説明

樹脂パターンの形成方法

【課題】製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく形成可能な樹脂パターンの形成方法等の提供。
【解決手段】本発明の樹脂パターンの形成方法は、基体上に、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層を形成する樹脂固定層形成工程と、前記樹脂固定層上に、前記樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とを結合させて潜像を形成する潜像形成工程と、前記光が照射されていない領域における樹脂層を、物理的刺激により剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像する現像工程とを少なくとも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを簡便かつ効率的に形成可能な樹脂パターンの形成方法、特にIC、LSIなどの各種半導体上に形成されるオーバコート、バッファコート(保護膜)、及び、フリップチップ製品、MCM−D基板などの層間絶縁膜を形成するための樹脂パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体業界において、ICやLSIなどの超微細回路の作成、あるいは加工の必要なパッケージ中の絶縁膜や保護膜をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法(樹脂を構成する分子末端に感光性基を導入し、該樹脂を露光してパターン潜像を形成した後、現像液を用いてパターンを現像する方法)、ビアポスト法(予め導電材でビアポストを形成し、該ビアポスト上に絶縁樹脂材料を塗布した後、高低の差を利用し、研磨するなどにより表面を削り落として平坦化することにより、ビアポスト上部を露出する方法)などが一般的に挙げられる。また、CMP(Chemical Mechanical Polishing)や、切削法なども用いられている。これらの中でも、ポジ型フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ法は、比較的簡便な装置で高精度の樹脂パターンを得ることができるなどの様々な利点があり、上記半導体の微細回路、絶縁膜、保護膜などの製造に多用されている。
【0003】
しかし、前記フォトリソグラフィ法では、パターンの現像に有機溶媒などの専用の現像液が必要とされることから、コスト及び環境への負荷が大きいという問題がある。また、前記現像液により樹脂パターンが膨潤し、解像度の向上が充分に図れないという問題もある。
これらの問題を解決するため、ジアゾキノンなどを感光剤に用いたフェノールノボラック樹脂をベースとしたポジ型のフォトレジストが開発されている。この場合、現像液としてアルカリ水溶液を用いることができるため、環境面や処理コストにおいても優れるとともに、現像時の樹脂パターンの膨潤を抑制して、解像度に優れた樹脂パターンを得ることができる。
しかし、このようなアルカリ水溶液での現像が可能でかつ現像液で膨潤することのない特別な感光性樹脂を用いる必要があり、使用できる材料の選択性の幅が狭められたり、材料コストがかかるという問題がある。
【0004】
一方、ビアポスト法やCMPでは、研磨剤を必要としたり、過剰な研磨を防止するためのストッパ層などを設ける必要があり、製造プロセスやコストが増大する、ストッパ層形成時や研磨の応力に耐え得るような高い機械的強度が樹脂に求められる、という問題がある。
【0005】
また、光の照射により、基体上にパターンを形成する方法として、カップリング剤を用いた方法が開示されている(特許文献1〜4参照)。前記カップリング剤の中でも、シランカップリング剤が多用されている。該シランカップリング剤は、一分子中に有機官能基と加水分解基とを持ち、これにより、金属などの無機材料と樹脂などの有機材料とを結合し、材料の物理的強度や耐水性、接着性の向上を図ることができる。また、シランカップリング剤は、材料同士を結合するだけでなく、材料の疎水性などを向上させるための表面改質剤としての機能をも有する。
前記カップリング剤を用いたパターン形成方法は、具体的には、例えば、感光性基を有するノボラック樹脂を用いたポジ型レジストについて、樹脂の露光部分のみにシランカップリング剤を付着させて、樹脂にエッチング耐性を持たせ、シランカップリング剤の付着していない部分をエッチングしてパターンを形成する方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、この場合、シランカップリング剤により樹脂と基体との結合性を図ったものではないし、前記ノボラック樹脂のような特殊な樹脂に使用が限られている。
また、基体上に感光性樹脂組成物を塗布して第一の樹脂層を形成し、該第一の樹脂層上に、水溶性ポリマーからなる非感光性の樹脂組成物を塗布して第二の樹脂層を形成する際に、第一の樹脂層の表面状態を一定にし、第二の樹脂層として水溶性ポリマーを塗布する際のぬれ性を向上させるため、前記第一の樹脂層の表面にシランカップリング剤を塗布する方法が開示されている(特許文献2参照)。
しかし、この場合、カップリング剤は樹脂同士の接着性を高めるため、表面改質剤として用いられるものであり、性質の異なる基体と樹脂との結合性については何ら開示されておらず、パターンの形成方法としては、フォトリソグラフィ法が用いられている。
また、基板上に予め樹脂パターンを形成し、基体上の樹脂パターンの非形成部にシランカップリング剤を塗布した後、樹脂パターンを剥離して、基体上にシランカップリング剤の単分子膜パターンを形成する方法が開示されている(特許文献3参照)。
しかし、この場合、単分子膜パターンを形成するための方法であって、樹脂パターンは剥離されるため、保護膜、層間絶縁膜を形成する方法については何ら開示がない。
また、チオール系カップリング剤と金属との接着性を利用して、シリコン製、ガラス製などの基体上に金属製のパターンを形成する方法が開示されている(特許文献4参照)。
しかし、この場合も、金属パターンの形成方法であり、層間絶縁膜、保護膜としての樹脂パターンの形成方法については、何ら開示がない。
また、紫外線、電子線などの光の照射により、ラジカルを発生して前記カップリング剤などの官能基を開環させて、樹脂との結合性を持たせることが可能な感光性化合物も開示されている(非特許文献1参照)。
しかし、これらの感光性化合物を、樹脂パターンの形成方法に用いることは何ら開示がない。
【0006】
したがって、層間絶縁膜、保護膜などに用いられ、樹脂パターンの現像液による膨潤を抑制し、劣化の原因となる研磨などの強い物理的刺激が加わるプロセスや、高価な樹脂材料などを用いる必要がなく、使用可能な樹脂の選択性の幅を広くすることができ、微細かつ高精細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく形成可能な樹脂パターンの形成方法及びこれを用いた関連技術は、未だ提供されていないのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開平04−333219号公報
【特許文献2】特開平10−123693号公報
【特許文献3】特開平6−289627号公報
【特許文献4】特開2000−99930号公報
【非特許文献1】Chem.Mater.,Vol.9,No.7,1997 P1554〜P1561
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記現状に鑑みてなされたものであり、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、層間絶縁膜、保護膜などに用いられ、製造工程における現像液、研磨などの強い物理的刺激による樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、特殊で高価な樹脂材料などに限定されず、使用可能な樹脂の選択性の幅が広がり、微細かつ高精細な樹脂パターンを、低コストで簡便に効率よく形成可能で、しかも環境への負荷が小さい樹脂パターンの形成方法、及び該樹脂パターンの形成方法を用い、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細に形成した樹脂パターンを用いて形成した微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を効率的に量産可能な半導体装置の製造方法、及び該半導体装置の製造方法により製造され、微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、以下の知見を得た。即ち、光が照射されると樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物によって、光が照射された部分のみの樹脂と基体とを結合させてパターン潜像を形成した後、光が照射されていない領域における樹脂層を、超音波振動、溶媒噴射、気体噴射などの比較的小さな物理的刺激により剥離し除去することにより、微細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく得られるという知見である。
また、研磨やストッパ層形成のためのスパッタプロセスなど、樹脂に対して過大なストレスを与えるプロセスを必要としないため、樹脂にあまり高い機械的耐性を求める必要がなく、更には、感光性樹脂は勿論、非感光性樹脂を用いて樹脂パターンを形成することができるので、使用可能な材料の選択性の幅が広がるとともに、現像液を使用する必要がなく、環境への負荷を低減することが可能であるという知見である。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、後述する付記に列挙した通りである。即ち、
本発明は、基体上に樹脂のパターンを形成する樹脂パターンの形成方法であって、
前記基体上に、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層を形成する樹脂固定層形成工程と、
前記樹脂固定層上に、前記樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とを結合させて潜像を形成する潜像形成工程と、
前記光が照射されていない領域における樹脂層を、物理的刺激により剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像する現像工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする。
該樹脂パターンの形成方法において、前記樹脂固定層形成工程では、樹脂固定層と基体とが前記樹脂固定用化合物の官能基により結合される。前記樹脂層形成工程では、樹脂固定層上に、前記樹脂層が形成される。また、前記潜像形成工程では、前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とが結合して、潜像が形成される。その後の現像工程では、前記光が照射されていない領域における樹脂層が、物理的刺激により剥離し除去され、樹脂パターンが現像される。その結果、低コストで簡便に効率よく樹脂パターンが形成される。
該樹脂パターンは、現像液による膨潤や研磨などによる磨耗、劣化などがなく、誘電特性、機械特性、基体との密着性など、保護膜、層間絶縁膜としての特性に優れ、微細かつ高精細である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく形成可能な樹脂パターンの形成方法、及び該樹脂パターンの形成方法を用い、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細に形成した樹脂パターンを用いて形成した微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を効率的に量産可能な半導体装置の製造方法、及び該半導体装置の製造方法により製造され、微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(樹脂パターンの形成方法)
本発明の樹脂パターンの形成方法は、樹脂固定層形成工程と、樹脂層形成工程と、潜像形成工程と、現像工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じて、適宜選択したその他の工程を含む。
【0013】
<樹脂固定層形成工程>
前記樹脂固定層形成工程は、図1に示すように、基体1上に、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層2を形成する工程である。
また、前記樹脂固定層としては、光が照射されると樹脂固定用化合物における結合性基に樹脂との結合性を発現させる感光性化合物を含むのが好ましく、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含んでいてもよい。
前記樹脂固定層の形成方法としては、公知の方法、例えば、前記樹脂固定用化合物、必要に応じて、前記感光性化合物、その他成分からなる樹脂固定層用組成物を適宜の溶媒中に溶解した塗布液を、前記基体上に塗布し乾燥する方法、などが挙げられる。
【0014】
−基体−
前記基体としては、特に制限はなく、その材料、形状、構造、厚みなどについては公知のものの中から適宜選択することができるが、前記樹脂パターンが絶縁膜として前記基体上に形成されて用いられる場合には、絶縁性を有する基板が好ましい。
【0015】
前記絶縁性を有する基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、樹脂基板であるのが好ましく、例えば、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、フッ素樹脂基板、セラミック基板、銅張積層板、RCC(Resin Coated Copper Foil:樹脂付銅箔)基板などが挙げられる。
【0016】
また、前記樹脂パターンが、半導体装置等の電子デバイスに形成される場合には、該基体としては、半導体基材表面が挙げられ、具体的には、シリコンウェハー等の基板、各種酸化膜などが好適に挙げられる。
【0017】
−樹脂固定用化合物−
前記樹脂固定用化合物としては、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記樹脂固定用化合物としては、例えば、g線、i線、紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、電子線等でパターニング可能な化合物が好ましく、これらの中でも、紫外線でパターニング可能な化合物が最も好ましい。
前記結合性基としては、例えば、アジド基、ジアゾ基、シンナモイル基、ビニル基、エポキシ基などが好適に挙げられる。これらの中でも、光の照射により樹脂との結合性を発現可能なアジド基、ジアゾ基、シンナモイル基が好適に挙げられる。
前記官能基としては、例えば、SiR(OR)3−nで表される基が好ましい。ただし、該式中、Rは、アルキル基を表し、nは、0から3の整数を表す。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。
前記nとしては、0が好ましく、よって、前記官能基としては、Si(OR)で表される基が好ましい。具体的には、Si(OCHで表されるメトキシ基が好ましい。また、Si(OC、SiCH(OCHも好ましい。
前記樹脂固定用化合物としては、具体的には、例えば、[2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシルエチル)]トリメトキシシラン、1−トリメトキシシリル(3,4−シクロヘキセン)、1−トリメトキシシリル(3−アジドシクロヘキサン)、1−トリメトキシシリルシンナミリデン酢酸ビニル、1−トリメトキシシリルアクリル酸エステル、などが挙げられる。
【0018】
−感光性化合物−
前記感光性化合物は、光が照射されると樹脂固定用化合物における結合性基に樹脂との結合性を発現させることが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アジド基、ジアゾ基、及びシンナモイル基から選択される少なくとも1種を含む化合物が好ましく、これらの中でも、有機ハロゲン化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アジド化合物、及び重クロム酸塩から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。
前記有機ハロゲン化合物しては、m−ブロモジアゾベンゼン、m−クロロジアゾベンゼン、m−ヨードジアゾベンゼンなどが好適に挙げられる。
前記芳香族ジアゾニウム塩としては、ヨウ化ジフェニルジアゾニウム塩、塩化ジフェニルジアゾニウム塩、臭化ジフェニルジアゾニウム塩、などが好適に挙げられる。
前記芳香族アジド化合物としては、1−トリメトキシシリル(3−アジドシクロヘキサン)、などが好適に挙げられる。
前記重クロム酸塩としては、重クロム酸アンモニウム、などが好適に挙げられる。
【0019】
−塗布−
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、スピンコート法などが好適に挙げられる。該スピンコート法の場合、その回転数としては、100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間としては、1秒〜10分間程度であり、1秒〜90秒間が好ましい。
前記塗布の際の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記塗布の際乃至その後で、塗布した前記樹脂固定層用組成物をベーク(加温及び乾燥)するのが好ましく、その条件、方法などとしては、前記樹脂固定層を軟化させない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その温度としては、40〜150℃程度が好ましく、80〜120℃がより好ましく、また、その時間としては、10秒〜5分間程度が好ましく、30〜90秒間がより好ましい。
【0020】
前記塗布により、加水分解された前記樹脂固定用化合物の官能基が、前記基体表面と結合し、該基体と前記樹脂固定層とが密着する。
【0021】
−−溶媒−−
前記少なくとも樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層用組成物は、前記溶媒に溶解されてなるのが好ましい。この場合、前記樹脂固定層用組成物を塗布液として使用することができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、塗布溶媒として一般的に使用されている、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルエタノールアミン、及びアセトン・炭化水素系溶剤、などが挙げられる。これらの中でも、コスト及び環境への負荷を低減することができる点で、水が好ましい。
前記水は、中性であるのが好ましく、該水のpHとしては、例えば、4〜10が好ましい。該pHが、4未満であると、溶液全体が酸性に傾くため前記樹脂固定層用組成物の反応が露光しなくても進み、該樹脂固定層用組成物の保存安定性に影響を及ぼすことがあり、10を超えると、反応性が低下し、露光感度が低下することがある。
【0022】
<樹脂層形成工程>
前記樹脂固定層形成工程は、前記樹脂固定層形成工程により形成された樹脂固定層上に、樹脂を含む樹脂層を形成する工程である。
前記樹脂層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば、前記樹脂を溶融し、前記樹脂固定層上に塗布し固化させる方法、前記樹脂を少なくとも含む樹脂組成物を溶媒中に溶解した塗布液を、前記樹脂固定層上に塗布し乾燥する方法、樹脂フィルムを前記樹脂固定層上に、加熱及び加圧の少なくともいずれかの下で積層する方法、などが挙げられる。
【0023】
−樹脂層−
前記樹脂層としては、少なくとも樹脂を含み、必要に応じて適宜選択したその他の成分を含む。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。本発明の樹脂パターンの形成方法では、前記樹脂固定層の結合力により前記基体と前記樹脂層とを結合し、樹脂パターンを形成するので、感光性樹脂に限定されることがなく、非感光性樹脂をも用いることができので、使用可能な樹脂の選択性の幅を広げることができる。
【0024】
−−非感光性樹脂−−
前記非感光性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂(ポリアミック酸)、ポリベンゾオキサゾール樹脂、シアネートエステル樹脂、オレフィン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエステル樹脂、などが好適に挙げられる。これらの中でも、汎用性及び反応性に優れる点で、エポキシ樹脂が、特に好適に挙げられる。
前記非感光性樹脂を用いた場合、樹脂に感光性基を導入する必要がなく、製造コストの低減が可能となるとともに、得られる樹脂パターンは誘電特性や機械特性に特に優れるものとなる。
【0025】
−塗布−
該塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の塗布方法の中から適宜選択することができ、例えば、スピンコート法などが好適に挙げられる。該スピンコート法の場合、その回転数としては、100〜10,000rpm程度であり、800〜5,000rpmが好ましく、時間としては、1秒〜10分間程度であり、1秒〜90秒間が好ましい。
前記塗布の際の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記塗布の際乃至その後で、塗布した前記樹脂組成物をベーク(加温及び乾燥)するのが好ましく、その条件、方法などとしては、前記樹脂層を軟化させない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、その温度としては、40〜150℃程度が好ましく、80〜120℃がより好ましく、また、その時間としては、10秒〜5分間程度が好ましく、30〜90秒間がより好ましい。
【0026】
−−溶媒−−
前記少なくとも樹脂を含む樹脂組成物は、前記溶媒に溶解されてなるのが好ましい。この場合、前記樹脂組成物を塗布液として使用することができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、塗布溶媒として一般的に使用されている、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルエタノールアミン、及びアセトン・炭化水素系溶剤、などが挙げられる。これらの中でも、コスト及び環境への負荷を低減することができる点で、水が好ましい。
前記水は、中性であるのが好ましく、該水のpHとしては、例えば、4〜10が好ましい。該pHが、4未満であると、溶液全体が酸性に傾くため前記樹脂組成物が感光性樹脂を含む場合は、その反応が露光しなくても進み、該樹脂組成物の保存安定性に影響を及ぼすことがあり、10を超えると、反応性が低下し、露光感度が低下することがある。
【0027】
−加熱−
前記樹脂を加熱する際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50〜400℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。
前記樹脂がフィルム状の場合、加圧形成することもできる。その際の圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.5〜3MPaが好ましい。
【0028】
前記加熱を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、クリーンオーブン、ホットプレートなどにより行うことができる。
前記加圧を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、真空ラミネータ装置などにより行うことができる。
【0029】
<潜像形成工程>
前記潜像形成工程は、前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とを結合させて、パターン潜像を形成する工程である。
前記光の照射は、公知の露光装置などにより好適に行うことができる。また、前記光の照射としては、紫外線により行われるのが好ましい。
前記光の像様の照射(以下、露光と称することがある)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、図3に示すように、フォトマスク4を用いて、矢印で示すように光を照射して行ってもよいし、マスクレスで行ってもよい。
前記光の照射により、前記樹脂固定層の樹脂固定用化合物の結合性基が、樹脂との結合性を発現し、該結合性基と樹脂の官能基などが結合し、該光が照射された領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とが化学的に結合して(図3に示す結合部5)、パターン潜像が形成される。
また、前期樹脂固定層が、前記感光性化合物を含む場合、光の照射により、該感光性化合物がラジカルを生じて、前記樹脂固定用化合物の結合性基に作用し、該結合性基に樹脂との結合性を発現させる。
例えば、前記樹脂固定層が、感光性化合物として有機ハロゲン化合物を含み、前記樹脂との結合性基としてエポキシ基を有する樹脂固定用化合物を含む場合、光の照射により前記感光性化合物が加水分解してラジカルを生じ、前記樹脂固定用化合物のエポキシ基を開環させることにより、該エポキシ基が樹脂の官能基と重合などにより結合して、樹脂層と樹脂固定層とが結合し、光を照射した領域において、樹脂層に潜像が形成される。
【0030】
<現像工程>
前記現像工程は、前記光が照射されていない領域における樹脂層を、物理的刺激により剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像する工程である。
前記光が照射されていない領域における樹脂層、即ち、前記基体と結合していない領域の樹脂層の除去方法としては、物理的刺激により行うものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂層に超音波振動を付与して除去する方法、樹脂層に溶媒を噴射して除去する方法、などが挙げられる。
前記現像工程を行うことにより、前記光が照射されていない領域の樹脂層が破断されて除去され、樹脂パターンが形成(現像)される。
前記現像工程では、現像液や、研磨などの強い物理的刺激を用いることなく、現像することが可能となり、樹脂の膨潤を抑制でき、樹脂に過大なストレスを与えるプロセスを必要とせず、微細で高精細な樹脂パターンを簡便かつ効率的に現像することができ、しかも環境への負荷も小さくすることができる。
【0031】
前記現像工程は、溶媒中で行うのが好ましく、前記超音波振動などの物理的刺激を樹脂層に付与し易く、また、物理的刺激により破断した樹脂層の破片を、基体上から効率的に除去することができる。また、溶媒噴射に用いる溶媒も、現像工程を行う溶媒と同じものを用いるのが好ましい。
前記溶媒としては、樹脂層を溶解することのないものを使用するのが好ましく、例えば、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルエタノールアミン、アセトン・炭化水素系溶剤、などが好適に挙げられる。これらの中でも、環境への負荷が小さく、廃液処理のコストが低減できることから、水を用いるのが特に好ましい。
これらの溶媒を用いることにより、樹脂パターンの膨潤が生じることがなく、処理コストを低減し、環境への負荷を小さくすることができる。
【0032】
本発明の樹脂パターンの形成方法によると、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを簡便かつ効率的に形成することができるので、例えば、マスクパターン、レチクルパターン、磁気ヘッド、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)等の機能部品、光配線の接続に利用される光部品、マイクロアクチュエータ等の微細部品、半導体装置の製造に好適に適用することができ、本発明の半導体装置の製造方法に好適に用いることができる。
【0033】
(半導体装置及びその製造方法)
本発明の半導体装置は、本発明の半導体装置の製造方法により得られる。
本発明の半導体装置の製造方法は、樹脂パターン形成工程と、パターニング工程とを少なくとも含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程を含む。
【0034】
<樹脂パターン形成工程>
前記樹脂パターン形成工程は、本発明の前記パターンの形成方法を用いて、被加工表面上に樹脂パターンを形成する工程である。該樹脂パターン形成工程により、前記被加工表面上に樹脂パターンが形成される。
該樹脂パターン形成工程における詳細は、本発明の前記樹脂パターンの形成方法と同様である。
なお、前記被加工表面としては、半導体装置における各種部材の表面層が挙げられるが、シリコンウェハー等の基板乃至その表面、各種酸化膜などが好適に挙げられる。前記樹脂パターンは上述した通りである。
【0035】
<パターニング工程>
前記パターニング工程は、前記樹脂パターンをマスクとして用いて(マスクパターンなどとして用いて)、エッチングにより前記被加工表面をパターニングする工程である。
前記エッチングの方法としては、特に制限はなく、公知の方法の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ドライエッチングが好適に挙げられる。該エッチングの条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂パターン剥離工程などが挙げられる。
前記樹脂パターン剥離工程は、前記パターニング工程の後、前記樹脂パターンを剥離する工程であり、例えば、剥離液を用いて行うことができる。
【0037】
前記剥離液としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、アルカリ水溶液が好適に挙げられる。該アルカリ水溶液を用いると、有機アミン、有機溶媒等を用いた一般的な剥離液に比して、コスト及び環境への負荷を低減することができるだけでなく、前記樹脂パターンを容易に剥離することができる。特に、パターン現像に従来の現像液を使う必要がないので、形成された樹脂パターンに現像液への耐性を持たせる必要がなく、前記アルカリ水溶液で容易に剥離することができる点で有利である。
前記アルカリ水溶液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水酸化テトラメチルアンモニウム溶液等のアルカリ現像液などをそのまま使用することができるが、前記アルカリ水溶液のpHとしては、13以上であるのが好ましい。
前記pHが13未満であると、前記樹脂パターンの剥離に長時間を要することがある。
【0038】
本発明の半導体装置の製造方法によると、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、剥離時はアルカリ水溶液などで容易に剥離除去することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを簡便かつ効率的に形成可能であり、該樹脂パターンを用いて形成した微細な配線パターンを有する高性能な半導体装置、例えば、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、などを効率的に量産することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
<パターン形成材料の作製>
−樹脂固定層の形成−
紫外線非存在下、イソプロパノール(IPA)1L中に、樹脂固定用化合物として、Huls America製[2−(3,4−エポキシ−シクロヘキシルエチル)]トリメトキシシラン(結合性基としてエポキシ基を有し、官能基としてメトキシ基を有する樹脂固定用化合物)0.1mol、及び感光性化合物として、m−ブロモジアゾベンゼン(有機ハロゲン化合物)0.01molを溶解させた。該溶解液に、水50mlを混合し、よく攪拌することで、シラン部分を加水分解させ、樹脂固定層用組成物(塗布液)を調製した。
【0041】
前記で得られた樹脂固定層用組成物の塗布液を、シリコンウェハー(基体)上にスピンコーターで塗布し(回転数:4,000rpm、時間:60秒間)、乾燥することにより、前記基体上に、厚み1μmの樹脂固定層を形成した。
【0042】
−樹脂層の形成−
前記樹脂固定層上に、HDマイクロシステムズ製の非感光性低誘電率ポリイミド樹脂 PI1111(ワニス1kg当たり1万円、誘電率:2.6)をスピンコーターで塗布し(回転数:2,500rpm、時間:60秒間)、ホットプレートにて130℃で5分間乾燥することにより、前記基体上に、厚み5μmの実施例1のパターン形成材料を作製した。
【0043】
<樹脂パターン形成>
−潜像形成工程−
前記で得られたパターン形成材料の樹脂層に、テストパターン形成(ビア及び配線)用マスクを通して紫外線(i線及びg線の混合)を、500mJ/cm照射することで、該光の照射領域の樹脂固定層中の樹脂固定化合物の結合性基と、樹脂層中のポリイミド樹脂とを反応させ、樹脂固定層と樹脂層とを結合させて潜像を得た。
【0044】
−現像工程−
次に、前記樹脂層に潜像が形成されたシリコンウェハーをIPA中に浸漬し、カイジョー製超音波洗浄器フェニックスシリーズ(38kHzFM)を用いて、樹脂層に超音波を5分間照射した後、IPAで10秒間リンスし、樹脂パターンを現像した。
【0045】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた樹脂パターンを、断面観察により測定したところ、解像度3μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、ピール試験により測定したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0046】
(実施例2)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、Ardrich製1−トリメトキシシリル(3,4−シクロヘキセン)(結合性基としてビニル基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用い、前記感光性化合物として、ヨウ化ジフェニル塩(芳香族ジアゾニウム塩)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。
次いで、実施例1において、樹脂として、住友ベークライト社製の非感光性ポリベンゾオキサゾール CRC−X7511(ワニス1kg当たり3万円、誘電率:2.6)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層を形成し、実施例2のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0047】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例2の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度3μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、Ardrich製1−トリメトキシシリル(3−アジドシクロヘキサン)(結合性基としてアジド基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用い、前記感光性化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。
次いで、実施例1において、樹脂として、JSR社製の非感光性エポキシ樹脂 JLV−100(ワニス1kg当たり3万円、誘電率:3.4)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂層を形成し、実施例3のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0049】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例3の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度3μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0050】
(実施例4)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、1−トリメトキシシリルシンナミリデン酢酸ビニル(結合性基としてシンナモイル基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用い、前記感光性化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。
次いで、日立化成工業社製の非感光性シアネートエステル樹脂 MCL−EX−77Gフィルムを、真空ラミネータにて前記樹脂固定層上にラミネートした後(温度:150℃、圧力:0.8MPa)、130℃で4分間乾燥して、厚み約50μmの樹脂層を形成し、実施例4のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0051】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例4の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度50μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0052】
(実施例5)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、1−トリメトキシシリルアクリル酸エステル(結合性基としてジアゾ基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用い、前記感光性化合物として、重クロム酸アンモニウム(重クロム酸塩)0.001molを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。
次いで、実施例1において、住友ベークライト社製のベンゾシクロブテン樹脂 APL−4901フィルムを、真空ラミネータにて前記樹脂固定層上にラミネートした後、130℃で4分間乾燥して、厚み約50μmの樹脂層を形成し、実施例5のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0053】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例5の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度50μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0054】
(実施例6)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、1−トリメトキシシリルアクリル酸エステル(結合性基としてジアゾ基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。なお、前記感光性化合物として、実施例1と同様に、m−ブロモジアゾベンゼン(有機ハロゲン化合物)を用いた。
次いで、実施例1において、日本ゼオン社製の非感光性オレフィン樹脂 ZCOAT1000(ワニス1kg当たり5万円、誘電率:2.5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層を形成し、実施例6のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0055】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例6の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度5μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0056】
(実施例7)
実施例1において、樹脂固定用化合物として、1−トリメトキシシリルアクリル酸エステル(結合性基としてジアゾ基を有し、官能基としてメトキシ基を有する化合物)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、前記樹脂固定層を形成した。なお、前記感光性化合物として、実施例1と同様に、m−ブロモジアゾベンゼン(有機ハロゲン化合物)を用いた。
次いで、実施例1において、住友化学社製の非感光性ポリエステル樹脂 エスフレックスVF(ワニス1kg当たり5万円、誘電率:2.9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層を形成し、実施例7のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0057】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例7の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度5μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0058】
(実施例8)
実施例1と同様にして形成したパターン形成材料を用い、下記のような溶媒噴射により現像を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例8の樹脂パターンを形成した。
−現像工程―
IPA中に、前記潜像が形成されたシリコンウェハーを浸漬し、樹脂層にIPAを噴射圧10MPaで2分間噴射した後、IPAで10秒間リンスし、樹脂パターンを形成した。
【0059】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例8の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度5μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約50MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0060】
(実施例9)
実施例1と同様の樹脂固定層用組成物を用いて、実施例1と同様にして、シリコンウェハー上に、樹脂固定層を形成した。
次いで、実施例1において、住友ベークライト製の感光性ポリベンゾオキサゾール樹脂 CRC−8300(ワニス1kg当たり10万円、誘電率:3.2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層を形成し、実施例9のパターン形成材料を作製した。
得られたパターン形成材料に対して、実施例1と同様の樹脂パターンの形成方法を用いて、樹脂パターンを形成した。
【0061】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた実施例9の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、解像度5μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約50MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0062】
(比較例1)
<パターン形成材料の作製>
住友ベークライト製の感光性ポリベンゾオキサゾール樹脂 CRC−8300(ワニス1kg当たり10万円、誘電率:3.2)をシリコンウェハー(基体)上にスピンコーターを用いて塗布した後、ホットプレートにて120℃で4分間乾燥し、厚み約5μmの樹脂層を得た。
【0063】
<樹脂パターン形成>
−潜像形成工程−
テストパターン形成(ビア及び配線)用マスクを通して、g線ステッパにより436nmの光を、50〜500mJ/cm照射し、樹脂層に潜像を形成した。
【0064】
−現像工程−
前記で樹脂層に潜像が形成されたシリコンウェハーを、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38質量%水溶液からなる現像液を用いて、60秒間パドル法により、非硬化領域を溶解除去した後、脱イオン水で10秒間リンスした。
【0065】
<解像度及び密着力の評価>
前記で得られた比較例1の樹脂パターンについて、実施例1と同様にして解像度を評価したところ、露光量150〜500mJ/cmで照射した領域に、解像度4μmの樹脂パターンが成形されていることが確認できた。
また、前記基板と樹脂パターンとの密着強度を、実施例1と同様にして評価したところ、約40MPa程度と十分な密着力を保っていた。
【0066】
実施例1〜9及び比較例1の結果より、本発明の樹脂パターンの形成方法で形成された樹脂パターンは、従来の現像液を用いた樹脂パターンの形成方法で形成された樹脂パターンと、同等の解像度及び基体との密着力を有することが判った。
また、本発明の樹脂パターンの形成方法では、有機溶媒などからなる現像液を使用せずに、微細で高精細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく形成でき、しかも、環境への負荷を低減できることが判った。更に、感光性樹脂だけでなく、非感光性樹脂を用いても、微細で高精細な樹脂パターンを形成でき、使用する樹脂の選択性の幅が広がり、低コストで簡便に効率よく樹脂パターンが得られることが判った。
【0067】
また、本発明の樹脂パターンの形成方法を、半導体ウェハーレベルパッケージ再配線用に利用したところ、層間および層内で1012Ω/mの高い絶縁信頼性を保ち、かつ1ミクロンレベルの微細な配線を形成することができ、動作上問題のないデバイスを作製することができた。
【0068】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 基体上に樹脂のパターンを形成する樹脂パターンの形成方法であって、
前記基体上に、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層を形成する樹脂固定層形成工程と、
前記樹脂固定層上に、前記樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とを結合させて潜像を形成する潜像形成工程と、
前記光が照射されていない領域における樹脂層を、物理的刺激により剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像する現像工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする樹脂パターンの形成方法。
(付記2) 樹脂が、非感光性樹脂である付記1に記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記3) 非感光性樹脂が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、シアネートエステル樹脂、オレフィン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される1種を少なくとも含む付記2に記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記4) 樹脂固定層が、光が照射されると樹脂固定用化合物における結合性基に樹脂との結合性を発現させる感光性化合物を含む付記1から3のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記5) 感光性化合物が、アジド基、ジアゾ基、及びシンナモイル基から選択される少なくとも1種を含む付記4に記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記6) 感光性化合物が、有機ハロゲン化合物、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アジド化合物、及び重クロム酸塩から選択される少なくとも1種である付記5に記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記7) 樹脂固定用化合物が、ビニル基、及びエポキシ基から選択される少なくとも1種を含む付記1から6のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記8) 基体と結合可能な官能基が、SiR(OR)3−n(ただし、Rは、アルキル基を表し、nは、0から3の整数を表す)で表される付記1から7のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記9) 現像工程が、水、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジメチルエタノールアミン、及びアセトン・炭化水素系溶剤から選択される少なくとも1種からなる溶媒中で行われる付記1から8のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記10) 物理的刺激が、超音波振動、及び溶媒の噴射から選択されるいずれかである付記1から9のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記11) 光の照射が、紫外線により行われる付記1から10のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
(付記12) 付記1から11のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法により被加工表面に樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターンをマスクとしてエッチングにより前記被加工表面をパターニングするパターニング工程とを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記13) 付記12に記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の樹脂パターンの形成方法は、製造工程における樹脂パターンの膨潤や劣化などを抑制することができ、使用可能な樹脂の選択性の幅が広く、微細かつ高精細な樹脂パターンを低コストで簡便に効率よく形成可能で、しかも環境への負荷が小さいので、例えば、マスクパターン、レチクルパターン、磁気ヘッド、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、SAWフィルタ(弾性表面波フィルタ)等の機能部品、光配線の接続に利用される光部品、マイクロアクチュエータ等の微細部品、半導体装置の製造に好適に適用することができ、本発明の半導体装置の製造方法に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置の製造方法は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、等を初めとする各種半導体装置、特に本発明の半導体装置の製造に好適に用いることができる。
本発明の半導体装置は、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、等を初めとする各種半導体装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の樹脂パターンの形成方法の一例を示すための概略図であり、樹脂固定層形成工程により、基体上に、樹脂固定用化合物を少なくとも含む樹脂固定層を形成した状態を表す図である。
【図2】図2は、本発明の樹脂パターンの形成方法の一例を示すための概略図であり、樹脂層形成工程により、樹脂固定層上に、樹脂を少なくとも含む樹脂層を形成した状態を表す図である。
【図3】図3は、本発明の樹脂パターンの形成方法の一例を示すための概略図であり、潜像形成工程により、樹脂層に光を照射して、樹脂層に潜像を形成した状態を表す図である。
【図4】図4は、本発明の樹脂パターンの形成方法の一例を示すための概略図であり、現像工程により、光が照射されていない領域における樹脂層を、超音波振動を付与して剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像した状態を表す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 基体
2 樹脂固定層
3 樹脂層
4 フォトマスク
5 結合部
6 樹脂パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に樹脂のパターンを形成する樹脂パターンの形成方法であって、
前記基体上に、光が照射されると前記樹脂と結合可能となる結合性基と、前記基体の表面と結合可能な官能基とを少なくとも有する樹脂固定用化合物を含む樹脂固定層を形成する樹脂固定層形成工程と、
前記樹脂固定層上に、前記樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層に光を像様に照射することにより、該光を照射した領域の前記樹脂固定層と前記樹脂層とを結合させて潜像を形成する潜像形成工程と、
前記光が照射されていない領域における樹脂層を、物理的刺激により剥離し除去することにより、樹脂パターンを現像する現像工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする樹脂パターンの形成方法。
【請求項2】
樹脂が、非感光性樹脂である請求項1に記載の樹脂パターンの形成方法。
【請求項3】
非感光性樹脂が、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、シアネートエステル樹脂、オレフィン樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される1種を少なくとも含む請求項2に記載の樹脂パターンの形成方法。
【請求項4】
樹脂固定層が、光が照射されると樹脂固定用化合物における結合性基に樹脂との結合性を発現させる感光性化合物を含み、該感光性化合物が、アジド基、ジアゾ基、及びシンナモイル基から選択される少なくとも1種を含む請求項1から3のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。
【請求項5】
基体と結合可能な官能基が、SiR(OR)3−n(ただし、Rは、アルキル基を表し、nは、0から3の整数を表す)で表される請求項1から4のいずれかに記載の樹脂パターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−256345(P2007−256345A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77175(P2006−77175)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】