説明

機能部品の取付構造

【課題】 機能部品を取り付ける開口部(すなわち、取付孔)が、機能部品を取り外した後にも見栄えよく閉じられ、しかも保管が煩雑で紛失のおそれもあるキャップを不要として取扱いの容易化を図る。
【解決手段】 機能部品10を部品受体20へ着脱自在に取り付けるための構造である。機能部品10は、表面側にフック部12(機能部)が構成される基部本体11と、この基部本体11の裏面から延出する前部係止部13および後部係止部14を有している。部品受体20は、各係止部13、14が挿入される開口部22と、各係止部13、14がそれぞれ係止される前部係止受部22aと後部係止受部22bを有する。そして、部品受体20には、開口部22を開閉するカバー部材30が回動自在に装着してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自動車の室内壁面やフロントパネル上に、物掛けフックやETC車載器などの機能部が備わった機能部品を着脱自在に取り付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の機能部品の取付構造としては、例えば、特許文献1に開示されたハンガー取付構造がある。同文献1に示された取付構造は、具体的には図示しないが、機能部品であるハンガーの裏面側に設けた係止肩部を、自動車室内のセンターピラー等に穿設した取付孔の孔縁に係止する構成となっている。
【0003】
さて、機能部品を自動車室内のセンターピラー等に穿設した取付孔の孔縁に係止する構成については、特許文献1の他にも種々の提案がされていたが、機能部品を取り外した後の取付孔について課題を提起したものはなかった。すなわち、ユーザによっては機能部品が不要であり、自動車室内のセンターピラーからハンガーフック等の突起物が突き出ていることが邪魔に感じることもある。そのような場合、あえて機能部品を取り外してしまうことも可能であるが、その後に取付孔が露出していたのでは見栄えが悪い。
【0004】
そこで、機能部品を不要とするユーザ向けに、取付孔を塞ぐキャップを用意しておくこともできる。しかし、最初から機能部品を取り外して取付孔にキャップを装着すればよいが、しばらく機能部品を取り付けたままにしてあったり、取付対象となる自動車が中古車市場を経由して別のユーザにわたったりする場合には、キャップの保管が煩わしく紛失のおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−74150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みなされたもので、機能部品を取り付ける開口部(すなわち、取付孔)が、機能部品を取り外した後にも見栄えよく閉じられ、しかも保管が煩雑で紛失のおそれもあるキャップを不要として取扱いの容易化を図った機能部品取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、機能部品を部品受体へ着脱自在に取り付けるための構造であって、
前記機能部品は、表面側に機能部が構成される基部本体と、この基部本体の裏面から延出する係止部とを有し、
前記部品受体は、前記係止部が挿入される開口部と、前記係止部が係止される係止受部とを有し、
且つ、前記部品受体には、前記開口部を開閉するカバー部材が回動自在に装着してあることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、請求項1の記載を前提として、前記機能部品は、前記係止部が部品受体の係止受部に係止された状態で、前記カバー部材と当接して当該カバー部材の自由な回動を規制するカバー部材固定部を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の記載を前提として、前記カバー部材固定部は、前記カバー部材の回動中心を挟んでその両側にある部分を、それぞれ逆向きのモーメントが作用するように押圧する一対の当接部を有する構成となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項の記載を前提として、前記係止部が前記係止受部に係止された状態のとき、前記カバー部材は、一部が当該開口部から表面側に向かって露出した状態となり、
前記機能部品には、前記開口部の表面側に露出するカバー部材の一部を収納する収納部が設けてあることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項の記載を前提として、前記部品受体は、前記開口部が開いた状態となる任意角度まで回動してきた前記カバー部材に当接して、当該カバー部材の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項の記載を前提として、前記カバー部材は、両側縁から回動支軸が延出するとともに、これら回動支軸に挟まれた裏面中央部に回動受部が形成してあり、
前記部品受体には、前記開口部の両側縁から裏面側に延出して内部側壁が形成してあり、且つそれら内部側壁の端縁が底壁で連結されており、
さらに前記各内部側壁には、前記回動支軸を回動自在に支える軸受部が形成してあり、
前記底壁の内底部からは支柱が突出形成してあり、この支柱の先端で前記回動受部を支持することを特徴とする。
【0013】
上述した構成の請求項1の発明によれば、機能部品を取り外した状態において、部品受体に形成された開口部をカバー部材によって見栄えよく閉塞することができる。このカバー部材は、部品受体へ回動自在に装着されているので、部品受体と一体に管理でき紛失のおそれもない。
【0014】
請求項2の発明によれば、機能部品に、カバー部材と当接して同部材の自由な回動を規制するカバー部材固定部を形成したので、カバー部材のガタ付きを防止することができる。
【0015】
特に、請求項3の発明によれば、上記カバー部材固定部が一対の当接部を有し、これらの当接部がカバー部材の回動中心を挟んでその両側にある部分をそれぞれ逆向きのモーメントが作用するよう押圧するので、いっそう強固にガタ付きを防止することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、カバー部材の一部が開口部から露出した状態で機能部品が取り付けられているので、機能部品を取り外した際に、露出しているカバー部材の一部をすぐに押すことができ、開口部を閉塞し易い。しかも、開口部を開いた回動位置にあるカバー部材の一部が開口部から露出した状態にあっても、機能部品に設けた収納部に当該露出部分が収納されるので、外部からはカバー部材が隠れて見えず、良好な見栄えを保持することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、カバー部材が部品受体に形成した回動規制部によって任意角度以上の回動を規制されるため、機能部品の係止部を部品受体の開口部から挿入する際、カバー部材が邪魔にならず、円滑に係止部を収納して係止受部へ係止することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、部品受体の裏面側にある両側壁に形成した軸受部と、底壁の内底部から突出形成した支柱によって、カバー部材を3点支持するので、カバー部材を高い剛性をもってガタ付きなく支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、機能部品を取り外した状態において、部品受体に形成された開口部(すなわち、取付孔)をカバー部材によって見栄えよく閉塞することができる。このカバー部材は、部品受体へ回動自在に装着されているので、部品受体と一体に管理でき紛失のおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る機能部品取付構造に含まれる各部品を示す図で、(a)は機能部品を示す斜視図、(b)は部品受体を示す斜視図である。
【図2】(a)は機能部品を斜め下から見た斜視図、(b)は部品受体に装着されるカバー部材を斜め下から見た斜視図、(c)はカバー部材を取り除いた状態の部品受体を斜め上から見た斜視図、(d)は同じ状態の部品受体を斜め下から見た斜視図である。
【図3】部品受体に機能部品を取り付ける手順を示す正面断面図である。
【図4】(a)は図1に示した部品受体に機能部品を取り付けた状態を斜め上から見た斜視図、(b)は同じ状態を斜め下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図1〜図4面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る機能部品取付構造は、図1(a)に示す機能部品10と、同図(b)に示す部品受体20とで構成される。いずれの部品も金型を用いた樹脂成形品である。
機能部品10は、基部本体11の表面側に機能部が構成されている。本実施形態では、部品を引っ掛け吊しておくフック部12が、機能部として表面側に形成されている。
【0022】
また、基部本体11の裏面からは、図1(a)、図2(a)に示すように、前端部近傍には前部係止部13が、また後端部からは後部係止部14がそれぞれ延出している。このうち、前部係止部13は、円弧状に湾曲してその先端が基部本体11の前端よりも前方に配置された弾性押圧部13aと、この弾性押圧部13aと対向して基部本体11の裏面から鉛直方向に延出する前端当接部13bとで構成されている。ここで、前部係止部13の根元部分と基部本体11との接続部も角形状とせず、小さな湾曲(角R)を付けて応力が集中しないように配慮することが好ましい。
【0023】
後部係止部14は、図3に示すように、基部本体11の裏面からほぼ鉛直方向へ延出しており、外側面に係止爪14aが形成されている。また、後部係止部14には解除ボタン15が連続して一体に形成してあり、この解除ボタン15は基部本体11の表面側へ露出する位置に配置されている。この解除ボタン15を押圧すると、後部係止部14が弾力的に撓んで係止爪14aが内側へ移動する。
【0024】
部品受体20は、図1(b)、図2(c)(d)に示すように、平板状の基部21の中央部分に矩形状の開口部が形成してある。この開口部22の両側縁から裏面側には内部側壁23が対向して延出しており、且つこれら各内部側壁23の先端縁を連結するように底壁24が形成してある。この底壁24の内底面中央部からは、開口部22へ向かって支柱25が突出形成してあり、さらに各内部側壁23において支柱25と対向する部位には、底壁24と繋がる端縁から開口部22に向かって切欠き23aが形成してある。また、底壁24の内底面からは開口部22へ向かって補強壁26が立設してある。補強壁26の両側端は内部側壁23に連結しており、この補強壁26によって、底壁24および内部側壁23の剛性が高められている。
【0025】
ここで、支柱25、補強壁26および切欠き23aはそれぞれ同じ方向へ延びており、したがって部品受体20を形成する金型はこれら各部の延在方向に開く一対の金型で構成することができ、金型制作費を安価に抑制することが可能である。
【0026】
図3(c)に示すように、部品受体20の開口部22から裏面側に、機能部品10に形成された前部係止部13と後部係止部14が挿入される。そして、開口部22の前端縁には前部係止受部22aが、また開口部22の後端縁には後部係止受部22bがそれぞれ形成してあり、前部係止受部22aに機能部品10の前端当接部13bが係合し、後部係止受部22bに機能部品10の後部係止部14にある係止爪14aが係止される。
【0027】
また、部品受体20には、開口部22を開閉するカバー部材30が回動自在に装着してある。カバー部材30は、図1(b)、図2(b)に示すように、開口部22に対応して矩形状の平板となっており、その両側縁の中央部からは回動中心となる回動支軸31が外方に延出している。また、これら回動支軸31に挟まれた裏面中央部には、湾曲した凹部形状の回動受部32が形成してある。
そして、部品受体20の内部側壁23に形成した切欠き23aの先端が、カバー部材30の回動支軸31を回動自在に支える軸受部を構成しており、さらに部品受体20に形成した支柱25の先端がカバー部材30の回動受部32を支持し、これによりカバー部材30は3点支持される構成となっている。
【0028】
上述したカバー部材30は、図1(b)に示すように部品受体20の開口部22を閉塞する。このとき、カバー部材30の前後端縁に形成した係止部33(図2(b)参照)が、開口部22の前後端縁にそれぞれ係合して閉塞状態が保持される。
カバー部材30は、図3(a)に示すように、図示反時計廻りに回動して部品受体20の開口部22を開放する。このとき、カバー部材30は、任意の回動角度で前端縁が部品受体20の底壁24に当接して、それ以上の回動が規制される。すなわち、部品受体20の底壁24は、カバー部材30の回動を規制する回動規制部として機能している。一方、カバー部材30は、開口部22を閉塞する位置から図3(a)の時計廻りへの回動は、補強壁26によって規制されている。
【0029】
図3(a)に示すように、カバー部材30が回動して開口部22を開いているときは、カバー部材30の後部領域は部品受体20の表面側に露出している。この状態で、機能部品10の前部係止部13に形成した弾性押圧部13aを開口部22から挿入するとともに、前端当接部13bを部品受体20の前部係止受部22aに当接させる。
次いで、図3(b)乃至(c)に示すように、機能部品10の後部係止部14にある係止爪14aを部品受体20の後部係止受部22bに係止させる。このとき、弾性押圧部13aは弾力的に撓み、その弾性力が機能部品10の基部本体11を部品受体20に密接させるように作用する。このようにして部品受体20に機能部品10が取り付けられる。
図4は、部品受体20に機能部品10を取り付けた状態の外観を示している。
【0030】
ここで、機能部品10には、表面側に突き出したフック部12の内部に中空の収納部16が形成してあり、この収納部16にカバー部材30の表面側に露出した後部領域が収納される(図3(c)参照)。したがって、外部からはカバー部材30が隠れて見えず、良好な見栄えを保持することができる。
【0031】
また、機能部品10には、弾性押圧部13aの中間部位に前部当接部17aが、さらに収納部の入口付近には後部当接部17bがそれぞれ設けてある。これら各当接部17a、17bは、カバー部材30の回動中心を挟んでその前部領域と後部領域とに当接し、各領域をそれぞれ逆向きのモーメントが作用するように押圧する。これら前部当接部17aと後部当接部17bは、機能部品10を取り付けた状態でのカバー部材30の自由な回動を規制するカバー部材固定部を構成している。また、カバー部材30は、弾力性のある樹脂成形品であり、前部領域と後部領域とに逆向きのモーメントを受けて弾力的に撓むので、組立誤差等があってもカバー部材30に各当接部17a、17bが当接して同部材30のガタ付きが防止される。また、一方の当接部(本実施形態では、前部当接部17a)が、弾力性のある弾性押圧部13aに形成してあるので、この弾性押圧部13aの撓みによっても組立誤差等を吸収して各当接部17a、17bがカバー部材30に当接し、ガタ付きを抑えることができる。
【0032】
機能部品10を部品受体20から取り外すときは、解除ボタン15を押圧して後部係止部14を弾性的に撓ませ、係止爪14aと後部係止受部22bとの間の係止状態を解除すればよい。
【0033】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、機能部品の表面側に構成される機能部は、フック部12に限らず、自動車のフロントパネル上に搭載される小物入れ、芳香剤収納容器、ETC車載器、ポータブルカーナビゲーション機器、レーザー探知機などであってもよい。これらの機能部は、基部本体と一体形成されていなくともよく、両面テープや接着剤、面ファスナー等で基部本体と結合する構成であってもよい。
また、カバー部材を備えた部品受体は、上述した実施形態のごとく独立部品でなく、自動車のピラーやフロントパネル等と一体に構成することも可能である。
勿論、機能部品は、上下方向の配置に限らず、水平配置することもできる。
【符号の説明】
【0034】
10:機能部品、11:基部本体、12:フック部、13:前部係止部、13a:弾性押圧部、13b:前端当接部、14:後部係止部、14a:係止爪、15:解除ボタン、16:収納部、17a:前部当接部、17b:後部当接部、
20:部品受体、21:基部、22:開口部、22a:前部係止受部、22b:後部係止受部、23:内部側壁、23a:切欠き、24:底壁、25:支柱、26:補強壁、
30:カバー部材、31:回動支軸、32:回動受部、33:係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能部品を部品受体へ着脱自在に取り付けるための構造であって、
前記機能部品は、表面側に機能部が構成される基部本体と、この基部本体の裏面から延出する係止部とを有し、
前記部品受体は、前記係止部が挿入される開口部と、前記係止部が係止される係止受部とを有し、
且つ、前記部品受体には、前記開口部を開閉するカバー部材が回動自在に装着してあることを特徴とする機能部品取付構造。
【請求項2】
前記機能部品は、前記係止部が部品受体の係止受部に係止された状態で、前記カバー部材と当接して当該カバー部材の自由な回動を規制するカバー部材固定部を有することを特徴とする請求項1の機能部品取付構造。
【請求項3】
前記カバー部材固定部は、前記カバー部材の回動中心を挟んでその両側にある部分を、それぞれ逆向きのモーメントが作用するように押圧する一対の当接部を有する構成となっていることを特徴とする請求項2の機能部品取付構造。
【請求項4】
前記係止部が前記係止受部に係止された状態のとき、前記カバー部材は、一部が当該開口部から表面側に向かって露出した状態となり、
前記機能部品には、前記開口部の表面側に露出するカバー部材の一部を収納する収納部が設けてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の機能部品取付構造。
【請求項5】
前記部品受体は、前記開口部が開いた状態となる任意角度まで回動してきた前記カバー部材に当接して、当該カバー部材の回動を規制する回動規制部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の機能部品取付構造。
【請求項6】
前記カバー部材は、両側縁から回動支軸が延出するとともに、これら回動支軸に挟まれた裏面中央部に回動受部が形成してあり、
前記部品受体には、前記開口部の両側縁から裏面側に延出して内部側壁が形成してあり、且つそれら内部側壁の端縁が底壁で連結されており、
さらに前記各内部側壁には、前記回動支軸を回動自在に支える軸受部が形成してあり、
前記底壁の内底部からは支柱が突出形成してあり、この支柱の先端で前記回動受部を支持することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の機能部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−2051(P2011−2051A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146303(P2009−146303)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】