説明

構造化された金属性被覆物を製造するための方法

本発明は、最初に表面−疎水化物質が基材の表面に施され、そして次に導電性粒子を含む物質が、予め規定されたパターンに従って基材に施される、構造化された導電性被覆物を基材上に製造するための方法に関する。
本発明は更に、太陽電池又は回路基板を製造するために、本方法を使用する方法に関し、及び構造化された導電性の表面が施される基材を含む電子部品、基材に施された表面−疎水化材料の単層、又はオリゴ層、及び単層、又はオリゴ層に施された、構造化された導電性表面に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化された金属性被覆物を基材上に製造するための方法に関する。本発明は更に、本方法を、太陽電池又は回路基板、及び構造化された金属性表面が施されている基材を含む電子部品を製造するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上への構造化された金属性被覆物は、例えば印刷法によって製造される。この目的のために、金属性粒子−含有インキが、例えばインクジェット印刷法によって、又はレーザー印刷法によって基材に施される。インキ滴がインキで被覆された担体から印刷される基材へと投げられる、対応する方法が、例えば特許文献1(US−B6241344)に開示されている。インキを移動させるために、(基材が印刷される位置で)担体上のインキにエネルギーが導入される。この結果、インキの一部が蒸発し、担体から離れる。このようにして離れたインキ滴は、蒸発したインキの圧力によって基材上に投げられる。エネルギーの特定の導入によって、印刷されるパターンに従って、このようにしてインキを基材に移動させることができる。インキを移動させるために必要とされるエネルギーは、例えばレーザーによって導入される。インキが施される担体は、例えば回転ベルトである(回転ベルトにインキが、印刷領域の前に、供給装置の補助下に施される)。レーザーは、回転ベルトの内側に存在し、これによりインキから反れた側(反対側)で、レーザーが担体に作用する。
【0003】
しかしながら、このような方法の不利な点は、通常、印刷の品質がこの方法に含まれる条件の均質性に大きく依存することである。従って、局所的な非常に小さな差異であっても、エネルギーの導入ポイントにおいて、印刷物に直接的に質的な劣化をもたらし得る。このような差異は、例えばインキ被覆物の厚さの差異、及び例えば印刷される基材の静電状態である。従って、例えば、通常のポリマー又はペーパー表面は、種々のローリング工程のために、完全に乱雑な静電表面電荷を有し、このことは、その電圧ポテンシャルが非常に不均一なことでもある。これらから得られる印刷されたイメージは、主としてインキの明確でない(定義されていない)スプレー(吹きつけ)及び噴霧に起因して、不正確な端部(edge)と縁部(border)を発生させる傾向を強く有している。不正確な端部と縁部の更なる要因は、印刷される基材上のインキの不均一なレベリング(平滑性)である。
【0004】
水の滴又は油の滴が表面を確実に濡らすことなく、そして実質的に球状の形状を保持するために、表面にシラン−含有層を施すことが公知である。このような層は、例えば特許文献2(EP−A0497189)に記載されている。しかしながら、ここに記載されている方法の被覆の不利な事項は、被覆される表面が、活性水素を、例えば(表面上の)ヒドロキシル基、イミノ基、又はアミノ基の状態で、表面に有している必要が有ることである。更に、層が水又は油をはじくために使用される。構造化された層をシラン−含有表面に施すことは、想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US−B6241344
【特許文献2】EP−A0497189
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、明確に規定された端部と縁部を有する構造化された金属性層が製造される、構造化された金属性被覆物を基材上に製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、基材上に構造化された金属性被覆物を製造する方法であって、以下の工程:
(a)基材の表面に、表面−疎水化物質の単層(monolayer)又はオリゴ層(oligolayer)を施す工程、
(b)予め規定されたパターンに従って、基材上に、導電性粒子を含む物質を印刷(imprint)する工程、
を含むことを特徴とする方法によって達成される。
【0008】
表面−疎水化物質の単層が基材の表面に施されることが好ましい。しかしながら、別個のケースで、2又は3層を含む層を形成することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
表面−疎水化物質の単層又はオリゴ層を基材の表面に施すことにより、基材に施された導電性粒子を含む物質が、より狭い範囲で走る(流れる)か、又は最適なことには、走ることがなく、その構造を保持することが確実化される。更に、単層又はオリゴ層を施すだけで、(特に半導体材料を含む基材の場合)表面−疎水化物質の、構造化された金属性被覆物の特性及び半導体基材の特性への影響を最小限にすることができ、これにより、製造される製品の特性に悪影響が及ぼされない。このようにして得ることが可能な、より正確な端部は更に、実質的に100μmよりも小さい構造を有する、鮮明で解像度が高い印刷イメージを印刷できるという有利性を有している。このように、100μm未満の構造を有する、高度に解像された印刷イメージは、例えば太陽電池を製造するために有利である。太陽電池を製造するために、通常、スクリーン印刷技術を使用して、シリコンニトリド被覆された、又は不動態化されたウエハーの表面に、銀ペーストが施される。しかしながら、実質的に100μmよりも小さい構造物は、スクリーン印刷法を使用して確実に印刷することができない。この替わりに、例えばUS5021808から、レーザー−吸収インキを使用して印刷することが公知である。この文献では、インキは透明で連続的なフィルムに施され、そしてレーザーが、背面からフィルムの前面に焦点を合わされ、そしてその場に存在するレーザー吸収フィルムが、インキの溶媒の一部が直ちに蒸発する範囲で加熱される。このようにして、インキ滴が基材、例えばソーラーウエハーに移動される。しかしながら、その粘度が(匹敵するスクリーン印刷ペーストの粘度よりも)実質的に低いインキたけが、印刷に適切である。テクスチャード加工の、及びシリコンニトリド−被覆されたウエハーにインキを移動させた後、インキが表面上を走る(流れる)ことが観察されている。本発明に従い、既にシリコンニトリド−被覆された、又は不動態化されたウエハーを、表面−疎水化物質で被覆することにより、ランニング(走り、流れ)が低減されるか、又は理想的には抑制される。従って、製造された印刷イメージは、より鮮明な端部を有し、そしてより微細な印刷イメージが可能である。
【0010】
シリコンニトリド−被覆ウエハーに加え、酸化アルミニウム(Al23)又はシリコンカーバイド(SiC)で被覆されたウエハーを使用することもできる。
【0011】
太陽電池の場合、印刷されたイメージは通常、2〜3つのより広いストリップを有しており、これに複数のセル(cell)を連結するためのテープがはんだ付けされている。更に、セルは、導電性が良好な非常に薄い格子(グリッド)を有している。この格子についての要求は非常に高い。格子は、伝導性が高い必要があるが、しかし光の入射を可能な限り妨げてはならない。この理由のために、格子の個々の軌道(トラック)は、可能な限り狭く、及び最大の厚さで施す必要がある。
【0012】
導電性格子を得るために、溶媒中に導電性粒子を含んでいるインキが使用される。
【0013】
構造化された金属性被覆物を製造するために基材に施される導電性粒子は、好ましくは銀、銅、鉄、スズ、ニッケル、又はこれらの金属の混合物又は合金を含む。極めて好ましくは、特に太陽電池の製造に、銀及び/又は任意にニッケルを含む導電性粒子が使用される。使用する粒子は、この技術分野の当業者にとって公知の任意の形状を想定して良い。2種以上の異なる粒子を使用することも可能で、ここで粒子のサイズ、形状又は材料で異なることも可能である。通常、異なる形状の粒子、例えば球状の粒子、及び薄板状の粒子が使用される。粒子は特に、そのサイズで異なっても良い。
【0014】
粒子のサイズは通常、印刷される構造物の寸法が粒子の最大寸法よりも実質的に大きくなるように選ばれる。好ましくは、10μm以下のサイズを有する粒子が使用される。特に、基材に施される物質中の粒子としてナノ粒子を使用することも可能である。
【0015】
粒子が分散する適切な溶媒は、この技術分野の当業者にとって公知の、任意の溶媒である。適切な溶媒は、例えば水又は有機溶媒である。
【0016】
導電性粒子を含む物質内に通常存在するマトリックス材料は、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン);ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート);アクリル化アクリレート;アルキド樹脂;アルキル−ビニルアセテート;アルキレン−ビニルアセテートコポリマー、特にメチレン−ビニルアセテート、エチレン−ビニルアセテート、ブチレン−ビニルアセテート;アルキル−ビニルクロリドコポリマー;アミノ樹脂;アルデヒド及びケトン樹脂;セルロース及びセルロース誘導体、特にヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエステル、例えばセルロースアセテート、プロピネート、ブチレート、カルボキシアルキルセルロース、セルロースニトレート;例えばセルロースアセテート、プロピネート、ブチレート、カルボキシアルキルセルロース、セルロースニトレート;エポキシアクリレート;エポキシ樹脂;変性エポキシ樹脂、例えば2官能性、又は多観官能性ビスフェノールA又はビスフェノールF樹脂、多官能性エポキシノボラック樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル、ビニルエステル、エチレン−アクリル酸コポリマー;炭化水素樹脂;MABS(透明ABS含有アクリレート単位);メラミン樹脂、無水マレイン酸コポリマー;メタクリレート;天然ゴム;合成ゴム;塩素ゴム;天然ゴム;ロジン;セラック;フェノール樹脂;フェノキシ樹脂、ポリエステル;ポリエステル樹脂、例えばフェニルエステル樹脂;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアニリン;ポリピロール;ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリカーボネート(例えばBayer AGからのMakrolon(登録商標));ポリエステルアクリレート;ポリエーテルアクリレート;ポリエチレン;ポリエチレンチオフェン;ポリエチレンナフタレート;ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG);ポリプロピレン;ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリテトラヒドロフラン;ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、ポリビニル化合物、特にポリビニルクロリド(PVC)、PVCコポリマー、PVdC、ポリビニルアセテート及びこれらのコポリマー、任意に部分的に加水分解したポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリレート、及びメタクリレートで、溶液中のもの、及びこれらの分散物及びこれらのコポリマー、ポリアクリレート及びポリスチレンコポリマー、例えばポリスチレン−無水マレイン酸コポリマー;ポリスチレン(硬質又は非硬質);ポリウレタン、非架橋のもの又はイソシアネートで架橋したもの;ポリウレタンアクリレート;スチレン−アクリレートコポリマー;スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(例えばBASFからのStyroflex(登録商標)又はStyrolux(登録商標)、CPCからのK−ResinTM);プロテイン、例えばカゼイン;スチレン−イソプレンブロックコポリマー;トリアジン樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂(BT)、シアネートエステル樹脂(CE)、アリル化ポリフェニレンエーテル(APPE)である。更に、2種以上のポリマーの混合物がマトリックス材料を形成しても良い。
【0017】
マトリックス材料は更に、充填材を含んでも良い。適切な充填材は、例えばガラスフリット、又は有機金属化合物である。
【0018】
適切な溶媒は、例えば、脂肪族及び芳香族炭化水素(例えばn−オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アミルアルコール)、多価アルコール、例えばグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、アルキルエステル(例えばメチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、3−メチルブタノール)、アルコキシアルコール(例えばメトキシプロパノール、メトキシブタノール、エトキシプロパノール)、アルキルベンゼン(例えば、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン)、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、アルキルグリコールアセテート(例えば、ブチルグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート)、ジメチルホルムアルデヒド(DMF)、ジアセトンアルコール、ジグリコールジアルキルエーテル、ジグリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジグリコールアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジオキサン、ジプロピレングリコール及びジプロピレンエーテル、ジエチレングリコール及びジエチレンエーテル、DBE(二塩基エステル)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、エチレンクロリド、エチレングリコール、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールジメチルエステル、クレゾール、ラクトン(例えばブチロラクトン)、ケトン(例えばアセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルジグリコール、メチレンクロリド、メチレングリコール、メチルグリコールアセテート、メチルフェノール(オルト−、メタ−、パラ−クレゾール)、ピロリドン(例えばN−メチル−2−ピロリドン)、プロピレングリコール、プロピレンカーボネート、カーボンテトラクロリド、トルエン、トリメチロールプロパン(TMP)、芳香族炭水素、及び混合物、脂肪族炭化水素、及び混合物、アルコール性モノテルペン(例えば、テルピネオール)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(Texanol(登録商標))、水及び2種以上のこれらの溶媒の混合物である。
【0019】
表面−疎水化物質の単層を施すことにより、導電性粒子を含む物質の走り(流れ)が回避されるか、又は限定される。表面−疎水化物質の単層の供給は、この技術分野の当業者にとって公知の任意の所望の方法によって行われる。通常、表面−疎水化物質は、蒸着、スプレー、又は浸漬によって基材の表面に施される。表面−疎水化物質が蒸着によって基材に施される場合、蒸着は減圧下に行なわれることが好ましい。蒸着のための圧力範囲は、大気圧〜10-6ミリバール(abs)の範囲、好ましくは100ミリバール(abs)〜10-6ミリバール(abs)の範囲で使用される。蒸着は通常、10〜500℃の範囲の温度、好ましくは10〜100℃の範囲の温度、特に室温で行われる。
【0020】
表面活性化物質の供給がスプレーによって行われる場合、表面−活性化物質を含む溶液は通常、スプレー浸漬によって基材に施され、そして次に乾燥される。乾燥において、表面−疎水化物質の自己組織化(self-organizing)した単層が、基材上に堆積される。エマージング法(該エマージング法では、被覆される基材が表面−活性化物質を含む溶液に浸漬されるか、又は基材が表面活性化物質の高度に希釈された溶液中に配置される)では、表面−疎水化物質の自己組織化した単層が基材の表面上に堆積される。表面と反応したシランの洗浄除去を回避するために、基材は通常、スプレー又は浸漬の後、溶媒で洗浄されるか、又はクリーンにされる。
【0021】
適切な表面−疎水化物質は、好ましくは化合物(S)である(ここで、化合物(S)は、少なくとも1種の、好ましくは正確に1種の、少なくともモノアルコキシル化された、例えばモノ−〜トリアルコキシル化された、好ましくは正確にトリアルコキシル化されたシリル基、及び少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの疎水特性を有する基Rを有する)。
【0022】
化合物(S)は、式
n−Si−R(4-n)
(但し、Xが、アルコキシ、カルボン酸、例えばアセテート、ハロゲン、例えば塩素、アミン、又はヒドロキシルであり、nが1〜3の整数、好ましくは3である)
のものが好ましい。
【0023】
好ましくは、Xは、エトキシ、メトキシ、又は塩素であり、nが1よりも大きい場合、各基Xについて、相互に独立して、上述した基であることが可能であり、個々の基Xについて、相互に異なることができる。
【0024】
Rは、1〜20個の炭素原子を含む有機の疎水性基であり、n<3の場合に基Rが異なることが可能である。
【0025】
好ましくは、Rは、C1−〜C20−アルキル、C6−〜C18−アリール、又はC5−〜C12−シクロアルキルである。
【0026】
1−〜C20−アルキルの例は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、2−オクチル、2−エチルヘキシル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル、及びn−エイコシルである。
【0027】
1−〜C4−アルキルの例は、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びtert−ブチルである。
【0028】
5−〜C12−シクロアルキル基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、及びシクロドデシルであり;シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが好ましく;シクロヘキシルが特に好ましい。
【0029】
6−〜C18−アリール基は、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、ターフェニル、好ましくはフェニル、1−ナフチル、及び2−ナフチル、特に好ましくはフェニルである。
【0030】
基Rは、好ましくはC1−〜C20−アルキル、又はC6−〜C18−アリール、特に好ましくはC1−〜C20−アルキル、及び極めて好ましくはC6−〜C12−アルキルである。
【0031】
好ましい基Rは、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及びフェニル;メチル、エチル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及びフェニルが特に好ましく;イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、及びフェニルが極めて好ましい。
【0032】
適切な化合物(S)は、例えば、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシタン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランである。
【0033】
特に好ましい実施の形態では、Rは部分的にフッ素化されたC4−〜C20−アルキル、好ましくはC4−〜C18−アルキル、及び特にC8−〜C12−アルキルである。
【0034】
Rが部分的にフッ素化されたアルキルである場合、一般式(I)
【0035】
【化1】

のシランが好ましく使用される。ここで、R1、R2、R3は相互に独立して、C1−〜C20−アルキル、C6−〜C18−アリール、又はC5−〜C12−シクロアルキル、メトキシ、エトキシ、又は塩素であり、R1、R2、R3の少なくとも1つが、エトキシ、エトキシ又は塩素であり、n1が0〜20の範囲の整数、好ましくは1〜4、特に2の範囲の整数であり、及びn2が0〜20の範囲の整数、好ましくは4〜10の範囲、及び特に6〜8の範囲の整数である。
【0036】
シランが表面−疎水化物質として使用された場合、これらは通常、(表面において)基R1、R2、R3の少なくとも1つと結合する。基R4は、基材から突出し(project away)、そして疎水表面を形成する。
【0037】
表面−活性化物質として使用可能な適切なシランは、例えば、n−オクチルトリクロロシラン、n−ノニルトリクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、n−ウンデシルトリクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ノニルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ウンデシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ノニルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ウンデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、n−オクチルジメチルクロロシラン、n−ノニルジメチルクロロシラン、n−デシルジメチルクロロシラン、n−ウンデシルジメチルクロロシラン、n−ドデシルジメチルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロオクチルトリクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロドデシルトリクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロドデシルトリエトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロドデシルトリメトキシシラン、1H,1H−ペルフルオロオクチルジメチルクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロデシルジメチルクロロシラン、1H,1H−ペルフルオロドデシルジメチルクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロドデシルトリクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロドデシルトリエトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロドデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルジメチルクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルジメチルクロロシラン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロドデシルジメチルクロロシランである。
【0038】
本方法が、太陽電池の製造のために使用された場合、基材は通常、半導体材料を含むウエハーである。通常、シリコンに基づく材料が半導体材料として使用される。構造化された金属性被覆物が施されるウエハーの表面は通常、最初にシリコンニトリドで被覆されるか、又は不動態化される。シリコンニトリドでの被覆又は不動態化は、現在製造されている太陽電池の場合にも行われており、そしてこの技術分野の当業者にとって公知である。次に表面−疎水化物質が、単層又はオリゴ層として、不動態化された表面、又はシリコンニトリドで被覆された表面に施される。太陽電池にとっては通常であり、そして導電性粒子を含む物質で構成される格子(グリッド)が、表面−疎水化物質の単層又はオリゴ層上に印刷(インプリント:imprint)される。表面−疎水化物質で被覆する結果、格子の狭い軌道(トラック)を印刷することができ、光の入射は、印刷された軌道によって僅かにしか妨げられない。厚さが比較的厚い格子軌道を達成する必要がある場合、導電性粒子を含む物質を複数の層に印刷することができる。導電性粒子を含む物質を印刷し、そして次にこの物質内に存在するマトリックス材料を硬化させ、及び溶媒を蒸発させることにより、構造化された金属性被覆物が表面上に得られる。通常、太陽電池の製造のために使用され、及び導電性粒子を含む物質は、50〜90質量%の導電性粒子、好ましくは65〜85質量%、及び特に70〜80質量%の導電性粒子、0〜20質量%のマトリックス材料、好ましくは1〜15質量%のマトリックス材料、特に3〜10質量%のマトリックス材料、及び0〜30質量%の溶媒、好ましくは5〜25質量%の溶媒、及び特に5〜20質量%の溶媒を含む。溶媒を添加する結果、導電性粒子を含む物質の粘度は、使用する印刷法に従って調節することができる。
【0039】
導電性粒子を含む物質を施すのに適切な印刷法は、この技術分野の当業者にとって公知の任意の所望の方法である。通常の印刷法は、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、パッド印刷法、又はレーザー印刷法である。導電性粒子を含む物質は、好ましくはレーザー印刷法によって施される。
【0040】
適切なレーザー印刷法では、導電性粒子を含み、及び印刷が意図されている物質が最初に担体に施される。この物質の担体(carrier)への供給は、この技術分野の当業者にとって公知の、任意の所望の方法で行うことができる。通常、導電性粒子を含む物質は、転写ロールを使用して担体に施される。
【0041】
弾力性のある担体をインク担体として使用することが好ましい。特に、印刷される、導電性粒子を含む物質で覆われるインク担体は、ベルト状である。極めて好ましくは、弾力性担体は、フィルムである。担体の厚さは、好ましくは1μm〜500μmの範囲である。担体をできるだけ薄い厚さに設計し、担体によって導入されるエネルギーが、担体内に分散されず、従って鮮明なイメージが得られることが有利である。例えば、使用されるエネルギーについて透過するポリマーが担体のための材料として適切である。
【0042】
インキを蒸発させ、そして印刷される基材上にインキを移すために使用されるエネルギーは、レーザーであることが好ましい。レーザーの有利性は、使用するレーザービームが、非常に小さな部分(クロスセクション)に焦点を合わせることができることである。従って、目標とするエネルギー導入が可能である。導電性粒子を含む物質を、担体から少なくとも部分的に蒸発させ、及びこれを基材に施すために、レーザーの光を熱に変換する必要がある。この目的のために、例えば、導電性粒子を含む物質が更に、(レーザー光を吸収し、そしてこれを熱に変換する)適切な吸収剤を含むことができる。しかしながらこの替わりに、導電性粒子を含む物質が施される担体に、適切な吸収剤を被覆するか、又は上記担体をこのような吸収剤から製造することも可能である。しかしながら、レーザー照射について透過性の材料から担体を製造することが好ましく、及びレーザー光を熱に変換する吸収剤が、導電性粒子を含む物質内に存在することが好ましい。例えば、カーボンブラック、金属ニトリド、又は金属酸化物が吸収剤として適切である。
【0043】
インキにエネルギーを導入するために使用しても良い適切なレーザーは、例えば、ベースモードで運転されるファイバーレーザーである。
【0044】
印刷される基材と、(導電性粒子を含み、及び印刷することが意図されている物質が施される)担体の間の間隔が、0〜2mmの範囲、特に0.01〜1mmの範囲の印刷間隔を有しているならば、印刷されたイメージについて更なる改良が達成される。担体と印刷される基材の間の印刷間隔が小さい程、印刷される基材にぶつかる滴がそれる範囲が小さくなり、及び印刷イメージがより均一に維持される。しかしながら、印刷される基材が導電性粒子を含む物質で被覆された担体に接触しないことが守られ、これにより導電性粒子を含む物質が望ましくない個所で、印刷される基材上に移されないようにする必要がある。
【0045】
太陽電池の製造に加え、本発明に従う発明は例えば、他の所望の電子部品の製造(例えば、回路基板の製造)にも適している。回路基板が本発明に従う方法によって製造される場合、使用する基材は通常、適切な回路基板基材としての誘電体である。通常の回路基板基材は、例えば、強化された、又は強化されていないポリマーから製造される。適切なポリマーは例えば、2−、及び多官能性のビスフェノールA及びF−ベースのエポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、臭素化エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド、フェノール樹脂、シアネートエステル、メラミン樹脂、又はアミノ樹脂、フェノキシ樹脂、アリル化ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアミド、シリコーン及びフッ素樹脂、及びこれらの混合物である。
【0046】
鮮明な構造を、端部が走る(流れる)ことなく、回路基板基材に与えるために、回路基板基材は、最初に本発明に従い、表面−疎水化物質の単層で被覆される。上述したシランは、回路基板の製造で、表面−活性化物質として使用されることも好ましい。
【0047】
回路基板の製造で、導電性粒子は、上述した金属に加え、(例えばナノチューブの状態の)炭素粒子であっても良い。
【0048】
本発明に従う方法を使用して、任意の所望の電子部品、特に太陽電池又は回路基板を製造することができる。本発明に従う方法によって製造された電子部品は通常、基材(該基材に構造化された導電性表面が施される)、基材に施された表面−疎水化材料の単層、及び単層に施された構造化された導電性表面を含む。
【0049】
電子部品が太陽電池の場合、基材は通常、半導体材料、特にシリコン−含有半導体材料を含むウエハーである。電子部品が回路基板である場合、基材は回路基板基材である。
【実施例】
【0050】
200μlの1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシランを最初に、真空のデシケーターに入れた。シリコンニトリドで被覆された予め処理した多結晶性のシリコンウエハーを次に、真空のデシケーターに入れた。真空のデシケーターを閉鎖し、そして動的オイルポンプの真空を、3分間施した。この後、ウエハー表面を、ガス相を介して、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシランと12時間、静的真空の状態で接触させた。1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシランは、効果的な表面不動態を形成し、濡れ特性が変化し、そしてOwens and Wendtに従って測定された表面エネルギーは、約40.1mN/mから約12.6mN/mに低減された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に構造化された導電性被覆物を製造するための方法であって、以下の工程:
(a)基材の表面に、表面−疎水化物質の単層又はオリゴ層を施す工程、
(b)予め規定されたパターンに従って、基材上に、導電性粒子を含む物質を印刷する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
表面−疎水化物質の単層又はオリゴ層が、基材の表面に、蒸着、スプレー又は浸漬によって施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面−疎水化物質が、一般式SiR1234(但し、R1、R2、及びR3が、それぞれ、相互に独立して、C1−〜C20−アルキル、C6−〜C18−アリール、又はC5−〜C12−シクロアルキル、メトキシ、エトキシ、又はクロラインであり、R1、R2、及びR3の少なくとも1つが、メトキシ、エトキシ、又はクロラインであり、及びR4が、任意に部分的にフッ素化された、又はペルフルオロ化されたC1−〜C20−アルキルである)のシランであることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の方法。
【請求項4】
基材が、半導体材料を含むウエハーであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
ウエハーは、シリコンニトリド被覆物、アルミニウムオキシド被覆物、又はシリコンカーバイド被覆物で被覆されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
導電性粒子を含む物質が、50〜90質量%の導電性粒子、0〜20質量%のマトリックス材料、及び0〜30質量%の溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
導電性粒子が、銀、銅、鉄、及び/又はスズを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法を、太陽電池又は回路基板の製造のために使用する方法。
【請求項9】
構造化された導電性表面が施されている基材を含む電子部品であって、表面−疎水化材料の単層、又はオリゴ層が基材に施されており、及び構造化された導電性表面が単層又はオリゴ層に施されていることを特徴とする電子部品。
【請求項10】
基材が、半導体材料を含むウエハー、又は回路基板基材であることを特徴とする請求項9に記載の電子部品。
【請求項11】
部品が太陽電池又は回路基板であることを特徴とする請求項9又は10の何れかに記載の電子部品。

【公表番号】特表2012−531034(P2012−531034A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515509(P2012−515509)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058612
【国際公開番号】WO2010/149579
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】