説明

櫛型微小電極と導電性ポリマーとを有する電気化学的センサ

本発明は、一般に電子デバイスおよび方法に関する。ある場合において、本発明は導電性ポリマー材料(70)で覆われた、櫛型微小電極(60)の一対を備えるセンサデバイスを提供する。櫛型微小電極(60)は、第1電極(22)、第2電極(40)、および疎水性の壁(50)で囲まれることができる。ある実施形態において、第1電極(22)と第2電極(40)とは相補的形状を有する。例えば、ある場合には、第1電極(22)および第2電極(40)はそれぞれ実質的に環状構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電子デバイス、および重合法と検出法とを含む関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
側鎖および/または主鎖を官能化したポリチオフェンのような導電性ポリマーを含む、有機伝導性材料を用いた電子デバイスが研究されてきた。ある場合には、そのようなデバイスは、センサに採用されてきた。例えば、先行研究には、電極と接触して配置した伝導性ポリマーの酸化状態を変えることによって、2組の櫛型電極間のドレイン電流を変調することが含まれる。ターゲット検体の溶液に暴露したときに、電流測定において抵抗率の違いに基づく応答が観測された。
【0003】
そのようなセンサの作製は、モノマー種の電解重合によって有機伝導性材料を電極上に堆積し、伝導性ポリマー膜を形成することをしばしば含む。しかし、電解重合および/または検出に関する既知の手法は、大きな表面積のみならず、多量のモノマーおよび/または検体の溶液がしばしば必要なことから、コストの増加を招きかねず、新しいセンサ材料を開発する上で課題であった。さらに、データの再現性は、困難であり、異なる実験装置に使われる電気化学セルの構成に大きく左右された。
【0004】
従って、改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも2つの櫛型微小電極であって、該櫛型微小電極の各々は導電性ポリマー材料と接触しており、導電性ポリマー材料は該少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する、櫛型微小電極と、該少なくとも2つの櫛型微小電極を本質的に完全に取り囲む第1電極と、該第1電極を本質的に完全に取り囲む第2電極と、該第2電極を取り囲む疎水性材料とを備える電子デバイスに関する。ある実施形態において、導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、およびそれらの有機および遷移金属誘導体からなる群から選択される。ある実施形態において、第1電極と第2電極とは相補的形状を有する。例えば、ある場合には、第1電極および第2電極は各々実質的に環状構造である。
【0006】
本発明は、少なくとも2つの櫛型微小電極であって、該櫛型微小電極の各々は導電性ポリマー材料と接触しており、導電性ポリマー材料は該少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する、該櫛型微小電極と、該少なくとも2つの櫛型微小電極を取り囲む疎水性材料とを備える電子デバイスにも関する。
【0007】
本発明のまた別の様態は、モノマー種を含む50μLより少ない溶液を第1電極および第2電極に接触させることであって、該モノマー種は、電位の存在下で導電性ポリマーを形成することを可能とする少なくとも2つの官能基を備える、接触させることと、該第1電極および該第2電極のうちの少なくとも一つに電位を印加することと、導電性ポリマーを形成するために該モノマー種を重合することとを備える重合法を提供する。
【0008】
本発明は、検体を含むと思われる50μLより少ない試料を、ポリマー構造を形成する導電性ポリマー材料を備える少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することであって、該ポリマー構造は導電率を有する、暴露することと、該暴露ステップの後に、該ポリマー構造の該導電率の変化を検出することにより該検体を測定することを含む、検体を測定するための方法も提供する。
【0009】
本発明は、少なくとも2つの微小電極の櫛型構造と、該櫛型構造を本質的に完全に取り囲む第1電極と、該第1電極を本質的に完全に取り囲む第2電極とを含む、電子デバイスにも関する。ある実施形態では、該電子デバイスは、該第2電極を取り囲む疎水性材料をさらに備えることができる。ある実施形態では、該第1電極と該第2電極とは相補的形状を有する。例えば、ある場合には、該第1電極および該第2電極は各々実質的に環状構造である。
【0010】
本発明は、電気的絶縁基板と、第1の導電層の第1表面が、該基板の表面の少なくとも一部を覆って接触するように、該基板の該表面上に配置された、該第1および第2の対向表面を有する該第1の導電層と、電気絶縁層の第1表面が、該第1の導電層の該第2表面の選択された部分を覆って接触し、かつ、該第1の導電層の該第2表面の他の部分を覆わないように、該第1の導電層の該第2表面上に配置され、該第1の導電層の該第2表面の他の部分は少なくとも一つの電極を形成する、該第1および第2の対向表面を有する該電気絶縁層と、第2の導電層の第1表面が、該電気絶縁層の選択された部分を覆って接触し、かつ、該電気絶縁層の該第2表面の他の部分を覆わないように、該電気絶縁層の該第2表面上に配置された該第1および第2の対向表面を有する導電層であって、該導電層は櫛型微小電極アレイを備える少なくとも2つの電極を形成する該第2の導電層とを備える電子デバイスにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの上面図を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの断面図を示す。
【図2】図2は、4つの別個の電子デバイスを有するチップの上面図を示す。
【図3】図3は、各々の電子センサが直径が3mmの疎水性領域内に4マイクロリットルの試料体積を閉じ込めることができる、4つの個別の電子センサを含む作製チップの写真を示す。
【図4A】図4Aは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの作製における様々なステップの断面図を示す。
【図4B】図4Bは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの作製における様々なステップの断面図を示す。
【図4C】図4Cは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの作製における様々なステップの断面図を示す。
【図4D】図4Dは、本発明の一実施形態による、電子デバイスの作製における様々なステップの断面図を示す。
【図5】図5は、本発明の一実施形態による電子デバイスを用いて電位を印加したときの、0.1M nBuNPFおよび炭酸プロピレン中における5マイクロリットルのフェロセン一滴のサイクリックボルタモグラムを示す。
【図6】図6は、本発明の一実施形態による電子デバイスを用いて電位を印加したときの、0.1M nBuNPFおよび炭酸プロピレン中における5マイクロリットルのビチオフェン10mM溶液一滴のサイクリックボルタモグラムを示す。矢印は、時間とともにビチオフェンの電解重合が進むことを示唆する。
【図7】図7は、本発明の一実施形態による電子デバイスに、0.1M nBuNPFおよび炭酸プロピレン中における5マイクロリットルのビチオフェン溶液一滴を適用して調製したポリ(ビチオフェン)のサイクリックボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、一般的に電子デバイスおよび方法に関する。ある場合には、本発明のデバイスは、(例えば、50マイクロリットルより小さい)小体積の試料に適合するように作成することができる。本発明のデバイスは、例えば、電荷の対称的な拡散、またはより均一な電界の形成を容易にすることにより、性能が向上するように構成できる。ある場合には、本発明は、簡略化された構成をもつデバイスを提供する。ある場合には、本発明のデバイスは、例えば、検出の素子および方法に有機材料を採用することができる。本発明の他の方法は、重合法に関する。本発明の一利点は、例えば、より複雑なマイクロ流体素子を必要としない簡易な電子デバイスを用いて少量(例えば、体積)の試料に対応できる能力を含む。
【0013】
本発明の電子デバイスは、デバイス性能を最適化するように構成された、有機材料および/または他の材料ないし化合物のような、様々な他の構成要素との組み合わせにおける、電極(例えば、作用電極)の使用を含むことができる。例えば、本発明のデバイスは、小体積の試料を用いることを容易にするように選択かつ配置された構成要素を備えることができる。ある場合には、本発明のデバイスは、例えば、より効率的な電極間の拡散を可能にすることによってデバイス性能を向上させ得る、お互いと関連する独特の形状および配置を有する電極を備えることができる。
【0014】
ある実施形態において、本発明は、電極のような、様々な構成要素の対称的な構成を含むことができる。多くの電気化学プロセスは拡散により支配されるため、いくつかの電極の対称的な配置は、デバイス内における電気活性種の対称的な拡散を容易にし、デバイス性能の向上をもたらす。ある場合には、本発明の電子デバイスは、少なくとも2つの作用電極(例えば、陰極、陽極)を備えることができ、第1電極は本質的に完全に櫛型構造を取り囲み、第2電極は本質的に完全に第1電極を取り囲む。ある場合には、第1電極と第2電極とは相補的形状を有する。例えば、ある場合には、第1電極および第2電極は各々実質的に環状構造である。正方形、長方形、楕円形、三角形などのような他の電極形状も同様に可能である。
【0015】
本明細書では、用語「本質的に完全に取り囲む」は、対象物を囲む閉じた境界線の形成のことを指し、対象物は、必ずしも3次元的に囲まれなくても、上から、すなわち、対象物および境界線を同一平面に投影するように見たときに、少なくとも境界線により囲まれていればよい。例えば、図1Aは電子デバイスの上面図を示し、電極22および電極40は、電極60を取り囲む同心の環状構造を成す。ある場合には、電極の各々は、同じ物理面内に位置してもよい。他の場合には、電極の各々は、別の平行な物理面内に位置することもでき、用語「本質的に完全に取り囲む」は、単一平面に投影したときの電極の相対位置を指す。例えば、図1Aに示すように、電極22は第1面に位置することができ、第2電極40は第2面に位置することができ、第1面は第2面に平行で下方にある。しかし、電極40は電極22を「本質的に完全に取り囲む」。なぜなら、単一平面に投影したとき、電極40は電極22のまわりに閉じた境界線を形成しているからである。
【0016】
ある場合には、電極はほぼ同じ物理面に配置できること、すなわち、平行面間の間隔は外側電極(例えば、図1Aの電極40)の寸法に比べて小さくできることが好ましい。説明に役立つ実施形態として、直径をもつ環状外側電極は、内側電極とは別の平行面に配置することができ、平行面間の間隔と外側電極の直径との比率は、1:10、1:100、1:250、1:500、1:1000、1:2500、1:5000、1:10000、またはより大きい。
【0017】
ある場合には、作用電極は、少なくとも2つの微小電極からなる櫛型構造とすることができる。櫛型微小電極の構成は、速い応答、低いインピーダンスを提供するため、例えば、定電圧の大きな電流変化によるインピーダンス変化の容易な検出が可能になる。本明細書では、用語「櫛型電極」または「櫛型微小電極」は、少なくとも2つの相補的形状の電極を示し、各々の電極の「ブランチ」または「フィンガー」は、交互に並ぶ形態で配置される。例えば、図1Aに示すように、櫛型電極60は、互いに対して交互に並ぶ形態で配置された彎曲「ブランチ」を含む。他の電極形状も、櫛型電極として用いるのに適し得ることを理解すべきである。例えば、櫛形電極の一対を用いることができ、各電極の「フィンガー」は交互に並ぶ形態で配置される。ある場合には、本発明のデバイスにおける作用電極として櫛型電極の一対を用いることができる。
【0018】
本発明のデバイスは、デバイスの特定領域内に流体試料(例えば、液滴)を閉じ込めるように選択かつ構成された材料をさらに備えることができる。該材料は、電気活性な構成要素を備える領域を囲むように構成でき、当該領域に特定の種類の流体試料を閉じ込めるように選択することができる。例えば、水溶液、有機溶液、またはそれらの混合液のような親水性溶液を備える試料を閉じ込めるために、疎水性材料を選択することができる。このことは、小体積(例えば、50マイクロリットルより少ない)の試料を用いることを可能にし、ある場合には、このサンプルを例えばマイクロピペット経由でデバイスの表面上に直接分配することができる。ある場合には、疎水性材料(例えば、テフロン(登録商標))は、90度より大きい、または120度より大きい水の接触角を有することができ、電気活性な構成要素を備える領域は、水の接触角が例えば90度より小さい親水性表面とすることができる。疎水性材料の例は、テフロン(登録商標)のようなペルフルオロカーボン系材料を含む。当業者は、特定の試料を閉じ込めるために使用できる然るべき材料を選択できるであろう。
【0019】
説明に有用な図1Aに示す実施形態において、デバイス100は、櫛型電極60の一組、および櫛型電極60を本質的に完全に取り囲む電極22を備える。第2電極40は、電極22を本質的に完全に取り囲む。図1Aに示すように、疎水性材料50は、流体試料がデバイスの電気活性な構成要素に接触することができるように電極構造を囲む。ある場合には、本発明のいくつかの電極が連続構造にできること、すなわちリード線の余地を与えるスペースが電極形状を遮断しないことも利点となり得る。
【0020】
ある実施形態において、本発明のデバイスは、少なくとも2つの櫛型微小電極と接触した導電性ポリマー材料も備えることもでき、導電性ポリマー材料は、少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する。典型的には、導電性ポリマー材料は、別個の伝導経路からなる広く絡み合った配列を備えることができ、各別個の経路はポリマー鎖またはポリマー鎖からなるナノスケールの凝集体によって提供される。ある場合には、以下により詳細に記載するように、導電性ポリマー材料は、検出材料として用いることができる。図1Bは、櫛型電極60(例えば、作用電極)と接触する膜として形成した導電性ポリマー材料70を示す。
【0021】
ある実施形態において、本発明は、デバイスの様々な部分を区別なく覆うより、むしろ有機材料のような材料でデバイスの部分を選択的に覆う能力を提供する。一実施形態において、導電性ポリマー材料の膜は、例えば、参照電極、対極、絶縁材料を備える様々な部分またはデバイスの他の構成要素上ではなく、作用電極の表面上に選択的に形成することができる。
【0022】
一実施形態において、本発明の電子デバイスは、少なくとも2つの櫛型微小電極であって、該櫛型微小電極の各々は導電性ポリマー材料と接触しており、導電性ポリマー材料は該少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する、該櫛型微小電極、および該少なくとも2つの櫛型微小電極を取り囲む疎水性材料を備えることができる。
【0023】
本発明のまた別の利点は、電極の層状または「サンドイッチ」構造を用いることを含む。例えば、構造は、積層構成に配置された様々な電極材料層、絶縁層、または他の層を備えることができ、これらの層は互いに接触している。一実施形態において、絶縁層は、2つの電極層間にこれらと接触して配置することができ、その結果、より均一な電界をつくり出すことができる。ある場合には、いくつかの層は、上部層の開口部を通して下部層の領域が露出できるように、様々なリソグラフィー法を用いてパターンを形成することができる。一実施形態において、電極は、電極材料層上に配置した絶縁層中の開口部を通して露出される電極材料層の領域によって画定することができる。このような配置は、有利なことに、実質的に環状の電極のような、連続した形状の電極形成を可能にする。
【0024】
一実施形態において、本デバイスは、電気的絶縁基板、および第1の導電層の第1表面が該基板の表面の少なくとも一部を覆って接触するように該基板表面上に配置された、該第1および第2の対向表面を有する該第1の導電層を備えることができる。本デバイスは、電気絶縁層の第1表面が該第1の導電層の該第2表面の選択された部分を覆って接触し、該第1の導電層の該第2表面の他の部分は覆わないように、該第1の導電層の該第2表面上に配置され、該第1の導電層の該第2表面の他の部分は少なくとも一つの電極を成す、該第1および第2の対向表面を有する該電気絶縁層をさらに備えることができる。本デバイスは、第2導電層の第1表面が該電気絶縁層の選択された部分を覆って接触し、該電気絶縁層の該第2表面の他の部分は覆わないように、該電気絶縁層の第2表面上に配置された該第1および第2の対向表面を有する第2の導電層であって、該導電層は櫛型微小電極アレイを備える少なくとも2つの電極を成す、該第2の導電層をさらに備えることができる。
【0025】
説明に有用な図1Bに示す実施形態において、導電層20は、基板10の表面の少なくとも一部と接触するように、基板10の表面上に配置される。電気絶縁層30は、導電層20の選択された部分を覆って接触し、導電層20の他の部分は覆わないように、導電層20の上に配置される。例えば、電気絶縁層30は、部分22が、参照電極または対極のような、少なくとも一つの電極を形成するように、導電層20の部分22は覆わない。導電層42は、導電性の構成要素60(例えば、櫛型電極)であって、該構成要素60は、導電層60が櫛型微小電極アレイを備える少なくとも2つの電極を成すように、電気絶縁層30の選択された部分の上に配置することができ、かつ電気絶縁層30の他の部分は覆わない構成要素60を備えることができる。導電層42は電極40も備えることができ、これを参照電極または対極とすることができる。本デバイスは、ここに記載するように、疎水性材料50も備えることができる。本デバイスは、ここに記載するように、任意的に伝導性ポリマー材料70を備えることができる。電気絶縁層30および/または導電層42にパターンを形成するために、簡単なリソグラフィー法を用いることができる。デバイスの上面図は図1Aにも示される。この配置では、作用電極(例えば、櫛型電極)を本質的に完全に取り囲む参照電極および/または対極のような電極を形成できる能力の故に、より均一な電気膜を形成することができる。例えば、生成する電界および電荷の拡散を、これまでのシステムに比べてより対称にすることができる。
【0026】
そのようなデバイスの作製法は、化学気相堆積(例えば、プラズマ化学気相堆積)、リソグラフィー(例えば、フォトリソグラフィー)などの使用を含むことができる。例えば、図4A〜Dは、ここに記載する層状構造を有する電子デバイスの作製における様々なステップの断面図を示す。図4Aに示すように、基板10の表面上に形成された導電層20、導電層20の表面上に形成された絶縁層32、および絶縁層32の表面上に形成された導電層42を備える層状構造を形成することができる。導電層42は、環状電極40および櫛型電極60を形成するために、例えば、フォトリソグラフィーによりパターンを形成することができる(図4B)。絶縁層32も同様に、下部にある導電層20の環状の部分22を露出させるためにパターンを形成することができ、部分22は電極としての機能を果たす(図4B)。図4Dに示すように、疎水性材料50は、デバイスの電気活性な要素を備える領域を画定する電極構成の周囲に形成することができる。
【0027】
ある実施形態において、本発明のデバイスは、ここに記載するように、単一デバイス内に多数の電極構成を備えることができる。例えば、図2では、デバイス500は、構造100、102、104、106が示すように、4つの個別の電極構造を備え、各々の電極構造は、作用電極、対極および参照電極、伝導性ポリマー材料、または流体試料を閉じ込めるための材料を任意的に備えることができる。本構造は、疎水性表面400上に配置することができる。コンタクト200、202、204、206、300、301、302、303、304、305、306および307は、電極のための様々な電気接点を提供する。理解すべきこととして、本発明のデバイスは、特定の応用に合わせて所望される、任意の数の電極構造を単一デバイスの上の備えることができる。
【0028】
ある場合には、本発明のデバイスは、50マイクロリットルより小さい体積を有する試
料サイズに対応できて有利である。ある場合には、本デバイスは、0.1〜50マイクロリットル、または、より好ましくは1〜10マイクロリットル、または、より好ましくは1〜5マイクロリットルの体積を有する試料サイズに対応することができる。理解すべきこととして、50マイクロリットルより大きい体積を有する試料も本発明の範囲内で用いることができる。ある場合に、試料の体積が特に小さければ(例えば、0.1マイクロリットル)、試料の蒸発を防ぐために任意的に一つの材料と組み合わせることができる。例えば、水性、有機、またはそれらの組み合わせの試料を「カバー」するために、油を混合または使用することができる。試料(例えば、液滴)は、マイクロピペットまたは他の方法によりデバイスに供給することができる。
【0029】
本発明のまた別の様態は、重合法を提供する。一実施形態において、本方法は、モノマー種を含む50マイクロリットルより少ない溶液を第1電極および第2電極と接触させることを備え、該モノマー種は、電位の存在下で、導電性ポリマーを形成することを可能にする少なくとも2つの官能基を備える。第1電極および第2電極の少なくとも一つに電位を印加し、モノマー種を重合すると、次に導電性ポリマーが形成される。ある場合には、導電性ポリマーは、膜として電極の表面上に堆積することができる。ある場合には、導電性ポリマーは、溶液中に留まってもよい。他の場合には、導電性ポリマーは、最初に電極の表面上に堆積され、次に溶液に溶かされてもよい。
【0030】
一実施形態において、重合は、電解重合、すなわち、確定した電気化学電位の印加により生じる。この電位において、モノマーは、還元または酸化(すなわち、電気化学的な酸化還元反応)によるラジカル生成を経験し、ラジカルは再結合してオリゴマーを生成し、次にオリゴマーは還元または酸化される結果、他のオリゴマーまたはモノマーラジカルと結合することができる。他の実施形態において、モノマーは、重合の第1部位および重合の第2部位を備えることができ、該第1部位が電気化学的な酸化還元反応を生じる第1の電気化学電位をモノマーに印加することにより、逐次重合を進めることができる。第1の電気化学電位は、重合の第2部位における酸化または還元反応を開始するには不十分なこともある。第1の重合を終えると、次に第2部位における還元または酸化反応を生じるのに十分大きい電気化学電位をモノマーに印加することができる。この重合に関する他の例は、Marsella et al.,J.Am.Chem.Soc.,Vol.116,p.9346−8(1994)およびMarsella et al.,J.Am.Chem.Soc.,Vol.117,p.9832−9841(1995)に見られ、これらの各々は参照によりその全体がここに組み込まれる。
【0031】
本発明に用いるのに適するモノマー種の例は、ピロール、アニリン、チオフェン、ビチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、およびそれらの置換誘導体を含む。
【0032】
ここに記載する重合法は、当業者に知られるような、様々な電解質の存在下で実施することができる。本明細書では、「電解質」は、当分野における通常の意味をもち、導電性媒質として機能できる物質に適用される。電解質は、正または負イオンのいずれか、または両方を2つの電極間で輸送できる任意の材料を備え、化学的に電極と両立できるものでなければならない。電解質の例は、[(n−Bu)N]PFである。
【0033】
溶剤、電気化学電位などのような、他の電解重合条件は、例えば、Kittlesen,et al.,J.Am.Chem.Soc.1984,106,7389;S.S.Zhu,T.M.Swager,Adv.Mater.1996,8,497;S.S.Zhu,T.M.Swager,J.Am.Chem.Soc.1996,118,8713;S.S.Zhu,T.M.Swager,J.Am.Chem.Soc.1997,119,12568;P.L.Vidal,M.Billon,B.Divisia−Blohorn,G.Bidan,J.M.Kern,J.P.Sauvage,Chem.Commun.1998,629に記載されており、これらの各々は参照によりその全体がここに取り込まれる。
【0034】
本発明は、検体を測定するための方法も提供する。本明細書では、用語「測定すること」は、種または信号の、例えば、定量的または定性的な分析、および/または種または信号の存在または不在の検知に適用される。「測定すること」は、2つまたはそれ以上の種または信号間の相互作用の、例えば、定量的または定性的な、分析、および/または相互作用の存在または不在の検知に適用される。例えば、50μLより小さい体積を有し、検体を含むと思われる試料を、ここに記載するようなポリマー構造を備える少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することができる。検体は、ポリマー構造と相互作用してポリマー構造の導電率を変化させることができ、延いては導電率の変化から検体を測定することができる。
【0035】
ある実施形態において、検体とポリマー構造間の相互作用は、共有結合(例えば、炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−シリコン、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素または他の共有結合)、およびイオン結合、水素結合(例えば、ヒドロキシル、アミン、カルボキシル、チオールおよび/または、例えば、同様の官能基の間)、配位結合(例えば、金属イオンと単座または多座配位子間の錯体形成またはキレート化)などの結合の形成を備えることができる。相互作用は、Van der Waals力を備えてもよい。一実施形態において、相互作用は、検体との共有結合の形成を備える。ポリマー構造は、生体分子のペア間の結合事象を介して検体と相互作用することもできる。例えば、ポリマー構造は、ターゲット検体上における、アビジンまたはストレプトアビジンのような、相補的な実体に特異的に結合するビオチンのような、実体を備えることができる。
【0036】
検体は、化学的または生物学的な検体であってもよい。用語「検体」は、分析されるべき任意の化学的、生化学的、または生物学的な実体(例えば、分子)に適用することができる。ある場合には、ポリマー構造は、検体に対して高い特異性を有するように選択することができ、例えば、化学的、生物学的、または爆発物センサとすることができる。ある実施形態において、検体は、ポリマー構造の少なくとも一部と相互作用することができる官能基を備える。例えば、官能基は、共有結合のような結合の形成により、この品物の外層と相互作用することができる。ある場合には、ポリマー構造は、pH、湿度、温度などを測定することができる。
【0037】
ここに記載する方法により、本発明のデバイスは、電気化学的な電流測定または導電率測定のセンサのような、センサとして用いることができる。本デバイスは、導電率測定または他の電気化学的測定を行うために用いることができる。他に可能な応用は、例えば、デバイスの表面に堆積した伝導性ポリマー膜の特性評価および応用に対応するための電気化学的電池としての利用を含む。ある場合には、本発明のデバイスは、再使用が可能である。例えば、検出デバイスでは、デバイスが再生および/または再使用できる能力は、デバイスに対するターゲット検体の結合定数で決まることもある。結合したとき、熱または溶剤を適用することにより検体を取り除くことができる。ある場合には、デバイスはオートクレーブ処理することができる。他の実施形態においては、デバイスは使い捨て式である。
【0038】
導電性ポリマーは、ポリマーの主鎖に沿って電子濃度を伝導できる任意のポリマーとすることができる。本明細書では、「導電性ポリマー」または「伝導性ポリマー」は、電子の電荷を伝導することができる共役π主鎖を有する任意のポリマーに適用される。一般に、共役に直接関与する原子は本質的に面を形成するが、この面はπ軌道の重なりが最大になるようにπ軌道が優先配置することから生じ、それ故に共役および電子伝導を最大にすることができる。ある実施形態において、電子の非局在化は隣接したポリマー分子にまで及ぶことができる。ある場合には、伝導性ポリマーの少なくとも一部は、多座配位子を備える。ある場合には、伝導性ポリマーの一部に結合した金属をさらに備える。ある例では、伝導性ポリマーは、遷移金属、金属原子、ランタニド、またはアクチニドのような、金属原子を備えることができる。
【0039】
ある場合には、伝導性ポリマーの少なくとも一部は、検体に対する結合部位として機能する官能基を備えることができる。結合部位は、媒質中、例えば、溶液中のまた別の生物学的または化学的分子と結合可能な生物学的または化学的分子を含むことができる。例えば、結合部位は、チオール、アルデヒド、エステル、カルボン酸、ヒドロキシルなどのような、官能基とすることができ、官能基は検体と結合を形成する。ある場合には、結合部位は、ポリマー内における電子が豊富な、または電子が不足する部分とすることができ、検体と伝導性ポリマーとの間の相互作用は静電相互作用を備える。
【0040】
結合部位は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む生体分子のペア間に生じる相互作用により、生物学的に検体と結合することもできる。具体的な例は、抗体/ペプチドペア、抗体/抗原ペア、抗体フラグメント/抗原ペア、抗体/抗原フラグメントペア、抗体フラグメント/抗原フラグメントペア、抗体/ハプテンペア、酵素/基質ペア、酵素/インヒビターペア、酵素/補因子ペア、タンパク質/基質ペア、核酸/核酸ペア、タンパク質/核酸ペア、ぺプチド/ペプチドペア、タンパク質/タンパク質ペア、小分子/タンパク質ペア、グルタチオン/GSTペア、抗GFP/GFP融合タンパク質ペア、Myc/Maxペア、マルトース/マルトース結合タンパク質ペア、炭水化物/タンパク質ペア、炭水化物誘導体/タンパク質ペア、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレートペア、ペプチド/NTAペア、レクチン/炭水化物ペア、レセプター/ホルモンペア、レセプター/エフェクターペア、相補的核酸/核酸ペア、リガンド/細胞表面レセプターペア、ウイルス/リガンドペア、Protein A/抗体ペア、Protein G/抗体ペア、Protein L/抗体ペア、Fcレセプター/抗体ペア、ビオチン/アビジンペア、ビオチン/ストレプトアビジンペア、薬/ターゲットペア、ジンクフィンガー/核酸ペア、小分子/ペプチドペア、小分子/タンパク質ペア、小分子/ターゲットペア、マルトース/MBP(マルトース結合タンパク質)のような炭水化物/タンパク質ペア、小分子/ターゲットペア、または金属イオン/キレート剤ペア、を含む。ある場合には、本発明のデバイスおよび関連する方法は、創薬、特定化合物の単離または精製、あるいは高スループット・スクリーニング技術に利用することができる。
【0041】
導電性ポリマーの例は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、共役ラダーポリマー(すなわち、鎖の切断に少なくとも2つの結合の切断が必要なポリマー)、ポリイプチセン、ポリトリフェニレン、それらの置換誘導体、およびそれらの遷移金属誘導体を含むが、これらには限定されない。ある場合には、ポリチオフェンとその置換誘導体が好ましい。
【0042】
電極は、電荷を伝導できる任意の材料とすることができる。電極として用いるのに適する材料の例は、金、銀、プラチナ、またはインジウムスズ酸化物(ITO)のような金属または金属含有種を含む。ある場合には、金または銀が好ましい。電極構造は、化学気相堆積、プラズマ化学気相堆積のような、様々な堆積技術により形成することができる。ある場合には、電極構造は、100ミクロン以下、50ミクロン以下、または、より好ましくは、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、または1ミクロン以下の厚さを有することができる。
【0043】
ある場合には、絶縁材料をデバイスの活性要素(例えば、電極)間に配置することができる。絶縁材料は、電気化学電位を印加したときに電荷を伝導しない任意の材料とすることができ、電極間の直接的接触を低減または防止するために用いることができる。ある場合には、絶縁材料は、電極材料に対して化学的に不活性であるが好ましいことがある。絶縁材料として用いるのに適する材料の例は、SiNのような窒化物、酸化物、炭化物などを含むことができる。ある場合には、絶縁材料はSiNである。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態をここに記載かつ説明してきたが、当業者は、ここに記載される機能を実施する、および/または結果および/または一つまたはそれ以上の利点を得るための様々な他の手段および/または構造を容易に思い描くであろうが、かかる変更および/または修正は、本発明の範囲内と見做される。より一般的には、当業者は、ここに記載されるすべてのパラメーター、寸法、材料、および構成は、例とすべきこと、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教えを利用する具体的な一つの応用または複数の応用に依存することを容易に認識するであろう。当業者は、日常的にすぎない実験を用いて、ここに記載する発明の具体的な実施形態に対する多くの等価物を認識するであろうし、または確認できるであろう。従って、前述の実施形態は、単に例として示したものであり、添付の請求項およびその等価物の範囲内において、具体的な記載および請求内容とは異なる手法で実施することもできる。本発明は、ここに記載される個々の特徴、システム、品物、材料、キット、および/または方法に関する。加えて、2つまたはそれ以上のそのような特徴、システム、品物、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、品物、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲に含まれる。
【0045】
ここで明細書および請求項に用いる不定冠詞「一つの(a)」および「一つの(an)」は、明確に逆の指示がなければ、「少なくとも一つ」を意味すると理解すべきである。
【0046】
ここで明細書および請求項に用いる語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には接続的に存在し他の場合には離接的に存在する要素の「いずれかまたは両方」と理解すべきである。「および/または」節により具体的に指示される以外の要素も、明確に逆が指示されない限り、具体的に示される要素との関係の有無によらず、任意的に存在することができる。それ故、非限定の例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「を備える」のような非限定的言語とともに用いるとき、一実施形態では、(任意的にB以外の要素を含んで)BなしにA、また別の実施形態では、(任意的にA以外の要素を含んで)AなしにB、さらに別の実施形態では、(任意的に他の要素を含んで)AおよびBの両方などに言及することができる。
【0047】
ここで明細書および請求項に用いる語句「または」は、上記のように定義した「および/または」と同じ意味をもつと理解すべきである。例えば、リストにおける項目を分離するとき、「または」または「および/または」は包含的、すなわち、多くのまたはリストの要素のうち、一つ以上も含めて少なくとも一つ、および、任意的にリストにない付加的な項目、を包含すると解釈すべきである。例えば、「の唯一つ」または「のまさに一つ」、或いは請求項に用いる場合の「からなる」のような、明確に逆を指示する用語のみ、多くのまたはリストの要素のうちまさに唯一つを包含することに言及できる。一般的に、ここで用いる用語「または」は「いずれか」、「のうち一つ」、「のうち唯一つ」、または「のうちまさに一つ」のような排他性に係る用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち、一つまたはその他、但し両方ではない)を指示すると単に解釈するものとする。「本質的にからなる」は、請求項に用いる場合、特許法の分野で用いられる通常の意味を持つものとする。
【0048】
ここで明細書および請求項に用いるように、一つまたはそれ以上の要素のリストに関する語句「少なくとも一つ」は、要素のリスト内に具体的に挙げる各々かつすべての要素のうち少なくとも一つを必ずしも含まないが要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを除外しない、要素のリストにおける要素の任意の一つまたはそれ以上から選択される少なくとも一つを意味すると理解すべきである。この定義は、具体的に指示される要素との関係の有無によらず、語句「少なくとも一つ」が言及する要素のリスト内において具体的に指示される要素以外の要素が任意的に存在することも可能にする。それ故、非限定の例として、「AおよびBのうち少なくとも一つ」(または、等価的に、「AまたはBのうち少なくとも一つ」、あるいは、等価的に、「Aおよび/またはBのうち少なくとも一つ」は、一実施形態では、Aを一つとしてそれ以上を任意的に含み、Bは存在しない(さらにB以外の要素を任意的に含む)少なくとも一つ、また別の実施形態では、Bを一つとしてそれ以上を任意的に含み、Aは存在しない(さらにA以外の要素を任意的に含む)少なくとも一つ、さらに別の実施形態では、Aを一つとしてそれ以上を任意的に含む少なくとも一つ、およびBを一つとしてそれ以上を任意的に含む(さらに他の要素を任意的に含む)少なくとも一つ、などに言及する。
【0049】
上記の明細書のみならず請求項において、「備える」、「含む」、「持つ」、「有する」、「包含する」、「伴う」、「保持する」などすべての移行句は、非限定的、すなわち、含むが限定されないことを意味すると理解すべきである。移行句「からなる」および「から本質的になる」だけは、米国特許審査手続便覧第2111.03節に示されるように、それぞれクローズドまたはセミクローズド移行句とする。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
(センサの作製)
液滴ベースの電解重合およびセンサ応用のための環状配置、電界の均一性のための対称的な参照電極および対極、並びに水および有機系の液滴形成を限定するためのペルフルオロカーボン系の疎水性材料を有する構成要素を備える電子デバイスを作製した。図3は、4つの別個の電子センサを含むデバイスの写真を示し、各々の電子センサは、直径3mmの疎水性領域内に4マイクロリットルの試料体積を閉じ込めることができる。本デバイスは、新規な伝導性材料や抵抗型センサの開発に向けて応用することができる。
【0051】
直径4”のパイレックス(登録商標)7740ウェーハを基板に用いた。ピラニア溶液で清浄化した後、10nm厚のクロム層および500nm厚の銀層を電子ビーム蒸着で堆積した。銀層をプラズマ化学気相堆積(PECVD)で堆積した1μm厚の低応力窒化シリコン膜で覆った。10nm厚のクロム層および250nm厚の金層を次に電子ビーム蒸着により堆積した。作用電極および対極、並びに電極導出部を画定するために、厚さ2μmのAZ7220ポジティブフォトレジストを用いてフォトリソグラフィーを行った。続いて、Unaxis LLS 100 Physical Vapor Deposition(PVD)システム(200W)中で逆スパッタリングを行い、金/クロムサンドイッチのパターンを形成した。フォトレジスト除去およびウェーハ清浄化の後、銀電極および銀はんだ用パッド開口を規定するために第2のリソグラフィーを行い、SFにより窒化膜をエッチングした。金電極を保護かつ電気的に分離するために0.5μmの第2の窒化膜をPECVDにより堆積した。その後、誘導結合プラズマシステム(Alcatel)によりCガスを用いて30秒間フルオロカーボンポリマー膜を形成した(20mTorr、2000W)。得られたテフロン(登録商標)様の膜は、厚さが100nmで水の接触角は120°であった。すべてのボンディングパッドおよび電気化学的電池を画定する領域を開口するために、第3のリソグラフィーステップを行った。フォトレジスト層に大きな影響を与えることなしにフルオロカーボン層を除去するために、酸素プラズマ(2000W)を30秒間適用した。最後のステップは、SFによる30秒間のシリコン窒化物エッチング、およびアセトンによるフォトレジスト剥離を含んだ。
【0052】
作製したチップは、Agilent 4156C Semiconductor Parameter Analyzerを取り付けた階段式プローブ端末を用いて、すべての電極間のショートおよびリーク電流をウェーハレベルで試験した。各ウェーハは、次にダイアモンドダイシングソーで個別チップにダイシングし、特注のはんだ付けシステムを用いてプリント回路基板(PCB)にはんだ付けした。はんだ付けの後に、ショートについてチップを再試験した。
【0053】
(実施例2)
(センサの試験)
センサデバイスは、2つの機能のために設計した:(1)ピロール、アニリン、チオフェン、ビチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、およびそれらの置換誘導体を含む、共役化合物のモノマー溶液の一滴(例えば、<10μL)から選択した電極表面上への、電解重合および材料堆積の実施、および(2)特性評価のための電気化学的電池として、一滴の溶液(例えば、<10μL)から堆積したままの状態(as−deposited)の材料に関する試験および応用。フルオロカーボン表面被覆を有するデバイスは、水溶液および非水溶液の両方の液滴に対して用いることができる。
【0054】
最初に、システムを試験するために、フェロセン(有機溶液中)およびフェリシアン化物(水溶液中)のサイクロボルタモグラムを測定した。0.1M nBuNPFの存在下における炭酸プロピレン中の一滴(5μL)のフェロセン溶液のサイクリックボルタモグラムを図5に示す。半波電位(E1/2)が0.2Vの可逆波が観測された。本デバイスはAg線を参照電極として用い、従って、より一般的なAg/Ag参照電極(フェロセンのE1/2=0V)と比較して0.2Vのシフトがあった。炭酸プロピレン溶液中のフェロセンからの0.2Vの半波電位は、Ag参照電極の性能が良好なことを実証した。
【0055】
デバイス性能の検証を目的として、ポリマー膜を形成するためにビチオフェンモノマーを作用電極間で電解重合した。ビチオフェンモノマーの10mMを含む0.1M nBuNPF/炭酸プロピレン溶液の一滴を、デバイスの能動電極を含む領域に堆積した。液滴に電気化学電位を印加したとき、作用電極の表面に赤いポリ(ビチオフェン)膜の成長が観察された。図6に示すように、繰り返しサイクルに伴って電流は増加し、電極の表面で電解重合が生じたことを示した。デバイスを炭酸プロピレンで数回すすいだ後、モノマーを含まない0.1M nBuNPF/炭酸プロピレン溶液の一滴(5μL)についてサイクリックボルタモグラムを測定した。図7に示すように、サイクリックボルタモグラムは、従来の3電極システムにより得られるものとほぼ同等であった。このことから、作製した微小デバイスはセンサー試験に関する性能を有することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの櫛型微小電極であって、該櫛型微小電極の各々は導電性ポリマー材料と接触しており、該導電性ポリマー材料は、該少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する、少なくとも2つの櫛型微小電極と、
該少なくとも2つの櫛型微小電極を本質的に完全に取り囲む第1電極と、
該第1電極を本質的に完全に取り囲む第2電極と、
該第2電極を取り囲む疎水性材料と
を備える、電子デバイス。
【請求項2】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、およびそれらの有機および遷移金属誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記第1電極と前記第2電極とは、相補的形状を有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極とは、各々実質的に環状構造である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極、前記第1電極、および前記第2電極は、各々独立に金、銀、プラチナ、またはインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記疎水性材料はテフロン(登録商標)である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極、前記第1電極、および前記第2電極は、10mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極、前記第1電極、および前記第2電極は、5mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極、前記第1電極、および前記第2電極は、3mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項10】
少なくとも2つの櫛型微小電極であって、該櫛型微小電極の各々は導電性ポリマー材料と接触しており、該導電性ポリマー材料は該少なくとも2つの櫛型微小電極間に伝導経路を提供するポリマー構造を形成する、櫛型微小電極と、
該少なくとも2つの櫛型微小電極を取り囲む疎水性材料と
を備える、電子デバイス。
【請求項11】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、およびそれらの有機および遷移金属誘導体からなる群から選択される、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極は、金、銀、プラチナ、またはインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記疎水性材料はテフロン(登録商標)である、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極は、10mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極は、5mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極は、3mm以下の直径を有する領域内に配置される、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項17】
モノマー種を含む50μLより少ない溶液を第1電極および第2電極に接触させることであって、該モノマー種は、電位の存在下で導電性ポリマーを形成することを可能にする少なくとも2つの官能基を含む、ことと、
該第1電極および該第2電極のうちの少なくとも一つに電位を印加することと、
導電性ポリマーを形成するために該モノマー種を重合することと
を備える重合法。
【請求項18】
前記モノマー種を含む10マイクロリットルより少ない前記溶液を前記第1電極および前記第2電極に接触させることを備える、請求項17に記載の重合法。
【請求項19】
前記モノマー種を含む5マイクロリットルより少ない前記溶液を前記第1電極および前記第2電極に接触させることを備える、請求項17に記載の重合法。
【請求項20】
前記モノマー種を含む1マイクロリットルより少ない前記溶液を前記第1電極および前記第2電極に接触させることを備える、請求項17に記載の重合法。
【請求項21】
前記モノマー種は、ピロール、アニリン、チオフェン、ビチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、またはそれらの置換誘導体である、請求項17に記載の重合法。
【請求項22】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、およびそれらの有機および遷移金属誘導体からなる群から選択される、請求項17に記載の重合法。
【請求項23】
検体を含むと疑われる50μLより少ない試料を、ポリマー構造を形成する導電性ポリマー材料を含む少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することであって、該ポリマー構造は導電率を有する、ことと、
該暴露ステップの後に、該ポリマー構造の該導電率の変化を検出することによって該検体を測定すること
を備える、検体を測定するための方法。
【請求項24】
検体を含むと疑われる10マイクロリットルより少ない前記試料を、前記ポリマー構造を形成する前記導電性ポリマー材料を含む前記少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
検体を含むと疑われる5マイクロリットルより少ない前記試料を、前記ポリマー構造を形成する前記導電性ポリマー材料を含む前記少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
検体を含むと疑われる1マイクロリットルより少ない前記試料を、前記ポリマー構造を形成する前記導電性ポリマー材料を含む前記少なくとも2つの櫛型微小電極に暴露することを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリアリーレン、ポリ(ビスチオフェンフェニレン)、ポリ(アリレーンビニレン)、ポリ(アリレーンエチニレン)、およびそれらの有機および遷移金属誘導体からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも2つの微小電極の櫛型構造と、
該櫛型構造を本質的に完全に取り囲む第1電極と、
該第1電極を本質的に完全に取り囲む第2電極と
を備える、電子デバイス。
【請求項29】
前記第2電極を取り囲む疎水性材料をさらに備える、請求項28に記載の電子デバイス。
【請求項30】
前記第1電極と前記第2電極とは、相補的形状を有する、請求項28に記載の電子デバイス。
【請求項31】
前記第1電極と前記第2電極とは、各々実質的に環状構造である、請求項28に記載の電子デバイス。
【請求項32】
前記少なくとも2つの櫛型微小電極、前記第1電極、および前記第2電極は、各々独立に金、銀、プラチナ、またはインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項28に記載の電子デバイス。
【請求項33】
電気絶縁基板と、
第1および第2の対向表面を有する第1の導電層であって、該第1の導電層の該第1表面は、該基板の表面の少なくとも一部を覆って接触するように、該基板の該表面上に配置されている、第1の導電層と、
第1および第2の対向表面を有する電気絶縁層であって、該電気絶縁層は、該電気絶縁層の該第1表面が、該第1の導電層の該第2表面の選択された部分を覆って接触し、かつ、該第1の導電層の該第2表面の他の部分を覆わないように、該第1の導電層の該第2表面上に配置され、該第1の導電層の該第2表面の該他の部分は、少なくとも一つの電極を形成する、電気絶縁層と、
第1および第2の対向表面を有する第2の導電層であって、該第2の導電層は、該第2の導電層の該第1表面が、該電気絶縁層の選択された部分を覆って接触し、かつ、該電気絶縁層の該第2表面の他の部分を覆わないように、該電気絶縁層の該第2表面上に配置され、櫛型微小電極アレイを備える少なくとも2つの電極を形成する、第2の導電層と
を備える、電子デバイス。
【請求項34】
前記第1の導電層および前記第2の導電層は、各々独立に金、銀、プラチナ、またはインジウムスズ酸化物(ITO)を含む、請求項33に記載の電子デバイス。
【請求項35】
前記電気絶縁層はSiNである、請求項33に記載の電子デバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−503856(P2010−503856A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528279(P2009−528279)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/019848
【国際公開番号】WO2008/033419
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508201466)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (13)
【Fターム(参考)】