説明

検査・補修装置

【課題】回路パターンが付された基板の検査ないし補修の工数及びコストの削減を図る。
【解決手段】基板9を配置するためのステージ1と、ステージ1上に配置された基板9を撮像する撮像手段2と、基板9に本来付される回路パターンのデータを記憶するパターン記憶手段8と、撮像手段2で得た画像データをパターン記憶手段8に記憶している回路パターンのデータと比較して基板9の不良部を検出しその位置座標を得る不良検出手段6と、ステージ1上に配置された基板9に対して相対移動可能かつ基板9に付された回路パターンを補修可能な補修手段3と、不良検出手段6で得た位置座標に対応する箇所に補修手段3を移動させて不良部の補修を実行させる制御手段7とを具備する検査・補修装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に付された回路パターンを検査し、不良部を補修する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記文献に、基板、特にプリント配線板に付された回路パターンを検査する検査装置が開示されている。この種の検査装置では、ステージ上に配置した基板をカメラセンサで撮像して得られる画像データを解析処理し、回路に短絡や断線がないか、異物が付着していないか等を判定する。
【非特許文献1】“プリント配線板穴位置・穴径検査装置”、[online]、平成19年12月6日、株式会社金子電器製作所、インターネット<URL http://www.kanekodenki.co.jp/>
【特許文献1】特許第3385002号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現状、検査装置による検査の結果不良が発見された基板は、ベリファイステーションと呼ばれる別の場所に移し、人手によって再検査する。そして、補修可能な程度の不良であれば補修を施す。
【0004】
しかしながら、基板には無数の回路配線がひしめいており、検査装置で不良と判定された部位がどこにあるのかをベリファイステーションで確認するだけでも随分手間がかかる。さらに、検査装置では補修容易な擬似の不良と補修困難な真性の不良とを判別できないので、少なからぬ数の基板がベリファイステーションに流れてきてしまう。故に、検査装置の検査スピードがいくら向上しようとも、全体の工数及びコスト軽減には必ずしもつながらなかった。
【0005】
以上の問題に初めて着目してなされた本発明は、回路パターンが付された基板の検査ないし補修の工数及びコストの削減を図ることを所期の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、基板を配置するためのステージと、前記ステージ上に配置された基板に付された回路パターンを撮像する撮像手段と、基板に本来付されるべき回路パターンのデータを記憶するパターン記憶手段と、前記撮像手段で得た画像データを前記パターン記憶手段に記憶している回路パターンのデータと比較して基板の不良部を検出しその位置座標を得る不良検出手段と、前記ステージ上に配置された基板に対して相対移動可能かつ基板の回路パターンを補修可能な補修手段と、前記不良検出手段で得た位置座標に対応する箇所に前記補修手段を移動させて不良部の補修を実行させる制御手段とを具備する検査・補修装置を構成した。本装置では、検査と補修とを同じステージ上で行うことから、検査工程で検出した不良部の位置座標の情報を補修工程において利用でき、不良部の速やかなる補修が可能である。補修の後、本装置にて再度の検査を実施すれば、補修困難な真性の不良のみを検出することができる。また、これにより、ベリファイステーションに流れる基板の数も減少する。さらには、ベリファイステーションを不要とすることも可能になる。
【0007】
前記補修手段は、例えば基板に向けてレーザを投射するレーザ投射ヘッドを有するものとする。
【0008】
前記補修手段を基板に対して相対移動可能とするには、前記ステージを、基板を所定方向に搬送するものとし、補修手段を、前記ステージによる基板の搬送方向と交差する方向に移動可能とすることが好ましい。
【0009】
回路配線は基板のあらゆる箇所に設けられるため、その検査のためには基板全域の画像データを得る必要がある。前記ステージによる基板の搬送方向と交差する方向に移動可能な駆動機構によって撮像手段及び前記補修手段を支持してあれば、基板全域の画像データの取得が可能となる。加えて、機構を共通化できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路パターンが付された基板の検査ないし補修の工数及びコストの削減を図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態の検査・補修装置の全体概要を示す。本装置は、基板9を配置するステージ(または、テーブル)1と、基板9を撮像する撮像手段2と、基板9に付された回路パターンを補修する補修手段3と、基板に本来付されている回路パターンのデータを記憶するパターン記憶手段8と、回路パターンの不良部を検出する不良検出手段6と、不良検出手段6で検出した不良部の補修を補修手段3に実行させる制御手段7とを具備する。
【0012】
ステージ1は、例えばリニアサーボモータ等の駆動源によりy軸方向(前後方向)に進退するもので、基板9を載置してこれをy軸方向に搬送することができる。
【0013】
撮像手段2は、ステージ1上に配置された基板9の光学像を撮像する例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラセンサ21を要素とする。カメラセンサ21は、ステージ1に対向し、基板9面におけるx軸方向(左右方向)に延びる帯状の領域を撮像する。本実施形態では、複数のカメラセンサ21をx軸方向に配列しており、これらカメラセンサ21によってx軸方向に伸長した広範囲を一時に撮像可能である。ステージ1の移動を通じて基板9をy軸方向に搬送すれば、基板9面を走査することができる。さらに、後述する駆動機構4によりカメラセンサ21をx軸方向に移動させ、x軸方向全域を走査することもできる。
【0014】
補修手段3は、基板9にレーザを照射して基板9に穿孔するレーザ投射ヘッド(または、ノズル)31を有してなる。投射ヘッド31には光ファイバ32を接続しており、レーザ発振機33から供給されるレーザ光をこの光ファイバ32を経由して導入する。但し、レンズ、ミラー等の光学要素を使用してレーザ光を投射ヘッド31に導く光路を構築してもよい。投射ヘッド31は、ステージ1の上方にあって、鉛直下方に向けてレーザを投射する。本実施形態では、ステージ1の直上にx軸方向に延伸する梁5を横架し、例えばリニアサーボモータ等の駆動源によりx軸方向に移動する駆動機構4を梁5に設置した上、この駆動機構4に投射ヘッド31及びカメラセンサ21を支持させている。駆動機構4のx軸方向移動とステージ1のy軸方向移動とを組み合わせることで、投射ヘッド31及びカメラセンサ21を基板9に対する任意の位置に相対移動させることができる。
【0015】
パターン記憶手段8、不良検出手段6及び制御手段7は、一台または複数台の情報処理装置を主体とする。情報処理装置は、図2に示すように、プロセッサa、メインメモリb、補助記憶デバイスc、表示制御デバイスd、ディスプレイe、操作入力デバイスf、通信インタフェースg等のハードウェア資源を備え、これらがコントローラ(システムコントローラ、I/Oコントローラ等)hにより制御されて連携動作するものである。補助記憶デバイスcは、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、光学ディスクドライブ、その他である。表示制御デバイスdは、プロセッサaより受けた描画指令を基に表示させるべき画像データを生成してディスプレイeに向けて送出するグラフィクスプロセッサ、画像データ等を一時記憶しておくビデオメモリ等を要素とする。操作入力デバイスfは、手指で操作可能なボタン、キーボードや、マウス、トラックパッド、タッチパネル(ディスプレイeに重なっていることがある)等のポインティングデバイスである。通信インタフェースgは、データ及び制御信号の送受信を行うためのデバイスであり、NIC(Network Interface Card)や無線トランシーバ、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394等に代表される。プロセッサaで実行されるべきプログラムは補助記憶デバイスcに記憶されており、プログラムの実行の際に補助記憶デバイスcからメインメモリbに読み込まれ、プロセッサaで解読される。しかして、プログラムに従いハードウェア資源を作動して、パターン記憶手段8、不良検出手段6及び制御手段7としての機能を発揮する。
【0016】
パターン記憶手段8は、基板9の回路パターンのデータ、例えばCADデータ等を記憶する。パターン記憶手段8は、メインメモリbまたは補助記憶デバイスcの記憶領域を利用する。
【0017】
不良検出手段6は、カメラセンサ21で撮像した画像データを通信インタフェースgを介して取得、メインメモリbまたは補助記憶デバイスcに記憶し、その画像データを解析して不良部を検出する。不良の例を、図3に示す。図3中、符号81は銅箔、符号82は基材である。不良の種類には、回路配線の短絡83(短絡のおそれのある配線の肥大化84を含む)、断線85(断線のおそれのある配線の欠損86を含む)、樹脂や接着剤、塵等の異物の付着87がある。情報処理装置は、撮像した画像データと、記憶している回路パターンのデータとを比較、照合して、整合しない部分を不良として検出するとともに、画像データの画素値等から不良の種類を判定する。しかる後、不良と判定した部位の位置座標(x,y)及び不良の種類を、補修すべき回路配線の位置座標としてメインメモリbまたは補助記憶デバイスcに記憶する。
【0018】
制御手段7は、補修すべき不良部に対応した箇所にレーザ投射ヘッド31を移動させ、その不良部の補修を実行させる。具体的には、不良検出手段6で得た位置座標(x,y)に応じた制御信号を通信インタフェースgを介してステージ1、駆動機構4の各々のサーボに入力し、投射ヘッド31を基板9に対して相対移動させる。並びに、不良検出手段6で得た不良の種類に応じて、補修に必要な出力及び周波数のレーザ光を出力させるための制御信号を通信インタフェースgを介してレーザ発振機33に入力する。そして、投射ヘッド31に付帯するシャッタを開閉するための制御信号を通信インタフェースgを介して投射ヘッド31に入力する。これにより、投射ヘッド31から出射したレーザが基板9の不良部位に照射されて不良の補修ないしクリーニングがなされる。
【0019】
本実施形態によれば、基板9を配置するためのステージ1と、前記ステージ1上に配置された基板9に付された回路パターンを撮像する撮像手段2と、基板9に本来付されるべき回路パターンのデータを記憶するパターン記憶手段8と、前記撮像手段2で得た画像データを前記パターン記憶手段8に記憶している回路パターンのデータと比較して不良部を検出しその位置座標を得る不良検出手段6と、前記ステージ1上に配置された基板9に対して相対移動可能かつ基板9に付された回路パターンを補修可能な補修手段3と、前記不良検出手段6で得た位置座標に対応する箇所に前記補修手段3を移動させて不良部の補修を実行させる制御手段7とを具備する検査・補修装置を構成したため、検査と補修とを同じステージ1上で行うこととなり、検査工程で検出した不良部の位置座標の情報を補修工程において利用でき、不良部の速やかなる補修が可能となる。補修の後、本装置にて再度の検査を実施すれば、補修困難な真性の不良のみを検出することができ、ベリファイステーションに流れる基板9の数も減少する。さらには、ベリファイステーションを不要とすることも可能になる。
【0020】
前記補修手段3は、基板9に向けてレーザを投射するレーザ投射ヘッド31を有しており、レーザ光で配線の短絡83または異物87を蒸発させて除いたり、銅を溶かして配線の断線85や欠損86を埋め繋いだりすることができる。
【0021】
前記ステージ1を、基板9をy軸方向に搬送するものとし、補修手段3を、前記ステージ1による基板9の搬送方向と交差するx軸方向に移動可能としているため、補修手段3を基板9に対する任意の位置に移動させることができる。ひいては、基板9におけるあらゆる箇所の不良を補修可能となる。
【0022】
前記ステージ1による基板9の搬送方向と交差する方向に移動可能な駆動機構4によって撮像手段2及び前記補修手段3を支持しているため、機構を共通化できる上、基板9全域の画像データの取得が可能となる。
【0023】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、補修手段は、基板にレーザ加工を施すレーザ投射ヘッドには限定されない。補修手段として、銅箔または基材を切削する機構や、はんだ付けを行う機構等を実装してもよい。
【0024】
補修手段を基板に対して相対移動可能とする機構もまた、上記実施形態の態様には限定されない。ステージを不動とし補修手段をx軸、y軸二方向に移動可能としてもよく、あるいは、補修手段を不動としステージをx軸、y軸二方向に移動可能としてもよい。ステージそれ自体を不動とする替わりに、ステージ上を走行する台車等の搬送機構によって基板を搬送するようにしても構わない。撮像手段を基板に対して相対移動可能とする機構に関しても同様である。
【0025】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の検査・補修装置を示す斜視図。
【図2】同実施形態の検査・補修装置におけるパターン記憶手段、不良検出手段及び制御手段のハードウェア資源構成図。
【図3】回路配線の不良を例示する平面図及び側端面図。
【符号の説明】
【0027】
1…ステージ
2…撮像手段
3…補修手段
4…駆動機構
6…不良検出手段
7…制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を配置するためのステージと、
前記ステージ上に配置された基板に付された回路パターンを撮像する撮像手段と、
基板に本来付されるべき回路パターンのデータを記憶するパターン記憶手段と、
前記撮像手段で得た画像データを前記パターン記憶手段に記憶している回路パターンのデータと比較して基板の不良部を検出しその位置座標を得る不良検出手段と、
前記ステージ上に配置された基板に対して相対移動可能かつ基板の回路パターンを補修可能な補修手段と、
前記不良検出手段で得た位置座標に対応する箇所に前記補修手段を移動させて不良部の補修を実行させる制御手段と
を具備する検査・補修装置。
【請求項2】
前記補修手段が、基板に向けてレーザを投射するレーザ投射ヘッドを有している請求項1記載の検査・補修装置。
【請求項3】
前記ステージが、基板を所定方向に搬送するものであって、
前記補修手段が、前記ステージによる基板の搬送方向と交差する方向に移動可能となっている請求項1または2記載の検査・補修装置。
【請求項4】
前記ステージによる基板の搬送方向と交差する方向に移動可能な駆動機構によって前記撮像手段及び前記補修手段を支持している請求項3記載の検査・補修装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−34229(P2010−34229A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193872(P2008−193872)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(507211107)株式会社金子電器製作所 (2)
【Fターム(参考)】