説明

極薄金属箔付き粘着テープ

【課題】ハンドリング時には、金属箔が強固に固定されて、剥がす際には、簡単に不要なフィルムを除去でき、且つ粘着剤の糊残りのない極薄金属箔付き粘着テープを提供する。
【解決手段】基材フィルム(A)上に、粘着剤層(B)と極薄金属箔(C)とを順次積層してなる極薄金属箔付粘着テープであって、粘着剤層(B)は、外部刺激を受けると、粘着力の減少により剥離化が容易となる接着力可変型粘着剤から構成され、一方、極薄金属箔(C)は、無電解メッキ、電気メッキ、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、9μm以下の厚みに直接形成されることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープなどを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極薄金属箔付粘着テープ、それを用いた極薄金属箔転写体の製造方法、及び極薄金属箔転写体に関し、さらに詳しくは、粘着テープ上で、直接極薄金属箔を作製し、外部刺激により、粘着剤の剥離力を変化させることができる極薄金属箔付粘着テープ、それを用いた極薄金属箔転写体の製造方法、及び極薄金属箔転写体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進んでいるが、携帯情報端末の発達やコンピュータを持ち運んで操作する所謂モバイルコンピューティングの普及によって、一層小型化が進み、これら電子機器に内蔵される多層配線基板には、一層の小型化、薄型化、回路の高精細化等が要求されている。
また、通信機器に代表されるように、高速動作が求められる電子機器が広く使用されるようになってきたが、このような電子機器に対応するために、高速動作に適した多層配線基板が求められている。この高速動作に適応させるため、多層配線基板には、さらに、小型化、薄型化及び回路の高精細化(回路の高密度化)が要求されている。
【0003】
ところが、回路の高精細化には、細線パターン化すればするほど、回路パターンと基板との接着力が弱くなり、エッチング工程、DFR剥離工程で薬液の水流等の抵抗により、回路パターンが脱落しやすくなるという問題がある。
この場合、さらに薄い銅箔を使用すれば、水流の抵抗を小さくできるので、極薄銅箔が強く望まれている。
【0004】
薄い銅箔の製造は、各銅箔メーカーが種々の方法により、製造している。例えば、ハンドリング性向上の為に支持板として35μm厚程度の銅箔を用い、その上に、剥離層を付着させ、剥離層の上に2μm厚程度の極薄銅箔を載せる方法がある。
これを特許文献でみると、例えば、特許文献1には、(i)絶縁性樹脂基板と、(ii)支持体金属箔、該支持体金属箔表面に設けられた有機系剥離層、および該有機系剥離層上に形成された導電性微粒子群からなる複合箔とを、導電性微粒子群が絶縁性樹脂基板と対峙するように接着し、次いで、該複合箔から支持体金属箔を剥離して、導電性微粒子群を絶縁性樹脂基板表面に有する金属張り積層板を作製し、該金属張り積層板に穴開けをしてバイアホールを形成したのち、無電解メッキ、次いで電解メッキを行って、バイアホールおよび導電性微粒子群上に、メッキ層を形成し、回路形成用のレジストをメッキ層表面に塗布し、回路以外の部分のメッキ層を、エッチングによって除去したのち、レジストを除去することを特徴とするプリント配線板の製造方法、すなわち、支持体金属箔と有機系剥離層を用いた極薄金属箔が開示されている。
また、特許文献2には、ポリベンゾアゾールフィルムの片面または両面に、接着剤層を介することなく、金属薄膜が形成されていることを特徴とする金属薄膜積層フィルム、及びこの金属薄膜積層フィルムを基板として用いたことを特徴とするフレキシブルプリント配線板が開示されている。但し、これは、金属膜をフィルム上に固定するだけのものである。
さらに、特許文献3には、基材となるフィルムの上に離型層を形成し、該離型層の上に蒸着等で金属を載せ、蒸着金属を電解メッキ法で金属膜を成長させることで、フィルムから容易に剥離できる金属箔つきフィルムとする、剥離層の上に蒸着、メッキ等で超極薄金属箔を作製する方法が開示されている。
【0005】
しかし、上記これらの方法は、剥離層の上に金属層を形成するために、ハンドリング時の衝撃等で簡単に金属箔が剥がれ、製造工程に不具合が出るなどの問題があった。また、剥離層と極薄金属箔との接着力が弱いために、ラミネート不良になりやすいこと、剥離層が極薄金属箔にも残り、その除去に手間がかかる等の問題があった。
【0006】
上述したように、回路の高精細化は、細線パターンの回路を作製するならば、さらに薄い銅箔が必要となり、極めて薄い銅箔が強く要望されている。
しかし、現行の電解銅箔、圧延銅箔では、製造工程の薄銅箔のハンドリングに限界があり、9μm厚程度が下限界となっている。
【特許文献1】特開2000−151068号公報
【特許文献2】特開平11−207866号公報
【特許文献3】特開2003−033994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、ハンドリング時には、金属箔が強固に固定されて、剥がす際には、簡単に不要なフィルム(又はテープ)を除去でき、且つ粘着剤の糊残りのない極薄金属箔付き粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、従来の剥離層(離型層)ではなく、UV硬化型粘着剤等の外部刺激により剥離力又は接着力が変化(易剥離化)する接着力可変型粘着剤を用いると、ハンドリング時には、強固に接着・固定されて上記のような問題を解決して、剥がす際には、簡単に不要なフィルム(又はテープ)を除去でき、且つ粘着剤の糊残りのない極薄金属箔付き粘着テープを提供できることを見出した。それらの知見に、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、基材フィルム(A)上に、粘着剤層(B)と極薄金属箔(C)とを順次積層してなる極薄金属箔付粘着テープであって、粘着剤層(B)は、外部刺激を受けると、粘着力の減少により剥離化が容易となる接着力可変型粘着剤から構成され、一方、極薄金属箔(C)は、無電解メッキ、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、9μm以下の厚みに直接形成されることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、粘着剤層(B)は、極薄金属箔(C)に対して、JIS Z0237に準拠した初期接着力が1〜20N/25mmであり、外部刺激を受けた後の接着力が1N/25mm未満であることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、粘着剤層(B)に用いられる接着力可変型粘着剤は、UV硬化型粘着剤、ガス発生型UV粘着剤、熱硬化型粘着剤又は熱発泡型粘着剤から選ばれる少なくとも一種であり、かつ、40重量%以上のゲル分率、および−20℃以上のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
【0010】
本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、極薄金属箔(C)の厚みは、0.5〜5μmであることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、極薄金属箔(C)は、無電解メッキ法により形成されることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、極薄金属箔(C)は、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、厚み1μm以下の超極薄金属箔(C’)に製膜した後、さらにその上に、電気メッキ法で形成されることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープが提供される。
【0011】
本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係る極薄金属箔付粘着テープに、基材フィルム(A)側から外部刺激を与えて粘着剤層(B)の粘着力を減少させた後、極薄金属箔(C)のみを粘着テープから剥離して、極薄金属箔を分離することを特徴とする極薄金属箔の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、極薄金属箔(C)の厚みは、0.5〜5μmであることを特徴とする極薄金属箔の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係る極薄金属箔付粘着テープをそのまま被転写体に貼着させ、次いで基材フィルム(A)側から外部刺激を与えて粘着剤層(B)の粘着力を減少させた後、極薄金属箔(C)のみを粘着テープから剥離して、極薄金属箔を単離することなしに、被転写体に転写することを特徴とする極薄金属箔転写体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明に係る極薄金属箔転写体の製造方法により得られた回路基板が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金属膜(金属箔)作製時、搬送時、作業時には、強い接着力を示し、金属膜(金属箔)と粘着テープが剥がれたり、シワが入ったりするのを有効に防止し、一方、外部刺激を与えると、容易に粘着テープと金属膜(金属箔)を分離できる金属膜付き粘着テープを提供することができる。
また、本発明では、テープ上で極薄金属箔を作製することにより、ハンドリングの問題を解決でき、厚さ9μm以下の極薄金属箔の作製はもとより、5μm以下、1μm以下のものも、作製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の極薄金属箔付き粘着テープなどについて、詳細に説明する。
【0015】
本発明の極薄金属箔付き粘着テープは、基材フィルム(A)上に、粘着剤層(B)と極薄金属箔(C)とを順次積層してなる極薄金属箔付粘着テープであって、粘着剤層(B)は、外部刺激を受けると、粘着力の減少により剥離化が容易となる接着力可変型粘着剤から構成され、一方、極薄金属箔(C)は、無電解メッキ、電気メッキ、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、9μm以下の厚みに直接形成されることを特徴とするものである。
【0016】
1.基材フィルム(A)
上記基材フィルム(A)としては、特に限定されず、適度な柔軟性、透明性を有する公知の樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、PEEK、PES等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。
なお、外部刺激が紫外線(UV)である際には、紫外線を透過するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンが好ましい。
【0017】
また、上記基材フィルム(A)の表面は、易粘着処理が施されていてもよい。
上記易粘着処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の基材表面の極性を変えるものや、ウレタン、ポリエステル等の表面コート剤を上記基材フィルム表面に塗工する処理等が挙げられる。
【0018】
上記基材フィルム(A)の厚さの下限は10μm、上限は500μmであることが好ましく、下限は20μm、上限は300μmであることがより好ましい。上記基材フィルムの厚さが10μm未満であると、金属膜をテープ上で生成中、もしくは生成後のハンドリングにおいてフィルムが折れたり、シワが入ることがある。一方、上記基材フィルムの厚さが500μmを超えると、柔軟性が損なわれて、基材フィルムを金属箔(回路パターン)から引き剥がしにくくなることがある。
【0019】
また、本発明の極薄金属箔付き粘着テープとしては、上記フィルムを基材とする片面テープでもあってもよいし、本発明の該当テープをガラス等の基板に固定するために、上記のようなフィルムを芯材とする両面テープであっても良い。
【0020】
2.粘着剤層(B)
本発明においては、粘着テープ上、つまり粘着剤層(B)の上に、金属膜すなわち極薄金属箔(C)を、直接形成する点に、最大の特徴を有する。
上記粘着剤層(B)を形成する粘着剤の種類としては、外部刺激により、粘着力の変化する接着力可変型の粘着剤が好ましい。特に、UV、熱を外部刺激とする接着力可変型の粘着剤は、外部刺激が汎用的であるため、本明細書で詳細に述べるが、本発明は、この2つに限定されるものではなく、超音波、電子線、振動、レーザー等を、外部刺激とするものも含まれる。具体的には、UV硬化型粘着剤、ガス発生型UV粘着剤、熱硬化型粘着剤又は熱発泡型粘着剤の少なくとも一種の接着力可変型粘着剤が好ましい。
【0021】
粘着剤の構成としては、特に限定されないが、例えば、分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーとラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとを含有し、更に、重合開始剤として光重合開始剤又は熱重合開始剤を含有することが好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系とは、アクリル酸アルキルエステル系及び/又はメタクリル酸アルキルエステル系を意味する。
このような構成からなる粘着剤層に、外部刺激を与えることにより、上記分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーと上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとが架橋するため、本発明の粘着テープの接着性が低下し、容易に本発明の粘着テープと、金属膜を剥離することができる。
【0022】
上記分子内にラジカル重合性の不飽和結合を有してなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーは、例えば、分子内に官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマー(以下、官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーともいう)をあらかじめ合成し、上記官能基と反応しうる官能基とラジカル重合性の不飽和結合とを分子内に有する化合物(以下、官能基含有不飽和化合物ともいう)と反応させることにより得ることができる。
【0023】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーとしては特に限定されないが、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、カルボキシル基含有ラジカル重合性オリゴマー又はモノマーとの共重合体が好適に用いられる。
【0024】
【化1】

【0025】
上記一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0026】
上記一般式(1)においてRで表されるアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルペンチル基等が挙げられる。また、これらのアルキル基の水素原子の一部は、ハロゲン原子、水酸基等で置換されていてもよい。
【0027】
上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
本発明では、粘着剤のガラス転移点(Tg)が−20℃以上のものが好ましい、このため、エチルアクリレート、メチルアクリレートとの共重合体の使用が好ましい。
これは、無電解メッキ、電気メッキ等の処理時に数十度の熱がテープにかかり、金属膜の生成中に金属膜が割れるのを防ぐためである。
【0029】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性オリゴマー又はモノマーとしては、特に限定されず、生成される上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの極性を調整し、かつ、後述するラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーと化学結合を形成して架橋点となるものが挙げられ、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有オリゴマー又はモノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基含有オリゴマー又はモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有オリゴマー又はモノマー;(メタ)アクリル酸イソシアネートエチル等のイソシアネート基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。
【0030】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性オリゴマー又はモノマーの含有量としては、特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は20重量部である。1重量部未満であると、適度な接着力を有する粘着剤を得られにくく、20重量部を超えると、生成される官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が高くなりすぎたり架橋点が多くなりすぎたりして、適度な柔軟性と接着力とを有する粘着剤を得ることが困難となることがある。より好ましい下限は3重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0031】
上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量としては、特に限定されないが、好ましい下限は20万、好ましい上限は200万である。
【0032】
上記官能基含有不飽和化合物としては、特に限定されないが、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基の種類に応じて適宜選択され、例えば、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がカルボキシル基の場合は、エポキシ基含有モノマーやイソシアネート基含有モノマーが好適に用いられ、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がヒドロキシル基の場合は、イソシアネート基含有モノマーが好適に用いられ、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がエポキシ基の場合は、カルボキシル基含有モノマーやアクリルアミド等のアミド基含有モノマーが好適に用いられ、上記官能基含有(メタ)アクリル系ポリマーの官能基がアミノ基の場合は、エポキシ基含有モノマーが好適に用いられる。
【0033】
上記ラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーとしては、特に限定されないが、分子量が1万以下、更には光照射による粘着剤層の三次元網目状化が効率よくなされるように、分子量が5000以下、かつ、分子内のラジカル重合性の不飽和結合の数が2〜6のものが好適に用いられる。具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、市販のオリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのラジカル重合性の多官能オリゴマー又はモノマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0034】
上記光重合開始剤としては、特に限定されず、波長250〜800nmの光を照射することにより活性化されるものが挙げられ、例えば、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体化合物;ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジエチルケタール等のケタール誘導体化合物;フォスフィンオキシド誘導体化合物;ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタノセン誘導体化合物、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記熱重合開始剤としては、特に限定されず、熱により分解し、重合硬化を開始する活性ラジカルを発生するものが挙げられ、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエール、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、熱分解温度が高いことから、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が好適に用いられる。
また、熱重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルD、パーブチルH、パーブチルP、パーメンタH(いずれも日本油脂社製)等が好適に用いられる。
これらの熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
熱重合開始剤は、熱重合開始剤の種類、すなわち、分解温度を選択することにより、所定の温度で、易剥離化をさせることができる。
これにより、作業工程中は、易剥離化させずに強粘着を保ち、最後の樹脂等とのプレス工程等で易剥離化させてフィルムを剥がすということも可能となる。
【0037】
上記粘着剤層(B)を形成する粘着剤には、上記成分の他、共重合可能な改質用モノマーを添加することができ、このような改質用モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0038】
また、粘着剤には、上記成分の他、粘着剤としての凝集力の調節を図る目的で多官能性化合物を含有することが好ましい。また、可塑剤、タッキファイヤ等の樹脂、界面活性剤、ワックス、微粒子充填剤等の従来公知の添加剤を適宜添加してもよい。
【0039】
上記多官能性化合物としては、特に限定されず、イソシアネート基、エポキシ基、メラニン基、金属キレート等のような上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマー中のカルボキシル基と反応しうる官能基等を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート(AlCH−YR)等が挙げられる。
【0040】
このような多官能性化合物と上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーとが反応することにより、架橋構造を形成し、適度な初期接着性を有する粘着剤を得ることができる。
なお、上記多官能性化合物と上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系の重合性ポリマーとを含有する混合物の架橋は、上記混合物を塗布し、乾燥・加熱することにより容易に行うことができる。
【0041】
上記粘着剤は、ゲル分率が40%以上になる程度であることが好ましい。上記架橋の程度は、常温又は高温での粘着剤の凝集力に関連しており、ゲル分率が40%未満であると、粘着剤の保持力不足、流動性の増大により、金属膜生成中に金属膜にクラックやシワが入る可能性がある。更には、ゲル分率が60%以上になる程度であることが好ましい。
なお、上記ゲル分率は、溶媒として例えばテトラヒドロフラン(THF)等の有機溶媒を用い、30℃の温度でこの溶媒中に粘着剤を浸漬して、一昼夜振盪下で溶媒を膨潤させた後、不溶解分を200メッシュ網にてろ過し、溶媒を乾燥した後、その重量を測定し、下記式(2)により算出することができる。
【0042】
ゲル分率(%)=(溶媒浸漬後ろ過分の乾燥重量/溶媒浸漬前重量)×100 (2)
【0043】
本発明の粘着テープは、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して、粘着剤層とSUS板との接着力の下限が1N/25mm、上限が20N/25mmであることが好ましい。1N/25mm未満であると、外部刺激による易剥離化の前に金属膜が剥がれたり、シワが入ったりすることがある。一方、20N/25mmを超えると、外部刺激を与えて接着力を低下させようとしても、容易に剥離できるほどの接着力低下が得られないことがある。
【0044】
本発明の粘着テープは、粘着剤層とSUS板との外部刺激による易剥離化後の接着力の上限が1N/25mmであることが好ましい。1N/25mm以上であると、外部刺激による易剥離化後も金属膜を剥離するのに十分な剥離力とならずに、剥離の際に、金属膜(金属箔)の破れや剥離不良を発生することがある。
本発明の極薄金属箔付き粘着テープによれば、粘着剤層に、外部刺激の前、例えば光が照射される前には、金属箔は適度な粘着力で樹脂フィルムと接着されており、粘着剤層に光が照射されると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に金属箔と樹脂フィルムとを剥離することができる。
【0045】
上記粘着剤により形成される粘着剤層(B)の厚みは、特に限定されるものではないが、1〜100μmであることが好ましい。粘着剤層の厚みが1μm未満であると、金属箔が樹脂フィルム上に十分な接着力で保持されず、金属箔が剥がれやすくなることがある。一方、粘着剤層の厚みが100μmを超えると、本発明の金属箔付フィルムを用いた回路基板の作製において、金属箔を転写させた後に樹脂フィルム(基材フィルム)を引き剥がす際、粘着剤層が回路パターン上に残りやすくなる等の不都合を生じることがある。
【0046】
本発明で用いられる粘着剤(層)中には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、フィラー(充填剤)、軟化剤(可塑剤)、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、カップリング剤等の公知の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が含有されていても良い。
【0047】
本発明に係る粘着テープを作製する方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムに、粘着剤を塗工して粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。
上記粘着剤の塗工による粘着剤層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、粘着剤の溶剤溶液、水溶液又はエマルジョンを樹脂フィルムに塗工し、溶剤又は水を乾燥により揮発させて粘着剤層を形成する方法、粘着剤を加熱溶融し、この加熱溶融した粘着剤を樹脂フィルムに塗工し、冷却することにより粘着剤層を形成する方法等が挙げられる。
【0048】
3.極薄金属箔(C)
本発明においては、前記したように、粘着テープ上、つまり粘着剤層(B)の上に、金属膜すなわち極薄金属箔(C)を、直接形成する点に、最大の特徴を有する。本発明においては、粘着テープ上に、直接極薄の金属膜を作製するものに限る。
粘着剤層(B)の上に、金属膜すなわち極薄金属箔(C)を、直接形成して作製する方法としては、特に限定されないが、以下のものが好ましい。
(i)蒸着、又はスパッタリングで金属膜を作製する方法。
(ii)上記(i)の金属膜を導電層として、電気メッキをして金属膜を作製する方法。
(iii)無電解メッキで金属膜を作製する方法。
【0049】
(i)蒸着、又はスパッタリングで金属膜を作製する方法
この(i)の方法については、既存の蒸着法、スパッタリングで得られる金属膜なら、どのような方法でも良く、金属としては、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金などが挙げられる。
しかし、この方法は、処理時にかかる熱の影響等から金属膜が数十nm〜1μm程度の超極薄の金属膜しか作製できない問題がある。このため、蒸着等で作製した金属膜単体では、プリント基板で使用するような回路形成用の金属膜には不向きである。
【0050】
(ii)上記(i)の金属膜を導電層として、電気メッキをして金属膜を作製する方法
この(ii)の方法に関しては、蒸着等によって作製された金属膜を導電層として使用することにより、蒸着膜等の上に、電気メッキ法により金属を上乗せして膜厚を稼ぎ、プリント基板で使用するような回路形成用の金属膜にも使用することができる。
また、ポリアセチレン、ポリアニリン、スルホン化ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子も導電層として使用できる。
この際、電気メッキ法は、基本的になんでも良く、既存の方法が使用できる。また、電気メッキで上乗せする金属に関しても、特に限定されない。具体的な金属には、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、金などが挙げられる。さらには、蒸着等で作製した金属膜の種類と同一であっても、異種であってもよい。
【0051】
(iii)無電解メッキで金属膜を作製する方法
この(iii)の方法に関しては、公知の無電解メッキが使用できるため、公知の金属塩、還元剤、pH調整剤、緩衝剤、錯化剤、促進剤、安定剤、改良剤等が使用できる。
本発明では、被メッキ材が粘着剤であることを特徴とするために、有機材料に対する無電解メッキの密着力の弱さの問題について、粘着剤のタックにより密着力を上げることができ、有機材料への密着力低下を解決できる。
【0052】
上記の方法により形成される極薄金属箔(C)の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、9μm以下であり、0.5〜5μmであることが好ましい。また、厚みが0.5μm未満であっても、用いることができる。
このような厚さの極薄金属箔(C)、例えば、極薄銅箔は、細線パターンの回路の形成を可能にし、回路の高精細化に対処できる。
【0053】
4.極薄金属箔付き粘着テープ
本発明の極薄金属箔付き粘着テープは、回路基板の作製における回路形成用転写フィルムとして好適に用いることができ、このような回路形成用転写フィルムも、本発明の極薄金属箔付き粘着テープの用途の1つである。
【0054】
本発明に係る回路形成用転写フィルムは、本発明の極薄金属箔付き粘着テープの極薄金属箔を回路パターン状に成形することにより得られる。上記極薄金属箔を回路パターン状に成形する方法としては、特に限定されず、例えば、公知のレジスト法が挙げられる。
上記レジスト法により、極薄金属箔を回路パターン状に成形するには、例えば、先ず、上記極薄金属箔の全面にフォトレジストを塗布し、所定パターンのマスクを介して露光を行い、現像後、プラズマエッチングやケミカルエッチングなどのエッチングにより、非パターン部(フォトレジストが除去されている部分)の極薄金属箔を除去し、極薄金属箔を回路パターン状に成形する。また、スクリーン印刷等により、極薄金属箔の表面に所定の回路パターン状にフォトレジストを塗布し、次いで、上記の場合と同様に、露光後にエッチングすることによっても、極薄金属箔を回路パターン状に成形することができる。
【0055】
上記エッチング終了後においては、回路パターン状の極薄金属層上にレジストが残存するが、レジスト除去液で残存するレジストを除去し、洗浄することにより、上記極薄金属箔を回路パターン状の金属層とすることができ、本発明に係る回路形成用転写フィルムを得ることができる。
【0056】
本発明に係る回路形成用転写フィルムによれば、粘着剤層に、UV、熱などの外部刺激を受ける前には、回路パターン状の金属層は、適度な粘着力で樹脂フィルム(基材フィルム)と接着されており、上記粘着剤層に、UV、熱などの外部刺激を受けると、粘着剤層が硬化して接着力が低下し、容易に回路パターン状の金属層と樹脂フィルムとを剥離することができる。
従って、絶縁シートと接する粘着剤層部分を、光の照射等で低接着力化する等の複雑な工程が不要であり、回路パターン状の金属層の転写性を向上させることができ、被転写体である絶縁シート上に微細で高密度な回路パターンを高精度で形成することができる。
【0057】
また、本発明に係る回路形成用転写フィルムは、小型、薄型及び高密度の微細回路を高精度で有する多層配線基板の作製に極めて有利であり、しかも、被転写体である絶縁シートの作製と回路パターンの形成とを別個の工程で同時に進行させることができるため、生産性(生産効率)も著しく向上する。
【0058】
本発明に係る回路形成用転写フィルムを用いた回路基板は、前述した本発明の極薄金属箔付き粘着テープを作製する工程、上述した本発明に係る回路形成用転写フィルムを作製する工程に続き、被転写体である絶縁シート上に、回路形成用転写フィルムの回路パターン状の金属層を接着させる工程と、UV、熱などの外部刺激により、粘着剤層の金属層に対する接着力を外部刺激前よりも低下させる工程と、上記基材フィルムと粘着剤層とを、金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程とを行うことにより、作製することができる。
【0059】
上記絶縁シートとしては、特に限定されず、例えば、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シート等が挙げられる。
上記セラミックグリーンシートとしては、特に限定されず、例えば、アルミナなどのセラミック粉末、バインダー樹脂及び可塑剤等からなる組成物をドクターブレード法等によってシート状に成形したもの等が挙げられる。
【0060】
また、上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ビスマレイミドトリアジン(BT)レジンなどのビスマレイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられ、中でも、常温(室温)で液状の熱硬化性樹脂が好ましい。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0061】
上記絶縁シートが半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる場合、強度をより向上させるために、上記熱硬化性樹脂中にフィラーを含有させることが好ましい。上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、有機質又は無機質の粉末、繊維体等が挙げられる。これらのフィラーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
また、上記熱硬化性樹脂とフィラーとの混合割合は、特に限定されるものではないが、体積比で、熱硬化性樹脂/フィラー=15/85〜65/35であることが好ましい。
【0062】
また、上記絶縁シートには、炭酸ガスレーザ等によってバイアホールを形成し、このバイアホール内に、金、銀、銅、アルミニウム等の低抵抗金属の粉末を充填することにより、バイアホール導体を形成しておくことが好ましい。
【0063】
このような絶縁シート上に、本発明に係る回路形成用転写フィルムの金属層を接着させる工程においては、セラミックグリーンシートや半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートに回路形成用転写フィルムの回路パターンが対面するように重ね合わせ、特に、絶縁シートに上記バイアホール導体が形成されている場合には、バイアホール導体の表面露出部分と回路パターンとが重なり合うように位置設定する。
【0064】
上記絶縁シートと回路形成用転写フィルムとの接着方法としては、特に限定されず、例えば、プレスによるアンカー効果(投錨効果)で接着する方法、絶縁シート及び/又は回路形成用転写フィルムの金属層に接着剤を塗布し、貼り合せる方法等が挙げられる。中でも、半硬化状態の熱硬化性樹脂からなる絶縁シートにプレスにより接着する際には、適度な温度で加熱プレスを行う方法が好ましい。熱硬化性樹脂の一部又は全部を硬化させることにより、接着力が増大し、回路パターンの位置ズレや転写不良といった不具合が生じにくくなるからである。
【0065】
次に、上記回路形成用転写フィルムの粘着剤層に、UV、熱などの外部刺激により、金属層に対する接着力を外部刺激を与える前よりも低下させる工程を行う。
【0066】
その後、上記基材フィルムと粘着剤層との粘着テープを金属層から剥離し、上記回路パターンを絶縁シート上に転写する工程を行う。この工程を行うことにより、回路パターンが絶縁シート上に転写され、本発明に係る回路形成用転写フィルムを用いた回路基板を作製することができる。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0068】
[実施例1]
(粘着剤Aの調製):
ブチルアクリレート40重量部、メチルアクリレート50部、アクリル酸8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素雰囲気下、80℃にて加熱して共重合を行い、カルボン酸基と水酸基とを有する分子量32万のアクリル共重合体溶液を得た。
次に、上記得られたカルボン酸基を有するアクリル共重合体溶液に、グリシジルメタクリレート5重量部を添加し、40℃に加熱してアクリルポリマー中のカルボン酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。
上記得られたアクリルポリマー溶液に、ヘキサジイソシアネートをポリマー固形分100重量部に対して0.5重量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを0.5重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレートを20重量部添加して粘着剤溶液Aを調製した。
【0069】
(粘着テープAの作製):
粘着剤Aの酢酸エチル溶液を、コロナ処理が施された厚さ50μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの面上に、乾燥皮膜の厚さが約8μmとなるように、ドクターナイフで塗工し、溶剤を揮発させ塗工溶液を乾燥させ、粘着テープAを作製した。これを40℃で3日間養生することにより、粘着テープAを得た。
【0070】
(粘着テープA上への無電解メッキ):
1000mlのイオン交換水に、硫酸銅34.6g、炭酸ナトリウム25g、酒石酸塩140g、水酸化ナトリウム40g、37%ホルムアルデヒド150mlを加えてpH11.5とした無電解銅メッキ溶液を、30℃に保ちながら、粘着テープAを、無電解メッキ浴に漬け込んで無電解メッキを行い、テープ上に3μm厚の銅付き粘着テープA2を得た。
【0071】
[実施例2]
(粘着剤Bの調製):
ブチルアクリレート40重量部、メチルアクリレート50部、アクリル酸8重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート2重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部を、酢酸エチル300重量部に溶解し、窒素雰囲気下、80℃にて加熱して共重合を行い、カルボン酸基と水酸基を有する分子量38万のアクリル共重合体溶液を得た。
次に、上記得られたカルボン酸基を有するアクリル共重合体溶液に、グリシジルメタクリレートを5重量部添加し、40℃に加熱して、アクリルポリマー中のカルボン酸基と、グリシジルメタクリレートのグリシジル基とを反応させ、カルボン酸基と水酸基とメタクリル基とを有するアクリルポリマー溶液を得た。
上記得られたアクリルポリマー溶液に、ヘキサジイソシアネートを0.5重量部、熱重合開始剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン2.5重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート20重量部を添加して粘着剤溶液Bを調製した。
【0072】
(粘着テープBの作製):
粘着剤Aの代わりに粘着剤Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着テープBを得た。
【0073】
(粘着テープB上への無電解メッキ):
実施例1と同様にして、粘着テープB上に3μm厚の銅付き粘着テープB2を得た。
【0074】
[比較例1]
(粘着剤Cの調製):
ブチルアクリレート40重量部、メチルアクリレート50部、アクリル酸5重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部を窒素雰囲気下、80℃にて加熱して共重合を行い分子量35万のアクリル共重合体溶液を得た。
次に、上記得られたアクリル共重合体溶液に、架橋剤としてヘキサジイソシアネートをポリマー固形分100重量部に対して1重量部、可塑剤としてアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルを5重量部加え、粘着剤溶液Cを調製した。
【0075】
(粘着テープCの作製):
粘着剤Aの代わりに粘着剤Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着テープCを得た。
【0076】
(粘着テープC上への無電解メッキ):
実施例1と同様にして、粘着テープC上に3μm厚の銅付き粘着テープC2を得た。
【0077】
[比較例2]
(PETフィルム上への無電解メッキ):
上記無電解銅メッキ溶液に、離型層付きPETフィルム(リンテック社製:PET3811)を漬け込み無電解メッキを行い、PETフィルム上に3μm厚の銅が載った銅付きPETフィルムDを得た。
【0078】
(評価)
実施例1、2及び比較例1、2で得られた粘着テープを用いて、以下の方法により評価を行った。
【0079】
(1)初期接着力の測定
粘着テープを、SUS板に2kgローラーで貼り合わせ、20分後に剥離速度300mm/分、23℃で180°剥離接着力を測定した(JIS Z0237準拠)。
【0080】
(2)外部刺激を与えた後の接着力測定>
粘着テープをSUS板に2kgローラーで貼り合わせ、20分後に、
(i)実施例1で作製した粘着テープAに対しては、UVを10mW/cmの照射強度で、1000mJ/cmとなるようにPETフィルム側から照射し、
(ii)実施例2で作製した粘着テープBに対しては、150℃のオーブンに入れて10分間加熱し、剥離速度300mm/分、23℃で180°剥離接着力を測定した。
【0081】
(3)シワ入り評価
3インチのロールに上記銅付き粘着テープ(A2、B2、C2、D)を、[巻きつけ→巻き出し]の作業を3回行い、目視で観察し、シワの入ったものは×、入らなかったものは○とした。
【0082】
(4)剥離性の評価
SUS板に貼り付けた両面テープ(積水化学社製:#575)に、銅付き粘着テープA2にはUV照射後、銅付き粘着テープB2には加熱後、比較例1、2の銅付き粘着テープC2、DについてはUV照射、加熱はなしで、銅付き粘着テープA2、B2、C2、Dの銅側を貼り付け、20分後に貼りあわせた銅付きテープを剥離した。銅が両面テープ側に転写したものは○、銅が転写しなかったもの、またはテープの剥離が出来なかったものは×とした。
【0083】
上記の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
表1の評価結果から、実施例1、2で得られた極薄金属箔付き粘着テープ(A2,B2)は、初期接着力が高く、また、UV、熱などの外部刺激を受けた後の接着力が低下しているため、シワが入ったりするのを有効に防止し、極薄金属箔を容易に分離できる。一方、比較例1で得られた極薄金属箔付き粘着テープ(C2)は、極薄金属箔を分離できず、また、比較例2で得られた極薄金属箔付きPETフィルム(D)は、シワ入り評価が悪い結果となっている。
したがって、本発明では、極薄金属箔作製時、搬送時、作業時には、強い接着力を示し、極薄金属箔と粘着テープが剥がれたり、シワが入ったりするのを有効に防止し、一方、UV、熱などの外部刺激を与えると、容易に粘着テープと極薄金属箔とを分離できる極薄金属箔付き粘着テープを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、通常の電解法、圧延法では生産できない産業上有効な超極薄金属箔を生産でき、且つ、ハンドリング性にも優れた超極薄金属箔付きテープを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム(A)上に、粘着剤層(B)と極薄金属箔(C)とを順次積層してなる極薄金属箔付粘着テープであって、
粘着剤層(B)は、外部刺激を受けると、粘着力の減少により剥離化が容易となる接着力可変型粘着剤から構成され、一方、極薄金属箔(C)は、無電解メッキ、電気メッキ、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、9μm以下の厚みに直接形成されることを特徴とする極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項2】
粘着剤層(B)は、極薄金属箔(C)に対して、JIS Z0237に準拠した初期接着力が1〜20N/25mmであり、外部刺激を受けた後の接着力が1N/25mm未満であることを特徴とする請求項1に記載の極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項3】
粘着剤層(B)に用いられる接着力可変型粘着剤は、UV硬化型粘着剤、ガス発生型UV粘着剤、熱硬化型粘着剤又は熱発泡型粘着剤から選ばれる少なくとも一種であり、かつ、40重量%以上のゲル分率、および−20℃以上のガラス転移点(Tg)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項4】
極薄金属箔(C)の厚みは、0.5〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項5】
極薄金属箔(C)は、無電解メッキ法により形成されることを特徴とする請求項1に記載の極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項6】
極薄金属箔(C)は、蒸着又はスパッタリング法のいずれかの手段で、厚み1μm以下の超極薄金属箔(C’)に製膜した後、さらにその上に、電気メッキ法で形成されることを特徴とする請求項1に記載の極薄金属箔付粘着テープ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の極薄金属箔付粘着テープに、基材フィルム(A)側から外部刺激を与えて粘着剤層(B)の粘着力を減少させた後、極薄金属箔(C)のみを粘着テープから剥離して、極薄金属箔を分離することを特徴とする極薄金属箔の製造方法。
【請求項8】
極薄金属箔(C)の厚みは、0.5〜5μmであることを特徴とする請求項7に記載の極薄金属箔の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の極薄金属箔付粘着テープをそのまま被転写体に貼着させ、次いで基材フィルム(A)側から外部刺激を与えて粘着剤層(B)の粘着力を減少させた後、極薄金属箔(C)のみを粘着テープから剥離して、極薄金属箔を単離することなしに、被転写体に転写することを特徴とする極薄金属箔転写体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の極薄金属箔転写体の製造方法により得られた回路基板。

【公開番号】特開2007−152869(P2007−152869A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354625(P2005−354625)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】