説明

検知装置、検知方法及びプログラム

【課題】動きのある人等と動きが静止した物とを容易に判断する。
【解決手段】動体・不動体検出部106は、撮影部102により撮像された画像データから不動体領域を検出する。不動体拡大映像供給部109は、動体・不動体検出部106により検出された不動体領域を拡大させる。動体・不動体検出部106は、拡大された前記不動体領域を用いて動体又は不動体を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動きのある人等と動きが静止した物とを判断するための技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、空港、駅等において、設置された監視カメラの映像を利用して置き去られた荷物を検知するための置き去り検知システムが知られている。置き去り検知システムにおいては、主に、セキュリティの面から置き去られた危険物体を検知することが目的である。しかしながら、置き去り検知システムは、背景差分方式やフレーム間差分方式による動体検知技術を利用して不動体を検出しているため、人が一定時間静止している場合も置き去り物体として検知されることがあった。そのため、置き去り検知システムで検出された結果が人であるか物であるかを判断するためには、置き去り検知結果を目視により人手で確認したり、人物認識技術を利用したりする必要があった(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第02697676号公報
【特許文献2】特許第03088880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目視による人手での確認は手間がかかり、監視対象が増加すると困難であった。一方、特許文献1に開示される人物認識技術においては、人を識別するためのセンサを追加する必要があり、コストアップにつながる。また、特許文献2に開示される人物認識技術においては、顔を認識するためのエリアを抽出する必要があったり、顔の特徴を判別するためのデータが必要であったりした。特に監視カメラにおいては、様々な角度で顔が検出されるため、人物認識技術で認識が難しい真上からの画角等も含めて常に高い精度で実施することは困難であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、動きのある人等と動きが静止した物とを容易に判断することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検知装置は、撮像手段により撮像された画像データから不動体領域を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記不動体領域を拡大させる拡大手段と、前記拡大手段により拡大された前記不動体領域を用いて動体又は不動体を検知する検知手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動きのある人等と動きが静止した物とを容易に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る置き去り検知システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る置き去り検知システムの制御部の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る置き去り検知システムを説明するための状況の一例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る置き去り検知システムの構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る置き去り検知システムの制御部404の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した好適な実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る置き去り検知システムの構成を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る置き去り検知システム101は、撮影(撮像)部102、制御部104、メモリ部105、動体・不動体検出部106及び不動体拡大映像供給部109を備える。また、撮影部102は、光学ズーム部103を備えており、動体・不動体検出部106は、背景差分検出部107及びフレーム間差分検出部108を備えている。
【0011】
撮影部102は、制御部104からの指示に応じて、レンズから入射される被写体像を撮影し、被写体像の画像データをメモリ部105に記録する。また撮影部102は、制御部104からの指示に応じて、撮影する被写体像の拡大及び縮小処理(光学ズーム処理)を光学ズーム部103に指示する。さらに撮影部102は、撮影範囲を変更するためのパン及びチルト制御も行う。なお、光学ズーム部103における光学ズーム処理の際には、ブレ補正技術によって精度が向上される。
【0012】
メモリ部105には、撮影部102によって撮影された被写体像の画像データ、及び、動体・不動体検出部106において検出された動体領域及び不動体領域が記録される。また、メモリ部105には、背景差分検出部107が背景差分をとる際に必要な背景画像データ、及び、フレーム間差分検出部108がフレーム間差分をとる際に必要なフレーム画像データが記録される。なお、本実施形態においては、メモリ部105を一つ備えた構成としているが、複数のメモリ部を備えた構成としてもよいし、動体・不動体検出部106及び不動体拡大映像供給部109の夫々の内部にメモリ部を個別に備えた構成としてもよい。
【0013】
動体・不動体検出部106は、背景差分検出部107及びフレーム間差分検出部108を用いて動体及び不動体を判別する。背景差分検出部107は、撮影部102によって撮影された被写体像の画像データと予め記録されている背景画像データとを比較する背景差分法により差分領域を検出する。検出された差分領域は動体領域としてメモリ部105に記録される。なお、動体領域には、例えば当該動体領域の位置や大きさ等を示す情報が含まれる。
【0014】
フレーム間差分検出部108は、背景差分検出部107によって検出された動体領域に対してフレーム間差分をとり、一定時間変化が見られない動体領域を検出する。検出された動体領域は不動体領域としてメモリ部105に記録される。また、フレーム間差分検出部108は、不動体領域を検出した旨の通知を不動体拡大映像供給部109に対して出力する。
【0015】
不動体拡大映像供給部109は、フレーム間差分検出部108から不動体領域を検出した旨の通知を受けると、メモリ部105に記録された不動体領域から不動体拡大情報を決定する。不動体拡大情報には、例えば不動体領域を拡大するための、撮影範囲、拡大率及び拡大時間等を示す情報が含まれる。例えば、光学ズーム部103において不動体領域の拡大率を可能な限り高くする一方で、拡大時間を短くすることにより、短時間で容易に人か物かを判定することができる。なお、複数の不動体領域が検出された場合、各不動体領域を順次拡大して人か物かを判定してもよいし、不動体領域が近接している場合、まとめて拡大してもよい。
【0016】
次に、第1の実施形態に係る置き去り検知システムの動作について説明する。図2は、第1の実施形態に係る置き去り検知システムの制御部104の処理を示すフローチャートである。図3は、第1の実施形態に係る置き去り検知システムを説明するための状況の一例を示す図である。ここでは、図3の302に示すように、複数の人が移動する広場を監視している場合を想定している。
【0017】
ステップS201において、制御部104は、撮影部102に対して撮影開始を指示する。撮影部102は、制御部104からの指示に応じて撮影を開始する。ステップS202において、制御部104は、撮影部102によって撮影された被写体像の画像データをメモリ部105に記録する。ステップS203において、制御部104は、動体・不動体検出部106に対して動体領域及び不動体領域の検出を指示する。背景差分検出部107は、撮影部102によって撮影された被写体像の画像データと、背景画像データとを比較し、差分領域を動体領域として検出する。例えば、図3の301に示す背景画像データと、図3の302に示す、撮影部102によって撮影された被写体像の画像データ(動体領域の検出時における画像データ)とを比較することにより、動体領域304〜307が検出される。ここで、図3の301に示す背景画像データは、置き去り検知システム101が製造されたときに登録しておくことや、ユーザが目視により背景と認識した画像データを登録すること等が考えられる。
【0018】
フレーム間差分検出部108は、背景差分検出部107において検出された動体領域304〜307に対してフレーム間差分をとり、不動体領域を検出する。即ち、フレーム間差分検出部108は、図3の302に示す被写体像の画像データ(動体領域の検出時における画像データ)と、図3の303に示す被写体像の画像データ(不動体領域の検出時における画像データ)とのフレーム間差分をとる。その結果、動体領域304、306と領域308、310とは変化がないため、動体・不動体検出部106は領域308、310を不動体領域として認識する。一方、動体領域305、307と領域309、311とは変化しているため、動体・不動体検出部106は領域309、311を動体領域として認識する。
【0019】
ステップS204において、制御部104は、不動体拡大映像供給部109から不動体拡大要求を受け付けたか否かを判定する。不動体拡大要求を受け付けた場合、処理はステップS205に移行する。一方、不動体拡大要求を受け付けていない場合、処理はステップS204に戻り、不動体拡大要求を待つ。
【0020】
ステップS205において、制御部104は、不動体拡大映像供給部109から不動体拡大要求を受け付けると、不動体拡大映像供給部109において決定された不動体拡大情報を撮影部102に対して出力することにより、不動体領域の拡大を指示する。撮影部102は、不動体拡大情報に基づいて、不動体領域308、310を光学ズーム部103により拡大する。ステップS206において、制御部104は、拡大された不動体領域308、310をメモリ部105に記録する。上述した不動体領域の拡大処理は、後述のステップS208において終了が指示されるまで継続的に行われる。
【0021】
ステップS207において、制御部104は、動体・不動体検出部106に対して、拡大された不動体領域308、310における動体及び不動体の検出処理の開始を指示する。フレーム間差分検出部108は、拡大された不動体領域308、310に対してフレーム間差分をとる。その結果、不動体領域308は拡大していっても置き去られた鞄であるため、フレーム間差分はない。従って、動体・不動体検出部106は、不動体領域308を置き去り物として認識する。一方、不動体領域310は人であるため完全に静止することはできない。従って、不動体領域310は拡大されることにより微小な動きであってもフレーム間差分が発生する。よって、動体・不動体検出部106は、不動体領域310を置き去り物ではないと認識する。このアルゴリズムによると、人以外の例えば動物等、完全に静止することができない物体を置き去り物でないと判定する。また、拡大された不動体領域に対してフレーム間差分をとる時間を長くすることにより、精度をさらに向上させることが可能である。
【0022】
ステップS208において、制御部104は、撮影部102に対して、不動体領域の拡大処理の終了を指示する。この指示を受けて、撮影部102は不動体領域の拡大処理を終了し、不動体領域の拡大処理前の範囲及び拡大率で撮影を開始する。
【0023】
以上のように、第1の実施形態によれば、動きのある人等と動きが静止した物とを容易に判断することが可能となり、高精度に置き去り物体を検知することができる。
【0024】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態に係る置き去り検知システムの構成を示す図である。
【0025】
図4に示すように、第2の実施形態に係る置き去り検知システムは、撮影部402、制御部404、メモリ部105、動体・不動体検出部106、不動体拡大映像供給部109、解像度変換部410及び出力部411を備える。なお、図4におけるメモリ部105、動体・不動体検出部106及び不動体拡大映像供給部109は、図1に示す同一符号の構成と同様である。
【0026】
解像度変換部410は、制御部404の指示に応じて、撮影部402によって撮影された被写体像の画像データの解像度が大きい場合、出力部411において出力される画像データの解像度に合わせるように当該画像データの解像度変換を行う。本実施形態において、解像度変換を行う際は、元となる画像データをメモリ部105に一定時間残しておくことを想定している。なお、出力部411の具体的な構成としては、ディスプレイ等の表示機器又はネットワーク等の画像データの出力先が挙げられる。
【0027】
次に、第2の実施形態に係る置き去り検知システムの動作について説明する。図5は、第2の実施形態に係る置き去り検知システムの制御部404の処理を示すフローチャートである。
【0028】
ステップS501において、制御部404は、撮影部402に対して撮影開始を指示する。撮影部402は、制御部404からの指示に応じて撮影を開始する。ステップS502において、制御部404は、撮影部402によって撮影された被写体像の画像データをメモリ部105に記録する。ステップS503において、制御部404は、解像度変換部410に対して、被写体像の画像データの解像度を出力部411で必要な解像度に合わせるように解像度変換することを指示する。ここでは、撮影部402で撮影された画像データの解像度が大きく、出力部411で必要な解像度に合わせて当該画像データの解像度が縮小されることを想定している。上記指示を受けた解像度変換部410は、被写体像の画像データの解像度を縮小し、解像度が縮小された後の画像データ(以下、縮小画像データと称す)をメモリ部105に記録する。出力部411は、縮小画像データをメモリ部105から読み出して出力する。
【0029】
ステップS504において、制御部104は、動体・不動体検出部106に対して、メモリ部105に記録された縮小画像データにおける動体領域及び不動体領域の検出処理の開始を指示する。背景差分検出部107は、メモリ部105に記録された縮小画像データと背景画像データとを比較し、差分領域を動体領域として検出する。例えば、図3の301に示す背景画像データと、302に示す縮小画像データ(動体領域の検出時の画像データ)とを比較することにより、動体領域304〜307が検出される。
【0030】
フレーム間差分検出部108は、背景差分検出部107において検出された動体領域304〜307に対してフレーム間差分をとり、不動体領域を検出する。即ち、フレーム間差分検出部108は、図3の302に示す縮小画像データ(動体領域の検出時の画像データ)と、図3の303に示す縮小画像データ(不動体領域の検出時の画像データ)とのフレーム間差分をとる。その結果、動体領域304、306と領域308、310とは変化がないため、動体・不動体検出部106は領域308、310を不動体領域として認識する。一方、動体領域305、307と領域309、311とは変化しているため、動体・不動体検出部106は領域309、311を動体領域として認識する。
【0031】
ステップS505において、制御部404は、不動体拡大映像供給部109から不動体拡大要求を受け付けたか否かを判定する。不動体拡大要求を受け付けた場合、処理はステップS506に移行する。一方、不動体拡大要求を受け付けていない場合、処理はステップS505に戻り、不動体拡大要求を待つ。
【0032】
ステップS506において、制御部404は、不動体拡大映像供給部109から不動体拡大要求を受け付けると、不動体拡大映像供給部109において決定された不動体拡大情報を解像度変換部410に対して出力することより、不動体領域の拡大を指示する。解像度変換部410は、不動体拡大情報に基づいて、縮小画像データ内における不動体領域308、310を拡大する。ここでは、不動体拡大情報において、解像度変換部410によって縮小処理される前の高い解像度とすることで不動体領域を拡大させるための情報が示されているものとする。
【0033】
ステップS507において、制御部404は、動体・不動体検出部106に対して、拡大された不動体領域における動体及び不動体の検出処理の開始を指示する。フレーム間差分検出部108は、拡大された不動体領域308、310に対してフレーム間差分をとる。その結果、不動体領域308は拡大していっても置き去られた鞄であるため、フレーム間の差分はない。従って、動体・不動体検出部106は、不動体領域308を置き去り物として認識する。一方、不動体領域310は人であるため完全に静止することはできない。従って、不動体領域310は拡大されることにより微小な動きであってもフレーム間差分が発生する。よって、動体・不動体検出部106は、不動体領域310を置き去り物ではないと認識する。このアルゴリズムによると、人以外の例えば動物等、完全に静止することができない物体を置き去り物でないと判定する。また、拡大された不動体領域に対してフレーム間差分をとる時間を長くすることにより、精度をさらに向上させることが可能である。
【0034】
以上のように、第2の実施形態によれば、動きのある人等と動きが静止した物とを容易に判断することが可能となり、高精度に置き去り物体を検知することができる。また、第2の実施形態においては、不動体に対して、人か物かの判断を行っている間も撮影映像に変化はないため、監視目的に影響を与えずに簡易的に置き去り物体の検知精度を向上させることが可能となる。
【0035】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0036】
101:置き去り検知システム、102:撮影部、103:光学ズーム部、104:制御部104、105:メモリ部、106:動体・不動体検出部、107:背景差分検出部、108:フレーム間差分検出部、109:不動体拡大映像供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段により撮像された画像データから不動体領域を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された前記不動体領域を拡大させる拡大手段と、
前記拡大手段により拡大された前記不動体領域を用いて動体又は不動体を検知する検知手段とを有することを特徴とする検知装置。
【請求項2】
前記拡大手段は、前記撮像手段に備えられた光学ズーム手段を用いて前記不動体領域を拡大させることを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
前記撮像手段により撮像された画像データの解像度を変換する変換手段を更に有し、
前記検出手段は、前記変換手段により解像度が縮小された前記画像データから前記不動体領域を検出し、前記拡大手段は、前記変換手段により解像度が縮小される前の解像度とすることで前記不動体領域を拡大させることを特徴とする請求項1に記載の検知装置。
【請求項4】
検知装置によって実行される検知方法であって、
撮像手段により撮像された画像データから不動体領域を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された前記不動体領域を拡大させる拡大ステップと、
前記拡大ステップにより拡大された前記不動体領域を用いて動体又は不動体を検知する検知ステップとを有することを特徴とする検知方法。
【請求項5】
撮像手段により撮像された画像データから不動体領域を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された前記不動体領域を拡大させる拡大ステップと、
前記拡大ステップにより拡大された前記不動体領域を用いて動体又は不動体を検知する検知ステップとをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21551(P2013−21551A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154052(P2011−154052)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】