説明

構造化オブジェクトの画像を登録するための装置及び方法

本発明は、患者の胸部(2)のような対象物の第2の記憶された画像(A2)と共に第1画像(A1)を登録するための装置及び方法に関する。画像(A1、A2)は、例えば、X線CTシステム(1)により生成され、肺腫瘍の傾向制御において用いられる。画像(A1、A2)は、複数のオブジェクト構成要素(a、b、c)に自動的にセグメント化される。これに後続して、進行中のタスクに関連するオブジェクト構成要素(b)の画像領域(B1、B2)のみが登録される。肺腫瘍の傾向制御において、例えば、肺の領域(b)の登録は満足できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造化オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するためであって、特に、肺腫瘍の傾向管理のための画像を登録するためのデータ処理ユニット及び方法に関する。本発明は、この種のデータ処理ユニットと協働する検査装置に更に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用画像処理において、異なる時間に記録された又は異なるモダリティを用いる2つのデータボリュームは、しばしば、空間的に座標化(“登録”)される必要がある。このような状況についての例として、肺腫瘍の傾向制御について、以下、説明し、その説明においては、異なる時間に生成された患者のX線又はMNR画像が比較される。関連画像データにおいては、小結節又は、所謂、“円形の病巣”が肺において検出され、座標化され、サイズに関して比較される。種々の画像の自動アライメント及び登録は、医師がそれらのタスクをより適切に完了することを可能にする。
【0003】
画像のアライメントは、通常、例えば、剛体変換、アフィン変換又は非線形関数の形で、一の画像から他の画像に点毎に画像化することにより達成される。そのような変換の計算又は“画像登録”は、本質的に、適切な類似度基準に基づく最適化処理である。変換の決定に続いて、再アライメント又は再フォーマット画像が計算される。小結節のようなオブジェクト成分又は構造の変換位置を計算することが、更に可能である。
【0004】
これに関連して、米国特許出願公開第2003/0146913号明細書において、2つの肺の画像を登録するための方法であって、ユーザが、先ず、第1画像において、肺における小結節のような関連基準点をインタラクティブに示す、方法について記載している。粗く予め登録された画像において、示された基準点に対応する第2画像における位置が、次いで、計算され、その後すぐ、前記位置の近傍において、基準点の周りの局所ボリュームに対応する最も近い局所ボリュームが高い計算能力を有する処理で探し求められる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0146913号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景に基づいて、本発明の目的は、オブジェクトの画像の迅速且つ正確な自動登録のための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点は、請求項1又は2に記載の特徴を有するデータ処理ユニットにより、請求項8に記載の特徴を有する検査装置により、及び請求項9又は10に記載の特徴を有する方法により、それぞれ、解決される。有用な実施形態については従属請求項に記載されている。
【0007】
第1の特徴にしたがって、本発明は、構造化オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するためのデータ処理ユニットに関する。構造化オブジェクトは、例えば、患者の胸部であることが可能であり、その胸部において、肺、心臓、骨髄、骨及び筋肉組織等の種々の器官が位置付けられる。胸部ボリュームの2つの画像の登録は、例えば、肺腫瘍の傾向制御の処理において必要である。データ処理ユニットは、以下の段階を実行するように設定される。
− 第1画像及び第2画像の種々のオブジェクト構成要素への自動セグメント化。そのようなセグメント化の適切な方法は文献から既知である。分岐変換は、本出願において、特に適切である。
− 選択された対応するオブジェクト構成要素に関連付けられる2つの画像のそれらオブジェクト構成要素の画像領域のみの登録であって、その選択されたオブジェクト構成要素は検討中のタスクに関連性があることが必要である、登録。一般に、データ処理ユニットのユーザは、所定の状況下で、オブジェクト構成要素が“関連性がある”かどうかを予め判定する。肺腫瘍の傾向制御において、例えば、肺は関連性のあるオブジェクト構成要素である。
【0008】
上記のデータ処理ユニットは、画像の完全自動登録と、セグメント化と、所定タスクに関連して非常に正確で高速な実行を可能にする関連画像領域に対する登録の続く限定とを可能にする有利点を提供する。個々のユーザの動作は必ずしも必要ない。ユーザは、オブジェクト構成要素が検討中のタスクに関連性があり、それ故、登録される必要があるかどうかを(例えば、特定のアプリケーション用プログラムモードを選択することにより)単に決定する。
【0009】
第2特徴にしたがって、本発明は、構造化オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するためにデータ処理ユニットであって、次の段階を実行するように設定された、データ処理ユニットに関する。
− 前記画像の種々のオブジェクト構成要素への自動セグメント化。
− 個々に割り当てられた登録方法を用いる、種々のオブジェクト構成要素の画像領域の登録。登録方法は、オブジェクト構成要素の既知の特性に基づいて、演繹的に割り当てられる。柔らかい組織の部分は、例えば、アフィン変換により登録されることが可能である一方、例えば、骨のような硬い組織の部分は剛性変換により登録されることが可能である。
【0010】
データ処理ユニットは、個々のオブジェクト構成要素に対して最も適切な登録方法が各々の場合において用いられるという有利点を提供する。このことは、登録の労力及びコストを必要最小限に低減する一方、例えば、硬いオブジェクト構成要素が弾性変換により処理されない(される必要がない)ことを確実にすることにより、高い正確度を達成する。
【0011】
データ処理ユニットは、好適には、第1特徴及び第2特徴両者を融合させる。このことは、自動セグメント化に続いて、選択されたオブジェクト構成要素の画像領域のみを登録すること、及び、個々に割り当てられた登録方法を用いて、種々のオブジェクト構成要素が処理されることを意味している。
【0012】
本発明の好適な更なる特徴について、次に説明する。それらの特徴は、本発明の特徴にしたがったデータ処理ユニットに関連し、簡単化のために、表現“データ処理ユニット”のみを用いている。
【0013】
データ処理ユニットは、セグメント化されたオブジェクト構成要素の自動分類のために設定されることが可能である。胸部写真における異なるオブジェクト領域は、例えば、“肺”、“心臓”、“骨”等に分類されることが可能である。そのような分類は、任意に、平均ハウンスフィールド値の計算に基づく。その分類の結果は、登録される関連画像領域の自動選択のため及び/又は個々に割り当てられる登録方法の選択のための基準として用いられることが可能である。
【0014】
種々の画像又は画像領域は、複数の分解能レベルにおける線形登録により、好適に登録され、粗いグリッドにおける剛性登録はより精細なグリッドにおけるアフィン登録により後続される。粗いグリッドにおける登録は、続くアフィン登録のための予備段階としての役割を果たし、それ故、後者の正確な結果がより迅速に得られる。その処理の全体の結果として、2つの画像又は選択された画像領域のアフィン登録は、それ故、利用可能である。
【0015】
第1画像及び/第2画像は、特に、二次元又は三次元コンピュータ断層像であることが可能であり、そのコンピュータ断層像はX線写真又は磁気共鳴画像であることが可能である。第1及び第2画像は、個々のモダリティ又は異なるモダリティを用いて生成されることが可能である。
【0016】
本発明は、次の構成要素を有する検査装置に更に関する。
− オブジェクトの画像を生成するためのイメージング装置。このイメージング装置は、例えば、コンピュータ断層撮影X線システム又は磁気共鳴システムであることが可能である。
− 前記イメージング装置に結合された、上記の種類のデータ処理ユニット。これは、データ処理ユニットが構造化オブジェクトの第1及び第2画像を登録するために用いられ、それらの画像を種々のオブジェクト構成要素にセグメント化するように初期的に設定されることを意味している。データ処理ユニットは、更に、選択されたオブジェクト構成要素の画像領域を登録し、及び/又は、個々の登録方法により種々のオブジェクト構成要素を処理することができる。
【0017】
本発明は、更に、構造化オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するための方法であって、次の段階を有する、方法に関する。
− 前記画像の種々のオブジェクト構成要素への自動セグメント化。
− 所定タスクに関連する選択された対応するオブジェクト構成要素の画像領域の登録。
【0018】
本発明は、最終的に、構造化オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するための方法であって、次の段階を有する、方法に関する。
− 前記画像の種々のオブジェクト構成要素への自動セグメント化。
− 個々に割り当てられた登録方法を用いる、種々のオブジェクト構成要素の画像領域の登録。
【0019】
上記の2つの方法は、一般に、本発明の第1特徴又は第2特徴にしたがって、データ処理ユニットを用いて実行される段階に関する。更なる詳細、有利点、特徴に関しては、それ故、上記の説明を適用する。
【0020】
本発明の上記の及び他の特徴については、以下、詳述する実施形態に関連して、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図の左側部分には、オブジェクトの二次元画像又は三次元画像の生成のためのイメージング装置として、X線CT1を示している。本出願は肺腫瘍の傾向制御に基づいている。患者の胸部2の画像はCTシステム1を用いて生成され、接続されているデータ処理ユニットに転送される。データ処理ユニット3は、通常、中央演算処理装置(CPU)、揮発性メモリ(RAM)、永続的メモリ(ハードディスク4、CD、...)、周辺機器とのインターフェース等のような必要な構成要素を備えている。ハードウェア構成要素については詳細に図示していないが、それに代えて、適切なプログラムを用いるデータ処理ユニット3により実行される画像処理の主なシーケンスに重きをおいて示している。
【0022】
CTシステム1により生成される画像は、特に、データ処理ユニット3の永続的メモリ4に記憶されることが可能である。このように、CTシステム1により現在作成中の画像A1は、肺における小結節(円形病巣)又は肺腫瘍の進行(新しい発生、消失、サイズ変化等)を追跡するために、前に記憶された画像A2と比較される。
【0023】
傾向制御のために、検査している医師は、古い画像A2と新しい画像A1における小結節を見つけて、正確にそれらを座標化する必要がある。しかしながら、この座標化は、患者の位置の変化並びに器官の変位及び変形の結果として、2つの画像A1、A2が、通常、互いに幾何学的に異なる、即ち、一致しないことにより困難である。これを理由として、それら2つの画像A1、A2の自動アライメント又は登録は望ましい予備段階である。一方で、この登録はできるだけ迅速に終了する必要があり、他方、関連する肺の領域においてできるだけ正確である必要がある。これを達成するために、更に詳細な手順について、下で説明する。
【0024】
比較される画像A1、A2は、先ず、データ処理ユニット3により自動的にセグメント化される。用語“セグメント化”は、通常、異なるクラス又はオブジェクト構成要素に対する画像点(画素又はボクセル)の割り当てを意味する。この自動セグメント化は、例えば、全体の画像領域を種々の画像範囲又は領域に分割する分岐変換の支援により達成される。この目的のための適切なアルゴリズムについては、文献(例えば、L.Vincent,P.Soille,Watersheds in Digital Spaces;An Efficient Algorithm Based on Immersion Simulations,IEEE Trans.Pattern Anal. Machine Intell.,13(6),583−598,1991)に記載されている。前記画像領域は、それ故、例えば、筋肉組織a、肺b、心臓c、骨、口腔等のような種々のオブジェクト構成要素に自動的に分類されて、割り当てられる。この種の分類は、画像領域の特徴、特に、ハウンスフィールド値に基づいている。
【0025】
このようなセグメント化及び分類の後、画像領域がどのオブジェクト構成要素a、b、cを割り当てられるかが確立される。何れの後続の処理段階は、それ故、進行中のタスクに関連するオブジェクト構成要素に限定される。肺腫瘍の傾向制御においては、関連性のあるオブジェクト構成要素のみが肺bである。完全な画像A1、A2から減少された画像B1、B2が、ここで、生成され、全ての関連性のないオブジェクト構成要素は削除される。本質的な特徴に減少されたそれらの画像B1、B2は、次いで、従来の方法を用いて、登録されることができる。選択された画像領域へのこのような限定の結果、関連領域は、非常に迅速に且つ高い正確度を伴って登録されることができる。この処理は、より簡単な変換方法(例えば、スプラインに代えて、線形方法)を用いることができる一方、正確度が関連領域において一定に保たれることにより、更に高速化が達成される。登録後、画像(関連画像領域の全ての又は限定された)は、例えば、モニタ5に互いに隣り合わせて又は重ね合わせて表示される。
【0026】
部分画像B1、B2を登録するために、多分解能レベルに基づく高速の方法が、好適に用いられることが可能である。第1段階において、剛体が粗い分解能グリッドに登録され、その後すぐに、その登録は、第2段階において、より精細は分解能グリッドにアフィン登録により改善される。この手順の全体的な結果は、肺のボリューム全体についてのアフィン変換マトリクスである。
【0027】
本方法の他の特徴にしたがって、セグメント化処理中に決定された複数のオブジェクト構成要素a、b、cの画像領域を、規定されたタイプの組織に前記画像領域を割り当てるように用いることができる。それ故、弾性のような組織特性と共に変化する局所的に決定される登録パラメータの個々の規定のために、この情報を用いることができる。組織のタイプを含むそのような登録により、全処理の正確度は非常に改善される。例えば、剛体の登録により骨及び匹敵する身体の構造を変換することが可能である一方、より柔らかい組織はより柔らかい変換を必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にしたがった検査システムの構成要素を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するためのデータ処理ユニットであって:
前記第1画像及び第2画像を複数のオブジェクト構成要素に自動的にセグメント化し;
所定のタスクに関連する選択されたオブジェクト構成要素の画像領域のみを登録する;
ように設定されることを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項2】
オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するためのデータ処理ユニットであって、特に請求項1に記載のデータ処理ユニットであり:
前記第1画像及び第2画像を複数のオブジェクト構成要素に自動的にセグメント化し;
個々に割り当てられた登録方法を用いて、複数のオブジェクト構成要素の前記画像領域を登録する;
ように設定されることを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ処理ユニットであって、セグメント化されたオブジェクト構成要素は自動的に分類される、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のデータ処理ユニットであって、線形登録が幾つかの分解能レベルにおいて実行され、剛体は粗いグリッドに登録され、精細なグリッドへのアフィン登録により後続される、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のデータ処理ユニットであって、前記第1画像及び/又は前記第2画像は二次元又は三次元コンピュータ断層像、特に、X線写真又は磁気共鳴画像である、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のデータ処理ユニットであって、前記オブジェクトは患者の胸部であり、肺が腫瘍診断に関連する前記オブジェクト構成要素である、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のデータ処理ユニットであって、前記セグメント化は分岐変換を用いて実行される、ことを特徴とするデータ処理ユニット。
【請求項8】
検査装置であって:
対象物の画像を生成するためのイメージング装置;及び
前記イメージング装置に結合された、請求項1乃至7の何れに記載のデータ処理ユニット;
を有することを特徴とする検査装置。
【請求項9】
オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するための方法であって:
前記第1画像及び第2画像を複数のオブジェクト構成要素に自動的にセグメント化する段階;
所定のタスクに関連する選択されたオブジェクト構成要素の画像領域のみを登録する段階;
を有することを特徴とする方法。
【請求項10】
オブジェクトの第1画像及び第2画像を登録するための方法であって:
前記第1画像及び第2画像を複数のオブジェクト構成要素に自動的にセグメント化する段階;
個々に割り当てられた登録方法を用いて、複数のオブジェクト構成要素の画像領域を登録する段階;
を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−526033(P2007−526033A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552738(P2006−552738)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050433
【国際公開番号】WO2005/078662
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】