説明

検出装置、センサーデバイス及び電子機器

【課題】感度の調整ができる検出装置、センサーデバイス及び電子機器等を提供すること。
【解決手段】検出装置は、焦電素子10と、焦電素子10に接続され、焦電素子10の出力電圧の電圧感度を調整する感度調整回路30と、焦電素子10に接続される検出回路20とを含む。感度調整回路30は、感度調整用の可変容量回路40を含み、可変容量回路40に並列に接続される可変抵抗回路50をさらに含む。可変容量回路40の容量値が小さな値に設定された場合に、可変抵抗回路50の抵抗値は大きな値に設定され、可変容量回路40の容量値が大きな値に設定された場合に、可変抵抗回路50の抵抗値は小さな値に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、センサーデバイス及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦電素子を用いた赤外線の検出装置が知られている。例えば人体からは、波長が10μm付近の赤外線が輻射されており、これを検出することで人体の存在や温度の情報を非接触で取得できる。従って、このような赤外線の検出回路を利用することで、侵入検知や物理量計測を実現できる。
【0003】
赤外線の検出装置の従来技術としては、例えば特許文献1に開示される技術が知られている。特許文献1の従来技術では、チョッパーを用いて、焦電素子への赤外線の照射・遮断を繰り返しながら、焦電素子の温度を変化させて焦電流を発生させ、この焦電流を焦電素子自身に充電させることで電圧信号として検出する。
【0004】
しかしながら、この従来技術では、焦電素子の電圧感度を調整することができないため、検出装置の感度を赤外光の強度に応じて制御・調整することが難しいなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−142427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の幾つかの態様によれば、感度の調整ができる検出装置、センサーデバイス及び電子機器等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、焦電素子と、前記焦電素子に接続され、前記焦電素子の出力電圧の電圧感度を調整する感度調整回路と、前記焦電素子に接続される検出回路とを含み、前記感度調整回路は、感度調整用の可変容量回路を含む検出装置に関係する。
【0008】
本発明の一態様によれば、検出装置は、可変容量回路の容量値を可変に設定することで、焦電素子に接続される容量を可変に設定することができる。こうすることで、電圧感度を調整することができるから、例えば対象物の温度領域に適した電圧感度に調整することなどが可能になる。その結果、例えば夜間の物体像や対象物の温度分布等を精度良く安定に検出することなどが可能になる。
【0009】
また本発明の一態様では、前記感度調整回路は、前記可変容量回路に並列に接続される可変抵抗回路をさらに含んでもよい。
【0010】
このようにすれば、検出装置は、可変容量回路の容量値と可変抵抗回路の抵抗値とを可変に設定することで、焦電素子に接続される容量値と抵抗値とを可変に設定することができる。こうすることで、電圧感度を調整することができる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記可変容量回路の容量値が小さいほど、前記可変抵抗回路の抵抗値が大きな値に設定されてもよい。
【0012】
このようにすれば、検出装置は、可変容量回路の容量値と可変抵抗回路の抵抗値との積をほぼ一定に保持しながら、容量値と抵抗値とを可変に設定することができる。その結果、電圧感度がほぼ一定になるチョッピング周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度を調整することなどが可能になる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記可変容量回路の容量値及び前記可変抵抗回路の抵抗値は、前記容量値と前記抵抗値との積が一定になるように設定されてもよい。
【0014】
このようにすれば、検出装置は、可変容量回路の容量値と可変抵抗回路の抵抗値との積を一定に保持しながら、容量値と抵抗値とを可変に設定することができる。その結果、電圧感度がほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度を調整することなどが可能になる。
【0015】
また本発明の一態様では、前記感度調整回路は、前記可変容量回路として、各ユニットが互いに異なる容量値を持つ容量素子を有する複数の調整ユニットと、前記複数の調整ユニットのうちのいずれか1つの調整ユニットと前記焦電素子とを選択的に接続するスイッチ回路とを含んでもよい。
【0016】
このようにすれば、検出装置は、スイッチ回路により複数の調整ユニットのいずれか1つを選択して接続することで、可変容量回路の容量値を可変に設定することができる。
【0017】
また本発明の一態様では、前記複数の調整ユニットの前記各ユニットは、前記容量素子に並列に接続される抵抗素子をさらに含んでもよい。
【0018】
このようにすれば、検出装置は、スイッチ回路により複数の調整ユニットのいずれか1つを選択して接続することで、容量値と抵抗値とを可変に設定することができる。
【0019】
また本発明の一態様では、感度調整用の調整信号を出力する制御部を含み、前記調整信号に基づいて、前記可変容量回路の容量値が可変に設定されてもよい。
【0020】
このようにすれば、検出装置は、制御部から出力される調整信号に基づいて、可変容量回路の容量値を可変に設定し、電圧感度を調整することができる。
【0021】
また本発明の一態様では、前記調整信号に基づいて、前記可変抵抗回路の抵抗値が可変に設定されてもよい。
【0022】
このようにすれば、検出装置は、制御部から出力される調整信号に基づいて、容量値と抵抗値とを可変に設定し、電圧感度を調整することができる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記電圧感度の最大値をRvmax、前記焦電素子の吸収率をε、焦電係数をp、前記焦電素子の面積をS、前記焦電素子の熱抵抗をRth、前記焦電素子の内部静電容量と前記可変容量回路との合成容量値をCelとした場合に、前記電圧感度の最大値Rvmaxは、Rvmax=ε×p×S×Rth/Celの近似式で与えられ、前記可変容量回路の容量値を調整することで、前記合成容量値Celが前記可変容量回路により調整され、前記合成容量値Celが調整されることで、前記電圧感度の最大値Rvmaxが調整されてもよい。
【0024】
このようにすれば、検出装置は、可変容量回路の容量値を大きくすることで合成容量値を大きくし、電圧感度の最大値を小さくすることができる。一方、検出装置は、可変容量回路の容量値を小さくすることで合成容量値を小さくし、電圧感度の最大値を大きくすることができる。
【0025】
また本発明の一態様では、前記電圧感度の最大値をRvmax、前記焦電素子の吸収率をε、焦電係数をp、前記焦電素子の面積をS、前記焦電素子の熱抵抗をRth、前記焦電素子の内部電気抵抗と前記可変抵抗回路との合成抵抗値をRel、前記焦電素子の内部静電容量と前記可変容量回路との合成容量値及び前記焦電素子の内部電気抵抗と前記可変抵抗回路との前記合成抵抗値の積である電気時定数をτelとした場合に、前記電圧感度の最大値Rvmaxは、Rvmax=ε×p×S×Rel×Rth/τelの近似式で与えられ、前記電気時定数τelを一定にして、前記可変抵抗回路の抵抗値を調整することで、前記合成抵抗値Relが前記可変抵抗回路により調整され、前記合成抵抗値Relが調整されることで、前記電圧感度の最大値Rvmaxが調整されてもよい。
【0026】
このようにすれば、検出装置は、電気時定数を一定にして、可変抵抗回路の抵抗値を大きくすることで合成抵抗値を大きくし、電圧感度の最大値を大きくすることができる。一方、検出装置は、電気時定数を一定にして、可変抵抗回路の抵抗値を小さくすることで合成抵抗値を小さくし、電圧感度の最大値を小さくすることができる。
【0027】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載の検出装置を含むセンサーデバイスに関係する。
【0028】
本発明の他の態様は、複数のセンサーセルを有するセンサーアレイと、1又は複数の行線と、1又は複数の列線と、前記1又は複数の行線に接続される行選択回路と、前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路とを含み、前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、焦電素子と、前記焦電素子に接続され、前記焦電素子の出力電圧の電圧感度を調整する感度調整回路と、前記焦電素子に接続される検出回路とを含み、前記感度調整回路は、感度調整用の可変容量回路を含むセンサーデバイスに関係する。
【0029】
本発明の他の態様によれば、感度調整回路により容量値を可変に設定することで、センサーデバイスの電圧感度を調整することができる。その結果、対象物の温度領域に適した電圧感度に調整したり、センサーセル間の感度ばらつきを補正したりすることなどが可能になるから、例えば夜間の物体像や対象物の温度分布等を精度良く安定に検出することなどが可能になる。
【0030】
本発明の他の態様は、上記いずれかに記載のセンサーデバイスを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1(A)、図1(B)は、検出装置の原理を説明する図。
【図2】図2(A)は、電圧感度の周波数特性。図2(B)は、合成抵抗を小さくした場合の電圧感度の周波数特性。
【図3】図3(A)は、合成容量を大きくした場合の電圧感度の周波数特性。図3(B)は、電気時定数を一定にして、合成容量を大きくした場合の電圧感度の周波数特性。
【図4】検出装置の基本的な構成例。
【図5】図5(A)、図5(B)は、焦電素子の詳細な構成例。
【図6】感度調整回路の構成例。
【図7】図7(A)、図7(B)は、検出回路の第1及び第2の構成例。
【図8】センサーデバイスの第1の構成例。
【図9】図9(A)、図9(B)は、センサーデバイスの第2の構成例。
【図10】センサーデバイスを含む電子機器の構成例。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0033】
1.検出装置の電圧感度
図1(A)、図1(B)は、本実施形態の検出装置の原理を説明する図である。本実施形態の検出装置では、赤外線等を検出する素子として焦電素子10(熱センサー素子、赤外線検出素子、熱型光検出素子、強誘電体素子)を用いる。焦電素子10は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体FE(焦電体)を上部電極EAと下部電極EBとで挟んだ構成である。図1(A)に示すように、焦電素子10は、電気的には、自発分極、内部静電容量CA、内部電気抵抗RAの3つが並列に接続された回路と等価である。焦電素子10の一端は検出ノードNDに接続され、他端は第1の電源ノードVSS(低電位電源ノード)に接続される。
【0034】
チョッパー等により焦電素子10に照射される赤外線を周期的に遮断することで、焦電素子10の温度を変化させることができる。温度が変化すると、焦電素子10の自発分極が変化して焦電流が発生し、この焦電流が内部静電容量CAに充電され、またこの焦電流が内部電気抵抗RAに流れることで、検出ノードNDに出力電圧VAが生成される。この出力電圧VAは、内部静電容量CAの容量値(キャパシタンス値)及び内部電気抵抗RAの抵抗値に依存する。
【0035】
本実施形態の検出装置では、図1(B)に示すように、外部静電容量CX及び外部電気抵抗RXを焦電素子10に対して並列に接続することで、検出装置の電圧感度を調整することができる。即ち、内部静電容量CAと外部静電容量CXとの合成静電容量及び内部電気抵抗RAと外部電気抵抗RXとの合成電気抵抗が電圧感度を決めるパラメーターになるから、CXとRXとを可変に設定することで、電圧感度を調整することができる。以下では、この電圧感度がどのようにして調整されるかについて説明する。
【0036】
内部静電容量CA及び外部静電容量CXの容量値をそれぞれCa、Cxとし、内部電気抵抗RA及び外部電気抵抗RXの抵抗値をそれぞれRa、Rxとすると、合成静電容量の容量値Cel及び合成電気抵抗の抵抗値Relは、次式で与えられる。
【0037】
Cel=Ca+Cx (1)
Rel=Ra×Rx/(Ra+Rx) (2)
電圧感度Rvは、焦電素子10に照射される赤外光の放射束(光束)、即ち単位時間当たりのエネルギーをΦとすると、次式で定義される。
【0038】
Rv=VA/Φ (3)
以下では、合成静電容量の容量値Cel及び合成電気抵抗の抵抗値Relが変化した場合に、電圧感度Rvがどのように変化するかを説明する。なお、以下の説明では、特に区別する必要がない場合には、合成静電容量の容量値Celを単に合成容量Celと表記し、また合成電気抵抗の抵抗値Relを単に合成抵抗Relと表記する。
【0039】
公知文献Arnold Daniels著、小檜山光信訳、「フィールドガイド 赤外線システム」、(株)オプトロニクス社、p.64−65によれば、電圧感度Rvは次式で与えられる。
【0040】
【数1】

【0041】
ここでεは焦電素子の吸収率、pは焦電係数、Sは焦電素子の面積、Rthは焦電素子の熱抵抗、ωはチョッパーの角周波数(チョッピング周波数)である。また、τelは電気時定数、τthは熱時定数であって、それぞれ次式で与えられる。
【0042】
τel=Cel×Rel (5)
τth=Cth×Rth (6)
ここでCthは焦電素子の熱容量、Rthは焦電素子の熱抵抗である。
【0043】
図2(A)に、電圧感度Rvの周波数特性を示す。ここでは、τth<τelとなる場合について示すが、焦電素子材料の電気的特性と構造設計の理由から、一般にτth<τelが成り立つ。例えば、τelは10−2〜10sの範囲であり、τthは10−3〜10sの範囲である。
【0044】
図2(A)に示すように、電圧感度Rvは、
【0045】
【数2】

【0046】
において、最大値Rvmaxをとる。Rvmaxは(4)、(7)式より、次のように求まる。
【0047】
【数3】

【0048】
また、チョッピング周波数ωが1/τel≦ω≦1/τthである範囲では、電圧感度Rvはほぼ一定であり、Rvmaxはこの範囲に存在する。
【0049】
図2(B)に、合成抵抗Relを小さくした場合の電圧感度Rvの周波数特性を示す。Relが小さくなることで、電気時定数τelが小さくなり、従って図2(B)のD1、D2に示すように1/τelは高周波数側にシフトする。即ち、電圧感度Rvがほぼ一定になる範囲が狭くなる。一方、最大値Rvmaxは小さくなるが、その低下量は僅かである。
【0050】
図3(A)に、合成容量Celを大きくした場合の電圧感度Rvの周波数特性を示す。Celが大きくなることで、電気時定数τelが大きくなり、従って1/τelは低周波数側にシフトする。一方、最大値Rvmaxは小さくなるが、図3(A)のE1、E2に示すように、その低下量は、合成抵抗Relを小さくした場合(図2(B))と比較して大きくなる。
【0051】
合成容量Celを大きくした場合に電圧感度の最大値Rvmaxが大きく変化することは、以下の近似式から理解できる。τth≪τelである場合には、Rvmaxは次式で近似することができる。
【0052】
【数4】

【0053】
この式から分かるように、合成容量値Celが調整されることで、電圧感度の最大値Rvmaxが調整される。また、電気時定数τelを一定にして合成抵抗値Relが調整されることで、電圧感度の最大値Rvmaxが調整される。
【0054】
図3(B)に、電気時定数τelを一定にして、合成容量Celを大きくした場合の電圧感度Rvの周波数特性を示す。この場合には、τelが一定であるから電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域は変化しない。一方、図3(B)のF1、F2、F3に示すように、最大値Rvmaxは合成容量Celの増大に伴って減少する。
【0055】
以上説明したように、電気時定数τelを一定に保持しながら、合成容量Celを大きくすると同時に合成抵抗Relを小さくする、或いは、合成容量Celを小さくすると同時に合成抵抗Relを大きくすることで、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の感度調整を行うことができる。電気時定数τelを一定に保って電圧感度Rvの制御・調整を行う場合には、Rvmaxの近似式である(9)式から分かるように、電圧感度Rvは合成抵抗Relに比例するから、電圧感度Rvの微細かつ精密な制御・調整が可能になる。
【0056】
さらに、チョッピング周波数を、電圧感度Rvがほぼ一定となる周波数領域、より望ましくはその領域の中心付近に設定することで、電圧感度Rvの制御・調整を行う際の周波数特性による影響を低減することができる。このとき、電圧感度Rvがほぼ一定となる周波数領域の幅はチョッピング周波数の変動やばらつきに対するマージンとみなすことができる。チョッピング周波数は、例えば数10〜数100Hzの範囲に設定される。
【0057】
本実施形態の検出装置によれば、図1(B)に示したように、焦電素子10に対して並列に接続された外部静電容量CX及び外部電気抵抗RXを可変に設定することで、電気時定数τelを一定に保持しながら、合成容量Celを大きくすると同時に合成抵抗Relを小さくする、或いは、合成容量Celを小さくすると同時に合成抵抗Relを大きくすることができる。こうすることで、電圧感度Rvがほぼ一定になるチョッピング周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。電圧感度Rvを調整することで、例えば対象物(検出対象)の温度領域(高温、常温、低温など)に適した感度に調整することなどが可能になる。
【0058】
2.検出装置の構成
図4に、本実施形態の検出装置の基本的な構成例を示す。本実施形態の検出装置は、焦電素子10、検出回路20及び感度調整回路30を含む。また、本実施形態の検出装置は、制御部60をさらに含んでもよい。なお、本実施形態の検出装置は図4の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0059】
焦電素子10は、上述したように、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体FE(焦電体)を含み、赤外線等を検出する。焦電素子10の詳細な構成については、後述する。
【0060】
検出回路20は、焦電素子10に接続される。具体的には、検出回路20は、焦電素子10の一端側のノードである検出ノードNDに接続され、検出ノードNDに生成される出力電圧VAを検出して検出信号VDETを出力する。なお、検出回路20の詳細な構成については、後述する。
【0061】
感度調整回路30は、焦電素子10に接続され、焦電素子10の出力電圧VAの電圧感度Rvを調整する。具体的には、感度調整回路30は、焦電素子10の一端側のノードである検出ノードNDと第1の電源ノードVSS(低電位電源ノード)との間に設けられ、感度調整用の可変容量回路40を含む。また、感度調整回路30は、可変容量回路40に並列に接続される可変抵抗回路50をさらに含んでもよい。可変容量回路40及び可変抵抗回路50は、制御部60からの感度調整用の調整信号SAJに基づいて、容量値及び抵抗値が可変に設定される。
【0062】
可変容量回路40は、例えば可変容量ダイオード(バリキャップ、バラクター)などの可変容量素子で構成してもよいし、或いは容量値が互いに異なる複数の容量素子(キャパシター)を設けてスイッチ素子によりそれらのうちの1つを選択する構成にしてもよい。また、可変抵抗回路50は、例えば可変抵抗器(バリオーム)などの可変抵抗素子で構成してもよいし、或いは抵抗値が互いに異なる複数の抵抗素子を設けてスイッチ素子によりそれらのうちの1つを選択する構成にしてもよい。
【0063】
感度調整回路30は、可変容量回路40及び可変抵抗回路50の上記の構成の組み合わせで構成してもよい。例えば、可変容量素子とスイッチ素子で選択される複数の抵抗素子との組み合わせであってもよいし、スイッチ素子で選択される複数の容量素子と可変抵抗素子との組み合わせであってもよい。
【0064】
可変容量回路40は、図1(B)に示した外部静電容量CXに相当し、また可変抵抗回路50は、図1(B)に示した外部電気抵抗RXに相当する。上述したように、外部静電容量CXの容量値Cxと外部電気抵抗RXの抵抗値Rxとを可変に設定することで、合成容量Celと合成抵抗Relとを調整することができるから、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。なお、図3(A)に示したように、合成容量Celだけを変化させても電圧感度Rvを調整することができるから、図4において可変抵抗回路50を省略した構成とすることもできる。
【0065】
可変容量回路40の容量値Cxが小さいほど、可変抵抗回路50の抵抗値Rxは大きな値に設定される。反対に、可変容量回路40の容量値Cxが大きいほど、可変抵抗回路50の抵抗値Rxは小さな値に設定される。より望ましくは、可変容量回路40の容量値Cx及び可変抵抗回路50の抵抗値Rxは、容量値と抵抗値との積が一定になるように設定される。ここで容量値と抵抗値との積が一定とは、厳密に一定な値だけではなく、ほぼ一定な値であってもよい。
【0066】
可変容量回路40は、図示していないが、例えば異なる容量値を持つ複数の容量素子と、複数の容量素子のいずれか1つを選択する第1のスイッチ回路とにより構成することができる。また、可変抵抗回路50は、図示していないが、例えば異なる抵抗値を持つ複数の抵抗素子と、複数の抵抗素子のいずれか1つを選択する第2のスイッチ回路とにより構成することができる。そして第1、第2のスイッチ回路は、制御部60からの調整信号SAJに基づいて制御される。
【0067】
上述したように、電気時定数τelを一定に保持しながら、合成容量Celを大きくすると同時に合成抵抗Relを小さくする、或いは、合成容量Celを小さくすると同時に合成抵抗Relを大きくすることができる。こうすることで、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。
【0068】
従って、本実施形態の検出装置によれば、可変容量回路40の容量値Cx及び可変抵抗回路50の抵抗値Rxを、両者の積を一定(又は、ほぼ一定)に保持しながら可変に設定することで、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。
【0069】
厳密には、電気時定数τelを一定に保持するためには、焦電素子10の内部容量CA及び内部抵抗RAを考慮して、合成容量値Celと合成抵抗値Relとの積を一定にする必要がある。しかしながら、内部容量CAが十分小さく、且つ、内部抵抗RAが十分に大きい場合には、合成容量値Celは可変容量回路40の容量値Cxにほぼ等しく、また合成抵抗値Relは可変抵抗回路50の抵抗値Rxにほぼ等しくなるから、CxとRxとの積を一定にすることで電気時定数τelをほぼ一定に保持することができる。また焦電素子10の内部容量CA及び内部抵抗RAを測定し、この測定値と合成容量値Cel及び合成抵抗値Relを与える(1)式及び(2)式を用いてCx、Rxを算出することで、Cx及びRxをより正確に設定することもできる。
【0070】
図5(A)、図5(B)に、本実施形態の焦電素子10の詳細な構成例を示す。なお、本実施形態の焦電素子10は図5(A)、図5(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0071】
図5(A)は、焦電素子10を上方から見た平面図である。ここで上方とは、基板に対して垂直な方向であって、焦電素子、トランジスター等が形成される側(回路が形成される側)の方向をいう。また、下方とは、上方の反対方向をいう。図5(B)には、図5(A)のB−B’に沿った断面を示す。
【0072】
焦電素子10は、上部電極EA、強誘電体(焦電体)FE、下部電極EBを含む。強誘電体(焦電体)FEは、上部電極EAと下部電極EBとの間に設けられる。焦電素子10は、メンブレン(支持部材)MB上に形成される。
【0073】
メンブレン(支持部材)MBは、例えばシリコン酸化膜(SiO)であって、焦電素子10を支持するためのものである。
【0074】
空洞領域CAVは、メンブレンMBの下方に設けられる領域であって、焦電素子10を基板(シリコン基板)SUBから熱的に分離するためのものである。
【0075】
ポスト部(接続部)PS1、PS2は、メンブレンMBを焦電素子10の外側の領域に接続するためのものである。これらのポスト部PS1、PS2には、配線LA1、LA2がそれぞれ設けられる。焦電素子10は、配線LA1、LA2を介して、感度調整回路30、検出回路20及び第1の電源ノードVSSに接続される。
【0076】
焦電素子10の内部静電容量CAは、上部電極EA、強誘電体(焦電体)FE、下部電極EBにより形成されるキャパシターの静電容量であり、内部電気抵抗RAは、強誘電体(焦電体)FEの上部電極EAから下部電極EBに向かう経路の電気抵抗である。
【0077】
焦電素子10の熱容量Cthは、主として強誘電体(焦電体)FE、上部電極EA、下部電極EB及びメンブレンMBの各熱容量の合成熱容量である。また、焦電素子10の熱抵抗Rthは、主としてポスト部PS1、PS2の各熱抵抗の合成熱抵抗である。
【0078】
なお、図示していないが、検出回路20、感度調整回路30及び制御部60を同一基板SUB上に形成し、これらと焦電素子10を配線LA1、LA2で接続することができる。或いは、検出回路20、感度調整回路30及び制御部60を他の基板に形成して、これらと焦電素子10を適当な接続手段で接続してもよい。
【0079】
図6に、本実施形態の感度調整回路30の構成例を示す。本実施形態の感度調整回路30は、可変容量回路40として、複数の調整ユニットAJ1〜AJ3と、スイッチ回路SWとを含む。なお、本実施形態の感度調整回路30は、図6の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0080】
複数の調整ユニットAJ1〜AJ3の各ユニットは、互いに異なる容量値を持つ容量素子を有する。また、複数の調整ユニットAJ1〜AJ3の各ユニットは、容量素子に並列に接続される抵抗素子をさらに含む。例えば、図6に示すように、調整ユニットAJ1は、容量素子(キャパシター)CX1と抵抗素子RX1を含み、調整ユニットAJ2は、容量素子(キャパシター)CX2と抵抗素子RX2を含み、調整ユニットAJ3は、容量素子(キャパシター)CX3と抵抗素子RX3を含む。
【0081】
スイッチ回路SWは、複数の調整ユニットAJ1〜AJ3のうちのいずれか1つの調整ユニットと焦電素子10とを選択的に接続する。具体的には、例えばスイッチ回路SWは、制御部60からの調整信号SAJに基づいて、調整ユニットAJ1の一端を選択して検出ノードNDに電気的に接続する。或いは調整ユニットAJ2の一端を選択して検出ノードNDに電気的に接続し、或いは調整ユニットAJ3の一端を選択して検出ノードNDに電気的に接続する。スイッチ回路SWは、例えばCMOSトランジスター等により構成することができる。
【0082】
調整ユニットAJ1〜AJ3の各ユニットの容量値と抵抗値の積が一定(又は、ほぼ一定)になるように予め設定することで、感度調整回路30の容量値と抵抗値を、両者の積(電気時定数τel)を一定(又は、ほぼ一定)に保持しながら可変に設定することができる。こうすることで、上述したように、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。
【0083】
例えば、容量素子CX1〜CX3の容量値(キャパシタンス値)をCx1〜Cx3とし、抵抗素子RX1〜RX3の抵抗値をRx1〜Rx3とした場合に、Cx1<Cx2<Cx3、Rx1>Rx2>Rx3、且つ、Cx1×Rx1=Cx2×Rx2=Cx3×Rx3となるように予め設定することができる。このようにすれば、調整ユニットAJ1〜AJ3がそれぞれ選択された場合の電圧感度の最大値をRvmax1〜Rvmax3とすると、(9)式から分かるように、Rvmax1>Rvmax2>Rvmax3となる。一方、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域は、調整ユニットAJ1〜AJ3のいずれを選択しても変わらない。
【0084】
このように図6に示す感度調整回路30によれば、スイッチ回路SWが調整信号SAJに基づいて複数の調整ユニットAJ1〜AJ3のいずれか1つを選択的に検出ノードNDに接続することで、電圧感度Rvがほぼ一定になる周波数領域を変えることなく、検出装置の電圧感度Rvを調整することができる。
【0085】
なお、複数の調整ユニットの個数は3個に限定されるものではなく、2個或いは4個以上であってもよい。
【0086】
図7(A)、図7(B)に、本実施形態の検出回路20の第1及び第2の構成例を示す。なお、本実施形態の検出回路20は図7(A)、図7(B)の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0087】
図7(A)に示す第1の構成例は、N型のデプレッション・トランジスターTNと、抵抗Rを含む。N型のデプレッション・トランジスターTNと抵抗Rは、第2の電源ノードVCC(高電位側電源ノード)と第1の電源ノードVSS(低電位側電源ノード)の間に直列に設けられ、ソースフォロワー回路が構成されている。
【0088】
N型トランジスターTNのゲート(検出ノードND)には、焦電素子からの電圧信号ΔVが入力され、N型トランジスターTNのソースは、抵抗Rの一端に接続される。これらのトランジスターTNと抵抗Rによりソースフォロワー回路が構成され、そのゲインはほぼ1になる。そしてN型トランジスターTNのソースに対応する出力ノードNQから、電圧信号ΔVに伴い変化する検出信号VDETが出力される。
【0089】
図7(B)に示す第2の構成例の検出回路は、第2の電源ノードVCCと第1の電源ノードVSSの間に直列に設けられた第1のP型トランジスターTP1と第2のP型トランジスターTP2を含む。これらの第1、第2のP型トランジスターTP1、TP2によりソースフォロワー回路が構成される。即ち焦電素子からの電圧信号ΔVの小信号振幅変化に対して、ゲインがほぼ1となる振幅の電圧が検出信号VDET(出力電圧)として出力される。
【0090】
第1のP型トランジスターTP1(P型MOSトランジスター)は、検出回路の出力ノードNQと第1の電源ノードVSS(低電位側電源ノード)との間に設けられる。例えば図7(B)ではTP1のソースが出力ノードNQに接続され、ドレインが第1の電源ノードVSSに接続され、焦電素子からの電圧信号ΔVがゲートに入力される。
【0091】
第2のP型トランジスターTP2(P型MOSトランジスター)は、第2の電源ノードVCC(高電位側電源ノード)と出力ノードNQとの間に設けられる。例えば図7(B)ではTP2のソースが第2の電源ノードVCCに接続され、ドレインが出力ノードNQに接続され、ゲートが基準電圧VR=Vcc−Vconstに設定される。ここでVccは、高電位側電源VCCの電圧を表し、Vconstは定電圧(固定電圧)である。
【0092】
また、P型トランジスターTP1の基板電位はTP1のソースの電位に設定される。例えば図7(B)ではTP1の基板電位は出力ノードNQに接続される。またP型トランジスターTP2の基板電位はTP2のソースの電位に設定される。例えば図7(B)ではTP2の基板電位は第2の電源ノードVCCに接続される。このようにP型トランジスターTP1、TP2の基板電位をそのソース電位に設定することで、基板バイアス効果によるTP1、TP2のしきい値電圧の変動を防止できるため、TP1とTP2のしきい値電圧を、より近づけることが可能になる。なおP型トランジスターTP1、TP2の基板電位を共にVCCの電位に設定する変形実施も可能である。
【0093】
またP型トランジスターTP1とTP2とは、そのゲート長及びゲート幅の少なくとも一方が同一になっている。さらに望ましくはTP1とTP2は、そのゲート長及びゲート幅の両方が同一になっている。このようにすれば、P型トランジスターTP1、TP2のしきい値電圧等の素子特性を近づけることが可能になり、製造プロセス変動等に起因する検出信号VDETの変動を抑制できる。
【0094】
3.センサーデバイス
図8に本実施形態のセンサーデバイスの第1の構成例を示す。このセンサーデバイスは、焦電素子10、検出回路20、感度調整回路30、制御部60、信号処理回路70、制御モード切換部80、チョッパー90、チョッパー駆動部91、チョッピング制御回路92を含む。
【0095】
焦電素子10、検出回路20、感度調整回路30及び制御部60については、上述した通りであるから、ここでは説明を省略する。
【0096】
信号処理回路70は、検出回路20からの検出信号VDETを受けて、必要な信号処理を行う。具体的には、例えばアナログ信号である検出信号VDETをデジタル信号に変換してデジタルデータDOUTとして出力したり、対象物からの赤外光の強度に応じて検出感度を設定するための設定信号を生成し、出力する。この設定信号は検出信号VDETの信号レベル(電圧レベル)に応じて生成され、制御部60は、この設定信号に基づいて、調整信号SAJを出力する。このようにすることで、検出信号VDETが適正な信号レベルになるように、検出装置の電圧感度Rvを自動的に調整することができる。
【0097】
制御モード切換部80は、電圧感度Rvの調整を自動で行うか、或いは手動で行うかを切り換えることができる。即ち、制御モードが自動モードである場合には、信号処理回路70からの設定信号に基づいて電圧感度Rvが自動的に調整され、一方制御モードが手動モードである場合には、ユーザーが入力した設定信号に基づいて電圧感度Rvが調整される。
【0098】
チョッパー90は、焦電素子10に入射する赤外光を所定の周波数(チョッピング周波数)で周期的に遮断するためのものである。こうすることで、焦電素子10の温度が周期的に変化するから、焦電流が発生し、出力電圧VAが生成される。チョッパー90は、チョッパー駆動部91により駆動される。
【0099】
チョッピング制御回路92は、チョッピング周波数が所定の周波数となるように、チョッパー駆動部91を制御する。
【0100】
図9(A)、図9(B)に、本実施形態のセンサーデバイスの第2の構成例を示す。このセンサーデバイスは、センサーアレイ100と、行選択回路(行ドライバー)110と、読み出し回路120とを含む。またA/D変換部130、カラム走査回路140、制御回路150を含むことができる。このセンサーデバイスを用いることで、例えばナイトビジョン機器などに用いられる赤外線カメラなどを実現できる。
【0101】
センサーアレイ100(焦点面アレイ)には、複数のセンサーセルが配列(配置)される。また複数の行線(ワード線、走査線)と複数の列線(データ線)が設けられる。なお行線及び列線の一方の本数が1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には、図9(A)において行線に沿った方向(横方向)に複数のセンサーセルが配列される。一方、列線が1本である場合には、列線に沿った方向(縦方向)に複数のセンサーセルが配列される。
【0102】
図9(B)に示すように、センサーアレイ100の各センサーセルは、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置(形成)される。例えば図9(B)のセンサーセルは、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に配置されている。他のセンサーセルも同様である。
【0103】
図示していないが、複数のセンサーセルの各センサーセルは、焦電素子10と、感度調整回路30と、検出回路20とを含む。感度調整回路30は、感度調整用の可変容量回路40を含む
行選択回路110は、1又は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。例えば図9(B)のようなQVGA(320×240画素)のセンサーアレイ100(焦点面アレイ)を例にとれば、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択(走査)する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号(ワード選択信号)をセンサーアレイ100に出力する。
【0104】
読み出し回路120は、1又は複数の列線に接続される。そして各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ100を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0105】
A/D変換部130は、読み出し回路120において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部130には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路120により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。なお、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0106】
カラム走査回路140は、各カラム(列)を順次選択(走査)して、各カラムのA/D変換後のデジタルデータを時系列データとして出力するための動作を行う。なお、カラム走査回路140を設けずに、各カラムのデジタルデータを並行して(パラレルに)出力してもよい。
【0107】
制御回路150(タイミング生成回路)は、各種の制御信号を生成して、行選択回路110、読み出し回路120、A/D変換部130、カラム走査回路140に出力する。例えば充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。また、制御回路150は、感度調整のための調整信号SAJを生成し、出力してもよい。
【0108】
以上説明したように、本実施形態のセンサーデバイスによれば、感度調整回路30により合成容量Celを可変に設定することで、センサーデバイスの電圧感度Rvを調整することができる。電圧感度Rvを調整することで、例えば対象物(検出対象)の温度領域(高温、常温、低温など)に適した感度に調整することなどが可能になる。さらにセンサーアレイにおいて、センサーセル間の感度ばらつきを補正することが可能になる。その結果、夜間の物体像や対象物の温度分布等を精度良く安定に検出することなどが可能になる。
【0109】
4.電子機器
図10に本実施形態のセンサーデバイスを含む電子機器の構成例を示す。この電子機器は、例えば赤外線カメラであって、光学系200、センサーデバイス210、画像処理部220、処理部230、記憶部240、操作部250、表示部260を含む。なお本実施形態の電子機器は図10の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
【0110】
光学系200は、例えば1又は複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス210への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0111】
センサーデバイス210は、図9(A)等で説明したものであり、物体像の撮像処理を行う。画像処理部220は、センサーデバイス210からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。
【0112】
処理部230は、電子機器の全体の制御を行ったり、電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部230は、例えばCPU等により実現される。記憶部240は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部230や画像処理部220のワーク領域として機能する。操作部250は、ユーザーが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。表示部260は、例えばセンサーデバイス210により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイや投射型表示装置などにより実現される。
【0113】
なお本実施形態は、FPA(Focal Plane Array:焦点面アレイ)を用いた赤外線カメラや赤外線カメラを用いた電子機器に適用できる。赤外線カメラを適用した電子機器としては、例えば夜間の物体像を撮像するナイトビジョン機器、物体の温度分布を取得するサーモグラフィー機器、人の侵入を検知する侵入検知機器、物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などが想定できる。ナイトビジョン機器を車載機器に適用すれば、車の走行時に夜間の人等の姿を検知して表示することができる。またサーモグラフィー機器に適用すれば、インフルエンザ検疫等に利用することができる。
【0114】
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語(支持部材、接続部等)と共に記載された用語(メンブレン、ポスト部等)は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また検出装置、センサーデバイス及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0115】
10 焦電素子、20 検出回路、30 感度調整回路、40 可変容量回路、
50 可変抵抗回路、60 制御部、70 信号処理回路、80 制御モード切換部、
90 チョッパー、91 チョッパー駆動部、92 チョッピング制御回路、
100 センサーアレイ、110 行選択回路(行ドライバー)、
120 読み出し回路、130 A/D変換部、140 カラム走査回路、
150 制御回路、200 光学系、210 センサーデバイス、220 画像処理部、
230 処理部(CPU)、240 記憶部、250 操作部、260 表示部、
AJ1〜AJ3 調整ユニット、SAJ 調整信号、SW スイッチ回路、
ND 検出ノード、VSS 第1の電源ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦電素子と、
前記焦電素子に接続され、前記焦電素子の出力電圧の電圧感度を調整する感度調整回路と、
前記焦電素子に接続される検出回路とを含み、
前記感度調整回路は、
感度調整用の可変容量回路を含むことを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記感度調整回路は、
前記可変容量回路に並列に接続される可変抵抗回路をさらに含むことを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記可変容量回路の容量値が小さいほど、前記可変抵抗回路の抵抗値が大きな値に設定されることを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記可変容量回路の容量値及び前記可変抵抗回路の抵抗値は、前記容量値と前記抵抗値との積が一定になるように設定されることを特徴とする検出装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかにおいて、
前記感度調整回路は、前記可変容量回路として、
各ユニットが互いに異なる容量値を持つ容量素子を有する複数の調整ユニットと、
前記複数の調整ユニットのうちのいずれか1つの調整ユニットと前記焦電素子とを選択的に接続するスイッチ回路とを含むことを特徴とする検出装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記複数の調整ユニットの前記各ユニットは、前記容量素子に並列に接続される抵抗素子をさらに含むことを特徴とする検出装置。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかにおいて、
感度調整用の調整信号を出力する制御部を含み、
前記調整信号に基づいて、前記可変容量回路の容量値が可変に設定されることを特徴とする検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記調整信号に基づいて、前記可変抵抗回路の抵抗値が可変に設定されることを特徴とする検出装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれかにおいて、
前記電圧感度の最大値をRvmax、前記焦電素子の吸収率をε、焦電係数をp、前記焦電素子の面積をS、前記焦電素子の熱抵抗をRth、前記焦電素子の内部静電容量と前記可変容量回路との合成容量値をCelとした場合に、
前記電圧感度の最大値Rvmaxは、Rvmax=ε×p×S×Rth/Celの近似式で与えられ、
前記可変容量回路の容量値を調整することで、前記合成容量値Celが前記可変容量回路により調整され、
前記合成容量値Celが調整されることで、前記電圧感度の最大値Rvmaxが調整されることを特徴とする検出装置。
【請求項10】
請求項2乃至8のいずれかにおいて、
前記電圧感度の最大値をRvmax、前記焦電素子の吸収率をε、焦電係数をp、前記焦電素子の面積をS、前記焦電素子の熱抵抗をRth、前記焦電素子の内部電気抵抗と前記可変抵抗回路との合成抵抗値をRel、前記焦電素子の内部静電容量と前記可変容量回路との合成容量値及び前記焦電素子の内部電気抵抗と前記可変抵抗回路との前記合成抵抗値の積である電気時定数をτelとした場合に、
前記電圧感度の最大値Rvmaxは、Rvmax=ε×p×S×Rel×Rth/τelの近似式で与えられ、
前記電気時定数τelを一定にして、前記可変抵抗回路の抵抗値を調整することで、前記合成抵抗値Relが前記可変抵抗回路により調整され、
前記合成抵抗値Relが調整されることで、前記電圧感度の最大値Rvmaxが調整されることを特徴とする検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の検出装置を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項12】
複数のセンサーセルを有するセンサーアレイと、
1又は複数の行線と、
1又は複数の列線と、
前記1又は複数の行線に接続される行選択回路と、
前記1又は複数の列線に接続される読み出し回路とを含み、
前記複数のセンサーセルの各センサーセルは、
焦電素子と、
前記焦電素子に接続され、前記焦電素子の出力電圧の電圧感度を調整する感度調整回路と、
前記焦電素子に接続される検出回路とを含み、
前記感度調整回路は、
感度調整用の可変容量回路を含むことを特徴とするセンサーデバイス。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のセンサーデバイスを含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−251776(P2012−251776A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122153(P2011−122153)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】