説明

検査装置、および検査装置の調整方法

【課題】
表面検査装置では、より粒径の小さいPSLを使用することで、より小さい欠陥を検査することが可能となる。しかし、PSLの粒径は、有限である。このことから、従来の表面検査装置では、近い将来に半導体製造工程の検査で必要となるPSLに設定の無いほど小さい粒径の欠陥をどのように検査するかということに関しては配慮がなされていなかった。
【解決手段】
本発明は、被検査物体で散乱,回折、または反射された光の、波長,光量,光量の時間変化、および偏光の少なくとも1つを模擬した光を発生する光源装置を有し、前記光を表面検査装置の光検出器に入射させるより微小な欠陥を検査することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板(半導体ウェーハ)等の被検査物体表面上に存在する微小な異物,きず,汚れ等(以下、これらを総称して欠陥と称する)を検査する表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や薄膜基板等の製造ラインにおいて、製造装置の発塵状況を監視するために、半導体基板や薄膜基板等の表面の欠陥の検査が行われている。
【0003】
従来、半導体基板等の被検査物体表面上の微小な欠陥を検出する技術としては、例えば、米国特許第5,798,829号明細書(公報)に記載されているように、集光したレーザ光束を半導体基板表面に固定照射して(このとき照射されたレーザ光束が半導体基板表面上に形成する、照明された領域を照明スポットと呼ぶ)、半導体基板上に欠陥が存在している場合に発生する該欠陥からの散乱光を光検出器で検出し、半導体基板全面の欠陥を検査するものがある。
【0004】
このような表面検査装置では一般に、光検出器から得られる信号強度を検出した欠陥の大きさに換算して検査結果とする。この換算は、検査の前に予め粒径が既知である標準粒子(一般にPSL:ポリスチレンラテックス球が用いられる)を塗布した校正用ウェーハを測定して、前記既知で粒径の標準粒子が発生する散乱光強度とそれに対応して光検出器から得られる信号強度の間の関係を校正曲線として算出しておき、実際の被検査ウェーハに対する検査時には、前記光検出器から得られる信号強度を前記校正曲線に当てはめて標準粒子相当の粒径に換算する、といったように行われる。このような校正方法は、例えば特開2003−185588号公報等において記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−185588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面検査装置では、より粒径の小さいPSLを使用することで、より小さい欠陥を検査することが可能となる。しかし、PSLの粒径は、有限である。
【0007】
このことから、従来の表面検査装置では、近い将来に半導体製造工程の検査で必要となるPSLに設定の無いほど小さい粒径の欠陥をどのように検査するかということに関しては配慮がなされていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被検査物体で散乱,回折、または反射された光の、波長,光量,光量の時間変化、および偏光の少なくとも1つを模擬した光を発生する光源装置を有し、前記光を表面検査装置の光検出器に入射させることを1つの特徴とする。
【0009】
本発明は、前記光源装置から取り出される光が、少なくとも概略直流成分と概略パルス成分とで合算され、前記概略直流成分の大きさ,前記概略パルス成分の大きさ、および前記概略パルス成分の幅の少なくとも1つを任意の範囲と分解能において変化させることができることを他の特徴とする。
【0010】
本発明は、前記光源の発する光の一部を受光する光量モニタ用検出器を備え、前記光量モニタ用検出器の出力信号を用いて前記駆動電源を制御することができることを他の特徴とする。
【0011】
本発明は、前記光源から発する光を減光する減光部を備え、減光した後に取り出すことができることを他の特徴とする。
【0012】
本発明は、前記光源装置において、少なくとも1つ以上の光ファイバを備え光ファイバから前記光を取り出すことを他の特徴とする。
【0013】
本発明は、前記複数の光ファイバから取り出される光の強度比を任意に変化させることができるよう構成することを他の特徴とする。
【0014】
本発明は、表面検査装置が前記光源装置を有することを他の特徴とする。
【0015】
本発明は、前記光源装置を用いて光検出器の入射光と出力信号強度の関係を計測して前記関係を前記表面検査装置に記憶させ、前記粒径算出部による粒径算出時に前記記憶させた情報を反映させることを他の特徴とする。
【0016】
本発明は、粒径算出部が光検出器の出力信号を欠陥の粒径に換算するための校正曲線を、前記光源装置を用いて作成することを他の特徴とする。
【0017】
本発明は、表面検査装置内部に光源装置を複数内蔵し、前記複数の光ファイバを複数の光検出器に対応付け、前記複数の光ファイバの出力端を前記複数の光検出器の近傍に配置することを他の特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によればより微小な欠陥を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1の基準光量発生用光源装置の構成を示す図。
【図2】実施例1の基準光量発生用光源装置から得られる光出力の時間変化波形を示す図。
【図3】実施例1の表面検査装置の構成を示す図。
【図4】実施例1の表面検査装置の光検出器の配置を示す図。
【図5】実施例1の表面検査装置が内蔵する基準光量発生用光源装置の構成を示す図。
【図6】実施例1の表面検査装置の各光検出器への基準光量発生用光源装置の出力光の導入方法を説明する図。
【図7】従来の校正曲線作成処理の流れを示すフローチャート。
【図8(a)】実施例1で基準光量データベースを作成する流れを示すフローチャート。
【図8(b)】実施例1で基準光量データベースを作成する流れを示すフローチャート。
【図9】実施例1で標準粒子の粒径系列にない粒径に対応するデータを追加する処理の流れを示すフローチャート。
【図10(a)】実施例1の校正曲線作成処理の流れを示すフローチャート。
【図10(b)】実施例1の校正曲線作成処理の流れを示すフローチャート。
【図11】実施例1で校正曲線作成時のGUIにおける入力パラメータを示す表。
【図12】一次元CCDにアレイ状の光ファイバを用いて基準光量発生用光源装置からの光を入射する場合の例。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の光源装置の第1の実施例を図1に示す。光源である発光素子1には発光ダイオード,半導体レーザ、または半導体レーザ励起固体レーザ等の小型で波長帯域の狭い光源を用いることが望ましい。前記発光素子1の発光波長は、後述の模擬すべき表面検査装置が用いている照明光の波長と概略等しいか、前記発光素子1の発光波長帯域が前記照明光の波長を含むか、または前記表面検査装置が使用する光検出器の分光感度特性が前記照明光の波長と前記発光素子1の発光波長とで概略等しくなるように選ぶことが望ましい。本実施例では後述の模擬すべき表面検査装置の照明光の波長が355nmである場合について述べるので、発光素子1に発光波長帯域の中心波長が365nmである紫外発光ダイオードを用いる。
【0022】
直流電流発生部2からの直流電流は直流電流増幅器21で増幅された後に、またパルス電流発生部3からのパルス電流はパルス電流増幅器31で増幅された後に、共に電流加算器4へ導かれて加算され、前記発光素子1に駆動電流として供給される。直流電流発生部2には直流電流設定値入力部6が付属しており、オペレータはここから前記発光素子1に与える直流駆動電流の量を入力することができる。パルス電流発生部3にはパルス電流設定値入力部7とパルス幅入力部8、およびパルス繰返し間隔入力部9が付属しており、オペレータはここから前記発光素子1に与えるパルス駆動電流の量とそのパルス幅、および繰り返し間隔時間を入力することができる。このときの前記発光素子1の発光強度の時間変化は概略図2に示すような波形となる。前記発光素子1からの発光は集光レンズ10で集められ、光ファイバ20の入射側端面に入射する。
【0023】
しかし、前記発光素子1に印加する前記直流駆動電流および前記パルス駆動電流の値を一定に保った状態で、前記発光素子1の印加電流対出力特性に経時的劣化が発生すると、本光源装置で光ファイバ20から取り出される光量は変動してしまう。
【0024】
このような変動を避けるために、本光源装置では、集光レンズと光ファイバ20の入射側端面の間に、ビームスプリッタ11を配置し、前記発光素子1からの発光の一部分を前記ビームスプリッタ11で分岐して光量モニタ用検出器14へ導く。前記光量モニタ用検出器14はシリコンフォトダイオードであり、入射光量に比例した出力信号を発生する。この出力信号は前記直流電流増幅器21と前記パルス電流増幅器31にフィードバックされ、各々の増幅率が微調整される。すなわち、前記直流電流設定値入力部6および前記パルス電流設定値入力部7への設定値が一定の条件のもとで前記光量モニタ用検出器14の出力信号が減少すると、前記直流電流増幅器21と前記パルス電流増幅器31の増幅率が増やす方向に微調整され、前記光量モニタ用検出器14の出力信号の強度を一定に保つよう働く。このフィードバック制御により、前記発光素子1に経時的劣化が発生した場合でも、その影響を抑制して、本光源装置で光ファイバ20から取り出される光量が変動しないよう安定化することができる。
【0025】
さらに、集光レンズと光ファイバ20の入射側端面の間にはNDフィルタ12が設置されている。前記NDフィルタ12は切替機構13により光路中に挿入したり外したりできる。光ファイバ20に入射する光量は発光素子1の駆動電流を減らすことにより小さくできるが、光量を安定かつ良好な直線性で減光できる駆動電流の下限には限界がある。そこで、この範囲を超えて光ファイバ20への入射光量を減らしたい場合には、NDフィルタ12を光路中に挿入し、NDフィルタ12による減光作用と駆動電流による減光作用を組み合わせて用いることができる。
【0026】
ここで、一般的な表面検査装置において、内蔵された光検出器が検出している被測定光の代表的な仕様について述べる。一般的な表面検査装置の構造は、例えば特開2008−020271号の図6に記載されたようなものである。このような表面検査装置の標準的な検査条件の一例では、回転ステージは4000回転/分で回転される。また、照明スポットの半導体ウェーハの半径方向での径(照度が照明スポット中心部の照度に対してe:自然対数の底の2乗分の1に低下する輪郭で定義)は10マイクロメートルである。そこで、被検査ウェーハ上の半径75mmの位置に異物が付着している場合(ここでは異物の大きさは1マイクロメートルより十分小さいものとする)、この異物が回転ステージの回転動作に伴って10マイクロメートル径の照明スポットを通過する時間は、 10/{2×π×75×1000×(2000/60)}=3.18×10-7(秒)で318ナノ秒となり、このような異物からは318ナノ秒のパルス幅を有するパルス状の発光が生じる。
【0027】
本実施例の光源装置では、パルス幅入力部での設定値をこれに合わせることで、同等の時間特性を有するパルス発光を発生することができる。また、欠陥によるパルス発光の強度は、欠陥の材質や粒径等に依存するが、欠陥の粒径が照明光の波長よりも十分小さい領域では、レーリー散乱と呼ばれる様式の散乱光を生じ、それよりも大きく波長程度の大きさの粒径近辺まではミー(Mie)散乱と呼ばれる様式の散乱光を生じる。レーリー散乱領域では、散乱光強度は粒径の6乗に比例するため、小さな粒径差が大きな散乱光量差となって現れる。例えば小さい方は20ナノメートルの粒子から大きい方は80ナノメートルの粒子までを検査対象にすると、光量の範囲は約1000倍ものダイナミックレンジとなる。前述のように、本実施例の光源装置では発光素子1からの発光量をNDフィルタと駆動電流の両方の組み合わせによって加減することが可能なため、駆動電流の大小によってのみ光量を加減する場合に比べて、本光源装置は発光量が不安定になることなくこのように大きなダイナミックレンジで変化する光量に対応させることができる。
【0028】
さらに表面検査装置では、このような欠陥が照明スポットを通過しない時でも、照明スポットにおいては被検査ウェーハ自体の微小な表面粗さ(マイクロラフネス)によって散乱光(以下、背景散乱光と呼ぶ)が常時発生している。一般的に良好な研磨仕上げを施された半導体ウェーハの場合、このような表面粗さは半導体ウェーハ面内のどの場所においてもほぼ一様である。そのため、この背景散乱光の強度の時間変化は概略直流成分となる。ただし、その強度の絶対値は表面仕上げ状態によって異なる。本実施例の光源装置では、直流電流設定値入力部6への入力値を変えることで、このように異なる表面粗さに起因して異なる強度を示す背景散乱光に対しても個別に合わせこむことが可能である。このように本実施例の光源装置では、(1)直流電流設定値入力部6への設定値,(2)パルス電流設定値入力部7への設定値とNDフィルタ12の切り替え,(3)パルス幅入力部8への設定値、の組み合わせによって、実際の表面検査装置において1個の欠陥が照明スポットを通過する際に光検出器に入射する被測定光と同等の光を発生させることが可能になる。さらに本光源装置では、(4)パルス繰返し間隔入力部9の設定値、に繰返し周期時間を設定することにより、1個の欠陥から発生する単発の発光現象を一定時間間隔で繰返し発生させることができる。
【0029】
本実施例の光源装置は、表面検査装置の内部に内蔵させて一定の光量を発生する基準光量発生装置として利用することが可能である。
【0030】
本実施例の光源装置を内蔵させた表面検査装置の構成図を図3に示す。図3の表面検査装置は、特開2008−020271号の図6に記載の表面検査装置に、本発明の光源装置を内蔵させ、前記光源装置の制御機能を付加したものであるので、本発明の光源装置およびその制御に関る部分以外の詳細な説明は省略する。
【0031】
表面検査装置では、被検査物体表面上の欠陥から発生する散乱光の立体的な角度分布、すなわち異なる方位・仰角へ進行する散乱光の成分を個別に捉えるために複数の光検出器を備えるのが一般的であり、本実施例の表面検査装置では、図4の鳥瞰図に示すように光電子増倍管から成る光検出器50を10個備えている。そこで本実施例では、前記光検出器50の数に対応させて、10個の本発明の基準光量発生用光源装置100を前記表面検査装置内に内蔵させる。前記各基準光量発生用光源装置100は第1の実施例に記述したものと下記の点を除いて同等であるため、異なる部分のみ詳述する。
(イ)図5に示すように、前記直流電流設定値入力部6,前記パルス電流設定値入力部7,前記パルス幅入力部8、および前記パルス繰返し間隔入力部9に代わり、直流電流設定インタフェース61,パルス電流設定インタフェース71,パルス幅設定インタフェース81、およびパルス発生タイミング信号インタフェース91がそれぞれ付属しており、前記表面検査装置内蔵の制御用マイクロコンピュータ40に接続され、前記制御用マイクロコンピュータ40からの指令によって前記発光素子1に与える直流駆動電流の量,パルス駆動電流の量とそのパルス幅、およびパルス駆動電流の発生タイミングを制御することができる。
(ロ)前記切替機構13は、前記制御用マイクロコンピュータ40からの指令によって、前記NDフィルタ12を光路中に挿入したり外したりする。
(ハ)図6の側面図に示すように、光ファイバ20の出射側端面は、各基準光量発生用光源装置100に対応付けられた1個の前記光検出器50の受光面近傍に、実際の被検査ウェーハの検査時に前記半導体ウェーハ上の欠陥から発生する散乱光を前記光検出器50が検出するのに妨げとならず、かつ光ファイバ20の出射側端面から取り出される光が有効に前記光検出器50の受光面に当たるよう配置されている。
【0032】
ここで従来は、検査時に光検出器からの出力信号を欠陥の粒径に換算するための校正曲線は実際の検査前に予め下記のような作業を行うことにより作成されていた。図7に従来の校正曲線作成処理の流れを示すフローチャートを示す。
Step 1:オペレータは検査開始前に、検査対象の半導体ウェーハと同等の表面状態(成膜,表面粗さなど)を有し、清浄な半導体ウェーハ上に、粒径が既知の標準粒子(一般にPSL:ポリスチレンラテックス球が用いられる)を塗布した校正用ウェーハを準備する。通常、検査時に検出することが必要とされる粒径範囲で、何段階か粒径の異なる標準粒子を塗布したウェーハを使用する。
Step 2:オペレータは本実施例の表面検査装置の検査条件を、実際の被検査対象ウェーハに対して行う検査の検査条件に合わせて設定する。
Step 3:オペレータは前記校正用ウェーハの検査を開始させる。
Step 4:表面検査装置は検査を実施し、前記校正用ウェーハ上に塗布された各標準粒子の大きさと、その標準粒子に対応して光検出器から得られる信号強度との間の関係を記録する。
Step 5:表面検査装置はStep 4の検査終了後、Step 4で記録された、各標準粒子の大きさと、その標準粒子に対応して光検出器から得られる信号強度との間の関係から統計計算を行い、校正曲線を作成する。
【0033】
本実施例の表面検査装置では、従来の校正用ウェーハにより校正曲線を作成する機能に加えて、内蔵した前記基準光量発生用光源装置100を用いて校正曲線を作成する機能を備える。この機能により校正用ウェーハを用いないで校正曲線を作成することが可能になるため、このような不都合を解決することができる。この機能とその動作を下記に詳述する。
【0034】
本実施例の表面検査装置は校正曲線作成ソフトウェアを備えており、このソフトウェアは、基準光量データベース,校正用ウェーハデータ,標準粒子データテーブル,標準粒子カウンタ,校正曲線作成用データテーブルの各格納領域を備えている。
【0035】
まず、本実施例の表面検査装置は下記の処理を行うことで、基準光量発生用光源装置に所望の光量を発生させるために必要なパラメータ値を格納した基準光量データベースを作成する。図8に基準光量データベースを作成する流れを示すフローチャートを示す。
【0036】
なお下記の処理に先立ち、オペレータは検査対象の半導体ウェーハと同等の表面状態(成膜,表面粗さなど)を有し、清浄な半導体ウェーハ上の予め定めた半径(例えば75mm)の周上に、基準光量データベースにデータを登録すべき粒径の標準粒子(一般にPSL:ポリスチレンラテックス球を用いる)を塗布した校正用ウェーハを準備し、本実施例の表面検査装置の検査条件(前記校正用ウェーハを照明する照明スポットの径および照度を含む)を、実際の被検査対象ウェーハに対して行う検査の検査条件に合わせて設定した後に、前記校正用ウェーハの検査を開始させるものとする。
Step 1:オペレータが入力した、「塗布された前記標準粒子の粒径値」を受け取る。Step 2:前記10個の各光検出器50に、検査用光源からの光によって前記校正用ウェーハから発生する光のみが受光されるようにし、前記10個の基準光量発生用光源装100の出力光は前記各光検出器50に入射しないようにする。
Step 3:検査を実施し、前記校正用ウェーハ上に塗布された標準粒子に対応して前記各光検出器50ごとに得られた信号強度を個別に記録する。信号強度としては、各光検出器から得られる信号のうちで、時間変化が概略直流成分である前記背景散乱光に対応する信号強度と、時間変化がパルス状である標準粒子からの散乱光に対応する信号強度の両方を記録する。
Step 4:次に、前記各光検出器50に、前記各基準光量発生用光源装置100の出力光のみが受光されるようにし、前記検査用光源からの光によって前記校正用ウェーハから発生する光は前記光検出器50に入射しないようにする。
Step 5:前記基準光量発生用光源装置100のパルス幅設定を、前記標準粒子を塗布した位置の半径、およびStep 3の検査で使用した回転ステージの回転速度と照明スポットの径から下記の式で計算される時間に設定する。
【0037】
照明スポットの径 /(2×π×半径×回転速度)
Step 6:前記10個の基準光量発生用光源装置100の直流電流設定、およびパルス電流設定に、各々予め定めた初期値を与える。この時点で、前記各基準光量発生用光源装置100からは前記各直流電流設定値に対応した直流成分の光出力が継続的に発生される。
Step 7:前記基準光量発生用光源装置100にパルス発生タイミング信号を与える。これにより前記基準光量発生用光源装置100からの出力光には、前記の継続的な直流成分に加えてパルス成分が重畳されるので、この出力光に対応して前記各光検出器50から得られる信号強度を個別に記録する。この際Step 3と同様に、直流成分対応する信号強度とパルス成分に対応する信号強度の両方を記録する。
Step 8:Step 7で記録された各信号強度が、Step 3で記録された各信号強度に等しくなるまで、前記10個の各基準光量発生用光源装置の直流電流設定値およびパルス電流設定値を調整してStep 7を繰り返す。
Step 9:Step 8で最終的に決定された各直流電流値を前記基準光量データベース内の各光検出器50に対応した場所に登録する。
Step 10:Step 1で受け取った粒径値とStep 8で最終的に決定された各パルス電流値を対にして、前記基準光量データベース内の各光検出器50に対応した場所に登録する。
【0038】
前記基準光量データベースにデータを登録すべき粒径が複数ある場合には、必要な回数だけ上記の作業を校正用ウェーハの準備から繰り返せば良い。
【0039】
標準粒子の粒径系列にない値の粒径についても、その粒径の標準粒子が存在したと仮定したときにその標準粒子が発生するであろう散乱光の光量に対応する各パルス電流値In(d)を次の手順で計算して求め、前記基準光量データベースに追加することができる。図9に標準粒子の粒径系列にない粒径に対応するデータを追加する処理の流れを示すフローチャートを示す。
Step 1:前記基準光量データベースに追加すべき標準粒子の粒径をdとする。
Step 2:In(d)を精度良く求めるために、前記基準光量データベースにデータが格納されている粒径の中でdに最も近い粒径をd′とし、その標準粒子に対応する、第n番目の光検出器(n=1,2,・・,10)に対応するパルス電流値をIn(d′)とする。
Step 3:dが検査時に使用する波長の概略1/6より小さい場合は、レーリー散乱領域となる。レーリー散乱領域では、欠陥で散乱される光の光量は欠陥の粒径の約6乗に比例するため、下式により粒径dの標準粒子が発生するであろう散乱光の光量に対応する各パルス電流値In(d)を求める。
【0040】
In(d)=In(d′)×(d/d′)6Step 4:dがStep 3の判定基準より大きい場合は、ミー散乱領域となるため
、Step 5以降の処理により粒径dの標準粒子が発生するであろう散乱光の光量に対応する各パルス電流値In(d)を求める。
Step 5:ミー散乱理論に基づくシミュレーション計算を行い、第n番目の光検出器において集光及び検出される小立体角範囲に粒径dの標準粒子が発生するであろう散乱光の光量Sn(d)と、粒径d′の標準粒子が発生するであろう散乱光の光量Sn(d′)を求める。なお両者の計算時に、粒径以外の条件は全て同等として計算するものとする。Step 6:下式により各パルス電流値In(d)を求める。
【0041】
In(d)=In(d′)×(Sn(d)/Sn(d′))
あるいは、もし予め被検査ウェーハ上の照明スポットから前記各光検出器に至る光路にある各集光光学系の透過効率ηnが分かっている場合には、前記Sn(d)にηnを乗じた光量、すなわちηn×Sn(d)を前記光源装置から取り出せるようにしたときの前記光源装置のパルス電流をもってIn(d)としても良い。
【0042】
次に、本実施例の表面検査装置は図10のフローチャートに示す処理を行うことで、前記基準光量発生用光源装置100を用いて校正曲線を作成することができる。この校正曲線作成に際して、オペレータは前記表面検査装置に対して予め図11に示すパラメータ群をGUI等を通して入力しておくものとする。
【0043】
また、前記校正用ウェーハデータにはそれら入力されたパラメータ群に対応して、(1)校正用ウェーハが発生する背景散乱光のうち各光検出器50において集光・検出される光の強度に相当する光量を前記各基準光量発生用光源装置100に発生せさせるために必要な各直流電流値が予め格納されているものとする。
【0044】
また標準粒子データテーブルには(2)標準粒子の粒径(3)(2)の粒径の標準粒子が発生する散乱光のうち各光検出器50において集光・検出される光の強度に相当する光量を前記各基準光量発生用光源装置100に発生せさせるために必要な各パルス電流値のデータ対が、校正曲線を作成するのに必要な粒径の種類の数だけ予め格納されているものとする。
【0045】
なお、(1),(2)、および(3)の各数値は、前述のようにして予め作成された前記標準粒子データベース内のデータを参照して得るものとする。
Step 1:各光検出器50の光電子増倍管の印加電圧,信号増幅器のゲイン、など各光検出器50の出力信号に関係するパラメータを、作成しようとしている校正曲線が対応付けられている検査条件に従って出力信号が飽和せず、かつ、十分な出力信号が得られるように適正な値に設定する。
Step 2:前記各光検出器50に、前記各基準光量発生用光源装置100の出力光のみが受光されるようにし、前記検査用光源によって前記校正用ウェーハから発生する光は前記光検出器50に入射しないようにする。
Step 3:前記各基準光量発生用光源装置100のパルス幅設定を、作成しようとしている校正曲線が対応付けられている検査条件で使用される回転ステージの回転速度と照明スポットの径、および校正用ウェーハの作成時に前記標準粒子を塗布する位置の半径の値から下記の式で計算される時間に設定する。
【0046】
照明スポットの径 /(2×π×半径×回転速度)
Step 4:校正用ウェーハデータに格納されている、各光検出器50に対応する直流電流値を読み出す。
Step 5:標準粒子カウンタ(以下、Mと表記)の値を1に設定する。
Step 6:前記標準粒子データテーブル中にM番目のデータセットとして格納されている、粒径値,各光検出器50に対応する直流電流値およびパルス電流値を読み出す。
Step 7:前記各基準光量発生用光源装置100にStep 4で読み出した直流電流値とStep 6で読み出したパルス電流値を設定し、それらの値に対応する光を発生させる。
Step 8:Step 7の発光を各光検出器50で検出し、その時に得られる各信号強度値(直流成分に対応する信号強度とパルス成分に対応する信号強度の両方)とStep 6で読み出した粒径値を、各光検出器50ごとに個別に前記校正曲線作成用データテーブルのM番目のデータセットとして格納する。
Step 9:標準粒子データテーブル内の全データについて処理が終わるまで、Mの値を1ずつ増やしながらStep 6〜Step 8の処理を繰り返す。
Step 10:前記校正曲線作成用データテーブルに格納されたデータセットから最小二乗法等の統計演算を行うことにより、校正曲線を作成する。
【0047】
このように本実施例の表面検査装置では校正用ウェーハを使用することなしに校正曲線を作成することができる。
【0048】
また、複数の前記基準光量発生用光源装置で出力光の光量を、光量の絶対値を予めW(ワット)または単位時間当たりの光子数、またはこれらの誘導単位系を用いて測定できる光量計で検定し、直流電流の設定値,パルス電流の設定値、およびパルス幅の設定値が所定の条件のもとでは前記複数の本光源装置から全て等しい強度の出力光が取り出されるよう各光源装置を調整すれば、各光源装置を内蔵した複数の表面検査装置の間で校正曲線作成が等しい条件で行われるので、装置間の感度特性差を抑制するのに有利に働くことは言うまでもない。
【0049】
さらに別の効果として、前記各光検出器の出力信号の大きさをW(ワット)または単位時間当たりの光子数、またはそれらの誘導単位系に換算することが可能になるので、被検査物体から発生する散乱光の強度を、光量の絶対値で表示することができるようになる。なお、本実施例の基準光量発生用光源装置100は、光検出器に基準光量発生用光源装置からの光を入射させることができれば、本実施例以外の様々な検査装置に適用可能である。
【0050】
例えば、基準光量発生用光源装置からの光を発する光ファイバ20をアレイ状にすれば、CCDアレイやTDIの各画素へ基準光量発生用光源装置からの光を入射することができる。
【0051】
この時、アレイ状にした光ファイバ20の数とCCDアレイやTDIの画素数とは必ずしも一致していなくても良い。
【0052】
図12に一次元CCD250にアレイ状の光ファイバ20を用いて基準光量発生用光源装置からの光240を入射する場合の例を示す。
【実施例2】
【0053】
次に実施例2を説明する。実施例2では、図1の光源装置からの光が光検出器50へ入射した際の出力信号をオシロスコープ等で観測することにより、表面検査装置に組み込む前記光検出器50の良否判定を、表面検査装置の組み立て前に行うことが可能になる。
【0054】
この際、前述のように本光源装置の(1)直流電流設定値入力部6への設定値,(2)パルス電流設定値入力部7への設定値とNDフィルタ12の切り替え,(3)パルス幅入力部8への設定値,(4)パルス繰返し間隔入力部9の設定値、には、表面検査装置を用いた実際の検査条件に相当する値を設定しておく。また、前記光検出器50の出力信号を観測するに当たって、必要であれば適宜増幅や周波数フィルタリングを施す。これらの作業により、実際に表面検査装置を運転したときの状態を模擬した光入力に対して前記光検出器50の良否判定を評価することが可能になる。
【0055】
本光源装置を用いれば、良否判定の試験項目として、1.パルス発光に対する応答直線性(パルス発光の強度を一定の割合で増やした時、出力がそれに対応した量だけ増えるかという特性を表す)2.パルス発光に対する飽和特性(パルス発光の強度がいくらになると飽和するかという特性を表す)といったパルス発光に関する項目を含めることができる。
【0056】
本光源装置は、一般の表面検査装置に比べて少ない部品点数で構成され、コスト的に安価で製作することが可能である。そのため、複数台の製作に好適である。
【0057】
ただし、「複数製作した本光源装置の間で、前記直流電流設定値入力部6への設定値、および前記パルス電流設定値入力部7への設定値を同じにしても、前記光ファイバ20から出力される光量に差がある」ということがあると、「異なる光源装置を用いて光検出器を評価すると異なる判定結果が得られる」という可能性がある。
【0058】
本実施例の光源装置ではこのような可能性を避けるために、前記直流電流設定値入力部6への設定値,前記パルス電流設定値入力部7への設定値、および前記パルス幅入力部8への設定値を所定の条件にして本光源装置を動作させたときに、前記光ファイバ20の出射側端面から取り出される光量を、光量の絶対値を予めW(ワット)または単位時間当たりの光子数、またはそれらの誘導単位系を用いて測定できる光量計で検定し、前記直流電流設定値入力部6への設定値,前記パルス電流設定値入力部7への設定値、および前記パルス幅入力部8への設定値を前記所定の条件のもとでは、複数の本光源装置は全て等しい強度の出力光が取り出されるよう、前記直流電流増幅器21と前記パルス電流増幅器31の増幅率を調整するようにする。この手続きにより、本光源装置を複数台用いる場合でも、「異なる光源装置を用いて光検出器を評価すると異なる判定結果が得られる」という可能性を低く抑えることが可能となる。
【0059】
なお、本実施例の光源装置では、模擬すべき対象となる表面検査装置において被検査物体表面で散乱,回折、または反射され、光検出器に入射する光の波長,光量、および光量の時間変化を模擬した光信号を発生するよう構成したが、例えば評価すべき光検出器50の感度が偏光依存性を有するような場合には、上記の各項目に加えて、偏光状態の特徴も模擬した光信号を発生するようにすることが望ましい。
【符号の説明】
【0060】
1 発光素子
2 直流電流発生部
3 パルス電流発生部
4 電流加算器
6 直流電流設定値入力部
7 パルス電流設定値入力部
8 パルス幅入力部
9 パルス繰返し間隔入力部
10 集光レンズ
11 ビームスプリッタ
12 NDフィルタ
13 切替機構
14 光量モニタ用検出器
20 光ファイバ
21 直流電流増幅器
31 パルス電流増幅器
40 制御用マイクロコンピュータ
41 基準光量発生用光源装置制御インタフェース
50 光検出器
61 直流電流設定インタフェース
71 パルス電流設定インタフェース
81 パルス幅設定インタフェース
91 パルス発生タイミング信号インタフェース
100 基準光量発生用光源装置
101 欠陥
111 光源
126 増幅器
130 A/D変換器
140 サンプリング制御部
150 サンプリングデータ平均化部
200 半導体ウェーハ
201 チャック
202 被検査物体移動ステージ
203 回転ステージ
204 並進ステージ
205 Zステージ
206 検査座標検出部
208 欠陥判定部
210 照明・検出光学系
220 粒径算出部
230 欠陥座標検出部
240 基準光量発生装置からの光
250 一次元CCD

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に光を供給する第1の照明光学系と、
前記試料からの光を検出する検出光学系と、
所望寸法の欠陥から発生する光の時間特性を模擬した光を前記検出光学系へ供給する第2の照明光学系と、
前記検出光学系が前記模擬した光を検出した結果を使用して、検査の際に前記検出光学系の検出結果を欠陥の寸法へ換算するための関数を得る処理部と、を有することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置において、
前記模擬した光は、前記所望寸法の欠陥から発生するパルス成分を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置において、
前記模擬した光はレーリー散乱領域の光を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置において、
前記第2の照明光学系は、前記模擬した光を前記レーリー散乱領域からミー散乱領域まで変更することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の検査装置において、
前記模擬した光は、検査すべき試料の表面状態に応じた直流成分を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検査装置において、
前記第2の照明光学系は、
前記模擬した光を発生する発光素子と、
前記発光素子を駆動するためのパルス電流を発生するパルス電流発生系と、
前記発光素子を駆動するための直流電流を発生する直流電流発生系と、
前記発光素子からの光の一部を検出する検出系と、を有し、
前記パルス電流発生系、及び前記直流電流発生系は前記検出系の出力が所望の値となるよう前記パルス電流、及び前記直流電流を変更することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項5に記載の検査装置において、
前記第2の照明光学系の光路に出し入れ可能に配置された減光フィルタを有することを特徴とする検査装置。
【請求項8】
請求項1に記載の検査装置において、
前記模擬した光はレーリー散乱領域の光を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載の検査装置において、
前記第2の照明光学系は、前記模擬した光を前記レーリー散乱領域からミー散乱領域まで変更することを特徴とする検査装置。
【請求項10】
請求項2に記載の検査装置において、
前記模擬した光は、検査すべき試料の表面状態に応じた直流成分を含むことを特徴とする検査装置。
【請求項11】
所望寸法の欠陥から発生する光の時間特性を模擬した光を試料からの光を検出する検出光学系へ供給し、
前記検出光学系が前記模擬した光を検出した結果を使用して、検査の際に前記検出光学系の検出結果を欠陥の寸法へ換算するための関数を得ることを特徴とする検査装置の調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載の調整方法において、
前記模擬した光は、前記所望寸法の欠陥から発生するパルス成分を含むことを特徴とする調整方法。
【請求項13】
請求項12に記載の検査装置において、
前記模擬した光はレーリー散乱領域の光を含むことを特徴とする調整方法。
【請求項14】
請求項13に記載の検査装置において、
前記模擬した光を前記レーリー散乱領域からミー散乱領域まで変更することを特徴とする調整方法。
【請求項15】
請求項14に記載の検査装置において、
前記模擬した光は、検査すべき試料の表面状態に応じた直流成分を含むことを特徴とする調整方法。
【請求項16】
請求項11に記載の検査装置において、
前記模擬した光はレーリー散乱領域の光を含むことを特徴とする調整方法。
【請求項17】
請求項16に記載の検査装置において、
前記模擬した光を前記レーリー散乱領域からミー散乱領域まで変更することを特徴とする調整方法。
【請求項18】
請求項12に記載の検査装置において、
前記模擬した光は、検査すべき試料の表面状態に応じた直流成分を含むことを特徴とする調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10(a)】
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【図10(b)】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−57680(P2013−57680A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251769(P2012−251769)
【出願日】平成24年11月16日(2012.11.16)
【分割の表示】特願2008−204969(P2008−204969)の分割
【原出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】