説明

構造用軽量トリム部品の製造方法、および製造された構造用軽量トリム部品

構造用軽量トリム部品を製造するための方法であって、以下のステップからなる:(A)第1の金型半分(6)および第2の金型半分(7)を備えている金型へ複数の層を挿入する。第2の金型半分(7)は、複数のカップ状の凹所(8)を有する。複数の層は、第1の金型半分(6)に面する第1の通気性外皮層(1)と、第2の金型半分(7)に面する第2の気密外皮層(3、4)と、2つの外皮層間に位置しているフィルム層(2)とを少なくとも含んでいる。(B)金型を閉じ、片側から気体(5)を排出して、第1の外皮層を第1の金型半分に対して押し付ける。(C)第1の多孔質外皮層を成形および固化する。(D)第1の空間を加圧気体(5)で満たし、第2の外皮層を第2の金型半分に対して押し付ける。(E)第2の外皮層を成形および固化する。(F)一方で、カップ状の凹所の間の領域において第1の外皮層と第2の外皮層とを互いに接合し、複数のカップ状の空洞を有する音響体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用軽量トリム部品の製造方法、およびこの方法によって製造された構造用軽量トリム部品に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量な音響体およびそのような音響体の製造方法は、自動車技術の分野においてよく知られている。音響減衰後部荷物棚を製造するための方法が、WO03/018291号から知られている。この方法によれば、それぞれが多孔質層を有している2つの熱成型された外皮からなる中空体を製造することができる。封止フィルムが、2つの外皮のそれぞれに取り入れられている。最も内側の不織絶縁シートが、音響上の理由のために封止フィルムの間に配置され、金型を閉じた状態で外皮の間に空気が吹き込まれる。残念なことに、金型へと押し込まれる空気が通過して最も内側の不織層を冷却し、これらの層の合体(consolidation)を妨げる。この方法によって製造される中空体は、その自重を支えることができる程度には充分に堅いが、車両の構造の剛性には寄与せず、車両の荷重床、下部保護材、トラックの壁、または他の構造用トリム部品としての使用には適していない。構造用トリム部品は、車両の構造の安定に寄与するとともに、知覚可能な音響性能を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、車両の構造用トリム部品としての使用に適した構造用軽量トリム部品、すなわち優れた音響性能および剛性を備える音響体を製造するための簡単な方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に記載されているようなステップを含む構造用軽量トリム部品の製造方法によって達成される。詳しくは、これが、以下のステップ、すなわち
・第1の金型半分(first moulding half)および複数のカップ状の凹所を有する第2の金型半分(second moulding half)を備えている金型へ、好ましくはフェルト層であって第1の金型半分に面する第1の通気性外皮層と、好ましくは外側通気性カバーおよび内側気密フィルムで構成されて第2の金型半分に面する第2の気密外皮層と、特に単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって2つの外皮層の間に位置している通気性フィルム層と、を少なくとも含んでいる複数の層を挿入するステップ、
・金型を閉じ、フィルム層と第1の金型半分との間の第1の空間から好ましくは約1barで気体を排出し、あるいは第2の金型半分とフィルム層との間の第2の空間を好ましくは1〜8barの加圧気体で満たして、第1の外皮層を第1の金型半分に対して押し付けるステップ、
・第1の多孔質外皮層を、この層に適切な温度および圧力を加えることによって公知のやり方で成形および固化(consolidating)するステップ、
・第1の金型半分を介し、成形済みの第1の多孔質外皮層を通して、前記第1の空間を加圧気体で満たし、第2の外皮層を第2の金型半分に対して押し付けるステップ、
・第2の外皮層を、この層に適切な温度および圧力を加えることによって公知のやり方で成形および固化(consolidating)するステップ、
・一方で、カップ状の凹所の間の領域において第1および第2の外皮層を互いに接合し、複数のカップ状の空洞を有する構造用軽量トリム部品を形成するステップ、および
・金型を開放し、構造用軽量トリム部品を金型から取り出すステップ
を含んでいる方法によって達成される。
【0005】
本発明のさらなる目的は、車両の構造用トリム部品としての使用に適した構造用軽量トリム部品、すなわち優れた音響性能および剛性を備える軽量音響体を実現することにある。
【0006】
この目的は、請求項4の特徴を備える構造用軽量トリム部品によって達成される。詳しくは、この目的が、好ましくは多孔質フェルト層である第1の通気性外皮層と、好ましくは熱可塑性フェルト/ホイル複合材である第2の気密外皮層と、好ましくは単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって2つの外皮層の間に位置している通気性フィルム層と、を少なくとも有しており、第1および第2の外皮層が、当該構造用軽量トリム部品が複数のカップ状の空洞を備えるようなやり方で、固化(consolidated)され、成形され、互いに接合されている構造用軽量トリム部品によって達成される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の特徴を有している。
【0008】
本発明の利点は、当業者にとって明らかであり、特には1段階のプロセスによる構造用軽量トリム部品の製造ならびにそのような構造用トリム部品の実現に見ることができる。さらに、このトリム部品は、このプロセスが、気体の注入に起因する視認可能な濃く色付けされたスポットまたは針に起因する穴をもたらさないため、審美的に好都合である。またさらには、本発明による方法は、実行がきわめて容易であり、したがってコストの節約になることが立証されている。この方法によって実現される製品は、優れた音響性能、特には音の吸収、ならびに剛性を示し、車体下の遮蔽、車両の荷重床、トラックの壁、または他の構造用トリム部品としての使用を可能にしている。
【0009】
以下で、本発明を、好ましい実施形態および図面によって、さらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1aおよび1bは、2つの外皮からなる部品として設計された音響体を製造するための第1のプロセスに関係している。例として、金型に4つの層が装填され、外側層が熱可塑性フェルトで構成されている。このフェルトは、20%〜60%の補強繊維、特にはガラス繊維を含んでいるPP不織材で構成することができる。これらの層の重量は、与えられる機械的な仕様および目標に応じて、800g/m〜2000g/mの間でさまざまであってよい。第1のフィルムを、厚さ150ミクロンの100%PPフィルムで構成することができる。第2のフィルムを、100%PETの多孔質不織材で構成でき、40g/mの重量を持たせることができる。本発明によれば、構造用軽量トリム部品を製造するための方法が、以下のステップ、すなわち
・第1の金型半分6および複数のカップ状の凹所8を有する第2の金型半分7を備えている金型へ、好ましくは多孔質フェルト層であって第1の金型半分6に面する第1の通気性外皮層1と、好ましくは外側通気性カバー層3および内側気密フィルム層4で構成されて第2の金型半分7に面する第2の気密外皮層3、4と、特に単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって第1の外皮層1と第2の外皮層3、4との間に位置している通気性フィルム層2と、を少なくとも含んでいる複数の層を挿入するステップ、
・金型6、7を閉じ、フィルム層2と第1の金型半分6との間の第1の空間から気体5を排出して、第1の多孔質外皮層1を第1の金型半分6に向かって吸い付けるステップ、
・第1の多孔質外皮層1を成形および固化するステップ、
・第1の金型半分6を介し、成形済みの第1の多孔質外皮層1および通気性フィルム層2を通して、前記第1の空間を加圧気体5で満たし、第2の外皮層3、4を第2の金型半分7に向かって押し付けるステップ、
・第2の外皮層3、4を成形および固化するステップ、
・一方で、カップ状の凹所8の間の領域において第1の外皮層1と第2の外皮層3、4とを互いに接合し、複数のカップ状の空洞を有する構造用軽量トリム部品を形成するステップ、および
・金型6、7を開放し、構造用軽量トリム部品を金型6、7から取り出すステップ
を含んでいる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態においては、気体5が、約1barでフィルム層2と第1の金型半分6との間の第1の空間から排出される。
【0012】
図2a、2bに示されているような本発明の第2の実施形態によれば、音響体を製造するための方法が、以下のステップ、すなわち
・第1の金型半分6および複数のカップ状の凹所8を有する第2の金型半分7を備えている金型へと、好ましくは多孔質フェルト層であって第1の金型半分6に面する第1の通気性外皮層1と、好ましくは外側通気性カバー層3および内側気密フィルム層4で構成されて第2の金型半分7に面する第2の気密外皮層3、4と、特には単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって第1の外皮層1と第2の外皮層3、4との間に位置している通気性フィルム層2と、を少なくとも含んでいる複数の層を挿入するステップ、
・金型6、7を閉じ、第2の金型半分7とフィルム層2との間の第2の空間を加圧気体5で満たし、第1の多孔質外皮層1を第1の金型半分6に向かって押し付けるステップ、
・第1の多孔質外皮層1を成形および固化するステップ、
・第1の金型半分6を介し、成形済みの第1の多孔質外皮層1および通気性フィルム層2を通して、前記第1の空間を加圧気体5で満たし、第2の外皮層3、4を第2の金型半分7に向かって押し付けるステップ、
・第2の外皮層3、4を成形および固化するステップ、
・一方で、カップ状の凹所8の間の領域において第1の外皮層1と第2の外皮層3、4とを互いに接合し、複数のカップ状の空洞を有する構造用軽量トリム部品を形成するステップ、および
・金型6、7を開放し、構造用軽量トリム部品を金型6、7から取り出すステップ
を含んでいる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、第2の金型半分7とフィルム層2との間の第2の空間が、1〜8barで加圧気体によって満たされる。
【0014】
これらの方法に従って製造された構造用軽量トリム部品は、好ましくは熱可塑性PPフェルトまたは天然繊維を有する不織材である第1の外側通気性外皮層1と、好ましくは熱可塑性フェルト/ホイル複合材である第2の非透過外皮層3、4と、好ましくは厚さ150μmの100%PPフィルムまたは150μmのPP/PA/PP複合材であって2つの外皮層の間に位置している通気性フィルム層2と、を少なくとも有している。第1の外皮層1および第2の外皮層3、4が、複数のカップ状の空洞を有する音響体が形成されるようなやり方で、固化され、成形され、互いに接合されている。
【0015】
好ましい実施形態は、従属請求項の特徴を含んでいる。
【0016】
上述のトリム部品を、建物の床部品としても使用できることを、理解すべきである。この用途においては、多孔質層を下側に位置させ、不透過の層を上側に位置させることができる。
【0017】
上述の方法および構造用トリム部品の変更は、当業者の通常の技術的知識の範囲内である。特には、通気性フィルム層2を、PETで作られた不織材などの複数の多孔質層で構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1a】第1の方法による第1のプロセス・ステップ中の金型の断面の概略図である。
【図1b】第1の方法による第2のプロセス・ステップ中の金型の断面の概略図である。
【図2a】第2の方法による第1のプロセス・ステップ中の金型の断面の概略図である。
【図2b】第2の方法による第2のプロセス・ステップ中の金型の断面の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用軽量トリム部品を製造するための方法であって、以下のステップ、すなわち
・第1の金型半分(6)および複数のカップ状の凹所(8)を有する第2の金型半分(7)を備えている金型へ、好ましくは多孔質フェルト層であって第1の金型半分(6)に面する第1の通気性外皮層(1)と、好ましくは外側通気性カバー層(3)および内側気密フィルム層(4)で構成されて第2の金型半分(7)に面する第2の気密外皮層(3、4)と、特に単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって第1の外皮層(1)と第2の外皮層(3、4)との間に位置している通気性フィルム層(2)と、を少なくとも含んでいる複数の層を挿入するステップ、
・金型(6、7)を閉じ、フィルム層(2)と第1の金型半分(6)との間の第1の空間から気体(5)を排出し、あるいは第2の金型半分(7)とフィルム層(2)との間の第2の空間を加圧気体(5)で満たして、第1の多孔質外皮層(1)を第1の金型半分(6)に対して押し付けるステップ、
・第1の多孔質外皮層(1)を成形および固化するステップ、
・第1の金型半分(6)を介し、成形済みの第1の多孔質外皮層(1)および通気性フィルム層(2)を通して、前記第1の空間を加圧気体(5)で満たし、第2の外皮層(3、4)を第2の金型半分(7)に対して押し付けるステップ、
・第2の外皮層(3、4)を成形および固化するステップ、
・一方で、カップ状の凹所(8)の間の領域において第1の外皮層(1)と第2の外皮層(3、4)とを互いに接合し、複数のカップ状の空洞を有する構造用軽量トリム部品を形成するステップ、および
・金型(6、7)を開放し、構造用軽量トリム部品を金型(6、7)から取り出すステップ
を含んでいる方法。
【請求項2】
気体(5)が、約1barでフィルム層(2)と第1の金型半分(6)との間の第1の空間から排出されることを特徴とする請求項1に記載の構造用軽量トリム部品を製造するための方法。
【請求項3】
第2の金型半分(7)とフィルム層(2)との間の第2の空間が、1〜8barで加圧気体によって満たされることを特徴とする請求項1に記載の構造用軽量トリム部品を製造するための方法。
【請求項4】
請求項1に従って製造された構造用軽量トリム部品であって、
好ましくは多孔質フェルト層である第1の通気性外皮層(1)と、好ましくは熱可塑性フェルト/フィルム複合材である第2の気密外皮層(3、4)と、特には単層または複数層の多孔質のフェルトまたは不織材であって第1の外皮層(1)と第2の外皮層(3、4)との間に位置している通気性フィルム層(2)と、を少なくとも有しており、
第1および第2の外皮層が、当該構造用軽量トリム部品が複数のカップ状の空洞を備えるように、固化され、成形され、互いに接合されている構造用軽量トリム部品。
【請求項5】
第1の通気性外皮層(1)が、特にPP繊維ならびに20%〜60%のガラス繊維または天然繊維からなる熱可塑性フェルトまたは不織材を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の構造用軽量トリム部品。
【請求項6】
第2の気密外皮層(3、4)が、特にPP繊維ならびに20%〜60%のガラス繊維または天然繊維からなる通気性熱可塑性フェルト(3)と、気密フィルム(4)とを含んでいることを特徴とする請求項4に記載の構造用軽量トリム部品。
【請求項7】
気密フィルム(4)が、厚さ150μmの100%PPフィルムで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の構造用軽量トリム部品。
【請求項8】
気密フィルム(4)が、厚さ150μmのPP/PA/PP複合材で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の構造用軽量トリム部品。
【請求項9】
通気性フィルム層(2)が、40g/mの100%PET材料で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の構造用軽量トリム部品。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2008−540194(P2008−540194A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511658(P2008−511658)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005861
【国際公開番号】WO2006/133969
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(502324354)リーター テクノロジーズ アー ゲー (11)
【氏名又は名称原語表記】RIETER TECHNOLOGIES A.G.
【Fターム(参考)】