説明

樹脂製止水弁カートリッジ

【課題】完全な合成樹脂化を可能とすることで、合成樹脂化による軽量化や、従来の黄銅材料に固有の問題点(使用に伴う強度低下や規制物質溶出等)を解決することができる樹脂製止水弁カートリッジの提供
【解決手段】ハウジング10の全体及び栓棒30の全体を合成樹脂化する。また、ハウジング10は、小径円筒部SCにおいて、可動ディスク41及び固定ディスク45の収容空間部分の壁厚を、可動ディスク41及び固定ディスク45に加わる水圧に耐えうる小さな第1の壁厚とし、締結用雄螺子部15の壁厚を、小径円筒部の第1の壁厚よりも大きく、かつ、締付部11の締付に伴って締結用雄螺子部15に加わる物理的負荷に耐えうる大きな第2の壁厚として、小径円筒部SCの内周面において、締結用雄螺子部15の他端側の位置と整合する位置に、第1の壁厚と第2の壁厚との差による平坦リング状の段差面18を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製止水弁カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給水栓は、開栓及び閉栓操作のためのハンドル部に止水弁を内装し、ハンドル部を上下に傾動したり周方向に回動したりすることにより、止水弁を開弁または閉弁して、給水源の水を吐水口から吐水または止水するようになっている。この止水弁には、開弁動作及び閉弁動作を行う弁部材として、セラミック製ディスクを内装使用した操作性に優れるものがある。また、止水弁は、2〜10年程度で経年劣化による消耗により、消耗部品の交換等のメンテナンスを行う必要があるが、近年、このメンテナンス作業を容易に行えるよう、止水弁の各部品をハウジング内に収容して一体化した止水弁カートリッジの開発が進んでいる。ここで、単水栓の場合、ハウジングとして黄銅製ハウジングを使用するものが一般的である。
【0003】
なお、上記止水弁とは用途が異なるが、止水弁と同様のセラミックディスクを使用した多方切替弁(三方切替弁)に関する発明として、例えば、特許文献1に記載の発明がある。特許文献1には、セラミック弁カートリッジの突出量を抑えて省スペース化を実現でき、取付け場所や取付けの向き等、レイアウトの自由度が向上する三方切換え弁が開示されている。上記弁部材は、ハンドルの開閉操作に連動して回動するセラミック製の可動弁ディスクと、該可動弁ディスクに摺動可能に当接し、回動不可の状態で設けられたセラミック製の固定弁ディスクとを備えたセラミック弁カートリッジとされている。また、セラミック弁カートリッジは、バルブハウジングの収納室に収納され、収納室の壁面とバルブハウジングの外周面との間に、収納室を迂回する迂回流路が形成され、主流路は、収納室の壁面とセラミック弁カートリッジの入水側端部とにより区画され、分岐流路は、迂回流路と、バルブハウジング内に配設された弁吐水口とが連通して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−170510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[黄銅材料を使用した場合の課題]
しかし、黄銅材料は、耐食性・耐久性に優れた金属材料であり、また、本来は必要な機械的強度を有する材料であるものの、長期間の接水によって黄銅に含有される亜鉛が溶出し、機械的強度を保持できなくなる、いわゆる脱亜鉛腐食現象が生じることが近年明らかになっている。また、止水弁のハウジングを含む水道用製品に使用される黄銅材料としては、被削性を高めて加工性を向上した快削黄銅が多く使用されるが、この快削黄銅には被削性を高めるために鉛が含有されている。また、黄銅の含有物である亜鉛には、不純物としてカドミウムが(微量であるものの)一般に含まれる。したがって、黄銅材料を使用して止水弁カートリッジのハウジングを製造すると、上記脱亜鉛腐食現象による機械的強度の低下や、止水弁カートリッジ内を流れる水への鉛やカドミウムの溶出及び含有といった問題点が発生する可能性がある。更に、昨今の国際的な環境保護意識の高まりにより、環境汚染物質の拡散を防止するための各種規制、例えば、欧州連合によるRoHS指令(危険物質に関する制限)等が水道用製品にも適用され、上記鉛やカドミウムの溶出等を確実に防止することが求められている。
【0006】
[樹脂化に伴う強度不足]
そこで、上記の点にかんがみ、近年、止水弁カートリッジにおいても、黄銅製のハウジングを、上記問題点を発生しない別箇の材料とすることが模索されている。そして、本発明者らは、黄銅材料に代わる材料として、止水弁カートリッジの主材料を合成樹脂化すれば、上記脱亜鉛腐食現象による機械的強度の低下や、鉛やカドミウムの溶出という不具合を完全に解消することができることに着目し、材料の選定や構造ることを着想し、鋭意実験研究を重ね、試行錯誤を繰り返した結果、単に従来の黄銅材料からなるハウジング等の部品を合成樹脂材料に置き換えただけでは、特に、強度の点で新たな問題が発生することを確認した。即ち、まず、止水弁カートリッジは、ハウジングの軸方向一部(一般に軸方向中央部付近)に設けた雄螺子を、給水栓のハンドル部の止水弁収容用の開口に設けた雌螺子に螺合して締め付けることにより、ハンドル部に水密に装着される。ここで、雄螺子の雌螺子への螺入のために、ハウジングの軸方向一端部(ハンドル部の開口から露出する側の端部)に一体形成した六角ナット状の締付部を、スパナ等の工具により締付方向に回転するが、このとき、止水弁カートリッジの雄螺子部分(特に各螺子山部分)には大きな機械的負荷(物理的負荷)が加わることになる。したがって、合成樹脂材料は、黄銅材料に比べてやはり機械的強度は小さいことから、単に黄銅性材料を合成樹脂材料に置き換えただけでは、止水弁カートリッジのハウジングの雄螺子部分が締め付けに伴って破損するという問題が発生する。特に、ハウジングの雄螺子部分の壁厚は、雄螺子の各螺子溝の谷底位置で最小となり、ハウジングは、当該谷底部分で最も破損しやすくなる。
【0007】
[樹脂化ハウジングの強度増大と通水量確保の二律背反]
一方、ハウジングの前記雄螺子を設ける部分(円筒状の周壁)の内部において前記雄螺子より他端側(前記締付部と軸方向の反対側)には、セラミックディスクからなる弁部材(可動ディスク及び固定ディスク)が収容して装着され、ハウジングの軸方向一端から当該弁部材まで延びる栓棒に駆動連結されている。そして、栓棒を正逆方向に所定角度範囲で回転することにより、可動ディスクが正逆方向に回転し、固定ディスクと共に開弁動作(通水動作)または閉弁動作(止水動作)を行うようになっている。即ち、ハウジングの軸方向他端にある周壁の開口は、給水源からの水が流入する入水口となっており、また、ハウジングの周壁の前記雄螺子より他端側において当該雄螺子の近傍位置には、給水源からの水が前記弁部材を通過して出水する出水口が穿設されている。更に、可動ディスク及び固定ディスクには、それぞれ、前記ハウジングの入水口から流入する水を通過させるための通水孔が、対応する角度位置及び角度範囲に穿設され、ハウジングの入水口からの水が固定ディスク及び可動ディスクの通水口を通過してハウジングの出水口から出水し、最終的に給水栓の吐水パイプへと流出するようになっている。このとき、可動ディスク及び固定ディスクの通水孔の容積は、ハウジングの入水口から流入する水の最終的な通過量(及び最大通水量)、即ち、給水栓の吐水量(及び最大吐水量)を決定することになるが、本発明者らは、特に、可動ディスク及び固定ディスクの通水孔の容積を決定する二つの要素(通水孔の開口面積及び厚み)のうち、通水孔の面積が前記通水許容量の多寡に与える影響が大きいことを発見した。したがって、合成樹脂化による強度低下を補うべく、単に、ハウジングの周壁の壁厚を増大すると、その分、ハウジングの周壁の内周面の直径が小さくなり、これに合わせて、周壁内に収容できる可動ディスク及び固定ディスクの寸法も小さくなって、従来の黄銅製のハウジングの場合よりも小型の可動ディスク及び固定ディスクを使用せざるを得ないが、こうすると、可動ディスク及び固定ディスクの特に通水孔の開口面積が小さくなり、必要な通水量(及び最大通水量)を確保できないこととなる。
【0008】
[製造技術]
更に、止水弁カートリッジのハウジング等の主要部品を合成樹脂化する場合、止水弁カートリッジ自体が比較的小寸法のうえ、ハウジングの外部構造は、上記締付部や雄螺子等、ある程度複雑な形状及び構造となり、また、内部構造も、栓棒の回動範囲を所定角度範囲に規制して可動ディスクの回動範囲を規制するための係止構造や、固定ディスクを回動不能とした状態で周壁の内部の所定位置に固定するための係止構造等、ある程度複雑な形状及び構造となる。同様に、栓棒の構造も、ハウジングの内部構造に対応してある程度複雑な形状となる。本発明者らの知見によれば、所定の合成樹脂材料を射出成形して従来の黄銅製のハウジングや栓棒と同様の形状を一体成形する場合、合成樹脂材料に固有の物性に応じて、射出成形による所望形状の寸法精度の確保が困難となったり、製造不良が発生して歩留まりが低下する等の不具合が発生したりする可能性がある。特に、ハウジングについては、上記のように、合成樹脂化による材料自体の強度低下に加えて、射出成形する際の選択合成樹脂材料自体の物性によっても、機械的強度や寸法精度の確保に影響を与える可能性があり、特に、周壁の雄螺子部分で必要な機械的強度及び耐久性(上記工具による締付負荷への十分な強度及び耐久性)を確保するために適切な合成樹脂材料の選定及び当該合成樹脂材料の成形技術の選定が重要となる。
【0009】
[本発明が解決しようとする課題]
そこで、本発明は、主要部品であるハウジングや栓棒の材料を従来の黄銅材料から合成樹脂材料へと変更した場合でも、必要な機械的強度及び耐久性等の諸特性、特に、大きな負荷のかかるハウジングの雄螺子部分における機械的強度及び耐久性等の要求を十分に満足することができ、完全な合成樹脂化を可能とすることで、合成樹脂化による軽量化や、従来の黄銅材料に固有の問題点(使用に伴う強度低下や規制物質溶出等)を解決することができる樹脂製止水弁カートリッジの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る樹脂製止水弁カートリッジは、全ての部分が合成樹脂材料中で相対的に高い強度を有する合成樹脂から一体成形されたハウジングと、全ての部分が合成樹脂材料中で相対的に低い摩擦係数を有する合成樹脂から一体成形され、前記ハウジングの軸方向一端から挿入されて当該ハウジングの軸方向に延びる栓棒と、前記ハウジングの軸方向一端に内装して回動不能に固定されるセラミックディスクからなる固定ディスクと、前記ハウジングの軸方向一端側において前記固定ディスクより内部側に所定の回動範囲内で回動自在なよう内装されると共に、前記栓棒の先端に駆動連結されて、前記栓棒の回動操作により前記回動範囲内で回動するセラミックディスクからなる可動ディスクとを備えている。また、樹脂製止水弁カートリッジは、取付対象の通水空間(典型的には、給水栓、特に、単水栓に形成されて前記ハウジングの軸方向一端側の内側部を収容自在な収容空間であって、給水源からの原水の流入口と流出口とを結ぶ経路乃至水流路)内に前記ハウジングの軸方向一端部を収容して着脱自在に固定される。なお、典型的には、樹脂製止水弁カートリッジにおいて、前記取付対象の通水空間の外側に露出する部分(栓棒の一端部)には、ハンドル部の操作ハンドルが着脱自在に固定される。前記ハウジングは、当該ハウジングの軸方向一端側に一体形成される六角ナット状をなし、中心部に軸方向に貫通する(通常は断面円形の)貫通孔を形成した締付部と、前記締付部と同軸状となるよう当該ハウジングの軸方向中央部に一体形成された所定外径の円筒状をなす大径円筒部と、前記大径円筒部と同軸状となるよう、かつ、前記大径円筒部よりも小径の円筒状となるよう、当該ハウジングの軸方向他端側に一体形成された小径円筒部とを含む。前記小径円筒部は、当該小径円筒部において前記大径円筒部との境界側である基端側の外周面に一体形成される締結用雄螺子部と、当該小径円筒部の先端で開口する円形の入水口、及び、当該小径円筒部において前記締結用雄螺子部の近傍位置に穿設される出水口とを有している。そして、前記可動ディスク及び前記固定ディスクは、前記小径円筒部の内部空間において前記締結用雄螺子部よりも他端側の所定位置に収容配置される。また、前記ハウジングは、更に、前記小径円筒部において、前記可動ディスク及び固定ディスクの収容空間部分の壁厚を、前記可動ディスク及び固定ディスクに加わる水圧に耐えうる(小さな)第1の壁厚とし、前記締結用雄螺子部の壁厚を、前記小径円筒部の第1の壁厚よりも大きく、かつ、前記締付部の締付に伴って前記締結用雄螺子部に加わる物理的(機械的)負荷に耐えうる(大きな)第2の壁厚として、前記小径円筒部の内周面において、前記締結用雄螺子部の他端側の位置と整合する位置に、前記第1の壁厚と第2の壁厚との差による平坦リング状の段差面を形成している。
【0011】
請求項2に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1の構成において、前記ハウジングは、全体がポリフェニレンサルファイド樹脂から一体成形されると共に、前記栓棒は、全体がポリアセタール樹脂から一体成形されている。
【0012】
請求項3に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1または2の構成において、前記ハウジングは、軸方向において、前記大径円筒部の一端から、前記小径円筒部の締結用雄螺子部の他端まで、当該ハウジングの中心を軸方向に延びると共に、前記締付部の貫通孔の直径より大径の挿通孔を形成している。また、前記ハウジングの小径円筒部は、前記第2の壁厚を有する締結用雄螺子部の部分で最大壁厚となると共に、前記第1の壁厚を有する円筒部で最小壁厚となっている。更に、前記締結用雄螺子部は、当該締結用雄螺子の螺子山の谷部分の最小壁厚部分でも、前記物理的負荷に耐えうる機械的強度を確保できる壁厚を有している。そして、前記円筒部は、流水量確保のための必要容積を確保できる内径と、当該円筒部内の水圧による負荷に耐える最低限の強度とを確保できる壁厚を有している。
【0013】
請求項4に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1乃至3のいずれかの構成において、前記小径円筒部の軸方向において前記締結用雄螺子部より一端側には、当該小径円筒部の基端部を構成する短円筒状の凹溝部が、前記締結用雄螺子部の最小壁厚と同一の壁厚で当該締結用雄螺子部の基端側に一体形成されると共に、前記凹溝部にはOリングが装着されて、当該Oリングが前記取付対象の雌螺子部の直近位置に水密を維持するよう弾接し、前記凹溝部が前記Oリングを介して、前記締結用雄螺子部からの負荷を弾性的に吸収するようになっている。
【0014】
請求項5に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1乃至4のいずれかの構成において、前記締結用雄螺子部の内径が前記締付部の内径より所定寸法だけ大きく設定される一方で、前記締結用雄螺子部の壁厚は、前記締付部の壁厚と同等の壁厚に設定されている。
【0015】
請求項6に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1乃至5のいずれかの構成において、前記締結用雄螺子部において、当該締結用雄螺子部の雄螺子の螺子山が、当該締結用雄螺子部の軸方向一端から螺旋開始し、当該締結用雄螺子部の軸方向他端で螺旋終了すると共に、前記螺子山が配置される部分は、全て、前記第2の壁厚に設定されている。また、前記円筒部は、前記締結用雄螺子部との境界線位置である、当該締結用雄螺子部の螺子山が螺旋終了する位置の直後の位置から軸方向に延設されている。
【0016】
請求項7に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項1乃至6のいずれかの構成において、前記栓棒は、軸方向他端である先端に、前記可動ディスクの平面形状と同一の平面形状を有する円盤状の駆動盤を一体形成すると共に、前記駆動盤において前記可動ディスクと対向する側の面に、前記可動ディスクの外周縁部に係合して前記栓棒を前記可動ディスクに駆動連結する一対の係合突部を一体形成している。また、前記小径円筒部の前記第1の壁厚を有する円筒部において、前記第1の壁厚と第2の壁厚との差による平坦リング状の段差面と前記出水口との間には、前記栓棒の駆動盤の厚みと同一の厚みで前記駆動盤の外径と対応する外形の断面円形の収容空間が形成され、当該収容空間に前記駆動盤を収容している。
【0017】
請求項8に係る樹脂製止水弁カートリッジでは、請求項7の構成において、前記可動ディスクは、約90度の中心角度の扇板状をなす2つの同一形状の扇状部を、180度の角度を置いて対向させて対称配置した状態で、それらの中心側を、所定寸法の小板状をなす中心部によって互いに連結した所定の異形状をしている。そして、可動ディスクは、前記2つの扇状部の対向側面及び前記中心部の側面によって、一対の平面扇状の通水凹部を形成すると共に、前記扇状部の一側面の外周部において、180度の角度を置いて対向する位置には、それぞれ、略矩形凹部状の係合凹部を形成したものであり、前記一対の係合凹部を前記ハウジングに装着した前記栓棒の駆動盤の一対の係合突起に嵌合して、前記小径円筒部の出水口と対応する内部空間に配置される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る樹脂製止水弁カートリッジは、本発明は、主要部品であるハウジングや栓棒の材料を従来の黄銅材料から合成樹脂材料へと変更した場合でも、必要な機械的強度及び耐久性等の諸特性、特に、大きな負荷のかかるハウジングの雄螺子部分における機械的強度及び耐久性等の要求を十分に満足することができ、完全な合成樹脂化を可能とすることで、合成樹脂化による軽量化や、従来の黄銅材料に固有の問題点(使用に伴う強度低下や規制物質溶出等)を解決することができる。
【0019】
請求項2に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1の効果に加え、ハウジングの締結用雄螺子部の物理的・機械的強度を確実に必要強度以上の強度にすることができると共に、精密成形性によって精度の高い雄螺子を形成して、その精度向上によっても締結用雄螺子部の物理的・機械的強度を向上することができる。更に、栓棒の摩擦抵抗を大きく低減して、栓棒の外周面とハウジングの孔の内周面との間の摺動抵抗を非常に小さくし、円滑な回動操作を可能にする。
【0020】
請求項3に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1または2の効果に加え、締結用雄螺子部が小径円筒部の最大壁厚部分となり、かつ、必要な機械的強度を満足できる壁厚となる。また、円筒部が最小壁厚部分となり、その分、開口面積を大きく確保することができ、可動ディスク及び固定ディスクの厚みを小さくした場合でも、大きな流路容積を確保することができ、必要流量の水を確実に流すことができる。
【0021】
請求項4に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1乃至3のいずれかの効果に加え、大きな壁厚の短円筒体である凹溝部が、締結用雄螺子部に加わる負荷を基端側で支持すると共に、その負荷を一部吸収する。したがって、ハウジングの装着時に締付部から締結用雄螺子部に加わる負荷によって、締結用雄螺子部が破損することを更に効果的に防止することができる。特に、ハウジングを取付対象に挿入して取り付けたとき、凹溝部にはOリングが装着されて、当該Oリングが取付対象の雌螺子部の直近位置(雌螺子部より開口端側にある内周壁部分)に水密を維持するよう弾接し、凹溝部がOリングを介して、締結用雄螺子部からの負荷を弾性的に吸収することができ、締結用雄螺子部の破損を一層効果的に防止することができる。
【0022】
請求項5に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1乃至3のいずれかの効果に加え、締結用雄螺子部の内径が大径円筒部の内径と同一に設定され、締付部の内径より所定寸法だけ若干大きく設定されることにより、栓棒のハウジングへの装着作業及び回動操作を容易にする。また、締結用雄螺子部の壁厚を締付部の壁厚と同等の壁厚とすることで(特に、最小壁厚を締付部の壁厚と同等の壁厚とすることで)、締結用雄螺子部が、締付部からの負荷に確実に耐える機械的強度を確保できることになり、螺子山の谷部分での最小壁厚部分で割れやひび等の破損を生じることを確実に防止することができる。
【0023】
請求項6に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1乃至3のいずれかの効果に加え、締結用雄螺子部の螺子山間に形成される最も肉薄となる谷部分の肉厚が前記壁厚を確保することができ、締付部からの大きな締付力に十分耐える大きな機械的強度を確保することができる。これに加え、締結用雄螺子部の軸方向他端に連続して一体形成される円筒部は、締結用雄螺子部との境界線位置、即ち、締結用雄螺子部の螺子山が螺旋終了する位置の直後の位置から軸方向に延設されるため、必要な容積確保が容易となる。
【0024】
請求項7に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項1乃至3のいずれかの効果に加え、円筒部の当該短円筒状部分の内周面と、前記段差面とにより、前記栓棒の駆動盤を密接して収容する収容空間が形成される。
【0025】
請求項8に係る樹脂製止水弁カートリッジは、請求項7の効果に加え、可動ディスクの流量を十分大きな値に確保することができ、かつ、栓棒の駆動盤による駆動力を確実に可動ディスクに伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す正面図である。
【図2】図2は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す平面図である。
【図3】図3は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す底面図である。
【図4】図4は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングを示し、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は底面図である。
【図5】図5は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングの平面図である。
【図6】図6は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングを示す図5のB−B線断面図であり、要部を一点鎖線で示す円内に拡大して示す。
【図7】図7は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングを示す図5のC−C線断面図であり、要部を一点鎖線で示す円内に拡大して示す。
【図8】図8は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングのキャップを示し、(a)は平面図、(b)は断面図、(c)は側面図、(d)は底面図である。
【図9】図9は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの栓棒を示すものであり、(a)は一点鎖線の左側に栓棒の側面図(左半部)を、右側に栓棒の断面図(右半部)を示し、(b)は栓棒の正面図を示す。
【図10】図10は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの栓棒を示し、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図11】図11は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの弁部材の可動ディスクを示し、(a)は底面図、(b)は底面を上側として示す側面図、(c)は平面図である。
【図12】図12は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの弁部材の固定ディスクを示し、(a)は底面図、(b)は底面を上側として示す側面図、(c)は(b)の側面視から見た断面図、(d)は平面図である。
【図13】図13は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを一端側(締付部側)から見て示す分解斜視図である。
【図14】図14は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを他端側(キャップ側)から見て示す分解斜視図である。
【図15】図15は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す斜視図である。
【図16】図16は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す正面の断面図である。
【図17】図17は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを示す側面の断面図である。
【図18】図18は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの閉弁時の状態を示し、(a)は止水弁カートリッジの外観を示す斜視図、(b)は止水弁カートリッジ内の可動ディスクの回動状態(全閉状態)及び回動角度位置(全閉角度位置)を示す斜視図、(c)は止水弁カートリッジ内の水流状態(遮断状態)を示す断面図である。
【図19】図19は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジの開弁時の状態を示し、(a)は止水弁カートリッジの外観を示す斜視図、(b)は止水弁カートリッジ内の可動ディスクの回動状態(全開状態)及び回動角度位置(全開角度位置)を示す斜視図、(c)は止水弁カートリッジ内の水流状態(全開状態)を示す断面図である。
【図20】図20は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジを取り付ける(給水栓のハンドル部等の)取付部を概略的に説明するための当該取付部の断面図である。
【図21】図21は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングを取付部の上側の開口から内部に挿入して装着した状態を示し、取付部については図20と同一の断面図を、止水弁カートリッジについては側面図を示す。
【図22】図22は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジのハウジングを取付部に装着した後、当該止水弁カートリッジの栓棒の上端部に給水栓のハンドル部を固定した状態を示し、取付部については図20と同一の断面図を、止水弁カートリッジについては側面図を示す。
【図23】図23は本発明の一実施の形態に係る止水弁カートリッジに装着したハンドル部の回動角度範囲を説明するための当該ハンドル部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明する。なお、各実施の形態を通じ、同一の部材、要素または部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
[全体構成]
図1〜図3に示すように、本実施の形態に係る樹脂製止水弁カートリッジは、全体として段付きの円筒状類似の外観を有するハウジング10と、ハウジング10の下端に装着されるキャップ20と、ハウジング10の軸方向一端から軸心に沿って挿入して装着される栓棒30と、ハウジング10の軸方向他端側に内装されて前記栓棒30の先端(軸方向他端)に駆動連結される弁部材40とを備えている。ハウジング10は、全ての部分が、合成樹脂材料中で相対的に高い強度を有する合成樹脂、好ましくは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂から所定形状(所定内外形状及び所定断面形状)となるよう、所定の成形技術、好ましくは、所定の金型接合技術を使用した射出成形技術により一体成形されている。また、キャップ20は、すべての部分が、ハウジング10と同様の合成樹脂、好ましくは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂から所定形状(所定内外形状及び所定断面形状)となるよう、所定の成形技術により一体形成されている。なお、キャップ20は、接合金型を使用した射出成型技術により一体成形することも可能であるが、ハウジング10に比べて比較的単純な構造であり、(接合金型ではない)通常の金型により成形が可能なことから、また、機械的強度等の点でもハウジング10より要求が厳しくないことから、通常の射出成型技術により一体成形してもよい。更に、栓棒30は、全ての部分が合成樹脂材料中で相対的に低い摩擦係数を有する合成樹脂(特に、成形品の接触面において相対的に低い摩擦抵抗を有する合成樹脂)、好ましくは、ポリアセタール樹脂(POM)から一体成形され、前記ハウジング10の軸方向一端から挿入されて当該ハウジング10の軸方向に延びている。
【0029】
[ハウジング10]
<締付部>
図4に示すように、ハウジング10は、前記所定の合成樹脂材料を射出成形することにより、締付部11、大径円筒部LC、小径円筒部SCが同軸上に延びるよう(大径円筒部LC部分で段付きとなるよう)一体成形され、前記所定形状の段付き円筒状の一体成形物となっている。詳細には、図5に示すように、締付部11は、所定外径の六角ナット状をなし、ハウジング10の軸方向一端側に所定の厚み(図4の高さ方向寸法、一般的な六角ナットの「m寸法(基準寸法)」)で一体形成されている。なお、本実施の形態では、締付部11の「基準外径」とは、六角形の対向する2辺間の距離、即ち、一般的な六角ナットの「s寸法(基準寸法)」に対応する径のことをいい、「最大外径」とは、六角形の対向する2つの角の頂点間の距離、即ち、一般的な六角ナットの「e寸法(基準寸法)」に対応する径のことをいう。また、図6に示すように、締付部11の中心部には、所定直径の円形断面で貫通する円柱状の貫通孔11aが、軸方向に延びるよう形成されている。これにより、締付部11は、六角形状の外周面(外壁面)と貫通孔11aとの間の距離に等しい壁厚を有することになる。即ち、締付部11は、6つの外壁面の各々(六角形の各辺)と貫通孔11aとの間の距離に等しい壁厚(図6中に断面で示す壁厚)を有する。
【0030】
<大径円筒部>
大径円筒部LCは、締付部11の軸方向他端(図4中の下端)から所定の短い軸長だけ延びる短円筒状をなし、軸方向一端部に取付用雄螺子部12を、軸方向他端部にフランジ部14を設けると共に、取付用雄螺子部12とフランジ部14との間に凹溝部13を設けている。即ち、大径円筒部LCは、取付用雄螺子部12、凹溝部13及びフランジ部14が同軸上に延びるよう一体的に配置したものである。大径円筒部LCは、締付部11と同軸状となるよう、ハウジング10の軸方向中央部に一体形成された所定外径の円筒状をなす。
【0031】
具体的には、取付用雄螺子部12は、締付部11の外径よりも大きい所定外径を有する短円筒状体の外周面に所定ピッチで所定螺子山高さの雄螺子を一体形成したものである。また、取付用雄螺子部12の最大外径(螺子山の頂点部分の外径)とフランジ部14の外径は同一とされている。更に、取付用雄螺子部12の最大外径(及びフランジ部14の外径)は、前記締付部11の外径よりも所定寸法だけ大きく設定されている。これにより、締付部11と取付用雄螺子部12との間に、当該締付部11の外形寸法と取付用雄螺子部12の外径寸法との寸法差に対応する寸法の段差面が形成されている。この段差面は、外周形状を取付用雄螺子部12の外周面形状と同一の円形とし、内周形状を締付部11の外周面形状と同一の正六角形とした略リング形状をなしている。なお、凹溝部13は、円形溝であり、その外径は、取付用雄螺子部12の最大外径(及びフランジ部14の外径)よりも所定寸法だけ小さく設定されているが、締付部11の外径よりは所定寸法だけ大きくなっている。また、本実施の形態では、大径円筒部LCの基準外径とは、取付用雄螺子部12の外径(及び、フランジ部14の外径)のことをいう。
【0032】
大径円筒部LCの内周面は段差のない円滑内周面であり、その内径は、前記締付部11の内周面の内径(即ち、貫通孔11aの直径)より所定寸法だけ大きな径とされている。即ち、取付用雄螺子部12の内径、凹溝部13の内径、及び、フランジ部14の内径は、全て同一であり、前記締付部11の内径より所定寸法だけ大きな径とされている。これにより、図4(c)、図6及び図7に示すように、締付部11の内周面と大径円筒部LCの内周面との間、即ち、貫通孔11aと取付用雄螺子部12、凹溝部13及びフランジ部14の連続する内周面との間に、段差面19が形成されている。段差面19は、締付部11の内径寸法と大径円筒部LCの内径寸法との内径寸法差に対応する寸法の円形リング状をなす。即ち、段差面19は、その内周形状及び内径を締付部11の内周面の形状及び直径と同一とした円形とし、外周形状及び外形を大径円筒部LCの内周面の形状及び直径と同一とした円形としている。これにより、大径円筒部LCは、その外径と内径との寸法差に等しい肉厚(壁厚)を有している。即ち、大径円筒部LCは、最小壁厚が、凹溝部13部分における壁厚となり、最大壁厚がフランジ部14部分における壁厚となる。なお、取付用雄螺子部12部分では、螺子山の谷部分での壁厚は凹溝部13の壁厚と同一となり(最小壁厚)、螺子山の頂点部分での壁厚はフランジ部14の壁厚と同一となる(最大壁厚)。
【0033】
<小径円筒部>
小径円筒部SCは、大径円筒部LCの軸方向他端、即ち、フランジ部14の軸方向他端(図4中の下端)から所定軸長だけ延びる円筒状をなし、軸方向一端部に締結用雄螺子部15を設けると共に、締結用雄螺子部15と前記大径円筒部LCのフランジ部14との間に凹溝部15aを設けている。また、小径円筒部SCの締結用雄螺子部15より他端側は、単純円筒体状の円筒部16となっている。即ち、小径円筒部SCは、凹溝部15a、締結用雄螺子部15及び円筒部16が同軸上に延びるよう、これらを一体的に配置したものである。このように、小径円筒部SCは、締付部11及び大径円筒部LCと同軸状となるよう、かつ、大径円筒部LCよりも小径の円筒状となるよう、ハウジング10の軸方向他端側に一体形成された所定外径の円筒状をなす。
【0034】
具体的には、小径円筒部SCの外周面のうち、締結用雄螺子部15を除く部分の外周面は円滑外周面となり、当該円滑外周面の外径(即ち、前記凹溝部15aの外径及び円筒部16の外径)は、大径円筒部LCの基準外径、即ち、取付用雄螺子部12の最大外径及びフランジ部14の外径よりも所定寸法だけ小さい外径を有する一方、締付部11の基準外径より大きい寸法で、かつ、締付部11の最大外径より小さい寸法に設定されている。即ち、小径円筒部SCの外径は、締結用雄螺子部15部分を除き、締付部11の基準外径と最大外径の範囲内の寸法に設定されている。また、締結用雄螺子部15は、前記外径の小径円筒部SCの円滑外周面に所定螺子山高さの雄螺子を所定ピッチとなるよう一体形成したものであり、大径円筒部LCの基準外径よりも所定寸法だけ小さい外径を有する。更に、締結用雄螺子部15の最大外径(螺子山の頂点部分の外径)は、締付部11の基準外径より大きい寸法で、また、締付部11の最大外径とほぼ同一の寸法または若干大きい寸法に設定されている。なお、締結用雄螺子部15は、取付用雄螺子部12よりも大きな螺子ピッチ(及び大きなリード角)で、当該締結用雄螺子部15の全幅(全軸長)にわたって形成され、また、締結用雄螺子部15の螺子山高さは、取付用雄螺子部12の螺子山高さより大きく設定されている。
【0035】
なお、前記凹溝部15aは、Oリングを装着するための円形溝であり、大径円筒部LCのフランジ部14と締結用雄螺子部15との間(小径円筒部SCの基端部乃至軸方向一端部)に形成されている。上記のとおり、凹溝部15aの外径は、小径円筒部SCの円滑外周面の外径と同一であり、小径円筒部SCの外径は、締結用雄螺子部15を除く全ての部分が、円滑外周面の外径となっている。そして、小径円筒部SCは、その基端(フランジ部14との境界線)から、凹溝部15aの幅寸法を置いて、当該凹溝部15aに隣接して、締結用雄螺子部15を所定の幅寸法(前記ピッチに応じた幅寸法)で設けると共に、締結用雄螺子部15に隣接して、前記円筒部16を所定の軸長となるよう延設している。
【0036】
小径円筒部SCの内周面の内径は、前記凹溝部15a及び締結用雄螺子部15の部分では、前記大径円筒部LCの内周面の内径と同一径に設定されている。これにより、大径円筒部LCの一端から、小径円筒部SCの締結用雄螺子部15の他端まで、ハウジングの中心を軸方向に延びる(締付部11の貫通孔11aより)大径の挿通孔が形成されている。円筒部一方、小径円筒部SCの内径は、凹溝部15a及び締結用雄螺子部15以外の部分、即ち、締結用雄螺子部15よりも先端側乃至軸方向他端側の前記円筒部16部分では、大径円筒部LCの内周面の内径よりも所定寸法だけ大きな径に設定されている。これにより、小径円筒部SCの内周面において締結用雄螺子部15と円筒部16との間(境界線位置)には、段差面18が形成されている。段差面18は、連続する凹溝部15a及び締結用雄螺子部15の内径寸法と円筒部16の内径寸法との内径寸法差に対応する寸法の円形リング状をなす。即ち、段差面18は、その内周形状及び内径を締結用雄螺子部15の内周面の形状及び直径と同一とした円形とし、外周形状及び外形を円筒部16の基端側の内周面の形状及び直径と同一とした円形としている。
【0037】
これにより、小径円筒部SCは、その外径と内径との寸法差に等しい複数の肉厚(壁厚)を有し、内周面における壁厚の異なる位置(締結用雄螺子部15と円筒部16との境界位置)において、壁厚差に対応する段差面18を設けた段付き円筒状となっている。また、図6及び図7に示すように、締結用雄螺子部15部分では、螺子山15xの谷部分での壁厚が凹溝部15aの壁厚と同一となり(最小壁厚)、螺子山15xの頂点部分での壁厚は凹溝部15aの壁厚よりも螺子山15xの螺子山の高さ寸法だけ大きな壁厚となる(最大壁厚)。即ち、図6に示すように、締結用雄螺子部15の壁厚STは、図6中の一点鎖線で示す拡大図(上側の拡大図)の最小壁厚ST1(谷部分の壁厚)及び最大壁厚ST2(山部分の壁厚)からなる。
【0038】
即ち、小径円筒部SCは、凹溝部15a及び締結用雄螺子部15部分で最大壁厚となり、円筒部16部分で最小壁厚となる。小径円筒部SCで最大壁厚となる締結用雄螺子部15は、ハウジング10を取付対象の対応する雌螺子部に螺合されるが、このとき、締付部11をレンチ等の工具で締め付けて締結用雄螺子部15を螺合するため、締結用雄螺子部15に大きな締付力が加わることになる。したがって、締結用雄螺子部15は、かかる大きな締付力に対する十分な機械的強度を確保するための構造(特に、螺子山15xの谷部分の最小壁厚ST1部分でも、締付時の負荷に十分に耐えうる機械的強度を確保できる大きな壁厚ST)となっている。また、小径円筒部SCで最小壁厚となる円筒部16は、先端(軸方向他端)の円形開口が給水源からの原水を流入させる開口となり、また、弁部材40としてのセラミックディスクを収容するためのものであり、円筒部16の内部空間が給水源からの原水の通水空間となる。したがって、円筒部16は、十分な流水量を得るための容積を確保すると共に弁部材に加わる水圧によって当該円筒部16に加わる圧力に耐える程度の機械的強度を確保するための構造(即ち、流水量確保のための必要容積以上の容積を確保できる大きな内径と、水圧による負荷に耐える最低限の強度を確保できる程度の小さな壁厚)となっている。
【0039】
また、締結用雄螺子部15と共に小径円筒部SCの基端部を構成する短円筒状の凹溝部15aが、締結用雄螺子部15の最小壁厚ST1(小径円筒部SCの基準壁厚)と同一の壁厚で締結用雄螺子部15の基端側に一体形成されるため、当該大きな壁厚の短円筒体である凹溝部15aが、締結用雄螺子部15に加わる負荷を基端側で支持すると共に、その負荷を一部吸収する。したがって、ハウジング10の装着時に締付部11から締結用雄螺子部15に加わる負荷によって、締結用雄螺子部15が破損することを更に効果的に防止することができる。特に、ハウジング10を取付対象に挿入して取り付けたとき、凹溝部15aにはOリングORが装着されて、当該OリングORが取付対象の雌螺子部の直近位置(雌螺子部より開口端側にある内周壁部分)に水密を維持するよう弾接し、凹溝部15aがOリングORを介して、締結用雄螺子部15からの負荷を弾性的に吸収することができ、締結用雄螺子部の破損を一層効果的に防止することができる。
【0040】
更に、締結用雄螺子部15の内径が締付部11の内径より所定寸法だけ大きく設定される一方で、締結用雄螺子部15の壁厚STは、前記締付部11の壁厚と同等の壁厚に設定されている。詳細には、締結用雄螺子部15の壁厚STは、最小壁厚ST1部分でも、前記締付部11の壁とほぼ同等の壁厚となり、最大壁厚T2部分では締付部11の壁厚より若干大きな壁厚となる。これは、締結用雄螺子部15の内径が大径円筒部LCの内径と同一に設定され、締付部11の内径より所定寸法だけ若干大きく設定されることにより、後述する栓棒30の装着及び回動操作を容易にするという効果を発揮する一方で、大径円筒部LCの外径が締付部11の外径より所定寸法だけ大きく設定され、これに対応して、大径円筒部LCより小径となる小径円筒部SCの締結用雄螺子部15の外径が、大径円筒部LCの外径より所定寸法だけ小さく設定されると共に、締付部11の外径より所定寸法だけ大きく設定されることで、その外径の寸法差(拡大した外径寸法)によって、締結用雄螺子部15の壁厚STを大きな壁厚に設定しているためである。換言すれば、ハウジング10の栓棒30収容部分の円筒体を、本実施の形態のようなある程度の外径寸法差を有する大径円筒部LCと小径円筒部SCとから構成しない場合と比較して、締結用雄螺子部15の外周面位置が、大径円筒部LCの外周面位置に対応して外方に変位(シフト)して位置することになるため、その分(大径円筒部LCの外径に応じた変位分)だけ、締結用雄螺子部15の壁厚STを大きくすることができる。
【0041】
即ち、それ自体の形状は(短円筒体の外周面に雄螺子を螺旋形成した)短円筒状となる締結用雄螺子部15において、雄螺子の螺子山15xが、当該締結用雄螺子部15の軸方向一端(凹溝部15aとの境界線位置)から螺旋開始し、締結用雄螺子部15の軸方向他端(円筒部16との境界線位置)で螺旋終了する構成となっており、螺子山15xが配置される部分は、全て、前記大きな壁厚STに設定されているため、当然、螺子山15x間に形成される最も肉薄となる谷部分の肉厚が前記壁厚ST1を確保することができ、締付部11からの大きな締付力に十分耐える大きな機械的強度を確保することができる。これに加え、締結用雄螺子部15の軸方向他端に連続して一体形成される円筒部16は、締結用雄螺子部15との境界線位置、即ち、締結用雄螺子部15の螺子山15xが螺旋終了する位置の直後の位置から軸方向に延設されるため、上記必要な容積確保が容易となる。即ち、円筒部16において締結用雄螺子部15に隣接する部分には締結用雄螺子部15と同等の大きな壁厚部分は全く設けられておらず、小さな壁厚の円筒部16が締結用雄螺子部15の直後から開始するように構成されている。このように、小径円筒部SCは、大きな機械的強度が必要となる締結用雄螺子部15(及び、好ましくは、当該締結用雄螺子部15を基端側で補強する凹溝部15a)のみを前記大きな壁厚STとし、大きな機械的強度は必要なく、逆に、大きな容積確保が必要となる円筒部166の全体を前記小さな壁厚に設定している。
【0042】
更に、上記の取付対象へのハウジング10の取付時において、取付対象の雌螺子部に螺合される締結用雄螺子部15に加わる締付力(締付トルク)による負荷は、工具から締付部11に加わる締付力(締付トルク)に対応したものとなるが、上記のように、締結用雄螺子部15の壁厚STを締付部11の壁厚と同等の壁厚とすることで(特に、最小壁厚ST1を締付部11の壁厚と上記のような同等の壁厚とすることで)、締結用雄螺子部15が、締付部11からの負荷に確実に耐える機械的強度を確保できることになり、螺子山15xの谷部分での最小壁厚ST1部分で割れやひび等の破損を生じることを確実に防止することができる。ここで、一般的な給水栓用途に本実施の形態の止水弁カートリッジを使用する場合、ハウジング10の締付部11は、その基準外径を約17mmとし、その壁厚を約4mm〜約5mmの範囲とする一方、小径円筒部SCは、その外径を約18mm〜約19mmの範囲とし、締結用雄螺子部15は、その壁厚STを約4mm〜約5mmの範囲とする(最小壁厚ST1を約4mmとし、最大壁厚ST2を約5mmとする)ことが好ましい。
【0043】
このように、小径円筒部SCは、締結用雄螺子部15を含む基端部(即ち、凹溝部15a及び締結用雄螺子部15部分)を、壁厚の大きな大壁厚円筒部として、その機械的強度を最大限確保すると共に、寸法精度の確保を容易にして製造時の仕上げ精度を向上できるようにしている。また、小径円筒部SCは、締結用雄螺子部15を含む基端部以外の部分(中央部から先端部)の円筒部16を、壁厚の非常に小さな小壁厚円筒部として、内部空間の容積を最大限確保するようにし、特に、容積を決定する二要素(開口面積及び高さ)のうちの開口面積を最大限に確保するようにている。ここで、一般的な給水栓用途に本実施の形態の止水弁カートリッジを使用する場合、ハウジング10の小径円筒部SCの円筒部16の壁厚は、締結用雄螺子部15の壁厚STの1/4〜1/5の壁厚とすることが好ましく、例えば、締結用雄螺子部15の壁厚STを、最小壁厚ST1が約4mm、最大壁厚ST2が約5mm(即ち、螺子山の高さ約1mm)とした場合、円筒部16の壁厚は約1mmとすることが好ましい。
【0044】
小径円筒部SCの円筒部16において、締結用雄螺子部15との境界位置(段差面18の位置)から所定距離だけ軸方向に離間した位置(図1中の下方位置)には、円筒部16の周方向に180度離間して対向する角度位置に、それぞれ、出水口16aが対称配置となるように穿設されている。当該一対の出水口16aは、それぞれ、円筒部16の周方向に所定角度範囲(約90度の範囲)の円弧状となるよう延設されている。これにより、円筒部16において一対の出水口16a間の壁部分も、それぞれが約90度の角度範囲を有して対称配置される。また、各出水口16aの幅寸法(図4中の高さ寸法)は、弁部材40のうちの後述する可動ディスク41の厚さと同一の幅寸法とする。更に、出水口16aを配置する位置、即ち、図7中の一点鎖線内の拡大図に示す締結用雄螺子部15との境界位置からの離間距離H1は、締結用雄螺子部15との境界位置(段差面18の位置)にできるだけ近い位置とし、好ましくは、出水口16aの幅寸法よりも小さい距離(例えば、出水口16aの幅寸法の約1/2の距離)とする。例えば、一般的な給水栓用途に本実施の形態の止水弁カートリッジを使用する場合、円筒部16の出水口16aの幅寸法は、約3mm〜約4mm(好ましくは、約3.5mm)とし、出水口16aの位置は、好ましくは、締結用雄螺子部15との境界位置から約1.5mmの位置とする。
【0045】
ここで、円筒部16の前記出水口16aより基端側の短円筒状部分(締結用雄螺子部15との境界線から出水口16aの上辺位置までの部分)は、後述する弁部材40の可動ディスク41に駆動連結される栓棒30の円盤状の駆動盤37を収容するものである。したがって、円筒部16の当該短円筒状部分の内周面と、前記段差面18とにより、前記栓棒30の駆動盤37を密接して収容する収容空間が形成される。なお、当該収容空間は、前記締結用雄螺子部15と円筒部16の出水口16aとの間の距離H1と同一の非常に小さい厚みを有する円盤状の収容空間となっている。
【0046】
更に、円筒部16の先端側の所定長部分は、図6中の一点鎖線内の拡大図(下側の拡大図)に示すように、円筒部16の前記壁厚(円筒部16の基準壁厚)よりも小さな壁厚の薄肉部16bとされ、円筒部16の薄肉部16bの基端と当該薄肉部16b以外の部分(上記基準壁厚部分)との間に、対応する円形リング状の段差面17が形成されている。また、薄肉部16bの先端部分には、当該円筒部16の下端内周面により形成される円形開口の全周にわたって、微小高さで内方に向かって突出する円形リング状の係止突起16cが一体形成されている。
【0047】
また、図4(c)、図6及び図7に示すように、円筒部16の内周面には、円筒部16の周方向に180度離間して対向する角度位置に、それぞれ、案内係止溝17aが形成されている。当該一対の案内係止溝17aは、それぞれ、円筒部16の軸方向に沿って、段差面17から前記出水口16aの下辺の左右中央位置まで直線状に延設されている。なお、案内係止溝17aの溝底面は、前記円筒部16の薄肉部16bの内周面と一致する深さ位置に配置されている。即ち、案内係止溝17aは、円筒部16の内周面から前記薄肉部16bの内周面と一致する深さ位置まで形成され、その溝底面と薄肉部16bの内周面とが面一となっている。
【0048】
また、図6及び図7に示すように、大径円筒部LCの内周面には、周方向に180度離間して対向する角度位置に、それぞれ、回動規制突起18aが形成されている。当該一対の回動規制突起18aは、それぞれ、大径円筒部LCの軸方向に沿って、フランジ部14の軸方向他端(図6中の下端)から段差面19の位置まで直線状に延設された突起状をなす。また、回動規制突起18aは、図4(c)に示すように、大径円筒部LCの中心側から内周面に向かって拡径する略台形状の平面形状及び断面形状を有し、その幅方向両端面を、平坦面状の移動規制面としている。
【0049】
[キャップ20]
キャップ20は、ハウジング10の小径円筒部SCの下端の円形開口に着脱自在に装着される。詳細には、図8に示すように、キャップ20は、円形リング状の基部21と、基部21より若干小径の円形リング状の挿着部22と、挿着部22よりも若干小径の円形リング状の凹溝部23とを同軸状に一体形成したものである。基部21は、小径円筒部SCの円筒部16の外径と同一の外径を有すると共に、大径円筒部LCの内径とほぼ同一または若円小さい内径を有する円形リング状である。また、挿着部22は、円筒部16の下端部に形成した薄肉部16bの内径と同一の外径を有すると共に、前記基部21と同一の外径を有する円形リング状である。更に、凹溝部23は、基部21と挿着部22との間に設けられ、挿着部21より若干小さな外径を有して、キャップ20の厚さ方向中央付近で、その全周にわたって、前記ハウジングの下端の係止突起16cを嵌合自在な円形リング状の凹溝を形成している。即ち、凹溝部23は、係止突起16cの内径と同一の外径を有すると共に、前記基部21及び挿着部22と同一の内径を有する円形リング状となっている。よって、軸方向に一体形成される基部21、凹溝部23及び挿着部22の内周面は、連続した円筒状の円滑内周面となり、キャップ20の内周面を構成すると共に、当該内周面が、断面円形の通水孔20aを構成している。更に、基部21の軸方向他端の露出面(図8中の下面)には、その全周にわたる円形リング溝状の凹溝21aが形成されている。また、基部21の軸方向一端の露出面(図8中の上面)には、その全周にわたる円形リング溝状の凹溝22aが形成されている。基部21の凹溝21a及び挿着部22の凹溝22aには、それぞれ、対応する形状のOリングORが装着されるようになっている。
【0050】
キャップ20は、図16及び図17に示すように、その挿着部22が、ハウジング10の円筒部16の内部空間において薄肉部16bより上側の所定軸長部分の空間内に挿着されると共に、凹溝部23が薄肉部16b内に挿着される。このとき、キャップ20の凹溝部23が、薄肉部16bの係止突起16cに嵌合して係止されることで、キャップ20がハウジング10の下端に着脱自在に固定されるようになっている。また、このとき、キャップ20の基部21の厚さ方向一側面(凹溝部23側の面)が、円筒部16の先端面(開口端面)に当接し、また、基部21の外周面が円筒部16の外周面と面一となるようになっている。更に、このとき、キャップ20の中心部の通水孔20aが、円筒部16の内部空間と連通するようになっている。
【0051】
[栓棒30]
栓棒30は、ハウジング10の小径円筒部SCの下端の円形開口から内部に挿入され、上端部の係合部31がハウジング10の締付部11の貫通孔11aから外部に突出する。詳細には、図9に示すように、栓棒30は、円筒状の係合部31及び円筒状の挿入部32を一体形成すると共に、挿入部32の先端部に、規制突起33とフランジ部34とフランジ部35とを一体形成し、更に、挿入部32の先端に、保持部36を介して駆動盤37を一体形成し、加えて、駆動盤37に一対の係合突起38を一体形成したものである。前記係合部31、挿入部32、フランジ部34、フランジ部35、保持部36及び駆動盤37は、全て、同軸状に配置されている。
【0052】
具体的には、図16〜図17に示すように、係合部31は、円筒体の外周面にスプライン加工を施して、軸方向に延びる多数の溝を周方向に均等に形成した所定軸長の円筒状をなしている。なお、係合部31は、上端が円形の開口となって開放する円筒状である。また、係合部31の外径(スプライン加工による突条の頂点間を結ぶ直径)は、ハウジング10の締付部11の貫通孔11aより若干小さい径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)とされている。そして、係合部31は、ハウジング10の下端開口から締付部11の貫通孔11aに挿入された後、締付部11の中心部で外方(図18中の上方)に全長が突出及び露出するようになっている。
【0053】
挿入部32は、係合部31の外径と同一の外径を有すると共に、所定の軸長を有する円筒状をなしている。なお、挿入部32は、下端が円形の開口となって開放する円筒状である。また、挿入部32の軸長(挿入部32の基端から下端の駆動盤37の下面までの距離)は、ハウジング10の締付部11の一端である開口端(図16中の上端)から小径円筒部SCの締結用雄螺子部15の他端(図16中の下端)まで延びる長さとなっている。更に、挿入部32は、係合部31と同一の外径、即ち、ハウジング10の締付部11の貫通孔11aの直径より若干小さい外径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)を有している。そして、挿入部32は、ハウジング10の下端開口から締付部11の貫通孔11aに挿入され、その全長がハウジング10の内部に収容されるようになっている。即ち、挿入部32は、軸方向の一端側の部分(締付部11の貫通孔11aに相当する長さ部分)が、締付部11の貫通孔11a内に摺接自在かつ回動自在に接触して配置され、それ以外の軸方向の他端側の部分が、大径円筒部LC及び小径円筒部SCの前記大径の挿通孔内に摺動自在に挿入される。
【0054】
栓棒30の係合部31と挿入部32との間には、円形の嵌合溝31aが周方向全体にわたって形成されている。図13〜図15に示すように、栓棒30をハウジング10の他端開口から挿入して係合部31の全体を締付部11から突出させた状態(完全挿入状態)で、栓棒30の嵌合溝31aには、EリングERが着脱自在に嵌合され、EリングERが締付部11の一側面(図1中の上側面)に当接することで、栓棒30がハウジング10に対して抜止された状態で固定されるようになっている。
【0055】
フランジ部34は、挿入部32の軸方向において、挿入部32をハウジング10に完全に挿入した状態(図16〜図18の状態)で、ハウジング10のフランジ部14の他端に対応する位置に張り出し形成されている。フランジ部34は、前記大径円筒部LC及び小径円筒部SCの大径の挿通孔の直径より若干小さい外径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)を有し、挿入部32のハウジング10への完全挿入状態で、フランジ部34の外周面が、大径円筒部LCの挿通孔の対応する位置の内周面に摺接自在かつ回動自在に接触または近接するようになっている。
【0056】
図10(a)に示すように、規制突起33は、挿入部32の外周面において、周方向に180度離間して対向する角度位置に、それぞれ、一体形成されている。当該一対の規制突起33は、それぞれ、フランジ部34の一端面から挿入部32の軸方向一端に向かって所定長だけ延びる直線突起状をなしている。また、規制突起33の長さ(軸方向寸法)は、前記ハウジング10の大径円筒部LCに設けた回動規制突起18aの長さ(軸方向寸法)に対応する長さ(正確には、1mm程度小さい寸法)に設定されている。なお、規制突起33の幅は、円筒状の挿入部32の内部の孔の直径とほぼ同一の寸法に設定されている。更に、規制突起33の厚み(挿入部32の外周面から放射方向外方への突出寸法)は、フランジ部34の張り出し寸法(挿入部32の外周面から放射方向外方への突出寸法)と同一に設定され、規制突起33の外側面がフランジ部34の外周面と面一になっている。即ち、規制突起33の外側面は、その幅方向において、フランジ部34の外周面の円弧形状と同一の湾曲面となっている。
【0057】
フランジ部35は、挿入部32をハウジング10に完全に挿入した状態で、ハウジング10の締結用雄螺子部15の一端に対応する位置に張り出し形成されている。フランジ部35は、前記大径円筒部LC及び小径円筒部SCの大径の挿通孔の直径より若干小さい外径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)を有し、挿入部32のハウジング10への完全挿入状態で、フランジ部35の外周面が、小径円筒部SCの挿通孔の対応する位置の内周面に摺接自在かつ回動自在に接触または近接するようになっている。なお、このように挿入部32の軸方向に離間するフランジ部34とフランジ部35との間には、OリングOR装着用の凹溝33aが形成されている。
【0058】
保持部36は、挿入部32をハウジング10に完全に挿入した状態で、ハウジング10の締結用雄螺子部15の他端に対応する位置に張り出し形成されたリング板状をなしている。保持部36は、前記大径円筒部LC及び小径円筒部SCの大径の挿通孔の直径より若干小さい外径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)を有し、挿入部32のハウジング10への完全挿入状態で、保持部36の外周面が、小径円筒部SCの挿通孔の対応する位置の内周面に摺接自在かつ回動自在に接触または近接するようになっている。なお、このように挿入部32の軸方向に離間するフランジ部35と保持部36との間には、OリングOR装着用の凹溝34aが形成されている。
【0059】
駆動盤37は、小径円筒部SCの円筒部16の内径より若干小さい外径(正確には、コンマミリ単位で小さい径)を有する円盤状をなし、その中心部が挿入部32の下端に固着して一体形成されている。挿入部32のハウジング10への完全挿入状態で、駆動盤37の一側面(図16中の上側面)が、小径円筒部SCの段差面18に当接すると共に、駆動盤37の外周面が、円筒部16の内周面に摺接自在かつ回動自在に接触または近接するようになっている。更に、駆動盤37の厚みは、小径円筒部SCの段差面18と出水口16aとの間の寸法H1と同一の寸法とされ、挿入部32のハウジング10への完全挿入状態で、図17の特に一点鎖線内の拡大図に示すように、駆動盤37の他側面(図16中の下側面)が出水口16aの上辺に重なる位置に来るようになっている。
【0060】
図10(b)に示すように、係合突起38は、駆動盤37の他側面の外周縁部において、周方向に180度離間して対向する角度位置に、それぞれ、一体形成されている。当該一対の規制突起33は、前記一対の規制突起33に対して90度の角度を置いた位置に配置されている。また、係合突起38は、駆動盤37の他側面からその厚さ方向に所定長だけ突出する直線突起状をなしている。なお、係合突起38の突出長は、前記ハウジング10の出水口16aの幅より若干小さい寸法(約1mm〜1.5mm小さい寸法)に設定されている。また、係合突起38の幅(駆動盤37の周方向の寸法)は、前記規制突起の幅とほぼ同一の幅に設定されている。更に、係合突起38の厚み(駆動盤37の半径方向の寸法)は、駆動盤37の挿入部32外周面からの張り出し幅の約半分の寸法に設定されている。なお、係合突起38は、後述する弁部材40の可動ディスク41の係合凹部41bに係合されて、栓棒30の先端を可動ディスク41に駆動連結するものであり、係合突起38の寸法(軸長、幅、厚み)は、可動ディスク41の係合凹部41bの寸法(軸長、幅、厚み)に対応する寸法(コンマミリ単位で若干小さい寸法)に設定される。また、係合突起38の外側面は、その幅方向において、駆動盤37の外周面の円弧形状と同一の湾曲面となっている。
【0061】
なお、栓棒30の直径(図10(a)参照)のうち、係合部31及び挿入部32の直径R1は、ハウジング10の孔のうち最も小さな径の貫通孔11aの直径に対応し、フランジ部34,35及び保持部36の直径R2は、ハウジング10の孔のうち中間の径の大径円筒部LC部分の挿通孔の直径(図6に示す大径円筒部LCの内径CR)に対応し、駆動盤37の直径R3は、ハウジング10の孔のうち最大の径の円筒部16部分の孔の直径に対応する。
【0062】
栓棒30は、ハウジング10の下端にキャップ20を装着する前に、一端側がハウジング10の下端開口から内部に挿入され、上記のとおり、係合部31を締付部11から突出させた状態でEリングERによりハウジング10に固定されるが、このとき、挿入部32の凹溝33aに装着されたOリングOR及び凹溝34aに装着されたOリングORが、ハウジングの大径の挿通孔の内周面に弾接して、栓棒30がハウジング10の大径の挿通孔の半径方向に移動不動に固定されると共に、栓棒30が、正逆方向に回転自在となるように構成されている。また、栓棒30を正逆回転すると、栓棒30の一対の規制突起33の側面が、ハウジング10の大径の挿通孔の一対の回動規制突起18aの側面にそれぞれ当接して、それ以上の回動が規制及び阻止され、これにより、栓棒30が、一対の回動規制突起18aの角度範囲内(約90度の範囲内)で正逆回転自在となるよう構成されている。
【0063】
[弁部材40]
弁部材40は、ハウジング10の軸方向一端部である円筒部16の内部空間に収容して内装されるものである。詳細には、弁部材40は、図13及び図14に示すように、セラミックディスクからなる可動ディスク41と、セラミックディスクからなる固定ディスク45とから構成されている。前記可動ディスク41及び固定ディスク45は、ハウジング10の小径円筒部SCの内部空間において、前記締結用雄螺子部15よりも他端側の定位置に収容配置され、可動ディスク41が、ハウジング10に挿着した栓棒30の先端に駆動連結されて正逆回転自在とされ、固定ディスク45と協働して、小径円筒部SCの円筒部16内で開弁動作及び閉弁動作を選択的に行うようになっている。
【0064】
<可動ディスク>
詳細には、図11に示すように、可動ディスク41は、所定中心角度(約90度)の扇板状をなす2つの同一形状の扇状部41xを、180度の角度を置いて対向させて対称配置した状態で、それらの中心側を、所定寸法の小板状をなす中心部41yによって互いに連結した所定の異形状をなしている。可動ディスク41の幅方向両側には、それぞれ、前記2つの扇状部41xの対向側面(2側面)及び中心部41yの一側面によって、平面略二等辺三角形状または扇状の通水凹部41aが形成されている。この一対の通水凹部41aは、それぞれ、前記扇状部41xの中心角度に対応する中心角度(約90度)を有し、可動ディスク41において前記一対の扇状部41xと直交する方向において対称配置されている。なお、前記中心部41yの長さ(図11(a)中の左右寸法)は、前記栓棒30の係合突起38の幅より若干小さい寸法に設定され、また、中心部41yの幅(図11(a)中の上下寸法)は、栓棒30の係合突起38の厚みより若干小さい寸法に設定されている。また、扇状部41xと中心部41の厚みは同一であり、可動ディスク41の厚さ方向両側面は平坦面となっている。なお、使用状態における可動ディスク41の他側面(図11(b)中の上面)は、研磨面とされ、高い平滑度及び低い摩擦抵抗を有している。
【0065】
可動ディスク41は、図17に示すように、ハウジング10の円筒部16の内部において前記出水口16aの厚さ部分に対向する空間内に配置されるため、可動ディスク41の厚みは、前記ハウジング10の出水口16aの幅と同一寸法に設定されている。また、可動ディスク41の(平面扇状をなす)各通水凹部41aの最大開口長さは、可動ディスク41の一側において対向する2つの扇状部41xの角部間の寸法となるが、この最大開口長さは、前記ハウジング10の出水口16aの長さと同等の寸法に設定されている。具体的には、可動ディスク41は、その外周面が円筒部16の内周面に近接して配置されるため、通水凹部41aの最大開口長さは、円筒部16の内周面側における出水口16aの長さとほぼ同一の寸法に設定されている。
【0066】
更に、可動ディスク41の扇状部41xの一側面(使用状態で前記駆動盤37と対向する側面)の外周部(円弧状部)において、180度の角度を置いて対向する位置には、それぞれ、略矩形凹部状の係合凹部41bが形成されている。係合凹部41bは、扇状部41xの途中の深さまで延びる凹部である。図11(b)に示すように、一対の係合凹部41bは、それぞれ、扇状部41xの外周面で開口している。また、係合凹部41bは、前記栓棒30の駆動盤37の係合突起38を密嵌して保持するものであり、係合突起38に対応する形状及び寸法を有している。即ち、係合凹部41bは、係合突起38とほぼ同一の(正確には、コンマミリ単位で大きな)長さ、幅及び厚みを有している。
【0067】
可動ディスク41は、ハウジング10に栓棒30を取り付けた後、キャップ20を装着する前に、ハウジング10の円筒部16の内部空間に挿入され、一対の係合凹部41bをハウジング10に装着した栓棒30の駆動盤37の一対の係合突起38に嵌合して、円筒部16の出水口16aと対応する内部空間に配置されるようになっている。この状態で、可動ディスク41は、栓棒30の正逆回転に伴い、対応する角度範囲(約90度の範囲)で正逆回転すると共に、前記一対の通水凹部41aが円筒部16の一対の出水口16aに完全に対向する回動位置(開弁位置)と、一対の通水凹部41aが円筒部16の一対の出水口16a間の周壁部分に完全に対向する回動位置(閉弁位置)との間で正逆回転されるようになっている。
【0068】
<固定ディスク>
図12に示すように、固定ディスク45は、全体として、可動ディスク41の直径(2つの扇状部41x間の直径)と同一直径の円盤状をなしている。更に、使用状態における固定ディスク45の他側面側(図12(b)及び(c)中の上面)において、円形の外周縁部の内側には、一対の傾斜面46が形成されている。図12(a)に示すように、一対の傾斜面46は、固定ディスク45の外周縁部の内部円形部分を直径方向に延びる線で二分割した構成であり、各傾斜面46は半円板状の傾斜面となっている。即ち、固定ディスク45の厚さ方向一側面は、外周縁部内において、一対の傾斜面46をそれらの円弧の弦部分(直径部分)で接合した構成となっており、また、一対の傾斜面46は、それらの接合線から当該接合線と直交する方向(直径方向)に向かって内方(傾斜面46と反対側の面へ沈む方向)へと所定角度で傾斜している。一方、図12(d)に示すように、使用状態における固定ディスク45の一側面(図12(b)及び(c)中の下面)は、円形の平坦面とされると共に、前記可動ディスク41の他側面と同様の研磨面とされ、高い平滑度及び低い摩擦抵抗を有している。
【0069】
また、固定ディスク45の厚みは、可動ディスク41の厚みより若干大きな厚み(正確には、コンマミリ単位で大きな寸法)に設定されている。即ち、固定ディスク45は、図18に示すように、ハウジング10の円筒部16において前記出水口16aの下辺位置から、ハウジング10に装着したキャップ20の一端面(図17中の上面)の位置までの範囲の空間内に配置されるため、固定ディスク45の厚みは、かかる空間の厚みと同一寸法に設定されている。
【0070】
更に、固定ディスク45には、一対の傾斜面46の接合線の近傍位置から外周縁部の途中まで延びる略三角形状または略扇形状の通水孔46aが、固定ディスクの厚さ方向に貫通形成されている。一対の通水孔46aは、それぞれの円弧状の外周縁が、対応する傾斜面46の周方向中部に重なって配置されている。このように、固定ディスク45には、180度の角度を置いて対向する位置に、一対の傾斜面46が対称配置されると共に、同様に、180度の角度を置いて対向する位置に、一対の通水孔46aが対称配置されている。更に、固定ディスク45の通水孔46aの中心角度は、可動ディスク41の通水凹部41aの中心角度と同一角度(約90度)に設定されている。また、固定ディスク45の外周面において、180度の角度をおいて対向する位置には、それぞれ、小さな立方体状の係止突起47が放射方向に突出するよう一体形成されている。一対の係止突起47は、固定ディスク45の通水孔46aの円弧の中央位置に対応する位置で、固定ディスク45の外周面から突出し、固定ディスク45の外周面で対称配置されている。
【0071】
固定ディスク45は、ハウジング10に栓棒30を取り付けると共に、栓棒30の他端に可動ディスク41を連結した後、キャップ20を装着する前に、一対の係止突起47を、ハウジング10の円筒部16の内周面の一対の案内係止溝17aの開放端(段差面17位置の開口端)から案内係止溝17aに挿入することで、円筒部16の内部空間の所定位置に移動案内して装着され、また、この状態で、係止突起47と案内係止溝17aとの係止により、固定ディスク45の周方向の回動が規制及び阻止されて、固定ディスク45が所定位置に固定されるようになっている。
【0072】
[組立方法]
次に、上記のように構成された本実施の形態の樹脂製止水弁カートリッジの組立方法について説明する。
図13及び図14に示すように、ハウジング10の円筒部側である開口端から、栓棒30の係合部31をハウジング10の内部に装着して、栓棒30をEリングERによりハウジング10の所定位置に固定する。すると、栓棒30の駆動盤37がハウジング10の円筒部16の基端部の収容空間(段差面18と出水口16aとの間の空間)内に収容され、駆動盤37の係合突起38が円筒部16の出水口16aの途中の位置まで延びて配置される。このとき、駆動盤37は、円筒部16内の基端部の空間において前記段差面18と出水口16aとの間の所定の収容空間に配置される。この状態で、可動ディスク41の係合凹部41b側の面をハウジング10の開口端に向けた平行状態(可動ディスク41がハウジング10の軸方向と直交する平面内に配置された状態)で、可動ディスク41を円筒部16内に挿入し、可動ディスク41の一対の係合凹部41b内に栓棒30の駆動盤37の一対の係合突起38を挿着嵌合する。これにより、栓棒30の他端(駆動端)に可動ディスク41が一体回動自在に連結される。このとき、可動ディスク41は、円筒部16内の基端側の空間において前記出水口16aの厚み部分に相当する所定の収容空間内に収容される。
【0073】
次に、この状態で、固定ディスク45の平滑面側(傾斜面46と反対側)の面をハウジング10の開口端に向けた平行状態(固定ディスク45がハウジング10の軸方向と直交する平面内に配置された状態)で、固定ディスク45を円筒部16内に挿入し、固定ディスク45の平滑面(弁動作時の摺動面)を可動ディスク41の平滑面(弁動作時の摺動面)に当接させる。このとき、固定ディスク45は、一対の係止突起47を円筒部の一対の案内係止溝17aに挿入して案内することで、円筒部16内に円滑に案内移動することができ、また、円筒部16への挿入及び可動ディスク41との当接後は、係止突起47が円筒部16の案内係止溝17aの側壁により周方向への回動を阻止されて、円筒部16の所定位置に固定される。最後に、この状態で、円筒部16の開口端にキャップ20を装着すると、図15〜図17に示すように、樹脂製止水弁カートリッジの組み立てが完了する。
【0074】
[弁動作]
次に、上記のように構成された本実施の形態の樹脂製止水弁カートリッジの弁動作について説明する。
<閉弁時(閉弁動作)>
図18に示すように、樹脂製止水弁カートリッジは、その非通水時には、可動ディスク41は完全閉弁位置にあり、樹脂製止水弁カートリッジの下端のキャップ20の通水孔20から入水した水は、ハウジング10の円筒部16内で完全に流水阻止され、出水口16aから出水することはない。即ち、完全閉弁位置では、可動ディスク41の一対の扇状部41xの外周面が、ハウジング10の一対の出水口16aに完全に対向するよう配置されて、当該出水口16aを閉塞し、出水口16aと固定ディスク45の通水孔46aとの連通を遮断する。また、可動ディスク41の一対の扇状部41xが、固定ディスク45の一対の通水孔46aに完全に対向するよう配置されて、当該通水孔46aを完全に遮蔽する。これにより、キャップ20の通水孔20aからの水は、固定ディスク45の通水孔46a部分で可動ディスク41によって完全に遮水される。なお、図18は、この完全閉弁位置における流路を樹脂製止水弁カートリッジの側面側(一対の出水口16a間の周壁を正面とした方向)から見て断面にて示す。
【0075】
<開弁時(開弁動作)>
一方、図19に示すように、樹脂製止水弁カートリッジは、その通水時には、可動ディスク41は完全開弁位置にあり、樹脂製止水弁カートリッジの下端のキャップ20の通水孔20から入水した水は、ハウジング10の円筒部16内の流路を通過して出水口16aから出水する。即ち、完全閉弁位置から、栓棒30を開弁方向に所定角度(約90度)回転し、駆動盤37及び係合突起38を介して、可動ディスク41を開弁方向へ回転して、可動ディスク41の一対の通水凹部41aをハウジングの一対の出水口16aにそれぞれ完全に対向させる。このとき、栓棒30の規制突起33が、ハウジング10の挿通孔の回動規制突起18aに当接して、可動ディスク41が完全開弁位置となり、それ以上の回動を阻止される。また、この完全開弁位置では、可動ディスク41の一対の通水凹部41aが、ハウジング10の一対の出水口16aに完全に対向するよう配置されて、当該出水口16aと固定ディスク45の通水孔46aを連通する。また、可動ディスク41の一対の通水凹部41aが、固定ディスク45の一対の通水孔46aに完全に対向するよう配置されて、当該通水孔46aを完全に開放する。これにより、キャップ20の通水孔20aからの水は、固定ディスク45の通水孔46a及び可動ディスク41の通水凹部41aを最大流量で円筒部16の軸方向に通過し、可動ディスク41の通水凹部41aの側面(扇状部41xの平面「く」字状の側面)によって)に円筒部16の軸方向から放射方向外方へと変向され、出水口16aから最大流量で円滑に出水する。なお、図17及び図19は、この完全開弁位置における流路を樹脂製止水弁カートリッジの側面側(一対の出水口16a間の周壁を正面とした方向)から見て断面にて示す。
【0076】
<栓棒回転時の摺動摩擦抵抗>
ここで、上記閉弁位置と開弁位置との間での可動ディスク41の回動のための栓棒30の回動時に、栓棒30の挿入部32の外周面等がハウジング10の対応する内周面(締付部11の貫通孔11a等)に接触して摺動することになるが、このとき、栓棒30は、上記のように、ポリアセタール樹脂(POM)等の摩擦抵抗の低い(及び、自己潤滑性を有する)合成樹脂材料によって全体が一体成形されているため、摺動時の摩擦抵抗を大幅に低減することができ、栓棒30の円滑な回動操作を確保することができる。
【0077】
[使用例]
<ハンドル部>
次に、上記のように構成された本実施の形態の樹脂製止水弁カートリッジの使用例について説明する。
本実施の形態の樹脂製止水弁カートリッジは、例えば、図20に示すような装着対象としての給水栓(特に単水栓)のハンドル部100に装着して使用される。詳細には、ハンドル部100は、全体として円柱状等の所定の外形を有し、その厚さ方向一側面(図20中の上面)から内部に向かって、大径孔101、小径孔102、雌螺子部103、通水孔104及び入水孔105を同軸状に形成している。また、ハンドル部100の長さ方向一側面(図20中の左側面)には、出水孔106が形成されている。大径孔101は、樹脂製止水弁カートリッジのハウジング10の大径円筒部LCの外径と同一の内径(正確には、コンマミリ単位で若干大きな内径)を有すると共に、凹溝部13及びフランジ部14の合計軸長と同等の軸長を有する短円柱状の貫通孔である。また、小径孔102は、ハウジング10の小径円筒部LCの締結用雄螺子部15の最大外径と同一の内径(正確には、コンマミリ単位で若干大きな内径)を有すると共に、凹溝部15aと同等の軸長を有する短円筒状の貫通孔であり、前記大径孔101より小径の短円柱状の貫通孔である。これにより、ハンドル部100の大径孔101と小径孔102との直径差による円形リング状の段差面が、大径孔101の基端に設けられる。
【0078】
また、雌螺子部103は、締結用雄螺子部15と螺合するものであり、締結用雄螺子部15の外径と対応する内径を有すると共に、締結用雄螺子部15と同一の軸長を有する雌螺子孔である。また、雌螺子部103は、締結用雄螺子部15に対応する螺子ピッチ、螺子山高さ及び螺旋回数等を有する雌螺子を刻設したものである。通水孔104は、樹脂製止水弁カートリッジの他端部(ハウジング10の円筒部16及びキャップ20)を収容するものであり、ハウジング10の円筒部16より所定寸法大きな内径を有すると共に、円筒部16より若干大きな軸長を有する円柱状の貫通孔である。入水孔105は、通水孔104の軸方向他端(図20中の下端)の中心部に対向する短円柱状の貫通孔であり、樹脂製止水弁カートリッジのキャップ20の通水孔20aに対応する直径を有している。出水孔106は、通水孔104の外周のほぼ全体に対向する円柱状の貫通孔である。
【0079】
図21に示すように、組立状態の樹脂製止水弁カートリッジを、ハンドル部100の大径孔101から内部に挿入し、ハウジング10の締付部11をレンチ等の工具により締付方向に締め付けて、締結用雄螺子部15を雌螺子部103に完全に螺合すると、フランジ部14が大径孔101の基端の段差面に当接し、締結用雄螺子部15のそれ以上の螺入が阻止される。これにより、樹脂製止水弁カートリッジを、ハンドル部100の所定位置に保持固定される。このとき、小径円筒部SCの凹溝部15aのOリングORが小径孔102の内周面に弾接して水密を維持する。また、このとき、キャップ20の通水孔20aがハンドル部100の入水孔105に対応し、かつ、円筒部16の出水口16の一方が、ハンドル部100の出水孔106の一側(図21中の上側)に対向する。一方、ハウジング10の取付用雄螺子部12は、ハンドル部100の厚さ方向一側面から外部に完全に露出する。また、栓棒30は、係合部31がハンドル部100の厚さ方向一側で前記取付用雄螺子部12よりも更に外方に突出している。
【0080】
<締結用雄螺子部の強度確保>
ここで、上記工具を使用した締付部11の締付時には、その締付力に応じた大きな負荷が締結用雄螺子部15に加わるが、締結用雄螺子部15は、上記のように、かかる大きな負荷に十分に耐える構造(壁厚等)を有し、当該負荷によって割れ等の不具合を発生することはない。即ち、ハウジング10は、上記のように、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂等の高機械的強度及び精密成形性を有する合成樹脂材料により全体が一体成形される一方で、締結用雄螺子部15部分の壁厚STが必要な機械的強度を満足する値に設定される等、大きな負荷に対する十分な機械的強度を有する構造を有しているため、締付部11からの大きな負荷やトルク等に対して、締結用雄螺子部15が破損する等の不具合を確実に防止することができる。
【0081】
<ハンドル>
ハンドル部100への樹脂製止水弁カートリッジの完全装着状態で、栓棒30の係合部31に、当該栓棒30を正逆回転するためのハンドル110を取り付ける。即ち、ハンドル110は回転操作用の取っ手111と、ハンドル110の栓棒30への固定用の固定部112と、ハンドル110の内部を遮蔽するキャップ113とを備えている。固定部112は、ハンドル110の内部空間に設けられ、前記係合部31のスプラインに係合自在なスプライン構造を有するものであり、係合部31に回動不能に嵌合されるものである。そして、固定部112を係合部31に嵌合して固定することにより、ハンドル110が栓棒30に回転操作自在に固定される。
【0082】
樹脂製止水弁カートリッジの栓棒30へのハンドル110の固定状態で、取っ手111によりハンドル110を図23の閉弁位置CSと開弁位置OSとの間で正逆回転することにより、栓棒30を介して弁部材40を閉弁状態または開弁状態となるよう選択的に動作させることができる。例えば、ハンドル110を開弁位置OSに回転すると、弁部材40が開弁状態(図19に示す状態)となり、ハンドル部100の入水口105からの水が、キャップ20の通水孔20aから円筒部16の内部に入水し、固定ディスク45の通水孔46aから可動ディスク41の通水凹部41bを経て、円筒部16の出水口16aから出水し、ハンドル部100の出水孔106を経て給水栓の吐水流路(吐水パイプ等)に流入する。
【0083】
[使用材料]
なお、ハウジング10は、上記PSS樹脂により一体成形する以外にも、合成樹脂材料中で相対的に高い強度を有する任意の合成樹脂により、即ち、PSS樹脂と同等の機械的強度(引っ張り強度150MPa、曲げ強度215MPa程度の強度)を確保できる他の合成樹脂により一体成形してもよい。しかし、機械的強度に加え、精密成形性による寸法精度の確保、並びに、寸法精度の確保による更なる機械的強度の向上を図ることができるという点からは、PSS樹脂を使用することが最も好ましい。また、栓棒30は、上記POM樹脂により一体成形する以外にも、合成樹脂材料中で相対的に低い摩擦係数任意の合成樹脂により、即ち、POM樹脂と同等の低摺動抵抗(0.15程度の摩擦係数)を確保できる他の合成樹脂により一体成形してもよい。
【符号の説明】
【0084】
LC 大径円筒部
OR Oリング
SC 小径円筒部
ST 最小壁厚
ST 壁厚
ST1 最小壁厚
ST1 壁厚
ST1 最小壁厚
ST2 最大壁厚
10 ハウジング
11 締付部
11 締付部
11a 貫通孔
12 取付用雄螺子部
13 凹溝部
14 フランジ部
15 締結用雄螺子部
15a 凹溝部
15x 螺子山
16 円筒部
16b 薄肉部
16c 係止突起
17 段差面
17a 案内係止溝
18 段差面
18a 回動規制突起
19 段差面
20 キャップ
20a 通水孔
21 基部
21 挿着部
21 基部
21a 凹溝
22 挿着部
22a 凹溝
23 凹溝部
30 栓棒
31 係合部
31a 嵌合溝
32 挿入部
33 規制突起
33a 凹溝
34 フランジ部
34a 凹溝
35 フランジ部
36 保持部
37 駆動盤
38 係合突起
40 弁部材
41 可動ディスク
41a 通水凹部
41b 係合凹部
41x 扇状部
41y 中心部
45 固定ディスク
46 傾斜面
46a 通水孔
47 係止突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ての部分が合成樹脂材料中で相対的に高い強度を有する合成樹脂から一体成形されたハウジングと、
全ての部分が合成樹脂材料中で相対的に低い摩擦係数を有する合成樹脂から一体成形され、前記ハウジングの軸方向一端から挿入されて当該ハウジングの軸方向に延びる栓棒と、
前記ハウジングの軸方向一端に内装して回動不能に固定されるセラミックディスクからなる固定ディスクと、
前記ハウジングの軸方向一端側において前記固定ディスクより内部側に所定の回動範囲内で回動自在なよう内装されると共に、前記栓棒の先端に駆動連結されて、前記栓棒の回動操作により前記回動範囲内で回動するセラミックディスクからなる可動ディスクとを備え、
取付対象の通水空間内に前記ハウジングの軸方向一端部を収容して着脱自在に固定される樹脂製止水弁カートリッジであって、
前記ハウジングは、
当該ハウジングの軸方向一端側に一体形成される六角ナット状をなし、中心部に軸方向に貫通する貫通孔を形成した締付部と、
前記締付部と同軸状となるよう当該ハウジングの軸方向中央部に一体形成された所定外径の円筒状をなす大径円筒部と、
前記大径円筒部と同軸状となるよう、かつ、前記大径円筒部よりも小径の円筒状となるよう、当該ハウジングの軸方向他端側に一体形成された小径円筒部とを含み、
前記小径円筒部は、
当該小径円筒部において前記大径円筒部との境界側である基端側の外周面に一体形成される締結用雄螺子部と、
当該小径円筒部の先端で開口する円形の入水口、及び、当該小径円筒部において前記締結用雄螺子部の近傍位置に穿設される出水口とを有し、
前記可動ディスク及び前記固定ディスクは、前記小径円筒部の内部空間において前記締結用雄螺子部よりも他端側の所定位置に収容配置され、
前記ハウジングは、更に、
前記小径円筒部において、前記可動ディスク及び固定ディスクの収容空間部分の壁厚を、前記可動ディスク及び固定ディスクに加わる水圧に耐えうる第1の壁厚とし、前記締結用雄螺子部の壁厚を、前記小径円筒部の第1の壁厚よりも大きく、かつ、前記締付部の締付に伴って前記締結用雄螺子部に加わる物理的負荷に耐えうる第2の壁厚として、前記小径円筒部の内周面において、前記締結用雄螺子部の他端側の位置と整合する位置に、前記第1の壁厚と第2の壁厚との差による平坦リング状の段差面を形成したことを特徴とする樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項2】
前記ハウジングは、全体がポリフェニレンサルファイド樹脂から一体成形されると共に、前記栓棒は、全体がポリアセタール樹脂から一体成形されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項3】
前記ハウジングは、軸方向において、前記大径円筒部の一端から、前記小径円筒部の締結用雄螺子部の他端まで、当該ハウジングの中心を軸方向に延びると共に、前記締付部の貫通孔の直径より大径の挿通孔を形成し、
前記ハウジングの小径円筒部は、前記第2の壁厚を有する締結用雄螺子部の部分で最大壁厚となると共に、前記第1の壁厚を有する円筒部で最小壁厚となり、
前記締結用雄螺子部は、当該締結用雄螺子の螺子山の谷部分の最小壁厚部分でも、前記物理的負荷に耐えうる機械的強度を確保できる壁厚を有し、
前記円筒部は、流水量確保のための必要容積を確保できる内径と、当該円筒部内の水圧による負荷に耐える最低限の強度とを確保できる壁厚を有していることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項4】
前記小径円筒部の軸方向において前記締結用雄螺子部より一端側には、当該小径円筒部の基端部を構成する短円筒状の凹溝部が、前記締結用雄螺子部の最小壁厚と同一の壁厚で当該締結用雄螺子部の基端側に一体形成されると共に、前記凹溝部にはOリングが装着されて、当該Oリングが前記取付対象の雌螺子部の直近位置に水密を維持するよう弾接し、前記凹溝部が前記Oリングを介して、前記締結用雄螺子部からの負荷を弾性的に吸収するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項5】
前記締結用雄螺子部の内径が前記締付部の内径より所定寸法だけ大きく設定される一方で、前記締結用雄螺子部の壁厚は、前記締付部の壁厚と同等の壁厚に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項6】
前記締結用雄螺子部において、当該締結用雄螺子部の雄螺子の螺子山が、当該締結用雄螺子部の軸方向一端から螺旋開始し、当該締結用雄螺子部の軸方向他端で螺旋終了すると共に、前記螺子山が配置される部分は、全て、前記第2の壁厚に設定され、
前記円筒部は、前記締結用雄螺子部との境界線位置である、当該締結用雄螺子部の螺子山が螺旋終了する位置の直後の位置から軸方向に延設されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項7】
前記栓棒は、軸方向他端である先端に、前記可動ディスクの平面形状と同一の平面形状を有する円盤状の駆動盤を一体形成すると共に、前記駆動盤において前記可動ディスクと対向する側の面に、前記可動ディスクの外周縁部に係合して前記栓棒を前記可動ディスクに駆動連結する一対の係合突部を一体形成し、
前記小径円筒部の前記第1の壁厚を有する円筒部において、前記第1の壁厚と第2の壁厚との差による平坦リング状の段差面と前記出水口との間には、前記栓棒の駆動盤の厚みと同一の厚みで前記駆動盤の外径と対応する外形の断面円形の収容空間が形成され、当該収容空間に前記駆動盤を収容したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の樹脂製止水弁カートリッジ。
【請求項8】
前記可動ディスクは、約90度の中心角度の扇板状をなす2つの同一形状の扇状部を、180度の角度を置いて対向させて対称配置した状態で、それらの中心側を、所定寸法の小板状をなす中心部によって互いに連結した所定の異形状をし、前記2つの扇状部の対向側面及び前記中心部の側面によって、一対の平面扇状の通水凹部を形成すると共に、前記扇状部の一側面の外周部において、180度の角度を置いて対向する位置には、それぞれ、略矩形凹部状の係合凹部を形成したものであり、前記一対の係合凹部を前記ハウジングに装着した前記栓棒の駆動盤の一対の係合突起に嵌合して、前記小径円筒部の出水口と対応する内部空間に配置されることを特徴とする請求項7記載の樹脂製止水弁カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−57665(P2012−57665A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199448(P2010−199448)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(590006309)株式会社早川バルブ製作所 (18)
【Fターム(参考)】