説明

樹脂成形カバー及びこれを用いてなる自動車用樹脂成形アンダーカバー

【課題】吸音材を用いることなく、防音性能に優れた軽量な樹脂成形カバー及びこれを用いてなる自動車用樹脂成形アンダーカバーを提供する。
【解決手段】エンジン10から発生し、樹脂成形カバー1に向かって放射される騒音は内壁面2の多数の突起部3の空洞層3bによって吸音される。また、騒音は表面3aに当たって乱反射するので、それぞれの反射音が干渉して打ち消し合い効果的に騒音が低減される。さらにエンジン10からの騒音は複数隣接する円柱状若しくは三角柱状等の突起部3間の対向表面間において多重反射若しくは反復反射することによって、減衰される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、産業機械、建築防音用資材等に適用され、特には自動車のエンジンの下側に設けられ、エンジンを保護するエンジン用アンダーカバーに用いられる樹脂成形カバー及びこれを用いてなる自動車用樹脂成形アンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示す様に、自動車のエンジン10の下側にはエンジン10を飛石等から保護するエンジン用樹脂成形アンダーカバー20が設けられる。このエンジン用樹脂成形アンダーカバー20は車体下部における空気の流れを整流して空気抵抗を低下することによって燃料効率の増大を図ると共にエンジンの騒音を低減する遮音機能を備えるように従来から各種の検討が行われている。
【0003】
特許文献1は3層構造の加熱発泡圧縮成形により整流機能と遮音機能に優れた複合体である自動車用アンダーカバーを開示した。
【0004】
特許文献2は耐熱性、強度、遮熱性、遮音性、吸音性を兼ね備えた軽量樹脂成形品とその効率的製造方法である自動車エンジンルーム内用軽量樹脂成形品及びその製造方法を開示した。
【0005】
特許文献3は中実の小突起又は小窪みを設けて反射音を干渉させ騒音を低減するエンジン用アンダーカバーを開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−247203号公報
【特許文献2】特開2000−257442号公報
【特許文献3】特開2001−010544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の自動車用アンダーカバーでは、多層の異種材料を用いた異種材料の複合化製品であり、生産性が悪くコスト増となる。
特許文献2の自動車エンジンルーム内用軽量樹脂成形品およびその製造方法では、エンジンと対向して特には整流機能を有する必要がない内面側における騒音の減衰機能の検討が不十分である。
特許文献3のエンジン用アンダーカバーは中実の突起形状で防音構造を形成するので重量が重くなる。また窪みで防音部を形成するには十分な厚みが必要となる為やはり製品重量が重くなる。
【0008】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、吸音材を用いることなく、防音性能に優れた軽量な樹脂成形カバー及びこれを用いてなる自動車用樹脂成形アンダーカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明の樹脂成形カバーは、本体平板部と一体に複数の突起部を設けてなり、前記突起部は防水表面と、1以上の空洞を有する空洞層を一体に有してなることを特徴とする。
【0010】
前記突起部が発泡成形により本体平板部と一体に形成され、前記空洞層が発泡層であるようにすることができる。
【0011】
前記本体平板部が発泡成形により形成され、前記突起部が膨張成形により前記本体平板部と一体に形成され、前記空洞層が膨張成形によって形成される空洞層であるようにすることができる。
【0012】
前記突起部が複数の平面とその複数の平面が角部を介して連続する表面形状を有するようにすることができる。斯かる表面形状は少なくとも一部に平面を有する円柱状若しくは三角柱状等であり、全体が曲面である半球状は除かれる。
【0013】
本発明の自動車エンジン用アンダーカバーは、本発明の樹脂成形カバーを自動車に搭載されたエンジンの下側に配置してなり、前記樹脂成形カバーは、前記エンジンに対向する側面にのみ前記複数の突起部を有することを特徴とする。
[作用]
【0014】
樹脂に発泡剤を混入させ、気泡を混ぜた樹脂を成形する発泡成形によれば既存の成形機や金型設備で成形が可能となる。また発泡倍率を1.01〜1.05とする低発泡、発泡倍率を1.05〜1.50とする中発泡、発泡倍率を1.50〜 3.00とする高発泡等をカバーの対象の特性に応じて選択することができる。また発泡領域を必要に応じて制御することができる。
【0015】
膨張成形は、ポリプロピレン等の樹脂に長いガラス繊維を充填して金型に射出した後、金型をコアバックさせことによって、金型内部の樹脂が繊維のスプリングバックによって膨張して成形される。射出膨張成形で製作した成形体は、材料表面間をガラス繊維が支えて剛性が向上するため、軽くて強度のある樹脂部品の成形が可能となる。
また材料内部は、複雑に絡み合ったガラス繊維により構成され、連続した空洞であるため、特定の周波数で高い吸音効果を得ることができる。その吸音率や吸音ピークの周波数は、孔経、開孔率、膨張倍率、表面層の厚みを変えることによってカバーの対象の特性に応じて選択することができる。
この膨張成形を前述の発泡成形と、組み合わせて適用することによって全体の発泡倍率若しくは膨張率を10まで上げることができる。
【0016】
本発明の樹脂成形カバーは、斯かる発泡成形及び/又は膨張成形によって本体平板部と一体に防水表面と、1以上の空洞を有する空洞層を一体に有する複数の突起部を設けてなる。
前記突起部は、射出成形時に、発泡成形もしくは、部分膨張成形で形成されるので、防水効果のある表面の内部に防音効果の大きい空洞層を有し、しかも騒音の形状表面での反射による減衰と、内部空洞層での吸収によりカバーする対象の特性に応じて高い吸音性能を実現することができる。また、斯かる樹脂成形カバーは射出成形によって1プロセスで成形できるので生産性が良く、低コストとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂成形カバー及びこれを用いてなる自動車用樹脂成形アンダーカバーは、防音性能に優れかつ軽量であり吸音材を用いることなく安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態の樹脂成形カバーの斜視図である。
【図2】図1に示す樹脂成形アンダーカバーの部分拡大平面図である。
【図3】(a)本発明の樹脂成形カバーの他の実施の形態としてのエンジン用樹脂成形アンダーカバーの模式図である。(b)本発明の樹脂成形カバーのさらに他の実施の形態としてのエンジン用樹脂成形アンダーカバーの模式図である。
【図4】従来のエンジン用樹脂成形アンダーカバーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態の樹脂成形カバー1は例えば図4に示す自動車のエンジン10を飛石等から保護するエンジン用樹脂成形アンダーカバー20として適用することがでる。この様にエンジン用樹脂成形アンダーカバー20として適用する場合には樹脂成形カバー1は本体平板部1aのエンジン10に対向する側面である内壁面2のみに多数の突起部3を一体に有する。樹脂成形カバー1の他側面(図示せず)は流通するエアに対する円滑な整流機能を保持する。
【0020】
図2に示すように突起部3は、樹脂射出成形時に、発泡成形もしくは、部分膨張成形で形成される。その表面3aはそれ自体が防水機能を備える平滑平面とされ、1以上の空洞(図示せず)を有する空洞層3bはそれ自体が騒音の振動を減衰する防音機能を備える。
突起部3は、図3(a)に示すように円柱状とすることができ、図3(b)に示すように三角柱状とすることもできる。この様に突起部3の表面3aは複数の平面とその複数の平面が角部を介して連続する表面形状を有する。
なお、図1では樹脂成形カバー1の突起部3は内壁面2の一部に設けた例が示されるが、内壁面2の多様な領域に設けるのが好ましく特には水平面だけでなく、傾斜面に設けることも可能である。
【0021】
本実施の形態の樹脂成形カバー1ではエンジン用樹脂成形アンダーカバー20として適用する場合には、エンジン10から発生し、樹脂成形カバー1に向かって放射される騒音は内壁面2の多数の突起部3の空洞層3bによって吸音される。また、騒音は表面3aに当たって乱反射するので、それぞれの反射音が干渉して打ち消し合い効果的に騒音が低減される。さらにエンジン10からの騒音は複数隣接する円柱状若しくは三角柱状等の突起部3間の対向表面間において多重反射若しくは反復反射することによって、減衰される。
この様に樹脂成形カバー1は複数隣接する突起部3表面3a間における乱反射及び多重反射若しくは反復反射と空洞層3bにおける騒音減衰機能を併せ持つ。
【実施例1】
【0022】
図1に示す樹脂成形カバー1をPP樹脂材料に発泡剤を4部添加して、射出膨張成形で製造した。その樹脂成形カバー1の一部に図2に示す態様で口(縦横)径15mm×高さ5mmの中空ボス形状の9つの突起部3を一体に形成した。
この樹脂成形カバー1では9つの突起部3を有しない場合に比し、音圧が0.2〜1.4dB下がり、特定ピーク周波数では、1.2〜2.9dB下げる効果があった。
【0023】
なお以上の実施の形態及び実施例では本発明の樹脂成形カバーをエンジン用樹脂成形アンダーカバーとして適用した場合について説明したが、その他に本発明の樹脂成形カバーは自動車、産業機械、建築防音用資材、高速道路の遮音壁等の遮蔽によって防音する必要のある各種対象を遮蔽するカバーとして用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
1・・・樹脂成形カバー、2・・・内壁面、3・・・突起部、3a・・・表面、3b・・・内部発泡層、10・・・エンジン、20・・・エンジン用樹脂成形アンダーカバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体平板部と一体に複数の突起部を設けてなり、前記突起部は防水表面と、1以上の空洞を有する空洞層を一体に有してなることを特徴とする樹脂成形カバー。
【請求項2】
前記突起部が発泡成形により本体平板部と一体に形成され、前記空洞層が発泡層である請求項1記載の樹脂成形カバー。
【請求項3】
前記本体平板部が発泡成形により形成され、前記突起部が膨張成形により前記本体平板部と一体に形成され、前記空洞層が膨張成形によって形成される空洞層である請求項1記載の樹脂成形カバー。
【請求項4】
前記突起部が複数の平面とその複数の平面が角部を介して連続する表面形状を有する請求項1〜請求項3のいずれか一に記載の樹脂成形カバー。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の樹脂成形カバーを自動車に搭載されたエンジンの下側に配置してなり、前記樹脂成形カバーは、前記エンジンに対向する側面にのみ前記複数の突起部を有することを特徴とする自動車エンジン用アンダーカバー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−110880(P2011−110880A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271159(P2009−271159)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(391006083)三光合成株式会社 (67)
【Fターム(参考)】