説明

構造の形成のための方法

本発明は溶剤を含み、支持体に付着する導電性ペースト状物質を塗布し、続いて物質を硬化することによって、支持体上に線状及び/又は点状構造を形成し、特に太陽電池の上にすじ状の導電性コンタクトを形成するための方法に関する。支持体への陰影を最小化し、同時に構造の抵抗を低くするために、物質を支持体に塗布した後、極性分子を含む媒質を支持体及び/又は物質上に被着し、物質に含まれる溶剤をこの媒質によって抽出することを提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体に付着する導電性ペースト状で溶剤を含む物質を塗布し、続いて物質を硬化することによって、支持体上に線状及び/又は点状構造を形成し、特に半導体部品例えば太陽電池の上にすじ状の導電性コンタクトを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造で繊細な導電性構造の被着は、まず第一に物理的又は化学的気相析出、エピタクシー法によりマスクを使用し、場合によっては補助的にレーザを援用して行われる。この技術は非常に繊細な構造を製造することができる。但し経済的理由から低廉な大量生産にはほとんど適さない。
【0003】
繊細な構造を被着するための別の方法は、例えばスクリーン印刷、ローラ印刷又はタンポン印刷である。これらの方法は経済的観点から魅力的に思われるが、しかし限られた解像度の構造しか得られないため、使用は原則として粗大な構造を持つ大型な電子部品にしか適さない。
【0004】
太陽電池の製造では放射に面した側に関して、良好な導電性及び太陽電池、即ち支持体との良好な電気的接触を保証するなるべく繊細な導電性構造を被着することが要求される。この要求は、放射側の面の陰影をなるべく少なくしなければならないという事情から出てくる。ところが電流誘導率の高い良好な導電性を可能にするには、当該の導体が大きな横断面を有しなければならない。この要求を満たすために、先行技術ではコンタクトがしばしばスクリーン印刷によって被着される。しかしそのための前提は、支持体が平坦な表面を有し、その上に線状又はすじ状のコンタクトを被着することである。エピタクシー法も適用される。
【0005】
別の周知の方法ではレーザビームによって太陽電池の表面にくぼみを凹設し、続いて化学的析出法により導電性材料でこのくぼみを埋める(米国特許US−A−4,726,850)。ところが当該の方法はかなり費用がかかり、このためコストが高くなる。
【0006】
国際出願公開WO91/24934では導電性ペーストを支持体に被着し、紫外光を照射してペーストを重合し、安定化する技術が開示されている。
【0007】
米国特許US−B−6,312,864によれば、プラズマスクリーン上に構造を形成するために、熱分解性結合剤を含む物質を塗布し、次に温度作用によってこれを硬化することが知られている。
【0008】
米国特許US−B−6,322,620は熱処理により支持体上の物質を硬化することを提案する。
【0009】
太陽電池に構造を被着するための印刷法は、文献“Screen-Printed Rapid Ther-mal Processed (RTP) Selective Emitter Solar Cells Using a Single Diffus-ion Step”(単一の拡散段階を使用するスクリーンプリント急速熱処理(RTP)選択放出太陽電池),16th European Photovoltaic Solar Energy Conference(第16回ヨーロッパ光起電太陽エネルギー会議)、英国グラスゴウ、2000年5月1-5日、1087-1090頁及び“High Quality Screen-Printed and Fired-Through Si-licon Nitride Rear Contact For Bifacial Silicon Solar Cells”(両面シリコン太陽電池のための高品質スクリーンプリント焼成窒化ケイ素背面コンタクト), 16th European Photovoltaic Solar Energy Conference、英国グラスゴウ、2000年5月1-5日、1332-1335頁に出ている。
【0010】
無溶剤であって、貴金属粉末、ガラスフリット及び金属酸化物並びに結合剤を含むペーストが日本特許公開JP−A−63268773により周知である。
【0011】
印刷法は、小さな線幅の場合、高い層厚を生じることができないという根本的欠点がある。このことは、所望の低い抵抗値を得るために、広幅な線又は多数の線が必要であるという欠点をもたらす。このため望ましくない陰影が生じる。
【0012】
フィンガーライティング・システムは太陽電池の構造形成のために使用される限り、基本的にこれらの要求を満たすのに適している。ところが線幅は、通常ペースト状の被着物質と支持体表面の性質との相互作用に著しく左右される。ペーストと支持体はおおむね被着の後に、ペーストの広がりに影響する。その場合、塗布された線状のすじの形の構造は、にじむ傾向がある。このため被着された構造が粗くなる。この欠点を回避するために、フィンガーライティング・システムの細かい開口を選ぶことができるが、それによって被着されるすじが途切れる危険が大きい。従って関連するプロセスパラメータに対するプロセスの感受性が高いため、当該の技術はまれにしか適用されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、導電性構造例えば導電路又はコンタクトを支持体、特に太陽電池に被着することができ、その際支持体への陰影が最小化されるように、冒頭に挙げた種類の方法を改良することにある。同時に構造の抵抗が小さくなければならないことも課題とする。また、この方法は特に半導体部品、例えば太陽電池上の導電性コンタクトの製造で大量生産に適合するようにすることも課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0014】
上記の課題解決のために、本発明はおおむね次のような構成になっている。即ち支持体に物質を塗布した後、極性分子を含む媒質を支持体及び/又は物質に被着し、物質に含まれる溶剤をこの媒質によって抽出するのである。
【0015】
その場合、ペースト状の物質を支持体に例えばスクリーン印刷、タンポン印刷、スプレー技術又はとりわけフィンガーライティング技術によって被着することができる。
【0016】
本発明によれば、被着したばかりのペースト構造の上に極性分子を含む液体(媒質)を塗布することにより繊細な導電路を作製し、硬化することができる。即ち塗付したばかりのペースト材料又はペースト物質がにじむことが阻止又は制限され、もしくはペースト物質の収縮が起こるようになる。ペーストは結合剤、溶剤、分散質、金属粒子、ガラス状及び/又はセラミック体の混合物からなる。
【0017】
ペーストの周縁部と表面の媒質の相互吸引作用によって極性溶剤がペーストから抽出される。一般に有効な想定として、双極子要素を有する媒質例えば水、アルコール、アセトン及び極性分子を含むその他の媒質の極性分子と、ペーストの極性溶剤との相互作用が考えられる。溶剤は周縁区域のペーストの外へ拡散し、溶剤の乏しい周縁区域が後に残る。このことは硬化に相当し、それによって周縁層による導電路構造の安定化を引き起こす。
【0018】
ペースト状物質で被着された構造の幅高さ比が、物質と塗布される媒質との相互作用によって変更されることを確認することができた。媒質は特に極性分子の溶液であって、これが物質の表面とも支持体の表面とも相互作用するのである。
【0019】
その場合、極性分子を含む溶液を媒質として加えることによって、支持体に塗布した直後にペースト状物質の横断面の幅高さ比を、高さがより大きく、幅がより小さくなるように変化することができるから、得ようとする点状又は線状構造の所望の繊細度が生じる。関与する物質の相互作用によって、導電性ペースト状物質の、要求に合致した繊細な構造を被着することができる。その場合、先行技術に見られる方法、即ちスクリーン印刷、タンポン印刷、スプレー技術又は特にフィンガーライティング技術による方法が塗布のために適用される。こうして高い処理量で所望の繊細な構造を支持体、例えば太陽電池の上に安価に被着することができる。
【0020】
本発明によって得られる繊細な構造、即ちペースト状物質と支持体の間の細い接触面に基づき、焼結の後に物質構造に沿って支持体上に、初めに、即ち焼結の前に物質とボンディングされたが、続いていわば物質の収縮によって再び露出される区域が生じる。あらかじめ覆われ、その後再び露出される区域は光学的に検出することができ、本発明において特徴的なものである。
【0021】
塗布される媒質の量は、効果の有効性と耐久性にとって共に決定的である。あまりに多くの媒質を塗布すれば、媒質(例えば水、アルコール)が塗布されたペーストの下に入りこみ、即ちペースト溶剤がにじみ出ることよって下側からも硬化が生じることになる。このため基板への導電路の接着効果が破壊される。目標は、形状安定性を得るために硬い外殻を、そして基板への付着を維持するために導電路に接着性の心部を作ることである。ペーストからの溶剤の溶出は接触面即ちペーストの表面の媒質の量にも依存するから、泡によってこの量を減少することができる。そこで例えば媒質を泡立てるために界面活性剤を導入することによって、量を減じた媒質が支持体に与えられる。
【0022】
別法で、極性分子を含む媒質を支持体に塗布することによっても、ペースト状物質のにじみ出しが起こる。その場合、支持体に対する媒質の付着力は物質と支持体の間の付着力より大きい。このためペースト状物質のにじみ出し又は流出が阻止され、これを押もどすことさえできる。被着された物質のいわば後退が示され、その結果有利な高さ/幅比が生じる。
【0023】
但し一方では媒質と支持体の間、他方では物質と支持体の間の付着力を互いに調整して、物質の侵入を抑制するように注意しなければならない。さもなければ支持体から物質の剥離が起こるからである。従って支持体への物質の十分に良好な付着が与えられることを保証しなければならない。しかも同時に物質の表面の十分に急速な硬化が生じ、その際付着する心部区域が残らなければならない。
【0024】
換言すれば、媒質を使用することによって、支持体に塗布の後にペースト状物質のにじみ出しが抑制されるが、同時に支持体への十分な付着が確保され、場合によってはコンタクトを損なわずに物質の収縮を可能にすることを保証しなければならない。
【0025】
支持体は特に金属、とりわけ半導体材料、例えば単結晶及び/又は多結晶シリコン、ゲルマニウム、アモルファス・シリコン又は化合物半導体例えばテルル化カドミウム又は二セレン化銅インジウムの薄膜である。これらの材料は太陽電池の製造のための基材として使用される。その場合、本発明の要点は、太陽電池の放射に面した側に僅かな陰影で、従って光から電気エネルギーへの高い変換効率で、繊細な金属構造を得ることである。但し本発明は、これによって限定されるものではない。むしろ本発明に基づく方法は、絶縁体、例えばガラス又はセラミック物質上に繊細な導電性構造を作るためにも応用される。一例として、偏平な支持体を加熱するためにこのような構造を使用することが挙げられる。支持体として絶縁層を備えた金属材料も挙げられ、その上に本発明に基づき電気部品を配線することができる。
【0026】
ペースト状物質はおおむね単数又は複数の樹脂、単数又は複数の溶剤及び金属粉末、例えば銀、アルミニウム又は焼結助剤として鉛ガラス並びに支持体への付着仲介剤としてガラス及び/又はガラスセラミックスからなる。この物質は前述のようにスクリーン印刷、フィンガーライティング装置、タンポン印刷等により支持体の表面に塗布することができる。物質と支持体の間の良好な付着と共に支持体表面の良好な濡れが生じるならば、先行技術により物質の流出−ブリードともいう−が起こるから、塗布された物質、例えば線又はすじの広がりの傾向が生じる。先行技術によれば、高い物質粘度を調整することによってこの広がり傾向を部分的に阻止することができる。その場合、シキソトロピー・ペーストを使用することができ、その粘度は、せん断力を加えると引き下げられるが、無力状態で大幅に増加する。
【0027】
これに対して本発明によれば、別の媒質、例えば液体又は液体を含む媒質を支持体表面に被着することによって、流出又はブリードを抑制又は制止するように構成される。媒質は特に液体又は泡である。エーロゾルも考えられる。とりわけ支持体への付着力を高めるために、媒質に界面活性剤を混合することが好ましい。支持体への媒質の付着力が支持体へのペースト状物質の付着力より大きくなれば、物質が押もどされ、にじみ出し又はブリードが阻止される。
【0028】
特に界面活性媒質、例えば界面活性剤を含む水が利用される。硬化過程は原則として界面活性剤無しの水でも機能する。界面活性剤は泡を発生させ、こうしてまず第一に水量の適正な配分を行わせる。従って泡によって、より繊細な構造を被着することができる。
【0029】
媒質として前述のように極性分子を含む溶剤、例えば水、アルコール、アセトンが使用される。媒質は同じく有極の溶剤をペーストから溶出する。
【0030】
媒質の極性溶剤によってペーストの溶剤との間に相互吸引作用が生じ、その結果ペーストの溶剤が抽出され、即ち媒質をなす溶剤に移行する。
【0031】
このことを次の例で説明しよう。水の双極子モーメントは6.07×1030cmである。ペーストの溶剤、例えばアルコールの双極子モーメントは5.5−5.8×1030cmである。2つの溶剤の双極子モーメントが一致すれば、濃度勾配の結果、交換が起こる。その場合、アルコールが水に溶解するという形で、2つの液の交換が起こる。極性分子の交換によって、材料の周縁帯では材料に溶剤分の減少が生じ、その結果被着されたペーストが収縮する。このことは被着された導電路の形状安定性をもたらす。
【0032】
濃度勾配が著しく相違する場合は、交換もしくは、例えばベンゾール、ヘキサン又は二硫化炭素、四塩化炭素(双極子モーメントが0であるから水に不溶)の場合は相互反発作用が起こる。この場合はペーストの物質が圧縮され、媒質によってさらに基板の十分な濡れが与えられるならば、導電路の幅が縮小される。媒質中の界面活性剤は泡を生じさせるだけでなく、基板に対する表面張力を減少し、基板の良好な濡れを生じさせる。界面活性剤を含む媒質はペーストよりも基板をよく濡らし、こうしてペーストを圧縮する。
【0033】
最も簡単な場合は、界面活性媒質は水と石けんの石けん溶液である。しかしペースト状物質をあまりに強く押しもどすことによって、場合によっては導電路が個々の滴に分解し、このため中断することを防止するために、ペースト状物質は媒質と化学的に反応して、機械的に安定な表面又は表皮を形成する成分を有することができる。この表皮はペースト状物質の形状を安定化し、こうして滴の形成を阻止する。しかしペースト状物質の内部には未反応の材料が残存するから、支持体の表面へのペースト状物質の付着が維持される。
【0034】
薄く塗布した構造、例えば直径100μmの導電路では反応が物質の心部にまで起こることが可能であるから、完全な硬化が得られる。この硬化は数秒内に安定な形状をもたらす。ところが前述のように物質と支持体の間に付着が維持されるように注意しなければならない。さもなければ剥離が起こるからである。
【0035】
また物質に水溶性(極性)溶剤及び非水溶性(非極性)溶剤を含むことができる。その場合、水に不溶な溶剤は、ペーストの性質が溶剤によって維持されることを保証するが、この溶剤は媒質によって抽出されない。これによって物質の外層を意図的に硬化することが可能である。こうして媒質からの物質の侵入をさらに抑制することができる。
【0036】
このこととは別に、ペーストの安定化、即ち流出の抑制の後に、物質の金属粒子を支持体に焼き付けるために、常法により乾燥又は焼結が行われる。
【0037】
ペースト状物質の高さ:幅のアスペクト比(高さ/幅比)にとって物質の付着力、凝集力及び流動力が決定的である。その場合、重要な役割を果たすのは、物質と支持体表面の間の付着力である。この点で決定的なのは、物質の有機成分例えば樹脂及び溶剤である。
【0038】
本発明のその他の細部、利点及び特徴は特許請求の範囲及び特許請求の範囲に見られる特徴だけでなく、図面に見られる実施例に関連した当該の説明でも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、とりわけ結晶質シリコン物質をベースとする太陽電池の効率の改善のために使用されるが、これによって限定しようとするものではない。
【0040】
放射に対する反射を減少するためのSiOx(x≦2)又はSi3x(x≦4)からなる表層を備えたシリコンプレートは、空気又は湿った空気にさらされる。このような処理に続いて支持体表面の活性化が認められる。それはシリコン又はSi3xの結合に電気的活性中心が生じることで説明することができる。当該の処理はとりわけ約30℃≦T≦約60℃の温度Tで、とりわけ約15分≦t≦90分の期間tにわたって行われる。相対大気湿度は40%ないし90%でなければならない。代案として、オゾン含有雰囲気への露出又は紫外光による補助処理又は表面に沿ったコロナ放電によって、支持体表面の活性化を強化することができる。続いて又は平行してコロナ放電で処理することによって、補強効果を得ることもできる。
【0041】
支持体、即ち本例では太陽電池の適当に処理した表面にペースト状物質−以下では略してペーストという−を塗布する。本発明によれば、導電性ペーストは強い電気陰性の末端をもつ短鎖有機物質を有する。これによってペーストは、支持体への塗布の後に、電気陰性末端に基づくペースト表面電荷を支持体上の活性層と相互作用させることが可能な状態に置かれる。ペーストの調整、即ち相互作用の強さによっては、ペーストが物質上で離散するか又は接触面が減少する傾向がある。ペーストの離散はペーストと支持体表面の間の小さな濡れ角に基づいて起こる。補助的処置がなければ、これは予想外に幅の広い金属構造を
もたらすであろう。但しそれは支持体表面に対して良好な付着性を有するであろう。ペーストと支持体の間に反発力が形成され、それによって大きな濡れ角が生じるならば、ペーストのにじみ出しが阻止されるが、その結果塗布された構造が不十分な付着によって剥離する恐れがある。
【0042】
本発明に基づき別の媒質を加えることによって、一方ではにじみ出しが抑制又は制止され、他方では支持体からのペーストの剥離が阻止されるから、細い構造が得られる。媒質はペーストと交替して、一方では被着されたペースト構造の収縮を生じさせ、他方では支持体に対する堅固さが不利な影響を受けないようにする。
【0043】
媒質として特に液体、とりわけ泡が使用される。これは支持体にペーストを塗布した直後に被着される。その場合、媒質は、媒質と支持体の間の付着力がペーストと支持体の間の付着力より大きくなるような組成を有する。これに基づき媒質によってペーストがいわば押しもどされ、その結果流れ広がることが防止される。その場合、作用する付着力に基づき構造の幅が縮小され、ペーストの幅が細まることさえ認めることができた。
【0044】
またペーストは、支持体にペーストを塗布した後、少なくとも表面硬化を生じさせ、その結果表面硬化によって塗布されたペースト、即ちその幾何学的形状が維持されるから、広がりが抑制されるような成分を含む。
【0045】
ペーストは幾つかの有機成分、例えば樹脂及び溶剤、種々の結合剤及び固体及び/又は液体状の分散媒並びに有機固形物例えば金属例えば銅、銀、アルミニウム、鉛、スズ、はんだ合金の混合物及びこれらの組合せ並びに他の非金属物質例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、カーボンブラック/黒鉛粒子のエーロゾル又はこれらの成分を含む粉末並びに無機焼結助剤からなることができる。また低融点ガラス合金又は無機物質例えばガラス、鉛含有ガラス、ホウ又はリンケイ酸塩ガラスもしくは金属酸化物を焼結助剤、融点低下剤、焼結工程での付着仲介剤、フラックス等としてペーストに加えることができる。
【0046】
また有機成分、例えばポリマー(樹脂)及び有機溶剤が添加される。特にペーストの有機成分は下記を含むことができる。
−結合剤、例えばアクリル及びポリエステル樹脂、クロロペン、エチルセルロース、エチレン、ポリエチレン、フラン、ポリ塩化ビニル、アルキル樹脂、エポキシド樹脂、エポキシドエステル、ポリウレタン、ブタジエン、シリコーン及びこれらの混合物。
−溶剤、例えばジメチルエステル、ブチルエステル、水、アルコール、エタノール、プロパノール、アセトン、テレピン油、ベンゾール、ベンジン
−架橋剤、例えばメラミン、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン、尿素架橋剤
−硬化剤
−膜形成剤、例えばポリビニルブチラール
−湿潤剤
−レオロジー成分
−ポリマー改質剤、例えば可塑剤
【0047】
例えばペーストは結合剤、ブチルジグリコールに溶解したエチルセルロース、異なる鎖長の種々の結合剤及びペーストの流動性に影響するという添加物からなることができる。適当な粘度に調整した適当なペーストを所望の被着方法、例えばスクリーン印刷、ステンシル印刷又はフィンガーライティング法で支持体、例えば太陽電池に塗布することができる。
【0048】
フィンガーライティング技術により塗布を行う場合は、ペーストはまず円形横断面を有する。フィンガーライティング・システムの出口ノズルに対して支持体を移動することによって、ペーストが引き伸ばされる。その場合、直径50μmないし300μm、とりわけ80μmのペーストの糸が生じるように、ペーストの粘度と支持体の前進速度を調整しなければならない。もちろんフィンガーライティング・システムを支持体に対して又はこれらを相互に移動することもできる。
【0049】
さもなければすじの望ましくない広がりが生じることを抑制するために、塗布の後の最初の数秒内に本発明の提案する処置が行われる。例えば、支持体又はペーストのすじを、支持体に塗布の直後に下記と接触させることができる。
−ペースト表面の溶剤を結合し、密閉性の表皮を形成する固形物、例えば微粉末。
−ペーストの溶剤又は樹脂と反応する液体又はガス(単独で又は組合せとして)。
−ペーストの表面硬化をもたらすプラズマを発生する放電。
−表面を硬化するための電磁線、例えばプラスチックを硬化する紫外光又は急速乾燥効果のある赤外線。
【0050】
特にペーストのすじは支持体に塗布した直後に、水を含む液体、例えば泡と接触させる。泡はペースト材料から有機溶剤を溶出し、それによって機械的変化、例えば表面の硬化を生じる。こうして表面は強靭な表皮又は皮殻を形成するから、ペースト材料のその後の流出が阻止される。ペーストの固形含有物と共に丈夫な皮殻が形成される。
【0051】
本例では有機かつ水溶性溶剤ブチルジグリコールが媒質、例えば界面活性剤を含む水溶液との接触によって80%ないし100%まで除去される。このことは表面硬化、例えば皮殻の形成をもたらす。
【0052】
例えば幅100μmのランドを塗布する場合は、連続的な硬化を生じさせることが可能である。完全に硬化したランドが支持体から剥離されることを回避するために、本発明に基づき水溶性溶剤のほかに水に不溶の溶剤も加える。それによって一方では所望の硬化が起こり、他方では支持体への付着性が維持される。
【0053】
そこで本発明に基づき界面活性媒質との関連で硬化し、及び硬化しない樹脂・溶剤混合物に金属粉末を添加してペーストとする。ペーストは媒質、例えば水を含む液体又は泡との接触部の周縁区域で硬化する。ペーストの成分は、ペーストの一部が水溶性溶剤、他の部分が非水溶性溶剤を含むように混ぜ合わされる。ペースト混合物を塗布した後、媒質、例えば泡との反応の結果、水溶性溶剤をペーストの部分区域から排出し、こうして硬化を生じる。ペーストの他の部分、即ち水に不溶の溶剤を含む部分は不変のままであり、こうして支持体への付着性を保証する。
【0054】
本発明の別の提案によりペーストに紫外線硬化性成分を加えることができる。支持体へのペーストの塗布は紫外光の作用のもとで行われ、このためペーストの表面の硬化が起こる。ペーストの内部に軟らかい心部が残り、これが本来の付着性を可能にする。紫外光の浸透深さは、有機付着混合物の吸収性に応じて100nmから1μmまでの範囲であり、その際ペースト中の金属粒子によって放射のそれ以上の浸透が阻止される。
【0055】
点状、線状又はすじ状のペーストを塗布し、流出又はにじみ出しを回避するために本発明に基づきペーストを調節した後、常法により乾燥、続いて焼結が行われる。
【0056】
本発明に基づき支持体に被着された構造を調べると、支持体に当初被着されたペーストのカバーが焼結工程の後に塗布の直後より小さい面を覆っていることが認められる。このことを図1ないし3に基づいて明らかにしよう。
【0057】
図1には支持体に被着された点状構造10の原理図が示されている。支持体に塗布した直後にペーストが覆う面を、外側の円12で略示した。支持体にペーストを塗布した直後に被着した、特に界面活性剤を含む泡の形の媒質によって、ペーストが支持体から押もどされるから、焼結後の構造は図1に暗影で示した面14を覆う。そこで支持体自体の上に、構造14を取り囲む希薄なリング16が認められる。これは当初はペースト材料で覆われていたのである。本発明に基づく方法によって点状構造の繊細化が行われる。
【0058】
図2及び3が明らかにする線状に被着された構造18についても、同じことが当てはまる。図2は太陽電池20の上に被着されたペースト状のすじの写真である。焼結後のその幅は、図3の細線を施した区域18に相当する。当初すじは、図3に破線22、23で、図2にすじ24、26プラス最終構造18で示す幅を有する。
【0059】
図5は、支持体36に塗布された導電路38がどのようににじみ出しの傾向を示し、又は本発明に基づき、この傾向がどのように抑制又は制限されるかを原理的に明らかにするものである。即ち図中のAでは支持体36に塗布した直後の導電路38が示されている。塗布の後、時間Δtを経た導電路を示す図中Bは、導電路の拡張の傾向を明らかにしている。従って同様に作製された導電路は比較的大きな幅員を有し、その結果、支持体36に大きな陰影を生じる。そこで本発明に基づき導電路の塗布から時間Δtの後に(この期間は0.1秒から10分の範囲内である)、支持体36及び導電路38の上に極性分子を含む媒質を塗布するものとする。極性分子を含む媒質は、単に一例として媒質を挙げれば、水、アルコール、アセトン又はこれらの混合物である。導電路38のペースト物質は溶剤を含むから、溶剤の少なくとも一部が媒質に抽出され、このため、図中Cに示すようにペースト即ち導電路38に溶剤のない周縁部42が生じる。周縁部42は機械的に硬い(安定である)。支持体36寄りに、即ち導電路38の底部区域に、引き続き接着性のペースト材料を有する細い区域44があるから、支持体との接触及び支持体36への導電路38の付着が保証される。
【0060】
図5中のDでは支持体36に塗布の後、時間Δtを経て、導電路38に同じく極性分子を含む媒質が施される。即ち媒質46が支持体36及び導電路38に被着される。この例Dでは媒質46は泡である。特に媒質は泡の形成のために界面活性剤を含む。泡に基づき、媒質の供給量の配分が行われ、その結果導電路38の周縁部48、即ちペースト物質の表面の媒質の量が減少するから、ペースト物質の周縁帯と媒質の相互作用も減少する。しかしこのこととは別に、物質から溶剤の抽出が行われるから、細い周縁部48が機械的に安定になる。ところが同時に大きな接着性ペースト心部50が残り、これが支持体36への良好な付着を保証するという利点が生じる。
【0061】
物質の硬化のために溶剤を抽出するという着想に基づくだけでなく、一方では極性分子を含む媒質と支持体、他方では物質と支持体の相互作用を利用する本発明の別の観点を、図6に基づいて説明する。図6A)には支持体に塗布した直後の導電路が示されている。その場合、導電路は幅b0を有する。1分後に幅は当初の幅b0に対して12.5%(Δb)、3分後には幅b0に対して17%(Δb)収縮している。支持体に対して物質の付着力より強い付着力を有する媒質を利用することによって、この収縮を生じさせた。これを得るために、極性溶剤のほかに、双極子モーメントがゼロに等しいか又は極めて小さな双極子モーメントを有する非極性溶剤を含む物質(ペースト)が利用される。例えば一方のペーストが非極性溶剤、他方のペーストが極性溶剤を含む2つのペーストを混合することができる。非極性溶剤が存在することによって、極性溶剤の拡散が物質の完全な硬化、即ち導電路の周縁部の皮殻形成を生じない。非極性溶剤は周縁部の硬化効果を減少し、図6A)、6B)及び6C)の比較で明らかなように、導電路の変形能を生じる。
【0062】
また物質中の非極性溶剤分は未硬化のペースト心部の接着性を維持するから、媒質が物質即ち導電路の下に入り込むことを阻止する。
【0063】
また図4に基づいて、先行技術及び本発明により支持体に被着されたすじ状構造の相違を明らかにしよう。
【0064】
図4には支持体としてのシリコン太陽電池表面に被着されたすじ状コンタクトの高さと幅が示されている。曲線28は本発明により塗布されたコンタクト、曲線30は先行技術によるコンタクトを略示する。縦軸と横軸に高さH及び幅Bの異なる単位が選択されている。
【0065】
フィンガーライティング法でシリコン太陽電池の上に塗布したコンタクト28は、5μmから50μmまでの高さ、とりわけ30μmの高さHで約50μmから200μmまでの幅、とりわけ90μmから110μmまでの幅を有する。焼結の後に太陽電池の表面上に認められる側部構造32、34は図2のすじ24、26に相当するもので、高さ0.2μmから200μmまでの間で、約150μmの間隔を有する。
【0066】
高さと幅のアスペクト比(高さ/幅比)は0.1ないし約1に達し、代表的には
33μm:110μm=0.3
である。
【0067】
これに対してスクリーン印刷法でシリコン太陽電池に常法により被着されたコンタクト30は、約50μmから300μmまでの幅、とりわけ200μmの幅を有する。ランドの高さは5μmから25μmまでの値である。従って高さ対幅のアスペクト比(高さ/幅比)は、0.02ないし0.2となり、代表的には
14μm:200μm=0.07
である。
【0068】
本発明に基づいて、平均的に当初の塗布幅に対して20μmから50μmまでの線幅の繊細化を得ることができる。特徴的なのは、すじの収縮に原因する側部構造である。
【0069】
一例として挙げれば、約130μmの初期幅で、焼結の後の最終幅は約80μmであった。換言すれば、界面活性剤を含む泡を使用して、前記のような幅の減少が生じるような様態及び期間でペーストからの溶剤の溶出と表面の硬化が起こるように、泡を塗布したのである。
【0070】
本発明に基づく方法は原則として、金属含有ペーストにより金属物質上に構造を被着し、150μm以下の線幅を生じるための種々の材料組合せに使用される。このことは特にアモルファス・シリコン上に析出した半導体層、あらかじめ導電層で覆ったガラス支持体上のテルル化カドミウム化合物又は二セレン化銅インジウム化合物にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ペースト状物質で作られた線状構造の横断面図を示す。
【図2】支持体上に付着する線状構造を有する支持体の平面図を示す。
【図3】支持体に塗布された図2の線状構造の支持体に塗布し又は焼結した後の原理図を示す。
【図4】塗布された構造の高さ幅比を明らかにするためのグラフを示す。
【図5】支持体上に塗布された導電路の原理図を示す。
【図6】支持体上の導電路の収縮を明らかにするための原理図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に付着する導電性ペースト状で溶剤を含む物質を塗布し、続いて該物質を硬化することによって、支持体上に線状及び/又は点状構造を形成し、特に半導体部品、例えば太陽電池の上にすじ状の導電性コンタクトを形成するための方法において、該物質を支持体に塗布した後、極性分子を含む媒質を支持体及び/又は物質上に被着し、物質に含まれる溶剤をこの媒質によって抽出することを特徴とする方法。
【請求項2】
媒質を支持体上のある範囲に供給し、物質が支持体に沿って流れることを抑制又はほぼ抑制するとともに、物質が支持体から剥離することを回避することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
媒質と支持体の間の付着力が物質と支持体の間の付着力より大きいことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
界面活性媒質として、水及びアニオン界面活性剤、例えば石けん、硫酸脂肪アルコール、スルホン酸アルキルベンゾール及び/又はカチオン界面活性剤、例えば逆性石けん及び/又は両性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばポリアルコールの非カルボン酸エステルを使用することを特徴とする上記請求項の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項5】
支持体上のペースト状物質を塗布した区域に液状又は泡状の界面活性媒質を被着することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ペースト状物質を支持体に、とりわけスクリーン印刷、タンポン印刷、フィンガーライティング技術及び/又はスプレー技術により被着することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該物質を、支持体及び/又は物質に塗布した後、Δtの期間内に媒質を被着し、該期間Δtは約0.1秒から約600秒までの時間、とりわけ約1秒から約60秒までの時間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
特に15μm≦d≦300μm、とりわけ約80μmの直径dが生じるように、該物質を支持体に被着することを特徴とする上記請求項の少なくとも1つに記載の方法。
【請求項9】
該物質に水溶性及び非水溶性溶剤を加えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
硬化した物質が特に0.1≦a≦1.0の範囲の高さ/幅比aを有し、特に約0.3の高さ/幅比aを有するように、該物質を支持体に点状又は線状又は、すじ状に塗布することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
支持体として、酸化ケイ素及び/又は窒化ケイ素からなる表層を有するシリコン基板を使用することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
物質の溶剤が媒質によって抽出されるように、支持体及び/又は物質に塗布される媒質と物質との間で、これらの中にある溶剤に関して濃度勾配を調整することを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−528127(P2007−528127A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502264(P2007−502264)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002414
【国際公開番号】WO2005/088730
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(506290729)ショット・ゾラール・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】