説明

機器、省電力制御方法、省電力制御プログラム、及び記録媒体

【課題】プログラムの追加による省電力効果への影響を抑制すること。
【解決手段】プログラムをインストール可能な機器であって、省電力状態への移行開始時期より前に、前記プログラムに対する省電力状態への移行通知を行う事前通知手段と、前記移行開始時期に、前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる確認手段とを有し前記確認手段によって問い合わせが行われた前記プログラムに関して省電力状態への移行が可能である場合に、省電力状態へ移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器、省電力制御方法、省電力制御プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、ファクシミリ、コピー機、又は複合機等の画像形成装置などのように、省電力化を図るため、例えば、無操作状態が所定時間継続すると省電力状態(省電力モード又は省エネモード等とも呼ばれる。)に移行する機器がある。例えば、斯かる画像形成装置の中には、省電力状態の移行時において、画像形成装置内において動作する各部(例えば、プログラム群等)に関して、省電力状態への移行の可否の確認が行われるものもある。すなわち、各部に関して省電力状態への移行が可能であることが確認された場合に限って省電力状態への移行が行われる。突然の省電力状態への移行による各部の動作不正や、各部の処理対象のデータの破壊等を防止するためである。
【0003】
他方において、画像形成装置の中には、アプリケーションプログラムを実装するためのAPI(Application Program Interface)が公開され、その出荷後に、ユーザ所望のアプリケーションプログラムをインストールすることにより、機能拡張が可能とされているものもある。このような画像形成装置においては、ユーザの利用形態に応じて、多数のアプリケーションプログラムが動作する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような画像形成装置を一例とする機器において動作するアプリケーションプログラムが増加すると、省電力状態への移行時における確認対象が増加する。すなわち、インストールされた各アプリケーションプログラムに関しても、省電力状態への移行の可否の確認が行われる必要がある。斯かる確認対象の増加は、省電力状態への移行の可否の確認処理の長期化を招く。その結果、省電力状態への移行が遅れ、結果的に省電力効果が低下してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、プログラムの追加による省電力効果への影響を抑制することができる機器、省電力制御方法、省電力制御プログラム、及び記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、プログラムをインストール可能な機器であって、省電力状態への移行開始時期より前に、前記プログラムに対する省電力状態への移行通知を行う事前通知手段と、前記移行開始時期に、前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる確認手段とを有し前記確認手段によって問い合わせが行われた前記プログラムに関して省電力状態への移行が可能である場合に、省電力状態へ移行する。
【0007】
このような機器では、プログラムの追加による省電力効果への影響を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プログラムの追加による省電力効果への影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。
【図3】本実施の形態の画像形成装置の省電力状態に関する状態遷移の一例を示す図である。
【図4】第一の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図5】第二の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図6】第三の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図7】第四の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【図8】第五の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。同図において、画像形成装置10は、コントローラ11、スキャナ12、プリンタ13、モデム14、操作パネル15、ネットワークインタフェース16、及びSDカードスロット17等のハードウェアを有する。
【0011】
コントローラ11は、CPU111、RAM112、ROM113、HDD114、及びNVRAM115等を有する。ROM113には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記録されている。RAM112は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU111は、RAM112にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。HDD114には、プログラムやプログラムが利用する各種のデータ等が記録される。NVRAM115には、各種の設定情報等が記録される。
【0012】
なお、本発明の実施の形態におけるRAM112、HDD114、又はNVRAM115は、記憶部の一例である。
【0013】
スキャナ12は、原稿より画像データを読み取るためのハードウェア(画像読取手段)である。プリンタ13は、印刷データを印刷用紙に印刷するためのハードウェア(印刷手段)である。モデム14は、電話回線に接続するためのハードウェアであり、FAX通信による画像データの送受信を実行するために用いられる。操作パネル15は、ユーザからの入力の受け付けを行うためのボタン等の入力手段や、液晶パネル等の表示手段等を備えたハードウェアである。ネットワークインタフェース16は、LAN等のネットワーク(有線又は無線の別は問わない。)に接続するためのハードウェアである。SDカードスロット17は、SDカード80に記録されたプログラムを読み取るために利用される。すなわち、画像形成装置10では、ROM113に記録されたプログラムだけでなく、SDカード80に記録されたプログラムもRAM112にロードされ、実行されうる。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態における画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。同図において、画像形成装置10は、標準アプリ151、SDKアプリ152、SDKプラットフォーム153、コントロールサービス154、及びOS155等を有する。
【0015】
標準アプリ151は、画像形成装置10に標準的に(出荷時に予め)実装されているアプリケーションの集合である。同図では、スキャンアプリ1511、印刷アプリ1512、コピーアプリ1513、及びFAXアプリ1514が例示されている。スキャンアプリ1511は、スキャンジョブを実行する。印刷アプリ1512は印刷ジョブを実行する。コピーアプリ1513は、コピージョブを実行する。FAXアプリ1514は、FAXの送信ジョブ又は受信ジョブを実行する。
【0016】
コントロールサービス154は、各種のハードウェアリソース等を制御するための機能を上位アプリケーション等に対して提供したり、画像形成装置10の基盤的な機能等を実行したりするソフトウェアモジュール群である。同図において、コントロールサービス154は、移行制御部161、事前通知部162、及び移行可否確認部163等を有する。
【0017】
移行制御部161は、省電力状態への移行を制御する。省電力状態とは、省電力モード又は省エネモード等とも呼ばれ、画像形成装置10の消費電力が抑制された状態をいう。例えば、省電力状態では、操作パネル15への電力の供給が停止又は抑制されたり、スキャナ12及びプリンタ13等のエンジン部への電力の供給が停止又は抑制されたりする。
【0018】
事前通知部162は、省電力状態への移行開始時期より前に、画像形成装置10において起動されているプログラム(例えば、標準アプリ151、SDKアプリ152、SDKプラットフォーム153等)に対して、省電力状態への移行の事前通知を行う。省電力状態への移行開始時期とは、画像形成装置10の仕様により定められた時期である。例えば、無操作状態が所定時間経過した時期である。
【0019】
移行可否確認部163は、省電力状態への移行開始時期において、画像形成装置10において起動されているプログラムに関して、省電力状態への移行の可否を確認する。突然の省電力状態への移行による各プログラムの動作不正や、各プログラムの処理対象のデータの破壊等を回避するためである。
【0020】
SDKアプリ152は、画像形成装置10の出荷後において、画像形成装置10の機能拡張等を図るためのプラグインとして追加的にインストールされるアプリケーションプログラムである。したがって、SDKアプリ152の機能は、所定のものに限定されない。例えば、SDKアプリ152は、SDカード80から又はネットワークを介して画像形成装置10にインストールされる。
【0021】
SDKプラットフォーム153は、SDKアプリ152の実行環境を提供する。各SDKアプリ152は、SDKプラットフォーム153が提供するAPI(Application Program Interface)を利用して開発される。例えば、SDKプラットフォーム153は、スキャン機能を利用させるためのインタフェース、印刷機能を利用させるためのインタフェース、コピー機能を利用させるためのインタフェース等をSDKアプリ152に提供する。SDKプラットフォーム153のAPIは公開されており、サードベンダ等によってもSDKアプリ152は開発されうる。また、当該APIは、異機種間において平滑化されている。したがって、SDKアプリ152に関して、機種に応じて異なる実装が行われる必要性は低い。
【0022】
なお、本実施の形態では、便宜上、画像形成装置10にインストール可能なプログラムとして、SDKアプリ152及びSDKプラットフォーム153等が例示されているが、画像形成装置10にインストール可能なプログラムは、SDKアプリ152及びSDKプラットフォーム153等に限定されない。画像形成装置10にインストール可能なプログラムには、画像形成装置10に追加的にインストールされるプログラム全般が含まれうる。
【0023】
OS155は、いわゆるOS(Operating System)である。画像形成装置10上の各ソフトウェアは、OS155上においてプロセス又はスレッドとして動作する。
【0024】
続いて、画像形成装置10の省電力状態について説明する。図3は、本実施の形態の画像形成装置の省電力状態に関する状態遷移の一例を示す図である。
【0025】
同図において、通常状態ST1は、省電力化されていない状態(非省電力状態)である。したがって、ユーザは、画像形成装置10の機能を即座に利用することができる。通常状態ST1において、電源キーが押下されたり、又は無操作状態が所定時間継続したりすると、画像形成装置10は、静音状態ST2に移行(又は遷移)する。
【0026】
静音状態ST2は、省電力状態の一形態である。例えば、静音状態ST2では、操作パネル15への電力供給が停止又は抑制される。但し、静音状態ST2において、標準アプリ151、SDKアプリ152、及びSDKプラットフォーム153は、起動されたままである。なお、電源キーとは、操作パネル15に配置され、各状態の切り替えをユーザの任意によって可能とするためのハードキー(ボタン)である。
【0027】
静音状態ST2において電源キーが押下されたり、ネットワークを介した印刷データの受信に応じて印刷ジョブが実行されたりすると、画像形成装置10は、静音状態ST2から通常状態ST1へ復帰する。一方、静音状態ST2が所定時間(以下、「エンジンオフ状態充足時間」という。)継続すると、画像形成装置10は、エンジンオフ状態ST3に移行(又は遷移)する。
【0028】
エンジンオフ状態ST3は、省電力状態の一形態である。但し、静音状態ST2とエンジンオフ状態ST3とは、相互に省電力の程度(省電力効果)が異なる。すなわち、エンジンオフ状態ST3では、消費電力が更に抑制される(省電力効果が更に高い)。例えば、エンジンオフ状態ST3では、スキャナ12及びプリンタ13等のエンジン部に関しても電力の供給が停止又は抑制される。また、エンジンオフ状態ST3では、起動されていたSDKアプリ152が停止される。
【0029】
エンジンオフ状態ST3において、電源キーが押下されたり、圧板が開かれたり、又はDF(Document Feeder)にスキャン又はコピー対象の原稿がセットされたりすると、画像形成装置10は、通常状態ST1へ移行(又は遷移)する。
【0030】
なお、図3に示される状態遷移は、一例である。したがって、他の状態遷移に関して、本実施の形態が適用されてもよい。
【0031】
以下、画像形成装置10の処理手順について説明する。図4は、第一の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。
【0032】
例えば、通常状態ST1の画像形成装置10において、移行制御部161は、無操作状態の所定期間の継続又は電源キーの押下を検知すると、SDKプラットフォーム153に対して静音状態ST2への移行の可否(又は許否。以下、「可否」で統一する。)を問い合わせる(S101)。当該問い合わせに応じ、SDKプラットフォーム153は、SDKプラットフォーム153上において起動中の各SDKアプリ152に対して、静音状態ST2への移行の可否を問い合わせる(S102)。なお、静音状態ST2への移行は、各SDKアプリ152に対する影響は小さいため、問い合わせに対する各SDKアプリ152からの応答は、即座に返信される。
【0033】
続いて、SDKプラットフォーム153は、静音状態ST2への移行の可否を応答する(S103)。例えば、問い合わせ先の全てのSDKアプリ152から移行が可能である(移行を許可する)旨の応答が返信された場合、SDKプラットフォーム153は、移行は可能であることを示す応答を返信する。一方、少なくとも一つのSDKアプリ152より移行が不可能である(移行を拒否する)旨の応答が返信された場合、SDKプラットフォーム153は、移行は不可能であることを示す応答を返信する。
【0034】
移行は可能であることを示す応答が返信された場合、移行制御部161は、静音状態ST2への移行確定をSDKプラットフォーム153に通知する(S104)。SDKプラットフォーム153は、当該通知に応じ、静音状態ST2への移行確定を、起動中のSDKアプリ152へ通知する(S105)。これによって、各SDKアプリ152は、静音状態ST2への移行が確定したことを認識する。すなわち、ステップS102における問い合わせはSDKアプリ152ごとに行われるため、各SDKアプリ152は、他のSDKアプリ152について移行の可否は知り得ない。したがって、移行は可能である旨を応答したSDKアプリ152は、実際に静音状態ST2への移行が行われるのか否かを判断することができない。そこで、各SDKアプリ152に、静音状態ST2への移行確定が通知されるのである。
【0035】
続いて、SDKプラットフォーム153は、移行確定の通知に対する応答を行う(S106)。当該応答に応じて、移行制御部161は、画像形成装置10を静音状態ST2へ移行させる。
【0036】
なお、ステップS103において移行は不可能であることを示す応答が返信された場合、移行制御部161は、静音状態ST2への移行の中止をSDKプラットフォーム153に通知する。SDKプラットフォーム153は、起動中の各SDKアプリ152に対して、移行の中止を通知する。
【0037】
静音状態ST2への移行後、エンジンオフ状態充足時間の所定時間前(例えば、10秒前等)になると(すなわち、「エンジンオフ状態充足時間−所定時間」が経過すると)、事前通知部162は、エンジンオフ状態ST3への移行の事前通知をSDKプラットフォーム153に送信する(S107)。
【0038】
当該事前通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、起動中の各SDKアプリ152に関して終了処理を開始する(S108)。例えば、SDKプラットフォーム153は、各SDKアプリ152に対して終了指示を入力する。各SDKアプリ152は、終了指示に応じて、終了化処理等を実行する。終了化処理の内容は、SDKアプリ152ごとに異なりうるが、例えば、メモリ等のリソースの解放や、ログの記録等が行われた後、SDKアプリ152のスレッドが終了する。したがって、SDKアプリ152によっては、終了化処理に数秒を要するものも有りうる。
【0039】
その後、静音状態ST2へ移行してからエンジンオフ状態充足時間が経過すると(すなわち、事前通知から所定時間(例えば、10秒等)が経過すると)、移行可否確認部163は、SDKプラットフォーム153に対してエンジンオフ状態ST3への移行の可否を問い合わせる(S109)。当該問い合わせに応じ、SDKプラットフォーム153は、事前通知に応じて開始した各SDKアプリ152の終了処理を完了させた後(各SDKアプリ152終了させた後)、エンジンオフ状態ST3への移行は可能であることを示す応答を返信する(S110)。移行制御部161は、当該応答に応じ、画像形成装置10をエンジンオフ状態ST3へ移行させる。
【0040】
上述したように、第一の実施の形態の画像形成装置10では、エンジンオフ状態ST3への移行開始前(ステップS109の問い合わせ前)において、SDKプラットフォーム153に対して事前通知が行われる。したがって、SDKプラットフォーム153は、エンジンオフ状態ST3への移行開始前からSDKアプリ152の終了処理を前倒し的に開始することができる。その結果、ステップS109の問い合わせに応じて行われるステップS110の応答の時期を早めることができる。すなわち、当該問い合わせ時に全てのSDKアプリ152の終了処理が完了していれば、ステップS110の応答は直ちに行われる。また、当該問い合わせ時に一部のSDKアプリ152について終了処理が完了していなくても、応答が返信されるまでの時間は、当該一部のSDKアプリ152の終了処理の所要時間に短縮される。したがって、ステップS109の問い合わせに応じてSDKアプリ152の終了処理を開始する場合に比べて、ステップS110の応答を早めることができる。その結果、SDKアプリ152の追加(又は増加)による、省電力効果の低下を抑制することができる。
【0041】
次に、第二の実施の形態について説明する。第二の実施の形態では、第一の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第一の実施の形態と同様でよい。
【0042】
図5は、第二の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図5中、図4と同一ステップには、同一符号を付し、その説明は省略する。なお、図5では、ステップS101〜S103に関して、便宜上、図示は省略されている。
【0043】
第二の実施の形態では、エンジンオフ状態ST3への移行の可否の問い合わせ時(S109)において、少なくとも一部のSDKアプリ152に関して終了処理が完了していない場合、SDKプラットフォーム153は、移行は不可能であること(移行を拒否すること)を示す応答を直ちに返信する(S110a)。
【0044】
当該応答に応じ、移行制御部161は、エンジンオフ状態ST3への移行のキャンセル(中止)をSDKプラットフォーム153に通知する(S111)。続いて、移行制御部161は、静音状態ST2への移行確定をSDKプラットフォーム153に通知する(S112)。すなわち、エンジンオフ状態ST3への移行がキャンセルされたため、静音状態ST2の維持が通知される。当該通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、まだ終了指示を入力していないSDKアプリ152が有る場合は、終了指示の入力を中止し、当該SDKアプリ152に対して静音状態ST2への移行確定を通知する。なお、既に終了指示を入力したSDKアプリ152(終了処理が完了したSDKアプリ152も含む。)の再起動はこのタイミングでは行われない。当該SDKアプリ152の再起動は、例えば、通常状態ST1への復帰時に行われる。
【0045】
続いて、SDKプラットフォーム153は、当該通知に対する応答を返信する(S113)。その後、静音状態ST2への移行確定の通知(S112)、又は当該通知に対する応答(S113)から所定時間が経過すると、事前通知部162は、エンジンオフ状態ST3への移行の事前通知をSDKプラットフォーム153に再送信する(S114)。
【0046】
当該事前通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、SDKアプリ152の終了処理を再開する(S115)。すなわち、終了指示が入力されていないSDKアプリ152に対して終了指示が入力される。但し、当該事前通知時において、全てのSDKアプリ152の終了処理が完了していれば、ステップS115は実行されなくてよい。
【0047】
ステップS114の事前通知から所定時間が経過すると、移行可否確認部163は、SDKプラットフォーム153に対してエンジンオフ状態ST3への移行の可否を問い合わせる(S116)。当該問い合わせ時において、全てのSDKアプリ152に関して終了処理が完了していれば、SDKプラットフォーム153は、エンジンオフ状態ST3への移行は可能であることを示す応答を返信する(S117)。
【0048】
上述したように、第二の実施の形態においても、第一の実施の形態と同様の効果を得ることができる。なお、エンジンオフ状態ST3への移行をキャンセル(S111)されてからエンジンオフ状態ST3への移行の可否の問い合わせ(S116)が再実行されるまでの時間は、起動していた全てのSDKアプリ152の終了処理の所要時間に比べて短いのが望ましい。
【0049】
次に、第三の実施の形態について説明する。第三の実施の形態では、第一又は第二の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第一又は第二の実施の形態と同様でよい。
【0050】
図6は、第三の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図6中、図4と同一ステップには、同一符号を付し、その説明は省略する。なお、図6では、ステップS101〜S103に関して、便宜上、図示は省略されている。
【0051】
第三の実施の形態では、事前通知(S107)後であって、エンジンオフ状態ST3への移行の可否の問い合わせ(S109)前に、例えば、電源キーの押下等、通常状態ST1への復帰要因が発生した場合を想定する。
【0052】
当該復帰要因の発生に応じ、移行制御部161は、通常状態ST1への移行確定をSDKプラットフォーム153に通知する(S121)。当該通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、終了処理を行ったSDKアプリ152に関して、起動処理を実行する(S122)。SDKプラットフォーム153は、当該起動処理が完了すると、応答を返信する(S123)。
【0053】
このように、事前通知後であって、静音状態ST2の移行からエンジンオフ状態充足時間が経過する前に通常状態ST1への復帰が行われる場合であっても、前倒し的に終了されたSDKアプリ152は、自動的に再起動される。したがって、ユーザが不便を感じる可能性を低下させることができる。
【0054】
次に、第四の実施の形態について説明する。第四の実施の形態では、第二の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第二の実施の形態と同様でよい。
【0055】
図7は、第四の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図7中、図5と同一ステップには、同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0056】
図7において、「他モジュール」は、標準アプリ151等、SDKプラットフォーム153及びSDKアプリ152以外のプログラムモジュールをいう。なお、他の実施の形態において、他モジュールの存在は、便宜上省略されていただけであり、他モジュールに関しても、SDKプラットフォーム153と同様に、省電力状態の遷移に関する各種の通知は行われる。
【0057】
図7では、ステップS108が、ステップS108aに置き換わっている。ステップS108aにおいて、SDKプラットフォーム153は、起動中の各SDKアプリ152に関して終了処理を開始する。この際、SDKプラットフォーム153は、省電力対応のSDKアプリ152に関しては、終了ではなく、中断状態への移行指示を入力する。
【0058】
省電力対応のSDKアプリ152とは、エンジンオフ状態ST3においても終了が回避されるように実装されているSDKアプリ152をいう。例えば、FAXの受信機能を有するSDKアプリ152のように、エンジンオフ状態ST3において起動状態が維持される必要の有るSDKアプリ152は、省電力対応のSDKアプリ152として実装される。いずれのSDKアプリ152が省電力対応であるか否かは、例えば、SDKアプリ152のインストール時において、SDKプラットフォーム153に対して設定される。
【0059】
また、中断状態とは、省電力対応のSDKアプリ152が有する状態であり、現在実行中の処理を区切りの良い箇所で中断させ、それ以降の処理を進行させない状態をいう。したがって、中断状態のSDKアプリ12のスレッドは終了しない。
【0060】
また、図7では、ステップS110aが、ステップS110bに置き換わっている。すなわち、図7では、エンジンオフ状態ST3への移行の可否の問い合わせ時(S109)において、全てのSDKアプリ152に関して、終了処理又は中断状態への移行が完了していることとする。したがって、ステップS110bにおいて、SDKプラットフォーム153は、エンジンオフ状態ST3への移行は可能であることを示す応答を返信する。
【0061】
続いて、移行可否確認部163は、他モジュールに対しても、エンジンオフ状態ST3への移行の可否を問い合わせる(S109−2)。ここでは、少なくとも一部の他モジュールが、エンジンオフ状態ST3へ移行できない状態であるとする。例えば、印刷アプリ1512が、印刷を実行中であったり、FAXアプリ1514が、FAXの送信又はFAXの受信を実行中であったりする。そこで、当該一部の他モジュールは、移行は不可能であること(移行を拒否すること)を示す応答を返信する(S110−2)。
【0062】
すなわち、第四の実施の形態では、SDKプラットフォーム153以外の他モジュールによって、エンジンオフ状態ST3への移行が拒否される点が、第二の実施の形態と異なる点の一つである。
【0063】
いずれかの他モジュールから、移行は不可能であることを示す応答が返信されると、移行制御部161は、エンジンオフ状態ST3への移行のキャンセル(中止)を、SDKプラットフォーム153と、各他モジュールとに通知する(S111−1、S111−2)。
【0064】
続いて、移行制御部161は、静音状態ST2への移行確定をSDKプラットフォーム153に通知する(S112−1)。静音状態ST2への移行確定の通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、ステップS108aにおいて中断状態へ移行させた、省電力対応の各SDKアプリ152に関して、中断状態を解除する(S112−11)。その結果、省電力対応の各SDKアプリ152は、通常の動作状態に復帰する。続いて、SDKプラットフォーム153は、静音状態ST2への移行確定の通知に対する応答を返信する(S113−1)。
【0065】
移行制御部161は、また、静音状態ST2への移行確定を各他モジュールにも通知する(S112−2)。当該通知を受けた各他モジュールは、当該通知に対する応答を返信する(S113−2)。
【0066】
その後、静音状態ST2への移行確定の通知(S112)、又は当該通知に対する応答(S113)から所定時間が経過すると、事前通知部162は、エンジンオフ状態ST3への移行の事前通知をSDKプラットフォーム153に再送信する(S114)。
【0067】
当該事前通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、省電力対応の各SDKアプリ152に対して、中断状態への移行指示を入力する(S115a)。ここで、省電力対応でないSDKアプリ152に関して、終了処理は実行されない。省電力対応でないSDKアプリ152は、ステップS108aにおいて、既に終了しているからである。
【0068】
ステップS114の事前通知から所定時間が経過すると、移行可否確認部163は、SDKプラットフォーム153に対してエンジンオフ状態ST3への移行の可否を問い合わせる(S116−1)。当該問い合わせ時において、省エネ対応の全てのSDKアプリ152に関して中断状態への移行が完了していれば、SDKプラットフォーム153は、エンジンオフ状態ST3への移行は可能であることを示す応答を返信する(S117−1)。
【0069】
続いて、移行可否確認部163は、各他モジュールに対してエンジンオフ状態ST3への移行の可否を問い合わせる(S116−2)。各他モジュールは、エンジンオフ状態ST3への移行が可能であれば、エンジンオフ状態ST3への移行は可能であることを示す応答を返信する(S117−2)。
【0070】
なお、ステップS116−1とステップS116−2との順番は、逆であってもよいし、並列的に実行されてもよい。
【0071】
上述したように、第四の実施の形態においても、第二の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
次に、第五の実施の形態について説明する。第五の実施の形態では、第三の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第三の実施の形態と同様でよい。
【0073】
図8は、第五の実施の形態の処理手順を説明するためのシーケンス図である。図8中、図6又は図7と同一ステップには、同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0074】
第五の実施の形態では、エンジンオフ状態ST3への事前通知(S107)から所定時間が経過する前に、画像形成装置10がオフライン状態へ移行した場合について説明する。
【0075】
オフライン状態とは、例えば、操作パネル15に表示される管理者用の設定画面を介して、画像形成装置10の動作に関するパラメータの値の設定変更等が行われる状態をいう。例えば、管理者用の設定画面の表示指示に応じて、画像形成装置10はオフライン状態へ移行する。なお、オフライン状態は、図3において説明した、省電力状態に関する状態遷移とは別の観点における状態遷移に関する状態である。
【0076】
オフライン状態では、上記のようなパラメータの値の設定変更が行われるため、オフライン状態中に、エンジンオフ状態ST3への移行が行われてしまうのは好ましくない。パラメータの値の設定変更は、HDD114又はNVRAM115等への書き込み処理が発生するところ、エンジンオフ状態ST3においては、HDD114又はNVRAM115等への電力の供給が停止され、当該書き込み処理を行えなくなってしまうからである。
【0077】
そこで、画像形成装置10がオフライン状態へ移行すると、移行制御部161は、エンジンオフ状態ST3への事前通知からの所定時間の経過を計測するためのタイマの進行を停止させる。続いて、移行制御部161は、静音状態ST2への移行確定をSDKプラットフォーム153に通知する(S121a)。ここで、静音状態ST2への移行確定が通知されるのは、エンジンオフ状態ST3への移行は中止となったことをSDKプラットフォーム153に通知し、SDKプラットフォーム153及びSDKアプリ152の動作状態を、画像形成装置10の省電力状態に則したものに変更させるためである。
【0078】
すなわち、SDKプラットフォーム153及びSDKアプリ152は、エンジンオフ状態ST3への移行の事前通知を受けて、エンジンオフ状態ST3に対応した動作状態へ移行している。仮に、静音状態ST2への移行確定が通知されなければ、SDKプラットフォーム153及びSDKアプリ152は、画像形成装置10は静音状態ST2であるにも拘わらず、エンジンオフ状態ST3に対応した動作状態を維持し、その機能を発揮することができないからである。
【0079】
静音状態ST2への移行確定の通知に応じ、SDKプラットフォーム153は、ステップS108aにおいて中断状態へ移行させた、省電力対応の各SDKアプリ152に関して、中断状態を解除する(S122a)。SDKプラットフォーム153は、中断状態の解除が完了すると、応答を返信する(S123)。
【0080】
このように、事前通知後であって、静音状態ST2の移行からエンジンオフ状態充足時間が経過する前に、オフライン状態へ移行した場合であっても、前倒し的に中断状態とされた省電力対応のSDKアプリ152の中断状態は、自動的に解除される。したがって、ユーザが不便を感じる可能性を低下させることができる。
【0081】
なお、上記各実施の形態は、省電力状態を有する機器であれば、例えば、プロジェクタ、スマートフォン、携帯電話、又はデジタルカメラ等、画像形成装置10以外の機器に適用可能である。
【0082】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 画像形成装置
11 コントローラ
12 スキャナ
13 プリンタ
14 モデム
15 操作パネル
16 ネットワークインタフェース
17 SDカードスロット
80 SDカード
111 CPU
112 RAM
113 ROM
114 HDD
115 NVRAM
151 標準アプリ
152 SDKアプリ
153 SDKプラットフォーム
154 コントロールサービス
155 OS
161 移行制御部
162 事前通知部
163 移行可否確認部
1511 スキャンアプリ
1512 印刷アプリ
1513 コピーアプリ
1514 FAXアプリ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2007−152824号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムをインストール可能な機器であって、
省電力状態への移行開始時期より前に、前記プログラムに対する省電力状態への移行通知を行う事前通知手段と、
前記移行開始時期に、前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる確認手段とを有し
前記確認手段によって問い合わせが行われた前記プログラムに関して省電力状態への移行が可能である場合に、省電力状態へ移行する機器。
【請求項2】
前記機器は、相互に省電力の程度の異なる第一の省電力状態と第二の省電力状態とを含む複数の省電力状態を有し、
前記事前通知手段は、前記第一の省電力状態への移行時から第一の所定時間経過後に、前記プログラムに対して省電力状態への移行を通知し、
前記確認手段は、前記第一の省電力状態への移行時から第二の所定時間経過後に前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる請求項1記載の機器。
【請求項3】
前記移行通知に応じ、前記プログラムの終了させる終了化手段を有する請求項1又は2記載の機器。
【請求項4】
プログラムをインストール可能な機器が、
省電力状態への移行開始時期より前に、前記プログラムに対する省電力状態への移行通知を行う事前通知手順と、
前記移行開始時期に、前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる確認手順とを実行し
前記確認手順において問い合わせが行われた前記プログラムに関して省電力状態への移行が可能である場合に、省電力状態へ移行する省電力制御方法。
【請求項5】
前記機器は、相互に省電力の程度の異なる第一の省電力状態と第二の省電力状態とを含む複数の省電力状態を有し、
前記事前通知手順は、前記第一の省電力状態への移行時から第一の所定時間経過後に、前記プログラムに対して省電力状態への移行を通知し、
前記確認手順は、前記第一の省電力状態への移行時から第二の所定時間経過後に前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる請求項4記載の省電力制御方法。
【請求項6】
前記移行通知に応じ、前記プログラムの終了させる終了化手順を前記機器が実行する請求項4又は5記載の省電力制御方法。
【請求項7】
プログラムをインストール可能な機器に、
省電力状態への移行開始時期より前に、前記プログラムに対する省電力状態への移行通知を行う事前通知手順と、
前記移行開始時期に、前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる確認手順とを実行させ
前記確認手順において問い合わせが行われた前記プログラムに関して省電力状態への移行が可能である場合に、省電力状態へ移行する省電力制御プログラム。
【請求項8】
前記機器は、相互に省電力の程度の異なる第一の省電力状態と第二の省電力状態とを含む複数の省電力状態を有し、
前記事前通知手順は、前記第一の省電力状態への移行時から第一の所定時間経過後に、前記プログラムに対して省電力状態への移行を通知し、
前記確認手順は、前記第一の省電力状態への移行時から第二の所定時間経過後に前記プログラムに関して省電力状態への移行の可否を問い合わせる請求項7記載の省電力制御プログラム。
【請求項9】
前記移行通知に応じ、前記プログラムの終了させる終了化手順を前記機器に実行させる請求項7又は8記載の省電力制御プログラム。
【請求項10】
請求項7乃至9いずれか一項記載の省電力制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−190438(P2012−190438A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279507(P2011−279507)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】