説明

樹脂製包装袋

【課題】フィルム層数が変化する部分におけるフィルム融着部の破損を線形融着部の異形部分により防止するとともに、袋の開閉時に直線状融着部に過剰な負荷がかかるのを防止する。
【解決手段】樹脂製包装袋(1)の線形融着部(6)は、左右のマチ部(4)の内側折り返し縁(5)を横断して延びる唯一の異形部(7)を袋の幅方向中央部に有する。異形部は、線形融着部の直線部分から緩やかに湾曲した左右の湾曲部(7a)と、左右の湾曲部の間に形成され且つ緩やかに湾曲した下方膨出部(7b)とから構成される。下方膨出部の円弧状部分は、左右の内側折返し縁を横断する。線形融着部は、同期回転するヒートシールロール(11)及びフィルム支承ロール(12)を有するヒートシール装置によって成形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製包装袋に関するものであり、より詳細には、頂部開口部と、左右のマチ部と、ヒートシールによって形成されたシール底部とを有する樹脂製包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模商業施設の食品売場や、食品小売店舗等で食品を包装するのに使用される樹脂製のマチ付き包装袋が広く実用に供されている。この種の袋は、家庭の生ゴミ等を廃棄するためのゴミ袋等の如く、多目的用途に利用されている。例えば、近年においては、犬等のペットの飼主は、ペットを散歩させる際にペットの糞を公共の路面から自宅に持ち帰る必要があることから、糞を収容して持ち帰るために、この種の袋を使用する飼主も非常に多い。
【0003】
このような樹脂製包装袋は、インフレーション法等によって製造された連続チューブ状の樹脂フィルムや、重ね合わされた連続シート状の樹脂フィルムをヒートシール装置によってヒートシールし且つ単一の袋の寸法に切断することによって製造される。
【0004】
ヒートシール装置として、間欠運転される昇降式ヒートシール装置と、連続運転される回転式ヒートシール装置とが知られている。
【0005】
特開2003-33981号公報等に記載されるように、昇降式ヒートシール装置は、間欠的に上下動する可動シーラを備えており、可動シーラは、静止状態の樹脂フィルム上に降下して樹脂フィルムの袋底部分を局所的に加熱溶融し、袋の線形底部シールを融着・形成するように構成される。
【0006】
特開2008-56261号公報、特開2008-265812号公報等に記載されるように、回転式ヒートシール装置は、ヒートシールバーを装着した回転ロールを備え、連続搬送される樹脂フィルムに対して回転ロール上のヒートシールバーを接触せしめるように構成される。回転ロールの軸芯方向に直線状に延びるヒートシールバーの突条は、樹脂フィルムの袋底部分を局所的に加熱溶融し、回転ロールの回転中心軸線と平行な直線状シールを袋底部分に融着・形成する。また、特公昭46-9774号公報には、屈曲可能な絶縁体に発熱線を密に巻装した発熱線を曲線形状にシールローラに装着・固定した曲線シール装置が記載されている。
【0007】
図13(A)は、従来の樹脂製包装袋の構成を示す斜視図である。図13(B)及び図13(C)は、図13(A)に示す樹脂製包装袋の頂部開口及び底部を概念的に示す概略平面図及び概略底面図である。
【0008】
樹脂フィルムからなる樹脂製包装袋1は、頂部開口部2、シール底部3及びマチ部分4を有する。シール底部3には、袋1の全幅Wに亘って延びる真っ直ぐな線形融着部6がヒートシール装置(図示せず)によって形成される。樹脂製包装袋1は、マチ部分4(幅W1)において4層構造を有し、マチ部分4の間の中央帯域8(幅W2)において2層構造を有するので、線形融着部6は、両側のマチ部分4(幅W1)において4層のフィルムを融着し、中央帯域8(幅W2)において2層のフィルムを融着する。即ち、線形融着部6は、内側折返し縁5と線形融着部6との交点部分Kにおいて4層フィルムの融着から2層フィルムの融着に変化する。線形融着部6は、このようにフィルム層数が交点部分Kにおいて変化する結果、交点部分Kにおいてシールの破損等が発生し易い。これは、袋1の開閉動作によって生じる力が、矢印Nで示すように交点部分Kに集中的に作用することに起因するとともに、フィルム層数の変化により交点部分Kの融着が不完全になり易く、従って、交点部分Kが脆弱化し易いことに起因すると考えられる。
【0009】
このため、本発明者等は、左右のマチ部分4の内側折返し縁5を袋の中心線上に配置し、左右の内側折返し縁5同士が互い接するように袋の製造を試みた。このような構造の袋は、中央帯域8(2層フィルム部分)を有しないので、4層フィルムを融着する直線状シールが袋の全幅に亘って形成される。しかしながら、このような線形融着部6を備えた袋では、内側折返し縁5同士が接する部分、即ち、袋の中心線位置における融着が不十分になり易く、このため、直線状シールの中央部が破損し易い。
【0010】
図14(A)は、交点部分Kにおけるシールの破損を防止することを意図した従来の樹脂製包装袋の構成を示す斜視図である。図14(B)及び図14(C)は、図14(A)に示す樹脂製包装袋の頂部開口及び底部を概念的に示す概略平面図及び概略底面図である。
【0011】
図14には、下方に膨出する形態の凹形又はU形の異形部9を交点部分Kに形成した構成を有する樹脂製包装袋1が示されている。異形部9は、交点部分Kにおける応力集中を緩和し、交点部分Kにおける線形融着部6の破損を防止するように機能する。このような線形融着部6の構成は、例えば、特開2006-62711号公報の図4に記載されている。
【0012】
また、このように単一の線形融着部により形成された線形シール底と異なり、複数の線形融着部によって平坦な角形シール底を形成する技術が、特許第3453274号公報に記載されている。この公報に記載されたガセット袋は、ハム・ソーセージ等を充填するためのものであり、2本の直線状融着部を袋底部分に融着・形成するとともに、2本の線形融着部の交差部を外方に膨出した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2003-33981号公報
【特許文献2】特開2008-56261号公報
【特許文献3】特開2008-265812号公報
【特許文献4】特公昭46-9774号公報
【特許文献5】特開2006-62711号公報
【特許文献6】特許第3453274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特開2006-62711号公報(特許文献5)に記載される如く凹形又はU形の異形部9を交点部分Kに形成した樹脂製包装袋1の構造(図14)は、交点部分Kの破損を防止する上で有効であるかもしれない。しかし、直線状シール部6は、両側の直線状融着部6aと中央帯域8(幅W2)の直線状融着部6bとに分割されることから、袋の開閉動作の際に中央帯域8の直線状融着部6bに過剰な負荷(力)が作用する。このため、このような構造の袋には、直線状融着部6bが破損し易いという問題があった。
【0015】
他方、特許第3453274号公報(特許文献6)に記載されたガセット袋は、交差する2本の線形融着部を使用した構造のものであり、各々の線形融着部は全長に亘って2層のフィルムを融着するにすぎず、従って、融着すべきフィルム層数が変化する部分は存在しない。従って、特許第3453274号公報(特許文献6)に記載されたシール底の構造は、フィルム層数が変化する融着部分を有する特開2006-62711号公報(特許文献5)等のシール底構造には、応用することができない。
【0016】
また、特開2006-62711号公報(特許文献5)に示されるように袋1の幅方向に離間した複数の異形部9(図14)を線形融着部6(図14)に形成する場合、各々の異形部9を形成する樹脂フィルム部分に対してヒートシールバーを均一な圧力で接触せしめ且つ均一な温度で左右の異形部9の樹脂フィルム部分を加熱しなければならない。しかし、離間した異形部9の樹脂フィルム部分を均一な圧力且つ均一な温度で加熱することは、容易ではない。このため、このように複数の異形部9を備えた線形融着部6を形成するには、間欠的に上下動する可動シーラを備えた昇降式ヒートシール装置を使用せざるを得なかった。
【0017】
更には、ヒートシールバーの圧力及び温度が4層フィルム部分(直線状融着部6a)と2層のフィルム部分(直線状融着部6b)とに均一に作用するようにすることは、極めて困難であり、相対的に薄い2層フィルム部分(直線状融着部6b)に過剰な圧力又は温度が作用する傾向がある。このため、2層フィルム部分の融着不良が生じ易いことから、このような融着不良を防止する意味においても、間欠的に上下動する可動シーラを備えた昇降式ヒートシール装置を使用せざるを得なかった。
【0018】
しかしながら、昇降式ヒートシール装置を備えた袋製造装置においては、ヒートシール装置の作動と関連して、樹脂フィルムを間欠的に移動させる必要があり、このため、所望の如く生産性を向上し難い事情がある。
【0019】
また、昇降式ヒートシール装置は、樹脂フィルムの移動・静止と連動して間欠的に作動されるので、作業環境の変化や、樹脂フィルムの性状変化等によってシール成形の品質が過渡的に損なわれる可能性があり、このため、昇降式ヒートシール装置は、シール成形の品質を確保する上でも難点がある。
【0020】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルム層数が変化する部分におけるフィルム融着部の破損を線形融着部の異形部分により防止するとともに、袋の開閉時に直線状融着部に過剰な負荷がかかるのを防止することができる樹脂製包装袋を提供することにある。
【0021】
本発明は又、このような異形部分を線形融着部に設けた樹脂製包装袋に関し、その生産性及び品質を向上することができる樹脂製包装袋の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、上記目的を達成すべく、頂部開口部(2)と、左右のマチ部(4)と、ヒートシールによって形成されたシール底部(3)とを有し、前記シール底部は、袋の幅方向に延びる直線部分と、袋の下方に膨出する形態の異形部とを備えた単一の線形融着部を有する樹脂製包装袋(1)において、
前記線形融着部(6)は、左右の前記マチ部の内側折り返し縁(5)を横断して延びる唯一の異形部(7)を袋の幅方向中央部に有し、
前記異形部は、前記線形融着部の直線部分から緩やかに湾曲した左右の湾曲部(7a)と、左右の湾曲部の間に形成され且つ緩やかに湾曲した下方膨出部(7b)とから構成され、
前記下方膨出部(7b)の円弧状部分は、左右のマチ部の内側折返し縁(5)を横断することを特徴とする樹脂製包装袋を提供する。
【0023】
本発明の上記構成によれば、4層フィルムの融着から2層フィルムの融着に変化する融着部分、即ち、内側折返し縁(5)と線形融着部(6)との交点部分(K)は、下方に湾曲した下方膨出部(7b)に形成される。この交点部分は、直線状融着部よりも下方に変位した位置に配置されるので、直線状融着部から交点部分に伝達する力が緩和され、従って、交点部分におけるフィルム融着部の破損を効果的に防止することができる。しかも、2層構造の中央帯域(8)には、直線状融着部は形成されず、下方膨出部の両側には、袋(1)の縁まで連続する比較的大きい長さの直線状融着部が形成されるので、袋の底部に作用する負荷を両側の直線状融着部に効果的に分散することができる。
【0024】
好ましくは、上記内側折り返し縁(5)の間に形成される中央帯域(8)の幅(W2)は、袋の全幅(W)×0.025〜0.2の範囲内に設定される。更に好ましくは、上記下方膨出部(7b) の曲率半径(R)は、中央帯域(8)の幅(W2)×2/3よりも大きく、中央帯域(8)の幅(W2)の3倍以下の範囲内の寸法に設定され、上記下方膨出部(7b) の曲率中心(CP)は、袋の中心線(CL)上に位置決めされ且つ線形融着部(6)の直線部分のレベルよりも上方の位置に位置決めされる。
【0025】
本発明は又、上記構成の樹脂製包装袋を製造するための樹脂製包装袋の製造装置であって、
平行な回転中心軸線(X,Y)を中心に同期回転するヒートシールロール(11)及びフィルム支承ロール(12)と、
前記ヒートシールロール及びフィルム支承ロールの間に形成された樹脂フィルムの走行路(15)とを有し、
前記ヒートシールロールの外周部には、ヒートシールバー(20)が取り付けられ、該ヒートシールバーは、回転時に樹脂フィルムに押圧される線形突条部(21)を有し、該突条部は、前記ヒートシールロールの回転方向後方に膨出するように湾曲した異形部(27)と、該異形部の両端部に連接し且つ前記ヒートシートロールの回転中心軸線(X)と平行に真っ直ぐに延びる左右の直線部分(26)とを有し、前記線形突条部の異形部(27)は、前記袋(1)の異形部(7)と相補する形状及び寸法を有し、
前記フィルム支承ロールは、弾力的に変形可能な耐熱性樹脂被覆層(14)を有することを特徴とする樹脂製包装袋の製造装置を提供する。
【0026】
本発明の上記構成によれば、ヒートシールバー(20)は、唯一の異形部(7)を袋の幅方向中央部に有するにすぎず、従って、ヒートシールロール(11)は、袋の幅方向に離間した複数の異形部を均一な圧力及び温度で加熱することを要しない。しかも、線形突条部(21)が偏平チューブに押圧される間、フィルム支承ロール(12)の耐熱性樹脂被覆層(14)は弾力的に変形するので、樹脂フィルムは、適度な圧力を均一に線形突条部より受けた状態で加熱される。このため、回転式ヒートシールロール及びフィルム支承ロールによって前述の樹脂製包装袋を製造し、樹脂製包装袋の生産性及び品質を向上することができる。
【0027】
好ましくは、上記線形突条部(21)は、ヒートシールロール(11)の中心軸線(X)と直交する中心線(CL')を有し、この中心線に対し、ヒートシールロールの回転方向(Q)の接線方向において前後対称の断面形状を有し、線形突条部の先端部は、所定の曲率半径を有する前後の湾曲部(22)によって全体的に湾曲した輪郭を有する。所望により、線形突条部(21)の先端面は、全体的に円弧状湾曲面に形成される。
【0028】
本発明は更に、上記構成の樹脂製包装袋を製造するための樹脂製包装袋の製造方法であって、
平行な回転中心軸線(X,Y)を中心に同期回転する回転式ヒートシール装置のヒートシールロール(11)及びフィルム支承ロール(12)を平行に配置し、前記袋(1)の異形部(7)と相補する形状及び寸法の異形部(27)を備えた線形突条部(21)を前記ヒートシールロールのヒートシールバー(20)に設け、弾力的に変形可能な耐熱性樹脂被覆層(14)によって前記フィルム支承ロールの外周面を被覆したヒートシール装置を使用し、
マチ部(4)用のガセットを形成した樹脂フィルムの偏平チューブ(10)を前記ヒートシールロール及び前記フィルム支承ロールの間の樹脂フィルム走行路(15)に通し、
前記ヒートシールロール及び前記フィルム支承ロールを同期回転させて、前記ヒートシールロールのヒートシールバーの線形突条部(21)を偏平チューブに押圧し、該偏平チューブを加熱・加圧して、前記樹脂フィルムを融着することを特徴とする樹脂製包装袋の製造方法を提供する。
【0029】
本発明の上記構成によれば、ヒートシールバー(20)は、唯一の異形部(7)を袋の幅方向中央部に有するにすぎず、従って、ヒートシールロール(11)は、袋の幅方向に離間した複数の異形部を均一な圧力及び温度で加熱することを要しない。しかも、線形突条部(21)が偏平チューブに押圧される間、フィルム支承ロール(12)の耐熱性樹脂被覆層(14)が弾力的に変形するので、樹脂フィルムは、適度な圧力を均一に線形突条部より受けた状態で加熱される。このため、回転式ヒートシール装置のヒートシールロールを用いて前述の樹脂製包装袋を製造し、樹脂製包装袋の生産性及び品質を向上することができる。
【0030】
好ましくは、上記線形突条部(21)は、左右の直線部分(26)から所定の曲率半径で回転方向後方に湾曲した左右の湾曲部(27a)と、湾曲部の間に形成され且つ所定の曲率半径で緩やかに下方に湾曲した膨出部(27b)とからなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の樹脂製包装袋によれば、フィルム層数が変化する部分におけるフィルム融着部の破損を線形融着部の異形部分により防止するとともに、袋の開閉時に直線状融着部に過剰な負荷がかかるのを防止することができる。また、本発明に係る樹脂製包装袋の製造装置及び製造方法によれば、このような異形部分を線形融着部に設けた樹脂製包装袋に関し、その生産性及び品質を向上することができる
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の樹脂製包装袋の好適な実施形態を示す斜視図、概略平面図及び概略底面図である。
【図2】図2は、図1に示す樹脂製包装袋の正面図である。
【図3】図3は、図1に示す樹脂製包装袋の側面図である。
【図4】図4は、図1に示す樹脂製包装袋の底面図である。
【図5】図5は、図2に示すA−A線における樹脂製包装袋の断面図である。
【図6】図6は、図5に示すB−B'部分における樹脂製包装袋の拡大断面図である。
【図7】図7は、図1に示す樹脂製包装袋の頂部開口を開いた状態で示す平面図である。
【図8】図8は、図2に示すC−C'部分における樹脂製包装袋の部分拡大図である。
【図9】図9は、図2に示すC−C'間のD−D'部分における樹脂製包装袋の部分拡大図である。
【図10】図10は、回転式ヒートシール装置の構成を示す断面図である。
【図11】図11は、図10に示すヒートシールバーの拡大断面図である。
【図12】図12は、図10に示すヒートシールバーの拡大正面図である。
【図13】図13は、従来の樹脂製包装袋の構成を示す斜視図、概略平面図及び概略底面図である。
【図14】図14は、従来の樹脂製包装袋の構成を示す斜視図、概略平面図及び概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0034】
図1(A)は、本発明の樹脂製包装袋の好適な実施形態を示す斜視図である。図1(B)及び図1(C)は、図1(A)に示す樹脂製包装袋の頂部開口及び底部を概念的に示す概略平面図及び概略底面図である。図2及び図3は、図1に示す樹脂製包装袋の正面図及び側面図である。図4〜図9は、図1に示す樹脂製包装袋の底面図、断面図、平面図及び部分拡大図である。
【0035】
樹脂製包装袋1は、半透明ポリエチレンフィルム等の樹脂フィルムからなり、頂部開口部2、シール底部3及びマチ部分4を有する。シール底部3には、袋1の全幅Wに亘って延びる線形融着部6が後述のヒートシール装置(図10〜図12)によって形成される。樹脂製包装袋1は、左右のマチ部分4(幅W1)において4層構造を有し、マチ部分4の間の中央帯域8(幅W2)において2層構造を有する。マチ部分4の幅W1は、中央帯域8の幅W2よりもかなり大きく、従って、左右のマチ部分4の内側折返し縁5は互いに接近している。マチ部分4が非常に大きい幅W1を有することから、頂部開口部2は、図2(B)に示す如く、非常に大きく開口することができる。
【0036】
本例において、袋1の全幅Wは100〜200mmの範囲であり、中央帯域8の幅W2は、5〜20mm、或いは、0.025〜0.2×Wの範囲に設定され、マチ部分4の幅W1は、40〜約100(97.5)mm、或いは、0.4〜約0.48(0.4875)×Wの範囲に設定される。例えば、袋1は、全幅W=125mm、W2=8mm、W1=58.5mmに設定される。
【0037】
シール底部3には、袋1の全幅に亘って延び且つ中央部に唯一の異形部7を有する線形融着部6が、図10〜図12に示すヒートシール装置によって形成される。図9に示すように、異形部7は、線形融着部6の直線部分から所定の曲率半径で緩やかに湾曲した左右の円弧状湾曲部7aと、左右の湾曲部7aの間に形成され且つ所定の曲率半径で緩やかに湾曲した円弧状の下方膨出部7bとから構成される。下方膨出部7bは、左右の内側折返し縁5を横断する。従って、内側折返し縁5と線形融着部6との交点部分Kは、下方膨出部7b上に形成される。
【0038】
曲率中心CPを中心とする下方膨出部7bの曲率半径Rは、中央帯域8の幅W2×2/3よりも大きく、幅W2×3以下の範囲内の寸法に設定される。例えば、W2が8mmであるとき、曲率半径Rは、14mmに設定される。曲率中心CPは、袋1の中心線CL上に位置決めされるとともに、線形融着部6のレベルよりも上方の位置に位置決めされる。曲率中心CPと線形融着部6との離間距離h(高さ方向)は、中央帯域8の幅W2×1/4よりも大きく、幅W2×2以下の範囲内の寸法に設定される。例えば、曲率半径Rは15mmに設定され、距離hは5mmに設定される。曲率中心CP’を中心とする湾曲部7aの曲率半径R’は、下方膨出部7bの曲率半径Rよりも小さく、例えば、2〜5mm程度に設定される。
【0039】
図10及び図11は、回転式ヒートシール装置の構成を示す断面図及び拡大断面図であり、図12は、図10に示すヒートシールバーの拡大正面図である。
【0040】
図10に示す如く、ヒートシール装置は、上側に配置されたヒートシールロール11と、下側に配置されたフィルム支承ロール12とから構成される。ヒートシールロール11は、回転中心軸線Xを中心に回転方向Qに回転駆動される。フィルム支承ロール12は、ヒートシールロール11の回転中心軸線Xと平行な回転中心軸線Yを中心に回転方向Q’に回転駆動される。インフレーション法等によって製造されたガセット付きの樹脂フィルム偏平チューブ10が、ヒートシールロール11及びフィルム支承ロール12の間の走行路15において、フィルム支承ロール12上を矢印V方向に走行する。
【0041】
ヒートシールロール11は、ヒートシール用熱源(図示せず)を内蔵する。ヒートシールロール11の外周部には、一対のヒートシールバー20が装着される。ヒートシールバー20は、180度の角度間隔を隔てて対称に配置される。フィルム支承ロール12は、ロール本体13の外周面を弾力的な耐熱性樹脂被覆層14によって被覆した構造を有する。ヒートシールロール11及びフィルム支承ロール12は、偏平チューブ10の走行方向(矢印V方向)と相応する方向に同期回転する。
【0042】
図11に示す如く、線形突条部21がヒートシールバー20の先端面23に突設される。図11の部分拡大図には、線形突条部21の中心線CL’が示されている。中心線CL’は回転中心軸線Xに直交する。線形突条部21は、中心線CL’に対し、回転方向Qの接線方向において前後対称の断面形状を有し、線形突条部21の先端部は、所定の曲率半径を有する前後の湾曲部22を有し、全体的に湾曲した輪郭を有する。湾曲部22の間の先端部表面は、平坦又は緩やかな湾曲面に形成される。線形突条部21の先端部を全体的に円弧状湾曲面に形成しても良い。線形突条部21の先端部の幅W3は、1〜3mmの範囲内に設定される。
【0043】
図12に示すように、ヒートシールバー20は、ヒートシールロール11の回転中心軸線Xと平行に延びる。線形突条部21は、回転中心軸線Xと平行に真っ直ぐに延びる左右の直線部分26と、線形突条部21の中央領域において直線部分26の間に配置された異形部27とから構成される。線形突条部21は、樹脂製包装袋1の線形融着部6と一致(相補)する形態を有し、異形部27は、線形融着部21の直線部分26から所定の曲率半径で緩やかに湾曲した左右の湾曲部27aと、左右の湾曲部27aの間に形成され且つ所定の曲率半径で緩やかに湾曲した膨出部27bとから構成される。左右の湾曲部27aは、左右の直線部分26に夫々連続する。膨出部27bは、ヒートシールロール11の回転方向後方に膨出する形態を有する。図12には、曲率中心CP”を中心とする膨出部27bの曲率半径R”が示されている。曲率中心CP”及び曲率半径R”は、下方膨出部7bの曲率中心CP及び曲率半径Rと対応する。
【0044】
図10に示すように、マチ部分4用のガセット(折り込み)を形成した偏平チューブ10が、ヒートシールロール11及びフィルム支承ロール12の間の走行路15を矢印方向Vに走行する。ヒートシールロール11及びフィルム支承ロール12がQ、Q’方向に夫々回転する。図10に拡大して示すように、ヒートシールバー20の線形突条部21が偏平チューブに押圧され、偏平チューブを加熱・加圧して、樹脂フィルムを融着する。線形突条部21が偏平チューブに押圧される間、フィルム支承ロール12の耐熱性樹脂被覆層14は弾力的に変形するので、樹脂フィルムは、適度な圧力を均一に線形突条部21より受けた状態で加熱される。
【0045】
ヒートシールロール11及びフィルム支承ロール12の間のニップ領域(走行路15)を通過した偏平チューブ10には、偏平チューブ10の全幅に亘って延び且つ中央部に唯一の異形部7を有する線形融着部6が形成される。偏平チューブ10は、切断装置(図示せず)によって樹脂製包装袋1の長さ寸法に切断され、かくして、図1〜9に示す樹脂製包装袋1が製造される。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であることはいうまでもない。
【0047】
例えば、線形融着部6及び線形突条部21の各部寸法及び各部形状は、袋1の寸法・形状等に相応して適宜設定変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、シール底部を有するマチ付きの樹脂製袋に好ましく適用される。本発明によれば、フィルム層数が変化する部分におけるフィルム融着部の破損を線形融着部の異形部分により効果的に防止するとともに、袋の開閉動作による過剰な負荷が直線状融着部に作用するのを防止することができる。本発明は又、このような樹脂製包装袋の製造装置及び製造方法に好ましく適用される。本発明によれば、フィルム融着部の破損を防止するために上記異形部分を線形融着部に設けた樹脂製包装袋に関し、その生産性及び品質を向上することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 樹脂製包装袋
2 頂部開口部
3 シール底部
4 マチ部分
5 内側折り返し縁
6 線形融着部
7 異形部
8 中央帯域
10 ガセット付き樹脂フィルム偏平チューブ
11 ヒートシールロール
12 フィルム支承ロール
15 走行路
20 ヒートシールバー
21 線形突条部
26 直線部分
27 異形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部開口部(2)と、左右のマチ部(4)と、ヒートシールによって形成されたシール底部(3)とを有し、前記シール底部は、袋の幅方向に延びる直線部分と、袋の下方に膨出する形態の異形部とを備えた単一の線形融着部を有する樹脂製包装袋(1)において、
前記線形融着部(6)は、左右の前記マチ部の内側折り返し縁(5)を横断して延びる唯一の異形部(7)を袋の幅方向中央部に有し、
前記異形部は、前記線形融着部の直線部分から緩やかに湾曲した左右の湾曲部(7a)と、左右の湾曲部の間に形成され且つ緩やかに湾曲した下方膨出部(7b)とから構成され、
前記下方膨出部(7b)の円弧状部分は、左右のマチ部の内側折返し縁(5)を横断することを特徴とする樹脂製包装袋。
【請求項2】
前記内側折り返し縁(5)の間に形成される中央帯域(8)の幅(W2)は、袋の全幅(W)×0.025〜0.2の範囲内に設定されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製包装袋。
【請求項3】
前記下方膨出部(7b) の曲率半径(R)は、前記中央帯域(8)の幅(W2)×2/3よりも大きく、前記中央帯域(8)の幅(W2)の3倍以下の範囲内の寸法に設定され、前記下方膨出部(7b) の曲率中心(CP)は、前記袋の中心線(CL)上に位置決めされ且つ前記線形融着部(6)の直線部分のレベルよりも上方の位置に位置決めされることを特徴とする請求項2に記載の樹脂製包装袋。
【請求項4】
頂部開口部(2)と、左右のマチ部(4)と、ヒートシールによって形成されたシール底部(3)とを有し、前記シール底部は、袋の幅方向に延びる直線部分と、袋の下方に膨出する形態の唯一の異形部(7)とを備えた単一の線形融着部(6)を有し、前記異形部は、前記線形融着部の幅方向中央部に配置されるとともに、緩やかに湾曲した下方膨出部(7b)を有し、該下方膨出部の円弧状部分は、左右のマチ部の内側折返し縁(5)を横断するように構成した樹脂製包装袋(1)を製造する樹脂製包装袋の製造装置であって、
平行な回転中心軸線(X,Y)を中心に同期回転するヒートシールロール(11)及びフィルム支承ロール(12)と、
前記ヒートシールロール及びフィルム支承ロールの間に形成された樹脂フィルムの走行路(15)とを有し、
前記ヒートシールロールの外周部には、ヒートシールバー(20)が取り付けられ、該ヒートシールバーは、回転時に樹脂フィルムに押圧される線形突条部(21)を有し、該突条部は、前記ヒートシールロールの回転方向後方に膨出するように湾曲した異形部(27)と、該異形部の両端部に連接し且つ前記ヒートシートロールの回転中心軸線(X)と平行に真っ直ぐに延びる左右の直線部分(26)とを有し、前記線形突条部の異形部(27)は、前記袋(1)の異形部(7)と相補する形状及び寸法を有し、
前記フィルム支承ロールは、弾力的に変形可能な耐熱性樹脂被覆層(14)を有することを特徴とする樹脂製包装袋の製造装置。
【請求項5】
前記線形突条部(21)は、前記ヒートシールロール(11)の中心軸線(X)と直交する中心線(CL')を有し、該中心線に対し、前記ヒートシールロールの回転方向(Q)の接線方向において前後対称の断面形状を有し、前記線形突条部の先端部は、所定の曲率半径を有する前後の湾曲部(22)を有することを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記線形突条部(21)の先端面は円弧状湾曲面に形成されることを特徴とする請求項5に記載の製造装置。
【請求項7】
頂部開口部(2)と、左右のマチ部(4)と、ヒートシールによって形成されたシール底部(3)とを有し、前記シール底部は、袋の幅方向に延びる直線部分と、袋の下方に膨出する形態の唯一の異形部(7)とを備えた単一の線形融着部(6)を有し、前記異形部は、前記線形融着部の幅方向中央部に配置されるとともに、緩やかに湾曲した下方膨出部(7b)を有し、該下方膨出部の円弧状部分は、左右のマチ部の内側折返し縁(5)を横断するように構成した樹脂製包装袋(1)を製造する樹脂製包装袋の製造方法であって、
平行な回転中心軸線(X,Y)を中心に同期回転する回転式ヒートシール装置のヒートシールロール(11)及びフィルム支承ロール(12)を平行に配置し、前記袋(1)の異形部(7)と相補する形状及び寸法の異形部(27)を備えた線形突条部(21)を前記ヒートシールロールのヒートシールバー(20)に設け、弾力的に変形可能な耐熱性樹脂被覆層(14)によって前記フィルム支承ロールの外周面を被覆したヒートシール装置を使用し、
マチ部(4)用のガセットを形成した樹脂フィルムの偏平チューブ(10)を前記ヒートシールロール及び前記フィルム支承ロールの間の樹脂フィルム走行路(15)に通し、
前記ヒートシールロール及び前記フィルム支承ロールを同期回転させて、前記ヒートシールロールのヒートシールバーの線形突条部(21)を偏平チューブに押圧し、該偏平チューブを加熱・加圧して、前記樹脂フィルムを融着することを特徴とする樹脂製包装袋の製造方法。
【請求項8】
前記線形突条部(21)は、左右の直線部分(26)から所定の曲率半径で緩やかに湾曲した左右の湾曲部(27a)と、該湾曲部の間に形成され且つ所定の曲率半径で回転方向後方に下方に湾曲した膨出部(27b)とからなることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−126602(P2011−126602A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257369(P2010−257369)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(500411278)株式会社サンシャインポリマー (2)
【Fターム(参考)】