説明

極端紫外光光源装置における照度分布の検出方法および極端紫外光光源装置

【課題】中間集光点以降における照度分布測定を、露光装置側に照度分布を測定する手段を設けることなく、極端紫外光光源装置単体でも行うことができるようにすること。
【解決手段】EUV光源装置において、集光鏡6と中間集光点fの間に、中間集光点fに集光するEUV光だけを抽出する多孔板201と蛍光板202と折り返しミラー203と受光検出器205を設ける。多孔板201には、中間集光点fに向かう光のみが通過するように配置された多数の貫通孔が設けられており、受光検出器205には中間集光点fに集光する光のみが受光される。受光検出器205で検出した点状の照度分布は画像処理部10で補間処理され、中間集光点fに集光する光の照度分布が復元される。これにより、集光点fに集光するEUV光の照度分布の悪化を知ることができ、また、EUV光の照度分布が良くなるように、集光鏡6を移動させ照度分布を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外光を放射する極端紫外光光源装置における照度分布の検出方法および照度分布検出手段を備えた極端紫外光光源装置に関し、さらに詳細には、EUV光源装置の集光光学手段の中間集光点以降に測定手段を設けることなく、中間集光点以降における放射照度分布を測定することができる極端紫外光光源装置における照度分布の検出方法および極端紫外光光源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、露光用光源の短波長化が進められ、次世代の半導体露光用光源として、特に波長13.5nmの極端紫外光(以下、EUV(Extreme Ultra Violet)光ともいう)を放射する極端紫外光光源装置(以下、EUV光源装置ともいう)の開発が進められている。
図6は、特許文献1記載されたEUV光源装置を簡易的に説明するための図である。
EUV光源装置は、放電容器であるチャンバ1を有する。チャンバ1内には、一対の円板状の放電電極2a,2bなどが収容される放電部1aと、ホイルトラップ5や集光光学手段であるEUV集光鏡6などが収容されるEUV集光部1bとを備えている。
1cは、放電部1a、EUV集光部1bを排気して、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニットである。
2a,2bは円盤状の電極である。電極2a,2bは所定間隔だけ互いに離間しており、それぞれ回転モータ16a,16bが回転することにより、16c,16dを回転軸として回転する。
14は、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ用原料である。高温プラズマ原料14は、加熱された溶融金属(melted metal)例えば液体状のスズであり、コンテナ15に収容される。
【0003】
上記電極2a,2bは、その一部が高温プラズマ原料14を収容するコンテナ15の中に浸されるように配置される。電極2a,2bの表面上に乗った液体状の高温プラズマ原料14は、電極2a,2bが回転することにより、放電空間に輸送される。上記放電空間に輸送された高温プラズマ原料14に対してレーザ源17aよりレーザ光17が照射される。レーザ光17が照射された高温プラズマ原料14は気化する。
高温プラズマ原料14がレーザ光17の照射により気化された状態で、電極2a,2bに、電力供給手段4からパルス電力が印加されることにより、両電極2a,2b間にパルス放電が開始し、高温プラズマ原料14によるプラズマPが形成される。放電時に流れる大電流によりプラズマが加熱励起され高温化すると、この高温プラズマPからEUVが放射される。
高温プラズマPから放射したEUV光は、EUV集光鏡6により集光鏡6の集光点(中間集光点ともいう)fに集められ、EUV光出射口7から出射し、EUV光源装置に接続された点線で示した露光機40に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−505460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
EUV光源装置を長時間にわたって点灯駆動した場合、高温プラズマPとEUV集光鏡とのアライメントのズレが生じ、中間集光点f以降のEUV光の放射強度分布特性(以下照度分布特性ともいう)が悪化し、分布が非対称になるという問題がある。
照度分布特性が悪化して非対称になる原因は、例えば以下の2つの原因が考えられる。
(1)点灯駆動時間の経過とともに放電電極が磨耗していくことにより、一対の放電電極間に形成されるプラズマの位置が、点灯初期の状態と比べて変動する。
(2)EUV集光鏡が、放電電極や高温プラズマから発せられる熱により高温になり、熱歪みを生じて変形する。
このように、中間集光点f以降におけるEUV光の照度分布特性が悪化して非対称になった場合は、露光機が処理する被処理体に露光ムラが生じる原因になることがある。
【0006】
このような問題を防ぐためには、EUV光が出射している状態で、反射鏡の光出射側に、EUV光を受光し受光した光の強さを検出する検出手段(例えばCCD)を挿入する。そして挿入した検出手段からの出力に基づいて照度分布を測定し、測定した照度分布が均一になるように集光鏡の位置を移動させればよい。
しかしながら、これには次のような問題がある
中間集光点f以降におけるEUV光の照度分布特性を測定するためには、光の強さを検出する検出手段を、中間集光点f以降に設けることが考えられる。しかし、上記したように、中間集光点f以降は、EUV光源装置に接続する露光機の領域であり、露光機側に検出手段を取り付けるようにしたのでは、EUV光源装置単体でEUV光の照度分布特性を測定すること、例えばEUV光源装置の製作中に反射鏡の位置調整を行うために照度分布特性を測定することなどができない。
【0007】
しかし、検出手段を単に集光鏡と中間集光点fの間に挿入したのでは、検出手段には、中間集光点fに集光しない光も入射する。そのため中間集光点fに集光するEUV光の照度分布を測定することができない。
検出手段に中間集光点fに集光しない光が入射する理由は、一対の放電電極間に形成されるプラズマPが空間的広がりを有するため、プラズマPから出射したEUV光は、集光鏡により反射されても、全てが中間集光点fには集光するわけではないからである。むしろ、反射鏡6により中間集光点fに集光されるEUV光は、プラズマPから放射されるEUV光の一部分である。
【0008】
このように、検出手段に中間集光点fに集光しないEUV光までもが入射すると、中間集光点f以降での照度分布を正確に測定することができない。
実際に、単に集光鏡6と中間集光点fの間に検出手段を挿入し、EUV光の照度分布を測定したのでは、中間集光点f以上での照度分布が不均一な場合であっても、検出手段が検出する照度分布は、全体がほぼ均一に光ったようなものとなり、照度分布が不均一になっていることを検出することができない。
本発明は上記に基づきなされたものであって、本発明の目的は、極端紫外光光源装置の中間集光点以降における照度分布測定を、露光装置側に照度分布を測定する手段を設けることなく、極端紫外光光源装置単体でも行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るEUV光源装置においては、EUV光を放射するプラズマが空間的広がりを有するため、当該プラズマから放射されて集光鏡により反射されても、反射したEUV光の全てが、EUV光源装置の中間集光点に集光するわけではない。
そこで、本発明においては、集光鏡と中間集光点fの間で、集光鏡により反射したEUV光の中から中間集光点に集光するEUV光だけを抽出し、その抽出したEUV光を用い、その変動を検出することにより、中間集光点に集光するEUV光の照度分布変動を検出する。
集光鏡により反射したEUV光の中から中間集光点に集光するEUV光だけを抽出する方法は、集光点に集光する極端紫外光が通過する貫通孔を複数形成した多孔板を用いる。
多孔板に形成する複数の貫通孔は、多孔板を光路に挿入した時にEUV光の光軸が通過する位置を中心にして同心円状に配置されている。
また、貫通孔は、各貫通孔が配置されている位置と中間集光点fとを結ぶ直線が通過するように角度をつけて形成されている。このことにより、集光鏡により反射されて多孔板に照射されるEUV光のうち、中間集光点fに向かう光はこの貫通孔を通過することができるが、中間集光点fに向かわない光は通過できず遮られる。したがって、多孔板から出射する光は全て中間集光点fに向かう光である。
【0010】
上記多孔板の光出射側に、EUV光を可視光に変換する蛍光板(シンチレータ)を配置し、多孔板を通過したEUV光を可視光に変換するようにしてもよい。これにより、可視光を検出する検出手段を用いてEUV光の照度分布を検出することができる。
検出手段により検出される光は、同心円状に配置された複数の貫通孔を通過した多数の点状の光であるが、EUV光源装置の制御部において、検出した光(照度)のデータを補間し照度分布画像を復元すれば、中間集光点以降の位置で測定した照度分布測定結果に近い画像を得ることができる。
【0011】
以上に基づき本発明においては、次のようにして前記課題を解決する。
(1)集光鏡と該集光鏡の集光点との間であって、上記集光鏡の光軸上に、上記集光点に集光する光のみが通過する貫通孔が複数形成された多孔板を挿入し、上記多孔板を通過した極端紫外光の照度分布を測定する。そして、この照度分布に基づき、上記多孔板が挿入されていないときに上記集光点に集光する光の照度分布を求める。
(2)極端紫外光を集光する集光鏡と、上記集光鏡と該集光鏡の集光点との間であって、上記集光鏡の光軸上に挿入可能に配置され、上記光軸上に挿入されたときに上記集光点に集光する光のみが通過する貫通孔が複数形成された多孔板と、この多孔板を通過した極端紫外光を受光し、該受光した光の強さを検出する検出手段とを極端紫外光光源装置に設ける。
(3)上記(2)において、上記多孔板の光出射側に、極端紫外光を可視光に変換する蛍光板を設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明のEUV光源装置によれば、集光鏡と中間集光点との間で、中間集光点に集光するEUV光のみを取り出して照度分布の変動を検出する手段を備えているため、上記したような種々の要因によって極端紫外光の照度分布特性が変動した場合であっても、EUV光源装置単体で、中間集光点以降における当該EUV光の照度分布特性の変動を検出することができる。
また、EUV光源装置単体で、中間集光点以降における当該EUV光の照度分布特性の変動を検出することができるので、EUV装置の製作中、あるいは集光鏡の交換時等に、照度分布特性の確認を行ったり、また、検出した極端紫外光の照度分布特性に基づき、最適な極端紫外光の照度分布特性になるように集光鏡の位置調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例のEUV光源装置の構成の概略構成を示す図である。
【図2】図1において検出手段の部分を拡大して示した図である。
【図3】中間集光点f以降の照度分布画像と、多孔板を介して受光した画像を比較して示した図である。
【図4】図3の画像を得るために使用した装置構成を示す図である。
【図5】放電電極を備えないEUV光源装置に本発明を適用した場合の概略構成を示す図である。
【図6】EUV光源装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、本発明の実施例のEUV光源装置の構成の概略を示す。
EUV光源装置の構成は、図6に示したものと同様であり、放電電極2a,2bを収容する放電部1aと、ホイルトラップ5と集光鏡(集光光学手段)6とを収容するEUV集光部1bとにより構成されるチャンバ1を備える。
チャンバ1には、放電部1aとEUV集光部1bを排気して、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニット1cが設けられている。一対の円盤状の電極である電極2a,2bは所定間隔だけ互いに離間しており、それぞれ回転モータ16a,16bが回転することにより、16c,16dを回転軸として回転する。
14は、波長13.5nmのEUV光を放射する高温プラズマ用原料である。高温プラズマ原料14は、加熱された溶融金属(melted metal)例えば液体状のスズであり、コンテナ15に収容される。
上記電極2a,2bは、その一部が高温プラズマ原料14を収容するコンテナ15の中に浸されるように配置される。電極2a,2bの表面上に乗った液体状の高温プラズマ原料14は、電極2a,2bが回転することにより、放電空間に輸送される。上記放電空間に輸送された高温プラズマ原料14に対してレーザ源17aよりレーザ光17が照射される。レーザ光17が照射された高温プラズマ原料14は気化する。この状態で、放電電極2aと2bの間に電力供給手段4からパルス電力が供給されると、放電電極2aのエッジ部分と放電電極2bのエッジ部分との間で放電が発生し、高温プラズマ原料14によるプラズマPが形成され、放電時に流れる大電流により加熱励起され高温化し、この高温プラズマPからEUV光が放射される。
【0015】
集光点fに集光するEUV光を検出するための検出手段20は、このとき、同図の点線に示す退避位置にあり、高温プラズマPから放射したEUV光は、EUV集光鏡6により集光鏡6の集光点fに集められ、EUV光出射口7から出射し、EUV光源装置に接続された点線で示した露光機40に入射する。
EUV集光部1bに配置された集光鏡6は、高温プラズマPから放射された波長13.5nmのEUV光を反射するための光反射面6aが形成されている。
集光鏡6は、互いに接触することなく入れ子状に配置された複数の光反射面6aにより構成されている。
各光反射面6aは、Ni(ニッケル)などからなる平滑面を有する基体材料の反射面側に、Ru(ルテニウム)、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)などの金属を緻密にコーティングすることにより、0〜25°の射入射角度の極端紫外光を良好に反射するように形成されている。各光反射面6aは、集光点fが一致するように構成される。
【0016】
本発明のEUV光源装置はEUV光源装置の集光点(中間集光点)f以降におけるEUV光の照度分布変動を検出することを目的とし、このための検出手段20を備えている。
これは、中間集光点fを通過した光がEUV光源装置に接続される露光機40内に入射するため、中間集光点f以降におけるEUV光の照度の照度分布変動を検出することによって、露光機40で露光処理する被処理体に露光ムラが発生することを防止するためである。
前記したように、EUV光源装置は、一対の放電電極間に形成されるプラズマが空間的広がりを有するため、プラズマPから放射され集光鏡6の反射面6aにより反射されても、反射されたEUV光の全てが中間集光点fに集光する訳ではない。
そこで、中間集光点fに集光するEUV光の照度分布変動を検出するために、集光鏡6の反射面6aにより反射されるEUV光の中から、中間集光点fに集光するEUV光を抽出し、抽出したEUV光により照度分布特性を測定する。
【0017】
以下、中間集光点fに集光するEUV光を検出するための検出手段について、図1と図2を用いて説明する。
中間集光点fに集光するEUV光を抽出して検出するための検出手段20は、図1、図2に示すように、中間集光点fに集光するEUV光を含む光は通過するが中間集光点fに集光しないEUV光を含む光は遮光する多孔板201と、多孔板201を通過したEUV光を可視光に変換するシンチレータ(蛍光板)202と、蛍光板202により可視光に変換された光を受光検出器205の方向に反射する折り返しミラー203と、折り返しミラー203により反射した光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を出力する受光検出器205とを備える。
なお、図1においては、検出手段20の多孔板201とシンチレータ(蛍光板)202折り返しミラー203は、一体で集光鏡6から出射するEUV光の光路内に挿入退避できるよう、移動機構204が設けられている。
【0018】
図2は、検出手段20の部分を拡大して示した図である。同図においてアパーチャ301が配置されている集光点fより右側が露光機側であり、左側がEUV光源装置側である。また、同図では多孔板201の正面図(同図(a))と側面図(同図(b))を示している。
同図に示すように、多孔板201には、集光点fに集光する極端紫外光が通過する貫通孔(例えばφ1mmの細孔)が複数(約200個)形成されている。多孔板201に形成する複数の貫通孔は、多孔板を光路に挿入した時にEUV光の光軸が通過する位置を中心にして同心円状に配置されている。なお、多孔板の材質はアルミニウムであり、表面は光の乱反射を防ぐために黒アルマイト処理が施されている。
【0019】
また、貫通孔は、多孔板201の各貫通孔が配置されている位置と中間集光点fとを結ぶ直線が通過するように角度(同図に示すように例えば、光軸方向に対する角度が3〜15°)をつけて形成されている。このことにより、集光鏡6により反射されて多孔板201に照射されるEUV光のうち、中間集光点fに向かう光はこの貫通孔を通過することができるが、中間集光点fに向かわない光は通過できず遮られる。したがって、多孔板201から出射する光は全て中間集光点fに向かう光となる。
EUV光が通過する距離が長いほど、即ち孔の長さが長いほど、多孔板201は中間集光点fに向かう光のみを精度良く取り出すことができる。したがって、多孔板201の板厚は厚いほうが良いが、実際には10mm〜30mmの厚さのものを使用している。
【0020】
多孔板201を通過したEUV光は、多孔板201の光出射側に設けた蛍光板(シンチレータ)202により可視光に変換される。蛍光板202は、EUV光が入射する、多孔板に形成された同心円状の多数の貫通孔の部分だけが光る。そして、貫通孔の各点の明るさはEUV光の強さに応じている。
この、蛍光板202が光っている状態を、折り返しミラー203により反射し、受光検出器205により検出する。受光検出器205は、例えばCCDであり、受光部が受光した照度データを電気信号として画像処理部10に送信する。
画像処理部10が、受光検出器205から受信した照度データに基づく画像は、図2(c)に示すような、同心円状に配置された複数の貫通孔を通過した多数の点状の光の画像である。画像処理部10は、各点状の光の強さに基づいて各点間の光の強度のデータを補間し、中間集光点f以降における照度分布の画像を復元する。画像処理部10により復元した照度分布の画像は、例えばモニタ11に表示される。
【0021】
図1に示したように、検出手段20は集光鏡6から出射するEUV光の光路内に挿入退避できるよう、移動機構204が設けられている。
このため、EUV光源装置の運転中には、上記移動機構204により、検出手段20を同図の上側の点線で示した退避位置に退避させることができる。また、EUV光源装置の休止中には、上記移動機構に204により検出手段20を、同図の実線で示した位置に移動させ、EUV光源装置を動作させ、検出手段20により照度分布を測定することができる。
また、集光鏡6には集光鏡6を移動させるための集光鏡位置移動手段13が設けられ、集光鏡位置移動手段13は位置調整手段12により駆動される。
したがって、検出手段20を、同図の実線で示した位置に移動させることにより、照度分布を確認することができ、モニタ11に表示される照度分布が、あらかじめ測定した初期の照度分布に比べて悪化していれば、位置調整手段12により集光鏡位置移動手段13を駆動して集光鏡6の位置を修正することができる。
即ち、復元した照度分布がよくなるように、位置調整手段12により集光鏡位置移動手段13を駆動して集光鏡6の位置を移動し、集光点fに集光して露光機内に入射するEUV光の照度分布を改善することができる。
【0022】
図3は、中間集光点f以降のEUV光の照度分布の画像(a)と、多孔板201を介して受光検出器205が受光する画像(b)と、(b)から画像処理部10が復元した照度分布の画像(c)を比較して示したものである。
図3に示す画像は、図4に示すようにして測定した。
すなわち、図4に示すように、EUV光の中間集光点fにアパーチャ301を配置し、アパーチャ301を配置した中間集光点fの集光鏡6側に、前述した多孔板201を介してEUV光の照度分布を測定する検出手段20を配置した。また、中間集光点f以降(中間集光点fに対して集光鏡6の反対側)に、EUV光の照度分布を測定するための蛍光板302と受光検出器303からなる第2の検出手段30を配置した。
そして、多孔板201を有する検出手段20を同図の位置に挿入して、多孔板201を介して測定した時のEUV光の照度分布を測定し、また、上記検出手段20をEUV光の光路中から退避させ、上記検出手段30により、多孔板201を設けない状態において中間集光点fに集光するEUV光の照度分布を測定し、両者を比較した。
【0023】
図3(a)が中間集光点fに集光されるEUV光の照度分布(中間集光点f以降のあらかじめ設定された位置において測定)であり、(b)が多孔板を介して測定したEUV光の照度分布、(c)が(b)の照度分布を画像処理部10において復元した照度分布である。
白の部分がEUV光の強度が強い部分であり、灰色から黒の部分がEUV光の強度が弱い部分である。
図3(c)の復元画像は、図3(b)の画像を補間して復元した画像である。すなわち、同図(b)に示す同心円状に並んだ各測定点の照度を、同一の円周上で補間して、同心円上の照度分布を求め、さらに、図3(d)に示すように同心円の中心と、円周上の各点を直線で結んで、直線上で照度分布を補間することにより、図3(c)に示す画像を復元した。
【0024】
図3(a)は、画像の右側にEUV光の強度が強い部分があるが、図3(c)の画像にも右側にEUV光の強度が強い部分がある。このように、多孔板を介して測定したEUV光に基づいて復元した照度分布は、中間集光点fに集光されるEUV光の照度分布と同様の分布を示し、両者には相関性がある。
したがって、検出手段20により多孔板を介して検出したEUV光に基づいて復元した照度分布により、そのEUV光の照度分布が均一になるように、集光鏡6の位置を調整すれば、中間集光点fに集光されるEUV光の照度分布が均一にすることができる。
【0025】
以上のように本実施例によれば、EUV光源装置単体で、中間集光点以降における当該EUV光の照度分布特性の変動を検出することができ、検出手段20をEUV光の光路中に挿入することで、EUV光源装置の製作時に、あるいは、EUV光源装置の運転を休止しているときに、照度分布特性の確認を行ったり、また、検出した極端紫外光の照度分布特性に基づき、最適な極端紫外光の照度分布特性になるように集光鏡の位置調整することができる。
また、多孔板を介して検出したEUV光に基づいて復元した照度分布による集光鏡6の位置の調整は、集光鏡6を新しいものに交換した際の、集光鏡の位置調整においても使用することができる。
【0026】
上記実施例においては、放電電極間に生じる放電によりEUV光を放射するEUV光源装置を例にして説明を行ったが、EUV光源装置には放電電極を備えないものもあり、そのような装置にも、本発明の集光鏡の位置調整方法を適用することができる。
図5に、放電電極を備えないEUV光源装置に本発明を適用した構成の概略を示す。
EUV光源装置は、集光光学手段である集光鏡51を収容するチャンバ1を備える。集光鏡51は、高温プラズマから放射された波長13.5nmのEUV光を反射し、その光を集光点fに集光するための光反射面51aが形成されている。
チャンバ1には、チャンバ1内を真空状態にするためのガス排気ユニット1cが設けられている。
EUV光源装置は、集光鏡51の光反射面51a側に、高温プラズマ生成用の液体または固体の原料Mを落下(滴下)して供給する原料供給手段52を備える。原料Mは、例えば、スズ(Sn)、リチウム(Li)である。
【0027】
EUV光源装置は、原料供給手段52により供給された原料Mに対して、非常に高いエネルギーのレーザビームを照射する高出力のレーザ装置53を備える。
原料供給手段52により、集光鏡51の光反射面51a側に供給された高温プラズマ用の原料Mに対し、高出力のレーザ装置53からレーザ入射窓53aを介して非常に高いエネルギーを有するレーザビームが照射される。これによって、原料Mが高温プラズマとなり、波長13.5nmのEUV光を放射する。高温プラズマから放射されたEUV光は、集光鏡51の光反射面51aにより反射され、集光点fに集光する。
しかし、上記したように、生成されたプラズマは空間的広がりを有するため、プラズマから放射され集光鏡51により反射されても、反射されたEUV光の全てが中間集光点fに集光する訳ではなく、中間集光点fに集光されない、中間集光点fの周囲に照射される成分が生じる。
そこで、上記実施例と同様に、多孔板201を介してEUV光を検出するための検出手段20を、集光鏡51と集光鏡51の集光点(中間集光点)fとの間であって、集光鏡51の光軸上に配置し、EUV光の照度分布を測定する。
【0028】
検出手段20は、前記したように、中間集光点fに集光するEUV光を含む光は通過するが中間集光点fに集光しないEUV光を含む光は遮光する多孔板201と、多孔板201を通過したEUV光を可視光に変換するシンチレータ(蛍光板)202と、蛍光板202により可視光に変換された光を受光検出器205の方向に反射する折り返しミラー203と、折り返しミラー203により反射した光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を出力する受光検出器205とを備える。
上記検出手段20を設けることで、前記したように、集光点f以降に集光するEUV光の照度分布を測定することができる。
したがって、測定したEUV光に基づき復元した照度分布を用いて、集光鏡51の位置を移動させ、中間集光点fに集光するEUV光の照度分布変動を補正することができる。
なお、上記実施例では、シンチレータ(蛍光板)202を用いて多孔板を通過した光を可視光に変換しているが、EUV光を直接測定できる受光検出器を用いる場合には、蛍光板202を使用する必要はない。
【符号の説明】
【0029】
1 チャンバ
1a 放電部
1b EUV集光部
2a,2b 電極
3 パルス電力供給部
4 電力供給手段
5 ホイルトラップ
6 集光鏡
10 画像処理部
11 モニタ
12 位置調整手段
13 集光鏡位置移動手段
14 高温プラズマ原料
15 コンテナ
16a,16b 回転モータ
17 レーザ光
17a レーザ源
20 検出手段
201 多孔板
202 蛍光板(シンチレータ)
203 折り返しミラー
204 移動機構
205 受光検出器(CCD)
30 第2の検出手段
301 アパーチャ
302 蛍光板
303 受光検出器
40 露光機
51 集光鏡
52 原料供給手段
53 高出力レーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光を反射して集光する集光光学手段を備えた極端紫外光光源装置における照度分布の検出方法であって、
上記集光鏡と該集光鏡の集光点との間であって、上記集光鏡の光軸上に、上記集光点に集光する光のみが通過する貫通孔が複数形成された多孔板を挿入し、
上記多孔板を通過した極端紫外光の照度分布を測定し、
該照度分布に基づき、上記多孔板が挿入されていないときに上記集光点に集光する光の照度分布を求める
ことを特徴とする極端紫外光光源装置における照度分布の検出方法。
【請求項2】
極端紫外光を集光する集光鏡と、
上記集光鏡と該集光鏡の集光点との間であって、上記集光鏡の光軸上に挿入可能に配置され、上記光軸上に挿入されたときに上記集光点に集光する光のみが通過する貫通孔が複数形成された多孔板と、
上記多孔板を通過した極端紫外光を受光し、該受光した光の強さを検出する検出手段と、を備えた
ことを特徴とする極端紫外光光源装置。
【請求項3】
上記多孔板の光出射側には、極端紫外光を可視光に変換する蛍光板が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の極端紫外光光源装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104368(P2012−104368A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251626(P2010−251626)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト/次世代半導体材料・プロセス基盤(MIRAI)プロジェクト(石特会計/EUV光源高信頼化技術開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】