説明

樹脂製端面突合せ継手とその継手の溶着方法並びに配管器材

【課題】短筒形状の溶着環状部を有する継手を溶着する場合であっても、通常の溶着機のクランプで固定代と適正な芯間寸法を確保し、同時に同軸上に位置させて芯合わせも行うことを可能とした樹脂製端面突合せ継手とその継手の溶着方法、並びに配管器材を提供すること。
【解決手段】継手基部に継手基部内の流路と連通する複数の溶着環状部を設け、この溶着環状部の少なくとも一つの溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に溶着機クランプ用の固定部を設けた樹脂製端面突合せ継手である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体産業、食品産業、薬品産業、バイオテック産業、化学産業等で用いられる樹脂製端面突合せ継手とその継手の溶着方法並びに配管器材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業、食品産業、薬品産業、バイオテック産業、化学産業等の分野などで使用される配管素材には、耐薬品性、耐熱性、高いクリーン度などが要求される。これらの要求を満たす配管素材としては、例えば、PFA(パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)などのフッ素樹脂が適している。
【0003】
このような産業分野における製造ラインの配管は、PFA樹脂からなる熱可塑性樹脂製の継手同士又は当該継手とチューブ等を端面突合せ溶着して構成される場合がある。
【0004】
熱可塑性樹脂製の継手やチューブ等(以下、ワークという。)の管端面同士を突合せ溶着をする場合、非接触の状態でヒータの両側に双方のワークの管端面を同軸上に位置決めし、ヒータの熱で加熱して適切な溶融状態になったときに双方の管端面同士を押し付け、溶着する方法がある。
【0005】
この方法によりワークの管端面同士を溶着する装置として、特許文献1の溶着機が知られている。この溶着機1は、図9に示すように、ヒータ2の両側に非接触状態で溶着する一対のワーク3、3を配し、それらの管端面4、4を加熱して溶融させるが、加熱及び溶融時にワーク3、3の管端面4、4をヒータ2に接触させることなく適正な距離で固定するために、また、ワーク3、3の管端面4、4が適正な溶融状態になった後に少なくとも一方の管端面を同軸上で移動させ、両ワーク3、3の管端面4、4を押し付けて溶着するために、ヒータ2の両側に一対のクランプ5、5を設け、そのクランプ5、5によりワーク3、3を締付把持している。
【0006】
また、特許文献2には、この様な溶着装置を用いてワーク同士を有害な内面ビードを防止して溶着する溶着方法が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−156102号公報
【特許文献2】特開2004−216859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許文献1の溶着機及び特許文献2の溶着方法では、樹脂継手の溶着環状部が短寸で短筒形状である場合、溶着環状部にクランプで締付固定するための固定代を十分に取ることができないので、クランプで溶着環状部を締付固定することができず、樹脂継手自体を特殊な固定用治具を使用して溶着機に固定する必要があった。
しかしながら、当該樹脂継手を特殊な固定用治具を使用して溶着機に固定することは、施工作業が面倒であるばかりでなく、継手同士の管端面の軸芯を合わせるために多大の時間を要し、また継手同士の溶着部に位置ズレも生じるおそれがあるため、これらの課題を解決し、管端面を高精度に加熱溶融して溶着することができる樹脂製継手の提案が切望されていた。
【0009】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、短筒形状の溶着環状部を有する継手を溶着する場合であっても、通常の溶着機のクランプで固定代と適正な芯間寸法を確保し、同時に同軸上に位置させて芯合わせも行うことを可能とした樹脂製端面突合せ継手とその継手の溶着方法、並びに配管器材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手基部に継手基部内の流路と連通する複数の溶着環状部を設け、この溶着環状部の少なくとも一つの溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に溶着機クランプ用の固定部を設けたことを特徴とする樹脂製端面突合せ継手である。
【0011】
請求項2に係る発明は、溶着環状部を短筒形状に形成し、この溶着環状部の同軸上に形成した固定部を溶着環状部の外径と同一外径の円形とした樹脂製端面突合せ継手である。
【0012】
請求項3に係る発明は、継手基部に設けた溶着環状部をエルボ形状又はティ形状、或いはアングルティ形状の何れか一つとした樹脂製端面突合せ継手である。
【0013】
請求項4に係る発明は、継手基部に設けた溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に円形固定部を一体に突出形成し、この固定部を溶着機のクランプで把持固定し、前記溶着環状部の端面同士を非接触のヒータで加熱溶融させた後に、前記溶着環状部同士を押付けることにより管端面同士を溶着することを特徴とする樹脂製端面突合せ継手の溶着方法である。
【0014】
請求項5に係る発明は、溶着環状部を短筒形状に形成した継手同士の前記固定部をクランプで把持固定し、その後、短筒形状の溶着環状部を溶着して最短の芯間寸法を有する最短溶着である樹脂製端面突合せ継手の溶着方法である。
【0015】
請求項6に係る発明は、固定部をクランプで把持固定した短筒形状の溶着環状部の端面と、チューブの端面又はメカニカル継手の管端面、或いはバルブや圧力、流量等のセンサー類又はフィルタなどの接続端面の何れかのワーク同士を溶着した樹脂製端面突合せ継手の溶着方法である。
【0016】
請求項7に係る発明は、継手基部に継手基部内の流路と連通する複数の溶着環状部を設け、この溶着環状部の少なくとも一つの溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に溶着機クランプ用の固定部を設けたことを特徴とする樹脂製端面突合せ継手を、前記固定部をクランプで締付把持することにより溶着機に固定する溶着方法により構成した配管器材である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、固定用治具を使用することなく、通常の溶着機のクランプで同軸上に、かつ適正な芯間寸法で締付固定できるため、短筒形状の溶着環状部を有する各種の熱可塑性樹脂等の継手を確実に、かつ容易に溶着でき、特に、継手同士の最短溶着が可能となり、もって装置自体の小型化に対応でき、かつ配管スペースの縮小化とコンパクト化に著しく寄与できる。
【0018】
請求項2に係る発明によると、固定部を溶着環状部の外径と同一の外径の円形としたから、特別の治具を要することなく、通常の溶着機のクランプにより同軸上で締付固定でき、しかも、固定幅分の長さである固定代を十分に確保できるため、施工性と作業性が著しく良好である。
【0019】
請求項3に係る発明によると、エルボ、ティ又はアングルティ形状など各種の継手に適用することが可能である。
【0020】
請求項4に係る発明によると、溶着環状部が短筒形状で固定幅分の長さを確保できない寸法であっても、通常の溶着機のクランプで容易に締付固定できると共に、適正な芯間寸法で固定可能となり、しかも同軸上に確実に保持でき、容易に芯合わせも可能となり、位置ズレのおそれもないなどの有用な溶着方法を提供できる。
【0021】
請求項5に係る発明によると、短筒形状の溶着環状部を有する継手同士を確実に溶着できるため、最短の芯間寸法を有する継手部材を容易に構成できるため、コンパクト化に著しく寄与する。
【0022】
請求項6に係る発明によると、短筒状の溶着環状部を有する継手の固定部を締付固定した状態で、継手同士のみならず、継手とチューブやメカニカル継手、或いはバルブなどのワークを確実に溶着することができる。
【0023】
請求項7に係る発明によると、継手同士、継手とチューブ、継手とメカニカル継手、或いは継手とバルブなどのワークを溶着した配管器材を提供することができるため、例えば、薬液提供装置などの小型化に対応でき、配管スペースの縮小化にも容易に対応可能となり、もって、著しくコンパクト化に寄与できると共に、安定的な溶着作業を遂行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における樹脂製端面突合せ継手のエルボ形状の継手を示した斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図1の継手同士を最短溶着する状態を示す正面説明図である。
【図4】図3に示した継手同士を溶着した配管器材の拡大正面図である。
【図5】本発明における樹脂製端面突合せ継手のティ形状の継手を示した斜視図である。
【図6】本発明における樹脂製端面突合せ継手のアングルティ形状の継手を示した斜視図である。
【図7】(a)は、短筒形状の溶着環状部を有する継手とエルボ継手を溶着する状態を示す説明図である。(b)は、短筒形状の溶着環状部を有する継手とチューブを溶着する状態を示す説明図である。(c)は、短筒形状の溶着環状部を有する継手とバルブのパイプを溶着する状態を示す説明図である。(d)は、短筒形状の溶着環状部を有する継手とメカニカル継手のパイプを溶着する状態を示す説明図である。
【図8】本発明における継手の固定部を専用スリーブ圧入治具に締付把持して、スリーブを圧入施工する状態を示す説明図である。
【図9】従来の樹脂製継手同士を溶着する際に、クランプで締付把持する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明における樹脂製端面突合せ継手の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1、2においては、本発明における樹脂製端面突合せ継手のエルボ形状の継手を示しており、図1に当該継手を斜め上方より見た斜視図、図2に当該継手の断面図をそれぞれ示している。
【0026】
樹脂継手は熱可塑性樹脂を材料とするが、熱可塑性樹脂にはPFA、PTFE、FEP、ETFE、PVDF、PVF、PCTFE、ECTFEなどのフッ素樹脂、又は塩化ビニリデン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチロール、ABS、ポリカーポネート、ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ブチレート、アセテート、ポリアミド、ポリアセタール、AS、フッ化ビニリデン等がある。本発明における樹脂製端面突合せ継手は、PFAを用いている。
【0027】
図1において、樹脂製端面突合せ継手のエルボ形状の継手11は、内部に流路15を有する継手基部12とワークを溶着する溶着環状部13と端筒形状の溶着環状部14とから構成されている。
【0028】
継手基部12の外端に、溶着環状部13、14の中心軸16、17と同軸に、溶着機のクランプで締付把持するための固定部18、19がそれぞれ突設されている。
【0029】
溶着環状部13、14は継手基部12を起点として設けられている。溶着環状部13、14の内部には流路20、21が形成されており、流路20、21は継手基部12内に形成されている流路15と連通している。
【0030】
図では、溶着環状部13は長筒形状に、溶着環状部14は短筒形状に形成されているが、継手11の構成はこれに限定されるわけでない。例えば、溶着環状部13、14ともに長筒形状に形成しておき、使用時に適宜選択した溶着環状部を所要の長さに切断して短縮してもよいし、溶着環状部13、14ともに短筒形状に形成しておいてもよい。
【0031】
継手基部12の外端に設けられた固定部18、19は円形で、かつ、その外径22、23は、溶着環状部13、14の外径24、25と同一に形成されている。突設された固定部18、19の外周は、溶着機のクランプで確実に締付把持するため、円柱形に形成する必要があるが、固定部18、19の頂部26、27は平坦な面に形成する必要はなく、例えば図2における固定部19に二点鎖線28で示すように、凹みが存在しても構わない。すなわち、この場合は、材料の節約、重量軽減を図ることが可能となる。
【0032】
本実施例における継手11も継手基部の外端に、溶着環状部12、13と同軸に固定部を設けたことを除き、従来の樹脂継手の規格と同一であるが、これに限定されるものではない。なお、本実施例では、溶着環状部12、13の呼び径を25.4mm(1インチ)とした。
【0033】
固定部18、19は、溶着機のクランプで確実に締付把持するために十分な高さを有している必要がある。一般に溶着機のクランプの幅である固定代は6〜15mmの範囲にあるが、固定部18、19の高さ29、30をクランプの幅に等しく設定する必要はなく、クランプで固定部を締結把持した際に、継手をぐらつくことなく確実に固定できる分の高さがあれば足りる。
【0034】
上記のように、固定部の高さは、継手全体の大きさに比して十分小さく設定してもクランプにより継手を確実に締付把持することができるので、継手基部の外部に生じる突起を最小限とすることができる。このため、固定部が他のワークと干渉することがないので、配管をコンパクトに構成することができる。
【0035】
また、固定部は継手基部の外端に設けられているため、ヒータ面からの固定部までの距離は、従来の継手を溶着する場合におけるヒータ面から溶着環状部のクランプ締付把持部までの距離と大差がなく、適正な芯間寸法を確保している。
【0036】
固定部18、19の外径22、23は、溶着環状部13、14の外径24、25と同一に形成されているため、溶着環状部13、14を締付把持することができるクランプをそのまま使用することができるので、本発明における樹脂製端面突合せ継手を使用するに際し、従来のクランプとサイズが異なるクランプを新たに準備する必要がない。
【0037】
図2に示すように、継手11の固定部18は、継手基部12の外端に、溶着環状部13の中心軸16と同軸に、かつ溶着環状部13の外径24と同一の外径を有する円形で突設されているため、固定部18を溶着機のクランプで締付把持した場合の溶着環状部13と溶着機との位置関係は、溶着環状部13をクランプで締付把持した場合の溶着環状部13と溶着機との位置関係と同じになる。
【0038】
溶着機では、溶着するワークをクランプで締付把持すると、そのワークの中心軸は溶着機の軸芯と一致するように設定されているので、継手11の固定部18をクランプで締付把持すると、当該固定部と中心軸が同軸である溶着環状部13の中心軸16は、溶着機の軸芯と一致する。
【0039】
上記の関係は、継手11のもう一方の溶着環状部14の中心軸17と同軸に、継手基部12の外端に形成されている固定部19についても成立する。
【0040】
従って、短筒形状に形成されているためにクランプの固定代分を確保できない溶着環状部14をワークに溶着する場合であっても、単に、固定部19をクランプで締付把持するだけで、溶着環状部14の中心軸17を軸芯に合わせて溶着機に取付けることができるので、作業性が著しく向上する。
【0041】
また、溶着環状部14のように短筒形状に形成した溶着環状部にワークを溶着すると、溶着部のビードの位置を樹脂継手の近傍に設けることができ、該ビードが配管サポートやセンサー等の取付けの妨げになることなく、配管のコンパクト化に寄与する。
【0042】
また、固定部18、19が円形に形成されているため、図1に示すように、固定部18、19の中心軸31、32と固定部の外周33、34間との距離35、36は一定である。従って、固定部19をクランプで締付把持し、ワークを溶着環状部14の端部37に溶着する場合、溶着環状部13を中心軸17周りに回転させ、溶着環状部13の端部38をどの方向に向けて固定部19をクランプで締付把持した場合であっても、固定部19と同軸である溶着環状部14の中心軸17は、溶着装置の軸芯と一致する。
【0043】
従って、溶着するワークに対し、溶着環状部14の中心軸周りに樹脂継手11を適宜な角度分回転させても、被溶着ワークの中心軸と樹脂継手11の溶着環状部14の中心軸は一致するため、溶着部に食い違いが生じることがない。このため、被溶着ワークに対し、樹脂継手11を溶着する角度に制限を受けることがなく、随意な回転角度で溶着することができるので、使用する配管長を最短としてコンパクトに配管を構成することができると共に、自由な方向性の継手を任意に溶着できる。
【0044】
図3及び図4において、2個の樹脂継手11を短筒形状に形成された溶着環状部14同士により溶着すると、最短の芯間寸法で樹脂継手11同士を溶着することができる。この場合には、樹脂継手11の溶着環状部14をクランプで締付把持することができないので、図3に示すように、樹脂継手11、11固定部19、19の外周34をクランプ39の把持面40で締付把持することにより、溶着機41のヒータ42の両側にヒータ42とは非接触状態で、溶着環状部14、14の端部37、37を対向させて固定することができる。この時、一対の樹脂継手11、11の溶着環状部14、14の軸芯は、単にクランプ39、39で樹脂継手11、11の固定部19、19を締付把持するだけで前述したように一致する。
【0045】
図4に示すのが、最短の芯間寸法で樹脂継手11同士を溶着して作成した配管器材43である。このように、芯間寸法44を短くして形成することができるので、配管器材43を使用することにより、装置の配管をコンパクトに構成することができる。
【0046】
また、溶着する溶着環状部14、14同士の軸芯を完全に合わせて溶着することができるので、溶着部45に段差が生じて液体のスムーズな流れを阻害したり、液だまりが生じたり、パーティクルが滞留、脱離することがない高品質発生な配管器材を簡単に作成することができる。
【0047】
本件発明の適用は、本実施例のエルボ型樹脂継手11に限られることはなく、継手基部に継手基部内の流路と連通する複数の溶着環状部を設け、この溶着環状部の少なくとも一つの溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に溶着機クランプ用の固定部を設けた継手であれば適用することができる。例えば、図5に示すティ形状の継手46、図6に示すアングルティ形状の継手47においても、同様に適用できることは勿論である。
図5のティ形状の継手46、及び図6のアングルティ形状に継手47では、環状溶着部48のうちの一つが短筒形状に形成されているが、エルボ形状の継手11の場合と同様に、全ての溶着環状部48を長筒形状に成形しておき、使用時に固定部49を使用して溶着する溶着環状部48を所要の長さに合わせて切断短縮してもよいし、固定部49を使用して溶着する溶着環状部48の全てを短筒形状に形成してもよく、これらは実施に応じて任意である。
【0048】
次に、本発明における端面突合せ継手の溶着方法の一例を説明する。
【0049】
先ず、継手基部12の外端に、前記継手基部に設けた溶着環状部14と同軸に円形固定部19を一体に突出形成した継手11、及びこの継手11と溶着するワーク50を準備し、図3に示すように、前記継手11の固定部19を溶着機41のクランプ39で締付把持して固定すると共に、前記ワーク50をクランプ39で締付把持して固定し、継手11とワーク50を溶着機41のヒータ42に対向させて配置する。
【0050】
前記継手11の溶着する端面37及び前記ワーク50の溶着する端面51をヒータとは非接触状態で加熱し、溶融させる。継手11とワーク50の溶着する端面37、51が十分に加熱溶融された後、両端面同士を押付けて容着させる。
【0051】
本発明における端面突合せ継手の溶着方法では、継手11の溶着環状部14にクランプ39により締付把持する固定代を確保できない場合であっても、従来の溶着方法のように継手自体を締付把持するための専用治具を準備する必要がなく、従来のクランプ39で溶着する溶着環状部14の同軸上に、継手基部12に外設された固定部19を締付把持することにより継手11を溶着機41に固定することができるので、作業効率が著しく向上する。
【0052】
また、溶着する溶着環状部14の同軸上に、継手基部12の外端に設けた固定部19をクランプ39で締付把持すると、溶着環状部14を溶着機41の軸芯に合わせて固定することができるため、従来、長時間を要した面倒な作業である軸芯合わせを行う必要がなく、短時間で正確に継手の溶着作業を行うことができる。
【0053】
本発明における端面突合せ樹脂継手を本発明における溶着方法により溶着する場合と、従来の樹脂継手を従来の溶着方法により溶着する場合との実質的な違いは、本発明における端面突合せ樹脂継手の固定部をクランプで締付把持して溶着機に固定する工程のみであり、他の工程は従来の樹脂継手を従来の溶着方法により溶着する場合と何ら変わることがない。従って、従来の溶着方法に習熟している作業者であれば、何らの作業訓練を行うことなく、むしろより簡単かつ確実に従来の溶着機及びクランプを用いて溶着作業を行うことができるので、その経済的価値は極めて大きい。
【0054】
以上説明した継手の溶着方法は、本発明における端面突合せ継手と特定のワークとの溶着に限られることなく、次に説明する様に、種々のワークと溶着する場合に適用することができる。
【0055】
短筒形状の溶着環状部を有する継手52とエルボ継手53を溶着する場合には、図7(a)に示すように、短筒形状の溶着環状部を有する継手52は固定部54をクランプ55で締付把持し、またエルボ継手53は長筒形状の溶着環状部56をクランプ55で締付把持して、ヒータ57の両側に対向配置し、それぞれの端面を加熱、溶融させて溶着することができる。
【0056】
短筒形状の溶着環状部を有する継手58とチューブやパイプ等の管状部(以下、単に「チューブ」という。)59を溶着する場合には、図7(b)に示すように、短筒形状の溶着環状部を有する継手58は固定部54をクランプ55で締付把持し、またエチューブ59は適宜な位置をクランプ55で締付把持して、ヒータ57の両側に対向配置し、それぞれの端面を加熱、溶融させて溶着することができる。
【0057】
短筒形状の溶着環状部を有する継手52とバルブ60のチューブ61を溶着する場合には、図7(c)に示すように、短筒形状の溶着環状部を有する継手52は固定部54をクランプ55で締付把持し、またバルブ60はチューブ61をクランプ55で締付把持して、ヒータ57の両側に対向配置し、それぞれの端面を加熱、溶融させて溶着することができる。
【0058】
短筒形状の溶着環状部を有する継手52とメカニカル継手62のチューブ63を溶着する場合には、図7(d)に示すように、短筒形状の溶着環状部を有する継手52は固定部54をクランプ55で締付把持し、またメカニカル継手62はチューブ63をクランプ55で締付把持して、ヒータ57の両側に対向配置し、それぞれの端面を加熱、溶融させて溶着することができる。
【0059】
本発明における樹脂製端面突合せ継手と溶着方法は、継手同士の溶着に限定されることなく、継手とチューブ、継手とメカニカル継手、或いは継手とバルブや各種センサー類又はフィルタなどを溶着した種々の配管器材を作成することができる。それらを適宜選択して使用することにより、継手の不要な溶着環状部等を排除し、真に必要な部分のみによって配管を構成することができるので、例えば、薬液提供装置などの配管を小型化することができる。
【0060】
また、図8に示すように、本発明における継手64の固定部65の本例と異なった用い方がある。すなわち、固定部65をクランプ66で締付把持してスリーブ69を圧入することができる。また、固定部65を専用スリーブ治具67のような平坦な当接面68に押圧固定することも可能であり、スリーブ69圧入時に力が加わっても継手64が安定して動かないため、容易にスリーブ69を溶着環状部70へ圧入することができ作業性が向上できる。なお、図中71はユニオンナットである。
【0061】
以上説明したように、本発明における樹脂継手を本発明における溶着方法により溶着する場合には、従来の樹脂継手を従来の溶着方法で溶着する場合に比べ、効率的に、かつ正確に溶着作業を実施することができだけでなく、新たに作業に習熟する必要がなく、従来の溶着機及びクランプを用いて溶着作業を行うことができるために経済的な負担を生じないので、その産業上の利用価値及び経済的価値は極めて大きい。
【符号の説明】
【0062】
11 エルボ形状の継手
12 継手基部
13、14、49、69 溶着環状部
18、19、54、65 固定部
39 クランプ
41 溶着機
42 ヒータ
43 配管器材
46、64 ティ形状の継手
48 アングルティ形状の継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手基部に継手基部内の流路と連通する複数の溶着環状部を設け、この溶着環状部の少なくとも一つの溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に溶着機クランプ用の固定部を設けたことを特徴とする樹脂製端面突合せ継手。
【請求項2】
前記溶着環状部を短筒形状に形成し、この溶着環状部の同軸上に形成した固定部を溶着環状部の外径と同一外径の円形とした請求項1に記載の樹脂製端面突合せ継手。
【請求項3】
前記継手基部に設けた溶着環状部をエルボ形状又はティ形状、或いはアングルティ形状の何れか一つとした請求項1又は2に記載の樹脂製端面突合せ継手。
【請求項4】
継手基部に設けた溶着環状部の同軸上で、かつ前記継手基部の外端に円形固定部を一体に突出形成し、この固定部を溶着機のクランプで把持固定し、前記溶着環状部の端面同士を非接触のヒータで加熱溶融させた後に、前記溶着環状部同士を押付けることにより管端面同士を溶着することを特徴とする樹脂製端面突合せ継手の溶着方法。
【請求項5】
前記溶着環状部を短筒形状に形成した継手同士の前記固定部をクランプで把持固定し、その後、短筒形状の溶着環状部を溶着して最短の芯間寸法を有する最短溶着である請求項4に記載の樹脂製端面突合せ継手の溶着方法。
【請求項6】
前記固定部をクランプで把持固定した短筒形状の溶着環状部の端面と、チューブの端面又はメカニカル継手の管端面、或いはバルブや圧力、流量等のセンサー類又はフィルタなどの接続端面の何れかのワーク同士を溶着した請求項4又は5に記載の樹脂製端面突合せ継手の溶着方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6の何れか1項に記載の継手を溶着することによって構成した配管器材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103363(P2013−103363A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247152(P2011−247152)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(501417929)株式会社キッツエスシーティー (22)
【Fターム(参考)】