検査用プローブ及びその製造方法
【課題】被検査体の電極への影響を抑えつつ効率的に被検査体の検査を行うことができる低コストの検査用プローブ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性の基板12と、基板12の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子13と、基板12に形成されて接触子13と導通する配線パターン14とを備え、被検査体の検査を行う際に接触子13の先端からなる接点15が被検査体の電極に接触される検査用プローブ11であって、接触子13及び配線パターン14が、MEMS技術によって基板12に形成され、接触子13の接点15における電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部16が形成されている。
【解決手段】絶縁性の基板12と、基板12の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子13と、基板12に形成されて接触子13と導通する配線パターン14とを備え、被検査体の検査を行う際に接触子13の先端からなる接点15が被検査体の電極に接触される検査用プローブ11であって、接触子13及び配線パターン14が、MEMS技術によって基板12に形成され、接触子13の接点15における電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部16が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどを検査する際に用いられる検査用プローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの通電試験を行う検査用プローブは、検査対象である被検査体に設けられた電極に押し当てて導通させる接触子を有している。
近年、電子機器に搭載される被検査体である電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの微細化及び高集積化が積極的に行われており、これに伴い、これらの被検査体の電極も微細ピッチ化及び微細領域化されている。そのため、検査用プローブの接触子も、微細ピッチ化及び微細領域化された被検査体の電極に対応したものが要求されている。
【0003】
このような検査用プローブとして、基板上にフォトリソグラフィー等のMEMS技術を用いて配線層と微細接点を一括形成したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3263号公報
【特許文献2】特開2002−286755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図9に示すように、並列させた複数の被検査体1を複数の検査用プローブによって同時に一括検査する場合などでは、図10に示すように、互いの検査用プローブ3が干渉することなく、被検査体1の電極2に対して検査用プローブ3の接触子4を接触させるために、検査用プローブ3を構成する複数の基板5の配置角度を変える必要がある。
しかし、このような配置とすると、基板5の厚さ等の構造上の制限により、被検査体1の電極2に対する接触子4の接触角が大きく(例えば最大で約31°)なる。すると、接触子4の角部によって被検査体1の電極2に接触痕が残ってしまう。
【0006】
接触子4の角部による電極2への接触痕の発生を極力抑えるためには、接触角を小さく(約10°〜25°)抑える必要があり、このため、各基板4の配置密度を小さくせざるを得なくなる。すると、基板4の配置枚数が少なくなり、一括検査が可能な被検査体1の個数も少なくなり、検査効率の低下によりコストが嵩んでしまう。
【0007】
また、接触角が小さい場合であっても、図11に示すように、接触子4に尖った角部4aがあると電極2に接触痕が形成される。このため、接触子4の角部4aをラッピングシートに繰り返し接触させることにより、図12に示すように、接触子4の角部4aに面取り加工を施して面取り部4bを形成することが行われるが、製造時のリードタイムが長くなり、製造コストが嵩んでしまう。
【0008】
また、MEMS型のプローブと異なる構造のカンチレバー方式の検査用プローブでは、接触子の先端を微細化すると、強度不足によって耐久性が低下してしまう。つまり、このカンチレバー方式の検査用プローブでは、接触子の先端の微細化が困難であり、このため、被検査体の電極へのダメージが大きくなり、被検査体を実装した際の接続信頼性が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的は、被検査体の電極への影響を抑えつつ極めて効率的に被検査体の検査を行うことができる低コストの検査用プローブ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明の検査用プローブは、絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の前記接点における前記電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の検査用プローブにおいて、前記電極接触凸部は、ドーム形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の検査用プローブにおいて、前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲され、前記被検査体に対して垂直方向から近接されて前記接触子の接点が前記被検査体の電極に接触されることが好ましい。
【0013】
本発明の検査用プローブの製造方法は、絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備えた検査用プローブを微小電気機械システム技術によって製造する検査用プローブの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に、凸曲面状に突出する接点成形部を形成する接点形状加工工程と、
前記基板上における前記接触子の形成範囲に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、
前記基板上における前記接触子及び前記配線パターンの形成位置に配線層を形成する配線層加工工程と、
前記接触子の形成位置における前記基板の一部を、前記犠牲層及び前記接点成形部とともに除去する外形加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の検査用プローブの製造方法において、前記犠牲層形成工程後に前記接点形状加工工程を行い、前記犠牲層上に前記接点成形部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検査用プローブによれば、被検査体を検査する際に、被検査体の電極に対して接触子の接点に形成された凸曲面状に突出する電極接触凸部が円滑に接触することとなる。これにより、被検査体の電極に対して接触子を安定した接触性を確保しつつ接触させることができ、電極に接触痕を残すような不具合をなくし、電極の損傷を防止することができる。したがって、検査工程後における被検査体の歩留まりを向上させることができ、被検査体の製造コストの大幅な削減を図ることができる。
【0016】
また、配線パターン及び接触子を微小電気機械システム技術によって基板に形成し、しかも、接触子の先端に電極接触凸部を形成したので、エージング加工によって接触子の角部を面取りしたものと比較して、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストの削減を図ることができる。そして、接触子が電極に接触痕を残すことなく円滑に接触するため、被検査体の電極に対する接触角を大きくすることができるので、複数の検査用プローブを用いて複数の被検査体を円滑に一括して検査することができる。
【0017】
また、本発明の検査用プローブの製造方法によれば、被検査体の電極へ接触痕を残すことなく円滑に接触子の接点を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブを製造することができる。しかも、その製造にかかるリードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブの製造コストを大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す平面図である。
【図2】検査用プローブの接触子部分を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】検査用プローブの接触子部分と被検査体の電極との接触状態を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ側面図である。
【図4】検査用プローブの接触子に形成された電極接触凸部の変形例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】検査用プローブの他の実施形態に係る側面図である。
【図6】検査用プローブの他の実施形態に係る接触子部分と被検査体の電極との接触箇所の拡大断面図である。
【図7】検査用プローブの製造工程の一例を示す図であって、(a)から(l)は、それぞれ製造途中の検査用プローブの側面図である。
【図8】検査用プローブの製造工程の他の例を示す図であって、(a)から(l)は、それぞれ製造途中の検査用プローブの側面図である。
【図9】並列に配置された複数の被検査体の一例を示す平面図である。
【図10】複数の被検査体の検査を行う例を示す接触子部分と被検査体の電極との接触箇所の側面図である。
【図11】従来の検査用プローブの接触子部分と電極との接触箇所の一例を示す側面図である。
【図12】従来の検査用プローブの接触子部分と電極との接触箇所の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る検査用プローブ及びその製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る検査用プローブ11は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなど被検査体の通電試験を行うプローブである。被検査体となる表示デバイスとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)や有機ELディスプレイなどがある。
【0020】
この検査用プローブ11は、絶縁性材料からなる基板12と、この基板12の縁部から外に延在して並列に配置された複数の接触子13を有している。この接触子13は、導電性材料からなり、その基端側が基板12上に配置されている。また、基板12には、接触子13と繋がって導通する配線パターン14が形成されている。
【0021】
接触子13は、その先端部が接点15とされており、この接点15には、基板12と反対側に突出する電極接触凸部16が形成されている。この電極接触凸部16は、接点15から凸曲面状に突出された形状を有する。図2の例では、電極接触凸部16の外形は、側面視で円弧状に形成され、その円弧が接触子13の幅方向(図2(b)の左右方向)に直線状に延びた形状となっている。
【0022】
上記構造の検査用プローブ11は、基板12上にフォトリソグラフィー等の微小電気機械システム技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて配線パターン14と微細な接点15となる接触子13とを一括形成したものである。
【0023】
次に、この検査用プローブ11で電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの被検査体21を検査する場合について説明する。
被検査体21を検査する場合、被検査体21に対して検査用プローブ11が近接される。すると、図3(a)に示すように、被検査体21の電極22に接触子13の接点15が接触される。この状態から、図3(b)に示すように、検査用プローブ11と被検査体21とが所定の押し込み量(Over Drive)ODで相対的に接近する方向に変位される。すると、被検査体21の電極22に接点15が接触された接触子13が弾性変形し、この接触子13の弾性力によって接点15が被検査体21の電極22に押圧される。これにより、電極22に対して接触子13の接点15が押し付けられ、電極22と接触子13とが良好に導通接触される。
【0024】
このとき、接触子13の接点15には、電極22側へ突出する側面視円弧状の電極接触凸部16が形成されているので、電極22に対して電極接触凸部16の凸曲面状の表面が円滑に摺接することとなる。これにより、被検査体21の電極22に対して接触子13を安定した接触性を確保しつつ接触させることができ、電極22に接触痕を残すような不具合をなくし、電極22の損傷を極力防ぐことができる。したがって、検査工程後における被検査体21の歩留まりを向上させることができ、被検査体21の製造コストを削減することができる。
【0025】
また、配線パターン14及び接触子13をMEMS技術によって基板12に形成し、しかも、接触子13の先端に電極接触凸部16を形成したので、エージング加工によって接触子の角部を面取りしたもの(図12参照)と比較して、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストを削減することができる。
【0026】
上記の検査用プローブ11を用いて、並列させた複数の被検査体21(図9参照)を同時に一括検査する場合では、互いの検査用プローブ11が干渉しないように、被検査体21の電極22に対して接触子13の接点15を接触させるために、検査用プローブ11を構成する複数の基板12の配置角度を変えて配置する必要がある(図10参照)。
このような構造とすると、基板12の厚さ等の構造上の制限により、被検査体21の電極22に対する接触子13の接触角が大きく(例えば約31°)なる。
【0027】
このように、接触角が大きくなったとしても、本実施形態に係る検査用プローブ11によれば、電極接触凸部16が電極22に円滑に接触するので、接触子13が電極22に接触痕を残すような不具合が生じず、電極22の損傷が極力防がれる。したがって、複数の検査用プローブ11を用いて複数の被検査体21を円滑に一括して検査することができる。
【0028】
なお、接触子13の接点15に形成した電極接触凸部16の凸曲面形状としては、側面視円弧状で幅方向に同一な形状に限らず、図4に示すように、ドーム状(略半球状)に突出する形状であっても良い。このような形状の電極接触凸部16を形成すると、接点15の電極接触凸部16があらゆる方向から電極22に接触しても、電極22に円滑に接触することとなり、被検査体21の電極22へ接触痕が残るような不具合をさらに確実になくし、電極22の損傷を極力防止することができる。
【0029】
次に、検査用プローブの他の実施形態例について説明する。
図5に示す検査用プローブ11Aでは、接触子13の先端近傍部分が屈曲されている。これにより、接触子13は、その先端が基板12に対して所定の角度に傾斜されて配置されている。
また、この検査用プローブ11Aは、接触子13の先端からなる接点15における基板12側の面に凸曲面状の電極接触凸部16が形成されている。
【0030】
この検査用プローブ11Aは、被検査体21に対して基板12が垂直に配置された状態で近接される。そして、このように被検査体21に対して基板12を垂直に配置して近接させると、図6に示すように、基板12に対して傾斜された接触子13の先端の接点15が被検査体21の電極22に接触する。このときも、接点15の電極接触凸部16が被検査体21の電極22の表面に摺接しながら円滑に接触することとなる。これにより、被検査体21に対して検査用プローブ11Aを垂直に配置した状態で被検査体21を容易に検査することができる。この場合も、接触子13の接点15が電極22へ接触することによる接触痕が残るような不具合をなくし、電極22の損傷を防ぐことができる。
【0031】
また、この検査用プローブ11Aでは、被検査体21に対して垂直方向から近接して検査を行うことができるので、電極22が被検査体21の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状であっても、接触子13の接点15を電極22へ接触させて容易に検査することができる。
【0032】
次に、検査用プローブの製造方法について説明する。
なお、ここでは、基板12から接触子13が真っ直ぐ延在し、接点15の先端に凸曲面状に突出した電極接触凸部16を有する検査用プローブ11を製造する場合について説明する。
【0033】
(1)接点形状加工工程
図7(a)に示すように、基板12上に成膜加工を施すことにより、例えば、アルミニウム合金(AlCu)等からなる所望の厚さ(例えば、100Å〜500Å)の金属薄膜31を形成し、この金属薄膜31上に、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜30ミクロン)のポジ型のフォトレジストを塗布する。
【0034】
その後、図7(b),(c)に示すように、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。現像完了後、熱硬化炉(オーブン)を用いて加熱することにより、フォトレジストをフローさせ、電極接触凸部16となる部分に凸曲面状に突出した所望の形状の接点成形部30を形成する。加熱条件は、例えば、200℃〜300℃のピーク温度において、10分〜60分程度の範囲で条件適正化を図る。また、必要に応じて光照射を実施する。フォトレジストとして化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0035】
(2)犠牲層加工工程
図7(d)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、0.1ミクロン〜5.0ミクロン)になるようにフォトレジスト33を塗布する。その後、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。ポストベークが必要な場合は、適正な条件で実施する。基板12上に金属膜からなる犠牲層34を所望の材質と厚さで形成する。例えば、TiとCuからなる犠牲層34を、Ti/Cu=(100Å〜500Å)/(100Å〜5000Å)でスパッタリング法により加工する。
次に、図7(e)に示すように、不要なフォトレジスト33と犠牲層34を、例えば、リフトオフ法によって除去する。
【0036】
(3)配線層加工工程
図7(f)に示すように、基板12上に、メッキ給電層となる所望の材料のシード層35を所望の厚さが得られるように形成する。このシード層35は、例えば、TiとNi合金からなるシード層35を、Ti/Ni合金=(100Å〜2000Å)/(500Å〜5000Å)でスパッタリング法により形成する。
【0037】
図7(g)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって、接触子13及び配線パターン14となる配線層38を形成するためのフォトレジスト36を所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜50ミクロン)になるように塗布し、その後、溶媒分除去のためプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。フォトレジスト36として化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0038】
図7(h)に示すように、メッキ処理を施すことにより配線層38を形成する。配線層38は、例えば、Ni合金(NiCo,NiMn,NiFe,NiPd等)から形成し、所望のばね性能が確保できる厚さに形成する。
配線層38の形成後、図7(i)に示すように、フォトレジスト36及びシード層35の除去を行う。
ここで、基板12が最終の所望厚より厚い寸法である場合、基板12の裏面に研削加工や研磨加工を施し、基板12の厚さを所望の厚さまで薄化加工する。
【0039】
(4)外形加工工程
次に、図7(j)に示すように、ダイシング加工によって個片外形カットを行って個々の検査用プローブ11とし、基板12の裏面に溝37を形成する。このとき、基板12を加熱発泡タイプの接着シートでガラス基板に貼り付ける。ガラス基板から剥離するときは、接着シートを加熱発泡させて個片化させたチップをテープから取り出す。
【0040】
その後、図7(k)に示すように、選択エッチングによって犠牲層34を除去する。この選択エッチングでは、例えば、銅(Cu)除去用液に一定時間浸漬して銅(Cu)成分を除去した後、チタニウム(Ti)除去のためアンモニウム過水に浸漬してチタニウム(Ti)成分を除去する。
最後に、図7(l)に示すように、基板12を溝37の箇所で切断し、犠牲層34を除去した部分における基板12を接点成形部30とともに除去する。
【0041】
上記の接点形状加工工程、犠牲層加工工程、配線層加工工程及び外形加工工程を含むMEMS技術を用いた製造プロセスを行うことにより、接触子13の接点15に電極接触凸部16が形成された検査用プローブ11が製造される。
【0042】
このように、本実施形態に係る検査用プローブの製造方法によれば、被検査体21の電極22へ接触痕を残すことなく円滑に接触子13の接点15を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブ11を製造することができる。そして、その製造にかかるリードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブ11の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0043】
次に、検査用プローブの製造方法の他の例を説明する。
(1)犠牲層加工工程
図8(a)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、0.1ミクロン〜5.0ミクロン)になるようにフォトレジスト33を塗布する。その後、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。ポストベークが必要な場合は、適正な条件で実施する。
【0044】
図8(b)に示すように、基板12上に金属膜からなる犠牲層34を所望の材質と厚さで形成する。例えば、TiとCuからなる犠牲層34を、Ti/Cu=(100Å〜500Å)/(100Å〜5000Å)でスパッタリング法により加工する。
次に、図8(c)に示すように、不要なフォトレジスト33と犠牲層34を、例えば、リフトオフ法によって除去する。
【0045】
(2)接点形状加工工程
犠牲層34の加工を行った基板12上に、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜30ミクロン)のポジ型のフォトレジストを塗布し、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。図8(d)(e)に示すように、現像完了後、熱硬化炉(オーブン)を用いて加熱することにより、フォトレジスト32をフローさせ、電極接触凸部16となる部分に凸曲面状に突出した所望の形状の接点成形部30を形成する。加熱条件は、例えば、200℃〜300℃のピーク温度において10分〜60分程度の範囲で条件適正化を図る。また、必要に応じて光照射を実施する。フォトレジストとして化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0046】
(3)配線層加工工程
図8(f)に示すように、基板12上に、メッキ給電層となる所望の材料のシード層35を所望の厚さが得られるように形成する。このシード層35は、例えば、TiとNi合金からなるシード層35を、Ti/Ni合金=(100Å〜2000Å)/(500Å〜5000Å)でスパッタリング法により形成する。
【0047】
図8(g)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって、接触子13及び配線パターン14を形成するためのフォトレジスト36を所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜50ミクロン)になるように塗布し、その後、溶媒分除去のためプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。フォトレジスト36として化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0048】
図8(h)に示すように、メッキ処理を施すことにより配線層38を形成する。配線層38は、例えば、Ni合金(NiCo,NiMn,NiFe,NiPd等)から形成し、所望のばね性能が確保できる厚さに形成する。
配線層38の形成後、図8(i)に示すように、フォトレジスト36の除去及びシード層35の除去を行う。
ここで、基板12が最終の所望厚より厚い寸法である場合、基板12の裏面に研削加工や研磨加工を施し、基板12の厚さを所望の厚さまで薄化加工する。
【0049】
(4)外形加工工程
次に、図8(j)に示すように、ダイシング加工によって個片外形カットを行って個々の検査用プローブ11とし、基板12の裏面に溝37を形成する。このとき、基板12を加熱発泡タイプの接着シートでガラス基板に貼り付ける。加工完了後ガラス基板から剥離するときは、接着シートを加熱発泡させて個片化させたチップをテープから取り出す。
【0050】
その後、図8(k)に示すように、選択エッチングによって犠牲層34を接点成形部30とともに除去する。この選択エッチングでは、例えば、銅(Cu)除去用液に一定時間浸漬して銅(Cu)成分を除去した後、チタニウム(Ti)除去のためアンモニウム過水に浸漬してチタニウム(Ti)成分を除去する。
最後に、図8(l)に示すように、基板12を溝37の箇所で切断し、犠牲層34を除去した部分における基板12を除去する。
【0051】
上記の犠牲層加工工程、接点形状加工工程、配線層加工工程及び外形加工工程を含むMEMS技術を用いた製造プロセスを行うことにより、接触子13の接点15に電極接触凸部16が形成された検査用プローブ11が製造される。
【0052】
このように、本実施形態に係る検査用プローブの製造方法によれば、被検査体21の電極22へ接触痕を残すことなく円滑に接触子13の接点15を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブ11を製造することができる。また、その製造リードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブ11の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0053】
また、犠牲層34を形成した後に犠牲層34上に接点成形部30を形成することで、接点形状加工工程での成膜加工工程を削減することができ、製造リードタイムをさらに短縮することができる。
【0054】
なお、図5及び図6に示した検査用プローブ11Aを製造する方法は、図7または図8に示した製造方法を利用することができる。その際、接点成形部30の形状を、図6に示した電極接触凸部16に対応する形状とすることで、接点15の基板12側に凸曲面状の電極接触凸部16を形成できる。そして、接触子13の先端近傍部分をプレス加工などにより所望の角度に屈曲させればよい。
【符号の説明】
【0055】
11,11A:検査用プローブ、12:基板、13:接触子、14:配線パターン、15:接点、16:電極接触凸部、21:被検査体、22:電極、30:接点成形部、34:犠牲層、38:配線層
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどを検査する際に用いられる検査用プローブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの通電試験を行う検査用プローブは、検査対象である被検査体に設けられた電極に押し当てて導通させる接触子を有している。
近年、電子機器に搭載される被検査体である電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの微細化及び高集積化が積極的に行われており、これに伴い、これらの被検査体の電極も微細ピッチ化及び微細領域化されている。そのため、検査用プローブの接触子も、微細ピッチ化及び微細領域化された被検査体の電極に対応したものが要求されている。
【0003】
このような検査用プローブとして、基板上にフォトリソグラフィー等のMEMS技術を用いて配線層と微細接点を一括形成したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3263号公報
【特許文献2】特開2002−286755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図9に示すように、並列させた複数の被検査体1を複数の検査用プローブによって同時に一括検査する場合などでは、図10に示すように、互いの検査用プローブ3が干渉することなく、被検査体1の電極2に対して検査用プローブ3の接触子4を接触させるために、検査用プローブ3を構成する複数の基板5の配置角度を変える必要がある。
しかし、このような配置とすると、基板5の厚さ等の構造上の制限により、被検査体1の電極2に対する接触子4の接触角が大きく(例えば最大で約31°)なる。すると、接触子4の角部によって被検査体1の電極2に接触痕が残ってしまう。
【0006】
接触子4の角部による電極2への接触痕の発生を極力抑えるためには、接触角を小さく(約10°〜25°)抑える必要があり、このため、各基板4の配置密度を小さくせざるを得なくなる。すると、基板4の配置枚数が少なくなり、一括検査が可能な被検査体1の個数も少なくなり、検査効率の低下によりコストが嵩んでしまう。
【0007】
また、接触角が小さい場合であっても、図11に示すように、接触子4に尖った角部4aがあると電極2に接触痕が形成される。このため、接触子4の角部4aをラッピングシートに繰り返し接触させることにより、図12に示すように、接触子4の角部4aに面取り加工を施して面取り部4bを形成することが行われるが、製造時のリードタイムが長くなり、製造コストが嵩んでしまう。
【0008】
また、MEMS型のプローブと異なる構造のカンチレバー方式の検査用プローブでは、接触子の先端を微細化すると、強度不足によって耐久性が低下してしまう。つまり、このカンチレバー方式の検査用プローブでは、接触子の先端の微細化が困難であり、このため、被検査体の電極へのダメージが大きくなり、被検査体を実装した際の接続信頼性が低下してしまう。
【0009】
本発明の目的は、被検査体の電極への影響を抑えつつ極めて効率的に被検査体の検査を行うことができる低コストの検査用プローブ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明の検査用プローブは、絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の前記接点における前記電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の検査用プローブにおいて、前記電極接触凸部は、ドーム形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の検査用プローブにおいて、前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲され、前記被検査体に対して垂直方向から近接されて前記接触子の接点が前記被検査体の電極に接触されることが好ましい。
【0013】
本発明の検査用プローブの製造方法は、絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備えた検査用プローブを微小電気機械システム技術によって製造する検査用プローブの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に、凸曲面状に突出する接点成形部を形成する接点形状加工工程と、
前記基板上における前記接触子の形成範囲に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、
前記基板上における前記接触子及び前記配線パターンの形成位置に配線層を形成する配線層加工工程と、
前記接触子の形成位置における前記基板の一部を、前記犠牲層及び前記接点成形部とともに除去する外形加工工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の検査用プローブの製造方法において、前記犠牲層形成工程後に前記接点形状加工工程を行い、前記犠牲層上に前記接点成形部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の検査用プローブによれば、被検査体を検査する際に、被検査体の電極に対して接触子の接点に形成された凸曲面状に突出する電極接触凸部が円滑に接触することとなる。これにより、被検査体の電極に対して接触子を安定した接触性を確保しつつ接触させることができ、電極に接触痕を残すような不具合をなくし、電極の損傷を防止することができる。したがって、検査工程後における被検査体の歩留まりを向上させることができ、被検査体の製造コストの大幅な削減を図ることができる。
【0016】
また、配線パターン及び接触子を微小電気機械システム技術によって基板に形成し、しかも、接触子の先端に電極接触凸部を形成したので、エージング加工によって接触子の角部を面取りしたものと比較して、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストの削減を図ることができる。そして、接触子が電極に接触痕を残すことなく円滑に接触するため、被検査体の電極に対する接触角を大きくすることができるので、複数の検査用プローブを用いて複数の被検査体を円滑に一括して検査することができる。
【0017】
また、本発明の検査用プローブの製造方法によれば、被検査体の電極へ接触痕を残すことなく円滑に接触子の接点を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブを製造することができる。しかも、その製造にかかるリードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブの製造コストを大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る検査用プローブの一実施形態を示す平面図である。
【図2】検査用プローブの接触子部分を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】検査用プローブの接触子部分と被検査体の電極との接触状態を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ側面図である。
【図4】検査用プローブの接触子に形成された電極接触凸部の変形例を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】検査用プローブの他の実施形態に係る側面図である。
【図6】検査用プローブの他の実施形態に係る接触子部分と被検査体の電極との接触箇所の拡大断面図である。
【図7】検査用プローブの製造工程の一例を示す図であって、(a)から(l)は、それぞれ製造途中の検査用プローブの側面図である。
【図8】検査用プローブの製造工程の他の例を示す図であって、(a)から(l)は、それぞれ製造途中の検査用プローブの側面図である。
【図9】並列に配置された複数の被検査体の一例を示す平面図である。
【図10】複数の被検査体の検査を行う例を示す接触子部分と被検査体の電極との接触箇所の側面図である。
【図11】従来の検査用プローブの接触子部分と電極との接触箇所の一例を示す側面図である。
【図12】従来の検査用プローブの接触子部分と電極との接触箇所の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る検査用プローブ及びその製造方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る検査用プローブ11は、電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなど被検査体の通電試験を行うプローブである。被検査体となる表示デバイスとしては、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)や有機ELディスプレイなどがある。
【0020】
この検査用プローブ11は、絶縁性材料からなる基板12と、この基板12の縁部から外に延在して並列に配置された複数の接触子13を有している。この接触子13は、導電性材料からなり、その基端側が基板12上に配置されている。また、基板12には、接触子13と繋がって導通する配線パターン14が形成されている。
【0021】
接触子13は、その先端部が接点15とされており、この接点15には、基板12と反対側に突出する電極接触凸部16が形成されている。この電極接触凸部16は、接点15から凸曲面状に突出された形状を有する。図2の例では、電極接触凸部16の外形は、側面視で円弧状に形成され、その円弧が接触子13の幅方向(図2(b)の左右方向)に直線状に延びた形状となっている。
【0022】
上記構造の検査用プローブ11は、基板12上にフォトリソグラフィー等の微小電気機械システム技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて配線パターン14と微細な接点15となる接触子13とを一括形成したものである。
【0023】
次に、この検査用プローブ11で電子デバイス、半導体デバイスあるいは表示デバイスなどの被検査体21を検査する場合について説明する。
被検査体21を検査する場合、被検査体21に対して検査用プローブ11が近接される。すると、図3(a)に示すように、被検査体21の電極22に接触子13の接点15が接触される。この状態から、図3(b)に示すように、検査用プローブ11と被検査体21とが所定の押し込み量(Over Drive)ODで相対的に接近する方向に変位される。すると、被検査体21の電極22に接点15が接触された接触子13が弾性変形し、この接触子13の弾性力によって接点15が被検査体21の電極22に押圧される。これにより、電極22に対して接触子13の接点15が押し付けられ、電極22と接触子13とが良好に導通接触される。
【0024】
このとき、接触子13の接点15には、電極22側へ突出する側面視円弧状の電極接触凸部16が形成されているので、電極22に対して電極接触凸部16の凸曲面状の表面が円滑に摺接することとなる。これにより、被検査体21の電極22に対して接触子13を安定した接触性を確保しつつ接触させることができ、電極22に接触痕を残すような不具合をなくし、電極22の損傷を極力防ぐことができる。したがって、検査工程後における被検査体21の歩留まりを向上させることができ、被検査体21の製造コストを削減することができる。
【0025】
また、配線パターン14及び接触子13をMEMS技術によって基板12に形成し、しかも、接触子13の先端に電極接触凸部16を形成したので、エージング加工によって接触子の角部を面取りしたもの(図12参照)と比較して、製造時のリードタイムを大幅に短縮させることができ、製造コストを削減することができる。
【0026】
上記の検査用プローブ11を用いて、並列させた複数の被検査体21(図9参照)を同時に一括検査する場合では、互いの検査用プローブ11が干渉しないように、被検査体21の電極22に対して接触子13の接点15を接触させるために、検査用プローブ11を構成する複数の基板12の配置角度を変えて配置する必要がある(図10参照)。
このような構造とすると、基板12の厚さ等の構造上の制限により、被検査体21の電極22に対する接触子13の接触角が大きく(例えば約31°)なる。
【0027】
このように、接触角が大きくなったとしても、本実施形態に係る検査用プローブ11によれば、電極接触凸部16が電極22に円滑に接触するので、接触子13が電極22に接触痕を残すような不具合が生じず、電極22の損傷が極力防がれる。したがって、複数の検査用プローブ11を用いて複数の被検査体21を円滑に一括して検査することができる。
【0028】
なお、接触子13の接点15に形成した電極接触凸部16の凸曲面形状としては、側面視円弧状で幅方向に同一な形状に限らず、図4に示すように、ドーム状(略半球状)に突出する形状であっても良い。このような形状の電極接触凸部16を形成すると、接点15の電極接触凸部16があらゆる方向から電極22に接触しても、電極22に円滑に接触することとなり、被検査体21の電極22へ接触痕が残るような不具合をさらに確実になくし、電極22の損傷を極力防止することができる。
【0029】
次に、検査用プローブの他の実施形態例について説明する。
図5に示す検査用プローブ11Aでは、接触子13の先端近傍部分が屈曲されている。これにより、接触子13は、その先端が基板12に対して所定の角度に傾斜されて配置されている。
また、この検査用プローブ11Aは、接触子13の先端からなる接点15における基板12側の面に凸曲面状の電極接触凸部16が形成されている。
【0030】
この検査用プローブ11Aは、被検査体21に対して基板12が垂直に配置された状態で近接される。そして、このように被検査体21に対して基板12を垂直に配置して近接させると、図6に示すように、基板12に対して傾斜された接触子13の先端の接点15が被検査体21の電極22に接触する。このときも、接点15の電極接触凸部16が被検査体21の電極22の表面に摺接しながら円滑に接触することとなる。これにより、被検査体21に対して検査用プローブ11Aを垂直に配置した状態で被検査体21を容易に検査することができる。この場合も、接触子13の接点15が電極22へ接触することによる接触痕が残るような不具合をなくし、電極22の損傷を防ぐことができる。
【0031】
また、この検査用プローブ11Aでは、被検査体21に対して垂直方向から近接して検査を行うことができるので、電極22が被検査体21の表面よりも内側に凹んだ箇所に配置されているような段付き形状であっても、接触子13の接点15を電極22へ接触させて容易に検査することができる。
【0032】
次に、検査用プローブの製造方法について説明する。
なお、ここでは、基板12から接触子13が真っ直ぐ延在し、接点15の先端に凸曲面状に突出した電極接触凸部16を有する検査用プローブ11を製造する場合について説明する。
【0033】
(1)接点形状加工工程
図7(a)に示すように、基板12上に成膜加工を施すことにより、例えば、アルミニウム合金(AlCu)等からなる所望の厚さ(例えば、100Å〜500Å)の金属薄膜31を形成し、この金属薄膜31上に、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜30ミクロン)のポジ型のフォトレジストを塗布する。
【0034】
その後、図7(b),(c)に示すように、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。現像完了後、熱硬化炉(オーブン)を用いて加熱することにより、フォトレジストをフローさせ、電極接触凸部16となる部分に凸曲面状に突出した所望の形状の接点成形部30を形成する。加熱条件は、例えば、200℃〜300℃のピーク温度において、10分〜60分程度の範囲で条件適正化を図る。また、必要に応じて光照射を実施する。フォトレジストとして化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0035】
(2)犠牲層加工工程
図7(d)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、0.1ミクロン〜5.0ミクロン)になるようにフォトレジスト33を塗布する。その後、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。ポストベークが必要な場合は、適正な条件で実施する。基板12上に金属膜からなる犠牲層34を所望の材質と厚さで形成する。例えば、TiとCuからなる犠牲層34を、Ti/Cu=(100Å〜500Å)/(100Å〜5000Å)でスパッタリング法により加工する。
次に、図7(e)に示すように、不要なフォトレジスト33と犠牲層34を、例えば、リフトオフ法によって除去する。
【0036】
(3)配線層加工工程
図7(f)に示すように、基板12上に、メッキ給電層となる所望の材料のシード層35を所望の厚さが得られるように形成する。このシード層35は、例えば、TiとNi合金からなるシード層35を、Ti/Ni合金=(100Å〜2000Å)/(500Å〜5000Å)でスパッタリング法により形成する。
【0037】
図7(g)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって、接触子13及び配線パターン14となる配線層38を形成するためのフォトレジスト36を所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜50ミクロン)になるように塗布し、その後、溶媒分除去のためプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。フォトレジスト36として化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0038】
図7(h)に示すように、メッキ処理を施すことにより配線層38を形成する。配線層38は、例えば、Ni合金(NiCo,NiMn,NiFe,NiPd等)から形成し、所望のばね性能が確保できる厚さに形成する。
配線層38の形成後、図7(i)に示すように、フォトレジスト36及びシード層35の除去を行う。
ここで、基板12が最終の所望厚より厚い寸法である場合、基板12の裏面に研削加工や研磨加工を施し、基板12の厚さを所望の厚さまで薄化加工する。
【0039】
(4)外形加工工程
次に、図7(j)に示すように、ダイシング加工によって個片外形カットを行って個々の検査用プローブ11とし、基板12の裏面に溝37を形成する。このとき、基板12を加熱発泡タイプの接着シートでガラス基板に貼り付ける。ガラス基板から剥離するときは、接着シートを加熱発泡させて個片化させたチップをテープから取り出す。
【0040】
その後、図7(k)に示すように、選択エッチングによって犠牲層34を除去する。この選択エッチングでは、例えば、銅(Cu)除去用液に一定時間浸漬して銅(Cu)成分を除去した後、チタニウム(Ti)除去のためアンモニウム過水に浸漬してチタニウム(Ti)成分を除去する。
最後に、図7(l)に示すように、基板12を溝37の箇所で切断し、犠牲層34を除去した部分における基板12を接点成形部30とともに除去する。
【0041】
上記の接点形状加工工程、犠牲層加工工程、配線層加工工程及び外形加工工程を含むMEMS技術を用いた製造プロセスを行うことにより、接触子13の接点15に電極接触凸部16が形成された検査用プローブ11が製造される。
【0042】
このように、本実施形態に係る検査用プローブの製造方法によれば、被検査体21の電極22へ接触痕を残すことなく円滑に接触子13の接点15を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブ11を製造することができる。そして、その製造にかかるリードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブ11の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0043】
次に、検査用プローブの製造方法の他の例を説明する。
(1)犠牲層加工工程
図8(a)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、0.1ミクロン〜5.0ミクロン)になるようにフォトレジスト33を塗布する。その後、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。ポストベークが必要な場合は、適正な条件で実施する。
【0044】
図8(b)に示すように、基板12上に金属膜からなる犠牲層34を所望の材質と厚さで形成する。例えば、TiとCuからなる犠牲層34を、Ti/Cu=(100Å〜500Å)/(100Å〜5000Å)でスパッタリング法により加工する。
次に、図8(c)に示すように、不要なフォトレジスト33と犠牲層34を、例えば、リフトオフ法によって除去する。
【0045】
(2)接点形状加工工程
犠牲層34の加工を行った基板12上に、印刷法、スピンコーティング法等によって所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜30ミクロン)のポジ型のフォトレジストを塗布し、溶媒分除去のためにプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。図8(d)(e)に示すように、現像完了後、熱硬化炉(オーブン)を用いて加熱することにより、フォトレジスト32をフローさせ、電極接触凸部16となる部分に凸曲面状に突出した所望の形状の接点成形部30を形成する。加熱条件は、例えば、200℃〜300℃のピーク温度において10分〜60分程度の範囲で条件適正化を図る。また、必要に応じて光照射を実施する。フォトレジストとして化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0046】
(3)配線層加工工程
図8(f)に示すように、基板12上に、メッキ給電層となる所望の材料のシード層35を所望の厚さが得られるように形成する。このシード層35は、例えば、TiとNi合金からなるシード層35を、Ti/Ni合金=(100Å〜2000Å)/(500Å〜5000Å)でスパッタリング法により形成する。
【0047】
図8(g)に示すように、印刷法、スピンコーティング法等によって、接触子13及び配線パターン14を形成するためのフォトレジスト36を所望の厚さ(例えば、10ミクロン〜50ミクロン)になるように塗布し、その後、溶媒分除去のためプリベーク処理を行い、露光及び現像を行う。フォトレジスト36として化学増幅型のレジストを用いる場合、反応促進のため、露光後に加熱処理(Post Exposure Bake)を適正条件で実施した後に現像処理を行う。
【0048】
図8(h)に示すように、メッキ処理を施すことにより配線層38を形成する。配線層38は、例えば、Ni合金(NiCo,NiMn,NiFe,NiPd等)から形成し、所望のばね性能が確保できる厚さに形成する。
配線層38の形成後、図8(i)に示すように、フォトレジスト36の除去及びシード層35の除去を行う。
ここで、基板12が最終の所望厚より厚い寸法である場合、基板12の裏面に研削加工や研磨加工を施し、基板12の厚さを所望の厚さまで薄化加工する。
【0049】
(4)外形加工工程
次に、図8(j)に示すように、ダイシング加工によって個片外形カットを行って個々の検査用プローブ11とし、基板12の裏面に溝37を形成する。このとき、基板12を加熱発泡タイプの接着シートでガラス基板に貼り付ける。加工完了後ガラス基板から剥離するときは、接着シートを加熱発泡させて個片化させたチップをテープから取り出す。
【0050】
その後、図8(k)に示すように、選択エッチングによって犠牲層34を接点成形部30とともに除去する。この選択エッチングでは、例えば、銅(Cu)除去用液に一定時間浸漬して銅(Cu)成分を除去した後、チタニウム(Ti)除去のためアンモニウム過水に浸漬してチタニウム(Ti)成分を除去する。
最後に、図8(l)に示すように、基板12を溝37の箇所で切断し、犠牲層34を除去した部分における基板12を除去する。
【0051】
上記の犠牲層加工工程、接点形状加工工程、配線層加工工程及び外形加工工程を含むMEMS技術を用いた製造プロセスを行うことにより、接触子13の接点15に電極接触凸部16が形成された検査用プローブ11が製造される。
【0052】
このように、本実施形態に係る検査用プローブの製造方法によれば、被検査体21の電極22へ接触痕を残すことなく円滑に接触子13の接点15を接触させて検査を良好に行うことが可能な検査用プローブ11を製造することができる。また、その製造リードタイムを大幅に短縮させることができ、検査用プローブ11の製造コストを大幅に低減させることができる。
【0053】
また、犠牲層34を形成した後に犠牲層34上に接点成形部30を形成することで、接点形状加工工程での成膜加工工程を削減することができ、製造リードタイムをさらに短縮することができる。
【0054】
なお、図5及び図6に示した検査用プローブ11Aを製造する方法は、図7または図8に示した製造方法を利用することができる。その際、接点成形部30の形状を、図6に示した電極接触凸部16に対応する形状とすることで、接点15の基板12側に凸曲面状の電極接触凸部16を形成できる。そして、接触子13の先端近傍部分をプレス加工などにより所望の角度に屈曲させればよい。
【符号の説明】
【0055】
11,11A:検査用プローブ、12:基板、13:接触子、14:配線パターン、15:接点、16:電極接触凸部、21:被検査体、22:電極、30:接点成形部、34:犠牲層、38:配線層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の前記接点における前記電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部が形成されていることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の検査用プローブであって、
前記電極接触凸部は、ドーム形状に形成されていることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査用プローブであって、
前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲され、前記被検査体に対して垂直方向から近接されて前記接触子の接点が前記被検査体の電極に接触されることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項4】
絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備えた検査用プローブを微小電気機械システム技術によって製造する検査用プローブの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に、凸曲面状に突出する接点成形部を形成する接点形状加工工程と、
前記基板上における前記接触子の形成範囲に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、
前記基板上における前記接触子及び前記配線パターンの形成位置に配線層を形成する配線層加工工程と、
前記接触子の形成位置における前記基板の一部を、前記犠牲層及び前記接点成形部とともに除去する外形加工工程と、を含むことを特徴とする検査用プローブの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査用プローブの製造方法であって、
前記犠牲層形成工程後に前記接点形状加工工程を行い、前記犠牲層上に前記接点成形部を形成することを特徴とする検査用プローブの製造方法。
【請求項1】
絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備え、被検査体の検査を行う際に前記接触子の先端からなる接点が前記被検査体の電極に接触される検査用プローブであって、
前記接触子及び前記配線パターンが、微小電気機械システム技術によって前記基板に形成されたものであり、
前記接触子の前記接点における前記電極との接触箇所に、凸曲面状に突出する電極接触凸部が形成されていることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の検査用プローブであって、
前記電極接触凸部は、ドーム形状に形成されていることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査用プローブであって、
前記接触子の先端側が前記基板の表面に対して所定角度で屈曲され、前記被検査体に対して垂直方向から近接されて前記接触子の接点が前記被検査体の電極に接触されることを特徴とする検査用プローブ。
【請求項4】
絶縁性の基板と、前記基板の縁部から外に延在されて並列に配置された弾性を有する複数の導電性の接触子と、前記基板に形成されて前記接触子と導通する配線パターンとを備えた検査用プローブを微小電気機械システム技術によって製造する検査用プローブの製造方法であって、
前記基板上の所定位置に、凸曲面状に突出する接点成形部を形成する接点形状加工工程と、
前記基板上における前記接触子の形成範囲に犠牲層を形成する犠牲層形成工程と、
前記基板上における前記接触子及び前記配線パターンの形成位置に配線層を形成する配線層加工工程と、
前記接触子の形成位置における前記基板の一部を、前記犠牲層及び前記接点成形部とともに除去する外形加工工程と、を含むことを特徴とする検査用プローブの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の検査用プローブの製造方法であって、
前記犠牲層形成工程後に前記接点形状加工工程を行い、前記犠牲層上に前記接点成形部を形成することを特徴とする検査用プローブの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−61247(P2013−61247A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199915(P2011−199915)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】
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