説明

検査装置、検査方法、検査プログラムおよび検査システム

【課題】外乱が現れているX線撮影画像においても、被測定物に生じている亀裂の位置やその深さを精度良く検出することを目的とする。
【解決手段】本発明は、被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出部11と、注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定部12と、特徴量に応じて、注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定部13とを具備する検査装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を用いて被測定物の検査を行う検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物をX線撮影し、この撮影画像から被測定物に生じた亀裂やその深さを検出する技術が知られている。
例えば、特許文献1には、ワーク開裂溝の残肉厚さを検査する装置が開示されている。上記特許文献1には、被測定物であるワークをX線撮影し、このX線撮影画像から溝部の濃淡を求め、この濃淡の情報に基づいて溝の深さを判定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−114628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、ガスタービンなどに用いられるボイラチューブの肉厚検査においては、ボイラチューブの内壁にリブと呼ばれる補強部材が螺旋状に形成されている。このため、上述した特許文献1の発明を単にボイラチューブの肉厚検査に適用したのでは、リブが外乱としてX線撮影画像に表れてしまい、ボイラチューブに生じている亀裂の位置、深さを精度良く測定することができないという問題があった。より具体的には、リブがあるところと無いところとで、X線撮影画像内における背景の輝度が異なることから、リブがあるところに生じた亀裂と、リブが無いところに生じた亀裂とに輝度の統一性が無く、亀裂の位置を検出することが困難であり、また、その深さを精度良く計測することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、外乱が現れているX線撮影画像においても、被測定物に生じている亀裂の位置やその深さを精度良く検出することのできる検査装置、検査方法、検査プログラム、および検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出手段と、前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定手段と、前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定手段とを具備する検査装置を提供する。
【0006】
このような構成によれば、注目部位抽出手段により被測定物のX線撮影画像から注目部位が抽出され、この注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて注目部位の特徴量が特徴量決定手段によって決定されることとなるので、特徴量は常に注目部位とその近傍領域の輝度とを考慮して求められることとなる。従って、X線撮影画像内で背景の輝度が一定でない場合にも、その背景の輝度を考慮した特徴量を求めることが可能となる。よって、この特徴量を用いて注目部位の亀裂深さを求めることにより、信頼度の高い亀裂深さを求めることが可能となる。
【0007】
上記検査装置において、前記注目部位抽出手段は、亀裂が発生していると推定される領域を候補領域として抽出する第1の抽出手段と、前記候補領域において、輝度が閾値以下の領域を注目部位として抽出する第2の抽出手段とを具備することとしても良い。
【0008】
このような構成によれば、第1の抽出手段によって亀裂が発生していると推定される領域が候補領域として強調され、第2の抽出手段によって、候補領域において輝度が閾値以下の領域が注目部位として抽出されるので、効率的に注目部位を抽出することが可能となる。
【0009】
上記検査装置において、前記被測定物がボイラチューブである場合は、前記第1の抽出手段を、輝度の低い画素が前記ボイラチューブの周方向に連続している領域を前記候補領域として抽出するフィルタとしても良い。
【0010】
本願の発明者らは、ボイラチューブにおいて、周方向に亀裂が発生しやすいことを発見し、上記第1の抽出手段として、輝度の低い画素が周方向に連続している領域を候補領域として抽出するフィルタを採用した。これにより、周方向に発生している亀裂部分を候補領域として効率よく抽出することが可能となる。また、亀裂部位に重畳される背景の輝度状況に関係なく、亀裂部位を候補領域として効果的に抽出することが可能となる。
上記フィルタとしては、例えば、縦長の構造要素によるモルフォロジーフィルタや、横長の微分フィルタなどを採用することとしても良い。
【0011】
上記検査装置において、前記被測定物がボイラチューブである場合は、前記第1の抽出手段を、横長楕円の領域において内部に行くほど輝度が低くなる領域を前記候補領域として抽出するフィルタとしても良い。
【0012】
本願の発明者らは、ボイラチューブにおいて、周方向に亀裂が発生しやすいことを発見し、上記第1の抽出手段として、横長楕円の領域において内部に行くほど輝度が低くなる領域を前記候補領域として抽出するフィルタを採用した。これにより、周方向に発生している亀裂部位、より具体的には、中心部ほど亀裂の深さが深くなっている亀裂部位を候補領域として効率よく抽出することが可能となる。また、亀裂部位に重畳される背景の輝度状況に関係なく、亀裂部位を候補領域として効果的に抽出することが可能となる。
上記フィルタとしては、例えば、アイリスフィルタを変更し、勾配フィルタマスクとアイリスフィルタマスクの形状を横長楕円とした横長アイリスフィルタを採用することとしても良い。このように、勾配フィルタマスクとアイリスフィルタマスクの形状を横長楕円とした横長アイリスフィルタを採用することにより、勾配の特徴までも考慮して候補領域を強調させることができる。
【0013】
上記検査装置において、前記第2の抽出手段は、前記候補領域において、輝度が予め設定されている固定閾値以下の領域を前記注目部位として抽出することとしても良い。
【0014】
候補領域において、輝度が予め設定されている固定閾値以下の領域を注目部位として抽出するので、注目部位を効率的に抽出することが可能となる。
【0015】
上記検査装置において、前記第2の抽出手段は、前記候補領域において、輝度が前記候補領域全体の輝度から統計的に算出される適応型閾値以下の領域を前記注目部位として抽出することとしても良い。
【0016】
候補領域において、輝度が前記候補領域全体の輝度から統計的に算出される適応型閾値以下の領域を注目部位として抽出するので、注目部位を効率的に抽出することができるとともに、注目部位に重畳されている背景の輝度が局所的に異なっている場合でも、背景の輝度に影響されることなく、注目部位を抽出することが可能となる。
【0017】
上記検査装置において、前記特徴量決定手段は、前記注目部位の輝度と前記近傍領域の輝度の差分を特徴量として決定することとしても良い。
【0018】
注目部位の輝度と近傍領域の輝度の差分を特徴量として決定するので、X線撮影画像内で背景の輝度が一定でない場合にも、背景の輝度変化の影響を排除し、亀裂の深さに対応した特徴量を求めることが可能となる。これにより、亀裂深さの検出精度を向上させることが可能となる。
【0019】
上記検査装置において、前記被測定物が管状であり、その内壁には螺旋構造のリブが形成されていた場合において、前記特徴量決定手段は、前記X線撮影画像を分析することにより、前記管壁を平面状に展開した展開画像を作成し、該展開画像において、リブが重なっている部位、リブがある部位、リブがない部位に区分し、区分した各部位に対応して予め設定されている基準輝度と前記注目部位の輝度とに基づいて前記注目部位の特徴量を算出することとしても良い。
【0020】
被測定物が管状であり、さらにその内壁に螺旋構造のリブが形成されている場合には、リブがある部分とない部分、また、リブが交差する部分とで、注目部位の背景の輝度が異なることとなる。この場合において、上記構成によれば、X線撮影画像を分析することにより、管壁を平面状に展開した展開画像を作成し、該展開画像において、リブが重なっている部位、リブがある部位、リブがない部位に区分し、区分した各部位に対応して予め設定されている基準輝度と注目部位の輝度とに基づいて注目部位の特徴量を算出するので、リブの影響による背景の輝度変化を排除することができ、亀裂深さに応じた特徴量を求めることが可能となる。これにより、亀裂深さの検出精度を向上させることが可能となる。
【0021】
上記検査装置において、前記被測定物が管状である場合に、前記亀裂深さ決定手段は、前記被測定物の周方向における前記注目部位の位置に基づいて、前記注目部位の亀裂深さを決定することとしても良い。
【0022】
被測定物が管状である場合、管の端部か中央部分かに応じて肉厚が異なることとなる。上記構成によれば、注目部位が管の端部に位置するか、あるいは中央部分に位置するかによって注目部位の亀裂深さを決定するので、管に発生した亀裂の深さ検出精度を更に向上させることができる。
【0023】
上記検査装置において、前記亀裂深さ決定手段は、前記注目部位の形状を考慮して前記注目部位の亀裂深さを決定することとしても良い。
【0024】
注目部位の輝度だけでなく、注目部位の形状をも考慮して亀裂深さを求めることとしたので、注目部位の亀裂深さの検出精度を更に向上させることが可能となる。
【0025】
上記検査装置は、ボイラチューブの肉厚検査に利用されて好適なものである。
【0026】
本発明は、被測定物に対してX線を照射するX線照射手段と、前記被測定物を介して前記X線照射装置と反対側に配置され、前記被測定物のX線情報を蓄積する放射線測定手段と、前記放射線測定手段に蓄積されたX線情報を読み出し、画像データを形成する読取処理手段と、読取処理手段により処理された前記被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出手段と、前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定手段と、前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定手段とを具備する検査システムを提供する。
【0027】
本発明は、被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出過程と、前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定過程と、前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定過程とを具備する検査方法を提供する。
【0028】
本発明は、被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出処理と、前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定処理と、前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定処理とをコンピュータに実行させるための検査プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、外乱が現れているX線撮影画像においても、被測定物に生じている亀裂の位置やその深さを精度良く検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明に係る検査システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態では、被測定物として、管内部にリブと呼ばれる補強部材が形成されているボイラチューブを例に挙げ、このボイラチューブに生じた亀裂や腐食の位置ならびにその深さを計測する場合について説明する。なお、検査対象となるチューブには、ベア管と呼ばれるリブのない管もある。その場合には,本出願のリブ認識やリブ影響の補正などの部分が不要になるだけであり、その他の基本的な処理はベア管でも同様に有効である。
【0031】
図1は、本実施形態に係る検査システムの概略構成を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る検査システムは、X線撮影を用いて被測定物の検査を行うものである。近年、X線撮影写真に代わる新しいデジタルX線画像システムとして、イメージングプレート(Imaging Plate)の開発が進められている。このイメージングプレートとは、従来の写真フィルムに代わるX線情報記録媒体であり、写真フィルムに比べて、放射線に対する感度が高く、また、撮像した情報を消去することが可能であるため、繰り返し使用することができるという利点を有する。また、デジタル信号としてX線情報を取り出すことができるので、コンピュータによる処理がしやすいなどの利点がある。本実施形態では、このイメージングプレートを用いてX線撮影画像を作成し、このX線撮影画像を用いて、主に画像処理によって被測定物の検査を行うものである。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る検査システムは、被測定物であるボイラチューブ1に対してX線を照射するX線照射装置(X線照射手段)2と、ボイラチューブ1を介してX線照射装置2と反対側に配置され、ボイラチューブ1のX線情報を蓄積するイメージングプレート(放射線測定手段)3と、イメージングプレート3に蓄積されたX線情報を読み出し、画像データを形成するCR(Computed Radiography)システム4と、CRシステム4によって作成されたボイラチューブ1のX線撮影画像を用いてボイラチューブ1の腐食・亀裂検査を行う検査装置5と、検査装置5による検査結果を表示する表示装置6とを備えている。
【0033】
上記CRシステム4は、イメージングプレート3に蓄積されたX線情報を画像として取り出すイメージングシステムであり、近年開発が進められている公知のシステムである。具体的には、CRシステム4は、X線画像情報をイメージングプレート3が受けたX線量に比例する発光として読み取り、量子化し、ヒストグラム(頻度曲線)を生成することにより、ボイラチューブ1のX線撮影画像を作成する。
【0034】
検査装置5は、本発明の主たる特徴部分であり、図2に示すように、注目部位を抽出する注目部位抽出部(注目部位抽出手段)11と、注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定部(特徴量決定手段)12と、特徴量に応じて注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定部(亀裂深さ決定手段)13と、ボイラチューブの亀裂の位置、およびその深さを視覚化した画像データを作成し、表示装置に表示する表示制御部14とを備えている。
【0035】
上記検査装置5は、例えば、CPU(中央演算装置)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータシステムを内蔵している。上述の各部の機能を実現するための一連の処理手順は、プログラムの形式でROM等のコンピュータ読取可能な記録媒体に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上記注目部位抽出部11、特徴量決定部12、亀裂深さ決定部13、表示制御部14などの機能が実現される。
【0036】
上記注目部位抽出部11は、亀裂が発生していると推定される領域を候補領域として抽出する第1の抽出部(第1の抽出手段)16と、候補領域において、強調画像の成分の閾値以上を注目部位として抽出する第2の抽出部(第2の抽出手段)17とを備えている。
ここで、後述する注目部位抽出部11によって実現される処理は、ボイラチューブの軸方向が画像の縦方向として入力されることを前提としているが、仮にボイラチューブが傾いている場合でも、注目部位抽出部11の前処理として、ボイラチューブ画像の傾き補正処理を追加することで、様々な傾きのボイラチューブに対応可能となる。その具体的な処理方法としては、例えば、ソーベルフィルタ等の微分フィルタにより管外部もしくは管内部の境界のエッジを強調し、固定閾値や適応閾値により2値化する。そして、2値化したエッジを用いて、ハフ変換や最小二乗法により管の傾きを抽出し、傾き補正を行う。
【0037】
上記第1の抽出部16としては、例えば、輝度の低い画素がボイラチューブの周方向に連続している領域を候補領域として抽出するフィルタを採用することができる。
このような特徴を有するフィルタとしては、例えば、縦長の構造要素によるモルフォロジーフィルタや、横長の微分フィルタなどを採用することが可能である。
モロフォルジーフィルタは、対象図形に構造要素を用いて非線形演算を行うものであり、Dilation、Erosion、Closing、Openingの4つの基本演算がある。本実施形態では、構造要素として縦に連続する複数の画素を用いて、ClosingまたはOpeningの基本演算を行った画像と、原画像の差分画像を作成することにより、縦方向に構造要素の画素数よりも、短い周期で輝度が変化している領域の強調を行うこととしている。このような処理により、構造要素よりも周期が短い(幅が狭い)亀裂を抽出可能となる。
【0038】
微分フィルタは、明るさが変化している箇所を輪郭として抽出するフィルタとして知られているが、本実施形態では、横長の微分フィルタを用いることにより、縦方向に輝度変化が水平方向に連続する領域を抽出することとしている。これにより、輝度が低下する亀裂の画素と亀裂でない周囲の画素との境界で、かつ横方向(ボイラチューブの周方向)に亀裂が連続する領域をうまく検出することができ、その結果、亀裂部分を候補領域としてエッジ抽出することが可能となる。すなわち、このフィルタを用いることで、リブの境界で輝度が変化する領域を強調せずに、亀裂だけをうまく強調することが可能となる。
【0039】
また、上記第1の抽出部16の他の態様としては、例えば、横長楕円の領域において内部に行くほど輝度が低くなる領域を候補領域として抽出するフィルタを採用することが可能である。
このような特徴を有するフィルタとしては、例えば、アイリスフィルタを変更し、アイリスフィルタの形状を横長楕円とした横長アイリスフィルタを採用することとが可能である。
【0040】
アイリスフィルタとは、注目点の近傍にマスク領域を定め、その内部の点における勾配ベクトルがどの程度注目点に集中しているのかという集中度を出力するフィルタである。本実施形態では、ボイラチューブの周方向に発生する亀裂発生部位が内部に向かうほどに輝度が低くなるという特質を活かし、アイリスフィルタの集中度が「−1」となる領域を亀裂が発生していると推定される部位、つまり、候補領域として抽出する。
具体的には、図3に示すように注目画素を中心に横長楕円を仮定し、横長楕円内にある各画素に対し、各画素と注目画素とを結ぶ直線Rと、その画素における勾配ベクトルのなす角θを求め、角度θの余弦の平均値を求めることにより、勾配ベクトルの集中度を算出する。ここで、全ての画素が中心と正反対の方向を向いている場合は、勾配ベクトルの集中度が「−1」となる。したがって、アイリスフィルタの出力が「−1」または「−1」に近い値となる領域を抽出することによって、亀裂が発生していると推定される部位である候補領域を容易に抽出することが可能となる。
このように、アイリスフィルタを用いることで、勾配の特徴までも考慮して候補領域を抽出することが可能となる。
また,上記第1の抽出部16の他の態様としては、例えば、ソーベル微分等の微分フィルタと、後述する〔手法1−5〕を組み合わせたものを採用することが可能である。この方法では、まず、微分フィルタによりエッジを強調し、固定閾値か適応閾値により2値化する。次に、〔手法1−5〕にてリブ境界位置を抽出する。そして、エッジ画像のうち、リブ境界に当たる画素は0とする。これにより、微分フィルタによるエッジ強調処理で強調されるリブ境界のエッジをうまく除去することが可能となり、横方向(ボイラーチューブの周方向)の亀裂のみを抽出できる。
【0041】
図2に戻り、注目部位抽出部11の第2の抽出部17は、上記第1の抽出部16によって抽出された候補領域において、強調画像の成分が閾値以上の領域を注目部位として抽出する。ここで、閾値としては、予め設定されている固定閾値を用いることとしても良いし、或いは、候補領域全体の輝度から統計的に算出される適応型閾値を用いることとしても良い。
固定閾値を用いることにより、注目部位を効率的に抽出することが可能となる。また、適応型閾値を用いることにより、注目部位の背景の輝度が場所毎に異なっている場合でも、背景の輝度に影響されることなく、注目部位を確実に抽出することが可能となる。
【0042】
特徴量決定部12は、注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する。特徴量の決定手法については、以下の手法1−1乃至手法1−5のいずれかを採用することができる。以下、各特徴量の決定手法について詳しく説明する。
【0043】
〔手法1−1〕
まず、図4に示すように、注目部位20として抽出された全ての画素とその近傍画素を含むように外枠21を設定する。続いて、外枠21の上下辺における代表画素a,bおよび左右辺における代表画素c,dをそれぞれ設定し、これら代表画素a,b,c,dの輝度の平均を算出し、これを背景輝度Aとする。
続いて、注目部位20内の平均輝度Bを算出し、注目部位20の平均輝度Bと上記背景輝度Aとの差分を算出し、この差分を特徴量とする。
【0044】
〔手法1−2〕
手法1と同様の手順により、背景輝度Aを算出する。
続いて、注目部位20内において最小輝度Cを抽出し、この最小輝度Cと背景輝度Aとの差分を算出し、この差分を特徴量とする。
【0045】
〔手法1−3〕
手法1と同様の手順により、背景輝度Aを算出する。
続いて、注目部位20内における標準偏差σを算出する。次に、注目部位20内における最小輝度Cを抽出し、この最小輝度Cに標準偏差σの3倍の値を乗算することにより、注目部位20の代表輝度Dを算出する。続いて、注目部位20の代表輝度Dと背景輝度Aとの差分を算出し、この差分を特徴量とする。
【0046】
〔手法1−4〕
図5に示すように、手法1と同様の手順により外枠21を設定する。
続いて、外枠21内において縦列毎に画素の輝度を比較し、縦列毎に最大輝度と最小輝度とを抽出し、更に、これらの差分(最大輝度−最小輝度)を求める。これにより、外枠21を構成する縦列の数だけ差分が求められる。次に、これら求めた差分の中から最大値を求め、これを特徴量とする。
【0047】
〔手法1−5〕
上述のように、ボイラチューブ1の管の内壁にはリブと呼ばれる補強部材が螺旋状に形成されているため、このボイラチューブ1のX線撮影画像には、図6の上段に示すように、螺旋状のリブRa、Rbが背景として写ることとなる。本手法では、このような螺旋状のリブが背景として映し出されているX線撮影画像を分析することにより、図6の下段に示すように、管壁を平面状に展開した展開画像を作成する。展開画像に微分フィルタ処理を施してエッジ強調を行った後、ハフ変換でリブがある部位とリブがない部位の境界線の候補となる直線を抽出する。その後、直線同士の距離は一定であるという情報等を用いて、最も適した直線をリブの境界線として抽出し、リブが重なっている部位f、リブがある部位g、リブがない部位hに区分する。また、本手法において、特徴量決定部12は、各区分における背景輝度の情報を保有しており、各注目部位が抽出された場所の区分に応じた背景輝度を読み出し、読み出した背景輝度と当該注目部位20の代表輝度との差分を算出し、この差分を特徴量として設定する。抽出したリブ境界線上に当たる画素を計算から除外して、リブの影響で計算の難しい部分の影響を除去することも可能である。上記注目部位の代表輝度は、例えば、最小輝度、平均輝度、最小輝度に標準偏差σの3倍を乗じた値などを採用することが可能である。
【0048】
上述した手法1−1乃至1−5のいずれかの手法を用いて、特徴両家底部12により注目部位の特徴量が求められると、この特徴量の情報は亀裂深さ決定部13に転送られる。
亀裂深さ決定部13は、上述するような特徴量決定部12によって求められた特徴量に応じて、注目部位の亀裂深さを決定する。
注目部位の亀裂深さの決定手法については、以下の手法2−1乃至手法2−5のいずれかを採用することができる。以下、各亀裂深さの決定手法について詳しく説明する。
【0049】
〔手法2−1〕
まず、亀裂深さ決定部13は、図7に示すように、予め特徴量と亀裂深さとが対応付けられたルックアップテーブルを備えている。亀裂深さ決定部13は、このルックアップテーブルを用いて、上記特徴量決定部12によって求められた特徴量に対応する亀裂深さを取得することにより、当該注目部位における亀裂深さを決定する。なお、ルックアップテーブルに代えて、以下の(1)式に示されるような関数式を保有しており、この関数式を用いて亀裂深さを算出することとしても良い。
L=α*k+β (1)
上記(1)式において、Lは亀裂深さ、αおよびβは定数、kは特徴量である。
【0050】
〔手法2−2〕
X線撮影画像の輝度は、X線の透過率に依存する。ボイラチューブ1のように管状の被測定物の場合、図8に示すように、管の中心を通る場合と、管の端を通る場合とでは、管の肉厚が異なるため、X線透過率が異なり、同じ亀裂が生じていたとしてもその輝度は異なることとなる。
具体的には、図16に示すように、X線透過率は肉厚に対して非線形に変化することが知られている。ここで、図17に、イメージングプレートとX線フィルムにおけるX線透過率と画像上の輝度との関係を示す。図17に示すように、イメージングプレートは、X線透過率と画像上の輝度において線形性が高いが、X線フィルムは、X線透過率と画像上の輝度においても非線形の関係となる。したがって、肉厚と画像上の輝度との関係は、図18に示すように、イメージングプレート、X線フィルムのいずれにおいても、非線形性を有することとなり、図19に示すように、肉厚毎に、単位厚さの変化に対する輝度差(本発明で、特徴量として求めているものであり、グラフの傾きに相当する)も異なることとなる。このことから、本手法では、管の肉厚を考慮に入れて亀裂深さを求めることにより、更なる測定精度の向上を図ることとしている。
【0051】
まず、被測定物であるボイラチューブ1の実際の検査の前段階として、ボイラチューブ1と同一材料で作成された試験用ボイラチューブ1の周方向の各位置x1、x2、x3等(図8参照)に、さまざまな深さの亀裂を人為的に形成し、この試験用ボイラチューブに対して実検査と略同一の条件化でX線照射することで、X線照射画像を取得する。このX線照射画像は、各位置に形成された亀裂の深さに応じた輝度を持つ画像となる。この画像から位置x1、x2、x3と、輝度と、亀裂の深さとを対応付けるマップを作成し、このマップを保有する。
【0052】
図9に、位置、輝度、及び亀裂の深さを対応付けたマップの一例を示す。図9において、横軸は管の周方向における位置、縦軸は特徴量(輝度)を示している。また、この図9においては、亀裂の深さが0mm、0.5mm、1.0mm、1.5mmにおいて、位置と特徴量とを対応付ける特性曲線が描かれている。
【0053】
次に、実検査において、亀裂深さ決定部13は、上述した注目部位抽出部11によって抽出された各注目部位の管の周方向における位置情報および上記特徴量決定部12によって決定された特徴量を取得すると、図9に示したマップを用いて、位置と特徴量とに対応する曲線を特定し、この曲線から亀裂深さを求める。これにより、管の肉厚を考慮して、亀裂の深さを求めることが可能となるので、計測精度を更に向上させることが可能となる。
【0054】
なお、亀裂深さ決定部13は、図9に示したマップに代えて、図8に示した輝度と亀裂深さとを対応付けたルックアップテーブルを管の周方向の位置毎に保有していても良い。注目部位の位置を抽出する方法としては、例えば、次のような方法がある。まず、図20に示すように、x軸方向に輝度の総和をとり(濃淡画像の輝度値をx軸方向に足し込む)、適当に設定した初期中心から左側と右側で総和がMAXとなる位置を抽出する(図20における左MAXと右MAX)。その2点の中点を原点とすることで、注目亀裂の位置が原点から何画素離れているかを求める。そして、現在の解像度(距離/画素)より、管のどの位置に亀裂があるかを求め、ルックアップテーブルを切り替える。尚、ここではMAXをとる場合を説明したが、管外部の輝度総和が立ち上がる位置もしくは、管内部の輝度総和が立ち上がる位置等を選んでも良い。また、解像度が不明のときは、左右の選ばれた位置の実際の距離から解像度を求めても良い。この場合、注目部位の位置情報によって特定されるルックアップテーブルを用いて、特徴量に対応する亀裂の深さを得る。
【0055】
〔手法2−3〕
被測定物であるボイラチューブ1を検査する場合、図10に示すように、ボイラチューブ1とX線照射装置(図示せず)との間に他の部材(以下、「障害部材」という。)が介在する場合がある。本手法は、このような場合に、障害部材30による外乱の影響を除去することが可能な亀裂深さの決定手法である。
【0056】
まず、被測定物であるボイラチューブ1の実際の検査の前段階として、ボイラチューブ1とX線照射装置(図示せず)との間に介在する障害部材30のみを取り出し、この障害部材30のみに対して実検査と略同一の条件化でX線を照射することで、障害部材30のX線照射画像を取得する。これにより、障害部材30のX線透過率に応じた輝度を既知の情報として取得できる。亀裂深さ決定部13は、このようにして取得した障害部材30の輝度情報を輝度補正量として保有する。なお、上記障害部材を取り出すことができない場合には、障害部材30と同一の厚さ、且つ、同一の材料で形成された代替品を用いて、上記輝度補正量を求める。
【0057】
次に、実検査において、亀裂深さ決定部13は、上述した特徴量決定部12によって決定された特徴量を取得すると、この特徴量に上記輝度補正量を加算することで、特徴量決定部12によって求められた特徴量を補正する。そして、補正後の特徴量と、図8に示した上記手法1のルックアップテーブルを用いて、亀裂深さを得る。
なお、上記特徴量に輝度補正量を加算する手法に代えて、図11に示すように、手法1のルックアップテーブルを輝度補正量に相当する分だけ平行移動させて、平行移動後の特性直線と特徴量決定部12により決定された特徴量とを用いて亀裂深さを得ることとしても良い。
【0058】
〔手法2−4〕
上述の亀裂深さ決定方法では、注目部位における輝度情報のみを用いて亀裂深さを決定していたが、本手法では、注目部位の形状、特に、亀裂の開口幅および長さをも考慮して亀裂深さを求める。
図12は、亀裂の開口幅が広い場合の注目部位の輝度変化を示している。この輝度特性において、中央部は真の深さの輝度値を示しているが、上下端は、周辺領域の輝度の影響を受けて多少明るめになる傾向がある。図13は、亀裂の開口幅が狭い場合の注目部位の輝度変化を示しており、上下端だけでなく、中央部についても真の深さの輝度値に比べて、かなり高めの値を示す傾向がある。これは、開口幅が狭いと、中央部における輝度も周辺領域の輝度の影響を受けて明るめになることが考えられる。
【0059】
また、上記亀裂の開口幅だけではなく、開口部の長さによっても輝度が変化する傾向がある。したがって、本手法では、亀裂深さを決定付けるための要素として、上記注目部位の開口幅および長さを取り入れた関数式を作成し、この関数式を用いて亀裂深さを求めることとする。
【0060】
具体的には、以下に示される(2)式の関数式を用いて、亀裂深さを求める。
L=α1*k+α2*w+α3*l+β (2)
上記(2)式において、Lは注目部位の亀裂深さ、kは特徴量、wは開口幅、lは長さ、α1、α2、α3およびβは定数である。この定数に関しては重回帰分析により求める。
亀裂深さ決定部13は、実検査時において、上述した注目部位抽出部11によって抽出された各注目部位の情報と特徴量決定部12によって決定された特徴量とを取得すると、注目部位の形状から注目部位の長さlと開口幅wを測定し、この長さl、開口幅wおよび特徴決定部から取得した特徴量kとを上記(2)式に代入することにより、亀裂深さLを得る。
【0061】
〔手法2−5〕
上記手法2−1乃至2−4においては、直線で示される関係式に基づいて亀裂深さを求めていたが、実際には、図14に示すように、輝度と亀裂深さとを一次関数式で表すことが難しい場合もある。
本手法では、例えば、上記関係式を得るために用いたサンプリングデータや、上記ルックアップテーブルを作成するために用いたサンプリングデータに基づいて、図15に示すような高次の関数式で表される曲線を作成し、この曲線で表された特性を持つルックアップテーブルを用いて亀裂深さを得る。
高次の関数式の作成手法としては、例えば、2次式により曲線近似する方法、或いは、ニューラルネットにより曲線近似する方法などが挙げられる。特に、ニューラルネットによる曲線近似では、何次式がわからない場合に有効である。
【0062】
上述のように、亀裂深さ決定部13によって、各注目部位における亀裂深さが決定されると、ボイラチューブ1の全体における各注目部位の位置情報およびその亀裂深さの情報が表示制御部14に出力される。表示制御部14は、ボイラチューブ1を模式的にあらわした画像上に、今回の検査によって抽出された注目部位に基づく亀裂を書き込み、更に、その亀裂部分に深さに応じた着色を施した画像データを作成し、これを表示装置6に表示する。
【0063】
これにより、表示装置6に表示されたボイラチューブ1の模式図をオペレータが確認することで、どの部分にどのような深さの亀裂が生じているのかを容易に把握することが可能となる。
【0064】
次に、上述した本実施形態に係る検査システムにおける作用を説明する。
まず、被測定物であるボイラチューブ1の近傍にX線照射装置2を配置し、ボイラチューブ1を介してX線照射装置2と反対側にイメージングプレート3を配置した状態で、X線照射装置2からX線がボイラチューブ1に照射されることにより、ボイラチューブ1のX線情報がイメージングプレート3に蓄積される。
【0065】
イメージングプレート3に蓄積されたX線情報は、CR装置4によって読み出され、画像データが作成されて、検査装置5に転送される。検査装置5に転送されたボイラチューブ1のX線撮影画像は、検査装置5内の注目部位抽出部11に入力される。注目部位抽出部11では、注目部位抽出部11内の第1の抽出部16によって亀裂が発生していると推定される領域が候補領域として抽出され、この候補領域の情報が第2の抽出部17に転送される。第2の抽出部17では、閾値以下の輝度を有する領域が注目部位として抽出され、注目部位の情報が特徴量決定部12に転送される。
【0066】
特徴量決定部12では、注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、上記手法1−1乃至1−5のいずれかの手法により注目部位における特徴量が決定され、この特徴量が亀裂深さ決定部13に転送される。亀裂深さ決定部13では、特徴量決定部12によって決定された特徴量と、注目部位抽出部11によって抽出された注目部位の位置などに基づいて、上述した手法2−1乃至2−5のいずれかの手法を用いて、各注目部位の亀裂深さが求められる。
【0067】
亀裂深さ決定部13によって求められた注目部位の亀裂深さの情報は、その亀裂部位の基地情報とともに表示制御部14に転送され、表示制御部14によって表示用の画像データが作成されて表示装置6に表示される。
これにより、表示装置6の表示画面をオペレータが確認することにより、ボイラチューブの全体における亀裂の発生箇所やその亀裂の深さが容易に把握することが可能となる。このようにして、ボイラチューブ1の寿命などを把握するのに有効な情報をオペレータに提供することが可能となる。
【0068】
以上述べてきたように、本実施形態に係る検査システムによれば、注目部位抽出部11により被測定物のX線撮影画像から注目部位が抽出され、この注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて注目部位の特徴量が特徴量決定部12によって決定されることとなるので、特徴量は常に注目部位とその近傍領域の輝度とを考慮して求められることとなる。従って、本実施形態に係る被測定物のように、リブの影響によってX線撮影画像内で背景の輝度が一定でない場合にも、その背景の輝度を考慮した特徴量を求めることが可能となる。よって、この特徴量を用いて注目部位の亀裂深さを求めることにより、信頼度の高い亀裂深さを検出することができるという効果を奏する。
【0069】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態においては、イメージングプレートを用いた例を示したが、これに限定されない。例えば、X線フィルムをフィルムスキャナーでデジタル情報としたものを検査装置に読み込むことで、上述の検査方法を実現させることとしても良い。
【0070】
また、上述の実施形態においては、特徴量決定部12における特徴量の決定手法を手法1−1から1−5として例示して説明したが、特徴量決定部12は、これらの手法のいずれかを用いて特徴量を決定する機能を備えていれば足りる。なお、これら複数の手法によって特徴量を決定する機能を備えていてもかまわない。
同様に、亀裂深さ決定部13についても、亀裂深さ決定手法として手法2−1から2−5を例示して説明したが、亀裂深さ決定部13は、これらの手法のいずれかを用いて亀裂深さを決定する機能を備えていれば足りる。なお、これら複数の手法によって亀裂深さを決定する機能を備えていてもかまわない。
【0071】
また、本発明の検査システムは、上述のボイラチューブ1の検査に適用されるだけでなく、さまざまな分野において利用されて好適なものである。特に、背景の輝度が変化するような被測定物においては、背景などの外乱による影響を排除し、亀裂の深さを正確に測定することが可能となるので、大きなメリットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査システムの概略構成図である。
【図2】本発明の検査装置の概略構成を示した図である。
【図3】アイリスフィルタの一例について説明するための図である。
【図4】特徴量決定部によって実行される特徴量の決定手法1−1について説明するための図である。
【図5】特徴量決定部によって実行される特徴量の決定手法1−4について説明するための図である。
【図6】特徴量決定部によって実行される特徴量の決定手法1−5について説明するための図である。
【図7】亀裂深さ決定部によって実行される亀裂深さの決定手法2−1で用いられるルックアップテーブルの一例を示した図である。
【図8】管の周方向における位置と肉厚との関係を示した図である。
【図9】位置、輝度、及び亀裂の深さを対応付けたマップの一例を示す。
【図10】ボイラチューブ1とX線照射装置との間に障害部材が介在する場合を示した図である。
【図11】亀裂深さ決定部によって実行される亀裂深さの決定手法2−3で用いられるルックアップテーブルの一例を示した図である。
【図12】亀裂の開口幅が広い場合の注目部位の輝度変化を示した図である。
【図13】亀裂の開口幅が狭い場合の注目部位の輝度変化を示した図である。
【図14】輝度と亀裂深さとを一次関数式で表すことが難しい場合を示した図である。
【図15】高次の関数式で表される特性曲線を示したルックアップテーブルの一例である。
【図16】被測定物の肉厚とX線透過率との関係を示した図である。
【図17】X線透過率と画面上の輝度との関係をイメージングプレートおよびX線フィルムの双方について示した図である。
【図18】被測定物の肉厚と画面上の輝度との関係をイメージングプレートおよびX線フィルムの双方について示した図である。
【図19】被測定物の肉厚と輝度との関係において、肉厚が大きくなるほど、単位輝度差に相当する肉厚が大きくなることを示す図である。
【図20】注目部位の位置を抽出する方法の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ボイラチューブ
2 X線照射装置
3 イメージングプレート
4 CRシステム
5 検査装置
6 表示装置
11 注目部位抽出部
12 特徴量決定部
13 亀裂深さ決定部
14 表示制御部
16 第1の抽出部
17 第2の抽出部
20 注目部位
21 外枠
30 障害部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出手段と、
前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定手段と、
前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定手段と
を具備する検査装置。
【請求項2】
前記注目部位抽出手段は、
亀裂が発生していると推定される領域を候補領域として抽出する第1の抽出手段と、
前記候補領域において、輝度が閾値以下の領域を注目部位として抽出する第2の抽出手段と
を具備する請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記被測定物がボイラチューブである場合において、
前記第1の抽出手段は、輝度の低い画素が前記ボイラチューブの周方向に連続している領域を前記候補領域として抽出するフィルタである請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記被測定物がボイラチューブである場合において、
前記第1の抽出手段は、横長楕円の領域において内部に行くほど輝度が低くなる領域を前記候補領域として抽出するフィルタである請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第2の抽出手段は、前記候補領域において、輝度が予め設定されている固定閾値以下の領域を前記注目部位として抽出する請求項2から請求項4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
前記第2の抽出手段は、前記候補領域において、輝度が前記候補領域全体の輝度から統計的に算出される適応型閾値以下の領域を前記注目部位として抽出する請求項2から請求項4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項7】
前記特徴量決定手段は、前記注目部位の輝度と前記近傍領域の輝度の差分を特徴量として決定する請求項1から請求項6のいずれかに記載の検査装置。
【請求項8】
前記被測定物が管状であり、その内壁には螺旋構造のリブが形成されていた場合において、
前記特徴量決定手段は、前記X線撮影画像を分析することにより、前記管壁を平面状に展開した展開画像を作成し、該展開画像において、リブが重なっている部位、リブがある部位、リブがない部位に区分し、区分した各部位に対応して予め設定されている基準輝度と前記注目部位の輝度とに基づいて前記注目部位の特徴量を算出する請求項1から請求項6のいずれかに記載の検査装置。
【請求項9】
前記被測定物が管状である場合において、
前記亀裂深さ決定手段は、前記被測定物の周方向における前記注目部位の位置に基づいて、前記注目部位の亀裂深さを決定する請求項1から請求項8のいずれかに記載の検査装置。
【請求項10】
前記亀裂深さ決定手段は、前記注目部位の形状を考慮して前記注目部位の亀裂深さを決定する請求項1から請求項9のいずれかに記載の検査装置。
【請求項11】
前記被測定物がボイラチューブである請求項1から請求項10のいずれかに記載の検査装置。
【請求項12】
被測定物に対してX線を照射するX線照射手段と、
前記被測定物を介して前記X線照射装置と反対側に配置され、前記被測定物のX線情報を蓄積する放射線測定手段と、
前記放射線測定手段に蓄積されたX線情報を読み出し、画像データを形成する読取処理手段と、
読取処理手段により処理された前記被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出手段と、
前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定手段と、
前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定手段と
を具備する検査システム。
【請求項13】
被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出過程と、
前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定過程と、
前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定過程と
を具備する検査方法。
【請求項14】
被測定物のX線撮影画像から注目部位を抽出する注目部位抽出処理と、
前記注目部位の輝度およびその近傍領域の輝度に基づいて、注目部位の特徴量を決定する特徴量決定処理と、
前記特徴量に応じて、前記注目部位の亀裂深さを決定する亀裂深さ決定処理と
をコンピュータに実行させるための検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−271434(P2007−271434A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96947(P2006−96947)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】