説明

樹脂付着装置

【課題】繊維表面に付着した瞬間の樹脂の粘度上昇を抑制し、噴射された樹脂を繊維へ含浸させ易くすることができる樹脂付着装置を提供する。
【解決手段】樹脂付着装置60は、走行装置11のローラ11aと液滴噴射装置10の第1ヘッド20との間に予熱装置50と温度検出手段である温度センサ44とを備えている。熱源体43から発生する熱により予熱ガイド41の表面が温められる。そして、温められた予熱ガイド41の表面に接触している繊維1が温められる。制御部55は、温度制御手段により、温度センサ44からの検出信号に基づいて熱源体43のオン/オフを制御し、樹脂付着前の繊維1が、所定の表面温度に維持されるように予熱装置50を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は樹脂付着装置に関し、特にフィラメントワインディング成形において繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は、例えばカーボン繊維に液状の樹脂を含浸させて製造される軽量で強度の高い複合材料である。この繊維強化プラスチックの成形法の1つに、パイプ状や円筒状の管状製品を製造するのに適したフィラメントワインディング成形(以下、「FW成形」と称する)がある。FW成形は、ロービングを1から数10本引き揃え、樹脂を含浸させながら回転金型(マンドレル)に所定の厚さまでテンションを掛けて所定の角度で巻き付け、樹脂が硬化した後脱型する成形法である。
【0003】
FW成形において、繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置として、ローラ方式の樹脂付着装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。ローラ方式の樹脂付着装置は、ローラの下部を樹脂槽に溜められた樹脂に浸した状態で、回転するローラの上部に接触するように繊維を走行させて、繊維に樹脂を付着させる装置である。FW成形においては、生産性を向上させることが重要であるところ、ローラ方式の樹脂付着装置では、処理速度を上げすぎると、回転ローラの表面に十分な量の樹脂が付着せず、その結果、繊維にも十分な樹脂が付着しない。つまり、処理速度を上げすぎると繊維への樹脂の付着ムラが生じるため、処理速度には限界がある。
【0004】
一方、樹脂付着の処理速度を向上させることができる液滴噴射方式の樹脂付着装置がある。この液滴噴射方式の樹脂付着装置は、走行する繊維に向かって樹脂を噴射して繊維に樹脂を付着させる装置である。繊維の走行速度に合わせて樹脂の噴射量の微調整を行うことができるため、処理速度を上げても繊維に対する樹脂の付着ムラが発生しにくくなっている。液滴噴射方式の樹脂付着装置は、樹脂を噴射する複数のノズルを有する液滴噴射装置と、ノズルと所定の対向間隔をあけて繊維を走行させる走行装置とを備えている。液滴噴射方式では、例えば、主剤と硬化剤とに分かれた2液硬化タイプの樹脂が使用され、主剤と硬化剤が各々別のノズルから交互に噴射される。そして、繊維の表面あるいは繊維の内部で主剤と硬化剤とが混合して樹脂は硬化する。又、液滴の形状や噴射量を安定させて繊維への樹脂の付着あるいは含浸を安定させるために、樹脂の粘度が低くなるように噴射前の樹脂を予熱することもある。
【特許文献1】特開2007−185827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような液滴噴射方式の樹脂付着装置では、気温の影響等で樹脂付着前の繊維の表面温度が低くなっている場合に、樹脂の粘度が低くなるように噴射前の樹脂を予熱しても、噴射された樹脂が繊維表面に付着した瞬間に、樹脂の熱が繊維に奪われ樹脂の粘度が低くなり、繊維への樹脂の付着あるいは含浸が安定しないおそれがある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、繊維表面に付着した瞬間の樹脂の粘度上昇を抑制し、噴射された樹脂を繊維へ含浸させ易くすることができる樹脂付着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、フィラメントワインディング成形において繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置であって、繊維に向かって樹脂を噴射する複数のノズルを有する液滴噴射装置と、ノズルと所定の対向間隔をあけて繊維を走行させる走行装置と、液滴噴射装置より繊維の走行方向の上流側に設置され、走行する繊維の表面を所定温度に予熱する予熱装置とを備えたものである。
【0008】
このように構成すると、樹脂が繊維に付着した瞬間に樹脂の熱が繊維に奪われにくくなる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、予熱装置と液滴噴射装置との間に設置され、繊維の表面温度を検出する温度検出手段と、検出された温度に基づいて、繊維の表面温度が所定温度に維持されるように予熱装置を制御する温度制御手段とを更に備えたものである。
【0010】
このように構成すると、樹脂付着前の繊維の表面温度が所望の温度で一定となる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明の構成において、予熱装置は、走行する繊維の表面に接触しながら繊維の表面を所定温度に予熱するものである。
【0012】
このように構成すると、予熱装置から発生する熱が繊維の表面に直接伝導する。
【0013】
第4の発明は、第1又は第2の発明の構成において、走行装置は、液滴噴射装置より走行方向の上流側に配置される第1ローラと、液滴噴射装置より走行方向の下流側に配置される第2ローラとを含み、第1ローラが予熱装置を構成するものである。
【0014】
このように構成すると、走行装置の一部と予熱装置が兼用され、部品点数が削減される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、第1の発明は、樹脂が繊維に付着した瞬間に樹脂の熱が繊維に奪われにくくなるため、繊維表面に付着した瞬間の樹脂の粘度上昇を抑制し、樹脂を繊維に含浸させ易くすることができる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の効果に加えて、樹脂付着前の繊維の表面温度が所望の温度で一定となるため、繊維への樹脂の含浸状態を安定させることができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明の効果に加えて、予熱装置から発生する熱が繊維の表面に直接伝導するため、繊維の表面を効率的に予熱させることができる。
【0018】
第4の発明は、第1又は第2の発明の効果に加えて、走行装置の一部と予熱装置が兼用され、部品点数が削減されるため、樹脂噴射装置全体の部品構成を簡略化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0020】
図1は、この発明の第1の実施の形態による樹脂付着装置が適用されるのフィラメントワインディング装置の概略構成を示した斜視図である。図2は図1で示した樹脂付着装置において、液滴噴射装置を中心とした概略構成を示した側面図である。図3は図2で示した液滴噴射装置の概略構成を示した断面図である。
【0021】
図1を参照して、フィラメントワインディング装置(以下、「FW装置」と称する)40は、走行するカーボン繊維等の繊維1に樹脂を噴射して付着させ、繊維強化プラスチック製品を製造する装置である。FW装置40は、繊維1の走行方向上流側から、繊維1が巻かれたボビン6と、ボビン6から送られてくる繊維1を解舒する解舒装置2と、繊維1に所定のテンションを付与するテンション装置3と、繊維1に樹脂を付着させる樹脂付着装置60と、繊維1をトラバースさせるトラバース装置5と、繊維1が巻きつけられるマンドレル7とを備えている。繊維1は、対向する1対のフラット面を有するテープ状に形成されている。繊維1は、樹脂付着装置60により樹脂付着装置60側の面に樹脂が付着され、トラバース装置5によりトラバースされながら、マンドレル7に巻き付けられる。
【0022】
図2も併せて参照して、樹脂付着装置60は、液滴噴射方式により繊維1の表面に向かって樹脂を噴射する複数のノズル29a及び29bを有する液滴噴射装置10と、ノズル29a及び29bと所定の対向間隔をあけて繊維1を走行させる走行装置11と、走行する繊維1の表面を所定温度に予熱する予熱装置50とを備えている。繊維1に付着させる樹脂は、2液硬化タイプの樹脂で、主剤12と硬化剤15とが別々に繊維1の表面に向かって噴射され、その後に主剤12と硬化剤15とが混合して繊維1に付着及び含浸して硬化するものである。
【0023】
走行装置11は、液滴噴射装置10より繊維1の走行方向上流側に配置される第1ローラであるローラ11aと、液滴噴射装置10より繊維1の走行方向下流側に配置される第2ローラであるローラ11bを備えている。ローラ11a及び11bはフリーローラであり、繊維1の走行はマンドレル7の回転により行われる。但し、ローラ11a及び11bを駆動ローラとして繊維1を走行させてもよい。
【0024】
予熱装置50は、繊維1の表面を所定温度に予熱する予熱ガイド41と、予熱ガイド41の繊維1への接触によって屈曲した繊維1の走行経路を元の走行経路に戻す経路調整ガイド42とを備えている。元の走行経路とは、ローラ11a及び11bのみによって形成される、複数のノズル29a及び29bの先端がなす面と平行に繊維1が走行する経路である。予熱装置50の詳細については後述する。
【0025】
液滴噴射装置10は、主剤12が充填された主剤タンク13と、主剤12噴射用の複数のノズル29aを有する第1ヘッド20と、主剤タンク13から第1ヘッド20へ主剤12を供給する第1経路14を備えている。同様に、液滴噴射装置10は、硬化剤15が充填された硬化剤タンク16、硬化剤15噴射用の複数のノズル29bを有する第2ヘッド21及び第2経路17を備えている。第1ヘッド20及び第2ヘッド21は、各々3つずつ構成され、繊維1の走行方向に沿って交互に配置されている。第1経路14及び第2経路17は、金属製又は樹脂製の管等から形成され、これらには、主剤12や硬化剤15の流量をコントロールするための電磁弁やポンプを設けることができる。
【0026】
図3を参照して、第1ヘッド20は、第1経路14から供給された主剤12を受ける1つの接続室26と、接続室26に接続して接続室26から供給された主剤12が貯留される1つの貯留室27と、貯留室27から分岐して接続される複数の圧力室28とを備えている。圧力室28の各々には、主剤12の噴射口となるノズル29aが形成されている。第1ヘッド20は、電圧により伸縮するピエゾ素子30を圧力室28に対する圧力発生源とするものであり、圧力室28の各々の隔壁には、ピエゾ素子30により振動される振動板31が設置されている。ピエゾ素子30の伸縮を受けて、図3の2点鎖線で示したように振動板31が下方に膨らむように凸状に変形すると、圧力室28内の体積が減少し、これにより第1ヘッド20の下面に開口するノズル29aから、ピコリットルオーダーの所定量の液滴からなる主剤12が繊維1の上面に向かって噴射される。この状態から図3に実線で示したように振動板31がフラットに戻ると、圧力室28内の体積が増加し、貯留室27から圧力室28へ主剤12が供給される。
【0027】
接続室26には、主剤12を加熱して、これを所定温度(例えば、40〜100℃の一定温度)に維持するための熱線33と、接続室26内の温度を検出する図示しない温度センサとが設けられている。温度センサにより検出された接続室26内の温度を、予め設定されているしきい値と比較して、この比較結果に基づいて熱線33をオン・オフ制御することで、主剤12を所定温度(例えば、80℃以上)に保つ。噴射前の主剤12を所定温度に予熱することによって、主剤12の粘度が低くなるようにしている。主剤12の粘度が低くなれば、液滴の形状や噴射量が安定し、繊維1への主剤12の付着あるいは含浸を安定させることができる。第2ヘッド21も、主剤12に替えて硬化剤15が噴射される点以外は、第1ヘッド20と同一に構成されている。なお、ノズル29bは、硬化剤15の噴射口となるノズルである。
【0028】
上記のように構成される第1ヘッド20及び第2ヘッド21から、走行する繊維1の表面に向かって、所定温度に予熱された主剤12と硬化剤15が交互に噴射され、繊維1の表面あるいは繊維1の内部で主剤12と硬化剤15とが混合して樹脂は硬化する。
【0029】
次に、上述した予熱装置50の詳細について説明する。
【0030】
図4は、図1で示した樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図であり、図5は図4で示したV−Vラインから見た図である。
【0031】
図4及び図5を参照して、樹脂付着装置60は、走行装置11のローラ11aと液滴噴射装置10の第1ヘッド20との間に予熱装置50と温度検出手段である温度センサ44とを備えている。予熱装置50は、上述したように予熱ガイド41と経路調整ガイド42とを備え、液滴噴射装置10より繊維1の走行方向の上流側かつ、液滴噴射装置10の近傍に設置されている。温度センサ44は、上記のように設置される予熱装置50と液滴噴射装置10との間に設置されている。予熱ガイド41は、例えば熱伝導性のよいアルミ製からなり円筒状に形成されると共に電熱ヒータ等の熱源体43が内蔵されている。経路調整ガイド42は、外形が円柱状に形成さている。そして、熱源体43と温度センサ44とは制御部55を介して電気的に接続されている。尚、制御部55は、走行装置11、トラバース装置5、液滴噴射装置10の作動等、FW装置40の全体を制御する。
【0032】
液滴噴射装置10部分の繊維1に対して液滴噴射装置10が配置されている側を上方とすれば、繊維1は、ローラ11aの下方を走行し、予熱ガイド41の上方を走行し、次に経路調整ガイド42と下方を走行する。予熱ガイド41及び経路調整ガイド42は、繊維1の走行に合わせて、従動的に回転する。予熱ガイド41は、予熱ガイド41の表面が繊維1の下方側の表面に接触するように繊維1の元の経路より上方に少し突出した位置に配置されている。経路調整ガイド42は、予熱ガイド41によって屈曲した繊維1の走行経路を元の走行経路に戻すように、経路調整ガイド42及びローラ11aの最下部における繊維1の接触部の位置が整列するように配置されている。繊維1は、経路調整ガイド42により、ノズル29a及び29bの先端と、ローラ11a及び11bのみによって形成される対向間隔と同一の対向間隔をあけて走行する。
【0033】
制御部55からの指令信号に基づいて熱源体43が作動すると、熱源体43から発生する熱により予熱ガイド41の表面が温められる。そして、温められた予熱ガイド41の表面に接触している繊維1が温められる。予熱ガイド41の熱が繊維1に移動することにより、繊維1は接触している側の表面から内部を介して反対側の表面まで温められる。制御部55は、温度制御手段により、温度センサ44からの検出信号に基づいて熱源体43のオン/オフを制御し、樹脂付着前の繊維1が、所定の表面温度に維持されるように予熱装置50を制御する。具体的には、温度センサ44によって検出される繊維1の表面温度が、上記所定の表面温度より高くなれば、熱源体43を停止させ、上記所定の表面温度より低くなれば、熱源体43を作動させる。このようにして、液滴噴射装置10による樹脂付着前に、繊維1の表面温度が上記所定の表面温度に維持されるように予熱される。繊維1に対する上記所定の表面温度は、例えば、上述した予熱により粘度を低くさせた噴射前の主剤12や硬化剤15の温度と同一に設定される。
【0034】
上記のように構成される樹脂付着装置60では、樹脂噴射前の繊維1が、気温の高低に関わらず予熱装置50により予熱されて所定の表面温度に維持されているため、液滴噴射装置10による噴射により樹脂が繊維1に付着した瞬間に樹脂の熱が繊維1に奪われにくくなる。そのため、繊維1の表面に付着した瞬間の樹脂の粘度上昇が抑制され、樹脂を繊維1に含浸させ易くすることができる。又、樹脂付着前の繊維1は温度制御手段により所望の表面温度で一定となるため、繊維1への樹脂の含浸状態を安定させることができる。更に、予熱ガイド41は繊維1に接触して設置されている。よって、予熱装置50から発生する熱が繊維1の表面に直接伝導するため、繊維1の表面を効率的に予熱させることができる。更に、予熱装置50は、液滴噴射装置10より繊維1の走行方向の上流側かつ、液滴噴射装置10の近傍に設置されているため、予熱された直後の繊維1に樹脂が噴射される。そのため、繊維1の温度が、気温等の影響により予熱から樹脂が噴射されるまでの間に低下しにくくなり、繊維1の表面を更に効率的に予熱させることができる。
【0035】
図6は、この発明の第2の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図であり、先の第1の実施の形態による図4に対応した図である。図7は図6で示したVII−VIIラインから見た図であり、先の第1の実施の形態による図5に対応した図である。基本的な構成は第1の実施の形態による樹脂付着装置60と共通するので異なる点を中心に説明する。
【0036】
図6及び図7を参照して、第1の実施の形態による樹脂付着装置60では、1つの繊維1に対して熱源体43を内蔵した1つの予熱ガイド41を使用していたが、第2の実施の形態による樹脂付着装置61では、複数の繊維1に対して1つの予熱ガイド45を使用して予熱ガイド45とは別に熱源体46を設けている。予熱装置51は、例えばアルミ製からなる断面円形の細長い棒状を有する予熱ガイド45と、予熱ガイド45とは別に外部にもうけられた熱源体46と、予熱ガイド45と熱源体46とを連結する連結部材47とを備えている。予熱ガイド45は、同一の平面に走行経路を形成し走行方向を平行にして並んで配置される複数の繊維1の各々を架け渡すように配置されている。予熱ガイド45は、ローラ11aと経路調整ガイド42との間に配置され、予熱ガイド41と同様に、予熱ガイド45の表面が繊維1の各々の表面に接触するように繊維1の元の経路より少し突出した位置に配置されている。予熱ガイド45は回転せず、予熱ガイド45の表面を繊維1が摺動しながら走行する。予熱ガイド45の一方端には、熱伝導性のよい連結部材47を介して熱源体46が接続されている。又、温度センサ44が複数の繊維1のうちの1つに設置され、熱源体46及び温度センサ44が制御部55と電気的に接続されている。
【0037】
制御部55からの指令信号に基づいて熱源体46が作動すると、熱源体46から発生する熱により連結部材47を介して予熱ガイド45の表面が温められる。そして、温められた予熱ガイド45の表面に接触している繊維1が温められる。予熱ガイド45の熱が繊維1に移動することにより、繊維1は接触している側の表面から内部を介して反対側の表面まで温められる。1つの予熱ガイド45により複数の繊維1が同時に温められる。樹脂付着装置61でも、樹脂付着装置60同様に、温度センサ44からの検出信号に基づいて熱源体46のオン/オフを制御し、繊維1の表面温度が所定温度に維持されるように制御部55の温度制御手段により予熱装置51が制御される。
【0038】
上記のように構成される樹脂付着装置61では、1つの熱源体46を使用して複数の繊維1を同時に予熱することができるため、繊維1の表面を効率的に予熱させることができる。又、熱源体46や温度センサ44が複数の繊維1の製造ラインに対して兼用されるため、部品点数が削減され、効率的な樹脂付着装置とすることができる。
【0039】
図8は、この発明の第3の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図であり、先の第1の実施の形態による図4に対応した図である。基本的な構成は第1の実施の形態による樹脂付着装置60と共通するので異なる点を中心に説明する。
【0040】
図8を参照して、第1の実施の形態による樹脂付着装置60では、予熱ガイド41と経路調整ガイド42からなる予熱装置50を構成していたが、第3の実施の形態による樹脂付着装置62では、予熱装置50に代えて、空気熱を利用して繊維1を予熱する予熱装置52を構成している。予熱装置52は、6面を断熱壁で覆われた箱型形状に形成され、ローラ11aと液滴噴射装置10との間で、1対の対向する断熱壁の中心を繊維1が貫通するように配置されている。予熱装置52の内部には、図示しない高温空気供給手段により、高温の空気が充填されている。予熱装置52が、温度センサ44も含めて制御部55と電気的に接続されている。尚、1つの予熱装置52に複数の繊維1を通過させてもよい。
【0041】
繊維1が上記予熱装置52内を樹脂付着前に通過すると、繊維1は高温の空気により温められる。予熱装置52の大きさや予熱装置52を通過する時間は、繊維1の走行速度、予熱装置52に供給される空気の温度、気温及び予熱温度等により決定される。樹脂付着装置62でも、樹脂付着装置60同様に、温度センサ44からの検出信号に基づいて予熱装置52内の空気温度を制御し、繊維1の表面温度が所定温度に維持されるように制御部55の温度制御手段により予熱装置52が制御される。
【0042】
上記のように構成される樹脂付着装置62では、予熱装置52自体が繊維1と接触していないため、予熱装置52によって繊維1の走行経路は屈曲しない。よって、樹脂付着装置60における経路調整ガイド42のように、繊維1の走行経路を元の走行経路に戻す部材が不要となる。したがって、樹脂付着装置62の部品構成を簡略化させることができる。又、予熱装置52は繊維1と接触していないため、磨耗等による部品の消耗も回避することができ、樹脂付着装置62のメンテナンス性を向上させることができる。
【0043】
図9は、この発明の第4の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図であり、先の第1の実施の形態による図4に対応した図である。基本的な構成は第1の実施の形態による樹脂付着装置60と共通するので異なる点を中心に説明する。
【0044】
図9を参照して、第1の実施の形態による樹脂付着装置60では、予熱ガイド41と経路調整ガイド42からなる予熱装置50を構成していたが、第4の実施の形態による樹脂付着装置63では、予熱装置50に代えて、走行装置11の第1ローラであるローラ11aが予熱装置53を構成している。ローラ11aには第1の実施の形態における予熱ガイド41と同様に熱源体49が内蔵されている。熱源体49が、温度センサ44も含めて制御部55と電気的に接続されている。
【0045】
制御部55からの指令信号に基づいて熱源体49が作動すると、熱源体49から発生する熱によりローラ11aの表面が温められる。そして、温められたローラ11aの表面に接触している繊維1が温められる。制御部55は、温度制御手段により、温度センサ44からの検出信号に基づいて熱源体49のオン/オフを制御し、樹脂付着前の繊維1が、所定の表面温度に維持されるように予熱装置53を制御する。
【0046】
上記のように構成される樹脂付着装置63では、走行装置11の一部であるローラ11aと予熱装置53が兼用され、部品点数が削減される。したがって、樹脂付着装置63の部品構成を簡略化させることができる。又、樹脂付着装置63全体の大きさを小さくすることができる。
【0047】
尚、上記の第1の実施の形態では、予熱ガイドは円筒状に形成され、繊維の走行に従動して回転させているが、繊維を予熱することができれば、予熱ガイドは回転させなくてもよい。又、予熱ガイドを回転させない場合は、摺動により繊維を問題となる程度に損傷させなければ、予熱ガイドは他の形状に形成されてもよい。
【0048】
又、上記の第1の実施の形態では、1つの繊維に対して1つの予熱ガイドが設置されているが、複数の繊維に対して1つの予熱ガイドが設置されてもよい。
【0049】
更に、上記の第2の実施の形態では、予熱ガイドが円柱状に形成され、回転させていないが、回転させてもよい。又、予熱ガイドを回転させない場合は、摺動により繊維を問題となる程度に損傷させなければ、予熱ガイドは他の形状に形成されてもよい。
【0050】
更に、上記の第2の実施の形態では、同一平面を走行する複数の繊維を同時に予熱しているが、予熱ガイドの形状を屈曲させたり複数の予熱ガイドを接続したりして、立体的に走行する複数の繊維を同時に予熱してもよい。
【0051】
更に、上記の各実施の形態では、温度検出手段と温度制御手段とを備えているが、繊維を予熱して繊維への樹脂の含浸を安定させることができれば、温度検出手段と温度制御手段とは備えていなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の第1の実施の形態による樹脂付着装置が適用されるのフィラメントワインディング装置の概略構成を示した斜視図である。
【図2】図1で示した樹脂付着装置において、液滴噴射装置を中心とした概略構成を示した側面図である。
【図3】図2で示した液滴噴射装置の概略構成を示した断面図である。
【図4】図1で示した樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図である。
【図5】図4で示したV−Vラインから見た図である。
【図6】この発明の第2の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図である。
【図7】図6で示したVII−VIIラインから見た図である。
【図8】この発明の第3の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図である。
【図9】この発明の第4の実施の形態による樹脂付着装置において、予熱装置を中心とした概略構成を示した側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 繊維
10 液滴噴射装置
11 走行装置
11a,11b ローラ
29a,29b ノズル
44 温度センサ
50,51,52,53 予熱装置
60,61,62,63 樹脂付着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントワインディング成形において繊維に樹脂を付着させる樹脂付着装置であって、
前記繊維に向かって前記樹脂を噴射する複数のノズルを有する液滴噴射装置と、
前記ノズルと所定の対向間隔をあけて前記繊維を走行させる走行装置と、
前記液滴噴射装置より前記繊維の走行方向の上流側に設置され、走行する前記繊維の表面を所定温度に予熱する予熱装置とを備えた、樹脂付着装置。
【請求項2】
前記予熱装置と前記液滴噴射装置との間に設置され、前記繊維の表面温度を検出する温度検出手段と、
前記検出された温度に基づいて、前記繊維の表面温度が前記所定温度に維持されるように前記予熱装置を制御する温度制御手段とを更に備えた、請求項1記載の樹脂付着装置。
【請求項3】
前記予熱装置は、走行する前記繊維の表面に接触しながら前記繊維の表面を前記所定温度に予熱する、請求項1又は請求項2記載の樹脂付着装置。
【請求項4】
前記走行装置は、前記液滴噴射装置より前記走行方向の上流側に配置される第1ローラと、前記液滴噴射装置より前記走行方向の下流側に配置される第2ローラとを含み、
前記第1ローラが前記予熱装置を構成する、請求項1又は請求項2記載の樹脂付着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−126055(P2009−126055A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303337(P2007−303337)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】