で高い吸音特性及び断熱特性を備え、嵩高の積層材となる。また高りゃん茎の表皮が分割されずにそのまま利用されるので高い強度を有する。更に嵩高の高りゃん茎層が積層される構造であるため、少ない高りゃん茎で厚板を構成できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−280538号公報(請求項1〜3、5及び7、明細書第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第1行、明細書第2頁右下欄第13行〜同欄第15行、明細書第3頁右上欄第5行〜同欄第9行、明細書第3頁左下欄第12行〜同頁右下欄第4行、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の特許文献1に示された積層材では、複数本の高りゃん茎層にイソシアネート系接着剤を塗布した後に、これらの高りゃん茎層を積層してプレス装置で圧縮成形しているため、プレス装置に収容された複数本の高りゃん茎層とを加温しないと高りゃん茎層同士の接着力が低下する不具合があった。このため、上記従来の特許文献1に示された積層材では、特殊な熱プレス装置を使用する必要があるため、製造設備が大型化するとともに設備費用が増大する問題点もあった。
【0007】
本発明の目的は、労働環境、防災及び公害の面から、より安全な水系接着剤を用いた場合に、植物茎同士を容易にかつ強力に接着でき、これにより製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずに済み、また加熱せずに室温で芯部同士を接着しても強力に接着できる、植物茎を用いたボード及びその製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、ボードを構成する植物茎と面材とを容易にかつ強力に接着でき、これにより製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずに済み、また加熱せずに室温でボードを構成する各植物茎と面材とを接着しても強力に接着できる、植物茎を用いた複合ボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、図1〜図3に示すように、葉が切除され各茎が同一厚さになるように扁平に圧縮成形されかつ一対の扁平面の表皮層11aが部分的に又は全て除去されて芯部11bが部分的に又は全て露出する複数本の植物茎11と、複数本の植物茎11の両扁平面に塗布され複数本の植物茎11を一列に並べて扁平面に露出した芯部11b同士を接着する第1接着剤21とを備えた植物茎を用いたボードである。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図3に示すように、植物茎11が、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図3に示すように、植物茎11の水分率が5〜500%に調整されたことを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第1接着剤21が水系接着剤であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、図6〜図8に示すように、第1ないし第4の観点のいずれかに記載のボード10と、ボード10の両面のいずれか一方又は双方の表皮層11aが部分的に又は全て除去されて芯部11bが部分的に又は全て露出した面に積層された面材31と、ボード10の芯部11bの露出した面に面材31を接着する第2接着剤32とを備えた複合ボードである。
【0013】
本発明の第6の観点は、第5の観点に基づく発明であって、更に図7に示すように、第2接着剤32が水系接着剤であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第7の観点は、第5の観点に基づく発明であって、更に図6及び図7に示すように、面材31が中密度繊維板、パーティクルボード、単板又は紙であることを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の観点は、図1〜図3に示すように、複数本の植物茎11の葉を切除する切除工程と、この葉が切除された複数本の植物茎11を防虫・防かび剤液に浸漬する浸漬工程と、この防虫・防かび剤液が浸漬された複数本の植物茎11の水分率を所定の割合に調整する水分率調整工程と、この水分率が調整された複数本の植物茎11を同一厚さにそれぞれ圧縮成形して扁平にする圧縮成形工程と、この圧縮成形された複数本の植物茎11の両扁平面を研磨し複数本の植物茎11の両扁平面に位置する表皮層11aを部分的に又は全て除去して芯部11bを部分的に又は全て露出させる第1研磨工程と、この両扁平面が研磨された複数本の植物茎11の両扁平面に第1接着剤21を塗布する第1接着剤塗布工程と、この第1接着剤21が塗布された複数本の植物茎11を一列に並べ第1接着剤21を介して芯部11b同士を接着する第1接着工程とを含む植物茎を用いたボードの製造方法である。
【0016】
本発明の第9の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に図3に示すように、植物茎11が、、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎であることを特徴とする。
【0017】
本発明の第10の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に図3に示すように、水分率調整工程において、植物茎11の水分率を5〜500%に調整することを特徴とする。
【0018】
本発明の第11の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に図4に示すように、圧縮成形工程において、所定の厚さのスペーサ12cを用いることにより複数本の植物茎11を同一厚さにそれぞれ圧縮成形することを特徴とする。
【0019】
本発明の第12の観点は、第8の観点に基づく発明であって、更に図2に示すように、第1接着剤21が水系接着剤であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第13の観点は、図6〜図8に示すように、第8ないし第12の観点のいずれかに記載の方法で製造されたボード10の両面のいずれか一方又は双方を研磨して表皮層11aを部分的に又は全て除去し芯部11bを部分的に又は全て露出させる第2研磨工程と、この研磨されたボード10の表皮層11aが除去された面に第2接着剤32を塗布する第2接着剤塗布工程と、この第2接着剤32が塗布されたボード10の芯部11bが露出した面に第2接着剤32を介して面材31を接着する第2接着工程とを含む複合ボードの製造方法である。
【0021】
本発明の第14の観点は、第13の観点に基づく発明であって、更に図7に示すように、第2接着剤32が水系接着剤であることを特徴とする。
【0022】
本発明の第15の観点は、第13の観点に基づく発明であって、更に図6及び図7に示すように、面材31が中密度繊維板、パーティクルボード、単板又は紙であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の観点のボード又は第8の観点のボードの製造方法では、複数本の植物茎の扁平面の表皮層を部分的に又は全て除去して、芯部を部分的に又は全て露出させ、芯部同士を第1接着剤により接着すると、室温での接着性の発現を妨げるワックス層を部分的に又は全て除去されて、室温での接着性の良好な芯部が部分的に又は全て露出するので、各植物茎の表皮層同士を接着する場合より容易にかつ強力に接着できる。この結果、製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずにボードを製造できる。
【0024】
本発明の第4の観点のボード又は第12の観点のボードの製造方法では、複数本の植物茎の芯部同士を接着する第1接着剤が水系接着剤であるので、室温で芯部同士を接着しても強力に接着できる。この結果、接着時に加熱する必要がないため、比較的容易に強固なボードを製造できる。
【0025】
本発明の第5の観点の複合ボード又は第13の観点の複合ボードの製造方法では、ボードの両面のいずれか一方又は双方の表皮層を部分的に又は全て除去して芯部を部分的に又は全て露出させ、ボードの両面のいずれか一方又は双方に位置する各植物茎の芯部と面材とを第2接着剤により接着すると、ボードの両面のいずれか一方又は双方に位置する各植物茎の表皮層と面材とを接着する場合より容易にかつ強力に接着できる。この結果、製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずに複合ボードを製造できる。
【0026】
本発明の第6の観点の複合ボード又は第14の観点の複合ボードの製造方法では、ボードの両面のいずれか一方又は双方に位置する各植物茎の芯部と面材とを接着する第2接着剤が水系接着剤であるので、室温でボードの両面のいずれか一方又は双方に位置する各植物茎の芯部と面材とを接着しても強力に接着できる。この結果、接着時に加熱する必要がないため、比較的容易に強固な複合ボードを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明第1実施形態のボードの斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】(a)は葉が除去されたとうもろこし茎の斜視図であり、(b)は圧縮成形されたとうもろこし茎の斜視図であり、(c)は両扁平面が研磨されたとうもろこし茎の斜視図である。
【図4】とうもろこし茎をプレス装置により圧縮成形する手順を示す工程図である。
【図5】とうもろこし茎を茎研磨装置により研磨する手順を示す工程図である。
【図6】本発明第2実施形態の複合ボードの斜視図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】(a)は芯部同士を接着したボードの斜視図であり、(b)は下面を研磨したボードの斜視図である。
【図9】ボードをボード研磨装置により研磨する手順を示す工程図である。
【図10】本発明第3実施形態の複合ボードの斜視図である。
【図11】図10のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
<第1の実施の形態>
本実施の形態のボード10を構成する植物茎11としては、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎等が挙げられる。この実施の形態では、植物茎11はとうもろこし茎である。図1〜図3に示すように、ボード10は、葉が切除され各茎11が同一厚さになるように扁平に圧縮成形されかつ一対の扁平面の表皮層11aが部分的に又は全て除去されて芯部11bが部分的に又は全て露出する複数本のとうもろこし茎11と、複数本のとうもろこし茎11の両扁平面に塗布され複数本のとうもろこし茎11を一列に並べて扁平面に露出した芯部11b同士を接着する第1接着剤21とを備える。とうもろこし茎11は、表皮層11a及び芯部11bの他に、とうもろこし茎11の長手方向に間隔をあけて設けられた節部11cを有する。またとうもろこし茎11の水分率は5〜500%、好ましくは10〜300%の範囲内に調整される。ここで、とうもろこし茎11の水分率を5〜500%の範囲内に限定したのは、5%未満では圧縮成形時に茎に割れが発生したり茎の厚みにムラが発生してしまい、500%を越えると成形後の乾燥時間が長くなり製造時の作業効率が低下してしまうからである。またとうもろこし茎11の圧縮成形前の直径をD(図3(a))とし、とうもろこし茎11の圧縮成形されかつ表皮層が除去された一対の扁平面間の幅をW(図2及び図3(c))とするとき、Wは0.3D〜0.9D、好ましくは0.5D〜0.8Dの範囲内に設定される。ここで、Wを0.3D〜0.9Dの範囲内に限定したのは、0.3D未満では各とうもろこし茎11が繊維に沿って砕けて複数本に分離してしまい、0.9Dを越えると接着面となる扁平面の面積が小さくなって所定の接着強度を確保できなくなるからである。更に第1接着剤21としては水系接着剤を用いることが好ましい。この水系接着剤としては、アクリル系エマルジョン接着剤、SBR系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、水性ビニルウレタン接着剤等が挙げられる。なお、上記とうもろこし茎11の水分率は、任意の状態のとうもろこし茎11の質量をW1とし、絶乾状態のとうもろこし茎11の質量(絶乾質量)をW2とするとき、[(W1−W2)/W2]×100%で算出される。即ち、とうもろこし茎11の水分率は、とうもろこし茎11の水分量の絶乾質量に対する百分率で表される。
【0029】
一方、上記表皮層11aの外界に接する部分には、図示しないが、不飽和脂肪酸又はその重合体からなるクチン(cutin)と非水溶性の脂肪酸エステルからなるワックス(蝋、wax)とが蓄積したクチクラ層(cuticular layer)が形成される。このクチクラ層は、水の通過を阻止して水の蒸発及び水の浸入を防止するとともに、病原菌の侵入を防止する機能を有する。一方、芯部11bには上記ワックスは殆ど含まれない。これにより、とうもろこし茎11の表皮層11a同士を第1接着剤21の水系接着剤で接着すると、接着面にクチクラ層のワックスが存在するため、その接着力が低下するけれども、とうもろこし茎11の芯部11b同士を第1接着剤21の水系接着剤で接着すると、接着面にワックスが殆ど存在しないため、その接着力が強くなる。
【0030】
このように構成されたとうもろこし茎11を用いたボード10の製造方法を説明する。先ず複数本のとうもろこし茎11の葉を切除して所定の長さに切断した後に(図3(a))、この葉が切除されかつ所定の長さに切断された複数本のとうもろこし茎11を防虫・防かび剤液に浸漬する。防虫・防かび剤液としては、ビフェントリン、ペルメトリン、ピレスロイド、イミダゾール等が挙げられる。次いで上記防虫・防かび剤液が浸漬された複数本のとうもろこし茎11の水分率を5〜500%、好ましくは10〜300%に調整した後に、この水分率が調整された複数本のとうもろこし茎11を同一厚さにそれぞれ圧縮成形して扁平にする(図3(b))。ここで、とうもろこし茎11を圧縮成形するために、図4に示すようなプレス装置12が用いられる。このプレス装置12は、とうもろこし茎11を載せるための上面が水平な平面に形成されたベッド12aと、このベッド12aの上方にベッド12aに対向して設けられ下面が水平な平面に形成された昇降可能なスライダ12bと、ベッド12aの上面端部に載置された所定の厚さのスペーサ12cとを有する。このスペーサ12cの厚さは、圧縮成形されたとうもろこし茎11の扁平率と、圧縮成形されたとうもろこし茎11のスプリングバックとを考慮して設定される。圧縮成形されたとうもろこし茎11の扁平率[(a−b)/a](a:長径、b:短径)(図3(b))は、とうもろこし茎11の圧縮成形されかつ表皮層11aが除去された一対の扁平面間の幅W(図2及び図3(c))が0.3D〜0.9D、好ましくは0.5D〜0.8D(図3(a))の範囲内となるように設定される。なお、圧縮成形されたとうもろこし茎11のスプリングバックとは、とうもろこし茎11をプレス装置12で圧縮成形した後に、スライダ12bを上昇させてとうもろこし茎11から離したときに、とうもろこし茎11が若干元に戻る方向に変形する現象をいう。プレス装置12のベッド12a上に複数本のとうもろこし茎11を載せ(図4(a))、スライダ12bをその下面がスペーサ12c上面に当接するまで下降させて複数本のとうもろこし茎11を圧縮した後に(図4(b))、スライダ12bを上昇させる(図4(c))。これにより複数本のとうもろこし茎11がプレス装置12により圧縮成形される。
【0031】
次に上記圧縮成形された複数本のとうもろこし茎11の両扁平面を研磨し複数本のとうもろこし茎11の両扁平面に位置する表皮層11aを部分的に又は全て除去して芯部11bを部分的に又は全て露出させる(図3(c))。ここで、とうもろこし茎11の両扁平面を研磨するために、図5に示すような茎研磨装置13が用いられる。この茎研磨装置13は、扁平に圧縮成形されたとうもろこし茎11を載せるための水平方向に往復動可能なスライドベッド13aと、このスライドベッド13aの往復動範囲の中央上方に位置しモータ(図示せず)により回転駆動される駆動ローラ13bと、この駆動ローラ13bより下方であってスライドベッド13aの上面より上方に位置し回転可能に設けられた従動ローラ13cと、駆動ローラ13bと従動ローラ13cに掛け渡され外周面に砥粒が接着されたベルト13dと、駆動ローラ13bと従動ローラ13cとの間隔を調整してベルト13dに所定の張力を付与する張力付与機構(図示せず)と、この張力が付与されたベルト13dを駆動ローラ13b及び従動ローラ13cとともに昇降させてベルト13dをスライドベッド13a上のとうもろこし茎11に所定の圧力で圧接する昇降・圧接機構(図示せず)とを有する。扁平に圧縮成形された複数本のとうもろこし茎11を茎研磨装置13のスライドベッド13a上に固定し(図5(a))、ベルト13dを駆動ローラ13b及び従動ローラ13cとともに回転させるとともに、昇降・圧接機構によりベルト13dを駆動ローラ13b及び従動ローラ13cとともに下降させた状態で、スライドベッド13aを往復動させる(図5(a)及び(b))。これにより複数本のとうもろこし茎11の一方の扁平面が研磨されて、一方の扁平面の表皮層11aが部分的に又は全て除去され、芯部11bが部分的に又は全て露出する。その後、スライドベッド13a上の複数本のとうもろこし茎11を裏返して、上記と同様の工程で、複数本のとうもろこし茎11の他方の扁平面を研磨して、他方の扁平面の表皮層11aを部分的に又は全て除去し、芯部11bを部分的に又は全て露出させる。更に上記両扁平面が研磨された複数本のとうもろこし茎11の両扁平面に第1接着剤21を塗布した後に、この第1接着剤21が塗布された複数本のとうもろこし茎11を一列に並べ第1接着剤21を介して芯部11b同士を接着する。これによりボード10が製造される。なお、複数本のとうもろこし茎11を一列に並べ第1接着剤21を介して芯部11b同士を接着するときに、各接着面が密着するように一列に並んだ複数本のとうもろこし茎11に圧力を付与することが好ましい。
【0032】
このように製造されたボード10では、複数本のとうもろこし茎11の扁平面の表皮層11aを茎研磨装置13により部分的に又は全て除去して芯部11bを部分的に又は全て露出させ、芯部11b同士を第1接着剤21により接着すると、室温での接着性の発現を妨げるワックス層を部分的に又は全て除去されて、室温での接着性の良好な芯部11bが部分的に又は全て露出するので、各とうもろこし茎11の表皮層11a同士を接着する場合より容易にかつ強力に接着できる。この結果、製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずにボード10を製造できる。また複数本のとうもろこし茎11の芯部11b同士を接着する第1接着剤21が水系接着剤であるので、室温で芯部11b同士を接着しても強力に接着できる。この結果、接着時に加熱する必要がないため、比較的容易に強固なボード10を製造できる。なお、上記ボードの両面を研磨して、ボードの両面を平滑面に形成してもよい。これによりボード両面の見栄えが向上する。
【0033】
<第2の実施の形態>
図6〜図9は本発明の第2の実施の形態を示す。図6〜図9において図1〜図5と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態の複合ボード30は、第1の実施の形態のボード10と、ボード10の一方の面の表皮層11aが部分的に又は全て除去されて芯部11bが部分的に又は全て露出した面に積層された第1面材31と、ボード10の芯部11bの露出した一方の面に第1面材31を接着する第2接着剤32とを備える。第1面材31としては、中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)、パーティクルボード、単板又は紙が挙げられる。また第2接着剤32としては水系接着剤を用いることが好ましい。この水系接着剤としては、アクリル系エマルジョン接着剤、SBR系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、水性ビニルウレタン接着剤等が挙げられる。上記以外は第1の実施の形態と同一に構成される。
【0034】
このように構成された複合ボード30の製造方法を説明する。先ずボード10の一方の面を研磨して表皮層11aを部分的に又は全て除去し芯部11bを部分的に又は全て露出させる(図8(b))。ここで、ボード10の一方の面を研磨するために、図9に示すようなボード研磨装置33が用いられる。このボード研磨装置33は、第1の実施の形態の茎研磨装置と同様に構成される。即ち、ボード研磨装置33は、ボード10を載せるための水平方向に往復動可能なスライドベッド33aと、このスライドベッド33aの往復動範囲の中央上方に位置しモータ(図示せず)により回転駆動される駆動ローラ33bと、この駆動ローラ33bより下方であってスライドベッド33aの上面より上方に位置し回転可能に設けられた従動ローラ33cと、駆動ローラ33bと従動ローラ33cに掛け渡され外周面に砥粒が接着されたベルト33dと、駆動ローラ33bと従動ローラ33cとの間隔を調整してベルト33dに所定の張力を付与する張力付与機構(図示せず)と、この張力が付与されたベルト33dを駆動ローラ33b及び従動ローラ33cとともに昇降させてベルト33dをスライドベッド33a上のボード10に所定の圧力で圧接する昇降・圧接機構(図示せず)とを有する。ボード10をその一方の面が上向きとなるようにボード研磨装置33のスライドベッド33a上に固定し(図9(a))、ベルト33dを駆動ローラ33b及び従動ローラ33cとともに回転させるとともに、昇降・圧接機構によりベルト33dを駆動ローラ33b及び従動ローラ33cとともに下降させた状態で、スライドベッド33aを往復動させる(図9(a)及び(b))。これによりボード10の一方の面が研磨されて、ボード10の一方の面に位置する各とうもろこし茎11の表皮層11aが部分的に又は全て除去され、ボード10の一方の面に位置する各とうもろこし茎11の芯部11bが部分的に又は全て露出する。次に上記各とうもろこし茎11の芯部11bが露出したボード10の一方の面に第2接着剤32を塗布した後に、この第2接着剤32が塗布されたボード10の一方の面に第2接着剤32を介して第1面材31を接着する。これにより複合ボード30が製造される。なお、ボード10と第1面材31とを第2接着剤32を介して接着するときに、接着面が密着するようにボード10及び第1面材31に圧力を付与することが好ましい。
【0035】
このように製造された複合ボード30では、ボード10の一方の面に位置する複数本のとうもろこし茎11の表皮層11aをボード研磨装置33により部分的に又は全て除去して芯部11bを部分的に又は全て露出させ、これらの芯部11bと第1面材31とを第2接着剤32により接着すると、室温での接着性の発現を妨げるワックス層を部分的に又は全て除去されて、室温での接着性の良好な芯部11bが部分的に又は全て露出するので、ボード10の一方の面に位置する各とうもろこし茎11の表皮層11aと第1面材31とを接着する場合より容易にかつ強力に接着できる。この結果、製造設備が大型化し設備費用が増大する特殊な熱プレス装置を用いずに複合ボード30を製造できる。またボード10の一方の面に位置する複数本のとうもろこし茎11の芯部11bと第1面材31とを接着する第2接着剤32が水系接着剤であるので、室温でボード10の一方の面に位置する各とうもろこし茎11の芯部11bと第1面材31とを接着しても強力に接着できる。この結果、接着時に加熱する必要がないため、比較的容易に第1の実施の形態のボード10より強固な複合ボード30を製造できる。なお、上記複合ボードの他方の面を研磨して、複合ボードの他方の面を平滑面に形成してもよい。これにより複合ボードの他方の面が平滑になって、この見栄えが向上する。
【0036】
<第3の実施の形態>
図10及び図11は本発明の第3の実施の形態を示す。図10及び図11において図6及び図7と同一符号は同一部品を示す。この実施の形態では、複合ボード50が、第2の実施の形態の複合ボード30と、複合ボード30の他方の面の表皮層11aが部分的に又は全て除去されて芯部11bが部分的に又は全て露出した面に積層された第2面材52と、複合ボード30の芯部11bの露出した他方の面に第2面材52を接着する第2接着剤62とを備える。第2面材52としては、第2の実施の形態の面材31と同様に、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、単板又は紙等が挙げられる。また第2接着剤62としては、第2の実施の形態の第2接着剤32と同様に、水系接着剤であることが好ましい。上記以外は第2の実施の形態と同一に構成される。
【0037】
このように構成された複合ボード50は、第2の実施の形態におけるボード10の一方の面への第1面材31の接着手順と同様の手順で、第2の実施の形態の複合ボード30の他方の面に第2面材52を接着することにより製造される。なお、第2の実施の形態の複合ボード30の他方の面に第2面材52を第2接着剤62を介して接着するときに、接着面が密着するように第2の実施の形態の複合ボード30及び第2面材52に圧力を付与することが好ましい。
【0038】
このように製造された複合ボード50では、第2の実施の形態の複合ボード30より強固になるとともに、複合ボード50の他方の面の見栄えが更に向上する。上記以外の作用及び効果は第2の実施の形態と略同様であるので、繰返しの説明を省略する。
【符号の説明】
【0039】
10 ボード
11 とうもろこし茎(植物茎)
11a 表皮層
11b 芯部
12c スペーサ
21 第1接着剤
30,50 複合ボード
31 第1面材(面材)
32,62 第2接着剤
52 第2面材(面材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉が切除され各茎が同一厚さになるように扁平に圧縮成形されかつ一対の扁平面の表皮層(11a)が部分的に又は全て除去されて芯部(11b)が部分的に又は全て露出する複数本の植物茎(11)と、
前記複数本の植物茎(11)の両扁平面に塗布され前記複数本の植物茎(11)を一列に並べて前記扁平面に露出した芯部(11b)同士を接着する第1接着剤(21)と
を備えた植物茎を用いたボード。
【請求項2】
前記植物茎(11)が、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎である請求項1記載のボード。
【請求項3】
前記植物茎(11)の水分率が5〜500%に調整された請求項1記載のボード。
【請求項4】
前記第1接着剤(21)が水系接着剤である請求項1記載のボード。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載のボード(10)と、
前記ボード(10)の両面のいずれか一方又は双方の表皮層(11a)が部分的に又は全て除去されて芯部(11b)が部分的に又は全て露出した面に積層された面材(31,52)と、
前記ボード(10)の芯部(11b)の露出した面に前記面材(31,52)を接着する第2接着剤(32,62)と
を備えた複合ボード。
【請求項6】
前記第2接着剤(32,62)が水系接着剤である請求項5記載の複合ボード。
【請求項7】
前記面材(31,52)が中密度繊維板、パーティクルボード、単板又は紙である請求項5記載の複合ボード。
【請求項8】
複数本の植物茎(11)の葉を切除する切除工程と、
前記葉が切除された複数本の植物茎(11)を防虫・防かび剤液に浸漬する浸漬工程と、
前記防虫・防かび剤液が浸漬された複数本の植物茎(11)の水分率を所定の割合に調整する水分率調整工程と、
前記水分率が調整された複数本の植物茎(11)を同一厚さにそれぞれ圧縮成形して扁平にする圧縮成形工程と、
前記圧縮成形された複数本の植物茎(11)の両扁平面を研磨し前記複数本の植物茎(11)の両扁平面に位置する表皮層(11a)を部分的に又は全て除去して芯部(11b)を部分的に又は全て露出させる第1研磨工程と、
前記両扁平面が研磨された複数本の植物茎(11)の両扁平面に第1接着剤(21)を塗布する第1接着剤塗布工程と、
前記第1接着剤(21)が塗布された複数本の植物茎(11)を一列に並べ前記第1接着剤(21)を介して前記芯部(11b)同士を接着する第1接着工程と
を含む植物茎を用いたボードの製造方法。
【請求項9】
前記植物茎(11)が、とうもろこし、高りゃん又は砂糖きびからなるイネ科植物の茎であるか、或いはひまわりからなるキク科植物の茎である請求項8記載のボードの製造方法。
【請求項10】
前記水分率調整工程において、前記植物茎(11)の水分率を5〜500%に調整する請求項8記載のボードの製造方法。
【請求項11】
前記圧縮成形工程において、所定の厚さのスペーサ(12c)を用いることにより前記複数本の植物茎(11)を同一厚さにそれぞれ圧縮成形する請求項8記載のボードの製造方法。
【請求項12】
前記第1接着剤(21)が水系接着剤である請求項8記載のボードの製造方法。
【請求項13】
請求項8ないし12いずれか1項に記載の方法で製造されたボード(10)の両面のいずれか一方又は双方を研磨して表皮層(11a)を部分的に又は全て除去し芯部(11b)を部分的に又は全て露出させる第2研磨工程と、
前記研磨されたボード(10)の表皮層(11a)が除去された面に第2接着剤(32,62)を塗布する第2接着剤塗布工程と、
前記第2接着剤(32,62)が塗布されたボード(10)の芯部(11b)が露出した面に前記第2接着剤(32,62)を介して面材(31,52)を接着する第2接着工程と
を含む複合ボードの製造方法。
【請求項14】
前記第2接着剤(32,62)が水系接着剤である請求項13記載の複合ボードの製造方法。
【請求項15】
前記面材(31,52)が中密度繊維板、パーティクルボード、単板又は紙である請求項13記載の複合ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171210(P2012−171210A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35451(P2011−35451)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(390001339)光洋産業株式会社 (46)
【Fターム(参考)】