説明

極低温密封障壁用の軟質ラミネート、該ラミネートが直下のラミネートに接合された該障壁および該障壁の組立方法

【課題】液体メタンを含むタンクの2次極低温密封障壁のカバーストリップを形成する軟質複合ラミネート、別の直下の複合パネルの継目に接合されたこの軟質ラミネートのストリップを備える該2次障壁を接合によって組み立てる方法に関する。
【解決手段】軟質ラミネート9は、直下のラミネート7によって覆われた隣接する複合パネルの継目に接合され、結合剤を含浸させた2枚の織物間に挿入された金属箔を備える。ホットメルト接着剤208が軟質ラミネートに事前に塗拡され、直下のラミネートと接触した接着剤の加熱および加圧による硬化によりその後に得られるアセンブリに特に、向上した機械強度および極低温液体の漏れに対する保護を与えるため、軟質ラミネートの織物のうち、それぞれの直下のラミネートを覆うことが意図された織物9aと、軟質ラミネートの少なくとも1つの周縁115とに、接着剤の軟化点で塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば−162℃の液体メタンを含むタンクの2次極低温密封障壁のカバーストリップを形成する軟質複合ラミネート、別のラミネートによって覆われた複合パネルの継目に接合されたこの軟質ラミネートのストリップを備える該2次障壁、およびこの2次障壁を接合によって組み立てる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フランスのGTT社によって開発された「Mark III」または「CS1」技法に従って設計されたメタンタンカーのタンクの2次密封障壁は現在、「Triplex」ラミネートとして知られているラミネートに基づいており、このラミネートは、タンクの壁に平行な、極低温液体とじかに接する1次障壁が損傷しまたは破壊された場合の液体メタンの漏れに対する障壁の役目を果たすように設計されている。したがってこの2次障壁は、メタンタンカーの運用寿命全体にわたって液体メタンに対して不浸透性でなければならず、その運用時間中にタンカーおよびタンクが受ける多くの機械応力および熱応力に耐えなければならない。この2次障壁は、1次と2次の2つの断熱層間に配置され、通常は、本明細書に添付された図1から5に関する以下のステップに従って製造される。
【0003】
始めに、液体メタンに対して不浸透性の「Triplex」ラミネートが間に接合された1次と2次の2つの断熱層からなる複合パネルを専用の工場で製造する。これらのさまざまなパネルを、タンクの壁に互いに隣合せに接合し、機械的に取り付ける。図1に示すように、締着部材3と船殻2に塗布した樹脂4とによってメタンタンカーの船殻2に取り付けられたこれらのパネル1は、適当な場合に軟質、硬質または半硬質積層パネル7が間に接合され、木板5b、6bと接触した断熱発泡体5a、6aをそれぞれが備える前述の2つの断熱層5および6からなる。
【0004】
次いで、ラミネート7間の継目を覆うため、図2に示されているように、これらの複合パネル1間に、「flexible」と称する「Triplex」積層ストリップ9を、通常はポリウレタン型またはエポキシ型の接着剤8を使用したコーティングによって接合する。知られている一方式では、これらの「Triplex」ラミネート7が、エラストマー結合剤を含浸させた2枚のガラス布間に挿入されたアルミニウム箔からなる。軟質ラミネート9のストリップと直下のラミネート7との間のこの接合が、2次障壁全体の全体的な密封を保証する。
【0005】
この接合を達成するため、ロールから軟質ラミネート9をほどいて、この軟質ラミネート9を、接着剤8でコーティングされたラミネート7によって形成されたシート間の継目に配置する。次いで、このようにして配置したこの軟質ラミネート9を加圧下に置き、接着剤8の良好な硬化に必要な時間(一般に加圧下で数時間)、加熱する。図3に示すように、接合領域の上に置かれ、保持バー11をその上に載せた「エアバッグ」10を加熱することによって、この加圧および加熱を実施することが可能である。
【0006】
この接合を達成した後、複合パネル1間の継目上に、合板が上に載った1次断熱シート12(Top Bridge Padとしても知られており、図2の分解図に示されている)を載せ、次いで、このスタックに1次密封障壁(図示せず)を取り付ける。このようにして、2つの断熱障壁と交互に配置された2つの密封障壁が最終的に得られ、その目的は、液体メタンを約−162℃に維持するために液体メタンに対して完全に不浸透性のタンクを得ることである。
【0007】
文献FR−A1−2 822 814およびFR−A1−2 822 815は、ホット−メルト接着剤を使用して接着剤塗拡温度120℃でこの軟質ラミネートをコーティングすることによって、それぞれの軟質ラミネートを(半)硬質ラミネートに連続的に接合する方法を教示している。軟質ラミネートを硬質ラミネート上に配置する温度に関して、この温度は90から100℃である。
【0008】
これらの知られている組立方法の1つの大きな欠点は、直下のラミネートへのそれぞれの軟質ラミネートの接合が満足のいくものにならない恐れがあることであり、このことが、この接合によって形成される2次障壁の全体的な密封に損傷を与え、ある時間の後に軟質ラミネートの剥離を引き起こし、液化ガスの重大な漏れを発生させることがある。実際、このように接合されたこれらの軟質ラミネートは、長時間にわたって、タンカーの動きに起因する高い機械応力および軟質ラミネートがその中心にある多くの熱衝撃、特に−162℃の液化ガスのタンクへの積卸し作業中の熱衝撃に常に耐えることができるとは限らない。
【0009】
具体的には、接着剤8と接着剤を塗拡した軟質ラミネート7との間の継目に弱点(図5の矢印Fによって表されている)が存在することが実験によって示された。これは、このアセンブリが高い剪断応力にさらされるためである(これらの応力の全体が、図4の参照符号Cによって概略的に示されている)。さらに、軟質ラミネートおよび/または直下のラミネートの外面を形成する接着剤が塗拡されたガラス布の糸のラミネート/接着剤界面に液化ガスの微量漏れ(マイクロリーク)が広がり、したがって最終的に2次密封障壁を横切り、上記の潜在的な重大な結果をもたらす可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】FR−A1−2 822 814
【特許文献2】FR−A1−2 822 815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の1つの目的は、メタンを含むタンクの2次密封障壁のカバーストリップを形成する、上記の欠点を克服する軟質複合ラミネートであって、別の複合ラミネート(以下では接合されたアセンブリ内の「直下のラミネート」と呼ぶ)によってそれぞれ覆われた隣接する複合パネルの継目に接合されることが意図されており、これらの2つのラミネートがそれぞれ、結合剤を含浸させた2枚の織物間に挿入された金属箔を備える、軟質複合ラミネートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため、本発明に基づく軟質ラミネートに、入熱によって硬化させることができるホット−メルト接着剤を使用した接着剤が事前に塗拡され、この接着剤は、直下のラミネートと接触したこの接着剤の加熱および加圧による硬化によりその後に得られる接合されたアセンブリに特に、上で示した知られている方式で(すなわち例えばエポキシ接着剤で)接合したアセンブリに比べて向上した機械強度と、この軟質ラミネートの周縁のラミネート/接着剤界面における(これらの界面の可能な接合欠陥を通した)極低温液体のマイクロリークに対する保護とを与えるために、軟質ラミネートの織物のうち、それぞれの直下のラミネートの外側織物を覆うことが意図された織物と、この軟質ラミネートの少なくとも1つの周縁とに、この接着剤の軟化点で塗布される。
【0013】
本明細書では、軟質ラミネートの「周縁」という表現が、このラミネートを横断する2枚の織物および挿入された金属箔の縁を含む、このラミネートの全部または一部の縁を意味すると理解される。
【0014】
本発明に基づくこの接着剤はしたがって、組立て後に直下のラミネートの方を向く側の軟質ラミネートの織物、すなわち内側織物(例えば「flexible Triplex」の外側シートを形成する、エラストマーブレンドを含浸させたガラス布)の表面全体に、好ましくはコーティングによって塗布され、この織物およびこのエラストマー結合剤はそれぞれ、満足のいく機械強度および満足のいく柔軟性をアセンブリに与えるように設計され、一方で、(例えばアルミニウムでできた)内側金属箔は密封機能を有することに留意されたい。
【0015】
前述の方法による接着剤の塗布の制御は、2次障壁を形成する接合されたアセンブリの層間剥離および機械応力に対する抵抗性の信頼性を相当に向上させることを可能にすることにも留意されたい。
【0016】
この機械強度の向上およびマイクロリークに対する保護の向上は、軟質ラミネートの前記内側織物および直下のラミネートの外側織物によく染み込む本発明に基づくこの低粘度接着剤による高温接合によって達成される。
【0017】
このように工場で接着剤が事前に塗拡された軟質ラミネートは、直下のラミネートと接触したこの接着剤を入熱および加圧によって単純に活性化させるために、直下のラミネート上に直ちに配置することができることにも留意されたい。このことは、設置作業を大幅に容易にすることを可能にし、同時に得られる接合の永続性を保証する。
【0018】
好ましくは、アセンブリの機械強度を最適化するため、本発明に基づくこの接着剤がさらに、接着剤が事前に塗拡された前記縁の先に広がる軟質ラミネートの外側織物の少なくとも周縁領域に塗布される。
【0019】
本発明の他の特徴によれば、この接着剤を実質的に、硬化後の状態において、
・接着剤のマトリックスを構成するポリオール、ポリエステル、ポリエーテルなどの第2の反応物から物理的および/または化学的に分離されたイソシアネートなどの第1の反応物と、
・この第2の反応物との間の、所定のしきい温度で接着剤を加熱した後の反応生成物とすることができ、好ましくはこの接着剤が、単一成分接着剤、例えばポリウレタン型またはポリエステル−ウレタン型の単一成分接着剤である。
【0020】
好ましくは、この接着剤が、前記反応を生じさせることなく接着剤を液体状態で塗布するための55℃から65℃の間の軟化点と、100℃から150℃の間の硬化温度とを有する。
【0021】
軟質ラミネートに接着剤を事前塗拡する際の接着剤の処理温度と、直下のラミネート上に軟質ラミネートを設置する際のこの接着剤の硬化温度との間のこの少なくとも約35℃の差は、直ぐに配置できる状態のこの軟質ラミネートによってこのアセンブリを組み立てるのに非常に都合がよいことに留意されたい。
【0022】
(工場での事前塗拡から造船所での設置までの間に硬化することを防ぐため、空気中の水分によって硬化するのではなく)入熱によって硬化することができ、機械応力に対するその機械的な抵抗特性が、メタンタンカーのタンクの2次障壁の仕様を十分に満たす限り、本発明に従って使用することができる接着剤は、ポリウレタンまたはポリエステル−ウレタン以外の化学種群にも属することができることにも留意されたい。
【0023】
本発明の他の特徴によれば、この熱硬化性ホット−メルト接着剤を、好ましくはドクターブレード、ローラまたはパウダコータ(powder coater)を使用して、50g/mから800g/mの間の塗布量で軟質ラミネートに塗布することができる。
【0024】
有利には、例えばアセンブリを組み立てる前の接着剤の偶発的な硬化の開始またはこのアセンブリを得るために実施された加熱中の接着剤の不十分な硬化を示すために、接着剤の以降の硬化を、所定の色または色の明度によって示すように設計された可視化手段を、この接着剤が含むことができる。
【0025】
これらの可視化手段は、以下の選択肢のうちの1つを含むことができる。すなわち、
a)第1の反応物と第2の反応物とが少なくとも物理的に分離された前述のケースでは、
・前記マトリックス中または前記第1の反応物を含むカプセル内に存在し、カプセルの破裂の直後にそれぞれこの第1の反応物またはこのマトリックスと選択的に反応して、その色によって接着剤内で見分けることができる反応生成物を与えることができる化合物、
・第1の反応物を含むカプセルと同時に破裂するように設計された第1の反応物を含むカプセル以外の追加のカプセル内に存在し、第1の反応物を含むカプセルとこれらの追加のカプセルの同時破裂の直後にこの第1の反応物または前記マトリックスと選択的に反応して、その色によって接着剤内で見分けることができる反応生成物を与えることができる化合物、あるいは
・第1の反応物を含むカプセル内、または第1の反応物を含むカプセルと同時に破裂するように設計された追加のカプセル内に存在し、第1の反応物を含むカプセルの破裂または第1の反応物を含むカプセルと追加のカプセルの両方の破裂の直後に接着剤中で拡散することができる染料、
b)第1の反応物と第2の反応物とが化学的に分離された前述の他のケースでは、
・加熱中に前記しきい温度に達した直後に、第1の反応物または前記マトリックスと選択的に反応することができる化合物または染料であって、前記化合物の場合には、その色によって接着剤内で見分けることができる反応生成物を与え、または、前記染料の場合にはこの接着剤内で拡散する化合物または染料、あるいは
・加熱中に前記しきい温度に達した直後に破裂するように設計されたカプセル内に存在し、この破裂後に接着剤内で拡散することができる染料。
【0026】
メタンを含むタンクの本発明に基づく2次密封障壁は、別の複合ラミネートないし直下のラミネートによってそれぞれ覆われた隣接する複合パネルの継目に接合された軟質ラミネートのストリップを備え、これらの2つのラミネートは、結合剤を含浸させた2枚の織物間に挿入された金属箔を含み、この障壁は、接着剤を事前に塗拡した本発明に基づく軟質ラミネートのそれぞれのストリップを、必要に応じて熱硬化性の前記ホット−メルト接着剤を塗拡した直下のラミネートと、高温、加圧下で、好ましくは100℃から150℃の間の温度で接触させることによって得られる。
【0027】
本発明に基づく2次極低温密封障壁を接合によって組み立てる方法は、実質的に、
a)その軟化点で塗布された、好ましくは55℃から65℃の間の温度で塗布された熱硬化性の前記ホット−メルト接着剤を使用して、軟質ラミネートの製造されたそれぞれのストリップに、工場で事前塗拡するステップと、
b)この同じ接着剤を使用して、複合パネルを覆う直下のラミネートのそれぞれのストリップに、やはり工場で塗拡する必要に応じたステップと、
c)次いで、メタンタンカーのタンクの壁にこの障壁を組み付ける造船所において、高温、加圧下で、好ましくは100℃から150℃の間の硬化温度で、好ましくは30秒から5分の間(例えば135℃での最短硬化時間は3分である)、軟質ラミネートのそれぞれのストリップを、直下のラミネートで覆われたパネルと接触させるステップと
を含む。
【発明の効果】
【0028】
それぞれの軟質ラミネートの工場での事前塗拡および断熱パネルに含まれるラミネートの必要に応じた事前塗拡は、接合されたアセンブリを得るためのこの軟質ラミネートの設置作業を容易にすることを可能にし、また、時間の経過に伴う剥離の危険性に対してこのアセンブリの永続性を保証することによりアセンブリの信頼性を向上させることを可能にすることに留意されたい。
【0029】
接着剤を事前に塗拡するこの作業には以下の利点があることにも留意されたい。
【0030】
・設置場所よりも製造場所の方が表面の汚染を防ぎやすいことによる、接着剤を事前塗拡した表面の品質の制御。
【0031】
・接着剤を事前塗拡した表面の接着剤による最適化した濡れおよび軟質ラミネートの織物内への接着剤の浸透。
【0032】
・設置場所で実施される接着剤の事前塗拡作業に比べて向上した、塗布される接着剤の厚さの制御。
【0033】
本発明の他の特徴、利点および詳細は、添付図面に関して例示的かつ非限定的に書かれた本発明の例示的ないくつかの実施形態の以下の説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】軟質ラミネートへの接合によって2次密封障壁を形成することが意図された下ラミネートで覆われた、先行技術に従ってメタンタンカーのタンク向けに製造プロセス中の隣接する2枚の複合パネルの概略縦断面図である。
【図2】先行技術に従って下ラミネートが接合により軟質ラミネートで覆われた、図1のパネルの概略縦断面図である。
【図3】図2の接合を加圧によって得るための先行技術に基づく一例を示す概略縦断面図である。
【図4】運用中に、先行技術に従って図2および3の直下のラミネートに接合された軟質ラミネートに加わる機械剪断応力を示す概略縦断面図である。
【図5】図2から4に関する先行技術に従って接合されたアセンブリの弱点領域を示す概略詳細縦断面図である。
【図6】直下のラミネートに接合されたそれぞれの軟質ラミネートに対する本発明の例示的な一実施形態に基づく接着剤塗布域を示す概略詳細縦断面図である。
【図7】直下のラミネートに接合されたそれぞれの軟質ラミネートに対する本発明の他の例に基づく接着剤塗布域を、図6の変形実施形態として示す概略詳細縦断面図である。
【図8】断熱パネルに含まれる直下のラミネートにも本発明の接着剤を使用した接着剤を事前塗拡する、2次障壁を組み立てる本発明に基づく方法の必要に応じたステップを、図1に関して示す概略縦断面図である。
【図9】本発明の組立方法を実施するために使用することができる、加熱および加圧によって接合する自動機械を部分的に示す概略縦断面図である。
【図10】ドクターブレードを使用してそれぞれの軟質ラミネートに接着剤を塗布することによる本発明に基づく接着剤塗拡の一例を示す2つの概略透視図であり、それぞれこの接着剤塗拡操作の前および操作中の概略透視図である。
【図11】ドクターブレードを使用してそれぞれの軟質ラミネートに接着剤を塗布することによる本発明に基づく接着剤塗拡の一例を示す2つの概略透視図であり、それぞれこの接着剤塗拡操作の前および操作中の概略透視図である。
【図12】図10および11で使用されているドクターブレードによって得られるそれぞれの軟質ラミネートのコーティング領域を、本発明に基づく一例として示す概略縦断面図である。
【図13】接着剤の硬化の程度を視覚化する手段の接着剤への組込みの一例を、本発明の一実施形態に従って示す概略図である。
【図14】これらの可視化手段の接着剤への組込みの一変形を、本発明の他の実施形態に従って示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
工場で(軟質「Triplex」などの)それぞれの軟質ラミネート9に接着剤を事前塗拡し、加えて必要に応じて断熱パネルに含まれるラミネート7に接着剤を事前塗拡するために本発明に従って使用することができる接着剤108は一般に、入熱により特異的に硬化させることができるホット−メルト接着剤である。この接着剤108は主に、ポリオールマトリックス中に挿入された隔離されたイソシアネートカプセルからなる。以前に指摘したとおり、このマトリックス中にこのようなカプセルが挿入されていない接着剤を含め、製造工場でそれぞれの軟質ラミネート9に事前に塗拡することができ、次いで造船所で加熱によって硬化させることができる他のタイプの接着剤を使用することもできる。
【0036】
それぞれの軟質ラミネート9への接着剤の事前塗拡は、Collano社から「HCM 555」の名称で販売されている単一成分接着剤などのポリウレタン型またはポリエステル−ウレタン型のホット−メルト接着剤108を使用して、例えば約60℃の第1の軟化点で実施される。実際、接着剤108のマトリックスはこの温度で液体であるが、この接着剤108が尚早に硬化することを防ぐため、この温度は、イソシアネートを放出するには不十分である。軟質ラミネート9に塗布した後、この接着剤を周囲温度まで冷やす。この接着剤は、この軟質ラミネート9の表面に、接着剤108の緻密な連続層を形成する。
【0037】
図6および7から分かるように、本発明によれば、接着剤108、208は、直下のそれぞれのラミネート7の目に見える側の織物を覆うことが意図された軟質ラミネート9の織物9aの表面全体だけでなく、図6の例ではこの軟質ラミネート9の周縁115にも塗布され、図7の変形例ではさらに、接着剤208で覆われたこの縁115の先に広がる軟質ラミネート9の反対側の織物の表面9b(すなわち接合後のアセンブリの外面)にも塗布される。
【0038】
これらの図6および7に示すような接着剤108、208の塗布は、直下のラミネート7への軟質ラミネート9の接合部に弱点が存在することを防ぎ、このことは、運用中に受ける機械応力に対するこのスタックの抵抗性をより高めて、寿命を延ばし、破壊確率を大幅に低下させることを可能にする。さらに、軟質ラミネート9の端面が接着剤108、208で覆われ、かつ/または直下のラミネートのガラス布の繊維内へ接着剤が浸透するため、軟質ラミネート9の当該織物を構成する糸に沿ってマイクロリークが広がることはできない。
【0039】
軟質ラミネート9に接着剤を事前に塗拡することに加え、それに並行して、必要に応じて、図8に示すように、断熱パネルに含まれるそれぞれの直下のラミネート7の外面に同じ接着剤108を事前塗拡することも可能である。
【0040】
図9は、一例として、軟質ラミネート9のそれぞれのストリップを直下のラミネート7上に設置する自動機械120の使用を概略的に示し、この自動機械120は、少なくともこの軟質ラミネート9上に予め塗布した接着剤108、208を(例えば赤外線および/またはホットプレートによって)加熱し、この軟質ラミネート9を加圧することができる。矢印Aの方向に移動する機械120は特に、接着剤を事前に塗拡した軟質ラミネート9をほどいて直ぐ下のパネル1の支持体5上に置くローラ121を備える。例えば0.05MPa程度の圧力でラミネート7とラミネート9を接触させた後、「HCM 555」接着剤の例では3から4分間の135℃程度である加熱温度は、最終的に硬化した接着剤108、208がその特徴の全て、特にその強度および密封特徴を示すように、この接着剤が硬化することを可能にする。
【0041】
以前に指摘したとおり、2次密封障壁を組み立てるこの方法は、先行技術に比べて、特に以下のようないくつかの利点を有する。
【0042】
・軟質ラミネート9への接着剤の事前塗拡およびこのラミネート9の数分での自動設置、ならびに加圧下での接着剤108、208の硬化による大幅な時間の節約。
【0043】
・より信頼性が高く、より頑丈で、運用中に接合部に加わる多数の応力に対する抵抗性がより高い接合。
【0044】
図10から12は、コンベヤ132の上にあり、コーティングするラミネート9のストリップよりも幅が広いドクターブレード131によるコーティング技法を使用して、直下のラミネート7と接合界面を形成することが意図されたラミネート9の表面9a(すなわち上面(図12参照))およびラミネート9の周縁115に接着剤108が塗布されるように、それぞれの軟質ラミネート9に接着剤を事前に塗拡する本発明に基づく装置130の一例を示す。この方法は、これらの2つの表面9a、115に塗布される接着剤108の厚さを精密に制御することを可能にすることに留意されたい。
【0045】
図13および14は、例えば、組立てを実施する前のこの接着剤の可能な偶発的な硬化の開始(例えば、輸送中に接着剤が、過度の高温に非常に長時間さらされた場合、またはカプセルの尚早な破裂につながりうる接着剤に加わった高い機械圧力にさらにさらされた場合)、あるいは接合のために実施された加熱中の接着剤の適切な硬化または不十分な硬化を示すために、接着剤108’、108”の硬化の程度を、所定の色または色の明度によって示すように設計された可視化手段の組込みの例を示す。実際、製品の輸送中に120℃に達することはありえないが、偶発的に、日に数時間、数日にわたって60℃に達することはありうる。その実施の前に接着剤108’、108”が硬化し始めた場合、それにより、実施が困難になり、あるいは接合する材料への接着、接合強度または接合部の密封が不十分になることがある。
【0046】
以前に指摘したとおり、接着剤108’、108”は、カプセル108aに含まれるイソシアネートなどの少なくとも1種類の反応物R1と、これらのカプセル108aを含む、ポリオールなどの少なくとも1種類の別の反応物R2に基づくマトリックス108bとの間の硬化した状態における反応の生成物を含むことができ、この反応は、カプセル108aの破裂の直後に起こり、カプセル108aの破裂は、十分に長い時間にわたって温度が十分に高い場合に起こる。言い換えると、このカプセル封入は、接着剤108’、108”の硬化前に、1種または数種のそれぞれの反応物R1を、1種または数種のそれぞれの反応物R2に対して隔離することを可能にする。
【0047】
接着剤108’、108”の硬化または非硬化を視覚化するこの手段は、必要に応じて、これらのカプセル108aによって反応物R1とR2とが物理的に分離されたこの例において、
・図13に関して、カプセル108aの破裂後に(R1とR2の間の反応に加えて)それぞれ反応物R1またはR2と速やかに反応して、その色によって接着剤108’内で見分けることができる反応生成物を与えることができる、マトリックス108b中に存在する化合物(化合物C1)またはカプセル108a内に存在する化合物(化合物C2)、
・図14に関して、反応物R1を含むカプセル108aと同時に破裂するように設計されたカプセル108a以外の追加のカプセル108c内に存在し、カプセル108aと108cの同時破裂後に(R1とR2の間の反応に加えて)R1またはR2と速やかに反応して、その色によって接着剤108”内で見分けることができる反応生成物を与えることができる化合物C3、あるいは、
・図13または14に関して、カプセル108a内にR1と一緒に存在し、またはカプセル108c内に単独で存在し、どちらのカプセル内に存在するのかに応じてカプセル108aの破裂またはカプセル108aおよび108cの破裂の直後に接着剤108’、108”中へ拡散することができる染料(図示せず)
を含むことができる。
【0048】
2つのタイプのカプセル108aおよび108cを含む図14の特定のケースでは、接着剤108”が十分に長い時間にわたって過熱した場合にこれらのカプセルが正確に同じ瞬間に破裂するように、これらのカプセルを調整しなければならないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0049】
1 複合パネル
2 船殻
3 締着部材
4 樹脂
5a 断熱発泡材
5b 木板
6a 断熱発泡材
6b 木板
7 直下のラミネート
8 接着剤
9 軟質ラミネート
9a 織物
9b 織物
10 エアバッグ
11 保持バー
12 1次断熱シート
108 接着剤
108’ 接着剤
108” 接着剤
108a カプセル
108b マトリックス
108c 追加のカプセル
115 軟質ラミネートの周縁
120 ラミネートを設置する自動機械
121 ローラ
130 接着剤を事前塗拡する装置
131 ドクターブレード
132 コンベヤ
208 接着剤
C 応力
F 弱点
A 機械の移動方向
R1 反応物
R2 反応物
C1 化合物
C2 化合物
C3 化合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体メタンを含むタンクの2次極低温密封障壁のカバーストリップを形成する軟質複合ラミネート(9)であって、別の複合ラミネート(7)ないし直下のラミネートによってそれぞれ覆われた隣接する複合パネル(1)の継目に接合されることが意図されており、これらの2つのラミネートがそれぞれ、結合剤を含浸させた2枚の織物間に挿入された金属箔を備える軟質複合ラミネート(9)において、入熱によって硬化させることができるホット−メルト接着剤を使用した接着剤(108、108’、108”、208)が前記軟質ラミネートに事前に塗拡され、前記接着剤が、前記直下のラミネートと接触した前記接着剤の加熱および加圧による硬化によりその後に得られる接合されたアセンブリに特に、向上した機械強度と極低温液体のマイクロリークに対する保護とを与えるために、前記軟質ラミネートの織物のうち、それぞれの直下のラミネートの外側織物を覆うことが意図された織物(9a)と、前記軟質ラミネートの少なくとも1つの周縁(115)とに、前記接着剤の軟化点で塗布されることを特徴とする軟質複合ラミネート(9)。
【請求項2】
前記アセンブリの機械強度を最適化するため、前記接着剤(108、108’、108”、208)がさらに、接着剤が事前に塗拡された前記縁(115)の先に広がる前記軟質ラミネート(9)の外側織物(9b)の少なくとも周縁領域に塗布されていることを特徴とする、請求項1に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項3】
前記接着剤(108、108’、108”、208)が実質的に、硬化状態において、
前記接着剤のマトリックス(108b)を構成するポリオール、ポリエステル、ポリエーテルなどの第2の反応物(R2)から物理的および/または化学的に分離されたイソシアネートなどの第1の反応物(R1)と、
前記第2の反応物と
の間の、所定のしきい温度で前記接着剤を加熱した後の反応生成物であり、好ましくは前記接着剤が、単一成分接着剤、例えばポリウレタン型またはポリエステル−ウレタン型の単一成分接着剤である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の軟質複合ラミネート(9)。
【請求項4】
前記接着剤(108、108’、108”、208)が、前記反応を生じさせることなく前記接着剤を液体状態で塗布するための55℃から65℃の間の軟化点と、100℃から150℃の間の硬化温度とを有することを特徴とする、請求項3に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項5】
前記接着剤(108、108’、108”、208)が、好ましくはドクターブレード(131)、ローラまたはパウダコータを使用して、50g/mから800g/mの間の塗布量で前記軟質ラミネートに塗布されたものであることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項6】
例えば前記アセンブリを組み立てる前の前記接着剤の偶発的な硬化の開始または前記アセンブリを得るために実施された加熱中の前記接着剤の不十分な硬化を示すために、前記接着剤の以降の硬化の程度を、所定の色または色の明度によって示すように設計された可視化手段(Cl、C2、C3)を前記接着剤(108’、108”)が含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項7】
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが互いに少なくとも物理的に分離されている場合に、前記可視化手段が、前記マトリックス(108b)中または前記第1の反応物(R1)を含むカプセル(108a)内に存在し、前記カプセルの破裂の直後にそれぞれ前記第1の反応物または前記マトリックスと選択的に反応して、その色によって前記接着剤(108’)内で見分けることができる反応生成物を与えることができる化合物(C1またはC2)を含むことを特徴とする、請求項3および6に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項8】
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが互いに少なくとも物理的に分離されている場合に、前記可視化手段が、前記第1の反応物(R1)を含むカプセル(108a)と同時に破裂するように設計された前記カプセル(108a)以外の追加のカプセル(108c)内に存在し、前記第1の反応物を含む前記カプセル(108a)と前記追加のカプセル(108c)の同時破裂の直後に前記第1の反応物(R1)または前記マトリックス(108b)と選択的に反応して、その色によって前記接着剤(108”)内で見分けることができる反応生成物を与えることができる化合物(C3)を含むことを特徴とする、請求項3および6に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項9】
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが互いに少なくとも物理的に分離されている場合に、前記可視化手段が、前記第1の反応物(R1)を含むカプセル(108a)内、または前記第1の反応物を含む前記カプセル(108a)と同時に破裂するように設計された追加のカプセル(108c)内に存在し、前記第1の反応物を含む前記カプセル(108a)の破裂または前記カプセル(108a)と前記追加のカプセル(108c)の両方の破裂の直後に前記接着剤(108’または108”)中で拡散することができる染料を含むことを特徴とする、請求項3および6に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項10】
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが互いに化学的に分離されている場合に、前記可視化手段が、前記加熱中に前記しきい温度に達した直後に、前記第1の反応物または前記マトリックスと選択的に反応することができる化合物または染料を含み、前記化合物の場合には、その色によって前記接着剤(108)内で見分けることができる反応生成物を与え、または、前記染料の場合には前記接着剤内で拡散することを特徴とする、請求項3および6に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項11】
前記第1の反応物と前記第2の反応物とが互いに化学的に分離されている場合に、前記可視化手段が、前記加熱中に前記しきい温度に達した直後に破裂するように設計されたカプセル内に存在し、前記破裂後に前記接着剤(108)内で拡散することができる染料を含むことを特徴とする、請求項3および6に記載の軟質ラミネート(9)。
【請求項12】
別の複合ラミネートないし直下のラミネート(7)によってそれぞれ覆われた隣接する複合パネル(1)の継目に接合された軟質ラミネート(9)のストリップを備える、液体メタンを含むタンクの2次極低温密封障壁であって、これらの2つのラミネートがそれぞれ、結合剤を含浸させた2枚の織物間に挿入された金属箔を含む2次極低温密封障壁において、接着剤を事前に塗拡した前記請求項の一項に記載の軟質複合ラミネートのそれぞれのストリップを、必要に応じて熱硬化性の前記ホット−メルト接着剤(108、108’、108”、208)を塗拡した前記直下のラミネートと、高温、加圧下で、好ましくは100℃から150℃の間の温度で接触させることによって得られることを特徴とする2次極低温密封障壁。
【請求項13】
請求項12に記載の2次極低温密封障壁を接合によって組み立てる方法において、実質的に、
a)その軟化点で塗布された、好ましくは55℃から65℃の間の温度で塗布された熱硬化性の前記ホット−メルト接着剤(108、108’、108”、208)を使用して、軟質ラミネート(9)の製造されたそれぞれのストリップに、工場で事前塗拡するステップと、
b)この同じ接着剤を使用して、前記複合パネル(1)を覆う直下のラミネート(7)のそれぞれのストリップに、やはり工場で塗拡する必要に応じたステップと、
c)次いで、メタンタンカーのタンクの壁に前記障壁を組み付ける造船所において、高温、加圧下で、好ましくは100℃から150℃の間の硬化温度で、好ましくは30秒から5分の間、軟質ラミネートのそれぞれのストリップを、直下のラミネート(7)で覆われたパネルと接触させるステップと
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−210086(P2010−210086A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−27681(P2010−27681)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(591136931)
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
【Fターム(参考)】