橋梁構築装置
【課題】 幅広で打設重量が大きい波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の張り出し工法による構築を可能にし、更には、主桁の接合部が鋼部材で接合部ブロック重量が大きく、また、横桁も鋼部材であり、更に重量が増加するエクストラード橋(斜張橋)の構築をも可能とした。
【解決手段】 橋脚上に設けた桁1を構成する上桁12の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置されているとともに上桁12への固定装置を配置したフレーム状の基部フレーム21と、基部フレーム21の前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ装置を配置した張出しフレーム23とを備えた吊下げ型移動作業車2と、桁1を構成する下桁12の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレーム33の前方に橋軸直角方向に延びる支持フレーム34を有する支え型移動作業車3とからなる。
【解決手段】 橋脚上に設けた桁1を構成する上桁12の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置されているとともに上桁12への固定装置を配置したフレーム状の基部フレーム21と、基部フレーム21の前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ装置を配置した張出しフレーム23とを備えた吊下げ型移動作業車2と、桁1を構成する下桁12の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレーム33の前方に橋軸直角方向に延びる支持フレーム34を有する支え型移動作業車3とからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の橋梁構築装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プレストレスコンクリート箱桁橋において、コンクリート製のウェブに代えて波形鋼板ウェブを用いた波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋が知られている。
【0003】
この波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋は、ウェブを軽量な波形の鋼板に置き換えたもので、自重の大幅な軽減が図れ、長支間化に対応し、更に、施工の合理化や工期の短縮を図ることができ、更に、波形加工により高い剪断座屈耐力が補助材なしに得られるなどの利点がある。
【0004】
このような波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の橋梁構築手段の一つとして片持架設工法が知られている。
【0005】
この片持架設工法が、特開2001−020227号公報、特開2002−021024号公報、特開2003−166215号公報、特開2003−193430号公報、特開2003−301415号公報などに提示されており、
、これらの片持架設工法には、図14及び図15に示すように、橋脚(図示せず)上に設けた桁1における上桁11の上面に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された一対のレール113,113に走行可能に嵌装される移動用ローラ211,211を有する後部下方に固定装置212を配置したフレーム状の基部フレーム21と、前記基部フレーム21の前部上方に張り出して連設された下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材Wや型枠Mなどを吊り下げ支持するための吊下げ部材221を配置した張出しフレーム22とを備えた吊下げ型移動作業車2が用いられる。
【0006】
即ち、橋脚に配置、固定した移動作業車2の中で、型枠の組み立て、鉄筋およびプレストレスコンクリート鋼棒の配置、コンクリートの打設、養生後のプレストレスの導入を一体的に行い、このサイクルを順次移動作業車2を駆動装置213により前進させて桁11を張り出していく、いわゆる、片持ち架設工法により構築され、このとき、波形鋼板ウェブは。図13に示すように、例えば前記型枠Mに合わせて縦方向に適宜分割された複数の波形鋼板ウェブ部材Wを門型の張出しフレーム22に設けた橋軸方向へ延びるメインフレーム23に、走行可能に吊り下げた波形鋼板ウェブ部搬送装置231により順次、配置位置に搬送して型枠Mの上枠M1下枠M2に固定連結し、コンクリートを打設して桁Hを順次張り出して構築するものである。
【0007】
この片持架設工法は、支保工の建設が困難な山間渓谷、流量の多い河川、船舶の航行する海上での長大スパン橋梁の建設に最適であり、桁橋だけでなく、エクストラード橋(斜張橋)、アーチ橋の施工などにも利用されている。
【0008】
しかしながら、前記従来の移動作業車2を用いる片持架設工法において、例えば橋幅が40mを越えるような幅広な橋を構築する場合には打設重量が大きく、更に、作業員が作業するための広範な足場が必要となるなど移動作業車2の支持荷重(支点反力)が大きくなり、張出しフレーム22で支えることが困難な場合が生じる。
【0009】
殊に、エクストラード橋(斜張橋)の場合には、斜材(ケーブル)、主桁の接合部が鋼部材で接合部ブロック重量が大きく、また、横桁も鋼部材であり、更に重量が増加する。
【特許文献1】特開2001−020227号
【特許文献2】特開2002−021024号
【特許文献3】特開2003−166215号
【特許文献4】特開2003−193430号
【特許文献5】特開2003−301415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、橋幅が広大な波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋を片持架設工法により構築する場合には1ブロックの打設重量が大きく、吊下げ型移動作業車の支持荷重(支点反力)が大きくなり、張出しフレームでウェブ、型枠、多くの足場や作業員を保持しながらコンクリートを打設することが困難である、という点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明である橋梁構築装置は、橋脚上に設けた桁を構成する上桁の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置され後部下方に固定装置を配置したフレーム状の基部フレームと、前記基部フレームの前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ部材を配置した張出しフレームとを備えた吊下げ型移動作業車と、前記桁を構成する下桁の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレームの前方に橋軸直角方向に延びる支持フレームを有する支え型移動作業車とからなることを特徴とする。
【0012】
また、前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方へ向けて移動可能であるとよい。
【0013】
更に、前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とを併用することにより、幅広で打設重量が大きい波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の張り出し工法による構築を可能にし、更には、主桁の接合部が鋼部材で接合部ブロック重量が大きく、また、横桁も鋼部材であり、更に重量が増加するエクストラード橋(斜張橋)の構築をも可能とした。また、前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方へ向けて移動可能であると、吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とを一緒に移動させることができるので、移動時における両者の位置合わせをする必要がないばかりか何れか一方の駆動装置により両者を移動させることもできる。尚、吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車と個別的に移動可能にしておくと、型枠位置などの微調整が可能となる等の利点がある。更に、前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていることにより、各移動作業車により桁に加わる荷重を平均化して一部に負担が掛かることを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
図1乃至図6は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、本発明である橋梁構築装置は、主として橋脚(図示せず)上に設けた桁1を構成する上桁11の上面111に配置される吊下げ型移動作業車2と、前記桁1を構成する下桁12の下面121に配置される支え型移動作業車3とから構成される。
【0017】
そして、前記吊下げ型移動作業車2は、橋脚(図示せず)上に設けた桁1における上桁11の上面111に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された二対のレール113,113及び113,113にそれぞれ走行可能に配置されて橋軸直角方向に並設された2台の作業車2A,2Bから構成される。
【0018】
前記2台の作業車2A,2Bは、左右対称の同形であり、桁1における上桁11の上面111に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された一対のレール113,113にそれぞれ走行可能に嵌装される移動用ローラ211,211を有する後部下方に移動時の転倒を防止するための固定装置212および打設作業時の転倒を防止する固定装置213とを配置したフレーム状の基部フレーム21と、前記基部フレーム21の前部上方に張り出して連設された下方を開放した正面門形の張出しフレーム22とを有している。
【0019】
また、前記作業車2A,2Bの各基部フレーム21と張出しフレーム22にわたって、橋軸方向に伸びる支持レール231に橋軸直角方向に伸びる吊下げフレーム232が橋軸方向に往復動可能に懸吊されているとともに、吊下げフレーム232に波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)の搬入装置24がそれぞれ懸装されている。
【0020】
一方、支え型移動作業車3は、前記桁1における桁張り出し端部の少なくとも平面から見て前後左右位置に貫通、固着されたワーゲンアンカー31・・31の下桁12の下面121からの突出端に配置された吊車32・・32によって橋軸方向に移動可能に吊り下げられた橋軸方向に延びる一対の基体フレーム33,33と、これらの懸吊フレーム33,33の先端に直交して配置される所定幅を有する支持フレーム34,34により主要部分が構成される。
【0021】
また、前記移動作業車3の懸吊フレーム33,33及び支持フレーム34,34には、ほぼ全面にわたって多数の足場4が架設されており、作業員は吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3との間を両者の間に架設された階段41を使って行き来することができる。
【0022】
そして、図2および図3に示すように、桁1における吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる各レール113の位置、即ち、吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる位置(図に示すA−A線)と、前記支え型移動作業車3の懸吊位置である各ワーゲンアンカー31の位置、即ち、支え型移動作業車3の荷重が加わる位置(図に示すB−B線)とが橋軸直角方向において互いに一致または接近せずに所定の間隔を有して設置されていること、即ち、前記桁1における吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車3の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていることにより、各移動作業車2,3により桁1に加わる荷重を平均化して桁1の一部に負担が掛かることにより生じる変形や破損を防止する。
【0023】
加えて、図7(a)に示すように、前記吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22の橋軸方向先端と、支え型移動作業車3の支持フレーム34の橋軸方向先端とは、張出しフレーム22に設置された吊柱ジャッキ51により吊り上げ可能で且つ下端に配置した支持フレーム34と連結及び切り離し可能な吊柱52により連結されている。
【0024】
更に詳しく説明すると、図7(b)に示すように、吊柱52は下方に形成されている連結部53において吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22と支え型移動作業車3の支持フレーム34とを連結し、或いは切り離す構成である。
【0025】
特に、本実施の形態では図7(b)に示すように、吊柱52に形成されたピン孔521と支持フレーム34側に設置した固定部材54に立設させた嵌合筒541に連通して形成されるピン孔542,542に取り外し式のピン523が嵌装されて連結する構成であり、ピン孔521を長孔とすることで取り外し式のピン523の挿脱を容易にして作業性を高めている。
【0026】
このように取り外し式のピン523の挿脱と前記吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22に設置された吊柱ジャッキ51の上下動作により吊柱52による吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3の連結と切り離しを行うものであり、吊柱ジャッキ51は吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3の合計撓み以上のストロークを有している。そのため、吊柱52で吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3を互いに連結して一体的に移動させたときに吊柱ジャッキ51のストロークを調節して吊柱52の長さを調節することにより吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3を一体的に移動させることができるばかりか移動の際にに荷重がアンバランスになるのを確実に防止する。
【0027】
図8乃至図13は本実施の形態についての架設作業の手順を示すものであり、図8に示すように、吊下げ型移動作業車2を走行レール113に沿って所定位置に前進させる。このとき、吊柱52により吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3とが連結されているので吊下げ型移動作業車2所定位置に移動するだけで支え型移動作業車3も一緒に所定位置に移動するので支え型移動作業車3の位置合わせをする必要がなく複雑な制御を必要としないばかりか、何れか一方の駆動により両者を一緒に移動させることもできる。尚、このとき、波形鋼板ウェブ部材(図示せず)の搬入装置24は最後尾に位置している。
【0028】
次に、図9に示すように、ジャッキなどからなる固定装置6,6により、吊下げ型移動作業車2を桁1に固定するとともに、運搬台車7により運ばれてきた波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)を吊り上げる。更に、吊柱52の下端と支え型移動作業車3との連結を解除して吊柱52をジャッキ51により吊り上げる。
【0029】
更に、図10に示すように、搬入装置24により波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)を前方の所定位置に搬送する。
【0030】
そして、図11に示すように、従来の吊下げ型移動作業車2と同様に、下型枠M及び下型枠支持梁7(横梁、縦梁)をセットする。このとき、吊柱52による吊下げ型移動作業車2とと支え型移動作業車3との連結が解除されているので吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3とが個別的に移動可能であり、例えば型枠位置などの微調整をするなど吊下げ型移動作業車2または支え型移動作業車3それぞれの個別的な使用目的に応じて適宜移動させることもできる。
【0031】
次いで、図12に示すように打設作業を行い、次いで、下型枠M及び下型枠支持梁7を外して支え型移動作業車3上に降ろして、図12に示すように1ブロック分の架設が完了するのでジャッキ51により吊柱52を下降させて吊柱52の下端と支え型移動作業車3とを連結して、吊下げ型移動作業車2とを支え型移動作業車3とを一体的に前方に移動させて前記図7に示した最初の状態に戻し、この行程を順次繰り返して架設作業を行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す側面図。
【図2】図1に示した実施の形態の平面図。
【図3】図1に示した実施の形態の正面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図。
【図6】図1に示した実施の形態における支え型移動作業車を示す平面図。
【図7】図1に示した実施の形態の吊柱部分を示す説明図。
【図8】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図9】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図10】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図11】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図12】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図13】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図14】従来例を示す側面図。
【図15】従来例を示す正面図。
【符号の説明】
【0033】
1 桁、 2 吊り下げ型の移動作業車、 3 支え型移動作業車、 11 上桁、 12 下桁、 21 基部フレーム、 23 張出しフレーム、 24 吊下げ部材、 33 懸吊フレーム、 34 支持フレーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の橋梁構築装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プレストレスコンクリート箱桁橋において、コンクリート製のウェブに代えて波形鋼板ウェブを用いた波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋が知られている。
【0003】
この波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋は、ウェブを軽量な波形の鋼板に置き換えたもので、自重の大幅な軽減が図れ、長支間化に対応し、更に、施工の合理化や工期の短縮を図ることができ、更に、波形加工により高い剪断座屈耐力が補助材なしに得られるなどの利点がある。
【0004】
このような波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の橋梁構築手段の一つとして片持架設工法が知られている。
【0005】
この片持架設工法が、特開2001−020227号公報、特開2002−021024号公報、特開2003−166215号公報、特開2003−193430号公報、特開2003−301415号公報などに提示されており、
、これらの片持架設工法には、図14及び図15に示すように、橋脚(図示せず)上に設けた桁1における上桁11の上面に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された一対のレール113,113に走行可能に嵌装される移動用ローラ211,211を有する後部下方に固定装置212を配置したフレーム状の基部フレーム21と、前記基部フレーム21の前部上方に張り出して連設された下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材Wや型枠Mなどを吊り下げ支持するための吊下げ部材221を配置した張出しフレーム22とを備えた吊下げ型移動作業車2が用いられる。
【0006】
即ち、橋脚に配置、固定した移動作業車2の中で、型枠の組み立て、鉄筋およびプレストレスコンクリート鋼棒の配置、コンクリートの打設、養生後のプレストレスの導入を一体的に行い、このサイクルを順次移動作業車2を駆動装置213により前進させて桁11を張り出していく、いわゆる、片持ち架設工法により構築され、このとき、波形鋼板ウェブは。図13に示すように、例えば前記型枠Mに合わせて縦方向に適宜分割された複数の波形鋼板ウェブ部材Wを門型の張出しフレーム22に設けた橋軸方向へ延びるメインフレーム23に、走行可能に吊り下げた波形鋼板ウェブ部搬送装置231により順次、配置位置に搬送して型枠Mの上枠M1下枠M2に固定連結し、コンクリートを打設して桁Hを順次張り出して構築するものである。
【0007】
この片持架設工法は、支保工の建設が困難な山間渓谷、流量の多い河川、船舶の航行する海上での長大スパン橋梁の建設に最適であり、桁橋だけでなく、エクストラード橋(斜張橋)、アーチ橋の施工などにも利用されている。
【0008】
しかしながら、前記従来の移動作業車2を用いる片持架設工法において、例えば橋幅が40mを越えるような幅広な橋を構築する場合には打設重量が大きく、更に、作業員が作業するための広範な足場が必要となるなど移動作業車2の支持荷重(支点反力)が大きくなり、張出しフレーム22で支えることが困難な場合が生じる。
【0009】
殊に、エクストラード橋(斜張橋)の場合には、斜材(ケーブル)、主桁の接合部が鋼部材で接合部ブロック重量が大きく、また、横桁も鋼部材であり、更に重量が増加する。
【特許文献1】特開2001−020227号
【特許文献2】特開2002−021024号
【特許文献3】特開2003−166215号
【特許文献4】特開2003−193430号
【特許文献5】特開2003−301415号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、橋幅が広大な波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋を片持架設工法により構築する場合には1ブロックの打設重量が大きく、吊下げ型移動作業車の支持荷重(支点反力)が大きくなり、張出しフレームでウェブ、型枠、多くの足場や作業員を保持しながらコンクリートを打設することが困難である、という点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明である橋梁構築装置は、橋脚上に設けた桁を構成する上桁の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置され後部下方に固定装置を配置したフレーム状の基部フレームと、前記基部フレームの前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ部材を配置した張出しフレームとを備えた吊下げ型移動作業車と、前記桁を構成する下桁の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレームの前方に橋軸直角方向に延びる支持フレームを有する支え型移動作業車とからなることを特徴とする。
【0012】
また、前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方へ向けて移動可能であるとよい。
【0013】
更に、前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とを併用することにより、幅広で打設重量が大きい波形鋼板ウェブプレストレスコンクリート橋の張り出し工法による構築を可能にし、更には、主桁の接合部が鋼部材で接合部ブロック重量が大きく、また、横桁も鋼部材であり、更に重量が増加するエクストラード橋(斜張橋)の構築をも可能とした。また、前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方へ向けて移動可能であると、吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とを一緒に移動させることができるので、移動時における両者の位置合わせをする必要がないばかりか何れか一方の駆動装置により両者を移動させることもできる。尚、吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車と個別的に移動可能にしておくと、型枠位置などの微調整が可能となる等の利点がある。更に、前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていることにより、各移動作業車により桁に加わる荷重を平均化して一部に負担が掛かることを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
図1乃至図6は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、本発明である橋梁構築装置は、主として橋脚(図示せず)上に設けた桁1を構成する上桁11の上面111に配置される吊下げ型移動作業車2と、前記桁1を構成する下桁12の下面121に配置される支え型移動作業車3とから構成される。
【0017】
そして、前記吊下げ型移動作業車2は、橋脚(図示せず)上に設けた桁1における上桁11の上面111に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された二対のレール113,113及び113,113にそれぞれ走行可能に配置されて橋軸直角方向に並設された2台の作業車2A,2Bから構成される。
【0018】
前記2台の作業車2A,2Bは、左右対称の同形であり、桁1における上桁11の上面111に所定間隔を有して橋軸方向へ設置された一対のレール113,113にそれぞれ走行可能に嵌装される移動用ローラ211,211を有する後部下方に移動時の転倒を防止するための固定装置212および打設作業時の転倒を防止する固定装置213とを配置したフレーム状の基部フレーム21と、前記基部フレーム21の前部上方に張り出して連設された下方を開放した正面門形の張出しフレーム22とを有している。
【0019】
また、前記作業車2A,2Bの各基部フレーム21と張出しフレーム22にわたって、橋軸方向に伸びる支持レール231に橋軸直角方向に伸びる吊下げフレーム232が橋軸方向に往復動可能に懸吊されているとともに、吊下げフレーム232に波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)の搬入装置24がそれぞれ懸装されている。
【0020】
一方、支え型移動作業車3は、前記桁1における桁張り出し端部の少なくとも平面から見て前後左右位置に貫通、固着されたワーゲンアンカー31・・31の下桁12の下面121からの突出端に配置された吊車32・・32によって橋軸方向に移動可能に吊り下げられた橋軸方向に延びる一対の基体フレーム33,33と、これらの懸吊フレーム33,33の先端に直交して配置される所定幅を有する支持フレーム34,34により主要部分が構成される。
【0021】
また、前記移動作業車3の懸吊フレーム33,33及び支持フレーム34,34には、ほぼ全面にわたって多数の足場4が架設されており、作業員は吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3との間を両者の間に架設された階段41を使って行き来することができる。
【0022】
そして、図2および図3に示すように、桁1における吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる各レール113の位置、即ち、吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる位置(図に示すA−A線)と、前記支え型移動作業車3の懸吊位置である各ワーゲンアンカー31の位置、即ち、支え型移動作業車3の荷重が加わる位置(図に示すB−B線)とが橋軸直角方向において互いに一致または接近せずに所定の間隔を有して設置されていること、即ち、前記桁1における吊下げ型移動作業車2の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車3の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有して設置されていることにより、各移動作業車2,3により桁1に加わる荷重を平均化して桁1の一部に負担が掛かることにより生じる変形や破損を防止する。
【0023】
加えて、図7(a)に示すように、前記吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22の橋軸方向先端と、支え型移動作業車3の支持フレーム34の橋軸方向先端とは、張出しフレーム22に設置された吊柱ジャッキ51により吊り上げ可能で且つ下端に配置した支持フレーム34と連結及び切り離し可能な吊柱52により連結されている。
【0024】
更に詳しく説明すると、図7(b)に示すように、吊柱52は下方に形成されている連結部53において吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22と支え型移動作業車3の支持フレーム34とを連結し、或いは切り離す構成である。
【0025】
特に、本実施の形態では図7(b)に示すように、吊柱52に形成されたピン孔521と支持フレーム34側に設置した固定部材54に立設させた嵌合筒541に連通して形成されるピン孔542,542に取り外し式のピン523が嵌装されて連結する構成であり、ピン孔521を長孔とすることで取り外し式のピン523の挿脱を容易にして作業性を高めている。
【0026】
このように取り外し式のピン523の挿脱と前記吊下げ型移動作業車2の張出しフレーム22に設置された吊柱ジャッキ51の上下動作により吊柱52による吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3の連結と切り離しを行うものであり、吊柱ジャッキ51は吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3の合計撓み以上のストロークを有している。そのため、吊柱52で吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3を互いに連結して一体的に移動させたときに吊柱ジャッキ51のストロークを調節して吊柱52の長さを調節することにより吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3を一体的に移動させることができるばかりか移動の際にに荷重がアンバランスになるのを確実に防止する。
【0027】
図8乃至図13は本実施の形態についての架設作業の手順を示すものであり、図8に示すように、吊下げ型移動作業車2を走行レール113に沿って所定位置に前進させる。このとき、吊柱52により吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3とが連結されているので吊下げ型移動作業車2所定位置に移動するだけで支え型移動作業車3も一緒に所定位置に移動するので支え型移動作業車3の位置合わせをする必要がなく複雑な制御を必要としないばかりか、何れか一方の駆動により両者を一緒に移動させることもできる。尚、このとき、波形鋼板ウェブ部材(図示せず)の搬入装置24は最後尾に位置している。
【0028】
次に、図9に示すように、ジャッキなどからなる固定装置6,6により、吊下げ型移動作業車2を桁1に固定するとともに、運搬台車7により運ばれてきた波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)を吊り上げる。更に、吊柱52の下端と支え型移動作業車3との連結を解除して吊柱52をジャッキ51により吊り上げる。
【0029】
更に、図10に示すように、搬入装置24により波形鋼板ウェブ部材W(左側分割体W1,中央部分割体W2,右側分割体W3)を前方の所定位置に搬送する。
【0030】
そして、図11に示すように、従来の吊下げ型移動作業車2と同様に、下型枠M及び下型枠支持梁7(横梁、縦梁)をセットする。このとき、吊柱52による吊下げ型移動作業車2とと支え型移動作業車3との連結が解除されているので吊下げ型移動作業車2と支え型移動作業車3とが個別的に移動可能であり、例えば型枠位置などの微調整をするなど吊下げ型移動作業車2または支え型移動作業車3それぞれの個別的な使用目的に応じて適宜移動させることもできる。
【0031】
次いで、図12に示すように打設作業を行い、次いで、下型枠M及び下型枠支持梁7を外して支え型移動作業車3上に降ろして、図12に示すように1ブロック分の架設が完了するのでジャッキ51により吊柱52を下降させて吊柱52の下端と支え型移動作業車3とを連結して、吊下げ型移動作業車2とを支え型移動作業車3とを一体的に前方に移動させて前記図7に示した最初の状態に戻し、この行程を順次繰り返して架設作業を行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す側面図。
【図2】図1に示した実施の形態の平面図。
【図3】図1に示した実施の形態の正面図。
【図4】図2のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】図2のV−V線に沿う断面図。
【図6】図1に示した実施の形態における支え型移動作業車を示す平面図。
【図7】図1に示した実施の形態の吊柱部分を示す説明図。
【図8】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図9】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図10】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図11】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図12】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図13】図1に示した実施の形態の使用状態を示す説明図。
【図14】従来例を示す側面図。
【図15】従来例を示す正面図。
【符号の説明】
【0033】
1 桁、 2 吊り下げ型の移動作業車、 3 支え型移動作業車、 11 上桁、 12 下桁、 21 基部フレーム、 23 張出しフレーム、 24 吊下げ部材、 33 懸吊フレーム、 34 支持フレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚上に設けた桁を構成する上桁の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置されているとともに前記上桁への固定装置を配置したフレーム状の基部フレームと、前記基部フレームの前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ装置を配置した張出しフレームとを備えた吊下げ型移動作業車と、前記桁を構成する下桁の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレームの前方に橋軸直角方向に延びる支持フレームを有する支え型移動作業車とからなることを特徴とする橋梁構築装置。
【請求項2】
前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方に向けて移動可能である請求項1に記載の橋梁構築装置。
【請求項3】
前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有している請求項1又は2に記載の橋梁構築装置。
【請求項1】
橋脚上に設けた桁を構成する上桁の上面に橋軸方向へ往復動可能に載置されているとともに前記上桁への固定装置を配置したフレーム状の基部フレームと、前記基部フレームの前部上方に張り出して連設され下方を開放した正面門形で波形鋼板ウェブ部材や型枠などを吊り下げ支持するための吊下げ装置を配置した張出しフレームとを備えた吊下げ型移動作業車と、前記桁を構成する下桁の下面に橋軸方向へ往復動可能に懸吊される橋軸方向へ延びる懸吊フレームの前方に橋軸直角方向に延びる支持フレームを有する支え型移動作業車とからなることを特徴とする橋梁構築装置。
【請求項2】
前記吊下げ型移動作業車の張出しフレームと、前記支え型移動作業車の支持フレームとが離脱可能に連結され、前記吊下げ型移動作業車と支え型移動作業車とが一体的に橋軸方向前方に向けて移動可能である請求項1に記載の橋梁構築装置。
【請求項3】
前記桁における吊下げ型移動作業車の荷重が加わる位置と、前記支え型移動作業車の荷重が加わる位置とが橋軸直角方向において互いに所定間隔を有している請求項1又は2に記載の橋梁構築装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−77521(P2006−77521A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264817(P2004−264817)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(591211917)川田建設株式会社 (18)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(591211917)川田建設株式会社 (18)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【出願人】(000154901)株式会社北川鉄工所 (63)
【Fターム(参考)】
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