説明

樹脂組成物およびそれからなる成形品

【課題】成形性、耐衝撃性および耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、(B)結晶核剤0.1〜50重量部、(B)結晶核剤100重量部に対して、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜300重量部を配合してなる樹脂組成物であって、透過型電子顕微鏡写真にて、樹脂組成物中における(B)結晶核剤の平均L/D(長軸方向長さ(L)を短軸方向長さ(D)で割った値)が10以上、(B)結晶核剤の長軸方向長さ(L)が30μm以下である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、(B)結晶核剤0.1〜50重量部、(B)結晶核剤100重量部に対して、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜300重量部を配合してなり、成形性、耐衝撃性および耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、地球環境保全の見地から、土中や水中に存在する微生物の作用により自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目されており、様々な生分解性ポリマーが開発されている。これらのうち溶融成形が可能な生分解性ポリマーとして、例えば、ポリヒドロキシブチレートやポリカプロラクトン、コハク酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールやブタンジオールなどのグリコール成分とからなる脂肪族ポリエステルおよびポリ乳酸などがよく知られている。これらの中でも、ポリ乳酸樹脂は、モノマーである乳酸を、とうもろこしなどのバイオマスを原料として、微生物を利用した発酵法により安価に製造できるようになり、また、融点もおよそ170℃と高く、溶融成形可能なバイオポリマーとして期待されている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は、結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるには限界があり、例えば、ポリ乳酸樹脂を射出成形する場合には、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とするだけでなく、成形時や熱処理時の変形が大きいなど、実用的には大きな問題があった。
【0003】
この問題を改良するための方法の一つとして、結晶核剤や、分散剤、結晶化促進剤を添加する方法が従来から検討されている。
【0004】
特許文献1では、熱可塑性樹脂、可塑剤、結晶核剤を含有し、成形性、耐熱性、耐衝撃性に優れる樹脂組成物および射出成形品が開示されている。しかしながら、耐熱性、耐衝撃性などの特性についてはある程度の改良効果を有するものの、成形性はまだ不十分であり、結晶核剤の分散については一切開示はなく、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
【0005】
特許文献2では、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤を含有し、成形加工性、耐衝撃性、耐熱性などに優れる樹脂組成物が開示されている。しかしながら、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性については一切具体的な開示はなく、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
【0006】
特許文献3には、熱可塑性ポリマー、核生成剤、分散剤、可塑剤を含有し、成形性などに優れるシートおよび製品が開示されている。しかしながら、射出成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性については一切開示はなく、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
【0007】
特許文献4には、ポリ乳酸、ポリグリセリン脂肪酸エステルまたはポリグリセリン縮合ヒドロキシ脂肪酸エステルを含有し、熱的特性、柔軟性に優れるポリ乳酸組成物が開示されている。しかしながら、耐熱性などの特性についてはある程度の改良効果を有するものの、成形性、耐衝撃性などの特性については一切開示はなく、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得るための解決手段については全く示唆されていない。
【0008】
以上のように、いずれの方法を用いても、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性のいずれにも優れる樹脂組成物を得ることは非常に困難であるが、実用的に問題なく使用できる材料への要望は多く、さらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−91453号公報(第1−3頁、実施例)
【特許文献2】特開2006−193561号公報(第1−9頁)
【特許文献3】特開2003−523432号公報(第1−2頁、実施例)
【特許文献4】特開2008−69299号公報(第1−2頁、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した先行技術において困難であった、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、(B)結晶核剤0.1〜50重量部、(B)結晶核剤100重量部に対して、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜300重量部を配合してなる樹脂組成物であって、透過型電子顕微鏡写真にて、樹脂組成物中における(B)結晶核剤の平均L/D(長軸方向長さ(L)を短軸方向長さ(D)で割った値)が10以上、(B)結晶核剤の長軸方向長さ(L)が30μm以下である樹脂組成物、
(2)前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンおよび炭素数12以上の脂肪酸との脂肪酸エステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルである(1)記載の樹脂組成物、
(3)前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、平均重合度1.5〜3のポリグリセリンと、ステアリン酸との脂肪酸エステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルである(1)〜(2)いずれか記載の樹脂組成物、
(4)前記(B)結晶核剤が、タルクである(1)〜(3)いずれか記載の樹脂組成物、
(5)(B)結晶核剤、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なる(D)結晶化促進剤を配合してなることを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載の樹脂組成物、
(6)(1)〜(5)いずれか記載の樹脂組成物からなる成形品
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成形性、耐衝撃性、耐熱性などの特性に優れる樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[(A)ポリ乳酸系樹脂]
本発明において、(A)ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、およびグリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などから生成する単位が挙げられる。このような共重合単位は、全単量体単位を100モル%としたときに、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0015】
本発明において、成形性、耐熱性の点で、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸系樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸系樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかまたはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかまたはD体が90%以上含まれることがさらに好ましく、L体が95%以上含まれるかまたはD体が95%以上含まれることが特に好ましく、L体が98%以上含まれるかまたはD体が98%以上含まれることが最も好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
【0016】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂としては、成形性、耐熱性の点で、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを用いることが好ましい。ポリ乳酸ステレオコンプレックスを形成させる方法としては、例えば、L体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−L−乳酸と、D体が90%以上、耐熱性の点で、好ましくは95%、より好ましくは98%以上のポリ−D−乳酸を溶融混練、固相混練または溶液混合などの手法を用いて混合する方法を挙げることができ、また、別の方法として、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法も挙げることができ、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを容易に形成させることができるという点で、ポリ−L−乳酸セグメントおよびポリ−D−乳酸セグメントからなるブロック共重合体とする方法が好ましい。また、ポリ乳酸ステレオコンプレックスを単独で用いてもよいが、ポリ乳酸ステレオコンプレックスとポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を併用して用いてもよい。
【0017】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法およびラクチドを介する開環重合法などを用いることができる。
【0018】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂の分子量や分子量分布は、実質的に成形加工が可能であれば、特に限定されるものではないが、相構造を制御しやすくなり、耐衝撃性が向上するという点で、重量平均分子量としては、好ましくは1万以上、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上、特に好ましくは20万以上であるのがよい。上限は特に制限されないが、好ましくは80万以下、さらに好ましくは60万以下、より好ましくは40万以下であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算の重量平均分子量である。
【0019】
本発明において、ポリ乳酸系樹脂の融点については、特に限定されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
【0020】
[(B)結晶核剤]
本発明において、(B)結晶核剤とは、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のうち、無機系結晶核剤のことであり、有機系結晶核剤とは、後述する(D)結晶化促進剤に含まれる。
【0021】
本発明において、無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、クレイ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという点で、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカおよび合成マイカが好ましく、成形性の点で、タルクがより好ましい。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。これらの無機系結晶核剤は、樹脂組成物中での分散性を向上させるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
【0022】
本発明において、原料として用いられる(B)結晶核剤のD50平均粒子径は、0.001〜20μmであることが好ましく、0.01〜10μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることがさらに好ましい。
【0023】
本発明において、樹脂組成物中での(B)結晶核剤の分散性を向上させることが、成形性、耐衝撃性および耐熱性の点で好ましく、原料として用いられる(B)結晶核剤のD50平均粒子径が小さいほど、樹脂組成物中での(B)結晶核剤の分散性を向上させることができ、成形性、耐衝撃性および耐熱性の点でさらに好ましい。
【0024】
本発明において、(B)結晶核剤および(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを併用して添加することにより、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルを添加しない場合に比べ、樹脂組成物中での(B)結晶核剤の分散性をさらに向上させることができる。ここでいう樹脂組成物中での(B)結晶核剤の分散性とは、後述する(B)結晶核剤の平均L/Dで定量化することができる。
【0025】
本発明において、(B)結晶核剤の配合量は、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.01〜100重量部が好ましく、0.1〜50重量部がより好ましい。
【0026】
[(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル]
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応により得られるエステルである。
【0027】
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成成分であるポリグリセリンを具体的に示すと、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリンなどが挙げられ、平均重合度1.5〜5のポリグリセリンであるジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリンが好ましく、平均重合度1.5〜3のポリグリセリンであるジグリセリン、トリグリセリンがより好ましく、平均重合度2のジグリセリンが特に好ましい。
【0028】
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルのもう一方の構成成分である脂肪酸は、炭素数が12以上の脂肪酸が用いられる。具体的に示すと、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ガドレイ酸、エイコサジエン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸、リグノセリン酸、イソステアリン酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、9−ヒドロキシステアリン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、水素添加ヒマシ油脂肪酸(12−ヒドロキシステアリン酸の他に少量のステアリン酸及びパルミチン酸を含有する脂肪酸)などが挙げられ、好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸であり、これらの1種又は2種以上の混合物でもよい。
【0029】
本発明において、ポリグリセリンと脂肪酸エステルから得られるポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステルが挙げられ、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンパルミチン酸エステルが好ましく、ジグリセリンステアリン酸エステルがより好ましく用いられる。
【0030】
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの製造方法は、特に限定するものではないが、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応、ポリグリセリンと脂肪酸エステル類とのエステル交換反応、ポリグリセリンと油脂類とのエステル交換反応が例示でき、またポリグリセリンを用いなくとも、例えば脂肪酸へのグリシドールの付加重合反応によってもポリグリセリン脂肪酸エステルは得られるが、本発明で使用するポリグリセリン脂肪酸エステルは、いずれの合成方法から得られるものでもよいが、成形性、耐衝撃性および耐熱性の点で、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応が好ましい。
【0031】
本発明において、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化反応は、上記原料を用いてアルカリ触媒下、酸触媒下、または無触媒で、常圧下、減圧下、または不活性ガス存在下、100℃〜300℃の範囲で加熱しながら反応させるのが好ましく、特に、アルカリ触媒下または酸触媒下、不活性ガス存在下、120℃〜260℃の範囲で加熱し、生成水を系外に除去しながら反応させるのが好ましい。また、トルエンまたはキシレンなどの共沸溶剤中で行ってもよい。このとき、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸エステル化率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルは必要に応じて精製を行ってもよい。精製の方法は公知のいかなる方法でもよく特に限定するものではない。例えば、活性炭や活性白土などで吸着処理したり、水蒸気、窒素などをキャリアーガスとして用いて減圧下処理を行ったり、または酸やアルカリを用いて洗浄を行ったり、分子蒸留を行ったりして精製してもよく、液液分配や吸着剤、樹脂、分子篩、ルーズ逆浸透膜、ウルトラフィルトレーション膜などを用いて未反応ポリグリセリンなどを分離除去するなどしてもよい。
【0033】
本発明において、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルの配合量は、(B)結晶核剤100重量部に対し、0.1〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましく、30〜100重量部がさらに好ましい。
【0034】
[(B)結晶核剤の平均L/D]
本発明において、(B)結晶核剤の平均L/Dとは、樹脂組成物中での(B)結晶核剤の分散性を定量化したものであり、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、2千倍の倍率で樹脂組成物を観察し、任意の(B)結晶核剤10個について、その形状を観察測定し、最も長い長さである長軸方向長さ(L)を、最も短い長さである短軸方向長さ(D)で割った値の平均値であり、(B)結晶核剤の平均L/Dが10以上であることが好ましい。また、本発明において、樹脂組成物中における(B)結晶核剤の長軸方向長さ(L)が30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μmであることがさらに好ましい。
【0035】
[(D)結晶化促進剤]
本発明において、(B)結晶核剤、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なる(D)結晶化促進剤を用いることが好ましい。
【0036】
本発明において、(D)結晶化促進剤としては、有機系結晶核剤、可塑剤などを挙げることができる。
【0037】
本発明において、有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などのカルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウムなどが挙げられ、耐熱性を向上させる効果が大きいという観点からは、有機カルボン酸金属塩およびカルボン酸アミドが好ましい。これらは単独ないし2種以上用いることができる。
【0038】
本発明において、可塑剤としては、一般的な公知の可塑剤のいずれをも制限なく用いることができ、例えば、ポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ヒマシ油系可塑剤などを挙げることができる。
【0039】
本発明において、ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸、セバチン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸などの酸成分と、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのジオール成分からなるポリエステルやポリカプロラクトンなどのヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルなどを挙げることができる。これらのポリエステルは単官能カルボン酸もしくは単官能アルコールで末端封鎖されていてもよく、またエポキシ化合物などで末端封鎖されていてもよい。
【0040】
本発明において、グリセリン系可塑剤の具体例としては、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノモンタネートまたはグリセリントリアセテートなどを挙げることができ、ポリオキシエチレングリセリントリアセテートなどのようにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド単位を付加されているものでもよい。なお、本発明において、グリセリン系可塑剤には、ポリグリセリン脂肪酸エステルは含まないものとする。
【0041】
本発明において、多価カルボン酸系可塑剤としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジベンジルまたはフタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸エステル、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチルまたはトリメリット酸トリヘキシルなどのトリメリット酸エステル、コハク酸イソデシル、コハク酸トリエチレングリコールモノメチルエーテルエステルまたはコハク酸ベンジルメチルジグリコールエステルなどのコハク酸エステル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸n−オクチル−n−デシルエステル、アジピン酸ジエチレングリコールモノメチルエーテルエステル、アジピン酸メチルジグリコールブチルジグリコールエステル、アジピン酸ベンジルメチルジグリコールエステル、アジピン酸またはアジピン酸ベンジルブチルジグリコールエステルなどのアジピン酸エステル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチルまたはセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステルなどを挙げることができる。
【0042】
本発明において、ポリアルキレングリコール系可塑剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックおよび/またはランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールまたはそれらの末端エポキシ変性化合物または末端エーテル変性化合物などの末端封鎖化合物などを挙げることができ、耐熱性の点で、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)ブロックおよび/またはランダム共重合体が好ましい。
【0043】
本発明において、エポキシ系可塑剤としては、一般にはエポキシステアリン酸アルキルと大豆油とからなるエポキシトリグリセリドなどを指すが、その他にも、主にビスフェノールAとエピクロロヒドリンを原料とするような、いわゆるエポキシ樹脂も使用することができる。
【0044】
本発明において、ヒマシ油系可塑剤としては、ヒマシ油およびその誘導体であれば、いずれでもよく、例えば、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、ヒマシ硬化油、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、リシノール酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、セバシン酸、ウンデシレン酸、ヘプチル酸、ヒマシ油脂肪酸縮合物、ヒマシ油脂肪酸エステル、メチルリシノレート、エチルリシノレート、イソプロピルリシノレート、ブチルリシノレート、エチレングリコールモノリシレート、プロピレングリコールモノリシレート、トリメチロールプロパンモノリシレート、ソルビタンモノリシレート、ヒマシ油脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油系ポリオール、ヒマシ油系トルオールまたはヒマシ油系ジオールなどを挙げることができ、透明性の点で、ヒマシ油脂肪酸エステル、メチルリシノレート、エチルリシノレート、イソプロピルリシノレート、ブチルリシノレート、エチレングリコールモノリシレート、プロピレングリコールモノリシレート、トリメチロールプロパンモノリシレート、ソルビタンモノリシレート、ヒマシ油脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油系ポリオール、ヒマシ油系トルオールまたはヒマシ油系ジオールが好ましい。
【0045】
また、その他の可塑剤としては、ネオペンチルグリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、ポリオキシエチレンジアセテート、ポリオキシエチレンジ(2−エチルヘキサノエート)、ポリオキシプロピレンモノラウレート、ポリオキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシエチレンジベンゾエート、ポリオキシプロピレンジベンゾエートなどのポリオールエステル、オレイン酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸エトキシカルボニルメチルジブチル、クエン酸ジ−2−エチルヘキシル、アセチルリシノール酸メチルまたはアセチルリシノール酸ブチルなどのオキシ酸エステル、大豆油、大豆油脂肪酸、大豆油脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油、菜種油、菜種油脂肪酸、菜種油脂肪酸エステル、エポキシ化菜種油、亜麻仁油、亜麻仁油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸エステル、エポキシ化亜麻仁油、ヤシ油またはヤシ油脂肪酸などの植物油系化合物、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリアクリル酸エステル、シリコーンオイルまたはパラフィン類などを挙げることができる。
【0046】
本発明において、可塑剤は、1種でもよく、2種以上を併用してもよいが、成形性および耐熱性の点で、2種以上を含むものであることが好ましく、少なくとも1種がポリアルキレングリコール系可塑剤であることがより好ましい。なお、ポリアルキレングリコール系可塑剤を2種以上併用することもできる。
【0047】
本発明において、(D)結晶化促進剤の配合量は、成形性、耐衝撃性および耐熱性の点で、(A)ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、1〜20重量部の範囲が好ましく、2〜10重量部の範囲がより好ましく、2〜7重量部の範囲がさらに好ましい。
【0048】
[その他の添加剤]
本発明において、本発明の目的を損なわない範囲で、通常の添加剤、例えば、無機結晶核剤とは異なる充填剤(ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、天然繊維、有機繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、セラミックスファイバー、セラミックビーズ、アスベスト、ワラステナイト、セリサイト、ベントナイト、ドロマイト、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトまたは白土など)、触媒失活剤(ヒンダードフェノール系化合物、チオエーテル系化合物、ビタミン系化合物、トリアゾール系化合物、多価アミン系化合物、ヒドラジン誘導体系化合物、リン系化合物など)、紫外線吸収剤(レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、熱安定剤(ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、滑剤、離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(ニグロシンなど)および顔料(硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、難燃剤(赤燐、燐酸エステル、ブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、シリコン化合物など)、導電剤あるいは着色剤(カーボンブラックなど)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、帯電防止剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0049】
[製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法は、本発明で規定する要件を満たす限り、特に限定されるものではないが、例えば、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)結晶核剤および(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、必要に応じて(D)結晶化促進剤、およびその他の添加剤を、単軸または二軸押出機などを用いて、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を揮発させ除去する方法などが好ましく用いられる。
【0050】
本発明において、単軸または二軸押出機などを用いて溶融混練する方法としては、好ましい相構造を有する樹脂組成物を得るために、例えば、(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)結晶核剤および(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、必要に応じて(D)結晶化促進剤およびその他添加剤を一括で原料供給口から投入して溶融混練する方法、メインフィーダーから(A)ポリ乳酸系樹脂、(B)結晶核剤および(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル、必要に応じて(D)結晶化促進剤を供給し、必要に応じてその他の添加剤を押出機の途中に設置したサイドフィーダーから供給する方法などが挙げられる。
【0051】
本発明において、樹脂組成物を製造する際の、溶融混練温度は、170〜250℃が好ましく、175℃〜240℃がさらに好ましく、180〜230℃が特に好ましい。
【0052】
[成形品および用途]
本発明の樹脂組成物は、公知の各種成形法により、成形品とすることができる。成形法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などが好ましく、射出成形品、押出成形品、プレス成形品およびブロー成形品など各種成形品に加工することにより特に有用に利用することができ、また、シート、フィルム、繊維などとして利用することができる。
【0053】
本発明において、成形法として、射出成形を選択する場合は、金型温度としては、成形性、耐衝撃性および耐熱性の点から、30〜120℃が好ましく、50〜100℃がより好ましく、70〜99℃がさらに好ましい。
【0054】
本発明の樹脂組成物からなる成形品は、自動車部品(内装・外装部品など)、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建築部材、土木部材、農業資材、および日用品など各種用途に利用することができる。具体的には、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、スペアタイヤカバー、ドアトリムなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターなどに代表される自動車部品を挙げることができる。また、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。さらに、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農業用塩ビフィルムの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被覆材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品などの包装用フィルム、トレー、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品などのラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布などのホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料など粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレー、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
【実施例】
【0055】
以下実施例により本発明を説明する。
【0056】
実施例および比較例は、下記材料を表に示す配合で用いたが、これらは本発明を限定するものではない。
【0057】
(A)ポリ乳酸系樹脂
(A−1)ポリL乳酸樹脂(D体1.2%、重量平均分子量(PMMA換算)16万、融点170℃)
(A−2)ポリL乳酸樹脂(D体0.5%、重量平均分子量15万(PMMA換算)、融点180℃)
(A−3)ポリ乳酸ステレオコンプレックス(重量平均分子量15万(PMMA換算)、融点210℃)
【0058】
(B)結晶核剤
(B−1)タルク(D50平均粒子径4μm、日本タルク製P−6)
(B−2)タルク(D50平均粒子径0.9μm、スペシャリティミネラルズ製ウルトラタルク609)
【0059】
(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル
(C−1)ジグリセリンステアリン酸エステル(ポリグリセリン平均重合度2、脂肪酸炭素数18、脂肪酸エステル化率63%)[参考例2]
(C−2)ジグリセリンパルミチン酸エステル(ポリグリセリン平均重合度2、脂肪酸炭素数16、脂肪酸エステル化率69%)[参考例3]
【0060】
(D)結晶化促進剤
(D−1)ポリアルキレングリコール系可塑剤
(D−1−1)ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール共重合体(アデカ製プルロニックF68)
(D−1−2)ポリエチレングリコール(三洋化成工業製PEG6000S)
(D−2)多価カルボン酸系可塑剤
(D−2−1)アジピン酸ベンジルメチルジグリコールエステル(大八化学工業製DAIFATTY−101)
【0061】
(E)その他の添加剤
(E−1)モノグリセリンステアリン酸エステル(ポリグリセリン平均重合度1、脂肪酸炭素数18、脂肪酸エステル化率65%)[参考例4]。
【0062】
[参考例1]
重量平均分子量15万(PMMA換算)のポリ−L−乳酸と重量平均分子量15万(PMMA換算)のポリ−D−乳酸50重量部ずつを配合し、30mm径、L/D=45の二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、シリンダー温度200℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、(A−3)ポリ乳酸ステレオコンプレックスを得た。
【0063】
[参考例2]
500ミリリットルの四ツ口フラスコにジグリセリン100重量部、ステアリン酸50重量部およびリン酸三カリウム0.1重量部を入れ、窒素気流下で生成水を除去しながら250℃で反応し、反応後、リン酸0.3重量部を加えて(C−1)ジグリセリンステアリン酸エステルを得た。
【0064】
[参考例3]
参考例2と同じ工程にて、ステアリン酸の代わりにパルミチン酸を入れ、(C−2)ジグリセリンパルミチン酸エステルを得た。
【0065】
[参考例4]
参考例2と同じ工程にて、ジグリセリンの代わりにモノグリセリンを入れ、(E−1)モノグリセリンステアリン酸エステルを得た。
【0066】
また、本発明で用いた測定方法および判定方法を以下に示す。
【0067】
(1)(A)ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した標準PMMA換算の重量平均分子量の値である。溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを用い、流速0.5mL/minとし、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1mL注入して測定した。
【0068】
(2)成形性(成形サイクル時間)
射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度210℃、金型温度90℃で射出成形を行い、成形性について、引張試験に供することができる引張試験片を金型から取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。
【0069】
(3)耐衝撃性(アイゾット衝撃強度)
ASTM D256に従って、3mm厚ノッチなし短冊状成形品のアイゾット衝撃強度を測定した。
【0070】
(4)耐熱性(DTUL)
ASTM D648に従って、12.7mm×127mm×3mmの成形品の荷重たわみ温度(荷重0.45MPa)を測定した。
【0071】
(5)(B)結晶核剤の平均L/D
12.7mm×127mm×3mmの成形品中心部から試料を切削し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、2千倍の倍率で樹脂組成物を観察し、観察部位を写真に撮った。写真では、(A)ポリ乳酸系樹脂は白色、(B)結晶核剤は黒色として識別される。樹脂組成物中における任意の(B)結晶核剤10個について、その形状を観察測定し、最も長い長さである長軸方向長さ(L)を、最も短い長さである短軸方向長さ(D)で割った値の平均値が(B)結晶核剤の平均L/Dであり、10以上の値であることが好ましい。また、樹脂組成物中における(B)結晶核剤の長軸方向長さ(L)が30μm以下であることが好ましい。
【0072】
[実施例1〜10、比較例1〜8]
表1、2に示すように原料を配合し、30mm径、L/D=45の二軸押出機(日本製鋼所製TEX−30α)を用い、シリンダー温度210℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。得た樹脂組成物を、射出成形機(住友重機械工業製SG75H−MIV)を用い、シリンダー温度210℃、金型温度90℃で射出成形を行い、成形品を得た。得た成形品を用いて、各種評価を行った結果を表1、2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1、2の結果から、(B)結晶核剤平均L/Dが10以上の実施例1〜10では、(B)結晶核剤平均L/Dが10以下の比較例1〜8より成形性、耐衝撃性および耐熱性に優れることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、(B)結晶核剤0.1〜50重量部、(B)結晶核剤100重量部に対して、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステル0.1〜300重量部を配合してなる樹脂組成物であって、透過型電子顕微鏡写真にて、樹脂組成物中における(B)結晶核剤の平均L/D(長軸方向長さ(L)を短軸方向長さ(D)で割った値)が10以上、(B)結晶核剤の長軸方向長さ(L)が30μm以下である樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、ポリグリセリンおよび炭素数12以上の脂肪酸との脂肪酸エステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルが、平均重合度1.5〜3のポリグリセリンと、ステアリン酸との脂肪酸エステルであるポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1〜2いずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)結晶核剤が、タルクである請求項1〜3いずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)結晶核剤、(C)ポリグリセリン脂肪酸エステルとは異なる(D)結晶化促進剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の樹脂組成物からなる成形品。

【公開番号】特開2012−136561(P2012−136561A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287885(P2010−287885)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】