説明

検査用プローブ、プローブユニット及び検査用治具

【課題】被検査体の電極への影響を抑えつつ電極の微細ピッチ化及び電極の配列の狭ピッチ化に対応して効率的に被検査体の検査を行うことができる低コストの検査用プローブ、プローブユニット及び検査用治具を提供する。
【解決手段】絶縁性の基板12と、基板12の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子13と、基板12に形成されて接触子13と導通する配線パターン14とを備え、被検査体21の検査を行う際に接触子13の先端からなる接点15が被検査体21の電極22に接触される検査用プローブ11であって、接触子13及び配線パターン14が、微小電気機械システム技術によって基板12に形成されたものであり、接触子13の先端側が基板12の表面に対して所定角度で屈曲されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどを検査する際に用いられる検査用プローブ、プローブユニット及び検査用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの通電試験を行う検査用プローブは、検査対象である被検査体に設けられた電極に押し当てて導通させる接触子を有している。
近年、電子機器に搭載される被検査体である電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの微細化及び高集積化が積極的に行われている。これに伴い、これらの被検査体の電極も微細ピッチ化及び微細領域化されている。そのため、検査用プローブの接触子も、微細ピッチ化及び微細領域化された被検査体の電極に対応したものが要求されている。
【0003】
このような検査用プローブとして、予め先端部が曲げ加工された金属板の基端側に、エッチング加工をしてハウジング固定部を作製し、このハウジング固定部の上にハウジングを形成し、金属板の先端側をエッチング加工して、1枚の金属板からその幅方向に複数分断されたプローブ針を得たものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、プローブの基板にポリイミド基板を用いて積層したり、絶縁基板にポリイミド基板を貼り付けて積層して製造されたプローブカードも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−213929号公報
【特許文献2】特開平6−308155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に示されたエッチング法では、80μm程度のピッチの電極を有する被検査体には対応できるものの、近年主流となっている30μm以下の微細ピッチの電極を有する被検査体に対応することは困難である。
また、特許文献2に記載の技術では、基板の積層や貼り付けなどの製造工程中における熱履歴や弾性変形により、接触子を所望の位置に精度良く配置させることが困難である。このため、接触子の位置ずれなどが生じるおそれがあり、やはり微細ピッチの電極を有する被検査体に対応することは困難である。
【0006】
また、図23に示すように、並列させた複数の被検査体1を複数の検査用プローブによって同時に一括検査する場合や複数の電極2の配列が狭ピッチで配置された被検査体1を検査する場合などでは、図24に示すように、互いの検査用プローブ3が干渉することなく、被検査体1の電極2に対して検査用プローブ3の接触子4を接触させるために、検査用プローブ3を構成する複数の基板5の配置角度を変える必要がある。
しかし、このような配置とすると、基板5の厚さ等の構造上の制限により、被検査体1の電極2に対する接触子4の接触角が大きく(例えば最大で約31°)なる。すると、接触子4の角部によって被検査体1の電極2に接触痕が残ってしまう。
【0007】
接触子4の角部による電極2への接触痕の発生を極力抑えるためには、接触角を小さく(約10°〜25°)抑える必要があり、このため、各基板4の配置密度を小さくせざるを得なくなる。すると、基板4の配置枚数が少なくなり、一括検査が可能な被検査体1の個数も少なくなり、検査効率の低下によりコストが嵩んでしまう。
【0008】
また、カンチレバー方式の検査用プローブでは、基板へ接触子を直接実装しているが、基本的に手作業で接触子の位置を調整するため、上記のような狭ピッチの電極を有する被検査体に対応することが困難であった。垂直型プローブは、プローブ針を穴のあいたセラミック基板に配置する構造である。このため、配置ピッチが100μm以下になると、セラミック板への穴あけが困難になるため、狭ピッチには適していない。
【0009】
本発明の目的は、被検査体の電極への影響を抑えつつ電極の微細ピッチ化及び電極の配列の狭ピッチ化に対応して効率的に被検査体の検査を行うことができる低コストの検査用プローブ、プローブユニット及び検査用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明の検査用プローブは、絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲されていることを特徴とする。
【0011】
本発明のプローブユニットは、上記の検査用プローブが、前記接触子の屈曲方向が前記被検査体に向けられ、かつ前記接点の配列が前記接点の配列方向と直交する方向へそれぞれずらされた状態で複数段に積層されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のプローブユニットにおいて、それぞれの前記検査用プローブの基板の厚さが異なることが好ましい。
【0013】
本発明のプローブユニットにおいて、それぞれの前記検査用プローブの基板の厚さが前記接触子の延在方向に沿って次第に変化されていることが好ましい。
【0014】
本発明のプローブユニットにおいて、前記検査用プローブの基板同士の間にスペーサが設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明のプローブユニットにおいて、前記スペーサの厚さが前記接触子の延在方向に沿って次第に変化されていることが好ましい。
【0016】
本発明のプローブユニットにおいて、前記スペーサは、接着剤を硬化させたものであることが好ましい。
【0017】
本発明の検査用治具は、上記の何れかのプローブユニットを支持するプローブブロックと、前記被検査体が着脱される被検査体ブロックとを備え、
前記被検査体ブロックに前記被検査体を装着した状態で前記プローブブロックと前記被検査体ブロックとが近接されることにより、前記プローブユニットの前記検査用プローブの前記接触子が前記被検査体の前記電極に接触されることを特徴とする。
【0018】
本発明の検査用治具において、前記被検査体ブロックに装着された前記被検査体に対して前記プローブユニットの前記検査用プローブが、垂直または水平に配置されていることが好ましい。
【0019】
本発明の検査用治具において、前記プローブブロックに嵌合部が形成され、前記検査用プローブが前記嵌合部に嵌合されて装着されていることが好ましい。
【0020】
本発明の検査用治具において、前記プローブブロックは、前記接触子の角度を異ならせて前記検査用プローブをそれぞれ支持する複数の固定ブロックを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の検査用プローブによれば、配線パターン及び接触子を微小電気機械システム技術によって基板に形成したものであるので、被検査体の電極の微細ピッチ化及び電極の配列の狭ピッチ化に対応して効率的に被検査体の検査を行うことができる。しかも、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストを削減することができる。
【0022】
また、接触子を屈曲させたので、被検査体の電極へ接点が接触した際に接触子が良好に弾性変形することとなる。これにより、被検査体の電極に対して接触子を安定した接触性を確保しつつ接触させることができる。したがって、真っ直ぐに接触子を延ばした検査用プローブを被検査体に対して大きな角度をつけて配置して接点を電極に接触させる場合と比較して、電極に接触痕を残すような不具合をなくし、電極の損傷を極力防ぐことができる。したがって、検査工程後における被検査体の歩留まりを向上させることができ、被検査体の製造コストを削減することができる。
【0023】
本発明のプローブユニット及び検査用治具によれば、接触子の先端近傍が被検査体側へ向かって屈曲された検査用プローブを用いているので、基板を大きく傾けることなく被検査体の電極の配列に対応した位置に接点を配列させることができる。また、電極を損傷させることなく、被検査体を円滑に検査することができる。
特に、電極が被検査体の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状の場合であっても、基板を大きく傾けることなく被検査体の電極の配列に対応した位置に接点を配列させることができ、電極を損傷させることなく、被検査体を円滑に検査することができる。
【0024】
しかも、基板の厚さによらず、接点の配列のピッチを調整することができ、電極の配列のピッチが極めて狭いピッチ(例えば、80μm以下)であっても、この電極の配列に対応させて接点を配列させることができる。
また、各検査用プローブを積層させる際の基板の面方向への位置を調整することにより、極めて容易に、各検査用プローブの接触子の接点の配列と被検査体の電極の配列とを位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す表面側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す裏面側から見た斜視図である。
【図3】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す表面側から見た拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す裏面側から見た拡大斜視図である。
【図5】検査用プローブの製造工程の一例を示す図であって、(a)から(i)は、それぞれ製造途中の検査用プローブの断面図である。
【図6】本発明に係るプローブユニット及び検査用治具の一実施形態を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図7】変形例1に係るプローブユニット及び検査用治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図8】変形例2に係るプローブユニット及び検査用治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図9】変形例3に係るプローブユニット及び検査用治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図10】変形例4に係るプローブユニット及び検査用治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図11】変形例5に係るプローブユニット及び検査用治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は拡大側面図である。
【図12】変形例6に係るプローブユニット及び検査用治具を示す正面図である。
【図13】変形例6に係るプローブユニット及び検査用治具を示す側面図である。
【図14】変形例6に係るプローブユニットの斜視図である。
【図15】変形例6に係るプローブユニットの平面図である。
【図16】変形例6に係るプローブユニットの側面図である。
【図17】変形例7に係るプローブユニット及び検査用治具を示す斜視図である。
【図18】変形例7に係るプローブユニット及び検査用治具の一部の側面図である。
【図19】変形例7に係るプローブユニット及び検査用治具における一部の検査用プローブを取り外した状態の斜視図である。
【図20】変形例8に係るプローブユニット及び検査用治具を示す斜視図である。
【図21】変形例8に係るプローブユニット及び検査用治具を示す一部の斜視図である。
【図22】変形例8に係るプローブユニット及び検査用治具を示す断面図である。
【図23】並列に配置された複数の被検査体の一例を示す平面図である。
【図24】複数の被検査体の検査を行う例を示す接触子部分と被検査体の電極との接触箇所の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る検査用プローブ、プローブユニット及び検査用治具の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
まず、本発明に係る検査用プローブについて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る検査用プローブ11は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなど被検査体の通電試験を行うプローブである。被検査体となる表示デバイスとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)や有機ELディスプレイなどがある。
【0027】
この検査用プローブ11は、絶縁性材料からなる基板12と、この基板12の縁部から外に延在して並列に配置された複数の接触子13を有している。この接触子13は、導電性材料からなり、その基端側が基板12上に配置されている。また、基板12には、接触子13と繋がって導通する配線パターン14が形成されている。
【0028】
上記構造の検査用プローブ11は、ウエハなどの薄膜基材からなる基板12上にフォトリソグラフィー等の微小電気機械システム技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて配線パターン14と微細な接点15となる接触子13とを一括形成したものである。
【0029】
図3及び図4に示すように、検査用プローブ11は、接触子13の先端近傍部分が基板12側へ屈曲されている。これにより、接触子13は、屈曲部16を境に、基板12に沿って延在する基端側部13aと、屈曲部16から所定角度に傾斜されて延在する先端側部13bとを有している。
【0030】
この接触子13の先端近傍部分を屈曲させるには、例えば、プレス加工などの機械的な曲げ加工を施すことが好ましく、このような機械的な曲げ加工によれば、低コストで様々な角度に接触子13を屈曲させることができる。
【0031】
図3に示すように、この検査用プローブ11で被検査体21を検査する場合、被検査体21の電極22に接触子13の接点15を接触させて押し付ける。すると、被検査体21の電極22に接点15が接触された接触子13が弾性変形し、この接触子13の弾性力によって接点15が被検査体21の電極22に押圧される。これにより、電極22に対して接触子13の接点15が押し付けられ、電極22と接触子13とが良好に導通接触される。
【0032】
検査用プローブ11の接触子13は、被検査体21との位置関係に応じて適正な角度で屈曲される。つまり、上記の検査用プローブ11によれば、接触子13を屈曲させることにより、被検査体21との位置関係や被検査体21の電極22の配列のピッチ(電極並列方向(図3左右方向)のピッチだけでなく、電極並列方向と直交する方向の電極配列ピッチも含む)に応じて、被検査体21に対して様々な角度で接点15を接触させて良好な導通状態を得ることができる。
【0033】
そして、上記実施形態に係る検査用プローブによれば、配線パターン14及び接触子13をMEMS技術によって基板12に形成したものであるので、被検査体12の電極22の微細ピッチ化及び電極22の配列の狭ピッチ化に対応して効率的に被検査体21の検査を行うことができる。しかも、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストを削減することができる。
【0034】
また、接触子13を屈曲させたことで、被検査体21の電極22へ接点15が接触した際に接触子13が良好に弾性変形することとなる。これにより、被検査体21の電極22に対して接触子13を安定した接触性を確保しつつ接触させることができる。したがって、真っ直ぐに接触子を延ばした検査用プローブを被検査体21に対して大きな角度をつけて配置して接点を電極22に接触させる場合と比較し、電極22に接触痕を残すような不具合をなくし、電極22の損傷を極力防ぐことができる。したがって、検査工程後における被検査体21の歩留まりを向上させることができ、被検査体21の製造コストを削減することができる。
【0035】
なお、検査用プローブ11のそれぞれの接触子13における屈曲角度及び屈曲位置は、被検査体21の電極22の配置等に応じて設定される。したがって、検査用プローブ11では、相互に異なる屈曲角度及び異なる屈曲位置で屈曲された接触子13を有する場合もある。
また、上記実施形態では、全ての接触子13が被検査体21側へ曲げられているが、全ての接触子13のうち、検査に使用しない接触子13は、被検査体21と反対側へ曲げてもよい。これにより、検査に使用しない接触子13の被検査体21への誤接触や、隣接する接触子13への誤接触を防ぐことができる。
【0036】
次に、上記の検査用プローブ11を製造する場合について説明する。
検査用プローブ11を製造するには、まず、図5(a)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、0.1ミクロン〜5.0ミクロン)になるように基板12上にフォトレジスト43を塗布する。その後、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。ポストベークが必要な場合は、適正な条件で実施する。
【0037】
図5(b)に示すように、基板12上に金属膜からなる犠牲層44を所望の材質と厚さで形成する。例えば、TiとCuからなる犠牲層44を、Ti/Cu=(100Å〜500Å)/(100Å〜5000Å)でスパッタリング法により加工する。
次に、図5(c)に示すように、不要なフォトレジスト43と犠牲層44を、例えば、リフトオフ法によって除去する。
【0038】
図5(d)に示すように、基板12上に、メッキ給電層となる所望の材料のシード層45を所望の厚さが得られるように形成する。例えば、TiとNi合金からなるシード層45を、Ti/Ni合金=(100Å〜2000Å)/(500Å〜5000Å)でスパッタリング法により形成する。
【0039】
印刷法、スピンコーティング法等によって、接触子13及び配線パターン14を形成するためのフォトレジスト46を所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜50ミクロン)になるように塗布し、その後、溶媒分除去のためプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。フォトレジスト46として化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0040】
図5(e)に示すように、メッキ処理を施すことにより配線層48を形成する。配線層48は、例えば、Ni合金(NiCo,NiMn,NiFe,NiPd等)から形成し、所望のばね性能が確保できる厚さに形成する。
配線層48の形成後、図5(f)に示すように、フォトレジスト46の除去及びシード層45の除去を行う。
ここで、基板12が最終の所望厚より厚い寸法である場合、基板12の裏面に研削加工や研磨加工を施し、基板12の厚さを所望の厚さまで薄化加工する。
【0041】
次に、図5(g)に示すように、ダイシング加工によって個片外形カットを行って個々の検査用プローブ11とし、基板12の裏面に溝47を形成する。このとき、基板12を加熱発泡タイプの接着シートでガラス基板に貼り付ける。ガラス基板から剥離するときは、接着シートを加熱発泡させて個片化させたチップをテープから取り出す。
【0042】
その後、図5(h)に示すように、選択エッチングによって犠牲層44を除去する。この選択エッチングでは、例えば、銅(Cu)除去用液に一定時間浸漬して銅(Cu)成分を除去した後、チタニウム(Ti)除去のためアンモニウム過水に浸漬してチタニウム(Ti)成分を除去する。
その後、図5(i)に示すように、基板12を溝47の箇所で切断し、犠牲層44を除去した部分における基板12を除去する。
最後に、接触子13の先端近傍部分にプレス加工などの機械的な曲げ加工を施すことにより、接触子13を基板12側へ屈曲させる。
【0043】
上記のように、MEMS技術を用いた製造プロセスを行うことにより、接触子13が形成された検査用プローブ11を短いリードタイムで製造することができ、検査用プローブ11の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0044】
(プローブユニット及び検査用治具)
次に、本発明に係るプローブユニット及びそれを備えた検査用治具について説明する。
図6(a),(b)に示すように、本実施形態に係る検査用治具51は、プローブブロック52と、被検査体ブロック53とを備えており、プローブブロック52は、ベース基板55に固定されている。被検査体ブロック53は、プローブブロック52に対して接離されるようになっており、被検査体21を検査する際に、被検査体ブロック53がプローブブロック52に近接される。
【0045】
プローブブロック52は、固定ブロック61と、この固定ブロック61を支持する支持ブロック62とから構成されている。プローブブロック52には、その固定ブロック61に、それぞれプローブユニット71が固定されている。
【0046】
プローブユニット71は、複数の前述した検査用プローブ11を、それぞれの接触子13が同一方向へ向くように、例えば、互いに接着することにより複数段に積層させたものである。プローブユニット71は、それぞれの検査用プローブ11の接触子13が内側に配置されて固定ブロック61に固定されている。なお、固定ブロック61へのプローブユニット71の固定の仕方としては、接着固定、ネジ止め固定あるいはクランプなどが好ましい。
【0047】
固定ブロック61は、被検査体ブロック53側に、外側へ向かって次第に被検査体ブロック53から離間する方向へ傾斜したテーパ面56を有しており、このテーパ面56に、プローブユニット71が固定されている。これにより、プローブユニット71は、接触子13側が被検査体ブロック53側へ向かって傾斜されている。
【0048】
プローブユニット71は、それぞれの検査用プローブ11の接触子13の屈曲方向が、被検査体ブロック53に保持された被検査体21に向けられている。また、プローブユニット71は、基板12の厚さが異なる検査用プローブ11を積層して構成されている。
【0049】
そして、プローブユニット71では、被検査体21側へ向けられた各検査用プローブ11の接点15の配列が、それぞれ接点15の配列方向と直交する方向へ互いにずらされている。そして、プローブユニット71は、各検査用プローブ11の接点15の配列が、被検査体21の電極22の配列に対応した位置とされている。
なお、検査用プローブ11の各接触子13の被検査体21に対する傾き角度は、電極22の損傷を防ぎつつ良好な導通が得られるように設定される。
【0050】
プローブユニット71を構成する検査用プローブ11は、接触子13の延出側と反対側に、フレキシブルプリント配線板(FPC)75が接続されており、このフレキシブルプリント配線板75からなる配線が、検査用プローブ11の配線パターン14と導通接続されている。このフレキシブルプリント配線板75の検査用プローブ11と反対側は、ベース基板55に接続されており、これにより、検査用プローブ11からの信号を、ベース基板55を介して外部へ取り出すことが可能とされている。なお、フレキシブルプリント配線板75を用いずに、検査用プローブ11の配線パターン14を延出させて曲げ加工を施し、はんだ付けによりベース基板55に接続するようにしてもよい。
【0051】
上記の検査用プローブ11から構成されたプローブユニット71を備える検査用治具51では、プローブブロック52に対して被検査体ブロック53が近接されると、被検査体ブロック53に保持された被検査体21の電極22に対してプローブブロック52に設けられたプローブユニット71の各検査用プローブ11の接触子13の先端からなる接点15が所定のストローク(10μm〜100μm程度)で押し付けられる。これにより、接触子13は、被検査体21の電極22に押し付けられることにより弾性変形し、この接触子13の弾性力によって接点15が被検査体21の電極22に押圧され、電極22と接触子13とが良好に導通接触される。そして、上記のようにプローブブロック52と被検査体ブロック53とを近接させて検査用プローブ11の接触子13の接点15を被検査体21の電極22に接触させた状態で、被検査体21の検査を良好に行うことができる。
【0052】
このように、上記実施形態に係るプローブユニット及びそれを備える検査用治具によれば、被検査体21の電極22に接触される導電性を有する複数の接触子13がMEMS技術によって基板12に形成された検査用プローブ11を備えるので、被検査体21が微細化及び高集積化された電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどであっても良好に対応して確実に検査することができる。また、MEMS技術で作製された耐久性の高い検査用プローブ11を用いることで、繰り返し使用しても不具合の発生を抑えることができ、長寿命化を図ることができる。
【0053】
ところで、接触子13が屈曲されていない検査用プローブ11を複数用いて、並列させた複数の被検査体21(図23参照)を同時に一括検査する場合や複数の電極22の配列が狭ピッチで左右や前後に配置された被検査体21を検査する場合などでは、互いの検査用プローブ11が干渉しないように、被検査体21の電極22に対して接触子13の接点15を接触させるために、プローブユニット71を構成する検査用プローブ11の配置角度を大きくする必要がある(図24参照)。
【0054】
すると、被検査体21の電極22に対する接触子13の接触角も大きく(例えば約31°)なる。特に、電極22が被検査体21の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状の場合、基板12をより大きく傾ける必要が生じる。また、電極22に接触した際の接触子13の弾性変形量も小さくなり、被検査体21との距離合わせのためのストローク管理も難しくなってしまう。これにより、接点15が電極22に対して必要以上の力で押し付けられ、電極22に接触痕が形成されて損傷してしまうおそれがある。
【0055】
また、基板12自体の厚さのため、接点15の前後の配列のピッチに制限が生じる。したがって、電極22の配列のピッチが極めて狭いピッチ(例えば、80μm以下)である場合では、電極22の配列に対応させて接点15を配列させることができない場合もある。
【0056】
これに対して、本実施形態に係るプローブユニット及びそれを備えた検査用治具では、接触子13の先端近傍が被検査体21側へ向かって屈曲された検査用プローブ11を用いているので、基板12を大きく傾けることなく被検査体21の電極22の前後の配列に対応した位置に接点15を配列させることができ、電極22を損傷させることなく、被検査体21を円滑に検査することができる。
【0057】
特に、電極22が被検査体21の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状の場合であっても、基板12を大きく傾けることなく被検査体21の電極22の配列に対応した位置に接点15を配列させることができ、電極22を損傷させることなく、被検査体21を円滑に検査することができる。
【0058】
しかも、基板12の厚さによらず、接点15の配列のピッチを調整することができ、電極22の前後の配列のピッチが極めて狭いピッチ(例えば、80μm以下)であっても、この電極22の配列に対応させて接点15を前後に配列させることができる。
【0059】
また、各検査用プローブ11を積層させる際の基板12の面方向への位置を調整することにより、極めて容易に、各検査用プローブ11の接触子13の接点15の配列と被検査体21の電極22の配列とを位置合わせすることができる。
【0060】
次に、本発明に係るプローブユニット及びそれを備えた検査用治具の他の形態例(変形例)について説明する。
(変形例1)
図7(a),(b)に示すように、変形例1では、プローブユニット71を構成するそれぞれの検査用プローブ11の基板12の厚さが接触子13の延在方向に沿って次第に変化されている。具体的には、基板12の後端側から接触子13を有する先端側へ向かって次第に厚さが薄くされている。
【0061】
この変形例1によれば、被検査体21に対する各検査用プローブ31の配置角度を容易に調整することができる。
また、基板12の厚さを後端側から先端側へ向かって次第に薄くすれば、各検査用プローブ11の接触子13の接点15の配列の間隔をさらに狭めることができ、被検査体21の電極22の配列のさらなる狭ピッチ化に対応することができる。
【0062】
(変形例2)
図8(a),(b)に示すように、変形例2では、プローブユニット71を構成するそれぞれの検査用プローブ11の基板12同士の間にスペーサ81が設けられている。このスペーサ81は、例えば、セラミックス等の絶縁性を有する硬質材料から形成されている。
【0063】
この変形例2によれば、検査用プローブ11間に設けるスペーサ81の厚さを調整することにより、被検査体21の電極22の配列に対する各検査用プローブ11の接点15の配列を容易に調整することができる。
【0064】
(変形例3)
図9(a),(b)に示すように、変形例3においても、プローブユニット71を構成するそれぞれの検査用プローブ11の基板12同士の間にスペーサ82が設けられている。このスペーサ82も、例えば、セラミックス等の絶縁性を有する硬質材料から形成されている。また、スペーサ82は、その厚さが接触子13の延在方向に沿って次第に変化されている。具体的には、検査用プローブ11の後端側から接触子13を有する先端側へ向かって次第に厚さが薄くされている。
【0065】
この変形例3によれば、基板12の厚さを変更することなく、被検査体21に対する各検査用プローブ31の配置角度をスペーサ82によって容易に調整することができる。
また、スペーサ82の厚さを検査用プローブ11の後端側から先端側へ向かって次第に薄くすれば、各検査用プローブ11の接触子13の接点15の配列の間隔をさらに狭めることができ、被検査体21の電極22の配列のさらなる狭ピッチ化に対応することができる。
【0066】
(変形例4)
図10(a),(b)に示すように、変形例4では、プローブユニット71を構成するそれぞれの検査用プローブ11の基板12同士の間に、硬化した接着剤からなるスペーサ83が設けられている。
このスペーサ83も、その厚さが接触子13の延在方向に沿って次第に変化されている。具体的には、検査用プローブ11の後端側から接触子13を有する先端側へ向かって次第に厚さが薄くされている。
【0067】
この変形例4によれば、基板12の厚さを変更することなく、被検査体21に対する各検査用プローブ31の配置角度をスペーサ83によって容易に調整することができる。
また、スペーサ83の厚さを検査用プローブ11の後端側から先端側へ向かって次第に薄くすれば、各検査用プローブ11の接触子13の接点15の配列の間隔をさらに狭めることができ、被検査体21の電極22の配列のさらなる狭ピッチ化に対応することができる。
【0068】
しかも、スペーサ83が接着剤を硬化させたものであるので、被検査体21の電極22の配列に応じて容易に厚さを調整することができ、よって、被検査体21の電極22の配列に対する各検査用プローブ11の接点15の配列を容易に調整することができる。
なお、スペーサ83は、検査用プローブ11の接触子13の延在方向に沿って厚さを変化させなくても良く、この場合であっても、スペーサ83の厚さを調整することにより、被検査体21の電極22の配列に対する各検査用プローブ11の接点15の配列を容易に調整することができる。
【0069】
(変形例5)
図11(a),(b)に示すように、変形例5では、被検査体ブロック53に装着された被検査体21に対してプローブユニット71の検査用プローブ31が、水平に配置されている。
【0070】
この変形例5では、プローブユニット71を構成する各検査用プローブ11を積層させる際の基板12の面方向への位置を調整することにより、極めて容易に、各検査用プローブ11の接触子13の接点15の配列と被検査体21の電極22の配列とを位置合わせすることができる。
【0071】
(変形例6)
図12及び図13に示すように、変形例6では、被検査体ブロック53に装着された被検査体21に対してプローブユニット71の検査用プローブ11が、垂直に配置されており、プローブユニット71に対して被検査体21が垂直方向から近接される。
【0072】
この変形例6に係るプローブユニット71は、図14から図16に示すように、スペーサ84を介して検査用プローブ11を積層させた構造を有しており、それぞれの検査用プローブ11の屈曲された接触子13の接点15が同一面内に配置されている。
【0073】
この変形例6では、被検査体21に対して垂直方向から近接して検査を行うことができるので、電極22が被検査体21の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状であっても、接触子13の接点15を電極22へ接触させて容易に検査することができる。
【0074】
(変形例7)
図17及び図18に示すように、変形例7では、プローブブロック52の周囲の四面に検査用プローブ11が装着されている。図19に示すように、検査用プローブ11が装着されているプローブブロック52の四面は、嵌合溝91が形成された嵌合部92を有しており、嵌合溝91へ各検査用プローブ11の基板12を係合させることにより、各検査用プローブ11がプローブブロック52に装着されている。
【0075】
この変形例7では、各検査用プローブ11の基板12をプローブブロック52の係合溝91へ係合させることにより、極めて容易に、各検査用プローブ11をプローブブロック52の所定位置に装着することができる。これにより、検査用治具51の組み立ての作業性を向上させることができる。なお、各検査用プローブ11は、プローブブロック52の嵌合部92に装着した状態で接着テープ93等により固定するのが好ましい。
【0076】
(変形例8)
図20及び図21に示すように、変形例7では、プローブブロック52を構成する固定ブロック61が複数設けられている。図22に示すように、これらの固定ブロック61には、被検査体ブロック53側のテーパ面56に、それぞれ一つずつ検査用プローブ11が固定されている。
【0077】
この変形例8によれば、固定ブロック61のテーパ面56の傾斜角度を調整することにより、被検査体21に対する各検査用プローブ31の配置角度を容易に調整することができ、また、被検査体21の電極22の配列の狭ピッチ化に対応することができる。
【0078】
しかも、被検査体21の電極22の配列に応じて固定ブロック61の位置を調整し、被検査体21の電極22の配列に対する各検査用プローブ11の接点15の配列を容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0079】
11:検査用プローブ、12:基板、13:接触子、14:配線パターン、15:接点、21:被検査体、22:電極、51:検査用治具、52:プローブブロック、53:被検査体ブロック、61:固定ブロック、71:プローブユニット、81,82,83,84:スペーサ、92:嵌合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲されていることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の検査用プローブが、前記接触子の屈曲方向が前記被検査体に向けられ、かつ前記接点の配列が前記接点の配列方向と直交する方向へそれぞれずらされた状態で複数段に積層されていることを特徴とするプローブユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のプローブユニットであって、
それぞれの前記検査用プローブの基板の厚さが異なることを特徴とするプローブユニット。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプローブユニットであって、
それぞれの前記検査用プローブの基板の厚さが前記接触子の延在方向に沿って次第に変化されていることを特徴とするプローブユニット。
【請求項5】
請求項2から4の何れか一項に記載のプローブユニットであって、
前記検査用プローブの基板同士の間にスペーサが設けられていることを特徴とするプローブユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のプローブユニットであって、
前記スペーサの厚さが前記接触子の延在方向に沿って次第に変化されていることを特徴とするプローブユニット。
【請求項7】
請求項5または6に記載のプローブユニットであって、
前記スペーサは、接着剤を硬化させたものであることを特徴とするプローブユニット。
【請求項8】
請求項2から7の何れか一項に記載のプローブユニットを支持するプローブブロックと、前記被検査体が着脱される被検査体ブロックとを備え、
前記被検査体ブロックに前記被検査体を装着した状態で前記プローブブロックと前記被検査体ブロックとが近接されることにより、前記プローブユニットの前記検査用プローブの前記接触子が前記被検査体の前記電極に接触されることを特徴とする検査用治具。
【請求項9】
請求項8に記載の検査用治具であって、
前記被検査体ブロックに装着された前記被検査体に対して前記プローブユニットの前記検査用プローブが、垂直または水平に配置されていることを特徴とする検査用治具。
【請求項10】
請求項8または9に記載の検査用治具であって、
前記プローブブロックに嵌合部が形成され、前記検査用プローブが前記嵌合部に嵌合されて装着されていることを特徴とする検査用治具。
【請求項11】
請求項8から10の何れか一項に記載の検査用治具であって、
前記プローブブロックは、前記接触子の角度を異ならせて前記検査用プローブをそれぞれ支持する複数の固定ブロックを備えていることを特徴とする検査用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−88174(P2013−88174A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226794(P2011−226794)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】