説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】流動性およびリサイクル性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)分岐状ポリマー、低分子量直鎖状ポリエステル、低分子量直鎖状ポリカーボネート、芳香族系低分子化合物、アクリル系化合物から選択される少なくとも1種の流動性改良剤を0.01〜50重量部を配合してなる樹脂組成物であって、(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を1個以上含むことが好ましく、(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれた1種以上であることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものであり、詳しくは、流動性およびリサイクル性に優れ、好ましい態様においては、機械特性および耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂であるポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂またはポリカーボネート樹脂などは、優れた成形性を有し、機械特性、耐衝撃性および耐熱性にも優れるため、各種容器、フィルム、電気・電子部品などに幅広く使用されており、ポリエステル樹脂では、特に、自動車や電気・電子機器のコネクター、リレー、スイッチなどの工業用成形品の材料として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、近年では、各種工業用成形品の小型化および軽量化に伴う成形品薄肉化が必要とされており、使用される材料として、さらなる流動性の向上が求められている。また、材料を繰り返し使用できるようなリサイクル性も必要とされており、流動性およびリサイクル性を併せもつ材料が強く求められている。
【0004】
特許文献1には、流動性改良のため超分岐ポリマーを用いる樹脂組成物が記載されており、ある程度の流動性改良効果を有するものの、リサイクル性は不十分であり、繰り返し使用することが難しいという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、特定の熱可塑性樹脂と特定の少なくとも3つの官能基を有する化合物の組み合わせを溶融混合する流動性改良方法が記載されているが、流動性改良効果はまだ不十分であり、かつ機械物性も低下する傾向にあるため、さらなる改善が必要であった。
【0006】
また、特許文献3には、3価以上の多価カルボン酸または多価アルコールを有する溶融張力が0.8〜5.0gのポリエステル樹脂が記載されているが、得られるポリエステル樹脂は増粘してしまい、流動性が低下するという問題があった。
【特許文献1】特表2005−513186号公報(第1−2頁)
【特許文献2】特開平7−304970号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2001−200038号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、流動性およびリサイクル性に優れ、好ましい態様においては、機械特性および耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)分岐状ポリマー、低分子量直鎖状ポリエステル、低分子量直鎖状ポリカーボネート、芳香族系低分子化合物またはアクリル系化合物から選択される少なくとも1種の流動性改良剤を0.01〜50重量部配合してなる樹脂組成物、
(2)(B)3個以上の官能基を有する化合物が、3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の少なくとも1個が式(1)で表される構造である化合物である(1)に記載の樹脂組成物、
−(O−R)n−X (1)
(Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数を表し、Xは、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択される少なくとも1種の官能基を表す。)
(3)(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を1個以上含むことを特徴とする(1)に記載の樹脂組成物、
(4)(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(5)(B)3個以上の官能基を有する化合物の官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択される少なくとも1種の基である(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(6)さらに(D)末端封鎖剤を配合してなる(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(7)さらに(E)充填剤を配合してなる(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(8)さらに(F)耐衝撃性改良剤を配合してなる(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物、
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流動性およびリサイクル性に優れ、好ましい態様においては、機械特性および耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いる(A)熱可塑性樹脂は、溶融成形可能な樹脂であればいずれでもよく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、アクリロニトリル・ブタンジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂およびポリエーテルイミド樹脂などが挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。中でも、耐熱性、成形性、流動性および機械特性の点で、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂およびポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂がより好ましく、ポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれた少なくとも1種以上であることがさらに好ましい。また、これらは1種でもよく、2種以上を併用しポリマーアロイとして用いてもよいが、耐久性、外観性、硬度および機械物性など種々の特性が優れるという点で、2種以上を併用することが好ましい。なお、本発明においては、このように2種以上の樹脂からなるポリマーアロイ(厳密には樹脂組成物)も「樹脂」と称する。
【0012】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂とは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体である。
【0013】
上記ジカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0014】
また、上記ジオールあるいはそのエステル形成性誘導体としては、炭素数2〜20の脂肪族グリコールすなわち、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、芳香族ジオキシ化合物すなわち、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFおよびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0015】
ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンイソフタレート、ポリへキシレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケートなどの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンオキサレート、ポリプロピレンオキサレート、ポリブチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルグリコールアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリエチレンサクシネート/アジペート、ポリプロピレンサクシネート/アジペート、ポリブチレンサクシネート/アジペートなどの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0016】
また、上記ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸およびこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0017】
また、上記ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられ、これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン、ポリカプロラクトン/バレロラクトンなどが挙げられる。
【0018】
これらの中で、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましく、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がより好ましく、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールから選ばれる脂肪族ジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体がさらに好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。
【0019】
本発明において、上記ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体中の全ジカルボン酸に対するテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
また、本発明において、流動性、機械物性の点で、2種類以上のポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0021】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、特に限定されないが、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下であることがより好ましく、20eq/t以下であることがさらに好ましく、15eq/t以下であることが特に好ましく、10eq/t以下であることが最も好ましい。下限は0eq/tである。なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
【0022】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂のビニル末端基量は、特に限定されないが、色調および流動性の点で、15eq/t以下であることが好ましく、10eq/t以下であることがより好ましく、5eq/t以下であることがさらに好ましい。下限は、0eq/tである。なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のビニル末端基量は、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いて、1H−NMRにより測定した値である。
【0023】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂のヒドロキシル末端基量は、特に限定されないが、成形性および流動性の点で、50eq/t以上であることが好ましく、80eq/t以上であることがより好ましく、100eq/t以上であることがさらに好ましく、120eq/t以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、180eq/tである。なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のヒドロキシル末端基量は、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒を用いて、1H−NMRにより測定した値である。
【0024】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂の粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.50dl/gの範囲であることがより好ましい。
【0025】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂の分子量は、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)8000〜500000の範囲であることが好ましく、8000〜300000の範囲であることがより好ましく、8000〜250000の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、ポリエステル樹脂のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0026】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができ、バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができるが、カルボキシル末端基量を少なくすることができ、かつ、流動性および耐加水分解性向上効果が大きくなるという点で、連続重合が好ましく、コストの点で、直接重合が好ましい。
【0027】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂であり、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体ないしは共重合体である場合には、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造することができる。なお、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に重合反応触媒を添加することが好ましく、重合反応触媒の具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどの有機チタン化合物、ジブチルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキシド、シクロヘキサヘキシルジスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、トリエチルスズハイドロオキシド、トリフェニルスズハイドロオキシド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキシド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などのスズ化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物、三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられるが、これらの内でも有機チタン化合物およびスズ化合物が好ましく、さらに、チタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましい。これらの重合反応触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。重合反応触媒の添加量は、機械特性、成形性および色調の点で、ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.005〜0.5重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.2重量部の範囲がより好ましい。
【0028】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、ポリカーボネート樹脂とは、ビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料とするポリカーボネートである。中でもビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。
【0029】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のエステル交換反応、ホスゲン法または二酸化炭素を利用する方法などにより製造することができる。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネート樹脂が好ましい。さらに、上記ビスフェノールAは、これと共重合可能なその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどと併用することも可能であり、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂である場合、ポリカーボネート樹脂の重合度は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃で測定したときの比粘度が0.1〜2.0、特に0.5〜1.5の範囲にあるものが好適であり、さらには0.8〜1.5の範囲にあるものが最も好ましい。
【0031】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である場合、ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0032】
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。なかでも好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12、およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができ、更にこれらのポリアミド樹脂を耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0033】
本発明で使用する(A)熱可塑性樹脂が、ポリアミド樹脂である場合、ポリアミド樹脂の重合度は、特に限定されないが、試料濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
【0034】
本発明において、(A)熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂と液晶性樹脂を併用する場合には、流動性を低下させることがあり、好ましくない。
【0035】
本発明で用いる(A)熱可塑性樹脂の融点は、特に限定されないが、耐熱性の点で、120℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定したときに検出されるピークトップの値である。
【0036】
本発明で用いる(A)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、特に限定されないが、耐熱性の点で、10℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、140℃以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、本発明において、(A)熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定したときに検出されるガラス転移が行われる温度範囲のほぼ中間点である中間点ガラス転移温度である。
【0037】
本発明においては、(B)3個以上の官能基を有する化合物を配合することを特徴とする。 本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物は、本発明の樹脂組成物の流動性を向上させるために必要な成分である。(B)成分としては、分子中に3個以上の官能基を有するものであれば特に限定されず、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。また、(B)成分としては、3官能性化合物、4官能性化合物および5官能性化合物などの3個以上の官能基を有する化合物であれば、いずれでもよいが、流動性および機械物性が優れるという点で、3官能性化合物または4官能性化合物であることがより好ましく、4官能性化合物であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明において、流動性および機械特性に優れるという点で、(B)成分としては、(B)3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の少なくとも1個が式(1)で表される構造である化合物であることが好ましく、特に流動性および機械特性に優れるという点で、(B)成分が、(B)3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の2個以上が式(1)で表される構造である化合物であることがより好ましく、(B)成分中の官能基を有する末端構造の3個以上が式(1)で表される構造である化合物であることがさらに好ましく、(B)成分中の官能基を有する末端構造の全てが式(1)で表される構造である化合物であることが最も好ましい。
−(O−R)n−X (1)
【0039】
ここで、Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数を表し、Xは、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択される少なくとも1種の官能基を表す。
本発明においては、流動性、リサイクル性、耐久性および機械物性などが優れるという点で、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜7の整数を表し、Xは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択される少なくとも1種の官能基を表すことが好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜5の整数を表し、Xは、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、エステル基から選択される少なくとも1種の官能基を表すことがより好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜4の整数を表し、Xは、水酸基、アミノ基、グリシジル基、エステル基から選択される少なくとも1種の官能基を表すことがさらに好ましく、Rは、アルキレン基を表し、nは、1〜3の整数を表し、Xは、水酸基であることが特に好ましい。なお、本発明において、Rが、アルキレン基の場合、式(1)で表される構造は、アルキレンオキシド単位を含有する構造を示す。
【0040】
本発明において、(B)成分中の官能基は、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択された少なくとも1種類以上であることが好ましく、(B)成分中の官能基は、これらの中から同一あるいは異なる3個以上の官能基を有していることが好ましい。また、本発明において、(B)成分が、(B)3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の2個以上が式(1)で表される構造である化合物である場合には、官能基としては、上記の中の同一のものでもよく、あるいは異なるものでもよいが、流動性、機械物性、耐久性、耐熱性および生産性の点で、同一のものであることが好ましい。
【0041】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−へキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼンなどの炭素数3〜24の多価アルコールやポリビニルアルコールなどのポリマーが挙げられる。なかでも、流動性、機械物性の点から分岐構造を有するグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
【0042】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がカルボキシル基の場合は、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、ブタン−1,2,4−トリカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ヘミメリット酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸、ナフタレン−2,5,7−トリカルボン酸、ピリジン−2,4,6−トリカルボン酸、ナフタレン−1,2,7,8−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸などの多価カルボン酸やアクリル酸、メタクリル酸などのポリマーが挙げられ、それらの酸無水物も使用できる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有するプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、トリメリット酸、トリメシン酸およびその酸無水物が好ましい。
【0043】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の官能基がアミノ基の場合は、3個以上の置換基のうち少なくとも1個は1級または2級アミンであることが好ましく、いずれも1級または2級アミンであることがさらに好ましく、いずれも1級アミンであることが特に好ましい。
【0044】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−テトラミノナフタレン、1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。なかでも、流動性の点から分岐構造を有する1,2,3−トリアミノプロパン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
【0045】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がグリシジル基の場合は、トリグリシジルトリアゾリジン−3,5−ジオン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの単量体やポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−g−ポリメチルメタクリレートなどのポリマーが挙げられる。
【0046】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がイソシアネート基の場合は、ノナントリイソシアネート(例えば4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(TIN))、デカントリイソシアネート、ウンデカントリイソシアネート、ドデカントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記3個以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステル、上記3個以上カルボキシル基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0048】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記3個以上カルボキシル基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0049】
また、流動性、機械物性の点から、(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を1個以上含むことが好ましい。なお、本発明において、(B)成分が、(B)3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の少なくとも1個が式(1)で表される構造である化合物であり、式(1)中のRが、アルキレン基の場合、式(1)で表される構造は、アルキレンオキシド単位を含有する構造を示すものであり、特に流動性に優れるという点で、(B)成分としては、(B)3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、アルキレンオキシド単位を含有する多官能性化合物であることが最も好ましい。本発明において、アルキレンオキシド単位の好ましい例として、炭素原子数1〜4である脂肪族アルキレンオキシド単位が有効であり、具体例としてはメチレンオキシド単位、エチレンオキシド単位、トリメチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、テトラメチレンオキシド単位、1,2−ブチレンオキシド単位、2,3−ブチレンオキシド単位若しくはイソブチレンオキシド単位などを挙げることができ、本発明においては、特に、流動性、リサイクル性、耐久性、耐熱性および機械物性に優れるという点で、アルキレンオキシド単位としてエチレンオキシド単位又はプロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用するのが好ましく、耐加水分解性および靭性(引張破断伸度)に優れるという点で、プロピレンオキシド単位が含まれる化合物を使用することが特に好ましい。
【0050】
本発明で用いる(B)成分において、(B)3個以上の官能基を有する化合物に含まれるアルキレンオキシド単位数については、流動性および機械物性に優れるという点で、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位が0.1〜20であることが好ましく、0.5〜10であることがより好ましく、1〜5であることがさらに好ましい。
【0051】
アルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシメチレングリセリン、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシトリメチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシテトラメチレングリセリン、(ポリ)オキシメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシトリメチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシテトラメチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシトリメチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシテトラメチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシトリメチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシメチレングルコース、(ポリ)オキシエチレングルコース、(ポリ)オキシトリメチレングルコース、(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシエチレン−(ポリ)オキシプロピレングルコース、(ポリ)オキシテトラメチレングルコース等を挙げることができる。
【0052】
また、アルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む2−メチルプロパン−1,2,3−トリスカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,4−トリカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むヘミメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むピロメリット酸、(ポリ)メチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸等を挙げることができる。
【0053】
また、アルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,3,4−テトラミノブタン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)メチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)トリメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン、(ポリ)テトラメチレンオキシド単位を含む1,2,4−トリアミノベンゼン等を挙げることができ、トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテルなども好適である。
【0054】
また、アルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がエステル基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3個以上水酸基を有する化合物の脂肪族酸エステルまたは芳香族酸エステル、上記アルキレンオキシド単位を含む3個以上カルボキシル基を有する化合物のエステル誘導体などが挙げられる。
【0055】
また、アルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の好ましい例として、官能基がアミド基の場合は、上記アルキレンオキシド単位を含む3個以上カルボキシル基を有する化合物のアミド誘導体などが挙げられる。
【0056】
流動性の点からアルキレンオキシド単位を1個以上含む(B)3個以上の官能基を有する化合物の特に好ましい例として、官能基が水酸基の場合は、(ポリ)オキシエチレングリセリン、(ポリ)オキシプロピレングリセリン、(ポリ)オキシエチレンジグリセリン、(ポリ)オキシプロピレンジグリセリン、(ポリ)オキシエチレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレントリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシプロピレンジトリメチロールプロパン、(ポリ)オキシエチレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンペンタエリスリトール、(ポリ)オキシエチレンジペンタエリスリトール、(ポリ)オキシプロピレンジペンタエリスリトールが挙げられ、官能基がカルボン酸の場合は、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメリット酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むトリメシン酸、(ポリ)エチレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含むシクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸が挙げられ、官能基がアミノ基の場合は(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,2,3−トリアミノプロパン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、(ポリ)エチレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼン、(ポリ)プロピレンオキシド単位を含む1,3,5−トリアミノベンゼンが挙げられる。
【0057】
本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物は、(A)熱可塑性樹脂と反応し、(A)成分の主鎖および側鎖に導入されていてもよく、(A)成分と反応せずに、配合時の構造を保っていてもよい。
【0058】
本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物の粘度は、25℃において15000m・Pa以下であることが好ましく、流動性、機械物性の点から5000m・Pa以下であることがさらに好ましく、2000m・Pa以下であることが特に好ましい。下限は特にないが、成形時のブリード性の点から100m・Pa以上であることが好ましい。25℃における粘度が15000m・Paよりも大きいと流動性改良効果が不十分であるため好ましくない。
【0059】
本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物の分子量または重量平均分子量(Mw)は、流動性の点で、50〜10000の範囲であることが好ましく、150〜8000の範囲であることがより好ましく、200〜3000の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、(B)3個以上の官能基を有する化合物のMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0060】
本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物の含水分は1%以下であることが好ましい。より好ましくは含水分0.5%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。(B)成分の含水分の下限は特にない。含水分が1%よりも高いと機械物性の低下を引き起こすため好ましくない。
【0061】
本発明で用いる(B)3個以上の官能基を有する化合物は、金属成分を含有するものであってもよく、例えば、アルキレンオキシド単位を導入するために用いるアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む触媒などを含有するものであってもよい。
【0062】
本発明において、(B)3個以上の官能基を有する化合物の配合量は、(A)成分100重量部に対して(B)成分0.1〜10量部の範囲であることが必須であり、流動性と機械物性の点から、0.1〜5重量部の範囲で配合することが好ましく、0.1〜4重量部の範囲で配合することがより好ましく、0.1〜2重量部の範囲で配合することがさらに好ましく、0.1〜1重量部の範囲で配合することが特に好ましく、0.2〜0.7重量部の範囲で配合することが最も好ましい。
【0063】
本発明においては、(A)熱可塑性樹脂と(B)3個以上の官能基を有する化合物の組み合わせとして、(A)成分がポリエステル樹脂の場合、(B)成分が少なくとも1個以上の水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有していることが流動性の点から好ましく、(B)成分が3個以上の水酸基またはアミノ基を有していることがより好ましく、(B)成分が3個以上の水酸基を有していることがさらに好ましく、(B)成分の全ての官能基が水酸基であることが特に好ましい。
【0064】
本発明においては、(C)分岐状ポリマー、低分子量直鎖状ポリエステル、低分子量直鎖状ポリカーボネート、芳香族系低分子化合物またはアクリル系化合物から選択される少なくとも1種の流動性改良剤を配合することを特徴とする。(C)流動性改良剤を配合することにより、熱可塑性樹脂の溶融粘度を大幅に低減させることができ、また、(B)成分と併用することにより、リサイクル性も向上させることができる。さらに、機械特性、耐加水分解性または耐乾熱性なども併せて向上できるという点で、(C)成分を2種以上併用することが好ましい。
【0065】
本発明において、分岐状ポリマーとは、枝分かれ構造を有するポリマーのことであり、詳しくは多分岐構造を有するポリマーのことをいい、枝分かれ構造としては、中心のコアから放射状に複数の直鎖状セグメントを分岐鎖として有するスターポリマー、幹となる直鎖状ポリマー鎖に多数の分岐点を有しそこから枝鎖となるポリマーが導入された構造を有するグラフトポリマー、3次元的に枝分かれを有し、繰り返し単位に枝分かれ構造を有するハイパーブランチポリマーおよびさらに分子量分布や分岐度を精密に制御したデンドリマーなどが挙げられ、工業的に生産しやすいという点で、スターポリマーおよびハイパーブランチポリマーが好ましく、流動性の点で、ハイパーブランチポリマーがより好ましい。なお、本発明の分岐状ポリマーは、流動性改良効果が大きいという点で、共有結合等の化学結合による架橋構造を有しない枝分かれ構造を有するポリマーであることが好ましい。
【0066】
本発明において分岐状ポリマーとしては、枝分かれ構造を有するポリマーであれば、そのポリマー骨格は、特に限定されないが、流動性の点で、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネート、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリフェニレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィドおよびポリウレタンから選択されるいずれか1種の構造を含むものであることが好ましく、耐熱性、機械特性、耐加水分解性またはリサイクル性の点で、ポリエステル構造および/またはポリカーボネート構造を有することがより好ましく、芳香環を有する芳香族系ポリマーであることがさらに好ましく、アルキレンテレフタレート構造を有するものであることが特に好ましい。
【0067】
本発明において、分岐状ポリマーの製造方法は、特に限定されない。スターポリマーの場合であれば、分岐鎖となる直鎖状セグメントを合成した後、コアにグラフト化するarm−first法およびコアとなる成分として多官能性開始剤を合成した後、分岐鎖となる直鎖状セグメントを合成するco−first法のいずれでもよい。デンドリマーの場合であれば、コアから段階的反応を繰り返し、分岐を増やしていくDivergent法および外側の殻の成分を段階的反応を繰り返し、最後にコアに結合させるConvergent法のいずれでもよい。ハイパーブランチポリマーの場合であれば、1分子中に2種類の置換基を合計3個以上有する化合物を用い逐次反応的に自己重縮合する方法、二官能性化合物および三官能性化合物を用い逐次反応的に重縮合する方法、開始剤部位を有するビニルモノマーを用い連鎖反応的に自己重縮合する方法および環状モノマーを用い連鎖反応的に開環重合する方法のいずれでもよく、流動性の点で、分子中に2種類の置換基を合計3個以上有する化合物を用い逐次反応的に自己重縮合する方法および二官能性化合物および三官能性以上の化合物を用い逐次反応的に重縮合する方法が好ましい。
【0068】
本発明において、分岐状ポリマーが、ハイパーブランチポリマーである場合には、原料モノマーとしては、上記製造方法を実施可能なものであれば、特に限定されない。具体例として、1分子中に2種類の置換基を合計3個以上有する化合物としては、ジフェノール酸、5−(2−ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、5−フェノキシイソフタル酸、3,5−ヒドロキシ安息香酸、3,5−アセトキシ安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチル、3,5−ビス(トリメチルシロキシ)安息香酸クロリド、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸メチル、3,5−ジブロモフェノール、5−(ブロモメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、5−アミノイソフタル酸、フェノール−3,5−ジグリシジルエーテル、(3,5−ジブロモフェニル)ボロン酸、6−ブロモ−1−(4−ヒドロキシ−4’−ビフェニルイル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、13−ブロモ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−4’’−p−ターフェニルイル)トリデカン、13−ブロモ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(6−ヒドロキシ−2−ナフタレニルイル)フェニル]トリデカンなどが挙げられ、流動性、リサイクル性、機械特性および耐加水分解性の点で、5−(2−ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸、5−アセトキシイソフタル酸、3,5−アセトキシ安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸、3,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸メチル、3,5−ビス(トリメチルシロキシ)安息香酸クロリド、4,4−(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、13−ブロモ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−4’’−p−ターフェニルイル)トリデカンが好ましい。二官能性化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、ダイマージオールなど、あるいは分子量200〜100000の長鎖グリコール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFおよびこれらのエステル形成性誘導体などのジオール成分、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどのジアミン成分、三官能性以上の化合物としては、トリメシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、メリト酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,3,5−ベンゼントリオール、トリス(4−アミノフェニル)アミン、1,3,5−トリス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンなどが挙げられ、芳香環を有する化合物を少なくとも1種以上用いればよく、流動性、耐熱性、機械特性、耐加水分解性およびリサイクル性などの点で、テレフタル酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールから選択される1種以上のジオール成分を用いることが好ましく、その場合は、分岐状ポリマーにアルキレンテレフタレート構造を有するものを得ることができる。開始剤部位を有するビニルモノマーとしては、3−(1−クロロエチル)スチレン、4−クロロメチルスチレンなどが挙げられる。環状モノマーとしては、2−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−1,3−オキサゾリンなどが挙げられる。
【0069】
本発明で用いる分岐状ポリマーの分子量は、特に限定されないが、流動性の点で、数平均分子量(Mn)が300〜30000の範囲であることが好ましく、500〜10000の範囲であることがより好ましく、800〜5000の範囲であることがさらに好ましく、1000〜3000の範囲であることが特に好ましく、重量平均分子量(Mw)が300〜150000の範囲であることが好ましく、500〜50000の範囲であることがより好ましく、800〜30000の範囲であることがさらに好ましく、1000〜10000の範囲であることが特に好ましい。
【0070】
本発明で用いる分岐状ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、特に限定されないが、流動性の点で、1〜5の範囲であることが好ましく、1〜4の範囲であることがより好ましく、1〜3の範囲であることがさらに好ましい。なお、本発明において、分岐状ポリマーのMn、MwおよびMw/Mnは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0071】
本発明で用いる分岐状ポリマーの分岐度(DB)は、特に限定されないが、流動性の点で、0.1〜1.0の範囲であることが好ましく、0.2〜0.9の範囲であることがより好ましく、0.3〜0.9の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、DBは下記式より求めることができ、それぞれのユニット数は、核磁気共鳴(NMR)による測定から求めることができる。
DB=(D+T)/(D++L+T)
D:デンドリティックユニット数
L:リニアーユニット数
T:ターミナルユニット数。
【0072】
本発明で用いる分岐状ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、流動性の点で、−60〜200℃の範囲であることが好ましく、0〜150℃の範囲であることがより好ましく、50〜120℃の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、Tgは、示差走査熱量計(DSC)による測定から求めることができる。
【0073】
本発明で用いる分岐状ポリマーの融点(Tm)は、特に限定されないが、耐熱性の点で、0〜300℃の範囲であることが好ましく、30〜250℃の範囲であることがより好ましく、50〜200℃の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、Tmは、示差走査熱量計(DSC)による測定から求めることができる。
【0074】
本発明で用いる低分子量直鎖状ポリエステルとは、重量平均分子量(Mw)が500〜8000の範囲にある直鎖状ポリエステルのことである。流動性、機械特性およびブリードアウトの点で、Mwは1000〜7000の範囲であることが好ましく、1500〜6000の範囲であることがより好ましく、3000〜5000の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、低分子量直鎖状ポリエステルのMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0075】
また、本発明で用いる低分子量直鎖状ポリエステルとは、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体、(ロ)ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体、(ハ)ラクトンから選択された一種以上を主構造単位とする重合体または共重合体であり、流動性および機械特性の点で、(イ)ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体であることが好ましい。また、ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、脂環族ポリエステルのいずれでもよい。
【0076】
本発明で用いる低分子量直鎖状ポリカーボネートとは、重量平均分子量(Mw)が500〜10000の範囲にある直鎖状ポリカーボネートのことである。流動性、機械特性およびブリードアウトの点で、Mwは1000〜9000の範囲であることが好ましく、2000〜8000の範囲であることがより好ましく、3000〜7000の範囲であることがさらに好ましい。本発明において、低分子量直鎖状ポリエステルのMwは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の値である。
【0077】
また、本発明で用いる低分子量直鎖状ポリカーボネートとは、ジオールと炭酸ジエステルを反応させることにより得られるカーボネート結合を有する重合体または共重合体であり、流動性の点で、両末端が水酸基であるポリカーボネートジオールであることが好ましい。本発明において、ジオールとしては、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、脂環族ジオールのいずれでもよく、炭酸ジエステルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニルなどのいずれでもよい。なお、原料のジオールは、得られるポリカーボネートの両末端が水酸基となるように、炭酸ジエステルに対して0.5〜5.0倍モルの範囲で用いることが好ましく、0.8〜2.0倍モルがより好ましく、0.9〜1.5倍モルがさらに好ましい。
【0078】
本発明で用いる芳香族系低分子化合物とは、芳香環を有し、数平均分子量(Mn)が50〜1000の範囲である化合物のことである。本発明においては、流動性の点で、芳香環を有するカルボン酸もしくはエステル結合を有する化合物であることが好ましく、Mnは、100〜900の範囲であることが好ましく、300〜800の範囲であることがより好ましい。
【0079】
本発明で用いるアクリル系化合物とは、構成成分の30モル%以上が(メタ)アクリル酸系単量体で構成されるものである。本発明においては、流動性の点で、(メタ)アクリル酸系単量体が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。本発明において、(メタ)アクリル酸系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。
【0080】
本発明で用いるアクリル系化合物の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、流動性、機械特性およびブリードアウトの点で、Mwが1000〜30万の範囲であることが好ましく、3000〜10万の範囲であることがより好ましく、5000〜3万の範囲であることがさらに好ましい。
【0081】
本発明で用いるアクリル系化合物の製造方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法を用いることができる。重合時の温度条件は特に限定されないが、耐熱性の点で、−30〜100℃が好ましく、0〜90℃がより好ましく、30〜80℃がさらに好ましい。
【0082】
本発明で用いる(C)流動性改良剤の末端基については、特に限定されないが、流動性、耐加水分解性の点で、(A)熱可塑性樹脂との交換反応を抑制できるような末端基構造であることが効果的であると考えられ、それを達成する具体的な方法としては、(C)流動性改良剤製造時に単官能性化合物を添加する方法、(C)流動性改良剤の末端基を反応性化合物を用いて末端封鎖する方法が挙げられる。なお、末端基構造としては、カルボン酸やヒドロキシル末端などの反応性官能基構造でないものであればいずれでもよく、例えば、ステアリン酸エステル末端、安息香酸エステル末端、o−ベンゾイル安息香酸エステル末端、フェニルカーボネート末端などが挙げられる。また、このような末端基量は、特に限定されないが、流動性および耐加水分解性の点で、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。なお、末端基構造は、NMR測定において対応するケミカルシフトおよびその積分値を観察することにより求めることができる。また、別の方法としては、(A)熱可塑性樹脂の製造時に添加される重合促進のための重合反応触媒を失活させる安定剤を添加する方法なども有効である。
【0083】
(C)流動性改良剤製造時に単官能性化合物を添加する方法において使用される単官能性化合物としては、モノカルボン酸、アルコール、モノアミンなどが挙げられ、流動性の点で、モノカルボン酸が好ましく、具体例として、安息香酸、メチル安息香酸、t−ブチル安息香酸、ナフトエ酸、ステアリン酸などが挙げられる。なお、単官能性化合物は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
(C)流動性改良剤の末端基を反応性化合物を用いて末端封鎖する方法において使用される反応性化合物としては、グリシジル基、酸無水物基、カルボジイミド基、オキサゾリン基から選択される少なくとも1種以上の官能基を含有する反応性化合物などが挙げられ、流動性およびリサイクル性の点で、グリシジル基を含有する反応性化合物であることが好ましい。なお、反応性化合物は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
(A)熱可塑性樹脂の製造時に添加される重合促進のための触媒を失活させる安定剤を添加する方法において使用される安定剤としては、リン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物などが挙げられ、流動性およびリサイクル性の点で、リン系化合物であることが好ましく、中でもホスフェート系化合物であることがより好ましい。なお、安定剤は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
本発明において、(C)流動性改良剤の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜50重量部の範囲であることが必須であり、流動性、機械特性、耐熱性、耐加水分解性およびリサイクル性の点で、0.05〜30重量部が好ましく、0.1〜10重量部がより好ましく、0.1〜5重量部がさらに好ましく、0.1〜4重量部が特に好ましい。
【0087】
本発明においては、さらに(D)末端封鎖剤を配合することが好ましい。端封鎖剤としては、(B)3個以上の官能基を有する化合物および以外の化合物であって、カルボキシル基、水酸基またはアミノ基などのポリマーの末端基を反応により封鎖することのできる反応性基を有する化合物であれば特に制限はなく、ポリマーの末端封鎖剤として公知のものを用いることができる。本発明において、かかる末端封鎖剤は、熱可塑性樹脂の末端を封鎖するのみではなく、熱可塑性樹脂の熱分解や加水分解などで生成する分解物などの低分子化合物のカルボキシル基、水酸基またはアミノ基などの反応性の官能基も封鎖することができる。
【0088】
このような(D)末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物、酸無水物基を含有する化合物から選択される少なくとも2種以上の化合物であり、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性または耐乾熱性などの長期耐久性に優れるという点で、エポキシ化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましく、エポキシ化合物から選択される2種以上であることがより好ましい。
【0089】
本発明において、末端封鎖剤として用いることのできるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物または脂環式エポキシ化合物を挙げることができ、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性または耐乾熱性などの長期耐久性に優れるという点で、グリシジルエーテル化合物およびグリシジルエステル化合物から選択される2種以上であることが好ましく、グリシジルエーテル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物およびグリシジルエステル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物であることがより好ましい。
【0090】
本発明において、グリシジルエーテル化合物とは、エーテル化されたグリシジル基を有する化合物のことであり、具体的には、ブチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応から得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができ、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、分子内にグリシジル基を1個または2個有するグリシジルエーテル化合物が好ましく、芳香族グリシジルエーテルがより好ましく、フェニルグリシジルエーテルまたはビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂がさらに好ましい。本発明において、グリシジルエーテル化合物の配合量は、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましく、0.7〜2.5重量部がさらに好ましい。1.0〜2.0重量部が特に好ましい。
【0091】
本発明において、グリシジルエステル化合物とは、エステル化されたグリシジル基を有する化合物のことであり、具体的には、安息香酸グリシジルエステル、p−トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げることができ、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、分子内にグリシジル基を1個有するグリシジルエステル化合物が好ましく、飽和脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステル化合物または芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステルがより好ましく、安息香酸グリシジルエステルまたはバーサティック酸グリシジルエステルがさらに好ましい。本発明において、グリシジルエステル化合物の配合量は、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2.5重量部がより好ましく、0.15〜2.0重量部がさらに好ましく、0.3〜1.5重量部が特に好ましい。
【0092】
本発明において、グリシジルアミン化合物の具体例としては、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラアミノフェノール、トリグリシジル−メタアミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロモアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレートまたはトリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0093】
本発明において、グリシジルイミド化合物の具体例としては、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミドまたはN−グリシジルステラミドなどを挙げることができ、なかでも、N−グリシジルフタルイミドが好ましい。
【0094】
本発明において、脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドまたはN−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミドなどを挙げることができる。
【0095】
また、その他のエポキシ化合物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂またはグリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体なども挙げることができ、成形加工性、溶融粘度安定性、耐衝撃性または表面硬度に優れるという点で、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体が好ましい。
【0096】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルあるいはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中では、ラジカル重合性の点でアクリル酸グリシジルまたはメタアクリル酸グリシジルが好ましく用いられる。これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0097】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体には、グリシジル基含有ビニル系単位以外のビニル系単位を共重合成分として含むことが好ましく、その選択により重合体の融点、ガラス転移温度などの特性を調節することができる。グリシジル基含有ビニル系単位以外のビニル系単位としては、アクリル系ビニル単位、カルボン酸ビニルエステル単位、芳香族系ビニル単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単位、不飽和ジカルボン酸系単位、脂肪族系ビニル単位、マレイミド系単位またはその他のビニル系単位などが挙げられる。
【0098】
アクリル系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するアクリル系ビニル単位を形成する原料モノマーなどが挙げられ、中でも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、さらにアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0099】
カルボン酸ビニルエステル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニルおよびシクロヘキサンカルボン酸ビニルなどの単官能脂肪族カルボン酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルおよびソルビン酸ビニルなどの多官能カルボン酸ビニルなどが挙げられ、中でも、酢酸ビニルが好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0100】
芳香族系ビニル単位を形成する原料モノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン,o−メトキシスチレン、2,4−ジメチルスチレン、1−ビニルナフタレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなどが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0101】
不飽和ジカルボン酸無水物系単位を形成する原料モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸、無水シトラコン酸または無水アコニット酸などが挙げられ、中でも、無水マレイン酸が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0102】
不飽和ジカルボン酸系単位を形成する原料モノマーとして、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、フタル酸などが挙げられ、中でも、マレイン酸、イタコン酸が好ましく使用される。これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
脂肪族ビニル系単位を形成する原料モノマーとしては、エチレン、プロピレンまたはブタジエンなど、マレイミド系単位を形成する原料モノマーとしては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミドまたはN−(クロロフェニル)マレイミドなど、その他のビニル系単位を形成する原料モノマーとしてはN−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどが挙げられ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0103】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、配合時の作業性や成形加工性に優れるという点で、30〜100℃の範囲であることが好ましく、40〜70℃の範囲であることがより好ましく、50〜65℃の範囲であることが最も好ましい。ここでいうガラス転移温度とはJIS K7121の方法により、20℃/分の昇温温度でDSCで測定した中間点ガラス転移温度である。なお、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体のガラス転移温度は、共重合成分の組成を調節することにより制御することができる。ガラス転移温度は通常、スチレンなどの芳香族系ビニル単位を共重合することにより高くすることができ、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸エステル単位を共重合することにより低くすることができる。
【0104】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体は、未反応の原料モノマーや溶媒などが残存するために通常、揮発成分を含む。その残部となる不揮発成分量は、特に限定されるものではないが、ガスの発生を抑制するという観点で、不揮発成分量が多い方が好ましい。具体的には、95重量%以上であることが好ましく、中でも97重量%以上であることが好ましく、さらに98重量%以上であることがより好ましく、特に98.5重量%以上であることが最も好ましい。なお、ここでいう不揮発成分とは、試料10gを窒素雰囲気下、110℃で1時間加熱した場合の残量割合を表す。
【0105】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体は、低分子量体を得るために連鎖移動剤(分子量調整剤)として硫黄化合物を使用することがあるが、その場合には重合体は通常硫黄を含む。ここで、硫黄含有量は、特に限定されるものではないが、不快な臭いを抑制するという観点で、硫黄含有量が少ない方が好ましい。具体的には、硫黄原子として1000ppm以下が好ましく、中でも100ppm以下が好ましく、さらに10ppm以下が好ましく、特に1ppm以下であることが最も好ましい。
【0106】
本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の製造方法としては、本発明で規定する条件を満たす限り特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの公知の重合方法を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、重合開始剤、連鎖移動剤および溶媒などを使用することがあるが、これらは最終的に得られるグリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の中に不純物として残存することがある。これら不純物量は特に限定されるものではないが、耐熱性や耐候性などの低下を抑制するという観点で、不純物量は少ない方が好ましい。具体的には、不純物量が最終的に得られる重合体に対して10重量%以下が好ましく、中でも5重量%以下が好ましく、さらに3重量%以下が好ましく、特に1重量%以下であることが最も好ましい。
【0107】
以上のような、分子量、ガラス転移温度、不揮発成分量、硫黄含有量、不純物量などを満足させるグリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の製造方法としては、150℃以上の高温で、かつ加圧条件(好ましくは1MPa以上)で、短時間(好ましくは5分〜30分)で連続塊状重合する方法が、重合率が高い点、不純物や硫黄含有の原因となる重合開始剤や連鎖移動剤および溶媒を使用しない点でより好ましい。本発明において、グリシジル基含有ビニル系単位を含む重合体の配合量は、機械特性、成形加工性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性、溶融粘度安定性または表面硬度に優れるという点で、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましく、0.2〜3重量部がさらに好ましく、0.5〜2重量部が特に好ましい。
【0108】
本発明において、(D)末端封鎖剤として用いることのできるオキサゾリン化合物の具体例としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4,4’−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−9,9’−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などを挙げることができ、また、オキサゾリン基を含有する化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリンなども挙げられ、市販品として、日本触媒製“エポクロス”などを挙げることができる。
【0109】
本発明において、(D)末端封鎖剤として用いることのできるオキサジン化合物の具体例としては、2−メトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−エトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−プロポキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ブトキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ヘプチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−オクチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−ノニルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−デシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロペンチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−アリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−メタアリルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン、2−クロチルオキシ−5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジンなどが挙げられ、さらには、2,2’−ビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−メチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−エチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−プロピレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ブチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−p−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−m−フェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−ナフチレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)、2,2’−P,P’−ジフェニレンビス(5,6−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン)などを挙げることができる。
【0110】
本発明において、(D)末端封鎖剤として用いることのできるカルボジイミド化合物とは、分子内に少なくとも1個の(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であり、例えば、適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。
【0111】
カルボジイミド化合物の具体例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ−o−トルイルカルボジイミド、ジ−p−トルイルカルボジイミド、ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジ−tert −ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N’−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N’−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N’−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N’−トリルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどのモノ又はジカルボジイミド化合物、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができ、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2’,6’−テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドまたはポリカルボジイミドが好ましく、ポリカルボジイミドがより好ましく、市販品として、日清紡製“カルボジライト”、ラインケミー製“スタバクゾール”などを挙げることができる。
【0112】
本発明において、酸無水物基を含有する化合物の例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸などを挙げることができる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含む重合体なども挙げることができる。
【0113】
本発明において、(D)末端封鎖剤の合計配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.05〜5重量部がより好ましく、0.1〜3重量部がさらに好ましく、0.3〜2重量部が特に好ましい。
【0114】
本発明において、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、さらに(D)末端封鎖剤の反応触媒を添加することが好ましい。
【0115】
本発明において、反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、リン酸エステル、有機酸またはルイス酸を挙げることができ、その具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズなどのルイス酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上用いることができる。なかでも、耐加水分解性または溶融粘度安定性に優れるという点で、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物またはリン酸エステルが好ましく、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機塩がより好ましく、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭素数6以上の有機塩がさらに好ましく、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウムまたは酢酸マグネシウムが特に好ましく、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムまたは安息香酸ナトリウムをいずれか1種以上用いることが最も好ましい。
【0116】
反応触媒の配合量は、機械特性、成形性、耐熱性、耐加水分解性、耐乾熱性などの長期耐久性または溶融粘度安定性に優れるという点で、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.001〜1重量部が好ましく、0.01〜0.1重量部がより好ましく、0.02〜0.1重量部がさらに好ましい。
【0117】
本発明において、特に耐加水分解性に優れるという点で、グリシジルエーテル化合物およびグリシジルエステル化合物からなる2種以上の(D)末端封鎖剤および反応触媒を配合することが好ましく、芳香族グリシジルエーテルであるグリシジルエーテル化合物および安息香酸グリシジルエステルまたはバーサティック酸グリシジルエステルであるグリシジルエステル化合物からなる2種以上の(D)末端封鎖剤およびステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムまたは安息香酸ナトリウムのいずれか1種以上である反応触媒がより好ましい。
【0118】
本発明において、熱可塑性樹脂がポリエステル樹脂である場合、耐加水分解性を達成するための第一の要因として、反応性の異なる2種以上の(D)末端封鎖剤および/または反応触媒を用いることで、熱可塑性樹脂中のカルボキシル末端基を反応により減少させることが重要であると考えられ、第二の要因として、加水分解により新たに生成するカルボキシル末端基についても反応により増加を抑制することが重要と考えられ、これら二つの要因により、特に優れた耐加水分解性を達成できる。
【0119】
本発明の樹脂組成物では、成形品として使用する用途に応じて適度にポリマーの末端基や低分子化合物の末端封鎖を行えばよいが、具体的な末端封鎖量の具体例として、カルボキシル末端基の場合には、耐加水分解性に優れるという点で、樹脂組成物中のカルボキシル末端基量が10eq/t以下であることが好ましく、5eq/t以下であることがより好ましく、1eq/t以下であることがさらに好ましい。本発明において、樹脂組成物中のカルボキシル末端基量は、樹脂組成物を適当な溶媒に溶解させた後、濃度既知の水酸化ナトリウムなどのアルカリ化合物溶液で滴定して測定する方法またはNMRにより測定する方法などのいずれでも求めることができる。
【0120】
本発明において、機械強度、表面硬度またはその他の特性を付与するために、(E)充填剤を配合することが好ましい。(E)充填剤の配合量は、流動性および機械物性の点で、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜120重量部の範囲が好ましく、1〜70重量部の範囲がより好ましく、1〜50重量部の範囲がさらに好ましい。
【0121】
本発明において、(E)充填剤の種類としては、繊維状、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填剤も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、ケナフ繊維、竹繊維、セルロース繊維などの天然繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ウォラストナイト、モンモリロナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、硫酸バリウム、ケイ酸ジルコニウムなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられ、なかでもガラス繊維が好ましい。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、カットファイバー、ミルドファイバーなどから選択して用いることができ、断面形状については、丸形、長方形、まゆ型などのいずれでも用いることができる。また、上記の(E)充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の(E)充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0122】
本発明で用いる(E)充填剤は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂またはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理されていてもよい。
【0123】
本発明においては、流動性、機械特性、耐加水分解性などの点で、さらに層状珪酸塩を配合することが好ましく、有機変性層状珪酸塩であることがさらに好ましい。
【0124】
本発明において、有機変性層状珪酸塩とは、層間に存在する交換性陽イオンまたは陰イオンが有機オニウムイオンまたは有機アニオンで交換された層状珪酸塩であり、特に交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩が好ましい。
交換性のイオンを層間に有する層状珪酸塩は、幅0.05〜0.5μm、厚さ6〜15オングストロームの板状物が積層した構造を持ち、その板状物の層間に交換性のイオンを有している。そのイオン交換容量は0.2〜3meq/gのものが挙げられ、好ましくはイオン交換容量が0.8〜1.5meq/gのものである。
【0125】
層状珪酸塩の具体例としてはモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母、ハイドロタルサイト等が挙げられ、天然のものであっても合成されたものであってもよい。これらのなかでもモンモリロナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物やNa型四珪素フッ素雲母、Li型フッ素テニオライトなどの膨潤性合成雲母が好ましい。
【0126】
有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。これらのなかではアンモニウムイオンとホスホニウムイオンが好ましく、特にアンモニウムイオンが好んで用いられる。アンモニウムイオンとしては、1級アンモニウム、2級アンモニウム、3級アンモニウム、4級アンモニウムのいずれでも良い。
【0127】
1級アンモニウムイオンとしてはデシルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、オレイルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
【0128】
2級アンモニウムイオンとしてはメチルドデシルアンモニウム、メチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0129】
3級アンモニウムイオンとしてはジメチルドデシルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウムなどが挙げられる。
【0130】
4級アンモニウムイオンとしてはベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウム、トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウムなどのアルキルトリメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジドデシルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムなどのジメチルジアルキルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウム、トリドデシルメチルアンモニウムなどのトリアルキルメチルアンモニウムイオン、ベンゼン環を2個有するベンゼトニウムイオンなどが挙げられる。
【0131】
これらのアンモニウムイオンの中でも、好ましい化合物としては、トリオクチルメチルアンモニウム、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム、ベンザルコニウムなどが挙げられる。これらは、1種類で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用してもよい。本発明においては、反応性の官能基を持つものや親和性の高いものが好ましく、12−アミノドデカン酸、末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールなどから誘導されるアンモニウムイオンなども好ましい。
【0132】
有機アニオンとしては、長鎖のカルボン酸などがあり、ラウリン酸、デカン酸、ステアリン酸、ドデカジカルボン酸、ダイマー酸などをあげることができる。
【0133】
本発明において、有機変性層状珪酸塩としては、交換性の陽イオンまたは陰イオンを層間に有する層状珪酸塩と有機オニウムイオンまたは有機アニオンを公知の方法で反応させることにより製造することができる。具体的には、水、メタノール、エタノールなどの極性溶媒中でのイオン交換反応による方法か、層状珪酸塩に液状あるいは溶融させた有機塩を直接反応させることによる方法などが挙げられる。
【0134】
本発明において、層状珪酸塩に対する有機イオンの量は、層状珪酸塩の分散性、溶融時の熱安定性、成形時のガス、臭気の発生抑制などの点で、層状珪酸塩の陽イオン交換容量に対し通常、0.4〜2.0当量の範囲であるが、0.8〜1.2当量であることが好ましい。
【0135】
また、有機変性層状珪酸塩を反応性官能基を有するカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得るために好ましい。かかる反応性官能基を有するカップリング剤としては、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0136】
本発明において、有機変性層状珪酸塩は、樹脂組成物中に均一に分散していることが好ましい。ここでいう均一な分散とは、層状珪酸塩が5層以下の積層状態で局所的な固まりを持たずに分散していることをいう。
【0137】
本発明において、層状珪酸塩の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましく、1〜10重量部が特に好ましい。
【0138】
本発明において、樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために、(F)耐衝撃性改良剤を配合することが好ましい。(F)耐衝撃性改良剤の配合量は、流動性および機械物性の点の点で、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部の範囲が好ましく、1〜70重量部の範囲がより好ましく、1〜50重量部の範囲がさらに好ましい。
【0139】
本発明において、(F)耐衝撃性改良剤としては、熱可塑性樹脂に対して公知のものを使用することができ、具体的には、天然ゴム、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、耐衝撃改質ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン/ブタジエン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールブロック共重合体などのポリエステルエラストマー、MBSなどのブタジエン系コアシェルエラストマーまたはアクリル系のコアシェルエラストマーが挙げられ、これらは1種または2種以上使用することができる。ブタジエン系またはアクリル系のコアシェルエラストマーとしては、三菱レイヨン製“メタブレン”、カネカ製“カネエース”、ローム&ハース製“パラロイド”、クラレ製“パラフェイス”などが挙げられる。
【0140】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、可塑剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤、離型剤、顔料および染料を含む着色剤、滑剤、帯電防止剤および難燃剤などの公知の添加剤をいずれも添加することができる。
【0141】
本発明において、結晶核剤としては、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれでもよい。無機系結晶核剤としては、合成マイカ、クレー、ゼオライト、酸化マグネシウム、硫化カルシウム、窒化ホウ素、酸化ネオジウムなどを挙げることができ、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。また、有機系結晶核剤としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ソルビトール系化合物、フェニルホスホネートの金属塩、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩などを挙げることができる。これらの結晶核剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた樹脂組成物および成形品を得ることができる。
【0142】
本発明において、安定剤としては、熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらの安定剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた樹脂 組成物および成形品を得ることができる。
【0143】
本発明において、離型剤としては、熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものをいずれも使用することができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、変成シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
【0144】
本発明において、難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選択される少なくとも1種の難燃剤を用いることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、上記難燃剤から選択されるいずれか2種以上の難燃剤を用いることが好ましい。
【0145】
本発明において、臭素系難燃剤の具体例としては、デカブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1−スルホニル[3,5−ジブロモ−4−(2,3−ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキサイド、テトラブロムビスフェノール−S、トリス(2,3−ジブロモプロピル−1)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、ブロム化ポリスチレン、ブロム化ポリエチレン、テトラブロムビスフェノール−A、テトラブロムビスフェノール−A誘導体、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマーまたはポリマー、ブロム化フェノールノボラックエポキシなどのブロム化エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマーまたはポリマー、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2−ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロムビスフェノール−A−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモクレジルグリシジルエーテル、N,N’−エチレン−ビス−テトラブロモテレフタルイミドなどが挙げられる。なかでも、テトラブロムビスフェノール−A−エポキシオリゴマー、テトラブロムビスフェノール−A−カーボネートオリゴマー、ブロム化エポキシ樹脂が好ましい。
【0146】
本発明において、塩素系難燃剤の具体例としては、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン、テトラクロロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0147】
本発明において、リン系難燃剤の具体例としては、通常一般に用いられるリン系難燃剤を用いることができ、代表的なものとして、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩などの有機リン系化合物または赤リンが挙げられ、流動性、機械特性および難燃性に優れるという点で、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンのいずれか1種以上が好ましく、縮合リン酸エステルがより好ましく、芳香族縮合リン酸エステルがさらに好ましい。芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートなどを挙げることができる。
【0148】
本発明において、窒素化合物系難燃剤としては、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素、チオ尿素などを挙げることができ、難燃性および機械特性に優れるという点で、含窒素複素環化合物が好ましく、中でもトリアジン化合物が好ましく、メラミンシアヌレートまたはメラミンイソシアヌレートがより好ましく、中でもシアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン化合物との付加物が好ましく、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有する付加物を挙げることができる。なお、上記窒素化合物系難燃剤の分散性が悪い場合には、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0149】
本発明で用いられるシリコーン系難燃剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルを挙げることができる。前記シリコーン樹脂は、RSiO3/2、R2SiO、R3SiO1/2の構造単位を組み合わせてできる三次元網状構造を有する樹脂などを挙げることができる。ここで、Rはメチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、または、フェニル基、ベンジル基等の芳香族基、または上記置換基にビニル基を含有した置換基を示す。前記シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン、およびポリジメチルシロキサンの側鎖あるいは末端の少なくとも1個のメチル基が、水素元素、アルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アミノ基、エポキシ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、クロロアルキル基、アルキル高級アルコールエステル基、アルコール基、アラルキル基、ビニル基、またはトリフロロメチル基の選ばれる少なくとも1個の基により変性された変性ポリシロキサン、またはこれらの混合物を挙げることができる。また、かご型、もしくは、はしご型構造を形成するシルセスキオキサンおよびその誘導体であるシリコーン系オリゴマーなども好ましい例として挙げることができる。
【0150】
本発明において、その他の無機系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、メタスズ酸、酸化スズ、酸化スズ塩、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化第一錫、酸化第二スズ、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、オクタモリブデン酸アンモニウム、タングステン酸の金属塩、タングステンとメタロイドとの複合酸化物酸、スルファミン酸アンモニウム、臭化アンモニウム、ジルコニウム系化合物、グアニジン系化合物、フッ素系化合物、黒鉛、膨潤性黒鉛などを挙げることができる。本発明においては、難燃性および機械特性に優れるという点で、水酸化マグネシウム、フッ素系化合物、膨潤性黒鉛が好ましく、フッ素系化合物がより好ましい。フッ素系化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体などが好ましく、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も好ましい。
【0151】
本発明において、難燃剤の配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.5〜150重量部が好ましく、1〜150重量部がより好ましく、1.2〜150重量部がさらに好ましく、1.2〜100重量部が特に好ましく、2〜80重量部が最も好ましい。
【0152】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り特に限定されるものではないが、例えば、(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物、(C)流動性改良剤および必要に応じてその他の成分を熱可塑性樹脂の融点以上において、単軸押出機、二軸押出機または三軸以上の多軸押出機で均一に溶融混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられるが、生産性の点で、一軸または二軸押出機で均一に溶融混練する方法が好ましく、流動性および機械特性に優れた樹脂組成物を得られるという点で、二軸押出機で均一に溶融混練する方法がより好ましい。なかでも、スクリュー長さをL,スクリュー直径をDとすると、L/D>30の二軸押出機を使用して溶融混練する方法が特に好ましい。ここで言うスクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置から、スクリュー先端部までの長さを指す。L/Dが大きい程、(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤による流動性改良効果も大きくなる。二軸押出機のL/Dの上限は150であり、好ましくはL/Dが30を越え、100以下のものが使用できる。
【0153】
また、本発明において二軸押出機で用いる場合のスクリュー構成としては、フルフライトおよびニーディングディスクを組み合わせて用いられるが、本発明の組成物を得るためにはスクリューによる均一的な混練が必要である。そのため、スクリュー全長に対するニーディングディスクの合計長さ(ニーディングゾーン)の割合は、5〜50%の範囲が好ましく、10〜40%の範囲であればさらに好ましい。
【0154】
本発明において、溶融混練する場合に、各成分を供給する方法は、例えば、投入口を少なくとも1カ所以上、好ましくは2ヶ所以上有する押出機を用い、スクリュー根元側に設置した主投入口から(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物、(C)流動性改良剤および必要に応じてその他成分を一括供給する方法である一括投入混練法、主投入口から(A)熱可塑性樹脂、(C)流動性改良剤およびその他成分を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)3個以上の官能基を有する化合物を供給し溶融混合する方法、主投入口から(A)熱可塑性樹脂およびその他成分を有する化合物を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤を供給し溶融混合する方法または主投入口から(A)熱可塑性樹脂を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)3個以上の官能基を有する化合物、(C)流動性改良剤およびその他成分を有する化合物を供給し溶融混合する方法などの個別投入混練法が挙げられ、流動性、機械物性および生産安定性に優れるという点で、主投入口から(A)熱可塑性樹脂およびその他成分を有する化合物を供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤を供給し溶融混合する方法が好ましく、(B)成分および/または(C)流動性改良剤を連続的に供給することがより好ましい。また、(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物およびその他成分を有する化合物を溶融混練しペレットとした後、(C)流動性改良剤およびその他成分を有する化合物を溶融混練する2段混練法など多段階に分けて溶融混練する方法も好ましい。さらに、本発明において、(E)充填剤を配合する場合には、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(E)充填剤を配合する方法であるサイドフィード法とすることが好ましい。
【0155】
本発明の樹脂組成物を製造する際の溶融混練温度は、流動性および機械物性に優れるという点で、110〜360℃が好ましく、210℃〜320℃がさらに好ましく、240〜280℃が特に好ましい。
【0156】
本発明の樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、紡糸などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品、フィルム、シート、繊維などとして利用でき、フィルムとしては、未延伸、一軸延伸、二軸延伸などの各種フィルムとして、繊維としては、未延伸糸、延伸糸、超延伸糸など各種繊維として利用することができる。特に、本発明においては、流動性に優れる点を活かして、厚み0.01〜1.0mmの薄肉部位を有する射出成形品に加工することができ、また、流動性および外観性が必要とされる大型成形品にも加工することが可能である。
【0157】
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができ、特に、特に自動車用コネクター、電気・電子機器用コネクターとして好適である。
【0158】
具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、電気用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジング、および内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体部品、液晶部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材などの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、洗面ボウル(洗面器)、手洗いボウル(手洗い器)、洗面カウンター、手洗いカウンター、収納ケース、収納棚、鏡枠、水栓部材、床および壁等の洗面所構成部材、浴槽、風呂蓋、浴室洗い場、浴室壁、浴室カウンター、浴室床、防水パン、浴室収納棚、浴室天井、洗い桶、シャワー水栓部材、洗い場イスおよび手すり等の浴室構成部材、便器、便器フタ、便座、トイレカウンター、洗浄ノズル、トイレ収納棚等のトイレ構成部材、キッチンカウンター、キッチンシンク、キッチンバック、キッチン天板、収納棚および収納棚扉等の台所構成部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類、化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用であり、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターあるいは電気・電子部品用コネクターとして有用である。
【実施例】
【0159】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0160】
実施例で使用する原料および表中の符号を以下に示す。
【0161】
(A)熱可塑性樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量37eq/t)
A−2:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量15eq/t)
A−3:ポリプロピレンテレフタレート(融点235℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量30eq/t)
A−4:ポリカーボネート樹脂(出光興産製“タフロン”A1900)
A−5:ナイロン6樹脂(東レ製“アミラン”CM1010)。
【0162】
(B)3個以上の官能基を有する化合物
B−1:トリメチロールプロパン(分子量134、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、アルドリッチ製)
B−2:トリスヒドロキシメチルアミノメタン(分子量121、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、和光純薬工業製)
B−3:ポリオキシエチレントリメチロールプロパン(分子量266、1官能基当たりのアルキレンオキシド(エチレンオキシド)単位数1、日本乳化剤製TMP−30)
B−4:ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン(分子量308、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1、日本乳化剤製TMP−F32)
B−5:ポリオキシプロピレンペンタエリスリトール(分子量630、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数2.1、パーストープ製“Polyol”4360)
B−6:トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテル(分子量450、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1.8、ハンツマン製“ジェファーミン”T−403)。
【0163】
(C)流動性改良剤
C−1:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ脂肪族ポリエステル(製造例1)
C−2:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステル(製造例2)
C−3:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステルカーボネート(製造例3)
C−4:低分子量直鎖状ポリエステル:脂肪族ポリエステル(製造例4)
C−5:低分子量直鎖状ポリエステル:芳香族ポリエステル(製造例5)
C−6:低分子量直鎖状ポリカーボネート:脂肪族ポリカーボネート(製造例6)
C−7:低分子量直鎖状ポリカーボネート:芳香族ポリカーボネート(製造例7)
C−8:芳香族系低分子化合物(製造例8)
C−9:アクリル系化合物(製造例9)。
【0164】
(D)末端封鎖剤
D−1:バーサティック酸グリシジルエステル(ジャパンエポキシレジン製“カージュラー”E10P、エポキシ当量240g/eq)。
【0165】
(E)充填剤
E−1:ガラス繊維(日東紡製CS3J948)
E−2:ガラス繊維(日本電気硝子製T−249)。
【0166】
(F)耐衝撃性改良剤
F−1:エチレン/エチルアクリレート共重合体(三井・デュポン・ポリケミカル製“EVAFLEX”EEA A−709)。
【0167】
[製造例1](C−1の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、トリメチロールプロパン5部、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸50部、ステアリン酸7部およびp−トルエンスルホン酸0.2部を仕込み、窒素気流下、140℃で撹拌しながら2時間反応し、さらに140℃、67Paで1時間反応させ、分岐状ポリマーとして、ハイパーブランチ脂肪族ポリエステル(C−1)を得た。C−1を分析した結果、Mn1900、Mw2850、Mw/Mn1.5、Tg32℃であった。
【0168】
[製造例2](C−2の製造例)
撹拌翼を取り付けた反応容器を窒素置換した後、5−(2−ヒドロキシエトキシ)イソフタル酸50gを投入し、200℃で撹拌しながら溶融させた後、二酢酸ジブチルスズ0.1g加え、15分撹拌した。200℃、67Paで15分重縮合させた後、テトラヒドロフラン300mLに溶解させ、石油エーテル2Lに投入して得られた沈殿物を90℃で熱風乾燥機を用いて乾燥させ、分岐状ポリマーとしてハイパーブランチ芳香族ポリステル(C−2)42gを得た。C−2を分析した結果、Mn4500、Mw10500、Mw/Mn2.3、Tg136℃であった。
【0169】
[製造例3](C−3の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、1,6−ヘキサンジオールベースのポリカーボネートジオール(Mn600)50gとトリメシン酸20gを投入した。窒素気流下、120℃で撹拌しながら15分間保持した後、ジブチルスズオキシド0.1gを添加し、150℃、10kPaで3時間重縮合させた。その後、テトラヒドロフラン300mLに溶解させ、石油エーテル2Lに投入して得られた沈殿物を90℃で熱風乾燥機を用いて乾燥させ、分岐状ポリマーとしてハイパーブランチ芳香族ポリエステルカーボネート(C−3)45gを得た。C−3を分析した結果、Mn6500、Mw15300、Mw/Mn2.3、Tg45℃であった。
【0170】
[製造例4](C−4の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、アジピン酸65部、1,4−シクロヘキサンジメタノール20部、1,4−ブタンジオール20部およびエチレングリコール10部を仕込み、窒素気流下、200℃、150kPaで1時間反応させ、さらに、220℃、40kPaで3時間反応させ、低分子量直鎖状ポリエステルとして、脂肪族ポリエステル(C−4)を得た。C−4を分析した結果、Mn2500、Mw5750、Mw/Mn2.3であった。
【0171】
[製造例5](C−5の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、テレフタル酸60部、1,4−ブタンジオール25部およびエチレングリコール15部を仕込み、窒素気流下、180℃で1時間反応させ、さらに、220℃、40kPaで3時間反応させた。常圧に戻した後、o−ベンゾイル安息香酸メチル15部を添加し、220℃、67Paで1時間反応させ、低分子量直鎖状ポリエステルとして、芳香族ポリエステル(C−5)を得た。C−5を分析した結果、Mn1600、Mw3100、Mw/Mn1.9、ヒドロキシル末端基量5モル%、o−ベンゾイル安息香酸エステル末端基量90モル%であった。
【0172】
[製造例6](C−6の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、1,6−ヘキサンジオール56部、炭酸ジメチル43部を仕込み、窒素気流下、120℃で撹拌しながら15分間保持した後、テトラブトキシチタン0.1gを添加し、窒素気流下、190℃、10kPaで5時間反応し、さらに200℃、67Paで5時間反応させ、低分子量直鎖ポリカーボネートとして脂肪族ポリカーボネート(C−6)を得た。C−6を分析した結果、Mn1800、Mw2850、Mw/Mn1.5、ヒドロキシル末端基量95モル%、メチルカーボネート末端基量5モル%であった。
【0173】
[製造例7](C−7の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン68部、炭酸ジフェニル77部を仕込み、窒素気流下、180℃で撹拌しながら15分間保持した後、230℃で1時間反応させ、さらに、230℃、67Paで0.5反応させ、低分子量直鎖ポリカーボネートとして芳香族ポリカーボネート(C−7)を得た。C−7を分析した結果、Mn3200、Mw6150、Mw/Mn1.9、ヒドロキシル末端基量25モル%、フェニルカーボネート末端基量75モル%であった。
【0174】
[製造例8](C−8の製造例)
撹拌翼、冷却器を備えた反応容器を窒素置換した後、4,4’−ジアセトキシビフェニル30部と安息香酸25部を仕込み、窒素気流下、200℃で撹拌しながら1時間反応させ、260℃で3時間反応させた。ソックスレー抽出器でアセトンを除去し、芳香族系低分子化合物として、4,4’−ジベンゾイルオキシビフェニル(C−8)を得た。C−8を分析した結果、Mn450、Tm252℃であった。
【0175】
[製造例9](C−9の製造例)
撹拌翼、還流装置および滴下装置のついた反応容器を窒素置換した後、モノマーとしてメタクリル酸メチル30部、アクリル酸30部、スチレン30部、α−メチルスチレン20部、溶媒としてベンゼン、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルおよび連鎖移動剤としてn−ラウリルメルカプタンを仕込み、窒素気流下、80℃、1時間溶液重合を行い、重合反応終了後、130Paの減圧下にて、溶媒および残存モノマーを除去し、アクリル系化合物として、メタクリル酸メチル/アクリル酸/スチレン/α−メチルスチレン共重合体(C−9)を得た。C−9を分析した結果、Mw19000、Tg50℃であった。
【0176】
また、本発明で用いた測定方法および評価方法を以下に示す。
【0177】
(1)Mn、MwおよびMw/Mn
GPCにより測定した標準PMMA換算の値である。GPC測定は、検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410を用い、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィーを用い、カラムにShodex GPC K−806MとShodex GPC K−Gを直列に接続したものを用い、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、流速0.5mL/minとし、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入して測定した。
【0178】
(2)固有粘度
o−クロロフェノール溶媒を用いて試料濃度5mg/mLの溶液とし、25℃で測定した。
【0179】
(3)ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
示差走査型熱量計(セイコー電子製RDC220)により測定した。測定条件は、試料10mg、窒素雰囲気下中、昇温速度20℃/分である。
【0180】
(4)カルボキシル末端基量
o−クレゾール/クロロホルム溶媒に試料1.5gを溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した。
【0181】
(5)その他の末端基量
1H−NMR測定により測定した値である。1H−NMR測定は、日本電子製JNM−AL400を用いて、溶媒として重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールを用い、試料濃度20mg/mLとして測定した。
【0182】
(6)流動性
厚み0.5mm、幅10mmのバーフロー成形品を用い、流動長により判断した。射出条件は、(A)熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6の場合、シリンダー温度240℃、金型温度80℃、射出圧60MPa、射出速度100mm/sとし、(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂の場合、シリンダー温度260℃、金型温度40℃、射出圧80MPa、射出速度100mm/sとした。
【0183】
(7)引張強度
ASTM D638に従って、ASTM1号ダンベル成形品の引張強度を測定した。
【0184】
(8)耐衝撃性
ASTM D256に従って、3mm厚ノッチ付き成形品のアイゾット衝撃強度を測定した。
【0185】
(9)リサイクル性
(A)熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6の場合は、ASTM1号ダンベル成形品を、(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂の場合は、3mm厚ノッチ付き成形品を粉砕機により粉砕し、再度射出成形を行った。射出成形/粉砕工程を3回繰り返し、(A)熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ナイロン6の場合は、引張強度を、(A)熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂の場合は、アイゾット衝撃強度を、上記の方法(7)、または、上記の方法(8)により測定し、強度保持率=(3回目の強度/1回目の強度)×100(%)を求めた。
【0186】
[実施例1〜20、比較例1〜5]
表1および表2に示す配合比率で(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤を配合し、L/D=45の二軸押出機を用いて、一括投入混練法により溶融混練を行った。溶融混練条件は、シリンダー温度250℃、回転数200rpmとし、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得た樹脂組成物を住友重機械工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形し、各種評価用成形品を得た。評価結果を表1および表2に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
【表2】

【0189】
(A)熱可塑性樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量37eq/t)
A−2:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量15eq/t)
A−3:ポリプロピレンテレフタレート(融点235℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量30eq/t)
(B)3個以上の官能基を有する化合物
B−1:トリメチロールプロパン(分子量134、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、アルドリッチ製)
B−2:トリスヒドロキシメチルアミノメタン(分子量121、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、和光純薬工業製)
B−3:ポリオキシエチレントリメチロールプロパン(分子量266、1官能基当たりのアルキレンオキシド(エチレンオキシド)単位数1、日本乳化剤製TMP−30)
B−4:ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン(分子量308、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1、日本乳化剤製TMP−F32)
B−5:ポリオキシプロピレンペンタエリスリトール(分子量630、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数2.1、パーストープ製“Polyol”4360)
B−6:トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテル(分子量450、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1.8、ハンツマン製“ジェファーミン”T−403)
(C)流動性改良剤
C−1:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ脂肪族ポリエステル(製造例1)
C−2:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステル(製造例2)
C−3:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステルカーボネート(製造例3)
C−4:低分子量直鎖状ポリエステル:脂肪族ポリエステル(製造例4)
C−5:低分子量直鎖状ポリエステル:芳香族ポリエステル(製造例5)
C−6:低分子量直鎖状ポリカーボネート:脂肪族ポリカーボネート(製造例6)
C−7:低分子量直鎖状ポリカーボネート:芳香族ポリカーボネート(製造例7)
C−8:芳香族系低分子化合物(製造例8)
C−9:アクリル系化合物(製造例9)。
【0190】
表1および表2の結果より以下のことが明らかである。
実施例1〜20と比較例1〜5との比較から、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)流動性改良剤を0.01〜50重量部を配合してなる樹脂組成物は、流動性およびリサイクル性に優れることがわかる。特に、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜4重量部配合した場合および/または(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を含む場合、かつ、(C)流動性改良剤を0.1〜4重量部配合した場合および/または(C)流動性改良剤がハイパーブランチポリマーである場合に、流動性、リサイクル性および機械特性に優れることがわかる。
【0191】
[実施例21〜27、比較例6〜7]
表3に示す配合比率で(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤を配合し、L/D=45の二軸押出機を用いて、一括投入混練法により溶融混練を行った。溶融混練条件は、シリンダー温度260℃、回転数200rpmとし、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得た樹脂組成物を住友重機械工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度260℃、金型温度40℃で射出成形し、各種評価用成形品を得た。評価結果を表4に示す。
【0192】
【表3】

【0193】
(A)熱可塑性樹脂
A−4:ポリカーボネート樹脂(出光興産製“タフロン”A1900)
(B)3個以上の官能基を有する化合物
B−1:トリメチロールプロパン(分子量134、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、アルドリッチ製)
B−4:ポリオキシプロピレントリメチロールプロパン(分子量308、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1、日本乳化剤製TMP−F32)
B−5:ポリオキシプロピレンペンタエリスリトール(分子量630、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数2.1、パーストープ製“Polyol”4360)
(C)流動性改良剤
C−1:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ脂肪族ポリエステル(製造例1)
C−2:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステル(製造例2)
C−4:低分子量直鎖状ポリエステル:脂肪族ポリエステル(製造例4)
C−8:芳香族系低分子化合物(製造例8)
C−9:アクリル系化合物(製造例9)。
【0194】
表3の結果より以下のことが明らかである。
実施例21〜27と比較例6〜7との比較から、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)流動性改良剤を0.01〜50重量部を配合してなる樹脂組成物は、流動性およびリサイクル性に優れることがわかる。特に、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜4重量部配合した場合および/または(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を含む場合、かつ、(C)流動性改良剤を0.1〜4重量部配合した場合および/または(C)流動性改良剤がハイパーブランチポリマーである場合に、流動性、リサイクル性および耐衝撃性に優れることがわかる。
【0195】
[実施例28〜38、比較例8〜9]
表4に示す配合比率で(A)熱可塑性樹脂、(B)3個以上の官能基を有する化合物および(C)流動性改良剤を配合し、L/D=45の二軸押出機を用いて、溶融混練を行った。(A)熱可塑性樹脂、(C)流動性改良剤など(B)成分および(E)成分以外の成分を一括配合し、押出機スクリュー根元の主投入口(ホッパー)から供給し、主投入口と押出機先端の間に設置した副投入口から(B)3個以上の官能基を有する化合物を供給する個別投入混練法とし、また、(E)充填剤をサイドフィーダーより押出機内へフィードするサイドフィード法により溶融混練を行った。溶融混練条件は、シリンダー温度250℃、回転数120rpmとし、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得た樹脂組成物を住友重機械工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で射出成形し、各種評価用成形品を得た。評価結果を表4に示す。
【0196】
【表4】

【0197】
(A)熱可塑性樹脂
A−1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量37eq/t)
A−2:ポリブチレンテレフタレート樹脂(融点223℃、固有粘度1.00dl/g、カルボキシル末端基量15eq/t)
A−5:ナイロン6樹脂(東レ製“アミラン”CM1010)
(B)3個以上の官能基を有する化合物
B−1:トリメチロールプロパン(分子量134、1官能基当たりのアルキレンオキシド単位数0、アルドリッチ製)
B−5:ポリオキシプロピレンペンタエリスリトール(分子量630、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数2.1、パーストープ製“Polyol”4360)
B−6:トリメチロールプロパントリス[ポリ(プロピレングリコール)アミン]エーテル(分子量450、1官能基当たりのアルキレンオキシド(プロピレンオキシド)単位数1.8、ハンツマン製“ジェファーミン”T−403)
(C)流動性改良剤
C−1:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ脂肪族ポリエステル(製造例1)
C−2:分岐状ポリマー:ハイパーブランチ芳香族ポリエステル(製造例2)
C−8:芳香族系低分子化合物(製造例8)
C−9:アクリル系化合物(製造例9)
(D)末端封鎖剤
D−1:バーサティック酸グリシジルエステル(ジャパンエポキシレジン製“カージュラー”E10P、エポキシ当量240g/eq)。
【0198】
(E)充填剤
E−1:ガラス繊維(日東紡製CS3J948)
E−2:ガラス繊維(日本電気硝子製T−249)。
【0199】
(F)耐衝撃性改良剤
F−1:エチレン/エチルアクリレート共重合体(三井・デュポン・ポリケミカル製“EVAFLEX”EEA A−709)。
【0200】
表4の結果より以下のことが明らかである。
実施例28〜38と比較例8〜9との比較から、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)流動性改良剤を0.01〜50重量部および(E)充填剤を配合してなる樹脂組成物は、流動性、機械特性、リサイクル性に優れることがわかる。さらに、(F)耐衝撃改良剤を配合してなる場合には、耐衝撃性にも優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)3個以上の官能基を有する化合物を0.1〜10重量部および(C)分岐状ポリマー、低分子量直鎖状ポリエステル、低分子量直鎖状ポリカーボネート、芳香族系低分子化合物またはアクリル系化合物から選択される少なくとも1種の流動性改良剤を0.01〜50重量部配合してなる樹脂組成物。
【請求項2】
(B)3個以上の官能基を有する化合物が、3個以上の官能基を有する多官能性化合物であって、官能基を有する末端構造の少なくとも1個が式(1)で表される構造である化合物である請求項1に記載の樹脂組成物。
−(O−R)n−X (1)
(Rは、炭素数1〜15の炭化水素基を表し、nは、1〜10の整数を表し、Xは、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基から選択される少なくとも1種の官能基を表す。)
【請求項3】
(B)3個以上の官能基を有する化合物がアルキレンオキシド単位を1個以上含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)3個以上の官能基を有する化合物の官能基が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、エステル基、アミド基から選択される少なくとも1種の基である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(D)末端封鎖剤を配合してなる請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(E)充填剤を配合してなる請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(F)耐衝撃性改良剤を配合してなる請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。

【公開番号】特開2009−155411(P2009−155411A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333520(P2007−333520)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】