説明

樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法および該樹脂被覆金属酸化物粒子を含む透明被膜形成用塗布液ならびに透明被膜付基材

【課題】高濃度でも分散性、安定性に優れた樹脂で被覆した金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法を提供する。
【解決手段】予め100〜800℃で加熱処理した平均粒子径が5nm〜10μmの範囲にある金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂からなる樹脂被覆材を添加し、ついで、メカノケミカル処理する樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。マトリックス形成成分とかかる方法で得られた樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルと有機溶媒とを含んでなる透明被膜形成用塗布液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度でも分散性、安定性に優れた樹脂で被覆した金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法および該樹脂被覆金属酸化物粒子を含む透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。
【0003】
しかしながら、透明被膜を形成するための透明被膜形成用塗布液に微粒子を分散させると、マトリックス成分または分散媒と粒子の親和性が低い場合は粒子が凝集したり、塗布液の安定性が低下し、得られる透明被膜の透明性、ヘーズ等の他、耐擦傷性、強度、スクラッチ強度等が不充分となることがあった。
【0004】
このため、粒子の分散性を向上させて凝集を防止したり、塗布液の安定性を向上させるために粒子をシランカップリング剤で表面処理して用いることが公知である。また、粒子にメカノケミカル法、グラフト重合法等で樹脂を被覆してマトリックス成分または分散媒との親和性を高めることが行われている。(特開平3−163172号公報(特許文献1)、特開平6−336558号公報(特許文献2)、特開平6−49251号公報(特許文献3)、特開2000−143230号公報(特許文献4))
さらに、特開平7−118123号公報(特許文献5)および特開2003−63932号公報(特許文献6)には樹脂で被覆した化粧料用粉体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−163172号公報
【特許文献2】特開平6−336558号公報
【特許文献3】特開平6−49251号公報
【特許文献4】特開2000−143230号公報
【特許文献5】特開平7−118123号公報
【特許文献6】特開2003−63932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シランカップリング剤で表面処理した粒子は、シランカップリング剤処理の際に好適な分散媒(通常水および/またはアルコール)と、透明被膜形成用塗布液に用いる分散媒と異なることが多く、このため塗布液用の分散媒に溶媒置換する必要があった。また、塗布液に用いる分散媒によってはシランカップリング剤が脱離することがあり、このため粒子が凝集したり、塗布液の安定性が不充分となることがあった。
【0007】
また、従来のメカノケミカル法、グラフト重合法等では、個々の粒子に均一に樹脂を被覆することが困難で、数個以上の凝集した粒子に樹脂が被覆され、得られた樹脂被覆粒子
では樹脂が塗布液の溶媒に溶解することがあり、このため得られる透明被膜は、透明性の低下、ヘーズの上昇、耐擦傷性の低下等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、加熱処理した金属酸化物粒子のケトン類有機溶媒分散液に、アクリル系樹脂を添加し、ついで、メカノケミカル処理すると個々の粒子に均一に樹脂を被覆することができ、高濃度でも分散性、安定性に優れた樹脂被覆金属酸化物粒子が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
[1]予め100〜800℃で加熱処理した平均一次粒子径が5〜300nmの範囲にあり、平均
二次粒子径が5nm〜10μmの範囲にある金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂からなる樹脂被覆材を添加し、ついで、メカノケミカル処理する樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
[2]前記有機溶媒がエーテル類、エステル類、ケトン類から選ばれる1種以上である[1]の
樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
[3]前記樹脂被覆材の固形分としての濃度(CR)と金属酸化物微粒子の固形分としての濃度(CMO)の濃度比(CR)/(CMO)が0.005〜0.5の範囲にある[1]または[2]
の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
[4]前記メカノケミカル処理時の金属酸化物粒子と樹脂被覆材とをあわせた全固形分濃度
が1〜50重量%の範囲にある[1]〜[3]の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。[5]前記金属酸化物粒子が、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこれらの複合酸化物、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、Sn
またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンから選ばれる1種以上である[1]〜[4]の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
[6]前記樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲にある[1]〜[5]の
樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
[7]マトリックス形成成分と、[1]〜[6]の方法で得られた樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾ
ルと有機溶媒とを含んでなる透明被膜形成用塗布液。
[8]基材と、基材上に、[7]の透明被膜形成用塗布液を塗布・乾燥して形成された透明被膜とを有する透明被膜付基材。
[9]前記透明被膜が他の被膜とともに設けられている[8]の透明被膜付基材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、予め加熱処理した、特定の平均粒子径にある金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に、特定の樹脂被覆材を添加してメカノケミカル処理しているので、溶剤を用いた透明被膜形成用塗布液に凝集することなく安定に分散可能であり、高濃度にしても分散性、安定性に優れた樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルが製造される。この樹脂被覆金属酸化物粒子を含む透明被膜形成用塗布液は、被覆樹脂と塗布液中のマトリックス形成成分とが結合性を有しており、このため透明性、ヘーズ、基材との密着性に優れるとともに膜強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜の形成の好適に用いることのできる透明被膜形成用塗布液および透明被膜付基材を提供することができる。なお、本発明のような有機溶媒中でのメカノケミカル処理は従来、全く知られておらず、かかるメカノケミカル処理で達成される上記効果も、当然知られていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、先ず、樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法について説明する。
[樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法]
本発明に係る樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法は、平均粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に特定の樹脂被覆剤を添加し、ついで、メカノケミカル処理する。
金属酸化物粒子
本発明に用いる金属酸化物粒子としては、従来、透明被膜に用いられる公知の金属酸化物粒子を用いることができる。
【0011】
具体的にはTiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnO、およびこれらの複合酸化物、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、SnまたはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンから選ばれる1
種以上であることが好ましい。
【0012】
金属酸化物粒子は透明被膜の用途によって適宜選択して用いることができ、例えば、反射防止膜に用いる金属酸化物粒子としては通常屈折率が1.45以下、好ましくは1.40以下の金属酸化物粒子が用いられ、具体的にはSiO2、内部に空洞を有するSiO2、あるいはこれらに導電性を有する金属酸化物を被覆した粒子等が挙げられる。内部に空洞を有するSiO2粒子としては本願出願人の出願による特開2001−233611号公報に開示した内部に空洞を有するシリカ系微粒子は好適に採用することができる。
【0013】
透明被膜をハードコート膜に用いる場合、金属酸化物粒子としては、ZrO2、TiO2、Sb25、ZnO、Al23、SnO2、あるいは前記した屈折率が1.45以下のシリカ系
微粒子等が挙げられる。
【0014】
透明被膜が、高屈折率膜である場合、用いる金属酸化物粒子としては、通常屈折率が1.60以上、さらには1.80以上の微粒子が用いられ、具体的にはZrO2、TiO2、Sb25、ZnO2、Al23、SnO2、アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、リンドープ酸化錫(PTO)等が挙げられる。例えば、屈折率の高いPET基材の場合は透明被膜と基材との屈折率を近似させるために屈折率の高い酸化チタン粒子等は好適に用いることができる。
【0015】
透明被膜に導電性を付与する場合、金属酸化物粒子としては、通常Sb25、SnO2
アンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム、リンドープ酸化錫(PTO)、あるいはこれら導電性材料で表面を被覆したシリカ系微粒子あるいは内部に空洞を有するシリカ系微粒子等が挙げられる。
【0016】
本発明で用いる金属酸化物粒子は、後述するメカノケミカル処理する前に、予め加熱処理(すなわち乾燥および/または焼成)されている。加熱処理温度は100〜800℃、さらには105〜750℃の範囲にあることが好ましい。
【0017】
なお、金属酸化物粒子を調製する際に、すでに、前記温度範囲の加熱履歴のある場合は、別途、加熱処理を行う必要はない。また、前記温度範囲の加熱履歴があってもその後に水分散履歴のある場合は加熱処理することが好ましい。
【0018】
本発明では、溶媒除去のための乾燥を行なった後、加熱処理することが好ましい。
【0019】
かかる加熱処理によって、樹脂被覆量を高く、かつ均一にでき、その結果、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの安定性を高めることが可能となる。
【0020】
その理由は明確ではないものの、加熱処理によって、樹脂との反応を阻害する付着水が除去され、樹脂との反応を促進する活性なOHが生じるため、樹脂による粒子の均一な被覆が促進されるもののと考えられる。
【0021】
加熱処理温度が低すぎると、付着水が残存する等のために金属酸化物粒子の表面が活性なためか、粒子と樹脂との結合が不充分となり、樹脂被覆量が不充分となる場合があり、
得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの安定性が不充分となることがある。
【0022】
また加熱処理温度が高すぎても金属酸化物粒子が過度に凝集したり、金属酸化物粒子の種類によっては焼結し、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの安定性が不充分となることがある。
【0023】
その結果、いずれも透明被膜形成用塗料の安定性が低下し、最終的に得られる透明被膜の透明性、ヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となることがある。
【0024】
金属酸化物粒子の平均粒子径は、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が概ね5〜300nmとなるような平均粒子径の金属酸化物粒子を用いる。
【0025】
金属酸化物粒子は、一次粒子のみからなるものであっても、複数の一次粒子からなる二次粒子であってもよい。具体的には、平均一次粒子径が5〜300nmの範囲にある金属酸化物粒子であり、二次粒子の場合、平均二次粒子径が5nm〜10μmの範囲にある金属酸化物粒子(但し、平均一次粒子径を超えることはない)を用いる。
【0026】
平均一次粒子径が5〜300nm、好ましくは5〜200nmの範囲にあり、平均二次粒子径が5nm超〜10μm、好ましくは10〜5μmの範囲にある。
【0027】
なお、二次粒子は一次粒子が凝集した粒子であっても、また一部結合して粒子成長した粒子であっても、平均粒子径が5〜300nmの範囲にある樹脂被覆金属酸化物粒子が最終的に得られれば特に制限なく用いることができる。
【0028】
本発明では、平均一次粒子径は粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として求める。また、平均二次粒子径は、動的光散乱法「マイクロトラック粒度分布測定装置」によって求めることができる。
【0029】
金属酸化物粒子の平均一次粒子径が小さすぎると、過度に凝集した樹脂被覆金属酸化物粒子が得られ、透明被膜の透明性、強度、耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となる。
【0030】
平均一次粒子径が大きすぎると、最終的に得られる樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が300nm以下のものを得ることが困難であり、また強力に粉砕しても結晶性の金属酸化
物粒子の場合結晶性が低下する場合がある。平均二次粒子径が大きすぎると金属酸化物粒子凝集体の塊砕あるいは結晶性金属酸化物粒子の粉砕効率が低下したり、粉砕が困難となる。その結果、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が大きくなり、樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの安定性が不充分となることがある。そして、これらの樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルを用いた透明被膜形成用塗料の安定性が低下し、最終的に得られる透明被膜の透明性、ヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となることがある。
【0031】
なお、本発明では使用する金属酸化物粒子の平均二次粒子径が上記上限を越えて大きい場合は、従来公知の塊砕、粉砕方法で10μm以下にして使用することができる。
【0032】
樹脂被覆材
樹脂被覆材としては、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂が使用される。
【0033】
アクリル系樹脂としては、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-アクリロイロ
キシエチル2-ヒドロキシエチル-フタル酸、モノ2-アクリロイルオキシエチルアシッド
フォスフェート、ジ2-アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート2-ヒドロキシブチルアクリレート、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリセリンジ
グリシジルエーテル、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、O-フェニルフェノールグリシジルエーテ
ルアクリレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート、2-チル2エチル1,3プロパンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、シ
クロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルアクリレート、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、2-ヒドロキシ、1-アクリロキシ、3-メタクリロキシプロパン、β-カルボキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマー、これらアクリル系モノマーのホモ重合体、アクリル系モノマーとスチレン、シリコン、ポリエステル等との共重合体が挙げられる。
【0034】
メタクリル系樹脂としては、メタクリル酸、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、モノ
2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキ
シプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ジグリセリンポリグリシジルエーテルメタクレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクレート等のメタク
リル系モノマー、これらメタクリル系モノマーのホモ重合体、メタクリル系モノマーとスチレン、シリコン、ポリエステル等との共重合物が挙げられる。さらに、ジ2-メタクリ
ロイロキシエチルアシッドホスフェート、ジ2-アクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェートなどの(メタ)アクリル基を含むリン酸エステル、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、エステルなどを使用することも可能である。
【0035】
なお、これら樹脂被覆材が好ましい理由は明らかではないが、(メタ)アクリル系樹脂は親水性であるため、金属酸化物粒子表面に結合しやすく、特に、特に水酸基を有する場合、この水酸基が金属酸化物粒子表面への樹脂被覆材の結合を容易にしているものと推測される。
【0036】
樹脂被覆材は、通常、モノマーであっても、ある程度重合したオリゴマーやダイマーであっても、さらに重合が進んだポリマーであってもよい。重合が進んでいなくとも、メカノケミカル処理や加熱処理によって、重合は進行する。
有機溶媒
有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができる。
【0037】
例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチル
エーテル等のエーテル類;酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセタート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル等のケトン類;トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0038】
なかでも、前記エーテル類、エステル類、ケトン類は樹脂の被覆効率がよく、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子に凝集粒子が少なく、分散性に優れ、沈降も起きず安定であるので好ましい。
【0039】
また、前記エーテル類、エステル類、ケトン類は透明被膜形成用塗布液の溶媒として用いた場合、塗工性が良く、外観異常が起こりにくいことから多用され、このため得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルを塗布液用の溶媒に置換する必要が無いことから生産効率、経済性の点からも好ましい。
【0040】
特にエーテル類はメカノケミカル処理において金属酸化物粒子が凝集しにくく、均一に樹脂被覆できるので好適に用いることができる。
【0041】
混合比
メカノケミカル処理する際の樹脂被覆材の固形分としての濃度(CR)と金属酸化物粒
子の固形分としての濃度(CMO)の濃度比(CR)/(CMO)は0.005〜0.5、さ
らには0.01〜0.3の範囲にあることが好ましい。
【0042】
濃度比(CR)/(CMO)が小さすぎると、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾル
およびこれを用いた透明被膜形成用塗布液での分散性、安定性が不充分となり、さらに得られる透明被膜も透明性が低く、ヘーズが高くなる場合がある。濃度比(CR)/(CMO
)が大きすぎると、さらに分散性、安定性、透明被膜の透明性、ヘーズが向上することもなく、用いる金属酸化物粒子の屈折率あるいは導電性等の特性が充分発揮できない場合がある。
【0043】
また、メカノケミカル処理時の金属酸化物粒子と樹脂被覆材との全固形分濃度が1〜50重量%、さらには2〜45重量%の範囲にあることが好ましい。全固形分濃度が低すぎると、処理に長時間を要し、また全部の粒子を均一に処理することが困難となり、樹脂被覆が不均一になり、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルおよびこれを用いた透明被膜形成用塗布液での分散性、安定性が不充分となり、さらに得られる透明被膜も透明性が低く、ヘーズが高くなる場合がある。全固形分濃度が高すぎると、金属酸化物粒子の種類、溶媒、樹脂の種類によっては処理の進行に伴い急激に粘度が上昇したり、粒子が凝集することがあり、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルおよびこれを用いた透明被膜形成用塗布液での分散性、安定性が不充分となり、さらに得られる透明被膜も透明性が低く、ヘーズが高くなる場合がある。
メカノケミカル処理方法
本発明のメカノケミカル処理方法は、前記金属酸化物粒子、樹脂被覆材、比率および濃度を採用する以外は従来公知の方法を採用することができる。
【0044】
例えば、ヘンシェルミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、ビーズミル等に有機溶媒、金属酸化物粒子および樹脂被覆材を所定量計量し、高速で撹拌する。メカノケミカル処理では、粒子径が大きい方が効率的に処理できるので、比較的に大きな二次粒子となっている方が望ましいが、この限りではない。
【0045】
撹拌速度は使用する装置、方式等によって異なるが、あまりに低速であると、金属酸化物粒子が二次粒子の場合には塊砕あるいは粉砕が不充分となり、得られる樹脂被覆金属酸化物粒子の粒子径が大きすぎたり、樹脂被覆量が不足したり、粒子と樹脂との結合が不充分となるためか樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの安定性が不充分となることがあり、このような樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルを用いた透明被膜形成用塗料の安定性が低下し、最終的に得られる透明被膜の透明性、ヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となることがある。
【0046】
なお、従来、上記のような方法で樹脂を被覆する際に重合開始剤を添加したり、紫外線照射、プラズマ照射することが行われるが、重合開始剤を添加したり、紫外線照射すると被覆用樹脂が粒子表面に積層して被覆しない場合や、被覆しても樹脂の重合、硬化が進みすぎるためか、後述する透明被膜形成用塗布液に用いた場合、マトリックス成分との結合が起きないために透明被膜の強度、耐擦傷性、耐擦傷性、基材との密着性が低下するため好ましくない。
【0047】
このようにして得られる樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径は5〜300nm、さらには5〜200nmの範囲にあることが好ましい。
【0048】
被覆層は少しで付着していれば良く、実質的に樹脂被覆前と後の金属酸化物粒子の平均粒子径は同じであってもよく、当然被覆後の平均粒子径は大きくなっていても良い。得られた粒子の平均粒子径が、上記範囲であれば、透明性やヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性が高く、所望の特性および用途の点で好適となる。
【0049】
得られる樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの濃度は固形分として概ね1〜50重量%、好ましくは2〜45重量%の範囲にある。
【0050】
なお濃度が薄いと透明被膜形成用塗布液の濃度が低くなりすぎて厚膜の透明被膜を形成できない場合があり、厚膜にするために塗布、乾燥、硬化を繰り返し行う必要が生じ、濃度が高すぎると、ゾルの安定性が不充分になる傾向がある。本発明では、得られた樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルは必要に応じて濃縮または希釈して用いることができる。
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、マトリックス形成成分と前記樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルと有機溶媒とを含んでなることを特徴としている。
樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾル
本発明の透明被膜形成用塗布液には前記した樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルを用いる。樹脂被覆金属酸化物粒子の透明被膜形成用塗布液中の固形分としての濃度は0.1〜50重量%、さらには0.2〜40重量%の範囲にあることが好ましい。この範囲あればゾルが塗布液中にマトリックス成分とともに均一に分散できるとともに、粒子の特性も充分に発揮でき、目的とする透明被膜を形成できる。
【0051】
なお、前記濃度が低すぎると、粒子の量が少ないために粒子の特性(耐擦傷性、低屈折率、高屈折率、導電性等)による耐擦傷性、反射防止性能、帯電防止性能等が不充分となる場合があり、高すぎても、マトリックス成分が少なく、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、有機樹脂系マトリックス形成成分が好適に用いられる。
【0052】
有機樹脂系マトリックス形成成分として、具体的には塗料用樹脂として公知の熱硬化性
樹脂、熱可塑性樹脂等のいずれも採用することができる。たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。熱可塑性樹脂の場合、マトリックス形成成分はそのままマトリックス成分となり、硬化性樹脂の場合、一般にマトリックス形成成分は未硬化(重合)のモノマーがマトリックス形成成分となり、硬化(重合)物がマトリックス成分となる。
【0053】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂、あるいは紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0054】
本発明では、樹脂被覆金属酸化物粒子に用いた樹脂とマトリックス形成成分との結合性を有し、膜強度、耐擦傷性が向上することから有機樹脂系マトリックス形成成分として、具体的には水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の官能基を有する多官能(メ
タ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられ、具体的には2−ヒドロキシ−3−アクリロイロ
キシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールポログリシジルエーテルアクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、2アクロイロキシエチルコハク酸、2アクロイロキシエチルフタル酸およびこれらの混合物あるいはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0055】
また、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基等の官
能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられ、具体的にはペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメタクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート、2ブチル−2エチル−1,3プロパンジオールジグリシジルエーテルアクリレート等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、固形分として1〜60重量%、さらには2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。マトリックス形成成分の濃度が少なすぎると一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性において不利である。マトリックス形成成分の
濃度が高すぎると、得られる透明被膜の厚さが不均一になる傾向がある。
有機溶媒
本発明に用いる有機溶媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに前記した樹脂被覆金属酸化物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0057】
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0058】
これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。本発明では、樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造に好適に用いることのできる前記したエーテル類、エステル類、ケトン類が好ましい。これらエーテル類、エステル類、ケトン類を有機溶媒として用いると透明被膜形成用塗布液はマトリックス成分との相溶性に優れ、これを用いて得られる透明被膜は表面の均一性が高く、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等に優れている。
【0059】
透明被膜形成用塗布液中のマトリックス形成成分と樹脂被覆金属酸化物粒子、あるいは表面処理樹脂被覆金属酸化物粒子との合計濃度は、固形分として1〜60重量%、さらには2〜50重量%の範囲にあることが好ましい。前記合計濃度が少なすぎると、一回の塗布では所定の膜厚が得られないことがあり、塗布、乾燥を繰り返すと密着性等が不充分となったり、経済性において不利である。前記合計濃度が高すぎると得られる透明被膜の厚さが不均一になる場合がある。
重合開始剤
本発明では、上記樹脂被覆金属酸化物粒子、マトリックス形成成分とともに必要に応じて、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニル
フォスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。重合開始剤の使用量は特に制限されない。
【0060】
上記した透明被膜形成用塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、硬化性樹脂の場合は、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0061】
形成される透明被膜の膜厚は、30nm〜20μmの範囲にあることが好ましい。
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、該
透明被膜が前記塗布液から形成された樹脂被覆金属酸化物粒子とマトリックス成分とからなることを特徴としている。
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。中でも樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
樹脂被覆金属酸化物粒子
樹脂被覆金属酸化物粒子としては前記したとおりである。
【0062】
透明被膜中の樹脂被覆金属酸化物微粒子の含有量は固形分として0.2〜90重量%、さらには0.5〜80重量%の範囲にあることが好ましい。含有量が少なすぎると、粒子の量が少ないために粒子の特性(耐擦傷性向上、低屈折率、高屈折率、導電性等)による耐擦傷性、反射防止性能、帯電防止性能等が不充分となる場合があり、多すぎてもマトリックス成分が少なく、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。
マトリックス成分
マトリックス成分は、前記有機樹脂系マトリックス形成成分に由来するものであり、詳細は前記したとおりである。
【0063】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量は固形分として10〜99.8重量%、さらには20〜99.5重量%の範囲にあることが好ましい。
【0064】
透明被膜中のマトリックス成分の含有量が少なすぎると、基材との密着性、透明性、ヘーズ、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。含有量が多すぎると、粒子の量が少ないために粒子の特性(耐擦傷性、低屈折率、高屈折率、導電性等)による耐擦傷性、反射防止性能、帯電防止性能等が不充分となる場合がある。
【0065】
本発明に係る透明被膜の膜厚は、用途によっても異なるが概ね30nm〜20μm、さらには、70nm〜15μmの範囲にあることが好ましい。
【0066】
透明被膜の膜厚が薄すぎると、用途によっては膜強度、耐擦傷性が不充分となる場合がある。透明被膜の膜厚が厚すぎると、透明被膜にクラックを生じたり、プラスチック等の基材ではカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。
【0067】
本発明に係る透明被膜付基材は、前記した透明被膜形成用塗布液を基材上に塗布し、乾燥し、硬化させることによって製造することができる。
【0068】
具体的には、透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。防弦性を有する透明被膜付基材を製造する場合はロールコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法が推奨される。
【0069】
さらに、本発明の透明被膜付基材には、基材と前記透明被膜との間に前記透明被膜と異なる他の被膜を設けることができる。他の被膜としては、従来公知のプライマー膜、ハー
ドコート膜、高屈折率膜、導電性膜、低屈折率膜、アンチグレア膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜等が挙げられる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
樹脂被覆粒子(1)分散ゾルの調製
Pドープ酸化錫微粒子(1)の調製
純水8060gに硝酸アンモニウム13gと15%アンモニア水20gを入れ攪拌し、50℃に昇温した。この中に純水4290gに錫酸カリウム1519gを溶解した液を10時間かけてローラーポンプで添加した。このときpHコントローラーでpHを8.8に保つよう濃度10重量%の硝酸を添加して調整した。添加終了後1時間50℃をキープした後、濃度10重量%の硝酸を添加しpHを3.0まで下げた。次に限外濾過膜で濾水電導度が10μS/cmになるまで純水で洗浄した後、限外濾過膜で濃縮し取り出した。このとき取り出した液量は6000gで固形分(SnO2)濃度は12重量%であった。こ
のスラリーの中に濃度16重量%のリン酸水溶液264gを添加し、0.5時間攪拌した。これを105℃で2時間乾燥し、ついで700℃で2時間焼成して、Pドープ酸化錫微粒子(1)粉末を調製した。
【0071】
得られたPドープ酸化錫微粒子(1)の平均一次粒子径は15nm、平均二次粒子径は0
.45μm、体積抵抗値は5000Ω・cmであった。
樹脂被覆
Pドープ酸化錫微粒子粉末201g、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)374g、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシ
ッドホスフェート(共栄社化学(株)製:ライトエステルP-2M)14.5gを、ガラスビーズ(0.4mm)1135gを入れたビーズミルに充填し、1700rpmの回転数で1時間処理した後、ガラスビーズを分離し、ついでPGMEを加えて固形分濃度30重
量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(1)分散ゾルを調製した。
【0072】
樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(1)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(1)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0073】
なお、安定性は下記の方法、評価基準により評価した。また平均粒子径は大塚電子製:レーザー粒径解析システム(PAR-III)で測定した。
安定性評価
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(1)分散ゾルを透明性容器に充
填して静置し、容器の下部に沈降粒子の状況を観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
【0074】
1週間以上粒子の沈降層が認められなかった。:◎
3〜6日で粒子の沈降層が認められた。 :○
1〜2日で粒子の沈降層が認められた。 :△
1日以内に粒子の沈降層が認められた。 :×
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(1)分散ゾル233.3gに、
グリコール系アクリレート樹脂としてポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学(株)製:NKエステルA−400)6gと、非グリコール系2官能アクリレート樹脂として1,6−ヘサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製:カヤラッドKS−HDD
A)3gと、非グリコール系6官能アクリレート樹脂としてジペンタエリスリトールヘキ
サアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-6A)24gと、イソ
プロピルアルコール40gとプロピレングリコールモノメチルエーテル30gと光開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)1.5gとを混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調
製した。
透明被膜付基材(F-1)の製造
透明被膜形成用塗布液(1)をPETフィルム(厚さ:188μm、屈折率:1.65全
光線透過率90.0%、ヘーズ0.6%)にバーコーター法(バー#14)で塗布し、80℃で1分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池製UV照射装置CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させ、透明被膜付基材(F-1)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透
明被膜の表面抵抗を、表面抵抗計(三菱化学(株)製:ハイレスタ)にて測定し、結果を表1に示す。
【0075】
また、全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により測定し、結果を表1に示す。さらに、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を以下の方法および評価基準で評価し、結果を表1に示す。
【0076】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
【0077】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を
目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
【0078】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
密着性
透明被膜付基材(F-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け1
00個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
残存升目の数95個以上 :◎
残存升目の数90〜94個:○
残存升目の数85〜89個:△
残存升目の数84個以下 :×
[実施例2]
樹脂被覆粒子(2)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート(共栄社化学(株)製:ライトエステルP-2M)7.3gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(2)分散ゾルを調製した。固形
分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(2)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pド
ープ酸化錫微粒子(2)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0080】
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(2
)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0081】
透明被膜付基材(F-2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-2)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
【0082】
[実施例3]
樹脂被覆粒子(3)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート(共栄社化学(株)製:ライトエステルP-2M)29.0gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(3)分散ゾルを調製した。
【0083】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(3)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(3)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0084】
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(3)分散液
を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0085】
透明被膜付基材(F-3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-3)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[実施例4]
樹脂被覆粒子(4)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート14.5gの代わりに、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(新
中村化学工業(株)製:NKエステル702A)14.5gを混合した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(4)分散ゾルを調製した。
【0086】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(4)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(4)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
【0087】
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(4)分散ゾル233.3gに、
グリコール系アクリレート樹脂としてポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村化学(株)製:NKエステルAPG−700)6gと、非グリコール系2官能アクリレート樹脂としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDCP−A)3gと、非グリコール系4官能アクリレート樹脂としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE-4A
)24gと、イソプロピルアルコール40gとプロピレングリコールモノメチルエーテル30gと光開始剤2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)1.5gとを混合して透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
透明被膜付基材(F-4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-4)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[実施例5]
樹脂被覆粒子(5)分散ゾルの調製
実施例4において、被覆用樹脂2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(
新中村化学工業(株)製:NKエステル702A)7.3gを混合した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(5)分散ゾルを調製した。
【0088】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(5)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(5)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(5)の調製
実施例4において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(5)分散ゾ
ルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(5)を調製した。
透明被膜付基材(F-5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-5)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[実施例6]
樹脂被覆粒子(6)分散ゾルの調製
実施例4において、被覆用樹脂2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート(
新中村化学工業(株)製:NKエステル702A)29gを混合した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(6)分散ゾルを調製した。
【0089】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(6)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(6)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例4において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(6)分散ゾ
ルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
透明被膜付基材(F-6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-6)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[実施例7]
樹脂被覆粒子(7)分散ゾルの調製
実施例1において、有機溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)374gの代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)374gを用い、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製:
ライトエステルP-2M)7.3gと、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレー
ト(新中村化学工業(株)製:NKエステル702A)7.3gとを混合して使用した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(7)分散ゾルを調
製した。
【0090】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(7)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(7)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(7)分散ゾ
ルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
透明被膜付基材(F-7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-7)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[実施例8]
樹脂被覆粒子(8)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート14.5gの代わりに2-アクリロイロキシエチルコハク酸(共栄社(株)製:ラ
イトアクリレートHOA−MS)14.5gを混合した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(8)分散ゾルを調製した。
【0091】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(8)分散ゾルの安定性、樹脂被
覆Pドープ酸化錫微粒子(8)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(8)分散ゾ
ルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
透明被膜付基材(F-8)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-4)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[実施例9]
樹脂被覆粒子(9)分散ゾルの調製
実施例1において、金属酸化物粒子としてアンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子(日
揮触媒化成(株)製:TL−98FDAR、固形分20重量%、平均粒子径8nm)を105℃で2時間乾燥し、ついで、200℃で2時間加熱処理した。この時、平均一次粒子径は8nm、平均二次粒子径は0.25μmであった。
【0092】
この加熱処理した粒子201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆アンチモンドープ酸化錫微粒子(9)分散ゾルを調製した。固形分濃度30重量%の樹
脂被覆アンチモンドープ酸化錫微粒子(9)分散ゾルの安定性、樹脂被覆アンチモンドープ
酸化錫微粒子(9)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆アンチモンドープ酸化錫微粒子(9)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
透明被膜付基材(F-9)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9)を用いた以外は同様にして透明被膜付基
材(F-9)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の
全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[実施例10]
樹脂被覆粒子(10)分散ゾルの調製
実施例1において、金属酸化物粒子としてスズドープ酸化インジウム(ITO)微粒子
(日揮触媒化成(株)製:ELCOM TL−131、平均粒子径20nm)を200℃で2時間加熱処理した。この時、平均一次粒子径は20nm、平均二次粒子径は0.8μmであった。
【0093】
この加熱処理した粒子201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆スズドープ酸化インジウム微粒子(10)分散ゾルを調製した。
【0094】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆スズドープ酸化インジウム微粒子(10)分散ゾルの安定性、樹脂被覆スズドープ酸化インジウム微粒子(10)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(10)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆スズドープ酸化インジウム微粒子(10)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(10)を調製した。
透明被膜付基材(F-10)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(10)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-10)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0095】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[実施例11]
樹脂被覆粒子(11)分散ゾルの調製
Pドープ酸化錫微粒子(2)の調製
純水8060gに硝酸アンモニウム13gと15%アンモニア水20gを入れ攪拌し、50℃に昇温した。この中に純水4290gに錫酸カリウム1519gを溶解した液を10時間かけてローラーポンプで添加した。このときpHコントローラーでpHを8.2に保つよう濃度10重量%の硝酸を添加して調整した。添加終了後1時間50℃をキープした後、濃度10重量%の硝酸を添加しpHを3.0まで下げた。次に限外濾過膜で濾水電導度が10μS/cmになるまで純水で洗浄した後、限外濾過膜で濃縮し取り出した。このとき取り出した液量は4800gで固形分(SnO2)濃度は15重量%であった。こ
のスラリーの中に濃度16重量%のリン酸水溶液264gを添加し、0.5時間攪拌した。これを乾燥し、700℃で2時間焼成して、Pドープ酸化錫微粒子(2)粉末を調製した

【0096】
得られたPドープ酸化錫微粒子(2)の平均一次粒子径は25nm、平均二次粒子径は1
.2μm、体積抵抗値は4000Ω・cmであった。
【0097】
Pドープ酸化錫微粒子(2)201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の
樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(11)分散ゾルを調製した。
【0098】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(11)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(11)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。

透明被膜形成用塗布液(11)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(11)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(11)を調製した。
透明被膜付基材(F-11)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(11)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-11)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0099】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[実施例12] (原料金属酸化物粒子の種類:酸化チタン)
樹脂被覆粒子(12)分散ゾルの調製
酸化チタン微粒子(1)の調製
732gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液
を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水
和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液16000gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度1.0重量%のペルオ
キソチタン酸水溶液を得た。ついで、オートクレーブにて、150℃で10時間処理して酸化チタンコロイド粒子分散液を調製した。ついで、限外濾過膜にて洗浄し、濃縮した後、これを乾燥し、600℃で2時間焼成して、酸化チタン微粒子(1)粉末を調製した。
【0100】
酸化チタン微粒子(1)の平均一次粒子径は60nm、平均二次粒子径は3.0μmであ
った。
【0101】
酸化チタン微粒子(1)201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂
被覆酸化チタン微粒子(12)分散ゾルを調製した。
【0102】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化チタン微粒子(12)分散ゾルの安定性、樹脂被覆酸化チタン微粒子(12)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(12)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化チタン微粒子(12)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(12)を調製した。
透明被膜付基材(F-12)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(12)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-12)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0103】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[実施例13]
樹脂被覆粒子(13)分散ゾルの調製
酸化ジルコニウム微粒子の調製
純水24320オキシ塩化ジルコニウム8水塩(ZrOCl2・8H2O)655gを溶
解し、これにリンゴ酸27gを添加し、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液3130gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)を調製した。このときの分散液のpHは10.5、温度は19℃であった。
【0104】
ついで、限外濾過膜法で電導度が280μS/cmになるまで洗浄した。つぎに、このジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK1−BH)950gを加え脱イオンした。ついで陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)500gを加え脱イオンした。
【0105】
このようにして得られた洗浄ジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)の電導度は10μS/cm、pHは6であった。
【0106】
ついで、洗浄ジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)に、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、オートクレーブに充填し、200℃で2 時間熟成した。このとき、電導度は640μS/cm、pHは2.53であった。
【0107】
ついで、陰イオン交換樹脂( 三菱化学(株)製:SANUPC)1100gを加えて
脱イオンを行い、ついで純水37500gを供給しながら限外濾過膜法で洗浄した。このときの電導度は16μS/cm 、pHは3.9であった。
【0108】
ついで、上記熟成し、洗浄した分散液をZrO2濃度1重量%に調整し、これに濃度2重量% のリンゴ酸水溶液1340gを加え、超音波を1 時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、オートクレーブに充填し、200℃で2時間水熱処理をした。このとき、電導度は640μS/cm、pHは2.53であった。
【0109】
水熱処理した分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)1100gを加えて脱イオンを行い、ついで純水37500gを供給しながら限外濾過膜法で洗浄した。このときの電導度は47μS/cm、pHは3.4であった。
【0110】
ついで、限外濾過膜にて濃縮した後、これを105℃で乾燥し、さらに200℃で2時間加熱処理して、酸化ジルコニウム微粒子粉末を調製した。
【0111】
酸化ジルコニウム微粒子の平均一次粒子径は20nm、平均二次粒子径は1.5μmであった。
【0112】
酸化ジルコニウム微粒子201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(13)分散ゾルを調製した。
【0113】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(13)分散ゾルの安定性、樹脂被覆酸化チタン微粒子(13)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(13)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(13)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(13)を調製した。
透明被膜付基材(F-13)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(13)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(F-13)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0114】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[比較例1]
カップリング剤処理粒子(R1)分散ゾルの調製
実施例1と同様にして調製したPドープ酸化錫微粒子粉末217g、イオン交換水335gを2Lガラスビーカーに入れ、濃度20重量%のKOH水溶液50gを加えた後、石英ビーズ(0.15mm)1000gを入れ、ビーズミルで充分に撹拌して粉砕分散させた後、325メッシュ(目開き44ミクロン)のステンレス製金網で石英ビーズと分散液を分離し、さらに、金網上に残った石英ビーズをイオン交換水1560gで洗浄した液を充分に混合し、この液を90℃1時間熱処理した後、室温まで冷却し、陰イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪拌した後、陰イオン交換樹脂を分離、次に陽イオン交換樹脂96g
を入れ1時間攪拌した後、陽イオン樹脂を分離してPドープ酸化錫微粒子水分散液(濃度
10重量%)を得た。
【0115】
固形分濃度10重量%のPドープ酸化錫微粒子水分ゾル2000gにカップリング剤として正珪酸エチル(TEOS)(多摩化学製:エチルシリケート28、SiO2成分28.8重量%)20.8g(Pドープ酸化錫微粒子との重量比=3/100)とメタノール2000gを入れ50℃で18時間攪拌した。
【0116】
ついで、γ-アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製:KBM
−5103、SiO2成分81.2重量%)7.4gを入れ、再び50℃で18時間攪拌して表面処理を行った。このあと、エタノールに溶媒置換して固形分濃度30重量%のシランカップリング剤で表面処理したPドープ酸化錫微粒子(R1)分散ゾルを調製した。
【0117】
固形分濃度30重量%のシランカップリング剤で表面処理したPドープ酸化錫微粒子(R1)分散ゾルの安定性、Pドープ酸化錫微粒子(R1)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%のシランカップリング剤で表面処理したPドープ酸化錫微粒子(R1)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
透明被膜付基材(RF-1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-1)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[比較例2]
樹脂被覆粒子(R2)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート(共栄社化学(株)製:ライトエステルP-2M)14.5gの代わりに非アクリル系樹脂ポリビニルピロリドン(関東化学製:K-30、平均分子量10000)14.5gを混合
した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R2)分散ゾルを調製した。
【0118】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R2)分散ゾルの安定性、Pドープ酸化錫微粒子(R2)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R2)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
透明被膜付基材(RF-2)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R2)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-2)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[比較例3]
樹脂被覆粒子(R3)分散ゾルの調製
実施例1において、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフ
ェート(共栄社化学(株)製:ライトエステルP-2M)14.5gの代わりに非アクリル系樹脂ポリビニルアルコール(関東化学製:平均分子量10000)14.5gを混合した以
外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R3)分散ゾルを調製した。
【0119】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R3)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R3)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R3)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
透明被膜付基材(RF-3)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-3)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。
【0120】
得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
[比較例4]
樹脂被覆粒子(R4)分散ゾルの調製
Pドープ酸化錫微粒子(R1)の調製
実施例1において、80℃で2時間乾燥した後、700℃で2時間焼成しなかった以外は同様にしてPドープ酸化錫微粒子(R1)を調製した。
【0121】
得られたPドープ酸化錫微粒子(R1)の平均一次粒子径は15nm、平均二次粒子径は0.035μ、体積抵抗値は6000Ω・cmであった。
【0122】
ついで、Pドープ酸化錫微粒子(1)217g、イオン交換水335gを2Lガラスビー
カーに入れ、濃度20重量%のKOH水溶液50gを加えた後、石英ビーズ(0.15m
m)1000gを入れ、ビーズミルで充分に撹拌して粉砕分散させた後、325メッシュ(目開き44ミクロン)のステンレス製金網で石英ビーズと分散液を分離し、さらに、金網上に残った石英ビーズをイオン交換水1560gで洗浄した液を充分に混合し、この液を90℃1時間熱処理した後、室温まで冷却し、陰イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪
拌した後、陰イオン交換樹脂を分離、次に陽イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪拌した
後、陽イオン樹脂を分離してPドープ酸化錫微粒子水分散液(濃度10重量%)を得た。
【0123】
つぎに、Pドープ酸化錫微粒子水分散液をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶媒置換した。この時固形分濃度は35重量%であった。ついで、固形分濃度は35重量%のPドープ酸化錫微粒子PGME分散液575gと、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製:ライトエス
テルP-2M)14.5gを、ガラスビーズ(0.4mm)1135gを入れたビーズミルに充填し、1700rpmの回転数で1時間処理した後、ガラスビーズを分離し、ついで
PGMEを加えて固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R4)分散ゾルを調製した。
【0124】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R4)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R4)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R4)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R4)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R4)を調製した。
透明被膜付基材(RF-4)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R4)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-4)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[参考例1]
樹脂被覆粒子(S1)分散ゾルの調製
実施例1において、Pドープ酸化錫微粒子粉末、有機溶媒、被覆用樹脂に加えて開始剤として2.4.6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ビ−エーエスジャパン(株)製:ルシリンTPO)1.4gとを混合した以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(S1)分散ゾルを調製した。
【0125】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(S1)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(S1)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(S1)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(S1)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(S1)を調製した。
透明被膜付基材(SF-1)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(S1)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(SF-1)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
【0126】
[比較例5]
樹脂被覆粒子(R5)分散ゾルの調製
Pドープ酸化錫微粒子(R2)の調製
実施例11と同様にして、純水8060gに硝酸アンモニウム13gと15%アンモニア水20gを入れ攪拌し、50℃に昇温した。この中に純水4290gに錫酸カリウム1519gを溶解した液を10時間かけてローラーポンプで添加した。このときpHコントローラーでpHを8.2に保つよう濃度10重量%の硝酸を添加して調整した。添加終了後1時間50℃をキープした後、濃度10重量%の硝酸を添加しpHを3.0まで下げた。
次に限外濾過膜で濾水電導度が10μS/cmになるまで純水で洗浄した後、限外濾過膜で濃縮し取り出した。このとき取り出した液量は6000gで固形分(SnO2)濃度は
12重量%であった。このスラリーの中に濃度16重量%のリン酸水溶液264gを添加し、0.5時間攪拌した。ついで、これを80℃で2時間乾燥して、Pドープ酸化錫微粒子(R2)粉末を調製した。
【0127】
得られたPドープ酸化錫微粒子(R2)の平均一次粒子径は25nm、平均二次粒子径は0.1μm、体積抵抗値は5500Ω・cmであった。
【0128】
ついで、Pドープ酸化錫微粒子(R2)217g、イオン交換水335gを2Lガラスビーカーに入れ、濃度20重量%のKOH水溶液50gを加えた後、石英ビーズ(0.15mm)1000gを入れ、ビーズミルで充分に撹拌して粉砕分散させた後、325メッシュ(目開き44ミクロン)のステンレス製金網で石英ビーズと分散液を分離し、さらに、金網上に残った石英ビーズをイオン交換水1560gで洗浄した液を充分に混合し、この液を90℃1時間熱処理した後、室温まで冷却し、陰イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪
拌した後、陰イオン交換樹脂を分離、次に陽イオン交換樹脂96gを入れ1時間攪拌した
後、陽イオン樹脂を分離してPドープ酸化錫微粒子(R2)水分散液(濃度10重量%)を得た。
【0129】
つぎに、Pドープ酸化錫微粒子(R2)水分散液をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)に溶媒置換した。この時固形分濃度は35重量%であった。ついで、固形分濃度は35重量%のPドープ酸化錫微粒子PGME分散液575gと、被覆用樹脂としてジ2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(共栄社化学(株)製:ライト
エステルP-2M)14.5gを、ガラスビーズ(0.4mm)1135gを入れたビーズミルに充填し、1700rpmの回転数で1時間処理した後、ガラスビーズを分離し、つ
いでPGMEを加えて固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R5)分散ゾルを調製した。
【0130】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R5)分散ゾルの安定性、樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R5)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R5)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆Pドープ酸化錫微粒子(R5)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R5)を調製した。
透明被膜付基材(RF-5)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R5)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-5)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[比較例6]
樹脂被覆粒子(R6)分散ゾルの調製
酸化チタン微粒子(R1)の調製
732gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO2として1.0重量%含有する水溶液
を得た。これを撹拌しながら、濃度15重量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO2として濃度10.2重量%の水
和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液16000gを混合し、ついで80℃で2時間加熱して溶解し、TiO2として濃度1.0重量%のペルオ
キソチタン酸水溶液を得た。ついで、オートクレーブにて、150℃で10時間処理して酸化チタンコロイト゛粒子分散液を調製した。ついで、限外濾過膜にて洗浄し、濃縮した後、これを80℃で2時間乾燥して、酸化チタン微粒子(R1)粉末を調製した。
【0131】
酸化チタン微粒子(R1)の平均一次粒子径は60nm、平均二次粒子径は0.2μmであ
った。
【0132】
酸化チタン微粒子(R1)201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化チタン微粒子(R6)分散ゾルを調製した。
【0133】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化チタン微粒子(R6)分散ゾルの安定性、樹脂被覆酸化チタン微粒子(R6)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R6)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化チタン微粒子(R6)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R6)を調製した。
透明被膜付基材(RF-6)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R6)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-6)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。[比較例7]
樹脂被覆粒子(R7)分散ゾルの調製
酸化ジルコニウム微粒子(R1)の調製
純水24320オキシ塩化ジルコニウム8水塩(ZrOCl2・8H2O)655gを溶
解し、これにリンゴ酸27gを添加し、ついで、濃度10重量%のKOH水溶液3130gを添加してジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)を調製した。このときの分散液のpHは10.5、温度は19℃であった。
【0134】
ついで、限外濾過膜法で電導度が280μS/cmになるまで洗浄した。つぎに、このジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SK1−BH)950gを加え脱イオンした。ついで陽イオン交換樹脂を分離した後、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)500gを加え脱イオンした。
【0135】
このようにして得られた洗浄ジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)の電導度は10μS/cm、pHは6であった。
【0136】
ついで、洗浄ジルコニウム水酸化物ヒドロゲル分散液(ZrO2濃度1重量%)に、超音波を1時間照射してヒドロゲルの分散処理をした後、オートクレーブに充填し、200℃で2 時間熟成した。このとき、電導度は640μS/cm、pHは2.53であった。
【0137】
ついで、陰イオン交換樹脂( 三菱化学(株)製:SANUPC)1100gを加えて
脱イオンを行い、ついで純水37500gを供給しながら限外濾過膜法で洗浄した。このときの電導度は16μS/cm 、pHは3.9であった。
【0138】
ついで、上記熟成し、洗浄した分散液をZrO2濃度1重量%に調整し、これに濃度2重量%のリンゴ酸水溶液1340gを加え、超音波を1 時間照射してヒドロゲルの分散処
理をした後、オートクレーブに充填し、200℃で2時間水熱処理をした。このとき、電導度は640μS/cm、pHは2.53であった。
【0139】
水熱処理した分散液に陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:SANUPC)1100gを加えて脱イオンを行い、ついで純水37500gを供給しながら限外濾過膜法で洗浄した。このときの電導度は47μS/cm、pHは3.4であった。
【0140】
ついで、限外濾過膜にて濃縮した後、これを80℃で2時間乾燥して、酸化ジルコニウム微粒子粉末(R1)を調製した。
【0141】
酸化ジルコニウム微粒子(R1)の平均一次粒子径は20nm、平均二次粒子径は0.5μmであった。
【0142】
酸化ジルコニウム微粒子201gを用いた以外は同様にして固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(R7)分散ゾルを調製した。
【0143】
固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(R7)分散ゾルの安定性、樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(R7)の平均粒子径を測定し、結果を表1に示した。
透明被膜形成用塗布液(R7)の調製
実施例1において、固形分濃度30重量%の樹脂被覆酸化ジルコニウム微粒子(R7)分散ゾルを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R7)を調製した。
透明被膜付基材(RF-7)の製造
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R7)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(RF-7)を調製した。このときの透明被膜の厚さは4μmであった。得られた透明被膜の全光線透過率、ヘーズ、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を測定し、結果を表1に示す。
【0144】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め100〜800℃で加熱処理した平均一次粒子径が5〜300nmの範囲にあり、平均二次粒子径が5nm〜10μmの範囲にある金属酸化物粒子の有機溶媒分散液に、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂からなる樹脂被覆材を添加し、ついで、メカノケミカル処理することを特徴とする樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒がエーテル類、エステル類、ケトン類から選ばれる1種以上であることを
特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂被覆材の固形分としての濃度(CR)と金属酸化物微粒子の固形分としての濃
度(CMO)の濃度比(CR)/(CMO)が0.005〜0.5の範囲にあることを特徴と
する請求項1または2に記載の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項4】
前記メカノケミカル処理時の金属酸化物粒子と樹脂被覆材とをあわせた全固形分濃度が1〜50重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項5】
前記金属酸化物粒子が、TiO2、SiO2、ZrO2、Al23、Sb25、ZnOおよびこ
れらの複合酸化物、酸化錫、SbまたはPがドープされた酸化錫、酸化インジウム、Sn
またはFがドーピングされた酸化インジウム、酸化アンチモン、低次酸化チタンから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂被覆金属酸化
物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂被覆金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜300nmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルの製造方法。
【請求項7】
マトリックス形成成分と請求項1〜6のいずれかに記載の方法で得られた樹脂被覆金属酸化物粒子分散ゾルと有機溶媒とを含んでなることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項8】
基材と、基材上に該請求項7に記載の透明被膜形成用塗布液を塗布・乾燥して形成された透明被膜とを有することを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項9】
前記透明被膜が他の被膜とともに設けられていることを特徴とする請求項8に記載の透明被膜付基材。

【公開番号】特開2010−77409(P2010−77409A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193506(P2009−193506)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】