説明

楽曲再生システム及び楽曲再生装置

【課題】従来と比較してより簡易な構成で、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを再生することのできる技術を提供する。
【解決手段】楽曲再生装置1の制御部11は、選択された楽曲の曲番号データをサーバ装置2に送信する。サーバ装置2は、受信した曲番号データに対応するガイドメロディデータと補正データとを記憶部22から読み出し、読み出したガイドメロディデータと補正データとを楽曲再生装置1に送信する。楽曲再生装置1の制御部11は、サーバ装置2から、ガイドメロディデータと補正データとを受信すると、受信したガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを補正データの示す内容で補正し、補正後のタイムコードに従って、ガイドメロディデータを楽曲データに同期させて再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来販売されているCD(Compact Disk)には、メインとして収録された楽曲(以下「メイン曲」という)以外にも、複数の楽曲が収録されているのが一般的である。収録されている楽曲の中には、メイン曲のボーカルパートを除いた伴奏音(以下、「カラオケ曲」という)が収録されているものもある。CDの購入者は、CDに収録されたこの「カラオケ曲」に合わせて歌唱を行うことで、CDに収録されたメイン曲と全く同じ伴奏に合わせて歌唱を行うことができる。
【0003】
ところで、上述の「カラオケ曲」を用いてカラオケ歌唱を行う場合、歌唱者が歌唱しにくいと感じる場合が多々ある。これは、楽曲のボーカルメロディを正確に覚えていないケースが多いことが原因のひとつに挙げられる。また、近年普及しているカラオケ装置においては、カラオケ伴奏に合わせてボーカルのガイドメロディを流すものが一般的となっており、多くの歌唱者はガイドメロディを頼りにしながら歌唱することに慣れてしまっているから、ガイドメロディが存在しない「カラオケ曲」では、歌唱するのに違和感を覚えることも原因のひとつに挙げられる。
【0004】
ところで、特許文献1には、CD−MIDIフォーマットでCDのサブコード領域に予めガイドメロディを原盤の中に埋め込んでおき、楽曲とガイドメロディとを同期再生する方法が提案されている。特許文献1に記載の技術によれば、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを再生することができる。
【特許文献1】特開2000−156049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを再生することができるものの、新たなCDをオーサリング及び作成する必要があり、装置やCDの作成に係るコストが高くなってしまうとともに、装置の構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は上述した背景の下になされたものであり、従来と比較してより簡易な構成で、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを再生することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の好適な態様である楽曲再生システムは、サーバ装置と楽曲再生装置とを備えた楽曲再生システムであって、前記サーバ装置は、ノートの列と各ノートの発音タイミングを示すタイムコードを含むガイドメロディデータを記憶するとともに、該ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングの補正内容を示す補正データを記憶する記憶手段と、前記楽曲再生装置から楽曲を指定する楽曲指定データを取得する楽曲指定データ取得手段と、前記楽曲指定データ取得手段により取得された楽曲指定データの示す楽曲に対応するガイドメロディデータと補正データとを前記記憶手段から読み出す読出手段と、前記読出手段により読み出されたガイドメロディデータと補正データとを前記楽曲再生装置に供給する楽曲供給手段とを備え、前記楽曲再生装置は、楽曲の演奏音を表すオーディオデータであってその各部の再生時刻を示すタイムコードを含むオーディオデータを、所定の記憶手段から読み出して該タイムコードに従って再生する楽曲再生手段と、前記楽曲指定データを前記サーバ装置に送信する楽曲指定データ送信手段と、前記楽曲指定データ送信手段により送信された楽曲指定データに対応するガイドメロディデータと補正データとを、前記サーバ装置から取得するガイドメロディデータ取得手段と、前記ガイドメロディデータ取得手段により取得されたガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示す補正内容で補正し、補正後のタイムコードに従って、該ガイドメロディデータを前記楽曲再生手段により再生されるオーディオデータに同期させて再生するガイドメロディ再生手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の好適な態様である楽曲再生装置は、楽曲の演奏音を表すオーディオデータであってその各部の再生時刻を示すタイムコードを含むオーディオデータを、所定の記憶手段から読み出して該タイムコードに従って再生する楽曲再生手段と、ノートの列と各ノートの発音タイミングを示すタイムコードを含むガイドメロディデータと、該ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングの補正内容を示す補正データとを取得するガイドメロディデータ取得手段と、前記ガイドメロディデータ取得手段により取得されたガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示す補正内容で補正し、補正後のタイムコードに従って、該ガイドメロディデータを前記楽曲再生手段により再生されるオーディオデータに同期させて再生するガイドメロディ再生手段とを具備することを特徴とする。
この態様において、前記補正データは、テンポの揺らぎを前記楽曲の各部で指摘したデータであり、前記ガイドメロディ再生手段は、前記楽曲のテンポが各部において前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示すテンポとなるように該ガイドメロディデータのタイムコードを補正してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来と比較してより簡易な構成で、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<A:構成>
図1は、本実施形態に係るシステムの構成の一例を示すブロック図である。このシステムは、複数の楽曲再生装置1,1,…とサーバ装置2とがインターネット等の通信ネットワーク3に接続されて構成される。楽曲再生装置1,1,…は、通信ネットワークを介して受信したオーディオデータを再生する機能を有する装置であり、例えば携帯オーディオプレーヤ、パーソナルコンピュータ等である。なお、図1においては、図が煩雑になるのを防ぐために、2つの楽曲再生装置1を図示しているが、通信ネットワーク3に接続される楽曲再生装置1の数は2に限定されるものではなく、これより多くても少なくてもよい。サーバ装置2は、カラオケ伴奏の際に用いられ、楽曲の伴奏音や歌詞を表すデータ(以下「カラオケ用データ」という)を複数記憶した装置である。サーバ装置2は、通信ネットワーク3を介して接続されたカラオケ装置(図示略)にカラオケ用データを供給する。なお、カラオケ装置は、サーバ装置2から供給されるカラオケ用データを用いてカラオケ伴奏や歌詞テロップの表示を行う。
【0011】
次に、図2は、楽曲再生装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図において、制御部11は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備え、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介して楽曲再生装置1の各部を制御する。記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部13は、液晶パネルを備え、制御部11による制御の下に各種の画像を表示する。操作部14は、楽曲再生装置1の利用者による操作に応じた信号を制御部11に出力する。通信部15は、サーバ装置2との間で通信ネットワーク3を介して通信を行う通信手段である。音声処理部16は、制御部11の制御の下、オーディオデータをD/A変換して楽音信号を生成し、生成した楽音信号をスピーカ17に出力する。スピーカ17は、音声処理部16から供給される楽音信号に応じた強度で放音する放音手段である。
【0012】
なお、この実施形態では、スピーカ17が楽曲再生装置1に含まれている場合について説明するが、音声処理部16に出力端子を設け、オーディオケーブルを介してその出力端子に外部スピーカを接続するとしても良い。また、この実施形態では、音声処理部16からスピーカ17へ出力される音声信号がアナログ音声信号である場合について説明するが、デジタル音声データを入出力するようにしても良い。このような場合には、音声処理部16にてD/A変換を行う必要はない。表示部13、操作部14についても同様であり、楽曲再生装置1に内蔵される形式であってもよく、外付けされる形式であってもよい。
【0013】
記憶部12は、図示のように、楽曲データ記憶領域121を有している。楽曲データ記憶領域121には、例えばWAVE形式やMP3形式等の、楽曲の演奏音を表すオーディオデータであってその各部の再生時刻を示すタイムコードを含むオーディオデータ(以下「楽曲データ」という)が記憶されている。これらの楽曲データは、所定のサーバ装置等からダウンロードしたデータである。これらの楽曲データのなかには、メイン曲の楽曲データ以外にも、メイン曲のボーカルパートを除いた伴奏音を表す楽曲データ(以下「オリジナルカラオケデータ」という)が含まれる。楽曲再生装置1の制御部11は、この楽曲データ記憶領域121に記憶された楽曲データをそのタイムコードに従って順次読み出して音声処理部16を介してスピーカ17に供給することにより、楽曲の再生を行う。
【0014】
次に、図3は、サーバ装置2のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図において、制御部21は、CPUやROM、RAMを備え、ROM又は記憶部22に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介してサーバ装置2の各部を制御する。記憶部22は、制御部21によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばハードディスク装置である。表示部23は、液晶パネルを備え、制御部21による制御の下に各種の画像を表示する。操作部24は、操作者による操作に応じた信号を制御部21に出力する。通信部25は、楽曲再生装置1との間で通信ネットワーク3を介して通信を行う通信手段である。
【0015】
記憶部22は、図示のように、カラオケ用データ記憶領域221と補正データ記憶領域222とを有している。カラオケ用データ記憶領域221には、カラオケ伴奏の際に用いられる、楽曲の伴奏音や歌詞を表すカラオケ用データが記憶されている。ここで、カラオケ用データ記憶領域221に記憶されたカラオケ用データの内容の一例について説明する。
カラオケ用データは、図4に示すように、ヘッダと複数のトラックとを有しており、複数のトラックには、利用者が歌唱すべき旋律(ピッチ)の内容を表すガイドメロディデータが記述されたガイドメロディデータトラック、カラオケ演奏音の内容を表す演奏データが記述された演奏トラック、歌詞の内容を表す歌詞データが記述された歌詞トラックがある。カラオケ用データのヘッダ部分には、図4に示すように楽曲を特定する曲番号データ、楽曲の曲名を示す曲名データ、ジャンルを示すジャンルデータ、楽曲の演奏時間を示す演奏時間データ等が含まれている。以上のデータは、MIDIフォーマットに従って記述されている。
【0016】
次に、ガイドメロディデータトラックの各々に記述されているガイドメロディデータの具体例について説明する。図5は行と列のマトリックスになっているので、まず、列について説明する。第1列のデルタタイムは、イベントとイベントとの時間間隔を示しており、テンポクロックの数で表される。デルタタイムが「0」の場合は、直前のイベントと同時に実行される。第2列には演奏データの各イベントが持つメッセージの内容が記述されている。このメッセージには、発音イベントを示すノートオンメッセージ(NoteOn)や消音イベントを示すノートオフメッセージ(NoteOff)の他、コントロールチェンジメッセージ等が含まれる。なお、図5に示す例では、コントロールチェンジメッセージは含まれていない。
【0017】
第3列にはチャンネルの番号が記述されている。ここでは、説明の簡略のためガイドメロディデータトラックのチャンネル番号を「1」としている。
第4列には、ノートナンバ(NoteNum)あるいはコントロールナンバ(CtrlNum)が記述されるが、どちらが記述されるかはメッセージの内容により異なる。例えば、ノートオンメッセージ又はノートオフメッセージであれば、ここには音階を表すノートナンバが記述され、またコントロールチェンジメッセージであればその種類を示すコントロールナンバが記述されている。
第5列にはMIDIメッセージの具体的な値(データ)が記述されている。例えばノートオンメッセージであれば、ここには音の強さを表すベロシティの値が記述され、ノートオフメッセージであれば、音を消す速さを表すベロシティの値が記述され、またコントロールチェンジメッセージであればコントロールナンバに応じたパラメータの値が記述されている。
【0018】
次に、図5に示す各行は、歌唱すべきメロディの各音符の属性を示す楽音パラメータとなっており、ノートオンイベント、ノートオフイベントで構成される。
図5に示す例では、デルタタイム480の長さを4分音符の長さとしている。この場合、第1行、第2行のイベント処理によりC4音が4分音符の長さにわたって発音されることが示され、第3行、第4行のイベント処理によりG4音が4分音符の長さにわたって発音されることが示される。そして、第5行、第6行の処理によりF4音が2分音符の長さにわたって発音されることが示される。
なお、図5に示す第1列のデルタタイムは、各ノートの発音タイミングを示すコードであるから、以下の説明においては、説明の便宜上、第1列に記述されるデルタタイムを、ガイドメロディの「タイムコード」と称して説明する。
【0019】
ところで、カラオケ用データ記憶領域221に記憶されたカラオケ用データは、カラオケ装置においてカラオケ伴奏を行う際に用いられるデータであり、所定のカラオケ装置に供給されるデータである。カラオケ装置においては、利用者が楽曲指定操作を行うと、曲番号データを基にして、指定されたカラオケ用データが順次読み出されて処理されることで楽曲のカラオケ伴奏が進行する。このとき、ガイドメロディデータも楽曲の進行と同期して読み出され、カラオケ装置がガイドメロディデータもカラオケ用データと同様に順次読み出して処理することで、ガイドメロディがカラオケ伴奏にあわせて放音される。このとき、カラオケ用データに含まれるガイドメロディデータは、カラオケ伴奏用の演奏データ(カラオケ用データに含まれる演奏データ)と同期するように予め作成されたデータであるから、カラオケ装置が、ガイドメロディデータに付されたタイムコードに従ってガイドメロディデータを再生することで、ガイドメロディとカラオケ伴奏とは同期して再生される。
【0020】
次に、サーバ装置2の補正データ記憶領域222には、ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングを補正するための補正内容を表す補正データが記憶されている。上述したように、カラオケ用データに含まれるガイドメロディデータは、カラオケ伴奏用の演奏データと同期するように予め作成されたデータであるから、ガイドメロディに含まれるタイムコードに従ってガイドメロディを再生することにより、カラオケ伴奏とガイドメロディとは同期再生される。一方、販売されたCD等に収録された「オリジナルカラオケ曲データ」等においては、曲の部分部分でテンポやリズムにばらつきのあることが多い。そのため、ガイドメロディをそのタイムコードに従ってそのまま再生すると、楽曲とガイドメロディとの間にテンポやリズムのずれが楽曲の各部で生じ、不自然になってしまう場合がある。そのため、この実施形態では、楽曲再生装置1は、ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングを、補正データの示す内容で補正し、補正した発音タイミングでガイドメロディを再生することにより、楽曲とガイドメロディとを同期再生する。
【0021】
図6は、補正データの内容の一例を示す図である。図示のように、このデータは、「曲番号」と「補正内容」との項目が互いに関連付けて構成されている。これらの項目のうち、「曲番号」の項目には、楽曲を特定する曲番号データが格納される。この曲番号データは、カラオケ用データに含まれる曲番号データと同様である。次に、「補正内容」の項目には、カラオケ用データに含まれるガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングを補正するための補正内容を示すデータが記憶される。この実施形態では、補正データは、図6に例示するように、「0〜10sの間においては10%テンポを遅くする」、「10〜12s間においては20%テンポを早くする」といったように、テンポの揺らぎを楽曲の各部で指摘したデータが用いられる。補正データ記憶領域222に記憶された補正データは、カラオケ用データの管理者等が、CDに収録された楽曲を参照して予め生成したデータである。そのため、この補正データに基づいてガイドメロディの発音タイミングを補正することにより、ガイドメロディと楽曲とを同期再生することができる。
【0022】
<B:動作>
図7は、楽曲再生装置1の制御部11が行う処理の流れを示すフローチャートである。以下、図7を参照しつつ、この実施形態の動作について説明する。利用者が操作部14を用いて楽曲指定操作を行うと、制御部11は、操作部14から供給される信号に基づいて楽曲データ記憶領域121に記憶された楽曲データのいずれかを選択する(ステップS1)。次いで、制御部11は、選択された楽曲データの再生に伴ってガイドメロディを再生するか否かを利用者に選択させるための画面を表示部13に表示する。具体的には、例えば、「ガイドメロディを再生しますか?」というメッセージを表示部13に表示してもよい。操作者が操作部14を用いてガイドメロディを再生するか否かを選択する操作を行うと、制御部11は、操作部14から供給される信号に基づいて、ガイドメロディを再生するか否かを選択する(ステップS2)。ガイドメロディを再生しないと判断された場合には(ステップS2;NO)、指定された楽曲の楽曲データが楽曲データ記憶領域121から読み出され、音声処理部16が、楽曲データをアナログの楽音信号に変換し、スピーカ17に供給する。これにより、スピーカ17からは、楽曲データに応じた楽音が放音される(ステップS6)。
【0023】
一方、ステップS2において、ガイドメロディを再生すると判断された場合には(ステップS2;YES)、制御部11は、指定された楽曲のガイドメロディデータをサーバ装置2から取得するために、指定された楽曲の曲番号データをサーバ装置2に送信する(ステップS3)。
【0024】
サーバ装置2は、楽曲再生装置1から曲番号データを受信すると、受信した曲番号データの示す楽曲のカラオケ用データのガイドメロディデータトラックに記述されたガイドメロディデータをカラオケ用データ記憶領域221から読み出すとともに、受信した曲番号データの示す楽曲の補正データを補正データ記憶領域222から読み出し、読み出したガイドメロディデータと補正データとを楽曲再生装置1に送信する。
【0025】
楽曲再生装置1の制御部11は、サーバ装置2からガイドメロディデータと補正データとを受信したことを検知すると(ステップS4;YES)、受信したガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを、受信した補正データの示す補正内容に基づいて補正し、補正後のタイムコードに従ってガイドメロディデータを楽曲データに同期させて再生する(ステップS5)。具体的には、例えば補正データが図6に示す内容である場合には、制御部11は、0〜10sの間においては、ガイドメロディのテンポが10%遅くなるようにこの間のガイドメロディデータのタイムコードを補正し、10〜12sの間においてはテンポが20%早くなるようにこの間のガイドメロディデータのタイムコードを補正する。この補正処理において用いられる補正データは、上述したように、CDやインターネット等により販売された楽曲データに基づいて予め生成されたデータである。そのため、この実施形態では、この補正データを用いてガイドメロディデータのタイムコードを補正することにより、ガイドメロディと楽曲とを同期再生することができる。
【0026】
このようにこの実施形態によれば、CDシングル等に収録された「カラオケ曲」とガイドメロディとを同期再生するから、これにより、歌唱者の歌唱を補助することができる。また、この実施形態では、ガイドメロディと同期再生する楽曲の各部においてリズムやテンポに揺らぎがある場合であっても、予め作成された補正データを用いてガイドメロディデータのタイムコードを補正するから、ガイドメロディと楽曲とを同期再生することができ、ガイドメロディが不自然に放音されるのを防ぐことができる。
【0027】
また、この実施形態によれば、カラオケ装置に対して供給されるカラオケ用データのガイドメロディデータを用いてガイドメロディを再生するから、このサービスの提供者(サーバ装置2の管理者等)は、補正データを作成して配信するだけでよく、オリジナルカラオケ曲と同期させるためのガイドメロディデータを別途作成したり配信したりする必要がない。このように、この実施形態によれば、従来と比較してより簡易な構成で、楽曲の再生に合わせてガイドメロディを同期再生することができる。
【0028】
<C:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、図1に示したように、楽曲再生装置1,1,…が通信部15を備え、通信ネットワーク3に接続されている構成について説明したが、これに限らず、通信ネットワークに直接接続されない構成であってもよい。この場合は、例えば、楽曲再生装置1をUSB(Universal Serial Bus)等のインターフェースによりパーソナルコンピュータと接続し、パーソナルコンピュータがサーバ装置から通信ネットワークを介してガイドメロディと補正データとを受信し、受信したガイドメロディと補正データとをUSB等のインターフェースを介して楽曲再生装置1に供給するようにしてもよい。すなわち、パーソナルコンピュータを経由してガイドメロディデータや補正データを取得する構成であってもよい。
【0029】
(2)上述の実施形態では、インターネットを経由してダウンロードした楽曲データを再生する場合について説明したが、ガイドメロディと同期再生する楽曲データは、インターネットを経由してダウンロードされるものに限らず、CDシングル等から直接再生するものであってもよい。より具体的には、楽曲再生装置は、CD(Compact Disk)、MD(Mini Disk)、SD(Secure Digital)メモリカード、DVD等の記録媒体に記録されたオーディオデータを読み取って再生する機能を備えた装置、例えばCDプレーヤやパーソナルコンピュータ等であってもよい。この場合は、楽曲再生装置1は、CD等の記録媒体からオーディオデータを読み出す読出手段を備える構成とし、記録媒体から読み取ったオーディオデータと取得したガイドメロディデータとを同期再生すればよい。要するに、楽曲再生装置1がオーディオデータを読み出す記憶手段は、ハードディスク装置であってもよく、また、例えばCDやMD等の記録媒体であってもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、楽曲再生装置1は、サーバ装置2からガイドメロディデータを取得する構成とした。ガイドメロディデータを取得する態様はこれに限らず、例えば、SDメモリカード等の記録媒体に記録されたガイドメロディを読み出すようにしてもよく、また、例えば、無線LANを介して所定のコンピュータ装置からガイドメロディデータを取得するようにしてもよい。要するに、楽曲再生装置1が、ノートの列で構成されたガイドメロディデータであって各ノートの発音タイミングを示すタイムコードを含むガイドメロディデータと、そのガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングを補正するための補正内容を示す補正データとを取得するものであればよい。
なお、上述の実施形態では、サーバ装置2は、カラオケ用データと補正データとを別々の記憶領域で記憶する構成としたが、補正データがカラオケ用データ又はガイドメロディデータに付されたデータ構造であってもよい。
【0031】
(3)上述の実施形態では、補正データとして、テンポの揺らぎを楽曲の各部で指摘したデータを用いた。補正データはこれに限らず、例えば、各ノートの発音開始タイミングを示すデータであってもよい。この場合は、具体的には、図5に例示したガイドメロディデータの第1列のデルタタイムと同様のデータ構造のデータを補正データとして用い、楽曲再生装置1の制御部11は、ガイドメロディデータのデルタタイムを補正データに差し替えて、差し替えたデルタタイムに従ってガイドメロディデータを再生してもよい。また、例えば、上述した実施形態で用いたテンポの揺らぎを楽曲の各部で示したデータと各ノートの発音開始タイミングを示すデータとを組み合わせて補正データとして用いるようにしてもよい。また、他の例としては、例えば、楽曲を複数のブロック(小節毎、フレーズ毎、等)に分割した場合の各ブロックの再生開始タイミングを示すデータであってもよい。要するに、補正データは、ガイドメロディを構成する各ノートの発音タイミングの補正内容を示すデータであればよい。
【0032】
また、補正データを複数種類用意しておき、どの補正データを用いて同期再生するかを利用者が選択できるようにしてもよい。具体的には、例えば、テンポの揺らぎを楽曲の各部で指摘した補正データと、小節毎の再生開始タイミングを示す補正データとの2種類の補正データをサーバ装置2に記憶させておき、いずれを用いるかを利用者が楽曲再生装置1の操作部14を操作して選択するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、楽曲再生装置の記憶手段の空き容量や通信速度等に応じて、利用者がデータ量の多い補正データかデータ量の少ない補正データのいずれかを選択するといったことが可能となる。
【0033】
(4)上述の実施形態では、楽曲の再生を開始する前に、ガイドメロディを楽曲と同期再生するか否かを利用者が選択するようにしたが、これに限らず、例えば、楽曲の再生中にガイドメロディを再生するか否かを選択するようにしてもよい。具体的には、例えば、ガイドメロディを再生するか否かを選択するための選択キーを楽曲再生装置に設ける構成とし、楽曲再生装置の制御部11は、選択キーから供給される信号に応じてガイドメロディを同期再生するか否かを選択し、同期再生すると選択された場合には、ガイドメロディを楽曲と同期させて再生する一方、同期再生しないと選択された場合にはガイドメロディの再生を中断させるようにしてもよい。
【0034】
(5)上述の実施形態では、サーバ装置2の管理者が、楽曲データに基づいて補正データを予め作成しておくようにしたが、サーバ装置2の制御部21が楽曲データに基づいて補正データを生成するようにしてもよい。この場合は、具体的には、例えば、サーバ装置2の制御部21が、楽曲データとガイドメロディデータとに対して波形比較、ビート比較等を行い、比較結果に基づいて補正データを生成するようにしてもよい。また、サーバ装置2の制御部21により生成された補正データを、サーバ装置2の管理者等が、操作部24を操作して修正できるようにしてもよい。
【0035】
(6)上述した実施形態における楽曲再生装置1の制御部11によって実行されるプログラムは、磁気テープ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光記録媒体、光磁気記録媒体、RAM、ROMなどの記録媒体に記録した状態で提供し得る。また、インターネットのようなネットワーク経由で楽曲再生装置1にダウンロードさせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】楽曲再生装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図3】サーバ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【図4】カラオケ用データの構造を示す図である。
【図5】カラオケ用データに含まれるガイドメロディデータトラックの内容を示す図である。
【図6】補正データの内容の一例を示す図である。
【図7】楽曲再生装置の制御部が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1…楽曲再生装置、2…サーバ装置、3…通信ネットワーク、11,21…制御部、12,22…記憶部、13,23…表示部、14,24…操作部、15,25…通信部、16…音声処理部、17…スピーカ、121…楽曲データ記憶領域、221…カラオケ用データ記憶領域、222…補正データ記憶領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置と楽曲再生装置とを備えた楽曲再生システムであって、
前記サーバ装置は、
ノートの列と各ノートの発音タイミングを示すタイムコードを含むガイドメロディデータを記憶するとともに、該ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングの補正内容を示す補正データを記憶する記憶手段と、
前記楽曲再生装置から楽曲を指定する楽曲指定データを取得する楽曲指定データ取得手段と、
前記楽曲指定データ取得手段により取得された楽曲指定データの示す楽曲に対応するガイドメロディデータと補正データとを前記記憶手段から読み出す読出手段と、
前記読出手段により読み出されたガイドメロディデータと補正データとを前記楽曲再生装置に供給する楽曲供給手段と
を備え、
前記楽曲再生装置は、
楽曲の演奏音を表すオーディオデータであってその各部の再生時刻を示すタイムコードを含むオーディオデータを、所定の記憶手段から読み出して該タイムコードに従って再生する楽曲再生手段と、
前記楽曲指定データを前記サーバ装置に送信する楽曲指定データ送信手段と、
前記楽曲指定データ送信手段により送信された楽曲指定データに対応するガイドメロディデータと補正データとを、前記サーバ装置から取得するガイドメロディデータ取得手段と、
前記ガイドメロディデータ取得手段により取得されたガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示す補正内容で補正し、補正後のタイムコードに従って、該ガイドメロディデータを前記楽曲再生手段により再生されるオーディオデータに同期させて再生するガイドメロディ再生手段と
を具備することを特徴とする楽曲再生システム。
【請求項2】
楽曲の演奏音を表すオーディオデータであってその各部の再生時刻を示すタイムコードを含むオーディオデータを、所定の記憶手段から読み出して該タイムコードに従って再生する楽曲再生手段と、
ノートの列と各ノートの発音タイミングを示すタイムコードを含むガイドメロディデータと、該ガイドメロディデータを構成する各ノートの発音タイミングの補正内容を示す補正データとを取得するガイドメロディデータ取得手段と、
前記ガイドメロディデータ取得手段により取得されたガイドメロディデータに含まれるタイムコードの示す発音タイミングを前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示す補正内容で補正し、補正後のタイムコードに従って、該ガイドメロディデータを前記楽曲再生手段により再生されるオーディオデータに同期させて再生するガイドメロディ再生手段と
を具備することを特徴とする楽曲再生装置。
【請求項3】
前記補正データは、テンポの揺らぎを前記楽曲の各部で指摘したデータであり、
前記ガイドメロディ再生手段は、前記楽曲のテンポが各部において前記ガイドメロディデータ取得手段により取得された補正データの示すテンポとなるように該ガイドメロディデータのタイムコードを補正する
ことを特徴とする請求項2に記載の楽曲再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−276101(P2008−276101A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122265(P2007−122265)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】