説明

樹脂シートの製造装置及び製造方法

【課題】様々な熱可塑性樹脂を用いて表面に微細な凹凸を確実に形成することを可能とする樹脂シートの製造装置を得る。
【解決手段】金属からなる温度調節ロール4と、温度調節ロール4と隔てられた回転ロール7と、外周面に、樹脂シート表面に形成すべき凹凸に対応した形状の凹凸が形成されており、かつ温度調節ロール4と回転ロール7との間に掛け渡された無端金属帯状体8と、前記温度調節ロール4に無端金属帯状体8及び熱可塑性樹脂よりなる熱可塑性樹脂シート3を圧接する圧着ロール5とを備え、熱可塑性樹脂シート3を無端金属帯状体8の外周面に点Bで接触させ、温度調節ロール4が回転している内に熱可塑性樹脂シート3の一方面に凹凸を付与する製造装置1であって、無端金属帯状体8の点Bに向かう搬送方向と、温度調節ロール4の中心Oと点Bとを結ぶ直線Aとのなす角度θが60度以上、90度未満となるように無端金属帯状体8が点Bに向かって搬送される、樹脂シートの製造装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シートの片面に凹凸を付与するための樹脂シートの製造装置及び製造方法に関し、より詳細には、予め加熱された無端金属帯状体の外表面の凹凸を樹脂シートの片面に付与する樹脂シートの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池用封止フィルム、液晶表示装置用光学フィルムあるいは合わせガラス用インナーフィルムなどに、表面に凹凸を有する合成樹脂フィルムが広く用いられている。このような合成樹脂フィルムの製造に際しては、溶融押出によりダイから押し出された溶融樹脂を、表面に凹凸が設けられた型ロールと圧着ロールとで挟圧する、いわゆる2ロール法や、凹凸が表面に付与された転写材を合成樹脂フィルムに加熱プレスする方法などの様々な方法が用いられている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、図5に略図的に示す熱可塑性樹脂のシート加工装置が開示されている。図5に示すように、シート加工装置101では、供給ロール102に巻回された熱可塑性樹脂シート103が繰り出される。熱可塑性樹脂シート103は、型ロール104と圧着ロール105との間に導かれる。型ロール104の外周面には凹凸が付与されている。型ロール104の外表面に熱可塑性樹脂シート103が供給される部分よりも型ロール104の回転方向上流側に加熱装置106が設けられている。加熱装置106により金属からなる型ロール104を加熱する。そのため、型ロール104と圧着ロール105との間で熱可塑性樹脂シート103を挟圧することにより、型ロール104の外表面の凹凸を熱可塑性樹脂シート103に確実に転写することができるとされている。
【0004】
ここでは、圧着ロール105と、ロール107,108とにエンドレスベルト109が架けわたされている。エンドレスベルト109は、型ロール104表面の熱可塑性樹脂シート103に密着される。エンドレスベルト109により、凹凸が付与された熱可塑性樹脂シート103が冷却され、型ロール104から熱可塑性樹脂シート103を無理なく剥離することができるとされている。
【0005】
他方、下記の特許文献2には、図6に示す熱可塑性樹脂フィルムの加工装置111が開示されている。加工装置111では、溶融押出機112から熱可塑性樹脂フィルム113が押し出される。熱可塑性樹脂フィルム113は、第1のロール114と押圧ロール117との間に導かれる。第1のロール114と第2のロール115との間に、外表面に転写用凹凸が付与された無端ベルト116が掛け渡されている。第1のロール114上において、熱可塑性樹脂フィルム113が、無端ベルト116の外表面の凹凸に接触され、該凹凸が熱可塑性樹脂フィルム113に転写される。ここでは、無端ベルト116の張力を制御するための張力制御用ロール118が第1のロール114の上流側に配置されている。そのため、無端ベルト116の張力を高精度に制御することができるとされている。第1のロール114及び第2のロール115は、表面がゴムからなるラバーロールを用いて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−291251号公報
【特許文献2】特開2008−73914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の熱可塑性樹脂のシート加工装置101では、表面に微細な凹凸が付与されている熱可塑性樹脂シートを得ることができる。しかしながら、転写用型として用いられている金属ベルトの揺動を制御することができなかった。従って、表面に凹凸を有する熱可塑性シートを高精度に連続成形するのが困難であった。
【0008】
これに対して、特許文献2に記載の加工装置111では、張力制御用ロール118が設けられている。そのため、無端ベルト116を安定に搬送することができる。ところが、本装置では本来の目的の形状が転写されたフィルムを製造するのは困難である。なぜならば、熱可塑性樹脂フィルム113に形状を転写するために、無端ベルト116を加熱装置119により熱可塑性樹脂フィルム113のガラス転移温度Tg以上に加熱する必要がある。そのため、ラバーロールからなるロール114の表面温度が高くなり、ラバーロール表面の劣化が進むという問題がある。すなわち、変質したラバーロール表面に馴染むように無端ベルト116が変形するおそれがある。その結果、熱可塑性樹脂フィルム113の表面に転写される形状が、予め定めた凹凸とは異なるものとなるおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、様々な熱可塑性樹脂を用いて表面に微細な凹凸を確実に形成することを可能とする樹脂シートの製造装置及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る樹脂シートの製造装置は、一方面に凹凸が形成されている樹脂シートの製造装置である。本発明の樹脂シートの製造装置は、金属からなるロール本体を有する温度調節ロールと、前記温度調節ロールと隔てられて配置された回転ロールと、前記温度調節ロールを回転駆動するロール駆動装置と、前記温度調節ロールと前記回転ロールとの間に掛け渡らされており、かつ外周面に前記樹脂シートの表面に形成される凹凸に対応した形状の凹凸が形成されている無端金属帯状体と、前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールの外表面に接触させつつ、前記樹脂シートを前記無端金属帯状体の外周面に接触させて前記樹脂シートの一方面に凹凸を付与するように、前記温度調節ロールに前記無端金属帯状体及び前記樹脂シートを介して圧接される圧着ロールと、前記無端金属帯状体の外周面に前記樹脂シートが接触される位置よりも上流側において前記無端金属帯状体を加熱するための加熱装置とを備える。ここで、前記温度調節ロールの中心と前記無端金属帯状体と前記樹脂シートとが接触する点とを結んだ線に対し、60度〜90度の角度をなすように前記無端金属帯状体と前記樹脂シートが接触する点に向かって前記無端金属帯状体が移動されるように構成されている。
【0011】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のある特定の局面では、加熱装置が電磁誘導を利用した加熱装置である。この場合には、非接触的に無端金属帯状体を所望の温度に高精度に加熱することができる。非接触式であるため、無端金属帯状体の表面の凹凸の変形が生じ難い。
【0012】
好ましくは、温度調節ロールの外表面は金属からなり、その場合には、温度調節ロールの外表面が、加熱されたとしても、変形し難い。従って、無端金属帯状体の変形が生じ難く、無端金属帯状体の外表面の凹凸をより高精度に樹脂シートに転写することができる。
【0013】
本発明に係る樹脂シートの製造装置では、好ましくは、前記無端金属帯状体の温度をT1、前記温度調節ロールの温度をT2、前記樹脂シートの融解温度をTmとしたときに、T1>Tm>T2となるように、前記無端金属帯状体及び前記温度調節ロールの温度が設定されている。この場合には、熱可塑性樹脂シート表面に無端金属帯状体外表面の凹凸をより一層高精度に付与することができる。
【0014】
より好ましくは、前記樹脂シートの前記無端金属帯状体に接する前の温度をT3としたときに、T3>T1となるように前記樹脂シートの温度及び前記無端金属帯状体の温度が設定されている。
【0015】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに他の特定の局面では、前記無端金属帯状体の温度をT1、前記温度調節ロールの温度をT2、前記樹脂シートが非晶性熱可塑樹脂から成り、該非晶性熱可塑樹脂からなる樹脂シートのガラス転移温度をTgとしたときに、T1>Tg>T2となるように前記無端金属帯状体及び前記温度調節ロールの温度が設定されている。この場合には、樹脂シート表面に、無端金属帯状体外表面の凹凸をより高精度に転写することができる。より好ましくは、前記樹脂シートの前記無端金属帯状体に接する前の温度をT3としたときに、T3>T1となるように前記樹脂シート及び前記無端金属帯状体の温度が設定される。
【0016】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに別の特定の局面では、溶融された樹脂からなる樹脂シートを押し出す溶融押出装置をさらに備え、該溶融押出装置から押し出された樹脂シートが前記温度調節ロールと前記圧着ロールとの間に導かれる。この場合には、溶融押出装置が樹脂シートを押し出し、連続的に、表面に凹凸が形成された樹脂シートを高い生産性で製造することができる。
【0017】
本発明に係る樹脂シートの製造装置のさらに他の特定の局面では、前記温度調節ロールが中空部を有し、金属からなるロール本体を備え、該中空部に冷媒を供給するための冷媒供給装置をさらに備える。この場合には、温度調節ロールが外表面において、形状が賦型された樹脂シートを速やかに冷却し、該樹脂シートを無理なく剥離することができる。
【0018】
本発明に係る樹脂シートの製造装置では、より好ましくは、前記無端金属帯状体の外表面に設けられた凹凸における凸部の断面のアスペクト比が0.5以上、12.5以下である。アスペクト比がこの範囲内にある場合、樹脂シート表面の凹凸をより一層高精度に形成することができる。
【0019】
本発明に係る樹脂シートの製造方法は、本発明に従って構成された樹脂シートの製造装置を用いて、少なくとも一方面の凹凸が形成されている樹脂シートの製造方法であり、前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールと前記回転ロールとに掛け渡した状態で温度調節ロールを回転駆動し、前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールよりも上流側において前記加熱装置により加熱しつつ、該無端金属帯状体を周回駆動させる工程と、前記温度調節ロールの外表面に接触されて温度調節ロールの外表面を移動する前記無端金属帯状体の外表面に前記樹脂シートの一方面を接触させ、樹脂シートの一方面に凹凸を付与する工程と、前記凹凸が付与された前記樹脂シートを前記温度調節ロールの外周面上において前記無端金属帯状体から剥離する工程とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る樹脂シートの製造装置によれば、無端金属帯状体が、加熱装置により加熱され、加熱された無端金属帯状体が温度調節ロールに接触されるとほぼ同時に、温度調節ロールが回転している内に、樹脂シートの一方面が充分に加熱された温度で無端金属帯状体の外表面に接触されるので、樹脂シートの一方面に無端金属帯状体の外表面の凹凸を確実にかつ高精度に転写することができる。
【0021】
よって、凸部断面のアスペクト比が例えば0.5以上の凹凸や、非常に微細な凹凸を一方面に有する樹脂シートを確実にかつ安定に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図であり、(b)はその装置に用いられる無端金属帯状体の拡大図であり、(c)は第1の実施形態で得られる樹脂シートを示す部分切欠正面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で得られる樹脂シートの応用例を示す部分切欠断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る樹脂シートの製造装置の概略構成図である。
【図5】従来の熱可塑性樹脂のシート加工装置を説明するための概略構成図である。
【図6】別の従来の熱可塑性樹脂のシート加工装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0024】
(第1の実施形態)
図1(a)は、発明の第1の実施形態に係る樹脂シートの製造装置を示す概略構成図であり、図1(b)はその要部を示す部分拡大断面図であり、(c)は本実施形態で得られる樹脂シートを示す部分切欠正面断面図である。
【0025】
図1(a)に示すように、樹脂シートの製造装置1は、熱可塑性樹脂を溶融する溶融押出装置2を有する。溶融押出装置2は、熱可塑性樹脂を溶融し、熱可塑性樹脂シート3として押し出す。なお、本実施形態では、溶融押出装置2を用いているが、本発明においては、溶融押出装置2を用いずともよく、予めシート成型された熱可塑性樹脂シートを当初から用いてもよい。
【0026】
もっとも、溶融押出装置2から押し出された直後の熱可塑性樹脂シート3は比較的高温状態にあり、転写による微細な凹凸の付与が容易であるため、溶融押出装置2を用いることが好ましい。予め成型された熱可塑性樹脂シートを用いる場合には、後の工程で、微細な凹凸を転写するのに必要な温度に充分に熱可塑性樹脂シート3を加熱する必要がある。
【0027】
用いられる熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、本実施形態では、ポリメチルメタクリレートが用いられる。用い得る他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、エチレンビニルアルコール樹脂、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどが挙げられる。
【0028】
熱可塑性樹脂シート3は、温度調節ロール4と圧着ロール5との間に供給される。
【0029】
図1(b)に示すように、温度調節ロール4は、金属からなる。このような金属としては特に限定されず、アルミニウム、ステンレスや鉄などの強度の高い適宜の金属を用いることができる。温度調節ロール4は円筒状であり、中空部4aを有し、必須ではないが略図的に示す冷媒供給装置6から内部に空気等の冷媒が供給される。
【0030】
温度調節ロール4と隔てられて、回転ロール7が配置されている。温度調節ロール4は、図示しない駆動源により図示の矢印方向に回転駆動される。温度調節ロール4と、回転ロール7とに、無端金属帯状体8が掛け渡されている。本実施形態では、温度調節ロール4が図示の矢印方向に回転され、無端金属帯状体8が該矢印方向に沿って移動するため、回転ロール7もまた、図示の矢印方向に回転することとなる。回転ロール7は、回転自在に設けられている。
【0031】
無端金属帯状体8の材質は特に限定はしないが、無端金属帯状体の加熱方法に電磁誘導加熱を用いる場合には、好ましくは、ニッケルもしくはニッケル合金もしくは、ニッケルを5%以上含有するステンレス、又は、炭素鋼などの透磁率の高い金属材料からなることが好ましく、より具体的には、比透磁率が2以上のものが望ましい。また、金属からなるため、熱伝導性に優れ、温度制御も容易である。本実施形態では、無端金属帯状体8はNiからなる。
【0032】
また、無端金属帯状体8の加熱に、赤外線加熱を用いる場合には、赤外線加熱される側の面は黒色体が望ましい。特に、無端金属帯状体8の内側から加熱することで、無端金属帯状体8の内側面を黒色処理することにより、より効率的な加熱を行うことができる。
【0033】
無端金属帯状体8の外周面には、図1(b)に示すように、複数の凸部8aが形成されており、それによって、外周面に微細な凹凸が形成されている。この複数の凸部8aは、無端金属帯状体8の搬送方向に沿って延びている。また、上記搬送方向と直交する方向すなわち、無端金属帯状体8の幅方向に沿って規則的に複数の凸部8aが設けられている。上記凹凸は、最終的に得られる熱可塑性樹脂シートの一方面に形成される凹凸を反転した形状に相当する。
【0034】
好ましくは、無端金属帯状体8の外周面すなわち上記凹凸が形成されている側の面には、熱可塑性樹脂シートの剥離を容易とするために、易剥離性材料層が形成されていてもよい。このような易剥離性材料としては、フッ素含有単分子膜等の有機系材料、あるいはダイヤモンドライクカーボンのような無機材料を適宜用いることができる。
【0035】
図1(a)に示すように、温度調節ロール4は、モータなどの駆動装置Mにより、図示の矢印方向に回転する。他方、圧着ロール5は、回転自在に設けられており、熱可塑性樹脂シート3を温度調節ロール4と圧着ロール5との間の隙間において温度調節ロール4の外周面上に位置している無端金属帯状体8側に圧着ロール5が熱可塑性樹脂シート3を圧接する。すなわち、熱可塑性樹脂シート3は、温度調節ロール4上の無端金属帯状体8と圧着ロール5との間で挟圧される。
【0036】
圧着ロール5は、適宜の金属により形成することができる。このような金属として、特に限定されず、ステンレスや、鉄などを挙げることができる。更には、圧着性を高めるためにゴム等柔軟性物質がコーティングされているのも良い。
【0037】
温度調節ロール4と圧着ロール5とで熱可塑性樹脂シート3が挟圧され、後述の転写が行われる部分を点Bとする。点Bよりも温度調節ロール4の回転方向上流側の位置、すなわち無端金属帯状体8の搬送方向上流側の位置Yにおいて、無端金属帯状体8を加熱するための加熱装置9が配置されている。この装置が電磁誘導を利用したものの場合、加熱装置9は、高周波電流が通電されるコイルを有し、該コイルに高周波電流が通電された際の磁界により、前述した金属からなる無端金属帯状体8が電磁誘導加熱され、発熱する。加熱の程度は、無端金属帯状体8が、熱可塑性樹脂シート3に前述した凹凸を転写するのに適宜な温度に無端金属帯状体8を加熱するように設定される。
【0038】
この場合には、非接触的に無端金属帯状体を所望の温度に高精度に加熱することができる。非接触式であるため、無端金属帯状体の表面の凹凸の変形が生じ難い。
【0039】
位置Yは、点Bよりも、無端金属帯状体8の搬送方向すなわち温度調節ロール4の回転方向において上流側であれば、特に限定されるものではないが、好ましくは、位置Yで加熱された無端金属帯状体8が点Bで樹脂シートに形状が転写されるに十分な温度に保持できること位置にあることが望ましい。
【0040】
本実施形態の特徴は、熱可塑性樹脂シート3が無端金属帯状体8とを接触する点Bと、温度調節ロール4の中心Oを結ぶ直線Aに対して、無端金属帯状体8が上流側から、点Bに向かって搬送される方向が60度〜90度の角度θをなすように無端金属帯状体8が搬送されることにある。上記直線Aに対し、熱可塑性樹脂シート3は直線Aと直交する方向において、上流側から点Bに向かうように供給される。そのため、熱可塑性樹脂シート3と、無端金属帯状体8は、点Bの上流側において角度(90度−θ)をなすこととなる。θが上記のように60度以上、90度未満であるため、無端金属帯状体8と、熱可塑性樹脂シート3とのなす角度は、30度未満となる。そのため、加熱された無端金属帯状体8が、点Bで熱可塑性樹脂シート3に接触するまでに、温度調節ロール4により、無端金属帯状体8が冷却されるのを抑制することができる。
【0041】
すなわち、無端金属帯状体8が、Tg以上の高温である熱可塑性樹脂シート3に30度未満の角度をなすように近接され、かつ温度調節ロール4に対してはさほど近づけられないので、点Bに向かうため、無端金属帯状体8が、点Bの上流側で過度に冷却され難い。よって、無端金属帯状体8の外周面に設けられた凸部8aに基づく微細な凹凸を、熱可塑性樹脂シート3に確実にかつ高精度に転写することができる。
【0042】
また、無端金属帯状体8には、回転ロール7の位置を調整することにより定められた張力が与えられている。これにより、揺動防止が図られ、更には、加熱装置9との距離も一定に維持することができ、点Bにおける無端金属帯状体の温度が安定し、ひいては、熱可塑性樹脂シート3の温度も安定するので、高精度に凹凸形状が付与された熱可塑性樹脂シート3を製造することができる。
【0043】
圧着ロール5と温度調節ロール4のうち少なくとも一方は、軸方向における端部の直径よりも軸方向中央における直径が大きい、樽型のクラウンロールにより形成されていてもよい。少なくとも一方をクラウンロールとすることにより、ロールの軸方向中央部におけるへこみを抑制することができる。従って、ロールの軸方向中央においても樹脂シートの形状の精度を高めることができる。
【0044】
温度調節ロール4と隔てられて、ロール10が配置されている。熱可塑性樹脂シート3は、上記点Bで凹凸が付与された後、温度調節ロール4の外周面、より具体的には、上記無端金属帯状体8の外周面に接触したまま温度調節ロール4とともに移動し、位置Zにおいて温度調節ロール4から分離される。ロール10は、この位置Zを調節するために設けられている。すなわち、ロール10に凹凸が付与された熱可塑性樹脂シート3が掛けわたされており、位置Zが適切な位置となるようにロール10が設定されている。
【0045】
本実施形態の樹脂シートの製造装置1を用いた製造方法を説明する。
【0046】
本実施形態では、図1(c)に示す熱可塑性樹脂シート3からなるプリズムシートが最終的に得られる。熱可塑性樹脂シート3は、一方面側においてシート搬送方向と垂直な方向に沿う断面が直角二等辺三角形の複数の凸部3aを有する。複数の凸部3aは規則的に配置されている。この複数の凸部3aの形成により、熱可塑性樹脂シート3の一方面に凹凸が形成されている。凸部3aの上記断面における幅方向寸法をWとする。また、凸部3aの高さをh、熱可塑性樹脂シート3の上記凸部3aを除いたシート本体部分の厚みをtとする。言い換えれば、熱可塑性樹脂シート3では、一方面側に高さh及び幅Wの複数の凸部3aを有する。
【0047】
熱可塑性樹脂シート3を転写法により得るため、無端金属帯状体8の外表面には、上記複数の凸部3a間の凹部が凸部に相当する凸部8aが形成されている。
【0048】
製造に際しては、溶融押出装置2から溶融状態にある熱可塑性樹脂シート3を押し出し、熱可塑性樹脂シート3を温度調節ロール4と圧着ロール5との間に送り出す。温度調節ロール4を駆動装置Mで回転駆動しつつ、加熱装置9により無端金属帯状体8を加熱する。それによって、良好な転写を行うのに必要な温度以上に無端金属帯状体8を加熱する。
【0049】
この温度は、熱可塑性樹脂シート3の材料、また熱可塑性樹脂シート3の温度調節ロール4に供給される直前の温度によっても異なるが、点Aにおいて、転写を良好に行い得る温度となるように加熱を行えばよい。このような温度としては、熱可塑性樹脂シート3のガラス転移温度Tg以上であることが好ましく、その場合、無端金属帯状体8の外表面の凹凸を容易にかつ確実に転写することができる。
【0050】
なお、熱可塑性樹脂シート3のガラス転移温度Tgとは、熱可塑性樹脂シート3を構成している熱可塑性樹脂及び必要に応じて添加される可塑剤等の添加剤等を含む組成物のDSCチャートで読み取れることができるガラス転移温度をいうものとする。
【0051】
加熱された無端金属帯状体8は、点Bまで移動していく。このとき、無端金属帯状体8の進入角度を上記のように設定しているので、点Bに至るまでに、温度調節ロール4との間の距離をある程度長くすることができる。一方で、温度調節ロール4に過度に近接することにより生じる無端金属帯状体8の温度降下を抑制することができる。
【0052】
点Bにおいて、圧着ロール5により、熱可塑性樹脂シート3が温度調節ロール4側に圧接される。その結果、熱可塑性樹脂シート3の温度調節ロール4側の面に無端金属帯状体8の表面の凹凸を反転した形状の凹凸が転写されることとなる。
【0053】
好ましくは、無端金属帯状体8の温度をT1、温度調節ロール4の温度をT2、結晶性の熱可塑性樹脂シート3の融解温度をTmとしたとき、T1>Tm>T2となるように、無端金属帯状体8及び温度調節ロール4の温度が設定される。その場合には、無端金属帯状体8の温度が熱可塑性樹脂シート3の融解温度Tmよりも高くなるため、無端金属帯状体8の外周面の凹凸を熱可塑性樹脂シート3に確実にかつ容易に付与することができる。また、温度調節ロール4により、賦型後の熱可塑性樹脂シート3を速やかに冷却し、賦型された形状を確実に保持させることができる。
【0054】
より好ましくは、熱可塑性樹脂シート3の無端金属帯状体8に接する前の温度T3としたとき、T3>T1となるように熱可塑性樹脂シート3の温度及び無端金属帯状体8の温度が設定される。それによって、熱可塑性樹脂シート3の無端金属帯状体8に接する前の温度T3が無端金属帯状体8の温度T1よりも高いので、熱可塑性樹脂シート3に無端金属帯状体8の外周面の凹凸をより確実に付与することができる。
【0055】
また、熱可塑性樹脂シート3が非晶性の熱可塑性樹脂からなる場合、非晶性の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂シート3のガラス転移温度Tgとしたとき、T1>Tg>T2となるように無端金属帯状体8及び温度調節ロール4の温度が設定される。この場合、上記と同様に、無端金属帯状体8の温度T1が、Tgよりも高いので、無端金属帯状体8の外周面の凹凸をより一層容易にかつ確実に熱可塑性樹脂シート3に付与することができる。また、温度調節ロール4において、賦型された熱可塑性樹脂シート3を速やかに冷却し、賦型形状を確実に保持することができる。この場合において、より好ましくは、T3>T1となるように、熱可塑性樹脂シート3及び無端金属帯状体8の温度が設定される。
【0056】
しかる後、熱可塑性樹脂シート3は温度調節ロール4の外周面、より具体的には、上記無端金属帯状体8の外周面に接触されたまま、点Bから位置Zまで移動する。この場合、温度調節ロール4のロール本体の内部に水や油などの冷媒が供給されているため、温度調節ロール4のロール本体は、点Bから位置Zに至るにつれ温度が低下し、さらに無端金属帯状体8もまた冷却されることとなるため、位置Zにおいて、熱可塑性樹脂シート3を無端金属帯状体8の外表面から無理なく剥離することができる。
【0057】
本実施形態の製造装置及び製造方法によれば、上記加熱装置9を用いて、無端金属帯状体8を加熱するため、微細な凹凸の転写に必要な温度以上に無端金属帯状体8を速やかにかつ確実に加熱することができる。加えて、加熱された無端金属帯状体8が樹脂シートを圧着する前に、温度調節ロールにより冷却されるのを抑制しているので、その熱利用効率はより高いものとなっている。従って、点Bから位置Yに至るまで、無端金属帯状体8は、転写に適切な温度に確実に保温される。よって、点Bにおいて、熱可塑性樹脂シート3に微細な凹凸を高精度に転写することができる。
【0058】
加えて、点Bから位置Zの間の領域においては、冷媒により温度調節ロール4が冷却されているが、無端金属帯状体8の温度がゆるやかに低下し、位置Zにおいて、微細な凹凸を一方面に有する熱可塑性樹脂シート3を無端金属帯状体8の外表面から無理なく剥離することができる。
【0059】
前述した図5及び図6に示した従来の熱可塑性樹脂シートの加工装置では、予備加熱により予め熱可塑性樹脂シートの温度を高めることが試みられていた。しかしながら、予備加熱で与えられた熱が転写に先立ち放散し、転写時の温度が必ずしも適切な温度とされ難かった。従って、微細な凹凸を高精度に転写することができなかった。これに対して、本実施形態によれば、上記のとおり、微細な凹凸を熱可塑性樹脂シート3に高精度に転写することができる。
【0060】
特に、上記凸部3aのアスペクト比h/wが高い凹凸も本実施形態によれば高精度に転写することができる。具体的には、前述した従来のシート加工装置101では、アスペクト比が0.5以上の凸部を転写法により形成することができなかったのに対し、本実施形態によれば、上記アスペクト比h/wが0.5以上の凸部3aを有する凹凸を極めて低圧な転写圧力で熱可塑性樹脂シート3の一方面に転写することができる。
【0061】
また、上記のようなアスペクト比の大きい凹凸が一方面に形成された場合、熱可塑性樹脂シート3を温度調節ロール4から剥離するのに、ある程度低い温度まで冷却する必要がある。さもなければ、アスペクト比の大きい凹凸の形状が剥離に際し変形したり、熱可塑性樹脂シート3に不毛でない歪み等が生じるおそれがある。本実施形態では、点Bから位置Zに至る間に、無端金属帯状体8が適度に冷却されるため、アスペクト比の大きい凸部を有する凹凸の場合であっても、無理なく温度調節ロール4から剥離することができる。
【0062】
従って、得られた熱可塑性樹脂シートの均一性を高めることができ、歪み量を小さくすることができる。よって、例えば光学用フィルムもしくはシートとして、上記熱可塑性樹脂シート3を好適に用いることができる。
【0063】
本発明により得られる熱可塑性樹脂シートは、プリズムシートの凹凸が一方面に付与された様々な光学シートに好適に用いることができる。このような光学シートとしては、レンチキュラーレンズシート、フレネルレンズシート、マイクロレンズアレイシートなどが挙げられる。また、光学シートに限らず、無秩序で微細な凹凸が一方面に設けられているエンボスシートなど、様々な微細な凹凸を一方面に有する熱可塑性樹脂シートを発明により提供することができる。
【0064】
なお、第1の実施形態では、図1(c)に示した複数の凸部3aを有する凹凸が形成されていたが、本発明により熱可塑性樹脂シートの一面に形成される凹凸形状は特に限定されない。例えば、図2に示すラインアンドスペース形状12のように、表面に熱可塑性樹脂シート3の搬送方向に垂直な方向に沿う断面において、幅がW1及び高さhの長方形の凸部が間隔W2を隔てられて配置されていてもよい。ここで、厚みtは、上記凹凸の凸部を除いた熱可塑性樹脂シート11のシート本体部の厚みである。この場合のアスペクト比は、上記と同様に、h/W1で定義される。
【0065】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂シートの製造装置を示す概略構成図である。本実施形態の樹脂シートの製造装置21では、溶融押出装置2から熱可塑性樹脂シート3が圧着ロール5円周上に供給される。溶融押出装置2及び圧着ロール5は第1の実施形態と同様に構成されている。
【0066】
図3では、溶融押出装置2から水平方向に熱可塑性樹脂シート3が送り出されているが、実際には、図3の装置を90度回転させ、溶融押出装置2から垂直方向に熱可塑性樹脂シート3が押し出されるように、製造装置21を配置する。
【0067】
ところで、本実施形態では、熱可塑性樹脂シート3は、圧着ロール5の外周面上を搬送され、温度調節ロール4と圧着ロール5との間の位置Bに至る。このように、熱可塑性樹脂シート3は、位置Bに至るまで、圧着ロール5の外周面を移動させてもよい。
【0068】
本実施形態においても、無端金属帯状体8が位置Bに搬送される方向は、温度調節ロール4の中心Oと、点Bとを結ぶ直線Aに対し、60度以上、90度未満の範囲とされているため、点Bに向かう直前に、無端金属帯状体8は、温度調節ロール4から遠ざけられている。従って、無端金属帯状体8が、点Bに向かうまでに、温度調節ロール4により冷却され難い。従って、上記第1の実施形態の場合と同様に、無端金属帯状体8の外周面に設けられた凹凸を、熱可塑性樹脂シート3に高精度に転写することができる。点Bよりも下流側においては、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態の説明を援用することにより、詳細な説明を省略することとする。
【0069】
本実施形態の樹脂シートの製造装置21を用いた製造方法においても、点Bに至るまでに、すなわち加熱装置9により無端金属ベルト24が位置Yにおいて加熱され、無端金属ベルト24が転写に充分な温度以上に加熱される。従って、点Bにおいて、微細な凹凸が熱可塑性樹脂シート3に確実に転写される。転写後は、第1の実施形態と同様に、適度に熱可塑性樹脂シート3が温度調節ロール22の外周面に沿って移動する際に、適度な温度に冷却される。従って、位置Zにおいて、微細な凹凸が一方面に付与された熱可塑性樹脂シート3を無理なく剥離することができる。
【0070】
また、無端金属ベルト24は温度調節ロール22と別体であるため、摩擦による無端金属ベルト24の内周面の磨耗や、無端金属ベルト24の位置擦れもしくは切断等を抑制するために、このような効果を果たす無機材料層を形成してもよい。それによって、樹脂シートへの異物の混入を防ぐことも可能となる。
【0071】
加熱装置9に、電磁誘導加熱に用いる高周波電流の周波数は特に限定されないが、10kHz〜1MHzの範囲が好ましい。周波数が高くなりすぎると、無端金属帯状体8の透磁率が低くなるため、効率的に加熱することが困難となる。低すぎると無端金属帯状体8内における電磁場の乱れが生じるおそれがあり、外部に磁界が漏洩したりし、やはり効率的な加熱を行うことができないおそれがある。
【0072】
図1(a)では、温度調節ロール4と回転ロール7との間に無端金属帯状体8を掛けわたしていたが、図4に示すように、回転ロール7Aとして、温度調節ロール4と同様の構造を有するロールを用いてもよい。このように、無端金属帯状体8の内側に複数個の温度調節ロールを配置することにより、無端金属帯状体8の温度調節をより細やかに行うことができる。例えば、ポリプロピレンなどの結晶性の熱可塑性樹脂をシート化する場合、結晶化速度の制御も、複数の温度調節ロールを用いることにより容易に行い得る。従って、より品質の優れた熱可塑性樹脂シートを提供することができる。
【0073】
回転ロール7Aの制御温度は、温度調節ロール4と等しくともよく、異なっていてもよく、また回転ロール7Aの構成は温度調節ロール4と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
もっとも、回転ロール7Aを温度調節ロール4と同一とした場合、成型条件の調整例えば温度調整をより確実にかつ速やかに行うことができる。また、製造装置の準備や、メンテナンスも容易となる。
【0075】
また、温度調節ロール4及び回転ロール7Aに加えて、さらに加熱装置9の下流側であって、点Bよりも上流側に別の温度調節ロールを設けてもよく、その場合、上流側の温度調節ロールの温度を相対的に高くすることにより、転写性をよりいっそう高めることができる。
【0076】
温度調節ロール4及び回転ロール7Aを用いた場合、回転ロール7Aの位置を制御することにより、無端金属帯状体8の張力を調整することができる。それによって、無端金属ベルト24の蛇行を防止したり、温度調節ロール4及び回転ロール7A間の熱伝達の程度を調整することも可能となる。
【0077】
〔実施例及び比較例〕
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明の効果を明らかにする。
【0078】
(実施例1)
第1の実施形態の樹脂シートの製造装置1を用い、図1(c)に示した熱可塑性樹脂シート3を得た。図1(c)に示すW,h及びtは、それぞれ、W=25μm、h=50μm、t=200μmとした。使用した熱可塑性樹脂は旭化成株式会社製、アクリル樹脂、商品名:デルペットを用いた。また、無端金属帯状体8の温度調節ロールに接する際の上記角度θを10度とした。
【0079】
なお、点Aにおいて無端金属帯状体の表面温度は160℃とするように条件を設定した。
【0080】
(実施例2)
無端金属帯状体8の温度調節ロールに接する際の角度θを30度としたことを除いては実施例1と同様にして熱可塑性樹脂シートを得た。
【0081】
(比較例1)
無端金属帯状体8の温度調節ロールに接する角度θを40度としたことを除いては実施例1と同様にして熱可塑性樹脂シートを得た。
【0082】
(評価)
実施例1〜2及び比較例1,2で得られた各熱可塑性樹脂シートにおける凹凸転写性を評価した。凹凸部分をシート面方向と直交する方向に切断し、マイクロスコープにより撮影し、転写率及び凸部の角部の曲率半径Rを求めた。結果を下記の表1に示す。
【0083】
表1における転写率とは、無端金属帯状体に形成された凹凸と、熱可塑性樹脂シートに転写された凹凸の高さの比を意味する。すなわち、無端金属帯状体の凸部の高さと、図1(c)に示した高さhとの比を100分率で表した値である。また、表1の角部Rは、上記断面における凸部の先端の両側のコーナー部の曲率半径の平均値である。
【0084】
【表1】

【0085】
表1における角部Rの測定不能とは、角部が丸みを帯びていないことを意味する。
【0086】
実施例1及び2では、無端金属帯状体の凹凸の形状が、熱可塑性樹脂シート3の一方面に完全に転写されており、角部においても、丸みが見られなかった。これに対して、比較例1では、角部に丸みが生じており、完全転写のものを得ることができなかった。
【符号の説明】
【0087】
1…製造装置
2…溶融押出装置
3…熱可塑性樹脂シート
4…温度調節ロール
4a…中空部
5…圧着ロール
6…冷媒供給装置
7…回転ロール
7A…回転ロール
8…無端金属帯状体
8a…凸部
9…加熱装置
10…ロール
11…熱可塑性樹脂シート
21…製造装置
22…温度調節ロール
24…無端金属ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面に凹凸が形成されている樹脂シートの製造装置であって、
金属からなるロール本体を有する温度調節ロールと、
前記温度調節ロールと隔てられて配置された回転ロールと、
前記温度調節ロールを回転駆動するロール駆動装置と、
前記温度調節ロールと前記回転ロールとの間に掛け渡らされており、かつ外周面に前記樹脂シートの表面に形成される凹凸に対応した形状の凹凸が形成されている無端金属帯状体と、
前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールの外表面に接触させつつ、前記樹脂シートを前記無端金属帯状体の外周面に接触させて前記樹脂シートの一方面に凹凸を付与するように、前記温度調節ロールに前記無端金属帯状体及び前記樹脂シートを介して圧接される圧着ロールと、
前記無端金属帯状体の外周面に前記樹脂シートが接触される位置よりも上流側において前記無端金属帯状体を加熱するための加熱装置とを備え、
前記温度調節ロールの中心と前記無端金属帯状体と前記樹脂シートとが接触する点とを結んだ線に対し、60度〜90度の角度をなすように前記無端金属帯状体と前記樹脂シートが接触する点に向かって前記無端金属帯状体が移動されるように構成されている、樹脂シートの製造装置。
【請求項2】
前記加熱装置が、電磁誘導を利用した加熱装置である、請求項1に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項3】
前記温度調節ロールの外表面が金属からなる、請求項1または2に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項4】
前記無端金属帯状体の温度をT1、前記温度調節ロールの温度をT2、前記樹脂シートの融解温度をTmとしたときに、T1>Tm>T2となるように、前記無端金属帯状体及び前記温度調節ロールの温度が設定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項5】
前記樹脂シートの前記無端金属帯状体に接する前の温度をT3としたときに、T3>T1となるように前記樹脂シートの温度及び前記無端金属帯状体の温度が設定されている、請求項4に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項6】
前記無端金属帯状体の温度をT1、前記温度調節ロールの温度をT2、前記樹脂シートが非晶性熱可塑樹脂から成り、該非晶性熱可塑樹脂からなる樹脂シートのガラス転移温度をTgとしたときに、T1>Tg>T2となるように前記無端金属帯状体及び前記温度調節ロールの温度が設定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項7】
前記樹脂シートの前記無端金属帯状体に接する前の温度をT3としたときに、T3>T1となるように前記樹脂シート及び前記無端金属帯状体の温度が設定されている、請求項6に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項8】
溶融された樹脂からなる樹脂シートを押し出す溶融押出装置をさらに備え、該溶融押出装置から押し出された樹脂シートが前記温度調節ロールと前記圧着ロールとの間に導かれる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項9】
前記温度調節ロールが中空部を有し、金属からなるロール本体を備え、該中空部に冷媒を供給するための冷媒供給装置をさらに備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項10】
前記無端金属帯状体の外表面に設けられた凹凸における凸部の断面のアスペクト比が0.5以上、12.5以下である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造装置を用いた、一方面に凹凸が形成されている樹脂シートの製造方法であって、
前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールと前記回転ロールとに掛け渡した状態で温度調節ロールを回転駆動し、前記無端金属帯状体を前記温度調節ロールよりも上流側において前記加熱装置により加熱しつつ、該無端金属帯状体を周回駆動させる工程と、
前記温度調節ロールの外周面に接触されて温度調節ロールの外表面を移動する前記無端金属帯状体の外周面に前記樹脂シートの一方面を接触させ、樹脂シートの一方面に凹凸を付与する工程と、
前記凹凸が付与された前記樹脂シートを前記温度調節ロールの外周面上において前記無端金属帯状体から剥離する工程とを備える、樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−240515(P2011−240515A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112183(P2010−112183)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】