説明

樹脂組成物及び樹脂成形体の製造方法

【課題】耐衝撃性と耐熱性が同時に改善されたポリ乳酸樹脂成形体を得ることができる樹脂組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】ポリ乳酸を主成分とするポリ乳酸樹脂と、前記ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進する結晶核剤と、活性水素基又はエポキシ基が表面に導入された球状のシリカ粒子からなる表面改質シリカ粒子と、前記ポリ乳酸及び前記シリカ粒子の間で反応を起こす架橋剤と、を有することを特徴とする。樹脂組成物中にシリカ粒子を含有させることにより耐熱性が向上することは予測できるものの、そのままでは耐衝撃性は低下することが通常である。これらの組み合わせを採用することにより高い耐熱性はそのままに耐衝撃性を著しく向上させることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂を含有する樹脂組成物及びその樹脂組成物を用いた樹脂成形体の製造方法に関し、より詳しくは耐衝撃性及び耐熱性に優れた成形体を提供することができる樹脂組成物及び樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境下で微生物の作用により、分解される生分解性樹脂が注目されている。生分解性樹脂は、土壌中や水中で、加水分解や生分解によって徐々に分解され、最終的には無害な分解物になることが知られている。
【0003】
その中でも特にポリ乳酸が注目されている。ポリ乳酸は、トウモロコシや砂糖キビ等の植物から合成されており、石油資源を原料に使用していないことから、カーボンニュートラルな材料として利用が期待されており、石油由来の樹脂が使われていた用途への代替材料として利用が徐々に進みつつある。
【0004】
しかしポリ乳酸は、従来の石油由来の汎用樹脂に比べて、機械的な伸びや柔軟性に劣り、耐衝撃性が低いという問題点がある。また、ポリ乳酸は、60℃以上の高温環境下で変形が発生し易い等、耐熱性が低いという問題点がある。
そこで従来からポリ乳酸の物性を改善するために、ポリ乳酸に他の成分を添加したポリ乳酸樹脂組成物が知られている(特許文献1〜6)。
【0005】
例えば、ポリ乳酸にポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、芳香族脂肪族ポリエステル及び球状のフィラーを含有するポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。また、ポリ乳酸に天然ゴム及びタルク等から選ばれる無機充填材を含有するポリ乳酸樹脂組成物が開示されている(特許文献2)。更に、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルに可塑剤と親水性シリカ粒子を含有する樹脂組成物が記載されている(特許文献3)。更に、ポリ乳酸樹脂に表面がアクリル系樹脂で被覆された無機粒子を含有する樹脂組成物が記載されている(特許文献4)。更に、カルボジイミドにより末端が封鎖されたポリ乳酸樹脂と結晶核剤、表面処理された補強繊維、表面処理された無機粒子とを含有する樹脂組成物が記載されている(特許文献5)。更に、ポリ乳酸樹脂にリン酸金属塩(結晶核剤)と無機充填剤を含有する樹脂組成物が記載されている(特許文献6)。
【特許文献1】特開2006−52342号公報
【特許文献2】特開2004−143315号公報
【特許文献3】特開2004‐189991号公報
【特許文献4】特開2007‐197521号公報
【特許文献5】特開2007‐154002号公報
【特許文献6】特開2004‐224990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂は様々な分野で用いられており、その中には高い耐衝撃性及び耐熱性が要求される分野もある。このような分野で用いるために、生分解性樹脂は、優れた耐衝撃性及び耐熱性を有することが必要となる。そこでポリ乳酸の欠点である耐衝撃性及び耐熱性が同時に改善されたポリ乳酸樹脂組成物の開発が望まれる。
【0007】
本発明は、耐衝撃性と耐熱性が同時に改善されたポリ乳酸樹脂成形体を得ることができる樹脂組成物及びそのような樹脂成形体の製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1に係る樹脂組成物の特徴は、ポリ乳酸を主成分とするポリ乳酸樹脂と、前記ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進する結晶核剤と、活性水素基又はエポキシ基が表面に導入された球状の無機フィラーからなる表面改質無機フィラーと、前記ポリ乳酸及び前記無機フィラーの間で反応を起こす架橋剤と、を有することにある。
【0009】
上記課題を解決する請求項2に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1において、前記表面改質無機フィラーが、活性水素基又はエポキシ基を有するオルガノシランを無機フィラーに反応させて得られることにある。
【0010】
上記課題を解決する請求項3に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1又は2において、前記無機フィラーがシリカであることにある。
【0011】
上記課題を解決する請求項4に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜3の何れかにおいて、前記無機フィラーの円形度が0.8以上であることにある。
【0012】
上記課題を解決する請求項5に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜4の何れかにおいて、前記無機フィラーの体積平均粒径が0.1μm〜10μmであることにある。
【0013】
上記課題を解決する請求項6に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜5の何れかにおいて、前記無機フィラーが金属シリコンを酸化することで得られる球状シリカであることにある。
【0014】
上記課題を解決する請求項7に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜5の何れかにおいて、前記無機フィラーが破砕シリカを加熱熔融することで得られる球状シリカであることにある。
【0015】
上記課題を解決する請求項8に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜7の何れかにおいて、前記活性水素基が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基から選択される1つ以上の官能基であることにある。
【0016】
上記課題を解決する請求項9に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜8の何れかにおいて、前記架橋剤が、イソシアネート基を2つ以上もつ化合物であることにある。
【0017】
上記課題を解決する請求項10に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜9の何れかにおいて、前記結晶核剤が、フェニルフォスホン酸金属塩、タルク、リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール化合物、脂肪族カルボン酸金属塩、トリメシン酸トリアミド化合物、窒化ホウ素、塩基性無機アルミニウム化合物、メラミン化合物塩、及び/又は、アマイド化合物(芳香族ヒドロキシモノカルボン酸及びアミン化合物( ヒドラジンを含む)から構成される)であることにある。
【0018】
上記課題を解決する請求項11に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜10の何れかにおいて、前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、前記表面改質無機フィラーが5〜50質量部、前記結晶核剤が0.1〜5質量部の混合比にしたことにある。
【0019】
上記課題を解決する請求項12に係る樹脂組成物の特徴は、請求項1〜11の何れかにおいて、前記無機フィラーが実質的に球状以外の形態のものを含まないことにある。
【0020】
上記課題を解決する請求項13に係る樹脂成形体の製造方法の特徴は、請求項1〜12に係る樹脂組成物を成形し成形体を得る成形工程を有することにある。
【0021】
上記課題を解決する請求項14に係る樹脂成形体の製造方法の特徴は、請求項13において、前記成形工程における前記成形体の成形と同時に熱処理を行うか、又は、前記成形工程後に前記成形体に熱処理を行う熱処理工程を有することにある。
【0022】
上記課題を解決する請求項15に係る樹脂成形体の製造方法の特徴は、請求項13において、前記熱処理工程における加熱温度及び加熱時間が前記ポリ乳酸樹脂の示差走査熱量測定法(DSC測定法)により求めた結晶化度が20%以上になるように組み合わせることにある。
【0023】
なお、本明細書中において、結晶化度を求めるためのDSC測定法とは、具体的には以下の方法によるものである。すなわち、先ず樹脂組成物からなる成形体である試験片から試料(5〜10mg)を採取してアルミパンに入れ、DSC(示差走査熱量計、島津製作所製、DSC−60)を用いて窒素雰囲気下で以下のように温度を変化させながら以下の諸熱量を測定する。
【0024】
・30℃ → 200℃ 、昇温速度10℃/分:途中で現れる結晶化による発熱量(ΔHc)と結晶融解による吸熱量(ΔHm)を測定する。
【0025】
このようにして測定されたΔHc、ΔHmに基づいて、以下の式:
結晶化度(%) ={(ΔHm−ΔHc)/135}×100
(上式中、「135」は、公知の文献で示されているポリ乳酸が100% 結晶化した場合の結晶融解熱(135J/g)を意味する。また、ΔHc、ΔHmは絶対値であり、それらの単位はJ/gである。)により結晶化度(%)を算出する。
【発明の効果】
【0026】
樹脂組成物中に無機フィラーを含有させることにより耐熱性が向上することは予測できるものの、そのままでは耐衝撃性は低下することが通常である。請求項1に係る発明においては、これらの組み合わせを採用することにより高い耐熱性はそのままに耐衝撃性を著しく向上させることができた。
【0027】
請求項2に係る発明においては、表面改質無機フィラーを得る方法として、無機フィラーに対して活性水素基又はエポキシ基を有するオルガノシランを反応させるといった簡便な方法を採用できる点で有利である。
【0028】
請求項3に係る発明においては、機械的特性に優れ、比重も比較的小さいシリカを無機フィラーとして採用することにより、質量増加は最小限に抑えた上で、高い機械的特性をもつ樹脂成形体をなす樹脂組成物を提供することができる。
【0029】
請求項4に係る発明においては、前記無機フィラーの円形度を0.8以上にすることで、優れた成形性を示す樹脂組成物を提供することができる。そして、請求項5に開示したように、無機フィラーの体積平均粒径が0.1μm〜10μmであることにより、優れた耐衝撃性を示す樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物を提供できる。例えば、無機フィラーとしてシリカを採用した場合に、円形度が高い及び/又は体積平均粒径が上述の範囲に含まれる、無機フィラーとしては請求項6又は7のようなものが挙げられる。
【0030】
請求項8に係る発明においては、活性水素基が、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基から選択される1つ以上の官能基であることにより、より優れた耐衝撃性を発揮できる樹脂成形体をなす樹脂組成物を提供することができる。
【0031】
請求項9に係る発明においては、架橋剤が、イソシアネート基を2つ以上もつ化合物であることにより、より優れた耐衝撃性を発揮できる樹脂成形体をなす樹脂組成物を提供することができる。
【0032】
請求項10に係る発明においては、結晶核剤として上述の材料、化合物などから構成することにより、より優れた耐衝撃性を発揮できる樹脂成形体をなす樹脂組成物を提供することができる。
【0033】
請求項11に係る発明においては、上記混合比を採用することにより、より優れた耐衝撃性を発揮できる樹脂成形体をなす樹脂組成物を提供することができる。
【0034】
請求項12に係る発明においては、無機フィラーとして実質的に球状以外の形態のものを含まないことにより、射出成形時などに問題となる流動性や、樹脂成形体の表面形態などに優れた樹脂組成物を提供することができる。
【0035】
請求項13に係る発明においては、上述の優れた樹脂組成物を製造することができる。そして、請求項14に係る発明においては、熱処理を行うことにより、乳酸樹脂の結晶化度が向上でき、より優れた耐衝撃性を発揮することができる。熱処理条件としては特に請求項15に係る発明のように、加熱温度及び加熱時間の組み合わせがポリ乳酸樹脂のDSC測定法により求めた結晶化度が20%以上になる組み合わせとすることにより、必要十分な量の加熱条件を採用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の樹脂組成物及び樹脂成形体の製造方法について以下実施形態に基づき詳細に説明を行う。本発明の樹脂組成物は成形したそのままの状態でも優れた耐衝撃性及び耐熱性を備えているが、加熱・成形又は成形・加熱することにより更に優れた耐衝撃性を発揮できる樹脂成形体を提供することできるものである。得られた樹脂成形体の用途としては特に限定されず、優れた機械特性が要求されるような用途に採用することも可能である。
【0037】
(樹脂組成物)
本実施形態の樹脂組成物はポリ乳酸樹脂と結晶核剤と表面改質無機フィラーと架橋剤とその他必要な部材とを有する。
【0038】
ポリ乳酸樹脂は乳酸を主成分とする樹脂である。ここで、主成分とするとはポリ乳酸樹脂を基準として50質量%以上含有することを意味し、可能ならば70質量%以上、90質量%以上、100質量%含有することが望ましい。ここで、乳酸とそれ以外の樹脂(単量体)とは共重合させたものであってもよい。また、上記ポリ乳酸樹脂は他の樹脂を混合したポリマーアロイなども含んでいる。共重合体としてはポリ乳酸−ポリカプロラクトン共重合体、ポリ乳酸−サクシネート共重合体、ポリ乳酸−サクシネートアジベート共重合体などが挙げられる。また、アロイなどの混合物を形成するのに好適な他の樹脂としてポリカーボネートや他の生分解性樹脂を挙げることができる。生分解性樹脂の具体例として、例えば、微生物が産生する生分解性樹脂(ポリヒドロキシブチレート等)、化学合成により得られる生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、及びポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール並びにポリアミノ酸等)、及び天然物由来の生分解性樹脂(キトサン、デンプン、酢酸セルロース等)等が挙げられる。尚、上記他の樹脂は、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
ポリ乳酸としては、D−乳酸からなるポリ乳酸、L−乳酸からなるポリ乳酸、DLの双方を含むブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体、そして、D−乳酸とL−乳酸との双方のポリ乳酸を混合したステレオコンプレックス型のポリ乳酸などどのような形態のものを採用しても良い。
【0040】
ポリ乳酸樹脂の分子量は特に限定されず、用途に応じて必要な分子量をもつものが採用できる。本発明では、必要に応じて様々な平均分子量のポリ乳酸樹脂を用いることができる。ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、通常5万〜50万、更に好ましくは8万〜30万、より好ましくは10万〜25万である。ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が上記範囲であると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性及び加工性を高めることができるので好ましい。
【0041】
ポリ乳酸樹脂には、結晶性及び非結晶性の両者が存在し、いずれを採用することもできる。上記の重量平均分子量の範囲は、結晶性のポリ乳酸樹脂及び非結晶性のポリ乳酸樹脂のいずれにも妥当する。
【0042】
ポリ乳酸樹脂を得る方法には特に限定はない。例えば、環状ジエステルであるラクチド(低分子量ポリ乳酸)の開環重合、及び乳酸からの直接脱水縮合重合等が挙げられる。これらの重合において、必要に応じて上記他の単量体を加えることにより、乳酸及び他の単量体を含むポリ乳酸樹脂を得ることができる。
【0043】
縮重合法では、例えば、目的とするポリ乳酸樹脂の各構造単位の組成となるようにL−乳酸、D−乳酸及び他の単量体の少なくともいずれかを選択して混合するとともに、この混合物を脱水して各単量体を重合させることで乳酸樹脂が得られる。また、開環重合法では、例えば、目的とするポリ乳酸樹脂の各構造単位の組成となるように、L−乳酸の環状2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状2量体であるD−ラクチド、L−乳酸とD−乳酸とからなる環状2量体であるDL−ラクチド及び他の単量体の少なくともいずれかを選択して混合するとともに、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下にラクチドを開環させて所定の条件下に重合反応(共重合反応)を進行させることでポリ乳酸樹脂が得られる。また、このような重合法では、得られるポリ乳酸樹脂の耐熱性を向上させるために、少量の共重合成分として前記したテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のような芳香族ジオール、または芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの両方を使用してもよい。また、このような重合法では、得られるポリ乳酸樹脂の分子量を増大させるために、少量の鎖延長剤を使用してもよい。この鎖延長剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0044】
乳酸は、例えば、トウモロコシ、砂糖大根、及び砂糖キビ等の植物並びに古米から得ることができる。また、生ゴミ等から乳酸発酵法により得ることができる。乳酸は、L−乳酸及びD−乳酸のいずれか一方でもよく、両方でもよい。例えば、直接脱水縮合により重合を行なう場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、又はこれらの混合物のいずれの乳酸を用いてもよい。乳酸に含まれるL−乳酸及びD−乳酸の構成モル比L/Dは、通常100/0〜0/100、好ましくは100/0〜60/40、更に好ましくは100/0〜80/20である。
【0045】
ラクチドは通常、低分子量ポリ乳酸を解重合することにより合成することができる。ラクチドとして、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの混合物のいずれを用いてもよい。
【0046】
共重合させる他の単量体は、乳酸又はラクチドと共重合可能な単量体であれば、その種類及び構造に特に限定はない。例えば、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、及びラクトン、並びにこれらの誘導体(エステル等)等が挙げられる。上記他の単量体は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、及びフマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにテレフタル酸及びイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0048】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族多価アルコール、エーテルグリコール、及び芳香族多価アルコール等の1種又は2種以上が挙げられる。脂肪族多価アルコールとしてより具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン及びソルビタン等の1種又は2種以上が挙げられる。また、エーテルグリコールとしてより具体的には、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0049】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、及び6−ヒドロキシカプロン酸等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0050】
ラクトンとしては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、及びδ−バレロラクトン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0051】
このようなポリ乳酸樹脂としては、上市品であってもよく、例えば、三井化学社製のレイシア(登録商標)シリーズや、ネイチャーワークスLLC社製のネイチャーワークス(Nature Works:登録商標)シリーズが挙げられる。
【0052】
結晶核剤はポリ乳酸樹脂の結晶化を促進する作用を発揮するものであれば特に限定されない。結晶核剤は、無機系核剤と有機系核剤とに区分される。無機系核剤の具体例としては、例えば、タルク、モンモリロナイト、クレー(カオリンクレーなど)、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、塩基性無機アルミニウム化合物又は層状珪酸塩など、カオリン、カオリナイト、硫酸バリウム、シリカ等が挙げられる。有機系核剤の具体例としては、例えば、フェニルフォスホン酸金属塩、脂肪族カルボン酸金属塩、芳香族カルボン酸金属塩、芳香族リン酸エステル類、芳香族アミド・エステル類、脂肪酸アミド、有機スルホン酸塩、ロジン酸誘導体、ソルビトール誘導体(ベンジリデンソルビトール化合物など)、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸及びアミン化合物( ヒドラジンを含む)から構成されるアマイド化合物、植物系ワックス、(メタ)アクリル酸系コポリマーの金属塩等が挙げられ、より具体的にはトリメシン酸トリシクロアミド化合物、ジケトピロロピロール化合物、イソインドリノン化合物、メラミンシアヌレートやポリビン酸メラミンなどのメラミン系化合物、セバシン酸ジ安息香酸ビドラジド、乳酸カルシウム、安息香酸ナトリウムが例示できる。また、この有機系核剤としては、例えば、陽イオン交換能を有する層状粘土鉱物が有機アンモニウム塩化合物により有機化されている有機化粘土を用いてもよい。これらの結晶核剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施形態では、成形時における乳酸系樹脂組成物の結晶性(結晶化速度)を容易に高めることができることから、フェニルフォスホン酸金属塩、タルク、リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール化合物、脂肪族カルボン酸金属塩、トリメシン酸トリアミド化合物、窒化ホウ素、塩基性無機アルミニウム化合物、メラミン化合物塩、芳香族ヒドロキシモノカルボン酸及びアミン化合物( ヒドラジンを含む)から構成されるアマイド化合物が好ましく、フェニルフォスホン酸金属塩、タルクが特に好ましい。
【0053】
結晶核剤の添加量は特に限定しないが、前述のポリ乳酸樹脂100質量部に対し、結晶核剤が0.1〜5質量部であることが望ましく、0.5〜3質量部であることがより望ましく、0.5〜2質量部であることが更に望ましい。結晶核剤の含有量がこの範囲内であると乳酸樹脂の結晶性(結晶化速度)が充分に高められると共に、結晶化速度の飽和も殆ど観測されない。また、これらの結晶核剤を用いると、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐熱性を向上させることができる。更に、これらの結晶核剤は、単独または2種以上のものを併用してもよい。
【0054】
タルクなどのポリ乳酸に溶解せずに作用する材料としては粒径などの限定は無いが体積平均粒径が0.05〜20μmであることが好ましく、0.1μm〜10μm程度のものを採用することが、より望ましい。フェニルフォスホン酸金属塩に含まれる金属は二価のもの、例えば亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)などである。
【0055】
表面改質無機フィラーは活性水素基又はエポキシ基が表面に導入された無機フィラーである。表面改質無機フィラーの添加量は特に限定しないが、前述のポリ乳酸樹脂100質量部に対し、表面改質無機フィラーの含有量は、5〜100質量部、5〜70質量部、5〜50質量部、10〜45質量部、20〜30質量部の順で望ましいものである。
【0056】
活性水素基としては遊離可能な水素を構造中に有する官能基であれば充分であり、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基から選択される1つ以上の官能基であることが望ましい。
【0057】
無機フィラーとしては形態は特に限定しないが、球状であることが望ましい。本明細書中において形態が球状であるとは円形度が0.8以上である場合である。特に円形度が0.9以上であることが望ましい。円形度が高いことにより成形時の流動性が高くなって、成形性が向上するからである。また、無機フィラーとしては実質的に球状のもののみからなることが望ましい。
【0058】
本明細書中において円形度とは、SEMで写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(円形度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。具体的には画像処理装置を用いて100個の粒子について測定した平均値を採用する。また、無機フィラーとしては金属酸化物であることが望ましい。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどである。特にシリカを採用することが望ましい。
【0059】
無機フィラーの粒径は特に限定されないが、体積平均粒径が0.1μm〜10μmであることが望ましく、0.3μm以上4.7μm未満であることがより望ましく、0.5μm〜1.5μmであることが更に望ましい。
【0060】
球状の無機フィラーを製造する方法は特に限定されない。無機フィラーとして金属酸化物を採用する場合には、金属酸化物に対応する金属の粉末を酸化雰囲気中で燃焼させる爆燃法(VMC法)や、金属酸化物の粉末を火炎中に投入・熔融させることで球状化する熔融法などが挙げられる。特にVMC法は簡便且つ円形度が高い粒子が得られるため望ましい。
【0061】
上述の無機フィラーの表面に上述の官能基を導入する方法としては特に限定されないが、導入する官能基である活性水素基又はエポキシ基を有するオルガノシランを反応させる方法が挙げられる。この反応は適正な溶媒中で行うこともできる。これらの官能基を導入する量としては特に限定しないが、無機フィラーの表面を概ね被覆可能な量とすることが望ましい。オルガノシランカップリング剤として具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、γ−メルカプトトリメトキシシラン等のメルカプトシランが挙げられる。
【0062】
架橋剤としてはポリ乳酸樹脂と表面改質無機フィラーとの間で反応する化合物である。例えば、イソシアネート基を2つ以上もつ多官能イソシアネート化合物(ジイソシアネート、トリイシソアネート等)が例示できる。多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート類、脂環族イソシアネート類、芳香族イソシアネート類などがある。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0063】
脂肪族イソシアネート類として具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートヘキサン酸メチルエステル、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート(LTI:リジントリイソシアナート)、3−イソシアネートプロピル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0064】
脂環族イソシアネート類として具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート及びビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
芳香族イソシアネート類として具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合イソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート、水素化ジェフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、及びトリジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0066】
多官能イソシアネート化合物としてその他に、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体、等のトリイソシアネート類を用いることができる。
【0067】
架橋剤の割合に特に限定はない。例えば、上記ポリ乳酸樹脂100質量部に対して通常0.1〜5質量部、好ましくは0.5〜3質量部とすることができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物は、その作用効果を著しく損なわない範囲で、その他必要な部材を含んでいてもよい。例えば、加水分解抑制剤、滑剤、安定剤、難燃剤、カップリング剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐候(耐光)剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料)、帯電防止剤、発泡剤、防曇剤、発泡剤、充填材、ドリップ防止剤、離型剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらは、1種単独でもよく、2種以上併用してもよい。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物の用途には特に限定はない。本実施形態の樹脂組成物は、従来のポリ乳酸を含有する樹脂組成物と比べて、優れた耐熱性を維持すると共に、耐衝撃性にも優れる。よって、包装資材、農業資材、土木建築資材、自動車部品、OA機器、家電機器、並びに玩具及び文房具等の日曜雑貨等に広く利用できる。
【0070】
(樹脂成形体の製造方法)
本実施形態の樹脂成形体の製造方法は成形工程を有し必要に応じて熱処理工程も有する。
【0071】
成形工程は上述の本実施形態の樹脂組成物を目的とする形状に成形する工程であり、その成形方法は限定しない。例えば、射出法、注型法、圧縮法、押し出し法などの熱可塑性プラスチックの成形方法を好適に採用することができる。具体的には、シート・フィルム成形、射出成形、シート押出、真空成形、異形成形、発泡成形、インジェクションプレス、プレス成形、及びブロー成形等の公知の成形方法により、各種成形体とすることができる。
【0072】
熱処理工程は、必要に応じて成形工程における成形体の成形と同時に熱処理を行うか、又は、その成形工程後に成形体に熱処理を行う工程である。つまり、成形を行う際に同時に加熱することで熱処理を行う方法か、成形体に対して成形工程とは別に熱処理を行う方法かのいずれかの方法を採用できる。熱処理工程を行うことにより、樹脂組成物中に含まれるポリ乳酸樹脂の結晶化を進行させて耐衝撃性を向上する方法である。
【0073】
熱処理の条件は特に限定されないが、加熱温度及び加熱時間の組み合わせとして、ポリ乳酸樹脂の示差走査熱量測定法(DSC測定法)により求めた結晶化度が20%以上になる組み合わせを採用することが望ましい。例えば、110℃で2時間加熱を行う工程が採用できる。
【実施例】
【0074】
試験1:無機フィラーの含有量依存性、結晶核剤及び架橋剤の効果の評価
・表1に示す配合比(%は質量%を表す。表2及び3についても同じ)にて、ポリ乳酸樹脂(PLA:ポリ乳酸のホモポリマー:商品名 U’z S−32、トヨタ自動車株式会社製)と表面改質無機フィラーとしての表面改質シリカ粒子(エポキシシランにて表面処理を行ったもの(SEJ)、エポキシシラン(脂環式)で表面処理を行ったもの(GRJ)、体積平均粒径が約0.5μm)、そして表面処理を行っていない無機フィラーとしてのシリカ粒子(C2:体積平均粒径が約0.5μm)と結晶核剤(フェニルフォスホン酸亜鉛塩:PPA−Zn:エコプロモート、日産化学工業株式会社製)と架橋剤(LTI、協和発酵ケミカル株式会社製)とを混合し混合物を得た。得られた混合物について2軸押出機(株式会社テクノベル製:径20mm、:L/D30)を用いて、溶融混練(190℃〜200℃)を行った後にペレット化した。なお、シリカ粒子は株式会社アドマテックス製、アドマファインを用い、必要に応じて表面改質を行ったものを用いた。
【0075】
得られたペレットを用いて圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所:型締力10ton)で190℃、15分間プレス成形を行い、試験片を作成した(成形工程)。
・得られた試験片に対してアイゾット衝撃試験(JIS K7110、ノッチ付)及び荷重たわみ温度(JIS K7191−2、0.45MPa、エッジワイズ)に基づき評価した。結果を表1に合わせて示す。表1におけるシリカ粒子(C2、SEJ及びGRJ)の円形度はすべて0.99であった。
【0076】
【表1】

【0077】
表1より明らかなように、シリカ粒子、結晶核剤及び架橋剤を添加していない試料1と比べて、結晶核剤のみを添加した試料2、結晶核剤及び架橋剤を添加した試料3では荷重たわみ温度が高くなり耐熱性のみが向上することが分かった。
【0078】
また、試料1と比べて、表面改質シリカ粒子のみを添加した試料4、表面改質シリカ粒子及び架橋剤を添加した試料5では、アイゾット衝撃強度がわずかに向上しており耐衝撃性の改善効果が若干見られるものの、荷重たわみ温度に変化は確認できず、耐熱性について改善効果が見られないことが分かる。
【0079】
そして、表面改質シリカ粒子、結晶核剤及び架橋剤を添加した試料6〜10及び12はアイゾット衝撃強度及び荷重たわみ温度の双方が著しく向上しており、耐衝撃性及び耐熱性の双方の向上効果に優れることが分かった。ここで、表面改質シリカ粒子の添加量を10質量%(PLAを100質量部として11.1質量部)〜50質量%(PLAを100質量部として100質量部)の範囲ですべて充分な耐衝撃性及び耐熱性向上効果を発揮できることが明らかになった。特に、10質量%超50質量%未満の範囲、更には20質量%以上40質量%(PLAを100質量部として66.7質量部)以下の範囲で高い効果を発揮することが明らかになった。
【0080】
また、表面改質シリカ粒子として表面に導入する官能基(エポキシ基:脂環式)の種類が異なる試料12は、官能基以外は同じ構成をもつ試料7(エポキシ基)と比較して耐衝撃性は低下したものの、耐熱性は向上した。
【0081】
そして、表面改質シリカ粒子に換えて表面改質を行っていないシリカ粒子を採用した試料11は表面改質シリカ粒子以外は同じ構成をもつ試料7と比較して、耐衝撃性及び耐熱性共に充分な値を示さないことが明らかになった。これよりシリカ粒子の表面改質が耐衝撃性の改善には必要な処理であることが分かる。
【0082】
試験2:無機フィラーとしてのシリカ粒子の粒径依存性
・表2に示す配合比にて、PLAと表面改質シリカ粒子と結晶核剤(フェニルフォスホン酸亜鉛塩:PPA−Zn)と架橋剤(LTI)とを混合し混合物を得た。なお、粒径が0.3〜1.9μmのシリカ粒子は金属シリコンを酸化することで得られる球状シリカを、粒径が4.7〜35.2μmのシリカ粒子は破砕シリカを加熱溶融して得られる球状シリカを用いており、それぞれエポキシシラン表面改質を行ったものを用いた。得られた混合物について2軸押出機(株式会社テクノベル製:径20mm、:L/D30)を用いて、溶融混練(190℃〜200℃)を行った後にペレット化した。
【0083】
得られたペレットを用いて圧縮成形機(株式会社神藤金属工業所:型締力10ton)で190℃、15分間プレス成形を行い、試験片を作成した(成形工程)。
・得られた試験片に対してアイゾット衝撃試験(JIS K7110、ノッチ付)及び荷重たわみ温度(JIS K7191−2、0.45MPa、エッジワイズ)に基づき評価した。結果を表2に合わせて示す。シリカ粒子の円形度は粒径0.3〜9.7μmがいずれも0.99であり、粒径35.2μmが0.98であった。
【0084】
【表2】

【0085】
表2より明らかなように、結晶核剤及び架橋剤の双方を欠く試料1はもちろん、結晶核剤のみ添加した試料2、結晶核剤及び架橋剤は添加しているものの表面改質シリカ粒子を添加していない試料3に比べて、表面改質シリカ粒子を添加している試料7及び13〜18はすべて荷重たわみ温度が高く耐熱性に優れていることが明らかになった。アイゾット衝撃強度は表面改質シリカ粒子の粒径が0.3μm、0.5μm、1.5μm、1.9μm、4.7μm及び9.7μmの場合に表面改質シリカ粒子を添加していない場合に比べて高い値を示しており、耐衝撃性に優れていることが明らかになった。粒径が35.2μmである試料18については、優れた耐熱性を示すものの、耐衝撃性は表面改質シリカ粒子を含有しない試料1〜3と同程度であり、耐衝撃性の改善効果がないことが分かった。
【0086】
試験3:熱処理の検討
試験1における試料7について、110℃で2時間熱処理を行うことにより、アイゾット衝撃強度が9.1KJ/m(7.8KJ/m)、荷重たわみ温度が136.5℃(125.7℃)となった。括弧内に示す熱処理工程前の値と比べて、双方共に優れた値を示し、熱処理によって更に耐衝撃性及び耐熱性が向上することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を主成分とするポリ乳酸樹脂組成物と、
前記ポリ乳酸樹脂の結晶化を促進する結晶核剤と、
活性水素基又はエポキシ基が表面に導入された球状の無機フィラーからなる表面改質無機フィラーと、
前記ポリ乳酸及び前記無機フィラーの間で反応を起こす架橋剤と、
を有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記表面改質無機フィラーは、活性水素基又はエポキシ基を有するオルガノシランを無機フィラーに反応させて得られる請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーはシリカである請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーは円形度が0.8以上である請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーの体積平均粒径は0.1μm〜10μmである請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機フィラーは金属シリコンを酸化することで得られる球状シリカである請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無機フィラーは破砕シリカを加熱熔融することで得られる球状シリカである請求項1〜5の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記活性水素基は、水酸基、アミノ基、メルカプト基及びカルボキシル基から選択される1つ以上の官能基である請求項1〜7の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記架橋剤は、イソシアネート基を2つ以上もつ化合物である請求項1〜8の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記結晶核剤は、フェニルフォスホン酸金属塩、含水珪酸マグネシウム(タルク)、リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール化合物、脂肪族カルボン酸金属塩、トリメシン酸トリアミド化合物、窒化ホウ素、塩基性無機アルミニウム化合物、メラミン化合物塩、及び/又はアマイド化合物(芳香族ヒドロキシモノカルボン酸及びアミン化合物( ヒドラジンを含む)から構成される)である請求項1〜9の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、前記表面改質無機フィラーが5〜50質量部、前記結晶核剤が0.1〜5質量部である請求項1〜10の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記無機フィラーは実質的に球状以外の形態のものを含まない請求項1〜11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の樹脂組成物を成形し成形体を得る成形工程を有することを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項14】
前記成形工程における前記成形体の成形と同時に熱処理を行うか、又は、前記成形工程後に前記成形体に熱処理を行う熱処理工程を有する請求項13に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理工程における加熱温度及び加熱時間の組み合わせは前記ポリ乳酸樹脂の示差走査熱量測定法により求めた結晶化度が20%以上になる組み合わせである請求項14に記載の樹脂成形体の製造方法。

【公開番号】特開2009−179786(P2009−179786A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22777(P2008−22777)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(501402730)株式会社アドマテックス (82)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】