説明

樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置

【課題】基材表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置において、基材の幅寸法の変更に有効に対応させて基材の造形自由度を高める。
【解決手段】散布装置30は、樹脂パウダーPを貯留するホッパー31と、その下部に位置し、樹脂パウダーPをふるい落とすシューター32とからなり、シューター32の長手方向両端に拡張金具40を開閉可能に取り付け、拡張金具40を開放状態、あるいは閉鎖状態でシューター32に固定することで、シューター32下端のパウダー散布用開口33の開口幅寸法Wを可変させることにより、基材Fの幅寸法wに有効に対応させる。また、シューター32の長手方向端末に別体の増設散布ユニット60を付設することで、パウダー散布用開口33の開口幅寸法Wを拡張させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基材表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置に係り、特に、パウダー散布有効幅を可変させることで、散布対象となる基材の幅寸法を任意に選択することができる樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図10に示すように、エンジンルームEと車室Rとを区画するダッシュパネル1の車室内側面上には、エンジンルームEから車室R内への騒音の伝播を防止するために、防音材としてインシュレータダッシュ2が設けられている。このインシュレータダッシュ2は、図11に示すように、高密度の充填材を混入した塩ビシート、ゴムシート等の遮音材層3と、フエルト、ポリウレタンフォーム、不織布マット等、多孔質基材からなる吸音材層4との二層構造体のものが一般に知られている。そして、上記吸音材層4によりエンジンルームEからの騒音を吸音するとともに、ダッシュパネル1と遮音材層3との間の二重壁遮音効果により、上記吸音効果と併せて良好な防音特性を発揮するようにしている。
【0003】
更に、上記インシュレータダッシュ2は、図12に示すように、インシュレータダッシュ2の製品形状と合致する型面形状をもつプレス上下型5a,5bを型締めすることにより、所要形状にプレス成形されている。また、遮音材層3並びに吸音材層4の素材としては、シート原反Sと熱成形フエルト、繊維マット等の基材Fとが使用され、両者を有効に接着するために、基材Fの表面には、ポリエチレン樹脂等、接着機能を有する樹脂パウダーPが散布処理されている。
【0004】
次いで、図13,図14を基に従来の散布装置6を使用した樹脂パウダーPの散布方法について簡単に説明する。まず、図13に示すように、吸音材層4の素材となる基材Fをテーブル7a上に載置し、散布装置6から樹脂パウダーPをこの基材Fの上方に散布するが、具体的には、散布装置6が図13中X矢印方向にスライド動作して、基材Fの表面全面に樹脂パウダーPが散布される。そして、樹脂パウダーPの散布処理が完了すれば、テーブル7aが図13中Y矢印方向にスライド動作して、熱風炉7b内にテーブル7aが搬入され、樹脂パウダーPが加熱溶融される。その後、プレス上下型5a,5b内にシート原反S及び樹脂パウダーPを付着させた基材Fを投入し、プレス上下型5a,5bを型締めすることにより、遮音材層3と吸音材層4とが所要形状に一体成形される。
【0005】
ところで、従来の樹脂パウダーPの散布装置6は、図14に示すように、樹脂パウダーPを貯留するホッパー6aと、ホッパー6aの下部に位置して、一定量の樹脂パウダーPを散布するシューター6bとから構成されており、ホッパー6aとシューター6bの接合部分には、所定量の樹脂パウダーPを計量できる計量機構として、溝入りローター6cが回動可能に収容されている。この溝入りローター6cは、ベルトとプーリー、あるいはチェーンとスプロケットホイール等の伝達機構6dを介してモーター6eに連結されており、モーター6eの回転数に応じて溝入りローター6cは所定の回転速度で回転し、この回転速度に応じて一定量の樹脂パウダーPをホッパー6aからシューター6b側に供給している。また、シューター6bの下端のパウダー散布用開口6fを通じて基材Fの表面に樹脂パウダーPが散布される。インシュレータダッシュ2における基材Fの表面に樹脂パウダーPを散布する従来例としては、特許文献1に詳細に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−323792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の樹脂パウダーPの散布方法によれば、チェーンやベルト等の伝達機構6dを介してモーター6eの回転運動が溝入りローター6cに伝達され、この溝入りローター6cの回転速度に応じて所定量の樹脂パウダーPがシューター6b内に落とされ、シューター6bの下端に設けたパウダー散布用開口6fから樹脂パウダーPを散布する。この時、散布装置6を基材Fの長さ寸法に応じて所定ストロークスライド動作させることにより、基材Fの表面全面に樹脂パウダーPが散布される。
【0008】
しかしながら、図14に示すように、散布装置6の有効幅寸法A1が1000mmに設定されていた場合は、基材Fの幅寸法A2が1070mmの仕様においては、両端に樹脂パウダーPが付着しないゾーンが生じるため、プレス上下型5a,5bで遮音材層3、吸音材層4をプレス一体化してインシュレータダッシュ2を成形しても、遮音材層3に剥がれ不良が多発することから、基材Fの幅寸法A2に制約を受けているのが実情である。
【0009】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、基材表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置において、基材の幅寸法を任意に設定しても、基材の全面に亘り樹脂パウダーを万遍なく散布することができるようにした樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために本発明者等は、鋭意研究の結果、シューターの下端に設けるパウダー散布用開口の開口幅寸法を拡張具の開閉操作や別体の増設散布ユニットを付設することで可変させることにより、基材の幅寸法を任意に設定できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、樹脂パウダーを貯留するホッパーと、その下部に位置し、樹脂パウダーを散布するシューターと、双方の境界部分に設けられ、樹脂パウダーを所定量計量できる計量機構とを備えた散布装置を使用して、シューターの下端に設けたパウダー散布用開口を通じて基材の表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布方法において、前記シューターの下面に設けたパウダー散布用開口の開口幅寸法を拡張可能とすることにより、パウダー散布有効幅寸法を可変させることで、散布対象となる基材の幅寸法を任意に設定できるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に使用する樹脂パウダーの散布装置は、基材の表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布装置において、前記パウダー散布装置は、樹脂パウダーを貯留するホッパーと、ホッパーの下部に位置し、樹脂パウダーを散布するシューターと、ホッパーとシューターとの境界部分に収容され、所定量の樹脂パウダーを計量でき、ホッパーからシューター側に所定量の樹脂パウダーを供給する計量機構と、シューターの長手方向両端に取り付けられ、パウダー散布用開口の開口幅寸法を可変できる拡張具と、シューター内に内装されるエアブロー機構とから構成されており、散布対象となる基材の幅寸法に応じて上記拡張具を開閉操作して、パウダー散布用開口の開口幅寸法を調整できるようにしたことを特徴とする。
【0013】
ここで、散布装置は、樹脂パウダーを貯留するホッパーと、ホッパーからの樹脂パウダーを基材表面側に散布するシューターと、樹脂パウダーの必要量を計量できる計量機構とからなる基本構成に加えて、シューターの下端に設けたパウダー散布用開口の開口幅寸法を可変できるように、シューターの長手方向両端を切欠き、この部分に拡張具を取り付け、この拡張具を開放状態、閉鎖状態でそれぞれロックできるようにした開口幅調整機構が付設されているとともに、開口幅寸法を可変しても有効に樹脂パウダーをパウダー散布用開口を通して万遍なく散布できるようにシューター内にエアブロー機構が内装されている。
【0014】
更に、樹脂パウダーの計量機構としては、例えば、ホッパーとシューターの接合部分に溝入りローターを回動可能に軸受けし、モーターの回転運動をベルトとプーリー、チェーンとスプロケットホイール等の伝達機構を介して溝入りローターに伝達し、溝入りローターを回転動作することで、ローターの外周面に設けた溝に収容した樹脂パウダーをシューター側に移行させるという構成が採用されている。従って、モーターの回転数を調整することにより、樹脂パウダーの落下量を制御することができる。また、樹脂パウダーの計量機構としては、溝入りローター以外にも、振動によるふるい落とし構成等、慣用の計量機構を使用することができる。
【0015】
次に、シューター下端のパウダー散布用開口の開口幅調整機構としては、シューターの長手方向両端を開口し、断面コ字状の拡張具を被せるように取り付け、拡張具は蝶番により開閉可能に支持され、基材の幅寸法が1000mm以下の場合は拡張具を未使用とし、拡張具を閉鎖した状態でマグネット同士の磁性吸引力でロックする。一方、基材の幅寸法が1000mm以上の場合は拡張具を開放した状態で固定ピンでロックして開口幅寸法を拡げて使用する。
【0016】
次いで、本発明に係る樹脂パウダーの散布装置の好ましい実施の形態においては、基材の表面に樹脂パウダーを散布する樹脂パウダーの散布装置において、前記樹脂パウダーを貯留するホッパーと、ホッパーの下部に位置し、樹脂パウダーを散布するシューターと、ホッパーとシューターとの接合部に収容され、所定量の樹脂パウダーを計量して供給する計量機構とを備える散布装置本体と、シューターの長手方向に沿って付設され、パウダー散布用開口の開口幅寸法を拡張させる別体の増設散布ユニットとからなることを特徴とする。
【0017】
この好ましい実施の形態によれば、別体の増設散布ユニット(振動式)をシューターの長手方向端末に取り付けることで、この増設散布ユニットのパウダー散布用開口分、開口幅寸法を拡げることができる。この増設散布ユニット(振動式)は、既存の散布装置のモーターの回転と連動し、振動によるパウダーのふるい落としにより、樹脂パウダーを均一に落下させる。尚、シューター内部にエアブロー機構が不要となるため、シューター内部の構造は簡素化できる。
【0018】
このように、本発明に係る樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置によれば、シューター下端のパウダー散布用開口の開口幅寸法を調整できるため、基材における樹脂パウダーの散布有効幅寸法を任意に設定でき、製品の造形自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明に係る樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置は、樹脂パウダーを貯留するホッパーの下部に樹脂パウダーを散布するシューターが設定されており、このシューターの下端に設けられているパウダー散布用開口の開口幅寸法を可変できる開口幅調整機構を設けるか、あるいはシューターの長手方向端末に別体の増設散布ユニットを付設することで、基材の幅寸法の変更に有効に対応することができ、基材の造形自由度を大幅に向上させることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明方法を適用して製作したインシュレータダッシュの構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すインシュレータダッシュの製造方法における各工程を示すチャート図である。
【図3】本発明に係る樹脂パウダーの散布装置と基材との関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係る樹脂パウダーの散布装置の構成を示す説明図である。
【図5】図4に示す樹脂パウダーの散布装置におけるパウダー散布用開口の開口幅寸法の調整機構を示す説明図である。
【図6】本発明に係る樹脂パウダーの散布装置における拡張金具の閉鎖状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る樹脂パウダーの散布装置における拡張金具の開放状態での散布状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る樹脂パウダーの散布装置の変形例の構成を示す説明図である。
【図9】図1に示すインシュレータダッシュを成形するプレス成形工程を示す説明図である。
【図10】インシュレータダッシュの設置箇所を示す説明図である。
【図11】従来のインシュレータダッシュの構成を示す説明図である。
【図12】従来のインシュレータダッシュの成形工程を示す説明図である。
【図13】従来のインシュレータダッシュにおける吸音材層としての基材に接着剤である樹脂パウダーを散布する工程を示す説明図である。
【図14】従来の樹脂パウダーの散布装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る樹脂パウダーの散布方法並びに散布装置の好適な実施例について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。尚、念のため付言すれば、本発明の要旨は特許請求の範囲に記載した通りであり、以下に説明する実施例の内容は、本発明の一例を単に示すものに過ぎない。
【実施例】
【0022】
図1乃至図9は本発明の一実施例を示すもので、図1は本発明に係る樹脂パウダーの散布方法を使用して接着剤を付着させた基材と表皮とを一体プレス成形して得られたインシュレータダッシュを示す断面図、図2は同インシュレータダッシュの製造方法における各工程を示すチャート図、図3は本発明に係る樹脂パウダーの散布装置と加工対象となる基材との関係を示す説明図、図4は同散布装置の構成を示す説明図、図5は同散布装置におけるパウダー散布用開口の開口幅調整機構を示す説明図、図6,図7は散布装置のそれぞれ使用形態を示す各説明図、図8は散布装置の変形例を示す説明図、図9は上記インシュレータダッシュの製造方法におけるプレス成形工程を示す説明図である。
【0023】
まず、本発明方法の適用対象について説明する。図1に示すインシュレータダッシュ10は、高密度の充填材を混入した塩ビシート、ゴムシート等の熱可塑性でかつ可撓性を備えた遮音材層11と、この遮音材層11の裏面側に一体貼着されるフエルト、不織布基材等を素材とした吸音材層12とから大略構成されており、ダッシュパネル13の車室内側面上に添装固定されている。そして、従来例でも述べたように、エンジンルームEからダッシュパネル13を透過して車室R内に伝播する騒音に対して、吸音材層12の多孔質吸音機能と、ダッシュパネル13と遮音材層11との間の二重壁遮音機能により、良好な防音特性を発揮するようにしている。
【0024】
次いで、図2は上記インシュレータダッシュ10の製造方法の各工程を示すもので、ここで、簡単にインシュレータダッシュ10の製造方法について説明すると、吸音材層12の素材としては熱成形フエルト、繊維マット等の基材Fが使用され、パウダー散布工程でポリエチレン樹脂等の樹脂パウダーPが基材Fの一面に散布される。その後、加熱炉により樹脂パウダーPが加熱溶融される。一方、遮音材層11としては、可撓性シートSが使用され、赤外線加熱炉等を使用した予熱工程により所定温度に加熱軟化処理される。そして、両者はプレス成形工程において強固に一体化されるが、その際、樹脂パウダーPが両者の接着媒体として有効に機能している。
【0025】
ところで、本発明は、図3に示すように、テーブル20上にセットされた基材Fに対して、その一方端に散布装置30が位置決めされている。そして、基材Fの幅寸法wに対して散布装置30の開口幅寸法Wが一致するように調整されている。更に、散布装置30が図3中矢印X方向に沿って長さ寸法Lだけスライド動作して、基材Fの全面に樹脂パウダーPが散布される。その後、テーブル20が矢印Y方向に搬送され、加熱炉21内で樹脂パウダーPが加熱溶融される。
【0026】
この樹脂パウダーPの散布装置30の構成について、図4,図5を基に詳細に説明する。散布装置30は、樹脂パウダーPを貯留する上部側のホッパー31と、ホッパー31の下部に位置して樹脂パウダーPを所定量落とし込んで散布するシューター32とから構成されている。そして、このシューター32の下端には、樹脂パウダーPを散布するためのパウダー散布用開口33が細長状に設けられている。ここで、ホッパー31に貯留する樹脂パウダーPを所定量計量してシューター32側に送り出すための計量機構として、本実施例においては、溝入りローター34がホッパー31とシューター32の境界部分に回動可能に軸受けされており、この溝入りローター34のシャフト34aとモーター35の回転軸35aにプーリー36a,36bがそれぞれ取り付けられ、プーリー36a,36b間にベルト37を巻架して、モーター35の回転駆動に連動して溝入りローター34を回転駆動させ、この溝入りローター34の回転速度により所定量の樹脂パウダーPをシューター32側に供給している。
【0027】
ところで、本発明の特徴は、この散布装置30において、シューター32下端のパウダー散布用開口33の開口幅寸法Wを可変させることで、基材Fの造形自由度を高めたことにある。その構成としては、図5に示すように、シューター32の長手方向両端を開口し、そこに断面コ字状に形成した拡張金具40を被せ、拡張金具40を蝶番41を基に開閉可能に支持し、拡張金具40を開閉操作することでパウダー散布用開口33の開口幅寸法Wを約50mm拡張できる構成になっている。そして、拡張金具40は、閉鎖状態及び開放状態でそれぞれ固定できるように、この実施例においては、拡張金具40を図5中点線で示す閉鎖状態において拡張金具40を固定するマグネット42,43がシューター32と拡張金具40側にそれぞれ対応して設けられており、このマグネット42,43の磁性吸引力により、拡張金具40の閉鎖状態が維持される。一方、拡張金具40を開放操作した状態で固定するために固定ピン44が図示しない双方の固定孔に差し込まれて、拡張金具40が開放状態で固定される。また、拡張金具40を開放状態で固定した際、樹脂パウダーPを拡げたパウダー散布用開口33に万遍なくゆきわたらせるために、シューター32内部にはエアブロー機構50としてブロー管51が配置されている。更に、ブロー圧を調整できるスピコン52を設定することで、エア吹き出し量を調整できるような構成になっている。
【0028】
尚、この実施例では、溝入りローター34にモーター35からの回転力を伝達する機構として、プーリー36a,36bとベルト37からなる伝達機構を採用したが、チェーンとスプロケットホイールとからなる伝達機構を採用することもできる。
【0029】
次に、図6,図7に基づいて、本発明に係る散布装置30の好適な使用形態について説明する。まず、基材Fの幅寸法wが1000mmに設定されている場合には、図6に示すように散布装置30におけるシューター32の長手方向両端に付設した拡張金具40を閉鎖状態でそれぞれマグネット42,43の吸着作用により固定し、シューター32の下端に設けたパウダー散布用開口33の開口幅寸法W1は基材Fの幅寸法wに等しく1000mmに設定されている。
【0030】
そして、基材Fの幅寸法wが1070mmのように幅広に設定されている場合は、図7に示すように、散布装置30におけるシューター32の長手方向両端の拡張金具40は開放操作され、固定ピン44で左右両端側を延長した状態で拡張金具40を固定し、パウダー散布用開口33の開口幅寸法W2は基材Fの幅寸法wに等しく1070mmに調整される。従って、樹脂パウダーPを基材Fの表面に散布すれば、基材Fの幅寸法w1070mmに対して、有効に樹脂パウダーPを散布することができる。
【0031】
また、本発明では、シューター32の長手方向両端に拡張金具40を設けたが、一方側にのみ設けても良く、更に、拡張金具40の固定ポイントは、図6で示す閉鎖状態と、図7に示す開放状態の2形態であったが、ラチェット機構等、慣用の固定手段を用いることで、拡張金具40を多段階でロックできる構成も可能となり、基材Fの幅寸法wにより有効に対応することができる。尚、拡張金具40として、合成樹脂製の拡張具を使用しても良い。
【0032】
次いで、図8は本発明に係る散布装置30の変形例を示すもので、この変形例における散布装置30は、樹脂パウダーPを貯留するホッパー31及びホッパー31の下部に位置し、樹脂パウダーを散布するシューター32と、樹脂パウダーPの計量機構である溝入りローター34から構成される散布装置本体30Aに対してパウダー散布用開口33の開口幅寸法を可変する手段として、シューター32の長手方向端末側に別体の増設散布ユニット(振動式)60を付設する構成が採用されている。
【0033】
従って、この変形例によれば、樹脂パウダーPは、シューター32のパウダー散布用開口33から散布されるとともに、フィーダー61から増設散布ユニット(振動式)60に供給され、モーター35の回転と連動し、振動によるパウダーのふるい落としで樹脂パウダーPを均一に落下させることができる。そして、この変形例においては、シューター32内部にエアブロー機構50を不要とするため、シューター32内部の構造を簡素化することができる。
【0034】
上述した樹脂パウダーPの散布装置30を使用して、基材Fの一面に樹脂パウダーPを万遍なく付着させた後、図3に示す加熱炉21で加熱溶融させ、次いで、図9に示すように、基材Fと可撓性シートSとをプレス上下型70,71内に投入して、プレス上下型70,71を型締めすることで、図1に示す形状のインシュレータダッシュ10を所要形状に簡単に成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明した実施例は、インシュレータダッシュ10における吸音材層12の素材である基材Fにポリエチレン樹脂等の樹脂パウダーPを散布する散布方法並びに散布装置30に本発明を適用したが、加工対象としては、インシュレータダッシュ10に限定されることなく、基材Fに樹脂パウダーPを散布する散布装置30であれば、加工対象は特に限定されない。また、実施例で使用した散布装置30は、樹脂パウダーPの計量機構として、溝入りローター34の回転数に応じて所定量の樹脂パウダーPをシューター32側に移行させたが、回転駆動方式の溝入りローター構成以外のものも使用できる。
【符号の説明】
【0036】
10 インシュレータダッシュ
11 遮音材層
12 吸音材層
13 ダッシュパネル
20 テーブル
21 加熱炉
30 散布装置
31 ホッパー
32 シューター
33 パウダー散布用開口
34 溝入りローター
35 モーター
36,36a,36b プーリー
37 ベルト
40 拡張金具
41 蝶番
42,43 マグネット
44 固定ピン
50 エアブロー機構
51 ブロー管
52 スピコン
60 増設散布ユニット
61 樹脂パウダー供給フィーダー
70 プレス上型
71 プレス下型
F 基材
S 可撓性シート
P 樹脂パウダー
W(W1,W2) パウダー散布用開口の開口幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂パウダー(P)を貯留するホッパー(31)と、その下部に位置し、樹脂パウダー(P)を散布するシューター(32)と、双方の境界部分に設けられ、樹脂パウダー(P)を所定量計量できる計量機構(34)とを備えた散布装置(30)を使用して、シューター(32)の下端に設けたパウダー散布用開口(33)を通じて基材(F)の表面に樹脂パウダー(P)を散布する樹脂パウダー(P)の散布方法において、
前記シューター(32)の下面に設けたパウダー散布用開口(33)の開口幅寸法(W)を拡張可能とすることにより、パウダー散布有効幅寸法を可変させることで、散布対象となる基材(F)の幅寸法(w)を任意に設定できるようにしたことを特徴とする樹脂パウダーの散布方法。
【請求項2】
基材(F)の表面に樹脂パウダー(P)を散布する樹脂パウダーの散布装置(30)において、
前記パウダー散布装置(30)は、樹脂パウダー(P)を貯留するホッパー(31)と、ホッパー(31)の下部に位置し、樹脂パウダー(P)を散布するシューター(32)と、ホッパー(31)とシューター(32)との境界部分に収容され、所定量の樹脂パウダー(P)を計量でき、ホッパー(31)からシューター(32)側に所定量の樹脂パウダー(P)を供給する計量機構(34,35,36,37)と、シューター(32)の長手方向両端に取り付けられ、パウダー散布用開口(33)の開口幅寸法(W)を可変できる拡張具(40)と、シューター(32)内に内装されるエアブロー機構(50)とから構成されており、散布対象となる基材(F)の幅寸法(w)に応じて上記拡張具(40)を開閉操作して、パウダー散布用開口(33)の開口幅寸法(W)を調整できるようにしたことを特徴とする樹脂パウダーの散布装置。
【請求項3】
基材(F)の表面に樹脂パウダー(P)を散布する樹脂パウダー(P)の散布装置(30)において、
前記樹脂パウダー(P)を貯留するホッパー(31)と、ホッパー(31)の下部に位置し、樹脂パウダー(P)を散布するシューター(32)と、ホッパー(31)とシューター(32)との接合部に収容され、所定量の樹脂パウダー(P)を計量して供給する計量機構(34,35,36,37)とを備える散布装置本体(30A)と、シューター(32)の長手方向に沿って付設され、パウダー散布用開口(33)の開口幅寸法(W)を拡張させる別体の増設散布ユニット(60)とからなることを特徴とする樹脂パウダーの散布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−274556(P2010−274556A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130193(P2009−130193)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】